(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179344
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/44 20060101AFI20241219BHJP
F16H 3/091 20060101ALI20241219BHJP
F16D 41/067 20060101ALI20241219BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16H3/44
F16H3/091
F16D41/067
F16D41/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098108
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 圭
(72)【発明者】
【氏名】小野 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】塚田 善昭
(72)【発明者】
【氏名】大関 孝
(72)【発明者】
【氏名】岩上 寛
(72)【発明者】
【氏名】原田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】日木 豊
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EA25
3J528EB33
3J528EB73
3J528EB74
3J528EB75
3J528FC01
3J528FC13
3J528FC20
3J528FC23
3J528FC24
3J528FC25
3J528FC32
3J528FC59
3J528HA26
3J528HA40
3J528JA01
3J528JA02
3J528JA03
3J528JL02
3J528JL03
3J528JL04
(57)【要約】
【課題】小型化が可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置TM1は、断続機構20と変速機Tとを備える。変速機Tは、サンギヤSG2、キャリアPC2及びリングギヤRG2を備える第2遊星機構P2を含み、第1シャフト181と第2シャフト182との間で回転動力を変速する。キャリアPC2及びリングギヤRG2は、径方向において、第2シャフト182よりも外側に配置されるとともに、径方向視で、少なくとも一部が第2シャフト182と重なり合うよう配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断続機構と変速機とを備える動力伝達装置であって、
前記断続機構は、
第1回転体と第2回転体との間に配置される係合子と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部と、を有し、
前記操作部は、
前記係合子を動かす作動子と、該作動子を介して前記係合子を操作可能に、又は該作動子を介さず前記係合子を操作可能に設けられる操作子と、を有し、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、互いの回転軸線が一致するように、且つ、前記回転軸線に対する径方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記操作子は、
前記径方向に沿って進退移動可能に設けられる進退子と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる延在部と、を有し、
前記変速機は、
前記第1回転体、又は、前記第1回転体と一体的に回転する回転体からなる第1回転要素、
前記第1回転要素と回転伝達可能に設けられる第2回転要素、及び、前記第2回転要素と回転伝達可能に設けられる第3回転要素を有する変速部を有し、
前記第2回転要素及び前記第3回転要素は、
前記径方向において、前記第2回転体よりも外側に配置されるとともに、
前記径方向視で、少なくとも一部が前記第2回転体と重なり合うよう配置される、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力源の動力を変速する変速機と、動力の遮断及び接続を切り替える断続機構を備えた動力伝達装置が知られている。例えば、特許文献1には、このような動力伝達装置を電動義足などの継手装置に用いることが記載されている。特許文献1に記載の継手装置では、変速機が変速比の異なる2つの動力伝達経路を有し、立脚時と遊脚時で動力伝達経路を切り替えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動力伝達装置は、様々な装置に用いられるため小型であることが望まれる。
【0005】
本発明は、小型化が可能な動力伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
断続機構と変速機とを備える動力伝達装置であって、
前記断続機構は、
第1回転体と第2回転体との間に配置される係合子と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部と、を有し、
前記操作部は、
前記係合子を動かす作動子と、該作動子を介して前記係合子を操作可能に、又は該作動子を介さず前記係合子を操作可能に設けられる操作子と、を有し、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、互いの回転軸線が一致するように、且つ、前記回転軸線に対する径方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記操作子は、
前記径方向に沿って進退移動可能に設けられる進退子と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる延在部と、を有し、
前記変速機は、
前記第1回転体、又は、前記第1回転体と一体的に回転する回転体からなる第1回転要素、
前記第1回転要素と回転伝達可能に設けられる第2回転要素、及び、前記第2回転要素と回転伝達可能に設けられる第3回転要素を有する変速部を有し、
前記第2回転要素及び前記第3回転要素は、
前記径方向において、前記第2回転体よりも外側に配置されるとともに、
前記径方向視で、少なくとも一部が前記第2回転体と重なり合うよう配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型化が可能な動力伝達装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の動力伝達装置TM1の断面図である。
【
図5】第1断続機構210の断続部212がオフの状態を示す断面図である。
【
図6】第1断続機構210の断続部212がオンの状態を示す断面図である。
【
図7】動力伝達装置TM1の動作を示す図であり、(A)は、ニュートラル状態の動力伝達装置TM1を示す断面図、(B)は、高回転状態の動力伝達装置TM1を示す断面図、(C)は、高トルク状態の動力伝達装置TM1を示す断面図である。
【
図8】本発明の変形例1Aの動力伝達装置TM1aを示す断面図である。
【
図9】本発明の変形例1Bの動力伝達装置TM1bを示す断面図である。
【
図10】本発明の変形例1Cの動力伝達装置TM1cを示す断面図である。
【
図11】本発明の変形例1Dの動力伝達装置TM1dを示す断面図である。
【
図12】第2実施形態の動力伝達装置TM2の断面図である。
【
図13】動力伝達装置TM2の動作を示す図であり、(A)は、ニュートラル状態の動力伝達装置TM2を示す断面図、(B)は、高トルク状態の動力伝達装置TM2を示す断面図、(C)は、高回転状態の動力伝達装置TM2を示す断面図である。
【
図14】変形例2Aの動力伝達装置TM2aを示す断面図である。
【
図15】第3実施形態の動力伝達装置TM3の断面図である。
【
図16】動力伝達装置TM1を組み込んだ電動ドライバー810の概略図である。
【
図17】レバー816が取り付けられた電動ドライバー810の概略図である。
【
図18】動力伝達装置TM1dを組み込んだ手動ドライバー830の概略図である。
【
図19】動力伝達装置TM2aを組み込んだ魚釣用リール850の概略図である。
【
図20】動力伝達装置TM1dを組み込んだ風力発電機870の概略図である。
【
図21】動力伝達装置TM3を組み込んだ船外機890の概略図である。
【
図22】船外機890に設けられたエンジンE、動力伝達装置TM3、及びプロペラ894aを示す模式図である。
【
図23】動力伝達装置TM1又は動力伝達装置TM2を組み込んだ電動キックボード910の概略図である。
【
図24】電動キックボード910の前輪FWを変速可能に駆動するモータM及び動力伝達装置TM2を示す概略図である。
【
図25】電動キックボード910の前輪FWを変速可能に駆動するインホイールモータであるモータ916及び動力伝達装置TM1を示す概略図である。
【
図26】ドア開閉装置934がドア本体931の上方に配置された開き戸式自動ドア930の概略図である。
【
図27】自動ドア930を上方から見た概略図であり、(A)は閉状態を示し、(B)は開状態を示す。
【
図28】動力伝達装置TM2aの第2シャフト382がヒンジ軸931bに直接接続された自動ドア930を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態の動力伝達装置について図面を参照しながら説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1~
