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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179339
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】動脈血管の内皮機能検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098099
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】304008175
【氏名又は名称】株式会社ユネクス
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(72)【発明者】
【氏名】和田 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】花田 恵
(72)【発明者】
【氏名】西林 秀郎
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB09
4C601DD14
4C601EE11
4C601GB06
4C601KK02
4C601KK25
(57)【要約】
【課題】短軸画像内の筋肉組織の判断に熟練していないオペレータであっても、超音波プローブと動脈血管との間に容易に筋肉組織を位置させることができる動脈血管の内皮機能検査装置を提供する。
【解決手段】筋肉組織領域画像生成部94により、前記短軸画像内に表れる筋肉組織領域画像GKNを予め学習して記憶された学習済モデルLMを用いて、実際の短軸画像に表れた画像情報から前記実際の短軸画像内に前記筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNが生成され、表示制御部92により、その筋肉組織領域画像GKNが表示制御部92により第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2の短軸画像に重ねて表示される。これにより、筋肉組織KNが超音波プローブ24と動脈血管20との間に位置するように、容易に、超音波プローブ24の上腕16上の配置や上腕16のひねり位置を設定し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の表皮に超音波センサを接触させ表皮下からの超音波反射信号から表皮下に位置する動脈血管の断面を示す断面画像を生成し、前記断面画像に表れた前記動脈血管の血管径の変化を測定する動脈血管の内皮機能検査装置であって、
前記動脈血管の短軸画像を表示する短軸画像表示装置と、
前記短軸画像内に表れる筋肉組織の領域を予め学習して記憶された学習済モデルを用いて、実際の短軸画像に表れた画像情報から前記実際の短軸画像内に位置する筋肉組織を示す筋肉組織領域画像を生成する筋肉組織領域画像生成部と、
前記筋肉組織領域画像を前記短軸画像に重ねて前記画像表示装置に表示する表示制御部と、を備える
ことを特徴とする動脈血管の内皮機能検査装置。
【請求項2】
前記学習済モデルは、所定の短軸画像を入力データとし、前記短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織の領域を出力データとしとする学習データを用いて、繰り返し教師あり学習を行なった機械学習モデルである
ことを特徴とする請求項1の動脈血管の内皮機能検査装置。
【請求項3】
前記機械学習モデルは、入力層のノードに前記入力データが入力され、前記短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織の領域を示すピクセルを出力データが出力層のノードに教示されることが繰り返されたときに、隣接する層に属するノード間の重み係数が逐次的に更新される深層学習が行なわれた多層のニューラルネットワークである
ことを特徴とする請求項2の動脈血管の内皮機能検査装置。
【請求項4】
前記多層ニューラルネットワークでは、前記所定の短軸画像を構成するピクセル毎の輝度情報が前記入力データとして入力層に入力され、出力層からは前記筋肉組織の領域であることを示すピクセルを示す出力データが出力される
ことを特徴とする請求項3の動脈血管の内皮機能検査装置。
【請求項5】
前記多層ニューラルネットワークの出力層から出力される出力データでは、短軸画像を構成するピクセル単位で画像認識が行われ、各ピクセルと隣接のピクセルの情報からそのピクセルが属する鑞域のテクスチャーが特徴づけられ、そのテクスチャーにより筋肉組織の領域に属するか、その他の組織に属するかの意味づけのある領域分割がピクセル毎に推定される
ことを特徴とする請求項2の動脈血管の内皮機能検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈血管の断面を示す超音波画像に表れる動脈径の変化に基づいて前記動脈血管の内皮機能を検査するに際して、超音波プローブと動脈血管との間に筋肉組織を容易に介在させるように、超音波画像内に筋肉組織の領域を表示する動脈血管の内皮機能検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体の表皮に超音波プローブを接触させ、表皮下からの超音波反射信号から表皮下に位置する動脈血管の断面を示す断面画像を生成し、その断面画像から前記動脈血管の血管径の変化を測定し、その血管径の変化量に基づいて動脈血管の内皮機能を検査する動脈血管の内皮機能検査装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載された動脈血管の内皮機能検査装置がそれである。
