(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179347
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 3/091 20060101AFI20241219BHJP
F16D 41/067 20060101ALI20241219BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16H3/091
F16D41/067
F16D41/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098112
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 圭
(72)【発明者】
【氏名】小野 拓洋
【テーマコード(参考)】
3J528
【Fターム(参考)】
3J528EB33
3J528EB74
3J528FC32
3J528FC59
3J528HA26
3J528JL04
(57)【要約】
【課題】被駆動部をロック状態に維持することが可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】変速機Tは、モータMの動力を第1変速比で伝達する第1変速機構T1と、モータMの動力を第1変速比とは異なる第2変速比で伝達する第2変速機構T2と、ロック機構400と、を備える。ロック機構400は、互いに噛合う固定ギヤ401及びロックギヤ402を備える。ロックギヤ402は、固定ギヤ401との噛合いにより回転が規制された非回転体であり、中空穴に第2シャフト182を相対回転可能に収容する。断続機構230は、ロックギヤ402と第2シャフト182との間に設けられる断続部232を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と被駆動部との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置であって、
第1回転体と、
第2回転体と、
断続装置と、を備え、
該断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される第1係合子と、
前記第1係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第1操作部と、を有し、
前記第1操作部は、
前記第1係合子を動かす第1作動子と、
該第1作動子を介して前記第1係合子を操作可能に、又は該第1作動子を介さず前記第1係合子を操作可能に設けられる第1操作子と、を有し、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記第1操作子は、
前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第1進退子と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第1延在部と、を有し、
前記動力伝達装置は、前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される第3回転体及び第4回転体をさらに備え、
前記断続装置は、
前記第3回転体と前記第4回転体との間に配置される第2係合子と、前記第2係合子を、前記第3回転体と前記第4回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第3回転体と前記第4回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第2操作部と、をさらに有し、
前記動力伝達装置は、前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される第5回転体と、該第5回転体を収容するよう設けられる非回転体と、をさらに備え、
前記断続装置は、
前記第5回転体と前記非回転体との間に配置される第3係合子と、
前記第3係合子を、前記第5回転体と前記非回転体とが相対回転不能な係合状態と、前記第5回転体と前記非回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第3操作部と、をさらに有する、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
前記第2操作部は、
前記第2係合子を動かす第2作動子と、
該第2作動子を介して前記第2係合子を操作可能に、又は該第2作動子を介さず前記第2係合子を操作可能に設けられる第2操作子と、を有し、
前記第3操作部は、
前記第3係合子を動かす第3作動子と、
該第3作動子を介して前記第3係合子を操作可能に、又は該第3作動子を介さず前記第3係合子を操作可能に設けられる第3操作子と、を有する、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動力伝達装置であって、
前記第2操作子は、前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第2進退子と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第2延在部と、を有し、
前記第2進退子は、該第2進退子の前記直交方向における前記回転軸線側の端部である内端が、前記第2延在部と当接するよう設けられ、
前記第3操作子は、
前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第3進退子と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第3延在部と、を有し、
前記第3進退子は、該第3進退子の前記直交方向における前記回転軸線側の端部である内端が、前記第3延在部と当接するよう設けられる、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項3に記載の動力伝達装置であって、
前記第2回転体、前記第4回転体、及び前記第5回転体は一体回転可能に設けられ、
前記第1延在部、前記第2延在部、及び第3延在部は一体に設けられるとともに、前記回転軸線方向において異なる位置に位置するよう配置される、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動力伝達装置であって、
一体に設けられた前記第1延在部、前記第2延在部、及び第3延在部を延在部とすると、
前記延材部が、
前記回転軸線方向における第1の位置に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における内側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における外側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、