図3に示すように、動力伝達装置TM1は、同一の回転軸線(以下、回転軸線L1)を有する第1シャフト181及び第2シャフト182と、第1シャフト181と第2シャフト182との間に設けられる断続機構20及び変速機Tと、これらを収容するケース180と、を備える。ケース180は、略円柱形状を有し、軸受183を介して第1シャフト181を回転自在に支持し、軸受184を介して第2シャフト182を回転自在に支持する。第1シャフト181は、先端部がケース180の回転軸線方向の一端側(
図1の下方側)から露出し、第2シャフト182は、先端部がケース180の回転軸線方向の他端側(
図1の上方側)から露出する。
【0011】
変速機Tは、第1シャフト181から入力される動力を、第1変速比で第2シャフト182に伝達する第1動力伝達経路と、第1変速比とは異なる第2変速比で第2シャフト182に伝達する第2動力伝達経路と、を構成する。第1シャフト181から入力される動力は、例えばエンジンやモータ等の動力源によって発生する動力や、手動により加えられる動力である。以下で詳しく説明するが、変速機Tは、第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2を含む。第1動力伝達経路は、第1遊星機構P1を含み、第2動力伝達経路は、第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2を含む。
【0012】
断続機構20は、第1断続機構210及び第2断続機構220を含む。第1断続機構210及び第2断続機構220は、詳しくは後述するが、第1動力伝達経路における動力の遮断及び接続を切り替えるとともに、第2動力伝達経路における動力の遮断及び接続を切り替える。
【0013】
第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2は、サンギヤSG1、SG2と、リングギヤRG1、RG2と、サンギヤSG1、SG2及びリングギヤRG1、RG2と噛み合う複数のプラネタリギヤPG1、PG2と、プラネタリギヤPG1、PG2を自転かつ公転可能に支持するキャリアPC1、PC2と、を有し、サンギヤSG1、SG2、リングギヤRG1、RG2、及びキャリアPC1、PC2からなる3つの回転要素は、それらの回転数が速度共線図(共線図とも称す)において常時単一の直線上に並ぶ共線関係を満たす。
【0014】
第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2のサンギヤSG1、SG2、及びキャリアPC1、PC2は、第1シャフト181及び第2シャフト182と同一の回転軸線L1を有する。第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2は、回転軸線方向(
図1中の上下方向)に並んで配置される。第2遊星機構P2は、第2シャフト182よりも外側に配置されるとともに、径方向視で、少なくとも一部が第2シャフト182と重なり合うように配置される。本実施形態では、第1遊星機構P1が、第2遊星機構P2よりも下方に配置されており、第1遊星機構P1も第2シャフト182よりも外側に配置されるとともに、径方向視で、少なくとも一部が第2シャフト182と重なり合うように配置される。
【0015】
第1遊星機構P1のサンギヤSG1は、第1シャフト181と一体に形成される。なお、第1遊星機構P1のサンギヤSG1は、必ずしも第1シャフト181と一体に形成されている必要はなく、第1シャフト181と別体で第1シャフト181と一体回転可能に接続されていてもよい。これにより、第1シャフト181の回転動力が第1遊星機構P1に入力される。第1遊星機構P1のサンギヤSG1は、内側に配置される軸受185を介して第2シャフト182に相対回転自在に支持される。
【0016】
第1遊星機構P1のリングギヤRG1は、ケース180と一体に形成される。即ち、リングギヤRG1は、回転不能である。なお、第1遊星機構P1のリングギヤRG1は、必ずしもケース180と一体に形成されている必要はなく、ケース180と別体でケース180に回転不能に機械的に接続されていてもよい。
【0017】
これにより、第1遊星機構P1のキャリアPC1は、サンギヤSG1から入力された回転を減速して出力する。
【0018】
第1遊星機構P1のキャリアPC1は、第2遊星機構P2のサンギヤSG2と一体に形成される。本実施形態では、キャリアPC1と一体形成される筒部PC1aの外周部にサンギヤSG2を形成している。これにより、第1遊星機構P1で減速された回転動力を第2遊星機構P2に伝達できる。
【0019】
第2遊星機構P2のサンギヤSG2(筒部PC1a)は、第1断続機構210を介して第2シャフト182に接続される。即ち、本実施形態では、キャリアPC1と一体形成される筒部PC1aと、筒部PC1aの内周部に位置する第2シャフト182との間に、第1断続機構210が設けられる。これにより、第1遊星機構P1を含む第1動力伝達経路が形成される。
【0020】
第2遊星機構P2のリングギヤRG2は、ケース180と一体に形成される。即ち、リングギヤRG2は、回転不能である。なお、第2遊星機構P2のリングギヤRG2は、必ずしもケース180と一体に形成されている必要はなく、ケース180と別体でケース180に回転不能に機械的に接続されていてもよい。
【0021】
これにより、第2遊星機構P2のキャリアPC2は、サンギヤSG2から入力された回転を減速して出力する。
【0022】
第2遊星機構P2のキャリアPC2は、第2断続機構220を介して第2シャフト182に接続される。本実施形態では、キャリアPC2と一体形成される筒部PC2aと、筒部PC2aの内周部に位置する第2シャフト182との間に、第2断続機構220が設けられる。なお、筒部PC2aは、必ずしもキャリアPC2と一体に形成されている必要はなく、キャリアPC2と別体でキャリアPC2に一体回転可能に機械的に接続されていてもよい。
【0023】
このように構成された変速機Tでは、第1シャフト181から入力される動力を、第1遊星機構P1及び第1断続機構210を介して第2シャフト182へ伝達する第1動力伝達経路が形成されるとともに、第1遊星機構P1、第2遊星機構P2及び第2断続機構220を介して第2シャフト182へ伝達する第2動力伝達経路が形成される。
【0024】
第1断続機構210は、筒部PC1aと第2シャフト182との間に設けられる断続部212を備える。第2断続機構220は、筒部PC2aと第2シャフト182との間に設けられる断続部222を備える。以下、断続部212、222の詳細について、
図1~
図6を参照して説明する。
【0025】
各断続部212、222は、共通の構成を有しており、動力伝達経路を遮断する遮断状態と、動力伝達経路を接続する接続状態と、に切り替え可能に構成される。本実施形態の各断続部212、222は、強制フリー機能を備える二方向クラッチ280を用いて構成されている。二方向クラッチ280は、第2シャフト182の外周面部と筒部PC1a、PC2aの内周面部との間に配置される複数(本実施形態では3つ)のローラ281と、複数のローラ281を所定の間隔に保持するリテーナ282と、操作機構240と、第2シャフト182を径方向に貫通し、操作機構240によって強制フリー位置と強制フリー解除位置とに操作される複数(本実施形態では3つ)のピン283と、リテーナ282に設けられ、ピン283が強制フリー位置のとき第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置を規定する複数(本実施形態では3つ)のガイド284と、を備える。ローラ281は、ボールでもよく、スプラグでもよい。
【0026】
第2シャフト182の外周面部と筒部PC1a、PC2aの内周面部との径方向の間隔Aは、ローラ281の直径Bよりも小さい。また、第2シャフト182の外周部には、周方向に所定の間隔で平坦部182aが形成されており、平坦部182aの周方向中央側では、間隔Aが直径Bよりも大きい。
【0027】
つまり、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持される状態では、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及び筒部PC1a、PC2aの内周面部に噛み合わず(非係合状態)、第2シャフト182と筒部PC1a、PC2aとの相対回転が許容される(強制フリー状態:
図5参照)。
【0028】
一方、ローラ281が第2シャフト182に対する周方向の移動が許容される状態では、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及び筒部PC1a、PC2aの内周面部に噛み合い(係合状態)、第2シャフト182と筒部PC1a、PC2aとが二方向において一体回転可能に接続される(強制フリー解除状態:
図6参照)。
【0029】
図4に示すように、リテーナ282は、第2シャフト182及び筒部PC1a、PC2aに対して相対回転可能なリング形状であり、ローラ281を保持する複数のローラ保持部282aと、ガイド284を保持する複数のガイド保持部282bと、を有する。
【0030】
また、リテーナ282の外周面には、複数のゴム球282cが周方向に所定の間隔で埋設されている。これらのゴム球282cは、筒部PC1a、PC2aとリテーナ282との間に適度な摩擦を生じさせることで、強制フリー解除状態における意図しない空転を防止する。なお、筒部PC1a、PC2aとリテーナ282との間に摩擦を生じさせる部材は、ゴム球282cに限らず、Oリングであってもよい。
【0031】