【0003】
特許文献1に記載の動脈血管の内皮機能検査装置では、超音波アレイにより検出された反射波に基づいて超音波断面画像を合成し、皮膚下における動脈血管の超音波断面画像である動脈血管の横断面画像(短軸画像)或いは動脈血管の縦断面画像(長軸画像)を生成させ、その画像から、動脈血管の径或いは内皮径(内膜径)が算出される。また、血管内皮機能を評価するために、虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管の内皮径(内膜径)の変化率(%)[=100×(dmax -d)/d](但し、dは安静時の血管内皮径、dmax は阻血解放後の最大血管内皮径)が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-177571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような内皮機能検査装置において、超音波プローブと動脈血管との間の伝播経路に、脂肪などの他の組織よりも超音波の減衰が少ない筋肉組織が存在すると、超音波画像である動脈血管の断面画像内に血管画像が比較的明瞭に表示されることから、血管径測定の精度が得られるので、熟練したオペレータは、動脈血管の断面画像から筋肉組織の領域を読み取り、その筋肉組織の領域が超音波プローブが載置される表皮と血管との間の超音波伝播経路に位置するように、超音波プローブの腕上の配置や腕のひねり位置を設定している。
【0006】
しかしながら、微弱でノイズの多い超音波反射信号に基づいて生成される動脈血管の断面画像は不鮮明であることから、その超音波画像において筋肉組織を読み取ることにはかなりの熟練を必要とするので、熟練していないオペレータである場合には、筋肉組織の領域を正確に把握して鮮明な血管画像を得て血管径測定の精度を確保することが、困難な場合があった。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、動脈血管の断面画像内の筋肉組織の判断に熟練していないオペレータであっても、超音波プローブが載置された表皮と動脈血管との間に容易に筋肉組織を位置させることができる動脈血管の内皮機能検査装置を提供することにある。
【0008】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねるうち、超音波画像である動脈血管の断面画像についての画像情報をニューラルネットワークに入力し、前記動脈血管の断面画像において熟練したオペレータが筋肉組織の領域をニューラルネットワークに教示することを繰り返すことで学習した機械学習モデルを作成し、その機械学習モデルを用いて動脈血管の断面画像内に筋肉組織の領域を明確に表示させると、熟練していないオペレータでも、筋肉組織の領域を正確に把握し得て、超音波プローブが載置される皮膚と動脈血管との間に筋肉組織の領域を位置させることが容易にできることを見出した。本発明は、掛かる知見に基づいてなされたものである。
【0009】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a)生体の表皮に超音波センサを接触させ表皮下からの超音波反射信号から表皮下に位置する動脈血管の断面を示す断面画像を生成し、前記断面画像に表れた前記動脈血管の血管径の変化を測定する動脈血管の内皮機能検査装置であって、(b)前記動脈血管の短軸画像を表示する短軸画像表示装置と、(c)前記短軸画像内に表れる筋肉組織の領域を予め学習して記憶された学習済モデルを用いて、実際の短軸画像に表れた画像情報から前記実際の短軸画像内に位置する筋肉組織の領域を示す筋肉組織領域画像を生成する筋肉組織領域画像生成部と、(d)前記筋肉組織領域画像を前記短軸画像に重ねて前記画像表示装置に表示する表示制御部と、を備えることにある。
【発明の効果】
【0010】
このように構成された動脈血管の内皮機能検査装置では、筋肉領域表示制御部により、前記短軸画像内に表れる筋肉組織の領域を予め学習して記憶された学習済モデルを用いて、実際の短軸画像に表れた画像情報から前記実際の短軸画像内に前記筋肉組織の領域を示す筋肉組織領域画像が生成され、表示制御部により、その筋肉組織領域画像が前記短軸画像に重ねて表示される。これにより、短軸画像内の筋肉組織の判断に熟練していないオペレータであっても、短軸画像内において筋肉組織の領域を正確に且つ容易に把握することができるので、その筋肉組織の領域が超音波プローブと血管との間の伝播経路に位置するように、容易に、超音波プローブの腕上の配置や腕のひねり位置を設定し得る。これにより、鮮明な血管画像を生成し得て血管径測定の精度を向上させることができる。
【0011】
好適には、前記学習済モデルは、所定の短軸画像を入力データとし、その短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織の領域を出力データとする学習データを用いて、教師あり学習を繰り返し行なった機械学習モデルである。これにより、短軸画像内において筋肉組織の領域が明確に同定される。