前記回転軸線方向における第2の位置に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記内側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記外側に位置する、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の動力伝達装置であって、
前記延在部が、
前記回転軸線方向における第3の位置に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における外側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記外側に位置する、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項6に記載の動力伝達装置であって、
前記第1進退子は、前記直交方向における前記外側に位置するときに前記第1係合子が前記非係合状態となり、内側に位置するときに前記第1係合子が前記係合状態となるよう設けられ、
前記第2進退子は、前記直交方向における前記外側に位置するときに前記第2係合子が前記非係合状態となり、前記内側に位置するときに前記第2係合子が前記係合状態となるよう設けられ、
前記第3進退子は、前記直交方向における前記外側に位置するときに前記第3係合子が前記非係合状態となり、前記内側に位置するときに前記第3係合子が前記係合状態となるよう設けられる、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記延在部が、
前記回転軸線方向における第4の位置に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における外側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における内側に位置する、動力伝達装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記延在部が、
前記回転軸線方向における第5の位置に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における内側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記内側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記内側に位置する、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の動力伝達装置では、変速機が、駆動部の動力を第1変速比で被駆動部に伝達する第1変速機構と、駆動部の動力を第1変速比とは異なる第2変速比で被駆動部に伝達する第2変速機構と、断続機構によって第1変速機構及び第2変速機構における動力の遮断状態と接続状態とを切り替える断続機構と、を備えることが記載されている。これにより、駆動部の動力が第1変速機構を介して被駆動部に伝達される第1変速状態と、駆動部の動力が第2変速機構を介して被駆動部に伝達される第2変速状態と、変速機を介した駆動部の動力伝達が遮断されるニュートラル状態と、が選択可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の動力伝達装置では、被駆動部をロック状態に維持することができなかった。
【0005】
本発明は、被駆動部をロック状態に維持することが可能な動力伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
駆動部と被駆動部との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置であって、
第1回転体と、
第2回転体と、
断続装置と、を備え、
該断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される第1係合子と、
前記第1係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第1操作部と、を有し、
前記第1操作部は、
前記第1係合子を動かす第1作動子と、
該第1作動子を介して前記第1係合子を操作可能に、又は該第1作動子を介さず前記第1係合子を操作可能に設けられる第1操作子と、を有し、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記第1操作子は、
前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第1進退子と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第1延在部と、を有し、
前記動力伝達装置は、前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される第3回転体及び第4回転体をさらに備え、
前記断続装置は、
前記第3回転体と前記第4回転体との間に配置される第2係合子と、前記第2係合子を、前記第3回転体と前記第4回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第3回転体と前記第4回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第2操作部と、をさらに有し、
前記動力伝達装置は、前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される第5回転体と、該第5回転体を収容するよう設けられる非回転体と、をさらに備え、
前記断続装置は、
前記第5回転体と前記非回転体との間に配置される第3係合子と、
前記第3係合子を、前記第5回転体と前記非回転体とが相対回転不能な係合状態と、前記第5回転体と前記非回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第3操作部と、をさらに有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被駆動部をロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の電動義足1を斜め前方から見た斜視図である。
【
図5】電動義足1の屈曲状態を示す要部断面図である。
【
図6】電動義足1の最大屈曲状態を示す要部断面図である。
【
図9】操作機構240の動作を示す図であり、(A)は操作ロッド241が上ポジションにあるときの操作機構240の断面図、(B)は操作ロッド241が中上ポジションにあるときの操作機構240の断面図、(C)は操作ロッド241が中下ポジションにあるときの操作機構240の断面図であり、(D)は操作ロッド241が下ポジションにあるときの操作機構240の断面図である。
【