図5に示すように、ピン283は、径方向外側の端部に円錐状の凸部283aを有し、ガイド284は、径方向内側の端面に凸部283aと嵌合(係合)する円錐状の凹部284aを有する。ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合すると、ピン283及びガイド284によるガイド作用によって、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が強制フリー状態となる所定の位置に位置決めされる。
【0032】
図1に戻って、操作機構240は、断続部212、222を断続操作可能に設けられる操作ロッド241と、操作ロッド241を直線移動させるサーボモータ242と、を備える。第2シャフト182は、回転軸線方向に延びる内部空間Sを有する中空軸であり、この内部空間Sに操作ロッド241が配置される。
【0033】
図7も参照して、操作ロッド241の外周部には、後述する小径部241b1、241b2及び大径部241c1~241c3が形成されており、ピン283の内径端部(内端)に当接する。操作ロッド241のポジションに応じて、小径部241b1、241b2及び大径部241c1~241c3がピン283を第2シャフト182の径方向に進退移動させたり、進退移動可能にさせたりすることで、断続部212、222の状態が切り替わる。
【0034】
より具体的に説明すると、
図7に示すように、操作ロッド241の外周部には、下方から順に、第1大径部241c1、第1小径部241b1、第2大径部241c2、第2小径部241b2、第3大径部241c3が所定の長さ及び間隔で形成されている。操作ロッド241は、2つの断続部212、222を同時に制御可能に設けられているが、断続部212、222ごとに別々に設けられていてもよい。
【0035】
図7に示すように、断続部212、222は、操作機構240によって強制フリー状態(以下、適宜オフ状態と称する)と強制フリー解除状態(以下、適宜オン状態と称する)とに切り替えられる。
【0036】
操作機構240の操作ロッド241は、
図7の(A)に示す下ポジションにあるとき、第2大径部241c2が断続部212のピン283を外径方向に押し出しつつ、第3大径部241c3が断続部222のピン283を外径方向に押し出すことで、断続部222及び断続部212をオフ状態とする。即ち、第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路が遮断状態となる。これにより、動力伝達装置TM1は、第1シャフト181から第2シャフト182への動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。
【0037】
また、操作機構240の操作ロッド241は、
図7の(B)に示す中ポジションにあるとき、第1小径部241b1が断続部212のピン283が内径方向に戻ることを許容しつつ、第3大径部241c3が断続部222のピン283を外径方向に押し出すことで、断続部212をオン状態、断続部222をオフ状態とする。即ち、第1動力伝達経路が接続状態となり、第2動力伝達経路が遮断状態となる。これにより、動力伝達装置TM1は、第1シャフト181の回転動力を第1動力伝達経路(第1遊星機構P1)で減速して第2シャフト182に伝達する高回転状態となる。
【0038】
また、操作機構240の操作ロッド241は、
図7の(C)に示す上ポジションにあるとき、第1大径部241c1が断続部212のピン283を外径方向に押し出しつつ、第2小径部241b2が断続部222のピン283が内径方向に戻ることを許容することで、断続部212をオフ状態、断続部222をオン状態とする。即ち、第1動力伝達経路が遮断状態となり、第2動力伝達経路が接続状態となる。これにより、動力伝達装置TM1は、第1シャフト181の回転動力を第2動力伝達経路(第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2)で減速して第2シャフト182に伝達する高トルク状態となる。
【0039】
なお、動力伝達装置TM1は、前述したニュートラル状態、高回転状態、及び高トルク状態の3つの状態に加えて、断続部222及び断続部212がオン状態であるロック状態となってもよい。具体的には、操作ロッド241の形状を変更し、断続部212、222の全てのピン283が内径方向に戻ることを許容してもよい。
【0040】
断続部212、222を構成する二方向クラッチ280では、ローラ281が係合子であり、操作ロッド241、ピン283、ガイド284、及びリテーナ282が、係合子(ローラ281)を係合状態と非係合状態とに操作する操作部に相当する。また、操作部を構成する要素のうち、ガイド284及びリテーナ282が、係合子(ローラ281)を動かす作動子であり、操作ロッド241及びピン283が作動子を操作可能に設けられる操作子に相当する。操作子は、作動子を介さず係合子(ローラ281)を操作可能であってもよい。作動子を構成する要素のうち、ピン283が径方向に沿って進退移動可能に設けられる進退子であり、操作ロッド241が、進退子(ピン283)を進退移動可能に設けられる延在部に相当する。
【0041】
このように、動力伝達装置TM1の変速機Tが、第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2を含むことで、小さいスペースで変速比を大きくできる。特に、第2動力伝達経路は、第2遊星機構P2に加えて、第1遊星機構P1も経由するので、効果的に変速比を大きくできる。
【0042】
また、第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2のキャリアPC1、PC2の回転軸線が、第1シャフト181及び第2シャフト182の回転軸線と一致するので、変速機Tを第1シャフト181及び第2シャフト182と同軸上に配置でき、動力伝達装置TM1を小型化できる。
【0043】
また、断続機構20は、第2シャフト182の内部空間Sに回転軸線方向に沿って配置される操作ロッド241を備え、操作ロッド241の移動制御に基づいて、第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路の遮断及び接続を行う。これにより、断続機構20を変速機Tの内側に集約し、動力伝達装置TM1をさらに小型化できる。
【0044】
また、本実施形態の動力伝達装置TM1では、第1動力伝達経路において第1断続機構210は第1遊星機構P1よりも下流側に配置され、第2動力伝達経路において第2断続機構220は第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2よりも下流側に配置される。これにより、下流側(第2シャフト182)から動力が入力された場合に、連れまわる部材を少なくできる。
【0045】
(変形例1A)
前述したように、第1実施形態の動力伝達装置TM1は、変速機Tとして2つの遊星機構P1、P2を備えるとともに、断続機構20として2つの断続機構210、220を備えており、断続機構210、220の制御に基づいて、ニュートラル状態、高回転状態及び高トルク状態への切り替えを行うものであった。一方、変形例1Aの動力伝達装置TM1aは、
図8に示すように、変速機Tとして1つの遊星機構P1を備えるとともに、断続機構20として1つの断続機構210を備えており、断続機構210の制御に基づいて、ニュートラル状態及び高回転状態への切り替えを行う点が第1実施形態の動力伝達装置TM1と相違している。このような変形例1Aによれば、動力伝達装置TM1aを、より小型で、かつ簡素に構成できる。
【0046】
(変形例1B)
図9に示すように、変形例1Bの動力伝達装置TM1bは、第2シャフト182を入力軸とし、第1シャフト181を出力軸とする点が第1実施形態の動力伝達装置TM1と相違している。変形例1Bの動力伝達装置TM1bを具体的に説明すると、第1遊星機構P1のサンギヤSG1は、第1断続機構210を介して第2シャフト182に接続される。第1遊星機構P1のキャリアPC1は、第2遊星機構P2のサンギヤSG2と一体に形成される。第2遊星機構P2のサンギヤSG2は、第2断続機構220を介して第2シャフト182に接続され、キャリアPC2は、第1シャフト181と一体に形成される。
【0047】
(変形例1C)
図10に示すように、変形例1Cの動力伝達装置TM1cは、変速機Tとして3つの遊星機構P1、P2、P3と、断続機構20として3つの断続機構210、220、230と、を備えており、ニュートラル状態と、3段階の変速状態(1速状態(高トルク状態)、2速状態(中回転・中トルク状態)、3速状態(高回転状態))とを備える点が第1実施形態の動力伝達装置TM1と相違している。
【0048】
具体的に説明すると、第1実施形態の動力伝達装置TM1に加えて、さらに第2遊星機構P2の上方に、第3遊星機構P3が配置される。第3遊星機構P3は、サンギヤSG3と、リングギヤRG3と、サンギヤSG3及びリングギヤRG3と噛み合う複数のプラネタリギヤPG3と、プラネタリギヤPG3を自転かつ公転可能に支持するキャリアPC3と、を有し、サンギヤSG3、リングギヤRG3、及びキャリアPC3からなる3つの回転要素は、それらの回転数が共線図において常時単一の直線上に並ぶ共線関係を満たす。
【0049】
第2遊星機構P2のキャリアPC2は、第3遊星機構P3のサンギヤSG3と一体に形成される。本実施形態では、キャリアPC2と一体形成される筒部PC2aの外周部にサンギヤSG3を形成している。これにより、第2遊星機構P2で減速された回転動力を第3遊星機構P3に伝達できる。
【0050】
第3遊星機構P3のサンギヤSG3(筒部PC2a)は、第2断続機構220を介して第2シャフト182に接続される。これにより、第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2を含む第2動力伝達経路が形成される点は第1実施形態のTM1と同様である。
【0051】