【0012】
好適には、前記機械学習モデルは、入力層のノードに前記入力データが入力され、前記短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織の領域を示す出力データが出力層のノードに教示されることが繰り返されたときに、隣接する層に属するノード間の重み係数が逐次的に更新される深層学習が行なわれた多層のニューラルネットワークである。これにより、短軸画像内において筋肉組織の領域が一層明確に同定される。
【0013】
好適には、前記多層ニューラルネットワークでは、前記所定の短軸画像を構成するピクセル毎の輝度情報が前記入力データとして入力層に入力され、出力層からは前記筋肉組織の領域であることを示すピクセルを示す出力データが出力される。これにより、短軸画像内において筋肉組織の領域が一層明確に同定される。
【0014】
好適には、前記多層ニューラルネットワークの出力層から出力される出力データでは、短軸画像を構成するピクセル単位で画像認識が行われ、各ピクセルと隣接のピクセルの情報からそのピクセルが属する領域のテクスチャーが特徴づけられ、そのテクスチャーにより筋肉組織の領域に属するか、その他の組織に属するかの意味づけのある領域分割がピクセル毎に推定される。これにより、多層ニューラルネットワークの出力層を構成するノード数が低減され、多層ニューラルネットワークの構成がコンパクトになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例である動脈血管の内皮機能検査装置の全体的な構成を示す斜視図である。
図2図1の内皮機能検査装置における超音波プローブの位置決めに関して本実施例で用いられるXYZ直交座標軸を説明する図である。
図3図1の内皮機能検査装置の測定対象である血管の層膜構成を概略的に示す拡大図である。
図4図1の内皮機能検査装置による超音波プローブの位置決め作動時において画像表示装置に表示される動脈血管の超音波画像を例示する図である。
図5図1の内皮機能検査装置による動脈血管のFMD評価における、阻血開放後の血管内腔径の変化を説明するタイムチャートである。
図6】短軸画像に筋肉組織領域画像が重ねられた画像を示す写真である。
図7図1の内皮機能検査装置に備えられた筋肉組織領域画像生成部の構成を説明する機能ブロック線図である。
図8図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、筋肉組織領域画像生成ルーチンを示している。
図9図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、FMD測定ルーチンを示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、内皮機能検査装置は、好適には、生体の上腕表皮下における動脈である上腕動脈の測定を行うものである。しかし、生体の前腕部やトウ骨動脈など表皮面より測定できる動脈等の他の動脈の血管内皮機能の検出においても同様に適用されるものである。
【0017】
本発明において内皮機能検査装置に備えられた超音波プローブは、好適には、互いに平行な2列の第1短軸用超音波アレイ探触子及び第2短軸用超音波アレイ探触子と、それらの長手方向中央部を連結する長軸用超音波アレイ探触子とを一平面に有して成るH型のプローブである。しかし、単一の短軸用超音波アレイ探触子を有するものや、長軸用超音波アレイ探触子を有することなく互いに平行な2列の第1短軸用超音波アレイ探触子及び第2短軸用超音波アレイ探触子を有するものなどの他のプローブを備えた内皮機能検査装置にも本発明は同様に適用され、効果を奏するものである。
【0018】
本発明において学習済モデルは、好適には、機械学習アルゴリスムによる機械学習モデルである。機械学習アルゴリスムは、最近傍法、ナイーブベイズ法、サポートベクターマシンなどである。また、ニューラルネットワークを利用して、学習するための特徴量、結合重み付け係数を自ら生成する深層学習(ディープラーニング)が用いられる。また、教師データとは、学習データのことであり、入力データ及び出力データのペアで構成される。
【0019】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例0020】
図1は、センサ支持器10に支持されたプローブユニット12を用いて、生体14の上腕16における皮膚18(厳密には表皮)の上からその皮膚18下に位置する動脈血管20の内皮機能の検査を非侵襲的に行う内皮機能検査装置22の全体的な構成を例示する斜視図である。
【0021】
プローブユニット12は、動脈血管20に関連する生体情報すなわち動脈血管20の内皮機能を検査するためのセンサとして機能するものであって、互いに平行な1対の第1短軸用超音波アレイ探触子24a及び第2短軸用超音波アレイ探触子24bと、それらの長手方向中央部を連結する長軸用超音波アレイ探触子24cとを、1平面上すなわち平坦な探触面25に有するH型の超音波プローブ24を備えている。また、プローブユニット12は、超音波プローブ24をXYZ方向において位置決めし、且つX軸及びZ軸まわりの回転角度を位置決めする多軸駆動機構(位置決め機構)26と、その多軸駆動機をXYZ方向にそれぞれ駆動するXYZモータなどを含む駆動装置27とを備えている。第1短軸用超音波アレイ探触子24a、第2短軸用超音波アレイ探触子24b、及び長軸用超音波アレイ探触子24cは、例えば後述する図2に示すように、圧電セラミックスから構成された多数個の超音波振動子a~aが直線的に配列されることにより長手状にそれぞれ構成されている。