図10】(A)は、操作ロッド241が中上ポジションにあり、第3大径部241c3が断続部212のピン283を外径方向に押し出す状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
【
図11】(A)は、操作ロッド241が中下ポジションにあり、第1小径部241b1が断続部212のピン283の内径方向への戻りを許容する状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
【
図12】(A)は、第1従動ギヤ184に正転方向の回転が生じてローラ281が噛み合った正転オン状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
【
図13】(A)は、第1従動ギヤ184に逆転方向の回転が生じてローラ281が噛み合った逆転オン状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
【
図14】(A)は操作ロッド241が下ポジションにあり、第2大径部241c2が断続部212のピン283を外径方向に押し出す状態を示す断面図であり、(B)はそのときの操作ロッド241の位置を示す図である。
【
図15】昇段時の人間及び電動義足1の動作(昇段動作)を示す図である。
【
図16】平地歩行時の人間及び電動義足1の動作(平地歩行動作)を示す図である。
【
図17】第2実施形態の電動義足1の断面図である。
【
図18】第3実施形態の電動義足1の側面図である。
【
図19】第3実施形態の電動義足1に搭載される拡縮装置200の斜視図である。
【
図21】本発明の第4実施形態の動力伝達装置TM5を搭載した移動体M5を示す断面図であり、パーキング状態を説明する図である。
【
図22】移動体M5のニュートラル状態を説明する図である。
【
図24】移動体M5の超信地旋回を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
先ず、本発明の一実施形態の動力伝達装置が内蔵された電動義足について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、電動義足の使用者を基準に前後方向、左右方向、上下方向を定義する。図面には、電動義足の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をDとして示す。
【0010】
[第1実施形態]
本実施形態の電動義足1は、
図1~
図4に示すように、ひざのない人の脚部に装着される義足であり、ひざの下側に位置する膝下側部材110と、大腿部に装着され、ひざの上側に位置する膝上側部材120と、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を変更可能に連接する膝関節機構130と、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な拡縮装置200と、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角の変更範囲を機械的に制限するメカストップ機構150と、メカストップ機構150による衝撃を緩衝する緩衝機構160と、拡縮装置200などに電力を供給するバッテリBと、を備える。
【0011】
膝上側部材120は、不図示のソケットに連結されるアダプター121と、上壁部125にアダプター121が取り付けられた膝上側基部126と、を備える。ソケットは、大腿部に設けられるジョイント部材であり、ソケットにアダプター121を連結することで、大腿部に膝上側部材120が一体化される。
【0012】
膝下側部材110は、上部及び後部が開口する箱形状のメインフレーム111と、メインフレーム111の左右両側面を覆うサイドカバー112と、メインフレーム111の後部開口を開閉可能に覆う着脱自在なリヤカバー113と、メインフレーム111の下面に取り付けられたアダプター122と、を備える。
【0013】
膝下側部材110のメインフレーム111の上部には、膝関節機構130を構成する連接軸135を介して膝上側部材120が設けられ、メインフレーム111のアダプター122には、下方に延在する脚部114が連結される。
【0014】
膝上側部材120及び膝下側部材110により形成された空間には、膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な拡縮装置200が設けられる。拡縮装置200は、伸縮することにより膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な伸縮装置140である。伸縮装置140は、上下方向に延在し、詳しくは後述するが、延在方向の一方側が膝上側部材120に機械的に接続され、延在方向の他方側が膝下側部材110に機械的に接続される。なお、「機械的に接続」とは、直接接続される構成、及び他部材を介して接続される構成を含む概念である。
【0015】
図3及び
図4に示すように、伸縮装置140は、回転動力を出力するモータMと、モータMの動力を伝達する変速機Tと、変速機Tに動力伝達可能に接続され、変速機Tから出力される回転動力を並進運動(伸縮運動)に変換するスピンドルユニットSPと、変速機Tに設けられる断続機構210、220、230と、を備える。
【0016】
モータMは、例えば、永久磁石型電動機であり、変速機Tの後方且つ上方に配置され、スピンドルユニットSPは、変速機Tの前方且つ上方に配置される。スピンドルユニットSPは、動力の伝達経路上で変速機Tに対してモータMと反対側に配置される。モータMは、モータ本体部171と、モータ本体部171の出力回転を減速するギヤ機構部172と、を備えるギヤ機構内蔵モータである。スピンドルユニットSPは、雄ねじが形成されたスピンドル173と、雌ねじが形成されたスリーブ174と、を有し、スピンドル173の回転によりスリーブ174がスピンドル173の軸心に沿って並進運動する。
【0017】
具体的に説明すると、スピンドル173は、変速機Tによって伝達されたモータMの回転動力を受けて回転運動を行う。一方、スリーブ174は、ユニットケース250に回転不能且つ上下移動可能に支持されている。したがって、変速機Tによって伝達されたモータMの回転動力を受けてスピンドル173が一方側に回転すると、スリーブ174が変速機Tから離れるように並進移動し、スピンドル173が他方側に回転すると、スリーブ174が変速機Tに近づくように並進移動する。なお、スリーブ174が変速機Tから離れるように並進移動することをスピンドルユニットSPの伸長動作と呼ぶことがあり、反対にスリーブ174が変速機Tに近づくように並進移動することをスピンドルユニットSPの縮小動作と呼ぶことがある。
【0018】
即ち、スピンドル173の回転方向に応じてスリーブ174と変速機Tとの距離が伸縮する。スリーブ174の上端部は、リンク部材175を介して膝上側部材120に連結されている。スピンドル173の回転方向に応じてスリーブ174と変速機Tとの距離が伸縮することで、膝下側部材110と膝上側部材120とが連接軸135を中心に回転する。これにより、膝上側部材120と膝下側部材110との成す角が変わる。