第3遊星機構P3のリングギヤRG3は、ケース180と一体に形成される。即ち、リングギヤRG3は、回転不能である。なお、第3遊星機構P3のリングギヤRG3は、必ずしもケース180と一体に形成されている必要はなく、ケース180と別体でケース180に回転不能に固定されていてもよい。
【0052】
これにより、第3遊星機構P3のキャリアPC3は、サンギヤSG3から入力された回転を減速して出力する。
【0053】
第3遊星機構P3のキャリアPC3は、第3断続機構230を介して第2シャフト182に接続される。本実施形態では、キャリアPC3と一体形成される筒部PC3aと、筒部PC3aの内周部に位置する第2シャフト182との間に、第3断続機構230が設けられる。
【0054】
このように構成された変速機Tでは、第1シャフト181から入力される動力源の動力を、第1遊星機構P1及び第1断続機構210を介して第2シャフト182へ伝達する第1動力伝達経路が形成され、第1遊星機構P1、第2遊星機構P2及び第2断続機構220を介して第2シャフト182へ伝達する第2動力伝達経路が形成され、第1遊星機構P1、第2遊星機構P2、第3遊星機構P3及び第3断続機構230を介して第2シャフト182へ伝達する第3動力伝達経路が形成される。
【0055】
第3断続機構230は、筒部PC3aと第2シャフト182との間に設けられる断続部232を備える。断続部232の構成は、断続部212、222と同様である。
【0056】
変形例1Cの動力伝達装置TM1cでは、断続部212、断続部222、及び断続部232をオフ状態にすると、第1~第3動力伝達経路が遮断状態となり、第1シャフト181から第2シャフト182への動力伝達が遮断されるニュートラル状態となる。
【0057】
また、断続部212をオン状態で、かつ断続部222及び断続部232をオフ状態にすると、第1動力伝達経路が接続状態となり、第2動力伝達経路及び第3動力伝達経路が遮断状態となり、第1シャフト181の回転動力を第1動力伝達経路(第1遊星機構P1)で減速して第2シャフト182に伝達する3速状態(高回転状態)となる。
【0058】
また、断続部222をオン状態で、かつ断続部212及び断続部232をオフ状態にすると、第2動力伝達経路が接続状態となり、第1動力伝達経路及び第3動力伝達経路が遮断状態となり、第1シャフト181の回転動力を第2動力伝達経路(第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2)で減速して第2シャフト182に伝達する2速状態(中回転・中トルク状態)となる。
【0059】
また、断続部232をオン状態で、かつ断続部212及び断続部222をオフ状態にすると、第3動力伝達経路が接続状態となり、第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路が遮断状態となり、第1シャフト181の回転動力を第3動力伝達経路(第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2及び第3遊星機構P3)で減速して第2シャフト182に伝達する1速状態(高トルク状態)となる。このように変形例1Cの動力伝達装置TM1cによれば、第1実施形態の動力伝達装置TM1に、1組の遊星機構(第3遊星機構P3)及び断続機構(第3断続機構230)を増やすことで、変速段を1段追加することができる。これに従って、動力伝達装置TM1cの変速段数を、4段以上にしてもよい。
【0060】
(変形例1D)
図11に示すように、変形例1Dの動力伝達装置TM1dは、変形例1Cの動力伝達装置TM1cと同様に3つの遊星機構を有するが、最も入力側に配置される第1遊星機構の構成が変形例1Cと相違している。変形例1Dの第1遊星機構P1xは、第1シャフト181に入力された回転を増速して第2シャフト182に出力可能な点で、変形例1Cの第1遊星機構P1と相違している。以下では、変形例1Cと相違する第1遊星機構P1xについて主に説明し、変形例1Cと同様の構成については適宜説明を省略する。
【0061】
具体的に説明すると、第1遊星機構P1xは、第1シャフト181と一体回転するキャリアPC1xと、キャリアPC1xにより自転かつ公転可能に支持される複数のプラネタリギヤPG1xと、プラネタリギヤPG1xと噛み合うリングギヤRG1xと、プラネタリギヤPG1xと噛み合うサンギヤSG1xと、を有し、サンギヤSG1x、リングギヤRG1x、及びキャリアPC1xからなる3つの回転要素は、それらの回転数が共線図において常時単一の直線上に並ぶ共線関係を満たす。
【0062】
第1遊星機構P1xのキャリアPC1xは、第1シャフト181と一体に形成される。なお、キャリアPC1xは、必ずしも第1シャフト181と一体に形成されている必要はなく、第1シャフト181と別体で第1シャフト181と一体回転可能に接続されていてもよい。
【0063】
第1遊星機構P1xのリングギヤRG1xは、ケース180と一体に形成される。即ち、リングギヤRG1xは、回転不能である。なお、第1遊星機構P1xのリングギヤRG1xは、必ずしもケース180と一体に形成されている必要はなく、ケース180と別体でケース180に回転不能に機械的に接続されていてもよい。
【0064】
これにより、第1遊星機構P1xのサンギヤSG1xは、キャリアPC1xから入力された回転を増速して出力する。
【0065】
サンギヤSG1xは、第2遊星機構P2のサンギヤSG2と一体に形成され、即ち、サンギヤSG1xの出力は、サンギヤSG2の入力に等しい。サンギヤSG1xとサンギヤSG2とが一体に形成されるので、第1遊星機構P1xで増速された回転動力を第2遊星機構P2に伝達できる。また、サンギヤSG1xは、内側に配置される軸受185を介して第2シャフト182に相対回転自在に支持される。
【0066】
第2遊星機構P2のサンギヤSG2、及びサンギヤSG2と一体に形成された第1遊星機構P1xのサンギヤSG1xは、第1断続機構210を介して第2シャフト182に接続される。即ち、変形例1Dでは、サンギヤSG2、SG1xと、サンギヤSG2、SG1xの内周部に位置する第2シャフト182との間に、第1断続機構210が設けられる。
【0067】
このように構成された変速機Tでは、第1シャフト181から入力される動力を、第1遊星機構P1x及び第1断続機構210を介して第2シャフト182へ伝達する第1動力伝達経路が形成される。また、前述の変形例1Cと同様に、変速機Tでは、第1遊星機構P1x、第2遊星機構P2及び第2断続機構220を介して第2シャフト182へ伝達する第2動力伝達経路が形成され、第1遊星機構P1x、第2遊星機構P2、第3遊星機構P3及び第3断続機構230を介して第2シャフト182へ伝達する第3動力伝達経路が形成される。
【0068】
変形例1Dの動力伝達装置TM1dでは、断続部212、断続部222、及び断続部232をオフ状態にすると、第1~第3動力伝達経路が遮断状態となり、第1シャフト181から第2シャフト182への動力伝達が遮断されるニュートラル状態となる。
【0069】
また、断続部212をオン状態で、かつ断続部222及び断続部232をオフ状態にすると、第1動力伝達経路が接続状態となり、第2動力伝達経路及び第3動力伝達経路が遮断状態となる。これにより、第1シャフト181の回転動力を第1動力伝達経路(第1遊星機構P1x)で増速して第2シャフト182に伝達する3速状態(高回転状態)となる。
【0070】
また、断続部222をオン状態で、かつ断続部212及び断続部232をオフ状態にすると、第2動力伝達経路が接続状態となり、第1動力伝達経路及び第3動力伝達経路が遮断状態となる。第2動力伝達経路では、第1シャフト181の回転動力は第1遊星機構P1xにより増速され、第2遊星機構P2により減速される。サンギヤSG2、SG1xのギヤ数が互いに等しく、且つ、リングギヤRG1x、RG2のギヤ数が互いに等しい場合、第1シャフト181の回転動力を第2動力伝達経路で等速に第2シャフト182に伝達する2速状態(中回転・中トルク状態)となる。
【0071】
また、断続部232をオン状態で、かつ断続部212及び断続部222をオフ状態にすると、第3動力伝達経路が接続状態となり、第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路が遮断状態となる。第3動力伝達経路では、第1シャフト181の回転動力は第1遊星機構P1xにより増速され、第2遊星機構P2により減速され、第3遊星機構P3によりさらに減速される。これにより、第1シャフト181の回転動力を第3動力伝達経路で減速して第2シャフト182に伝達する1速状態(高トルク状態)となる。
【0072】
[第2実施形態]
第2実施形態の動力伝達装置TM2は、
図12に示すように、回転動力が入力される第1シャフト381と、第1シャフト381の回転軸線L2と平行且つ径方向にずれた位置に回転軸線L3を有する第2シャフト382と、第1シャフト381と第2シャフト382との間に設けられる断続機構20及び変速機Tと、を備える。断続機構20は、第1実施形態と同様の構成であり、第1断続機構210及び第2断続機構220を備える。
【0073】
第2実施形態の変速機Tは、第1実施形態の第1遊星機構P1及び第2遊星機構P2とは異なる第1変速機構T1及び第2変速機構T2を備える。変速機Tは、第1シャフト381から入力される動力を、第1変速比で第2シャフト382に伝達する第1動力伝達経路と、第1変速比とは異なる第2変速比で第2シャフト382に伝達する第2動力伝達経路と、を構成する。
【0074】
第1変速機構T1は、互いに噛み合う第1駆動ギヤ383及び第1従動ギヤ384を備える。第1駆動ギヤ383は、第1シャフト381に一体回転可能に支持され、第1従動ギヤ384は、第2シャフト382に相対回転可能に支持されている。本実施形態では、第1変速機構T1は、第1駆動ギヤ383を第1従動ギヤ384よりも大径とした増速伝達機構である。