【0022】
図2は、超音波プローブ24の位置決めに関して本実施例で用いられるXYZ軸直交座標軸を説明する図である。図2に示すようなXYZ軸直交座標軸に関して、超音波プローブ24は、例えば、多軸駆動機構26によりX軸方向に並進させられる。また、X軸及びZ軸まわりに回動させられる。
【0023】
図3は、内皮機能検査装置22の測定対象である上腕の動脈血管20の管壁構成を概略的に示す拡大図である。動脈血管20は、内膜L、中膜L、及び外膜Lの3層構造を備えている。超音波の反射は、一般に音響インピーダンスの異なる部分で発生することから、超音波を用いた動脈血管20の画像には、血管内腔の血液と内膜Lの境界面、及び中膜Lと外膜Lとの境界面が白く表示され、血管内腔が黒色で表示され、組織が白黒のまだらで表示される。
【0024】
図1に示すように、内皮機能検査装置22は、所謂マイクロコンピュータから構成された電子制御装置28と、画像表示装置30と、超音波駆動制御回路32と、3軸駆動モータ制御回路34とを、備えている。内皮機能検査装置22による血管状態の測定においては、電子制御装置28によって超音波駆動制御回路32から駆動信号が供給されると、プローブユニット12における超音波プローブ24の前記第1短軸用超音波アレイ探触子24a、第2短軸用超音波アレイ探触子24b、及び前記長軸用超音波アレイ探触子24cからよく知られたビームフォーミング駆動によりビーム状の超音波が順次放射される。そして、第1短軸用超音波アレイ探触子24a、第2短軸用超音波アレイ探触子24b、及び長軸用超音波アレイ探触子24cにより超音波の反射信号が検知され、電子制御装置28においてその検知された超音波反射信号の処理が行われることにより、皮膚18下の動脈血管20の超音波画像である第1短軸画像、第2短軸画像、及び長軸画像が生成され、画像表示装置30の第1短軸画像表示領域G1、第2短軸画像表示領域G2及び長軸画像表示領域G3に表示される。
【0025】
図1において、電子制御装置28は、超音波駆動制御部80、検波処理部82、超音波画像生成部84、3軸駆動モータ制御部86、カフ圧制御部88、血管状態評価部90、表示制御部92、及び筋肉組織領域画像生成部94とを、機能的に備えている。
【0026】
図4は、内皮機能検査装置22による血管状態の測定において、動脈血管20の超音波画像が生成される際に所定の計測位置に位置決めされた超音波プローブ24と動脈血管20との位置関係を示すと共に、その位置関係において画像表示装置30に表示される血管の超音波画像を例示する図である。画像表示装置30では、例えば、図4(a)に示すように、第1短軸画像表示領域G1、第2短軸画像表示領域G2、長軸画像表示領域G3は、皮膚18からの深さ寸法を示す共通の縦軸を備えたものである。なお、図4(a)内の「ImA,ImB」は、それぞれ動脈血管20の横断面を示している。
【0027】
内皮機能検査装置22は、超音波プローブ24から動脈血管20に対して出力される超音波の反射信号に基づいて、動脈血管20の径、内膜厚、プラーク、血流速度等を測定するFMD(Flow-Mediated Dilation:血流依存性血管拡張反応)の評価を行う。このFMDの評価では、画像表示装置30は、動脈血管20における内膜の径の変化率すなわち内腔径の拡張率Rを時系列的に表示する。FMDの評価及び動脈血管20の超音波画像の生成等に際して、超音波プローブ24は、測定対象である動脈血管20に対して所定の計測位置Pとなるように、電子制御装置28に備えられた3軸駆動モータ制御部86によって3軸駆動モータ制御回路34から駆動信号を供給された多軸駆動機構26の駆動により自動的に位置決めされる。所定の計測位置Pとは、第1短軸用超音波アレイ探触子24a及び第2短軸用超音波アレイ探触子24bが動脈血管20に対して直交し、且つ長軸用超音波アレイ探触子24cが動脈血管20に対して平行となる位置である。図4を用いて説明すれば、所定の計測位置Pとは、その図4において「a=b,c=d,e=f」となる位置である。すなわち、第1短軸用超音波アレイ探触子24aから動脈血管20の中心までの距離と第2短軸用超音波アレイ探触子24bから動脈血管20の中心までの距離とが互いに等しく、且つ第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2の何れにおいてもそれらの幅方向中央部に動脈血管20の画像が位置させられた計測位置である。
【0028】
内皮機能検査装置22による血管状態の測定において、センサ支持器10は、前記生体14における上腕16の皮膚18の上からその皮膚18直下に位置する動脈血管20を変形させない程度に軽く接触させる状態でプローブユニット12を一定の姿勢で保持する。
【0029】
図1に示すように、センサ支持器10は、例えば、図示しない台座に固定される基台36と、プローブユニット12が押圧アクチュエータ37により上腕16へ向かって押圧可能に固定されるユニット固定具38と、基台36に自在型固定具を介して基端部が連結された第1アーム40と、先端部がユニット固定具38に自在型固定具を介して連結され且つ第1アーム40の先端に一軸まわりに回動可能に連結された第2アーム42とを有する自在アーム44を、備えている。