【0019】
ここで、膝上側部材120と膝下側部材110との成す角は、膝関節機構130の連接軸135の中心と膝上側部材120のアダプター121とを結ぶ第1仮想線L1と、膝関節機構130の連接軸135の中心と膝下側部材110を通って鉛直方向下方に延びる第2仮想線L2とにより区画形成される角である。膝関節機構130の連接軸135を中心とした膝下側部材110と膝上側部材120との成す角のうち、1周の一方側を第1成す角θ1、他方側を第2成す角θ2とし、第1成す角θ1及び第2成す角θ2のうち、膝下側部材110と膝上側部材120とが相対移動する範囲における最小成す角度が小さい方を第2成す角θ2とすると、電動義足1の使用者の膝裏側の成す角(膝裏角)が、第2成す角θ2となる。第1成す角θ1は約175[deg]~300[deg]の値をとり、第2成す角θ2は約60[deg]~185[deg]の値をとる。
【0020】
図3は、膝関節機構130が伸展した状態を示すものであり、第1成す角θ1が約175[deg]、第2成す角θ2が約185[deg]である。
図5は、電動義足1の屈曲状態を示す要部断面図であり、第1成す角θ1が約240[deg]、第2成す角θ2が約120[deg]である。
図6は、電動義足1の最大屈曲状態を示す要部断面図であり、第1成す角θ1が約300[deg]、第2成す角θ2が約60[deg]である。
【0021】
図3及び
図4に戻って、変速機Tは、モータMの動力を第1変速比でスピンドルユニットSPに伝達する第1変速機構T1と、モータMの動力を第1変速比とは異なる第2変速比でスピンドルユニットSPに伝達する第2変速機構T2と、スピンドルユニットSPによる回転運動と並進運動との変換動作を規制可能なロック機構400と、を備える。第1変速機構T1及び第2変速機構T2は、断続機構210、220によって動力の遮断状態と接続状態とが切り替えられる。ロック機構400は、断続機構230によってスピンドルユニットSPの変換動作を許容する許容状態と変換動作を禁止する禁止状態とが切り替えられる。
【0022】
このような変速機Tによれば、変速比の異なる2つの動力伝達路を備えることで、膝関節機構130における伸展と屈曲の動作スピード及び発生動力を切り替えることができる。第1変速比及び第2変速比は異なっていればよく、第1変速機構T1と第2変速機構T2とは、いずれか一方が減速機構で他方が増速機構であってもよく、いずれか一方が等速機構で他方が減速機構又は増速機構であってもよく、両方が減速機構であってもよく、両方が増速機構であってもよい。
【0023】
第1変速比は、第1変速機構T1におけるモータM側の回転数である変速前回転数に対する、第1変速機構T1における反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数である変速後回転数の比率である。第2変速比は、第2変速機構T2におけるモータM側の回転数である変速前回転数に対する、第2変速機構T2における反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数である変速後回転数の比率である。
【0024】
例えば、第1変速機構T1の第1変速比が1より小さい場合、反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数はモータM側の回転数よりも減少し、トルクが増加する。第2変速機構T2の第2変速比が1より大きい場合、反モータM側(スピンドルユニットSP側)の回転数はモータM側の回転数よりも増加し、トルクが減少する。本実施形態では、第1変速比は、第2変速比よりも小さくなるよう第1変速比が1より小さく、第2変速比が1よりも大きく設定されている。また、上方から順に、ロック機構400、第1変速機構T1、第2変速機構T2が配置されている。
【0025】
第1変速機構T1及び第2変速機構T2には、ギヤ機構部172の出力軸172aの下方延長線上に回転可能に配置される第1シャフト181と、スピンドルユニットSPのスピンドル173の下方延長線上に回転可能に配置される第2シャフト182と、が含まれる。第1シャフト181は、軸心誤差を許容するカップリング187を介して、モータMのギヤ機構部172の出力軸172aに一体回転可能に連結される。第2シャフト182は、スピンドルユニットSPのスピンドル173に一体回転可能に接続されている。なお、本実施形態の第2シャフト182は、スピンドルユニットSPのスピンドル173と一体化されているが、第2シャフト182は、スピンドルユニットSPのスピンドル173とし、スプライン嵌合やカップリングを用いて連結してもよい。
【0026】
第1変速機構T1は、互いに噛み合う第1駆動ギヤ183及び第1従動ギヤ184を備える。第1駆動ギヤ183は、第1シャフト181に一体回転可能に支持され、第1従動ギヤ184は、第2シャフト182に相対回転可能に支持されている。第1従動ギヤ184及び第2シャフト182は、互いの回転軸線が一致する。本実施形態の第1変速機構T1は、第1駆動ギヤ183を第1従動ギヤ184よりも小径とした減速伝達機構であり、スピンドルユニットSPを低速且つ高トルクで伸縮動作させることができる。
【0027】
第2変速機構T2は、互いに噛み合う第2駆動ギヤ185及び第2従動ギヤ186を備える。第2駆動ギヤ185は、第1シャフト181に一体回転可能に支持され、第2従動ギヤ186は、第2シャフト182に相対回転可能に支持されている。第2従動ギヤ186及び第2シャフト182は、互いの回転軸線が一致する。本実施形態の第2変速機構T2は、第2駆動ギヤ185を第2従動ギヤ186よりも大径とした増速伝達機構であり、スピンドルユニットSPを高速且つ低トルクで伸縮動作させることができる。
【0028】
ロック機構400は、互いに噛合う固定ギヤ401及びロックギヤ402を備える。固定ギヤ401は、ユニットケース250に固定される。ロックギヤ402は、固定ギヤ401との噛合いにより回転が規制された非回転体であり、中空穴に第2シャフト182を相対回転可能に収容する。固定ギヤ401は、ユニットケース250と一体に形成されていてもよく、別体でユニットケース250に固定されていてもよい。ロックギヤ402及び第2シャフト182は、互いの回転軸線が一致する。
【0029】
なお、固定ギヤ401及びロックギヤ402は、ギヤの噛み合いに限らず、セレーション、スプライン、その他の回り止め構造によってロックギヤ402が回転不能となるように設けられてもよい。また、ロック機構400は、ロックギヤ402及び固定ギヤを備えず、ローラ281が、第2シャフト182とユニットケース250などの固定部材との間に噛み合うように構成されてもよい。
【0030】
本実施形態では、上方から順に、ロック機構400、第1変速機構T1、第2変速機構T2を配置しているが、この順番は適宜変更することができる。また、本実施形態の第1シャフト181及び第2シャフト182は、それぞれ、最初から一体形成されるが、上下のギヤ支持部を別体として形成した後、一体的に連結(結合)してもよい。