【0075】
第1断続機構210は、第1従動ギヤ384と第2シャフト382との間に設けられた断続部212を備える。第2実施形態の断続部212は、第1実施形態の断続部212と共通の構成を有するので、説明は省略する。第1変速機構T1は、第1断続機構210の断続部212によって、動力伝達経路を遮断する遮断状態と動力伝達経路を接続する接続状態とが切り替えられる。
【0076】
第2変速機構T2は、互いに噛み合う第2駆動ギヤ385及び第2従動ギヤ386を備える。第2駆動ギヤ385は、第1シャフト381に一体回転可能に支持され、第2従動ギヤ386は、第2シャフト382に相対回転可能に支持されている。本実施形態では、第2変速機構T2は、第2駆動ギヤ385を第2従動ギヤ386よりも小径とした減速伝達機構である。
【0077】
第2断続機構220は、第2従動ギヤ386と第2シャフト382との間に設けられた断続部222を備える。第2実施形態の断続部222は、第1実施形態の断続部222と共通の構成を有するので、説明は省略する。第2変速機構T2は、第2断続機構220の断続部222によって、動力伝達経路を遮断する遮断状態と動力伝達経路を接続する接続状態とが切り替えられる。
【0078】
このように構成された変速機Tでは、第1シャフト381から入力される動力を、第1変速機構T1及び第1断続機構210を介して第2シャフト382へ伝達する第1動力伝達機構が形成され、第2変速機構T2及び第2断続機構220を介して第2シャフト382へ伝達する第2動力伝達機構が形成される。
【0079】
操作機構240の操作ロッド241は、
図13の(A)に示す上ポジションにあるとき、第1大径部241c1が断続部212のピン283を外径方向に押し出しつつ、第2大径部241c2が断続部222のピン283を外径方向に押し出すことで、断続部222及び断続部212をオフ状態とする。即ち、第1動力伝達経路及び第2動力伝達経路が遮断状態となる。これにより、動力伝達装置TM2は、第1シャフト381から第2シャフト382への動力伝達を遮断するニュートラル状態となる。
【0080】
また、操作機構240の操作ロッド241は、
図13の(B)に示す中ポジションにあるとき、第1大径部241c1が断続部212のピン283を外径方向に押し出しつつ、第2小径部241b2が断続部222のピン283が内径方向に戻ることを許容することで、断続部212をオフ状態、断続部222をオン状態とする。即ち、第2動力伝達経路が接続状態となり、第1動力伝達経路が遮断状態となる。これにより、動力伝達装置TM2は、第1シャフト381の回転動力を第2動力伝達経路(第2変速機構T2)で減速して第2シャフト382に伝達する高トルク状態となる。
【0081】
また、操作機構240の操作ロッド241は、
図13の(C)に示す下ポジションにあるとき、第1小径部241b1が断続部212のピン283が内径方向に戻ることを許容しつつ、第3大径部241c3が断続部222のピン283を外径方向に押し出すことで、断続部212をオン状態、断続部222をオフ状態とする。即ち、第1動力伝達経路が接続状態となり、第2動力伝達経路が遮断状態となる。これにより、動力伝達装置TM2は、第1シャフト381の回転動力を第1動力伝達経路(第1変速機構T1)で増速して第2シャフト382に伝達する高回転状態となる。
【0082】
(変形例2A)
図14に示すように、変形例2Aの動力伝達装置TM2aは、第2実施形態の動力伝達装置TM2の構成に加えて、第2シャフト382を回転不能にするロック機構400をさらに備える。また、動力伝達装置TM2aは、ロック機構400を接続状態又は遮断状態に切り替える第3断続機構230をさらに備える。
【0083】
ロック機構400は、例えば変速機Tを収容するケースに設けられた固定ギヤ(不図示)と、固定ギヤに噛み合うロックギヤ402と、を有する。固定ギヤは、ケースと一体に形成されていてもよく、別体でケースに固定されていてもよい。ロックギヤ402は、第2シャフト382に相対回転可能に支持されている。ロック機構400は、
図14に示す一例では、第2変速機構T2の第2駆動ギヤ385の上方に配置されるが、第2駆動ギヤ385と第1駆動ギヤ383の間に配置されてもよいし、第1駆動ギヤ383の下方に配置されてもよい。
【0084】
第3断続機構230は、ロックギヤ402と第2シャフト382との間に設けられた断続部232を備える。変形例2Aの断続部232は、第1実施形態の変形例1Cの断続部232と共通の構成を有するので、説明は省略する。
図14に示すように、操作ロッド241の第2大径部241c2及び第1大径部241c1が断続部212、222のピン283を外径方向に押し出しつつ、第3大径部241c3よりも上方に位置する第3小径部241b3が断続部232のピン283が内径方向に戻ることを許容することで、断続部212、222をオフ状態、断続部232をオン状態とする。これにより、固定ギヤ及びロックギヤ402が噛み合い、動力伝達装置TM2aがロック状態となり、即ち、第2シャフト182とロックギヤ402とが二方向において相対回転不能に固定される。
【0085】
なお、前述したロック機構400は、固定ギヤとロックギヤ402との噛み合いにより動力伝達装置TM2aがロック状態となる構成を説明したが、これに限られない。例えば、ロック機構400は、ギヤの噛み合いではなく、セレーションやスプライン、その他の回り止め構造によって、第2シャフト382が回転不能となる構成であってもよい。
【0086】
また、ロック機構400は、固定ギヤ及びロックギヤ402を有する構成に限られない。例えば、第3断続機構230のローラ281が第2シャフト382の外周面部とケースの内面との間に噛み合うことで、第2シャフト382が回転不能となる構成であってもよい。
【0087】
[第3実施形態]
第3実施形態の動力伝達装置TM3は、動力が入力される第1シャフト581と、第1シャフト581の回転軸L4と平行且つ径方向にずれた位置に回転軸線L5を有する第2シャフト582と、第1シャフト581と第2シャフト582との間に設けられる断続機構20及び変速機Tと、変速機Tに設けられる逆転機構600と、を備える。
【0088】
第3実施形態の変速機Tは、第1変速機構T31、第2変速機構T32、及び第3変速機構T33を備える。変速機Tは、第1シャフト581から入力される動力を、第1変速比で第2シャフト582に伝達する第1動力伝達経路と、第1変速比とは異なる第2変速比で第2シャフト582に伝達する第2動力伝達経路と、第1変速比及び第2変速比とは異なる第3変速比で第2シャフト582に伝達する第3動力伝達経路と、を構成する。
【0089】
第1変速機構T31は、互いに噛み合う第1駆動ギヤ583及び第1従動ギヤ584を有する。第1駆動ギヤ583は、第1シャフト581に相対回転可能に支持され、第1従動ギヤ584は、第2シャフト582に一体回転可能に支持されている。第1変速機構T31は、第1シャフト581から入力される動力を第1変速比で第2シャフト582に伝達する。本実施形態では、第1変速機構T31は、第1駆動ギヤ583を第1従動ギヤ584よりも小径とした減速伝達機構である。これにより、動力伝達装置TM3は、第1シャフト581の回転動力を第1動力伝達経路(第1変速機構T1)で減速して第2シャフト582に伝達する高トルク状態となる。
【0090】
第2変速機構T32は、互いに噛み合う第2駆動ギヤ585及び第2従動ギヤ586を有する。第2駆動ギヤ585は、第1シャフト581に相対回転可能に支持され、第2従動ギヤ586は、第2シャフト582に一体回転可能に支持されている。第2変速機構T32は、第1シャフト581から入力される動力を第2変速比で第2シャフト582に伝達する。本実施形態では、第2変速機構T32は、第2駆動ギヤ585を第2従動ギヤ586よりも大径とした増速伝達機構である。これにより、動力伝達装置TM3は、第1シャフト581の回転動力を第2動力伝達経路(第2変速機構T2)で増速して第2シャフト582に伝達する中回転・中トルク状態となる。
【0091】
第3変速機構T33は、互いに噛み合う第3駆動ギヤ587及び第3従動ギヤ588を有する。第3駆動ギヤ587は、第1シャフト581に相対回転可能に支持され、第3従動ギヤ588は、第2シャフト582に一体回転可能に支持されている。第3変速機構T33は、第1シャフト581から入力される動力を、第3変速比で第2シャフト582に伝達する。本実施形態では、第3変速機構T33は、第3駆動ギヤ587を第3従動ギヤ588よりも大径とした増速伝達機構であり、第3駆動ギヤ587は第2駆動ギヤ585よりも大径である。これにより、動力伝達装置TM3は、第1シャフト581の回転動力を第3動力伝達経路(第3変速機構T33)で増速して第2シャフト582に伝達する高回転状態となる。
【0092】
逆転機構600は、第1シャフト581に相対回転可能に支持される駆動ギヤ601と、駆動ギヤ601及び第1駆動ギヤ583の対向部にそれぞれ設けられるサイドギヤ602、603と、サイドギヤ602、603に常時噛み合う複数のピニオンギヤ604と、を備える。複数のピニオンギヤ604は、例えば動力伝達装置TM3を収容するケース(不図示)に、自転可能且つ公転不能に支持される。このような逆転機構600によれば、第1シャフト581と共に駆動ギヤ601が回転するとき、サイドギヤ602、603及びピニオンギヤ604を介して第1変速機構T31の第1駆動ギヤ583を駆動ギヤ601とは異なる方向に回転させる。
【0093】
具体的に説明すると、