【0030】
多軸駆動機構26は、x軸回動アクチュエータにより前記超音波プローブ24のx軸まわりの回動位置を位置決めするためにユニット固定具38に固定されるX軸回動(ヨーイング)機構と、X軸回動アクチュエータにより超音波プローブ24のX軸方向の並進位置を位置決めするためのX軸並進機構と、Z軸アクチュエータにより超音波プローブ24のZ軸まわりの回動位置を位置決めするためのZ軸回動機構とを、備えて構成されている。この構成により、多軸駆動機構26は、電子制御装置28からの指令に従って作動する駆動装置27により超音波プローブ24の位置決めを行う。
【0031】
超音波駆動制御回路32は、電子制御装置28に備えられた超音波駆動制御部80からの指令に従って前記超音波プローブ24から動脈血管20への超音波の放射を制御する。例えば、第1短軸用超音波アレイ探触子24aにおいて1列に配列された多数個の超音波振動子a1乃至anのうち、その端の超音波振動子a1から一定数の超音波振動子群例えば15個のa1乃至a15毎に所定の位相差を付与しつつ10MHz程度の周波数で同時駆動するビームフォーミング駆動することにより超音波振動子の配列方向において収束性の超音波ビームを動脈血管20に向かって順次放射させる。そして、超音波振動子を1個ずつずらしながらその超音波ビームをスキャン(走査)させたときの放射毎の反射波を受信し、電子制御装置28へ入力させる。電子制御装置28へ入力された反射波信号は、検波処理部82により検波され、超音波画像生成部84により以下に詳述する画像合成可能な情報として処理される。
【0032】
電子制御装置28は、超音波プローブ24により受信される超音波反射波に基づいて、皮膚18下における動脈血管20の断面画像、すなわち動脈血管20の長手方向に交差する方向の断面画像(短軸画像)、及び動脈血管20の長手方向の断面画像(長軸画像)を生成させて、画像表示装置30にそれぞれ表示させる。また、血管状態評価部90は、そのようにして生成される動脈血管20の短軸画像又は長軸画像等から、動脈血管20の径或いは内皮70の直径である内皮径(内腔径)d1等を算出する。また、動脈血管20の内皮機能を評価するために、虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管内腔径の拡張率(変化率)R(%)[=100×(d1-da)/da]を算出する。この式における「da」は、安静時の血管内腔径(ベース径、安静径)を示している。
【0033】
内皮機能検査装置22による血管状態の測定では、生体14における測定部位例えば上腕16がカフ62等の加圧装置により圧迫されて血流が阻止され、生体14の一部(阻血部よりも末梢側の部分)が虚血状態とされた後、その血流が急激に解放されて測定部位の動脈血管20の血流が急速に増加させられることで、血管壁の内皮へのずり応力増加に伴う内皮からの一酸化窒素(NO)の産生が起こり、その一酸化窒素に依存する平滑筋の弛緩状況を調べることで内皮機能の判定が行われる。
【0034】
図5は、内皮機能検査装置22による動脈血管20のFMD評価における、阻血(駆血)開放後の血管内腔径d1の変化を例示したタイムチャートである。図5においては、時点t1が阻血開放時を表しており、時点t2から血管内腔径d1が拡張し始め、時点t3で血管内腔径d1がその最大値dMAXに達していることが示されている。従って、電子制御装置28が算出する血管内腔径の拡張率Rは、時点t3で最大になる。
【0035】
内皮機能検査装置22による動脈血管20のFMD評価のための阻血は、図1に示すように、電子制御装置28に備えられたカフ圧制御部88により空気ポンプ58及び圧力制御弁60等が制御されることにより実行される。例えば、電子制御装置28からの指令に従って、空気ポンプ58からの元圧が圧力制御弁60で制御され、上腕16に巻回されたカフ62に供給される。具体的には、カフ62の圧力(カフ圧)が、たとえば生体14の最高血圧を超える所定の阻血カフ圧にまで昇圧させられることで、FMD評価のための前記阻血が行われる。このとき、カフ圧制御部88は、カフ62の圧力(カフ圧)を検出する圧力センサ64からの信号に応じてそのカフ圧を検出する。そして、図5においては、例えば、カフ圧制御部88は、阻血開放前の所定時間すなわち時点t1前の所定時間にわたってカフ圧を阻血カフ圧で維持し、阻血開放時(時点t1)においてカフ圧を直ちに大気圧にまで減圧する。これにより、測定部位Pにおける動脈血管20内の血流が急速に開始され、内皮機能検査装置22により対象となる動脈血管20の虚血状態からの充血後の血管径dMAXが測定される。
【0036】
超音波画像生成部84は、第1短軸用超音波アレイ探触子24aにより検知される超音波反射信号に基づいて動脈血管20の横断面を表す第1短軸画像を生成し、第2短軸用超音波アレイ探触子24bにより検知される超音波反射信号に基づいて動脈血管20の横断面を表す第2短軸画像を生成し、長軸用超音波アレイ探触子24cにより検知される超音波反射信号に基づいて動脈血管20の縦断面を表す長軸画像を、生成する。
【0037】