【0031】
第1断続機構210は、第1従動ギヤ184と第2シャフト182との間に設けられる断続部212と、断続機構210を切り替え操作する操作機構240と、を備える。第2断続機構220は、第2従動ギヤ186と第2シャフト182との間に設けられる断続部222と、断続機構220を切り替え操作する操作機構240と、を備える。断続機構230は、ロックギヤ402と第2シャフト182との間に設けられる断続部232と、断続機構230を切り替え操作する操作機構240と、を備える。これらの断続部212、222、232は、共通の構成を有しており、動力伝達を遮断する遮断状態と、一方向及び他方向の両方向の回転動力を伝達可能な動力伝達可能状態と、に切り替え可能に構成される。なお、断続部212、222、232の詳細は後述する。
【0032】
操作機構240は、断続部212、222、232を断続操作可能に設けられる操作ロッド241と、操作ロッド241を直線移動させるサーボモータ242と、を備える。
【0033】
第2シャフト182は、回転軸線方向(上下方向とも称する)に延びる内部空間S2を有する中空軸であり、この内部空間S2に操作ロッド241が配置される。操作ロッド241は、内部空間S2から露出する下端部にラック241aが設けられる。操作ロッド241は、内部空間S2に配置された不図示の軸受によりラック241aと相対回転不能且つ回転軸線方向に一体で進退移動可能に支持される。ラック241aには、サーボモータ242の出力軸242aに設けられるピニオン243が噛み合っており、サーボモータ242の駆動に応じて、操作ロッド241の上下方向のポジションが切り替えられる。操作ロッド241の外周部には、後述する小径部241b1~241b3及び大径部241c1~241c4が形成されており、後述する断続部212、222、232のピン283の内径端部(内端)に当接可能に構成される。操作ロッド241のポジションに応じて、小径部241b1~241b3及び大径部241c1~241c4が断続部212、222、232を断続操作する。なお、操作機構240の詳細は後述する。
【0034】
図3~
図5に示すように、ユニットケース250は、アッパーケース251、ミドルケース252及びロワケース253を備える。これらアッパーケース251、ミドルケース252及びロワケース253は、互いに別体に形成されている。
【0035】
アッパーケース251は、スピンドルユニットSPを収容する。
【0036】
ミドルケース252とロワケース253とにより形成される空間S1には、第1駆動ギヤ183及び第1従動ギヤ184、第2駆動ギヤ185及び第2従動ギヤ186、固定ギヤ401及びロックギヤ402、断続部212、222、232、及び操作機構240の一部が収容される。
【0037】
ユニットケース250は、アッパーケース251、ミドルケース252及びロワケース253の3段構造によって、変速機T及びスピンドルユニットSPをケーシングできるだけでなく、モータMも含めた伸縮装置140をユニット化する。
【0038】
また、ユニットケース250は、不図示のブラケットを介してメインフレーム111に取付けられる。
【0039】
メカストップ機構150及び緩衝機構160については説明を省略する。
【0040】
つぎに、断続部212、222、232及び操作機構240の詳細について、
図7以降を参照して説明する。
【0041】
各断続部212、222、232は、共通の構成を有しており、動力伝達を遮断する遮断状態と、一方向及び他方向の両方向の回転動力を伝達可能な動力伝達可能状態と、に切り替え可能に構成される。本実施形態の各断続部212、222、232は、
図7に示すように、強制フリー機能を備える二方向クラッチ280を用いて構成されている。二方向クラッチ280は、第2シャフト182の外周面部とギヤ184、186、402の内周面部との間に配置される複数(本実施形態では3つ)のローラ281と、複数のローラ281を所定の間隔に保持するリテーナ282と、第2シャフト182を径方向に貫通し、操作機構240によって強制フリー位置と強制フリー解除位置とに操作される複数(本実施形態では3つ)のピン283と、リテーナ282に設けられ、ピン283が強制フリー位置のとき第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置を規定する複数(本実施形態では3つ)のガイド284と、を備える。ローラ281は、ボールでもよく、スプラグでもよい。
【0042】
本実施形態の断続部220、230、232では、ローラ281が係合子であり、操作機構240、ピン283、ガイド284、及びリテーナ282が、係合子(ローラ281)を係合状態と非係合状態とに操作する操作部に相当する。また、リテーナ282が係合子(ローラ281)を動かす作動子であり、操作機構240、ピン283、及びガイド284が、作動子(リテーナ282)を介して係合子(ローラ281)を操作可能に、又は作動子(リテーナ282)を介さず係合子(ローラ281)を操作可能に設けられる操作子に相当する。また、ピン283が回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる進退子であり、後述する操作機構240の操作ロッド241が、回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる延在部に相当する。
【0043】
第2シャフト182の外周面部とギヤ184、186、402の内周面部との径方向の間隔Aは、ローラ281の直径Bよりも小さい。また、第2シャフト182の外周部には、周方向に所定の間隔で平坦部182aが形成されており、平坦部182aの周方向中央側では、間隔Aが直径Bよりも大きい。
【0044】
つまり、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持される状態では、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及びギヤ184、186、402の内周面部に噛み合わず(非係合状態)、第2シャフト182とギヤ184、186、402との相対回転が許容される(強制フリー状態)。
【0045】
一方、ローラ281が第2シャフト182に対する周方向の移動が許容される状態では、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及びギヤ184、186、402の内周面部に噛み合う(係合状態)。ローラ281が第2シャフト182の外周面部及びギヤ184、186の内周面部に噛み合うと、第2シャフト182とギヤ184、186とが二方向において一体回転可能に接続される(強制フリー解除状態)。また、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及びロックギヤ402の内周面部に噛み合うと、第2シャフト182とギヤ402とが二方向において相対回転不能に固定される(強制フリー解除状態)。即ち、固定ギヤ401及びロックギヤ402の噛合いにより、第2シャフト182が、回転不能に固定される。