図15に示すように後述する第4断続機構640が接続状態であるとき、エンジンEからの入力により第1シャフト581が一方向に回転すると、駆動ギヤ601も第1シャフト581と一体に一方向に回転する。駆動ギヤ601の回転動力は、駆動ギヤ601と噛み合うサイドギヤ602、サイドギヤ602と噛み合うピニオンギヤ604、及びピニオンギヤ604と第1駆動ギヤ583と噛み合うサイドギヤ603を介して第1駆動ギヤ583に伝達されるが、このとき、第1駆動ギヤ583はサイドギヤ602、603及びピニオンギヤ604が設けられていることにより他方向に回転する。これにより、第4断続機構640が接続状態であるときに逆転機構600及び第1変速機構T31を介して第2シャフト582が回転する方向と、第1断続機構210が接続状態であるときに第1変速機構T31を介して第2シャフト582が回転する方向とを異ならせることができる。
【0094】
断続機構20は、第1実施形態の変形例1Cと同様に、第1断続機構210、第2断続機構220、及び第3断続機構230を備え、さらに第4断続機構640を備える。第1断続機構210は、第1駆動ギヤ583と第1シャフト581との間に設けられた断続部212を備える。第2断続機構220は、第2駆動ギヤ585と第1シャフト581との間に設けられた断続部222を備える。第3断続機構230は、第3駆動ギヤ587と第1シャフト581との間に設けられた断続部232を備える。第4断続機構640は、駆動ギヤ601と第1シャフト581との間に設けられた断続部642を備える。断続部642は、断続部212、222、232と共通の構成を有するので、説明は省略する。
【0095】
第1断続機構210は、第1変速機構T31の動力の遮断及び接続を切り替える。第2断続機構220は、第2変速機構T32の動力の遮断及び接続を切り替える。第3断続機構230は、第3変速機構T33の動力の遮断及び接続を切り替える。第4断続機構640は、逆転機構600の動力の遮断及び接続を切り替える。
【0096】
このように構成される動力伝達装置TM3によると、第1変速機構T31、第2変速機構T32、及び第3変速機構T33のいずれかを接続状態とした場合に第2シャフト582が回転する方向と、逆転機構600を接続状態とした場合に第2シャフト582が回転する方向と、を異ならせることができる。
【0097】
なお、本実施形態では、逆転機構600を第1駆動ギヤ583と噛み合うように配置したがこれに限られない。例えば、逆転機構600を第2駆動ギヤ585と噛み合うように配置してもよいし、第3駆動ギヤ587と噛み合うように配置してもよい。
【0098】
以下では、前述した各実施形態及び各変形例のいずれかの動力伝達装置の適用例を具体的に説明する。
【0099】
[第1適用例]
第1実施形態の動力伝達装置TM1が組み込まれた電動ドライバー810について、
図16を参照して説明する。
【0100】
電動ドライバー810は、バッテリBと、バッテリBからの電力により回転動力を出力するモータMと、モータMの回転動力を伝達する動力伝達装置TM1と、先端工具815が取り付けられ、動力伝達装置TM1を介して伝達されたモータMの動力により回転するアタッチメント部材813と、動力伝達装置TM1の変速機Tの変速状態を切り替える変速スイッチ814と、モータM及び動力伝達装置TM1を収容する本体部811と、バッテリBを収容し、使用者が把持する部分である把持部812と、を備える。
【0101】
モータMは、例えば、筒形状の出力軸170を有する中空の回転電機である。出力軸170の一端は、動力伝達装置TM1の第1シャフト181に一体回転可能に接続される。また、出力軸170の内側空間には、動力伝達装置TM1の操作ロッド241が挿通され、挿通出口側に設けられるサーボモータ242により移動制御される。モータMは、把持部812に設けられた駆動スイッチ812aを使用者が操作することにより駆動する。
【0102】
アタッチメント部材813は、一端が動力伝達装置TM1の第2シャフト182に一体回転可能に接続される。また、アタッチメント部材813の他端には、先端工具815が着脱可能に取り付けられる。
【0103】
変速スイッチ814は、動力伝達装置TM1が高回転状態(即ち、断続部212がオン状態且つ断続部222がオフ状態)又は高トルク状態(即ち、断続部212がオフ状態且つ断続部222がオン状態)となるように切り替える。具体的には、使用者が本体部811に設けられた変速スイッチ814を操作することにより、動力伝達装置TM1のサーボモータ242が駆動して操作ロッド241が移動し、高回転状態又は高トルク状態に切り替わる。
【0104】
このように構成される電動ドライバー810は、変速可能に先端工具815を回転させることができる。例えばネジ等を締める際に大きな力を必要とする場合には動力伝達装置TM1を高トルク状態とし、大きな力を必要としない場合には動力伝達装置TM1を高回転状態とすることができる。このように、利便性の高い電動ドライバー810を提供することができる。また、動力伝達装置TM1の断続機構20は、二方向クラッチ280を用いて構成されるので、電動ドライバー810は、例えばネジ等を締める操作及び緩める操作のいずれも変速可能に行うことができる。
【0105】
また、モータMが中空であるので、アタッチメント部材813、動力伝達装置TM1、モータM及び操作ロッド241を同軸(具体的には回転軸線L1)上に配置できるので、これらを本体部811にコンパクトに収容できる。
【0106】
なお、第1適用例として、第1実施形態の動力伝達装置TM1が組み込まれた電動ドライバー810を一例に説明したが、電動ドライバー810には、他の実施形態や各変形例の動力伝達装置が組み込まれてもよい。
【0107】
例えば、電動ドライバー810に第2実施形態の変形例2Aの動力伝達装置TM2aを組み込んだ場合、電動ドライバー810は、動力伝達装置TM2aをロック状態、即ち、第2シャフト182に取り付けられた先端工具815が回転不能な状態とすることができる。
図17に示す電動ドライバー810には、本体部811に設けられた回動部816a回りに回動可能なレバー816が設けられている。レバー816は、把持部812と重なる位置から回動部816a回りに180度回転して固定された状態となる。この状態において、動力伝達装置TM2aがロック状態である場合、レバー816を把持部812と重なる位置から回動部816a回りに180度回転させることで、電動ドライバー810をT型レンチとして使用することもできる。よって、使用者により高トルクでネジ等を締め込むことができる。
【0108】
[第2適用例]
第1実施形態の変形例1Dの動力伝達装置TM1dが組み込まれた手動ドライバー830について、
図18を参照して説明する。
【0109】
手動ドライバー830は、先端831aにネジ溝に応じた形状を有するドライバーシャフト831と、ドライバーシャフト831の基端831bに取り付けられ、使用者が把持する部分である把持部832と、把持部832の内部に設けられ、ドライバーシャフト831に接続される動力伝達装置TM1dと、動力伝達装置TM1dに回転動力を入力する入力部833と、動力伝達装置TM1dの変速状態を切り替える変速切替部834と、を備える。
【0110】
ドライバーシャフト831は、動力伝達装置TM1dの第2シャフト182に一体回転可能に接続され、入力部833は、動力伝達装置TM1dの第1シャフト181に一体回転可能に接続される。入力部833を把持部832に対して回転させて動力伝達装置TM1dに回転動力を入力すると、ドライバーシャフト831は、動力伝達装置TM1dを介して入力部833から伝達された回転動力により回転する。
【0111】
変速切替部834は、動力伝達装置TM1dの操作ロッド241の端部に設けられており、入力部833から突出して設けられている。変速切替部834を操作することにより、操作ロッド241が進退方向に移動し、動力伝達装置TM1dの変速状態(高回転状態、中回転・中トルク状態、高トルク状態)を切り替えることができる。
【0112】
このように構成される手動ドライバー830によると、例えば、使用者が一方の手で把持部832を把持し、他方の手で入力部833を回転させることにより、ドライバーシャフト831を変速可能に回転させることができる。例えばネジ等を締める操作の際に大きな力を必要とする場合には動力伝達装置TM1dを高トルク状態とし、大きな力を必要としない場合には動力伝達装置TM1dを高回転状態又は中回転・中トルク状態とする。このような構成により、利便性の高い手動ドライバー830を提供することができる。
【0113】
また、動力伝達装置TM1dの断続機構20は、二方向クラッチ280を用いて構成されるので、手動ドライバー830は、例えばネジ等を締める操作及び緩める操作のいずれも変速可能に行うことができる。
【0114】
なお、第2適用例として、第1実施形態の変形例1Dの動力伝達装置TM1dが組み込まれた手動ドライバー830を一例に説明したが、手動ドライバー830には、他の実施形態や他の変形例の動力伝達装置が組み込まれてもよい。
【0115】
[第3適用例]
第2実施形態の変形例2Aの動力伝達装置TM2aが組み込まれた魚釣用リール850(以下、単にリール850とも称す)について、
図19を参照して説明する。
【0116】
リール850は、釣竿859に装着可能な本体部851と、本体部851に回転可能に支持され、不図示の釣糸が巻かれるスプール852と、スプール852に接続される動力伝達装置TM2aと、動力伝達装置TM2aに回転動力を入力するハンドル854と、動力伝達装置TM2aの状態(高回転状態、高トルク状態、ニュートラル状態、ロック状態)を切り替える変速切替部855と、を備える。
【0117】
スプール852は、釣竿859が延びる方向と交差する方向に延びるスプールシャフト852aを有し、スプールシャフト852aが動力伝達装置TM2aの第2シャフト382に一体回転可能に接続されている。
【0118】