表示制御部92は、超音波画像生成部84により生成された第1短軸断面画像、第2短軸断面画像、および長軸断面画像を、画像表示装置30における第1短軸画像表示領域G1、第2短軸画像表示領域G2、および長軸画像表示領域G3にそれぞれ表示させる。
【0038】
一般に、超音波を用いて得られる短軸断面画像は、実際の第1短軸断面画像または第2短軸断面画像を示す図6に示すように、スペックルノイズが多く、筋肉組織KNの判定には熟練を要する。このため、本実施例の内皮機能検査装置22は、短軸画像内に表れる筋肉組織KNを予め学習して記憶された学習済モデルLMを用いて、実際の第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2に表れた第1短軸画像及び第2短軸画像の画像情報から第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2内に位置する筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNを生成する筋肉組織領域画像生成部94を備えている。
【0039】
筋肉組織領域画像生成部94は、図7に示すように、第1短軸画像及び第2短軸画像内に表れる筋肉組織KNを予め学習して記憶された学習済モデルLMを記憶する学習済モデル部96と、その学習済モデルLMを用いて実際の第1短軸画像及び第2短軸画像に表れた画像情報からそれら実際の第1短軸画像及び第2短軸画像内にそれぞれ位置する筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNを生成する筋肉組織領域画像合成部98とを、備えている。表示制御部92は、筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNを、第1短軸画像及び第2短軸画像にそれぞれ重ねて、たとえば図6に示すように画像表示装置30の第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2に表示する。図6の場合は、筋肉組織領域画像GKNは、筋肉組織KNの外縁を示す曲線画像LKNで囲まれた状態で表示されている、筋肉組織領域画像GKNは、筋肉組織KNの領域全体を示す斜線或いは色彩で表示する画像であってもよい。
【0040】
学習済モデルLMは、第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2に表れた第1短軸画像及び第2短軸画像全体の画像情報を入力データとし、熟練したオペレータがマウスやペンを用いて、図示しない入力用表示装置に表示された短軸画像内に描画することにより特定した筋肉組織領域画像GKNを出力データとしとする学習データを用いて、教師あり学習を繰り返し行なった機械学習モデルMLMである。入力用表示装置として、画像表示装置30が用いられてもよい。
【0041】
好適には、機械学習モデルMLMは、入力層のノードに前記入力データが入力され、前記短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織KNを示すピクセルを出力データが出力層のノードに教示されることが繰り返されたときに、隣接する層に属するノード間の重み係数が逐次的に更新される深層学習が施された多層のニューラルネットワークである。
【0042】
上記多層ニューラルネットワークでは、好適には、前記所定の短軸画像を構成するピクセル毎の輝度情報Pin(x,y)が入力データとして入力層に入力され、出力層からは、筋肉組織KNであることを示すピクセルを示す出力データPout(x,y,t)が出力される。出力データのtは、出力データPout(x,y)が示すピクセルが筋肉組織KNの領域内であるか否かのテクスチャー(t=1であれば筋肉組織KNの領域内、t=0であればその他の組織を示す特徴)である。
【0043】
すなわち、前記多層ニューラルネットワークの出力層から出力される出力データでは、前記短軸画像を構成するピクセル単位で画像認識が行われ、各ピクセルと隣接のピクセルの情報からそのピクセルが属する領域(組織)のテクスチャーtが特徴づけられ、そのテクスチャーtにより筋肉組織KNに属するか、或いはその他の組織に属するかの意味づけのある領域分割が、ピクセルP(x,y)毎に推定される。
【0044】
図8及び図9は、電子制御装置28の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行される。図8は、FMD測定に先立って、第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2の短軸画像内に筋肉組織領域画像GKNを重ねて表示させることにより、筋肉組織KNの領域が超音波プローブ24と動脈血管20との間に容易に位置させることを可能とする筋肉組織領域画像表示制御ルーチンを示している。図9は、超音波プローブ24から動脈血管20に対して出力される超音波の反射信号に基づいて、動脈血管20の径、内膜厚、プラーク、血流速度等を測定するFMD評価を行うFMD測定ルーチンを示している。
【0045】