【0046】
図8に示すように、リテーナ282は、第2シャフト182及びギヤ184、186、402に対して相対回転可能なリング形状であり、ローラ281を保持する複数のローラ保持部282aと、ガイド284を保持する複数のガイド保持部282bと、を有する。
【0047】
図7に戻って、ピン283は、径方向外側の端部に円錐状の凸部283aを有し、ガイド284は、径方向内側の端面に凸部283aと嵌合(係合)する円錐状の凹部284aを有する。ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合すると、ピン283及びガイド284によるガイド作用によって、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が強制フリー状態となる所定の位置に位置決めされる。ピン283の径方向内側の端部は、操作ロッド241と当接するように設けられる。
【0048】
図9に示すように、操作ロッド241には、上方から順に、第1大径部241c1、第1小径部241b1、第2大径部241c2、第2小径部241b2、第3大径部241c3、第3小径部241b3、第4大径部241c4が所定の長さ及び間隔で形成されている。操作ロッド241は、3つの断続部212、222、232を同時に制御可能に設けられているが、断続部212、222、232ごとに別々に設けられていてもよい。
【0049】
以下の説明では、断続部212、222、232を同時に制御する操作機構240の動作について
図9を参照しながら説明する。
【0050】
図9に示すように、断続部212、222、232は、操作機構240によって強制フリー状態(以下、適宜オフ状態と称する)と強制フリー解除状態(以下、適宜オン状態と称する)とに切り替えられる。
【0051】
操作機構240の操作ロッド241は、
図9の(A)に示す上ポジションにあるとき、第1小径部241b1が断続部232のピン283が内径方向に戻ることを許容し、第3大径部241c3が断続部212のピン283を外径方向に押し出し、第4大径部241c4が断続部222のピン283を外径方向に押し出す。ピン283が径方向内側に位置する断続部232では、ローラ281が係合状態となる。一方、ピン283が径方向外側に位置する断続部212及び断続部222では、ローラ281が非係合状態となる。これにより、断続部232がオン状態となり、断続部212及び断続部222がオフ状態となる。
【0052】
ロック機構400を構成する断続部232がオン状態になると、固定ギヤ401及びロックギヤ402の噛合いにより、第2シャフト182が回転不能に固定される。第2シャフト182が固定されることで、スピンドルユニットSPによる並進運動(伸縮運動)が規制され、膝関節機構130における伸展と屈曲が規制される。
【0053】
操作機構240の操作ロッド241は、
図9の(A)に示す上ポジションから少し下がった
図9の(B)に示す中上ポジションにあるとき、第1大径部241c1が断続部232のピン283を外径方向に押し出し、第3大径部241c3が断続部212のピン283を外径方向に押し出し、第4大径部241c4が断続部222のピン283を外径方向に押し出す。ピン283が径方向外側に位置する断続部212、222、232では、ローラ281が非係合状態となる。これにより、断続部212、断続部222、及び断続部232がオフ状態となる。
【0054】
断続部212、断続部222、及び断続部232がオフ状態になると、第2シャフト182とギヤ184、186、402との相対回転が許容されるので、変速機Tを介したモータMとスピンドルユニットSPとの間の動力伝達が遮断される、いわゆるニュートラル状態となる。
【0055】
操作機構240の操作ロッド241は、
図9の(B)に示す中上ポジションから少し下がった
図9の(C)に示す中下ポジションにあるとき、第1大径部241c1が断続部232のピン283を外径方向に押し出し、第2小径部241b2が断続部212のピン283が内径方向に戻ることを許容し、第4大径部241c4が断続部222のピン283を外径方向に押し出す。ピン283が径方向内側に位置する断続部212では、ローラ281が係合状態となる。一方、ピン283が径方向外側に位置する断続部232及び断続部222では、ローラ281が非係合状態となる。これにより、断続部212がオン状態となり、断続部232及び断続部222がオフ状態となる。
【0056】
断続部212がオン状態になると、第2シャフト182と第1従動ギヤ184とが二方向において一体回転可能に接続されるので、第1駆動ギヤ183と第1従動ギヤ184との噛合いにより第1変速機構T1が動力伝達可能状態となる。
【0057】
操作機構240の操作ロッド241は、
図9の(C)に示す中下ポジションからさらに下がった
図9の(D)に示す下ポジションにあるとき、第1大径部241c1が断続部232のピン283を外径方向に押し出し、第2大径部241c2が断続部212のピン283を外径方向に押し出し、第3小径部241b3が断続部222のピン283が内径方向に戻ることを許容する。ピン283が径方向内側に位置する断続部222では、ローラ281が係合状態となる。一方、ピン283が径方向外側に位置する断続部232及び断続部212では、ローラ281が非係合状態となる。これにより、断続部222がオン状態となり、断続部232及び断続部212がオフ状態となる。
【0058】
断続部222がオン状態になると、第2シャフト182と第2従動ギヤ186とが二方向において一体回転可能に接続されるので、第2駆動ギヤ185と第2従動ギヤ186との噛合いにより第2変速機構T2が動力伝達可能状態となる。
【0059】
つぎに、二方向クラッチ280の切替動作について、断続部212を例に、
図10~
図14を参照しつつ説明する。以下の例では、断続部212の二方向クラッチ280における、
図9の(B)から(C)を経て(D)への切替を例に説明する。
【0060】
図10の(A)及び(B)に示すように、操作ロッド241が中上ポジションにあり、第3大径部241c3が断続部212のピン283を外径方向に押し出す状態では、ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合し、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が所定の位置で固定される。この状態では、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持されるため、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及び第1従動ギヤ184の内周面部に噛み合わず、第2シャフト182と第1従動ギヤ184との相対回転が許容されるオフ状態となる。