ハンドル854は、動力伝達装置TM2aの第1シャフト381に一体回転可能に接続されたハンドルアーム854aと、ハンドルアーム854aの先端に固定されたノブ軸854bと、ノブ軸854bに相対回転可能に接続されたハンドルノブ854cと、を有する。
【0119】
変速切替部855は、動力伝達装置TM2aの操作ロッド241の端部に設けられており、例えば使用者が変速切替部855を手動で移動操作することにより、操作ロッド241が進退方向に移動し、動力伝達装置TM2aの状態を切り替えることができる。なお、変速切替部855は前述したサーボモータ242を備え、サーボモータ242により変速状態を切り替える構成であってもよい。
【0120】
このように構成されるリール850によると、使用者がハンドル854を第1シャフト381回りに一方向に回転させると、ハンドル854の回転動力が動力伝達装置TM2aを介してスプール852に伝達され、釣糸を巻き取る方向にスプール852を変速可能に回転させることができる。例えば、使用者は、釣糸を速く巻き取る場合には動力伝達装置TM2aを高回転状態とし、魚を引き上げるために大きな力を必要とする場合には動力伝達装置TM2aを高トルク状態とし、釣糸を送り出す方向にスプール852を回転させる場合には動力伝達装置TM2aをニュートラル状態とし、スプール852を回転させない場合には動力伝達装置TM2aをロック状態とする。
【0121】
なお、リール850は動力伝達装置TM2aの第1シャフト381に回転動力を入力可能なモータをさらに備えてもよい。リール850は、例えばクラッチを用いて、第1シャフト381にハンドル854又はモータから回転動力を選択的に入力可能な構成であってもよい。
【0122】
また、第3適用例として、第2実施形態の変形例2Aの動力伝達装置TM2aが組み込まれたリール850を一例に説明したが、リール850には、他の実施形態や他の変形例の動力伝達装置が組み込まれてもよい。
【0123】
[第4適用例]
第1実施形態の変形例1Dの動力伝達装置TM1dが組み込まれた風力発電機870について、
図20を参照して説明する。
【0124】
風力発電機870は、風力エネルギーを回転運動エネルギーに変換するブレード871と、ブレード871からの回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換して発電を行う発電機Gと、ブレード871及び発電機Gの間に配置される動力伝達装置TM1dと、を備える。
【0125】
発電機Gは、筒形状の出力軸171を有する。出力軸171の内側空間には、動力伝達装置TM1dの操作ロッド241が挿通され、挿通出口側に設けられるサーボモータ242により移動制御される。
【0126】
ブレード871は、動力伝達装置TM1dの第1シャフト181に一体回転可能に接続され、発電機Gの出力軸171は、動力伝達装置TM1dの第2シャフト182に一体回転可能に接続される。風力エネルギーによりブレード871が回転すると、第1シャフト181から回転動力が入力され、変速機Tを介して第2シャフト182に出力される。これにより、第2シャフト182に接続された発電機Gの出力軸171は回転し、発電機Gは発電を行う。
【0127】
例えば、風が弱い場合、動力伝達装置TM1dを高回転状態に切り替えることで、ブレード871の回転を増速させて、発電機Gの出力軸171に回転動力を伝達することができる。よって、風力発電機870の発電効率が向上する。
【0128】
一方、風が強い場合、動力伝達装置TM1dを高トルク状態に切り替えることで、ブレード871の回転を減速させて、発電機Gの出力軸171に回転動力を伝達することができる。
【0129】
なお、風力発電機870は、風量を測定する風量計をさらに備えてもよい。これにより、風量に応じて動力伝達装置TM1dの変速機Tの変速比を自動制御することができる。具体的には、風量に応じて動力伝達装置TM1dを高回転状態又は高トルク状態に自動で切り替えることができる。
【0130】
また、第4適用例として、第1実施形態の変形例1Dの動力伝達装置TM1dが組み込まれた風力発電機870を一例に説明したが、風力発電機870には、他の実施形態や他の変形例の動力伝達装置が組み込まれてもよい。
【0131】
[第5適用例]
第3実施形態の動力伝達装置TM3が組み込まれた船外機890について、
図21及び
図22を参照して説明する。
【0132】
図21に示すように、船外機890は、船外機本体891と、船外機本体891に組み付けられた舵取りのためのティラーハンドル892と、船外機本体891を船体899に取り付けるための取付ブラケット893と、を備える。船外機本体891は、推進用のプロペラ894aが取り付けられたプロペラシャフト894と、プロペラシャフト894を駆動する動力源の一例であるエンジンEと、プロペラシャフト894とエンジンEとの間に配置される動力伝達装置TM3と、を有する。船外機890は、船外機本体891のうちプロペラシャフト894及びプロペラ894aが設けられた部分が水中に位置し、エンジンE及び動力伝達装置TM3が設けられた部分は水面より上方に位置するようにして船体899に取り付けられる。
【0133】
エンジンEは、船外機本体891の上側部分に配置され、動力伝達装置TM3は、エンジンEの下方に配置されている。
【0134】
図22に示すように、動力伝達装置TM3の第1シャフト581は、上下方向に延設され、エンジンEから垂下した出力軸(不図示)に一体回転可能に接続されている。動力伝達装置TM3の第2シャフト582は、上下方向に延設され、下端に第1ベベルギヤ895が一体回転可能に設けられている。また、プロペラシャフト894は、第2シャフト582が延設される方向と交差する方向に延設されており、プロペラ894aとは反対側の端部に、第1ベベルギヤ895と噛み合う第2ベベルギヤ896が一体可能に設けられている。第2シャフト582の回転動力が第1ベベルギヤ895及び第2ベベルギヤ896を介してプロペラシャフト894に伝達される。これにより、プロペラ894aが回転し、船体899を前進又は後進方向に移動させる推進力が働く。
【0135】
第1変速機構T31、第2変速機構T32、及び第3変速機構T33のいずれかを接続状態とした場合、プロペラ894aは、エンジンEで発生した動力が動力伝達装置TM3、第1ベベルギヤ895及び第2ベベルギヤ896を介して、前進方向の推進力が働くように回転する。一方、逆転機構600を接続状態とした場合(
図22のように第4断続機構640の断続部642がオン状態である場合)、プロペラ894aは、エンジンEで発生した動力が第1シャフト581、逆転機構600、第1駆動ギヤ583、第1従動ギヤ584、第2シャフト582、第1ベベルギヤ895、及び第2ベベルギヤ896を介して、後進方向の推進力が働くように回転する。
【0136】
従来の船外機では、プロペラ894aの回転方向を逆転させる逆転機構が、第1ベベルギヤ895及び第2ベベルギヤ896の近傍、即ち、水中に設けられることがあったが、本適用例の船外機890の逆転機構600は、動力伝達装置TM3に設けられており、即ち、水面より上方に設けられている。よって、船外機890は、水中に配置される部分を小さくでき、水の抵抗を受けにくい構成とすることができる。また、変速機T及び逆転機構600を1箇所にまとめることができるので、船外機890の部品を効率良くレイアウト配置することができる。
【0137】
[第6適用例]
第2実施形態の動力伝達装置TM2及び第1実施形態の動力伝達装置TM1のいずれか一方が組み込まれた電動キックボード910について、
図23から
図25を参照して説明する。
【0138】
図23に示すように、電動キックボード910は、運転者の足が置かれる車体911と、車体911の前部に立設したハンドルポスト912と、ハンドルポスト912の上端に設けたハンドル913と、車体911の前部に設けられてハンドル913により転舵される前輪FWと、車体911の後部に設けられる後輪RWと、車体911に取り付けられ、前輪FWを変速可能に駆動するモータM(又は後述するモータ916)及び動力伝達装置TM2(又は動力伝達装置TM1)と、モータM(又はモータ916)に電力を供給するバッテリBと、を備える。前輪FW及び後輪RWは、それぞれタイヤ914と、タイヤ914が外周に嵌め込まれたホイール部915と、を有する。
【0139】
先ず、動力伝達装置TM2が組み込まれた電動キックボード910について、
図24を参照して説明する。
【0140】
動力伝達装置TM2の第1シャフト381には、モータMが一体回転可能に接続され、第2シャフト382には、前輪FWが一体回転可能に接続されている。モータMの回転動力が第1シャフト381に入力されることで、変速機Tを介して第2シャフト382に伝達され、前輪FWが回転する。
【0141】
このように構成される電動キックボード910は、変速可能に前輪FWを駆動させることができる。例えば坂道を走行する場合には、動力伝達装置TM2を高トルク状態として前輪FWを高トルクで回転させ、平坦な道を走行する場合には、動力伝達装置TM2を高回転状態として前輪FWを高回転させることができる。また、モータMを駆動させず、運転者が地面をキックして推進力を得る場合には、例えば動力伝達装置TM2をニュートラル状態とすることで、前輪FWから第2シャフト382に入力された回転動力が変速機T及びモータMに伝達されない構成とすることができる。
【0142】
次に、動力伝達装置TM1が組み込まれた電動キックボード910について、
図25を参照して説明する。ここでは特に、前輪FWを駆動するモータ916がインホイールモータとして、動力伝達装置TM1と共に前輪FWの内部に収容された場合を一例として説明する。なお、
図25中の太い実線は、機械的な連結を模式的に示す。
【0143】
モータ916は、不図示のコイルが巻かれ、円筒形状を有するステータ916sと、ステータ916sの外周側に配置され、円筒形状を有するロータ916rと、を備える。