図8のステップS1( 以下、ステップを省略する)では、FMD評価に先立って、超音波画像表示開始操作が行なわれたか否かが、たとえば画像表示装置30のいずれかの画面がタッチされたか否かに基づいて判断される。S1の判断が否定される場合は待機させられるが、肯定された場合は、超音波画像生成部84に対応するS2において、第1短軸用超音波アレイ探触子24aにより検知される超音波反射信号に基づいて動脈血管20の横断面を表す第1短軸画像が生成され、第2短軸用超音波アレイ探触子24bにより検知される超音波反射信号に基づいて動脈血管20の横断面を表す第2短軸画像が生成され、長軸用超音波アレイ探触子24cにより検知される超音波反射信号に基づいて動脈血管20の縦断面を表す長軸画像が生成され、第1短軸画像表示領域G1、第2短軸画像表示領域G2、および長軸画像表示領域G3にそれぞれ表示される。
【0046】
次いで、S3では、筋肉組織領域画像GKNを生成して表示させる制御の起動操作が行なわれたか否かが、たとえば、画像表示装置30の短軸画像が表示されている第1短軸画像表示領域G1又は第2短軸画像表示領域G2のいずれかの画面がタッチされたか否かに基づいて判断される。このS3の判断が否定される場合はS1以下が繰り替えされるが、肯定された場合は、筋肉組織領域画像生成部94に対応するS4において、学習済モデルLMを用いて、実際の第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2に表れた第1短軸画像及び第2短軸画像の画像情報から、第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2内にそれぞれ位置する筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNが、それぞれ生成される。そして、表示制御部92に対応するS5において、第1短軸断面画像及び第2短軸断面画像がそれぞれ表示されている第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2に、第1短軸断面画像及び第2短軸断面画像に重ねて筋肉組織領域画像GKNが、それぞれ明確に表示される。図6は、この状態を示している。
【0047】
オペレータは、図6のような、第1短軸断面画像及び第2短軸断面画像と、それら第1短軸断面画像及び第2短軸断面画像に重ねられた筋肉組織領域画像GKNとを確認しながら、筋肉組織領域画像GKNに示された筋肉組織KNが超音波プローブ24が載置された皮膚18と動脈血管20との間に可及的に位置するように、超音波プローブ24の上腕16の配置や上腕16のひねり位置を容易に設定することができる。
【0048】
図9のS11では、超音波プローブ24により受信された反射信号に基づいて得られた短軸断面画像内の複数の管状臓器の内腔から、動脈血管20が特定される。たとえば、押圧アクチュエータ37によって短軸断面画像内の静脈が十分に圧閉されるまで超音波プローブ24によりその超音波プローブ24の直下の生体組織に圧迫が加えられた後でその圧迫が解放される区間内で、脈拍の拡張期に同期した複数のフレームから成る短軸断面画像の動画が連続的に算出される。次に、短軸断面画像の連続する複数フレームからなる動画から、フレーム間の画素、或いは画素群から成る局所領域の移動を示す移動ベクトルを用いて超音波プローブ24の直下の生体組織の圧迫状態および解放状態が判定される。続いて、圧迫状態の短軸断面画像に対して平滑化処理が行われ、その平滑化された平滑化処理短軸断面画像が2値化された2値化処理短軸断面画像に対して所定回数の膨張処理の後所定回数の収縮処理が行われ、次いでクロージング処理短軸断面画像中に複数個の内腔を生成さるとともに、そのクロージング処理短軸断面画像中の内腔にラベリングを行うラベリング処理が行われ、その内腔が重ねて表示された圧迫状態の短軸断面画像が生成される。次いで、圧迫状態の短軸断面画像内に生成された複数の内腔のうちから、予め設定された動脈血管内腔判定条件を満足するか否かに基づいて動脈血管20の内腔が判定される。圧迫状態の短軸断面画像内に表示された内腔のいずれかが、動脈血管20の内腔であると判定されと、動脈血管20全体を含む局所領域のテンプレートが作成され、そのテンプレートを用いて短軸断面画像が圧迫状態から解放状態へ移行する過程で動脈血管20の移動を追跡し、解放状態における短軸断面画像内において動脈血管が特定される。図6の動脈血管20は、このようにして特定された真円の模式画像を示している。
【0049】
S11により求められた動脈血管20を用いて、血管状態評価部90に対応するS12-S18により動脈血管20のFMDの評価が行われる。先ず、S12では、センサ支持器10により、生体14における上腕16の皮膚18の上からその皮膚18直下に位置する動脈血管20を変形させない程度に軽く接触させる状態でプローブユニット12が、超音波プローブ24の3次元空間内の位置が動脈血管20に対して図4(b)に示される計測位置となるように、3軸駆動モータ制御部86によって位置決めされる。次いで、S13では、安静区間において動脈20の内皮70の直径である内腔径daが計測される。図5のt0以前の期間はこの状態を示している。その後、S14では、カフ62による圧迫によって上腕16が圧迫されて上腕16内の動脈血管20が止血される。図5のt0~t1期間はこの状態を示している。次いで、S15において、止血から所定時間経過後たとえば5分経過後にカフ62による圧迫が解放されることで動脈血管20内の血流が急激に解放されて測定部位の血管20の血流が再開され、図5のt1時点以降の期間はこの状態を示している。これにより、血流が急増して動脈血管20の血管壁の内皮へのずり応力増加に伴う内皮からの一酸化窒素(NO)の産生が起こり、その一酸化窒素に依存する平滑筋の弛緩によって動脈血管20の内皮径の一時的増加が発生させられる。