【0061】
図11の(A)及び(B)に示すように、操作ロッド241が中上ポジションから少し下がった中下ポジションに移動すると、第1小径部241b1が断続部212のピン283の内径方向への戻りを許容する状態に移行する。この状態は、断続部212がオン状態となり得る状態である。「オン状態となり得る状態」とは、この状態ではオフ状態であるものの、第2シャフト182と第1従動ギヤ184との間に相対回転が発生するとオン状態になる状態を意味する。
【0062】
即ち、
図11の(A)及び(B)に示すピン283の内径方向への戻りが許容される状態で、第1従動ギヤ184に
図12の(A)の矢印で示す正転方向の回転が生じると、第1従動ギヤ184と連れ回りするリテーナ282がローラ281を第2シャフト182に対して正転方向に移動させる。ローラ281は、第2シャフト182の外周面部及び第1従動ギヤ184の内周面部に噛み合うとともに、第1従動ギヤ184と連れ回りするリテーナ282のガイド284が凹部284aの傾斜面でピン283を内径方向に押し戻す。これにより、
図12の(A)及び(B)に示すように、正転方向において第2シャフト182と第1従動ギヤ184とを一体的に回転させる正転オン状態となる。
【0063】
また、
図11の(A)及び(B)に示すピン283の内径方向への戻りが許容される状態で、第1従動ギヤ184に
図13の(A)の矢印で示す逆転方向の回転が生じると、第1従動ギヤ184と連れ回りするリテーナ282がローラ281を第2シャフト182に対して逆転方向に移動させる。ローラ281は、第2シャフト182の外周面部及び第1従動ギヤ184の内周面部に噛み合うとともに、第1従動ギヤ184と連れ回りするリテーナ282のガイド284が凹部284aの傾斜面でピン283を内径方向に押し戻す。これにより、
図13の(A)及び(B)に示すように、逆転方向において第2シャフト182と第1従動ギヤ184とを一体的に回転させる逆転オン状態となる。
【0064】
図14の(A)及び(B)に示すように、操作ロッド241が中上ポジションから少し下がった下ポジションに移動すると、第2大径部241c2が断続部212のピン283を外径方向に押し出す状態に移行する。このとき、ピン283の凸部283aがガイド284の凹部284aに嵌合し、第2シャフト182に対するリテーナ282の相対回転位置が所定の位置に位置決め状態で固定される。この状態では、ローラ281が平坦部182aの周方向中央部に保持されるため、ローラ281が第2シャフト182の外周面部及び第1従動ギヤ184の内周面部に噛み合わず、第2シャフト182と第1従動ギヤ184との相対回転が許容されるオフ状態となる。
【0065】
<昇段モード>
このように構成された電動義足1では、これまでの受動ダンパーを備える受動義足では、非義足側の足で一段ずつ上がらざるをえなかった階段の昇段動作をスムーズに行うことが可能となる。
図15は、昇段時の使用者及び電動義足1の動作(昇段動作)を示す図である。大きく分けて、
図15の(A)~(D)、(H)は立脚フェーズ、(E)~(G)は遊脚フェーズである。
【0066】
具体的に説明すると、
図15の(A)→(D)、(H)に示すように、電動義足1を前に出して階段を昇る(昇段)際に電動義足1に荷重がかかった状態で、膝関節機構130を屈曲した状態から伸展するとき大きな動力が必要となる。
【0067】
このとき、変速機Tを、操作ロッド241が中下ポジション(
図9の(C))に位置する第1変速状態とする。この変速状態では、断続部212がオン状態且つ断続部222、232がオフ状態となり、モータMとスピンドルユニットSPとが第1変速機構T1を介して動力伝達可能となる。
【0068】
この状態で、モータMを正転方向に回転させると、モータMの動力が、第1シャフト181、第1駆動ギヤ183、第1従動ギヤ184、第1断続機構210の断続部212、第2シャフト182、スピンドルユニットSPへと伝達される。スリーブ174が変速機Tに近づくように並進移動(収縮動作)することで、変速機Tが取り付けられた膝下側部材110に対し、スリーブ174が連結された膝上側部材120が連接軸135を中心に回転して、膝関節機構130が伸展する。そして、この伸展させる動力は、第1変速機構T1で減速される際に高トルク化された動力なので、電動義足1を前に出して階段を昇る際に電動義足1に大きな荷重がかかった状態であっても、膝関節機構130を屈曲した状態から確実に伸展させることが可能になる。
【0069】
一方、階段の昇段動作をスムーズに行うためには、
図15の(E)~(G)に示すように、健常足に荷重がかかった状態で、膝関節機構130が伸展した状態から屈曲させる(持ち上げる)必要がある。膝関節機構130が伸展した状態から屈曲させる際には、大きな動力は必要ないが素早い動作が必要となる。
【0070】
このとき、変速機Tを、操作ロッド241が下ポジション(
図9の(D))に位置する第2変速状態とする。第2変速状態では、断続部212、232がオフ状態且つ断続部222がオン状態となり、モータMとスピンドルユニットSPが第2変速機構T2を介して動力伝達状態となる。
【0071】
この状態で、モータMを逆転方向に回転させると、モータMの動力が、第1シャフト181、第2駆動ギヤ185、第2従動ギヤ186、第2断続機構220の断続部222、第2シャフト182、スピンドルユニットSPへと伝達される。スリーブ174が変速機Tから離れるように並進移動(伸長動作)することで、スリーブ174が連結された膝上側部材120に対し、変速機Tが取り付けられた膝下側部材110が連接軸135を中心に回転して、膝関節機構130が屈曲する。そして、この屈曲させる動力は、第2変速機構T2で増速される際に低トルク化された動力なので、膝関節機構130を素早く屈曲させることが可能になる。
【0072】
<平地歩行モード>
図16は、平地歩行時の使用者及び電動義足の動作(平地歩行動作)を示す図である。大きく分けて、
図16の(A)~(D)、(H)は立脚フェーズ、(E)~(G)は遊脚フェーズである。
【0073】
図16に示す平地歩行の際、及び階段を降りる(降段)の際、
図16の(A)~(D)、(H)に示すように、電動義足1に荷重がかかった状態で、変速機Tを、操作ロッド241が下ポジション(
図9の(D))に位置する第2変速状態とする。第2変速状態では、断続部212、232がオフ状態且つ断続部222がオン状態となり、モータMとスピンドルユニットSPが第2変速機構T2を介して動力伝達状態となる。この状態で、モータMを非駆動状態にすると、電動義足1に作用する屈曲方向の外力がスピンドルユニットSPから第2変速機構T2を介してモータMに伝達されるので、モータM及び変速機Tのフリクションを利用して屈曲方向の外力を減衰させることにより、いわゆる膝折れが防止される。
【0074】
また、
図16の(E)~(G)に示すように、健常足に荷重がかかった状態では、変速機Tを、操作ロッド241が中上ポジション(