【0144】
動力伝達装置TM1は、モータ916の内周側、即ちステータ916sの内周側に設けられている。動力伝達装置TM1は、回転軸線L1がモータ916及び前輪FWの回転軸線に一致するように設けられている。また、動力伝達装置TM1は、モータ916のステータ916sと共に、車体911(
図25中では不図示)に取り付けられている。
【0145】
動力伝達装置TM1の第1シャフト181には、ロータ916rが接続され、動力伝達装置TM1の第2シャフト182には、前輪FWのホイール部915が接続されている。ロータ916rの回転動力が第1シャフト181に入力されることで、変速機Tを介して第2シャフト182に伝達され、前輪FWが回転する。
【0146】
このように構成される電動キックボード910によっても、変速可能に前輪FWを駆動させることができる。例えば坂道を走行する場合には、変速機Tを高トルク状態として前輪FWを高トルクで回転させ、平坦な道を走行する場合には、変速機Tを高回転状態として前輪FWを高回転で回転させることができる。さらに、モータ916及び動力伝達装置TM1が前輪FWの内部に収容されているので、電動キックボード910をコンパクトな構成とすることができる。
【0147】
なお、第6適用例として、第1実施形態の動力伝達装置TM1及び第2実施形態の動力伝達装置TM2が組み込まれた電動キックボード910を一例に説明したが、電動キックボード910には、各変形例の動力伝達装置が組み込まれてもよい。
【0148】
[第7適用例]
第2実施形態の変形例2Aの動力伝達装置TM2aが組み込まれた開き戸式自動ドア930(以下、単に自動ドア930とも称す)について、
図26、及び
図27の(A)、(B)を参照して説明する。
図27の(A)は、自動ドア930の閉状態を示し、
図27の(B)は、自動ドア930の開状態を示す。
【0149】
図26に示すように、自動ドア930は、ドアノブ931aを有するドア本体931と、上下方向に延設された回転シャフト932と、ドア本体931と回転シャフト932とを連結するブラケット933と、ドア本体931を回転シャフト932回りに自動で回転させることが可能なドア開閉装置934と、を備える。
【0150】
ドア開閉装置934は、例えば、ドア本体931の上方に配置され、壁Wに固定される。
図27の(A)、(B)に示すように、ドア開閉装置934は、不図示の電力源からの電力により回転動力を出力するモータMと、モータMの回転動力を伝達する動力伝達装置TM2aと、動力伝達装置TM2aに接続されて回転動力を並進移動に変換するスピンドルユニットSPと、スピンドルユニットSPとブラケット933とを連結するリンク部材937と、を備える。
【0151】
モータMは、動力伝達装置TM2aの第1シャフト381に一体回転可能に接続されている。
【0152】
スピンドルユニットSPは、モータMと隣り合って配置されている。スピンドルユニットSPは、動力伝達装置TM2aの第2シャフト382に一体回転可能に接続され、雄ネジが形成されたスピンドル935と、雌ネジが形成されたスリーブ936と、を有する。スピンドル935の回転により、スリーブ936はスピンドル935の軸線(ここでは第2シャフト382の回転軸線L3に等しい)に沿って並進移動する。具体的には、変速機Tによって伝達されたモータMの回転動力を受けてスピンドル935が一方向に回転すると、スリーブ936が変速機Tから離れるように並進移動し、スピンドル935が他方向に回転すると、スリーブ936が変速機Tに近づくように並進移動する。
【0153】
リンク部材937は、一端側がスリーブ側回動部937aを介して回動可能にスリーブ936に連結され、他端側がブラケット側回動部937bを介して回動可能にブラケット933に連結されている。
【0154】
図27の(A)に示すように、自動ドア930が閉状態であるとき、スリーブ936は変速機Tに最も近づいて位置する。
図27の(B)に示すように、モータMを駆動させてスリーブ936を変速機Tから離れるように並進移動させると、ドア本体931はリンク部材937及びブラケット933を介してスリーブ936により押され、開状態となる方向に回転シャフト932回りに回転する。反対に、自動ドア930が開状態であるときに、モータMを駆動させてスリーブ936を変速機Tに近づけるように並進移動させると、ドア本体931はリンク部材937及びブラケット933を介してスリーブ936により引っ張られ、閉状態となる方向に回転シャフト932回りに回転する。
【0155】
動力伝達装置TM2aが組み込まれた自動ドア930では、動力伝達装置TM2aがロック状態である場合(即ち、断続部212、222がオフ状態、断続部232がオン状態)、ドア本体931を所定の開度でロックすることができる。また、閉状態でロック状態とした場合、自動ドア930は閉状態に維持されるので、ロック状態を自動ドア930の鍵として利用することができる。
【0156】
また、動力伝達装置TM2aが組み込まれた自動ドア930では、モータMを非駆動状態にすることで、自動ドア930を手動ドアとして使用することもできる。例えば、動力伝達装置TM2aをニュートラル状態(即ち、断続部212、222、232がオフ状態)とする場合、変速機Tを介さずに自動ドア930を手動ドアとして使用することができる。また、動力伝達装置TM2aを高回転状態(即ち、断続部212がオン状態、断続部222、232がオフ状態)とする場合、手動でドア本体931を回転させる外力が動力伝達装置TM2aの第1変速機構T1を介してモータMに伝達されるので、モータM及び第1変速機構T1でフリクションが発生する。よって、ドア本体931の手動開閉に重みを持たせることができる。動力伝達装置TM2aを高トルク状態(即ち、断続部222がオン状態、断続部212、232がオフ状態)とする場合、ドア本体931の手動開閉に重みを高回転状態の場合よりもさらに持たせることができる。
【0157】
なお、前述した一例では、ドア開閉装置934をドア本体931の上方に配置し、スピンドルユニットSP及びリンク部材937を用いて自動ドア930の開閉を行う構成を説明したが、自動ドア930の構成はこれに限られない。例えば、
図28に示すように、スピンドルユニットSP及びリンク部材937を設けず、動力伝達装置TM2aの第2シャフト382とドア本体931のヒンジ軸931bとを同軸に接続する構成であってもよい。具体的には、モータM及び動力伝達装置TM2aをドア本体931の側方に配置し、モータMの回転動力を動力伝達装置TM2aを介してヒンジ軸931bに直接伝達してもよい。
【0158】
なお、第7適用例として、第2実施形態の変形例2Aの動力伝達装置TM2aが組み込まれた自動ドア930を一例に説明したが、自動ドア930には、他の実施形態や他の変形例の動力伝達装置が組み込まれてもよい。
【0159】
以上、本発明の各実施形態、各変形例、及び本発明の各適用例について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0160】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0161】
(1) 断続機構(断続機構20)と変速機(変速機T)とを備える動力伝達装置(動力伝達装置TM1、TM1a、TM1b、TM1c、TM1d)であって、
前記断続機構(断続機構20、第1断続機構210)は、
第1回転体(筒部PC1a)と第2回転体(第2シャフト182)との間に配置される係合子(ローラ281)と、
前記係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する操作部(操作ロッド241、ピン283、リテーナ282、ガイド284)と、を有し、
前記操作部は、
前記係合子を動かす作動子(リテーナ282、ガイド284)と、該作動子を介して前記係合子を操作可能に、又は該作動子を介さず前記係合子を操作可能に設けられる操作子(操作ロッド241、ピン283)と、を有し、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、互いの回転軸線(回転軸線L1)が一致するように、且つ、前記回転軸線に対する径方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記操作子は、
前記径方向に沿って進退移動可能に設けられる進退子(ピン283)と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる延在部(操作ロッド241)と、を有し、
前記変速機は、
前記第1回転体と一体に形成される、又は、前記第1回転体と一体回転可能に機械的に接続される第1回転要素(サンギヤSG2)、
前記第1回転要素と回転伝達可能に設けられる第2回転要素(キャリアPC2)、及び、前記第2回転要素と回転伝達可能に設けられる第3回転要素(リングギヤRG2)を有する変速部(第2遊星機構P2)を有し、
前記第2回転要素及び前記第3回転要素は、
前記径方向において、前記第2回転体よりも外側に配置されるとともに、
前記径方向視で、少なくとも一部が前記第2回転体と重なり合うよう配置される、動力伝達装置。
【0162】
(1)によれば、変速機を第2回転体の周りに集約でき、動力伝達装置を小型化できる。
【符号の説明】
【0163】
20 断続機構
182 第2シャフト(第2回転体)
241 操作ロッド(延在部)
281 ローラ(係合子)
283 ピン(進退子)
TM1、TM1a、TM1b、TM1c、TM1d 動力伝達装置
L1 回転軸線
PC1a 筒部(第1回転体)
PC2 キャリア(第2回転要素)
P2 第2遊星機構(変速部)
RG2 リングギヤ(第3回転要素)
SG2 サンギヤ(第1回転要素)
T 変速機