【0050】
S16では、止血解放後の動脈血管20の内腔径dが、図5の時点t4に示すように最大値dMAXに到達すると判断されるまで、繰り返し測定される。S17において最大値dMAXに到達したと判断されると、S18において、S17において求められた最大値dMAXとS3において求められた安静時の動脈20の内皮70の直径である内腔径daとに基づいて、動脈血管20の内皮機能を評価するための虚血反応性充血後のFMD(血流依存性血管拡張反応)を表す血管内腔径の拡張率(変化率)R(%)[=100×(dMAX-da)/da]が算出され、表示制御部92によって画像表示装置30に表示される。
【0051】
上述のように、本実施例の内皮機能検査装置22によれば、筋肉組織領域画像生成部94により、前記短軸画像内に表れる筋肉組織領域画像GKNを予め学習して記憶された学習済モデルLMを用いて、実際の短軸画像に表れた画像情報から前記実際の短軸画像内に前記筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNが生成され、表示制御部92により、その筋肉組織領域画像GKNが表示制御部92により第1短軸画像表示領域G1及び第2短軸画像表示領域G2の短軸画像に重ねて表示される。これにより、短軸画像内の筋肉組織KNの判断に熟練していないオペレータであっても、短軸画像内において筋肉組織KNを正確に且つ容易に把握することができるので、その筋肉組織KNが超音波プローブ24と動脈血管20との間に位置するように、容易に、超音波プローブ24の上腕16上の配置や上腕16のひねり位置を設定し得る。これにより、鮮明な血管画像を生成し得て血管径測定の精度を向上させることができる。
【0052】
また、本実施例の内皮機能検査装置22によれば、学習済モデルLMは、所定の短軸画像を入力データとし、その短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織KNの領域を出力データとする学習データを用いて、教師あり学習を繰り返し行なった機械学習モデルMLMである。これにより、短軸画像内において筋肉組織KNの領域が明確に同定される。
【0053】
また、本実施例の内皮機能検査装置22によれば、機械学習モデルMLMは、入力層のノードに前記入力データが入力され、前記短軸画像内に熟練したオペレータが特定した筋肉組織KNを示すピクセルを示す出力データが出力層のノードに教示されることが繰り返されたときに、隣接する層に属するノード間の重み係数が逐次的に更新される深層学習が行なわれた多層のニューラルネットワークである。これにより、短軸画像内において筋肉組織KNの領域が一層明確に同定される。
【0054】
また、本実施例の内皮機能検査装置22によれば、前記多層ニューラルネットワークでは、所定の短軸画像を構成するピクセル毎の輝度情報が前記入力データとして入力層に入力され、出力層からは前記所定の短軸画像内の筋肉組織KNであることを示すピクセルを示す出力データが出力される。これにより、短軸画像内において筋肉組織KNを示す筋肉組織領域画像GKNが一層明確に同定される。
【0055】
また、本実施例の内皮機能検査装置22によれば、前記多層ニューラルネットワークの出力層から逐次出力される出力データでは、前記所定の短軸画像を構成するピクセル単位で画像認識が行われ、各ピクセルと隣接のピクセルの情報からそのピクセルが属する鑞域のテクスチャーが特徴づけられ、そのテクスチャーにより筋肉組織KNに属するか、その他の組織に属するかの意味づけのある領域分割がピクセル毎に推定される。これにより、多層ニューラルネットワークの出力層を構成するノード数が低減され、多層ニューラルネットワークの構成がコンパクトになる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0057】
10:センサ支持器、12:プローブユニット、14:生体、16:上腕(生体)、18:皮膚、20:動脈血管、22:内皮機能検査装置、24:超音波プローブ、24a:第1短軸用超音波アレイ探触子、24b:第2短軸用超音波アレイ探触子、24c:長軸用超音波アレイ探触子、25:探触面、26:多軸駆動機構、27:駆動装置、28:電子制御装置、30:画像表示装置、32:超音波駆動制御回路、34:3軸駆動モータ制御回路、36:基台、37:押圧アクチュエータ(生体圧迫装置)、38:ユニット固定具、40:第1アーム、42、:第2アーム、44:自在アーム、58:空気ポンプ、60:圧力制御弁、62:カフ、64:圧力センサ、70:内皮、80:超音波駆動制御部、82:検波処理部、84:超音波信号処理部、86:3軸駆動モータ制御部、88:カフ圧制御部、90:血管状態評価部、92:表示制御部、94:筋肉組織領域画像生成部は、96:学習済モデル部、98:筋肉組織領域画像合成部、G1:第1短軸画像表示領域、G2:第2短軸画像表示領域、G3:長軸画像表示領域、L:内膜、L:中膜、L:外膜 、KN:筋肉組織、GKN:筋肉組織領域画像、LKN:曲線画像、LM:学習モデル、MLM:機械学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9