図9の(B))に位置する状態とする。この状態では、断続部212、222、232がオフ状態となり、モータMとスピンドルユニットSPとの間の動力伝達が遮断される(ニュートラル状態)。これにより、電動義足1の使用者は、滑らかに足を振り出すことができる。なお、平地歩行時に限らず、階段の降段動作も同様に制御され得る。
【0075】
<休憩モード>
また、図示を省略するが、電動義足1の使用者が、電動義足1に体重(荷重)をかけて休憩したり、立ち止まったりする場合、変速機Tを、操作ロッド241が上ポジション(
図9の(A))に位置する状態とする。この状態では、断続部212、222がオフ状態且つ断続部232がオン状態となり、ロック機構400により第2シャフト182が回転不能に固定されることで、膝関節機構130における伸展と屈曲が規制される。したがって、使用者は、膝折れの心配なく、安心して電動義足1に体重をかけることができる。
【0076】
なお、この休憩モードでは、操作ロッド241の形状を変更して、断続部212、222、232の全てがオン状態となるようにしてもよい。即ち、操作ロッド241が所定の位置に位置するとき、断続部212、222、232の全てのピン283が内径方向に戻ることを許容する。ピン283が径方向内側に位置する断続部212、222、232では、ローラ281が係合状態となる。これにより、膝関節機構130における伸展と屈曲が規制されるとともに、変速機構T1、T2の空転が防止される。
【0077】
[第2実施形態]
上記実施形態では、断続部212、222、232及び操作機構240が第2シャフト182側に設けられていたが、
図17に示す第2実施形態のように、第1シャフト181側に設けられていてもよい。即ち、第2実施形態の電動義足1では、第1断続機構210の断続部212が、第1駆動ギヤ183と第1シャフト181との間に設けられ、第2断続機構220の断続部222が、第2駆動ギヤ185と第1シャフト181との間に設けられ、第3断続機構230の断続部232が、第1シャフト181に周りに設けられたロックギヤ402と第1シャフト181との間に設けられる。ロックギヤ402は、第2シャフト182に一体回転可能に支持されたアイドルギヤ403と噛合うとともに、固定ギヤ401と噛み合う。その他の構成は概ね第1実施形態と同一又は同様であるため、説明を省略する。
【0078】
[第3実施形態]
上記実施形態では、拡縮装置200が、伸縮することにより膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能な伸縮装置140であったが、
図18~
図20に示す第3実施形態のように、ギヤの噛み合いにより膝下側部材110と膝上側部材120との成す角を拡大及び縮小可能に構成される傘歯車機構140Aであってもよい。即ち、第3実施形態の電動義足1では、傘歯車機構140Aが、第2シャフト182と一体回転可能に構成された第1傘歯車141と、第1傘歯車141と回転伝達可能に噛合し膝上側部材120に支持される第2傘歯車142と、を有する。
【0079】
このように構成された電動義足1では、断続部212又は断続部222がオン状態となると、モータMの回転が第2シャフト182に伝達され、さらに傘歯車機構140Aへと伝達される。膝下側部材110に固定された第1傘歯車141の回転に伴って、膝上側部材120に固定された第2傘歯車142が回転することで、膝下側部材110に対し膝上側部材120が連接軸135を中心に回転して、膝関節機構130が伸展又は屈曲する。
【0080】
また、ロック機構400を構成する断続部232がオン状態になると、固定ギヤ401及びロックギヤ402の噛合いにより、第2シャフト182が回転不能に固定される。第2シャフト182が固定されることで、傘歯車機構140Aによる回転運動が規制され、膝関節機構130における伸展と屈曲が規制される。
【0081】
[第4実施形態]
つぎに、本発明の一実施形態の動力伝達装置として動力伝達装置TM5を内蔵した移動体M5について、
図21~
図24を参照して説明する。
【0082】
図21に示す第4実施形態の動力伝達装置TM5は、走行変速装置としての移動体M5に搭載される。移動体M5としては、モータMを駆動源とし、サイドクラッチを用いて旋回するクローラ走行車両が想定される。
【0083】
図21に示すように、動力伝達装置TM5は、モータMの回転軸に設けられた出力ギヤG51と、モータMの回転軸線と平行に配置されるシャフトS51と、シャフトS51と常時一体回転するように設けられ、出力ギヤG51に噛み合う入力ギヤG52と、第1断続部CL51を介してシャフトS51に設けられる左駆動輪LWと、第2断続部CL52を介してシャフトS51に設けられる右駆動輪RWと、第3断続部CL53を介してシャフトS51に設けられ、ミッションケースに固定される固定スリーブG53と、第4断続部CL54を介してシャフトS51に設けられる右駆動ギヤG54と、シャフトS51から右駆動ギヤG54に入力されるモータ動力を逆転させて右駆動輪RWに伝達する逆転機構R51と、第1断続部CL51~第4断続部CL54を切り替え操作する操作機構CS51と、を備える。
【0084】
逆転機構R51は、右駆動輪RW及び右駆動ギヤG54の対向部にそれぞれ設けられるサイドギヤRG53、RG54と、サイドギヤRG53、RG54に常時噛み合う複数のピニオンギヤRG55と、複数のピニオンギヤRG55の自転を許容し、且つ公転不能に支持する支持部(不図示)と、を備える。このような逆転機構R51によれば、右駆動ギヤG54が一方向に回転すると、複数のピニオンギヤRG55を介して右駆動輪RWが他方向に回転するため、右駆動ギヤG54の入力回転を逆転させて右駆動輪RWから出力することができる。
【0085】
第1~第4断続部CL51~CL54は、第1実施形態の断続部212、222、232と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。第1~第4断続部CL51~CL54は操作機構CS51によって断続操作可能に設けられる。操作機構CS51は、操作ロッドRD51と、操作ロッドRD51を直線移動させるサーボモータSMと、を備える。操作機構CS51は、第1実施形態の操作機構240と同様の構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0086】
動力伝達装置TM5では、第1断続部CL51をオン状態とすると、シャフトS51から左駆動輪LWへ動力が伝達される。第1断続部CL51をオフ状態とすると、シャフトS51から左駆動輪LWへ動力が伝達されない。
【0087】
第2断続部CL52をオン状態且つ第4断続部CL54をオフ状態とすると、シャフトS51から右駆動輪RWへ直接的に動力が伝達される。即ち、逆転機構R51を経由しないので、シャフトS51と同方向に右駆動輪RWが回転する。一方、第2断続部CL52をオフ状態且つ第4断続部CL54をオン状態とすると、シャフトS51から右駆動ギヤG54へ動力が伝達され、逆転機構R51を介して右駆動輪RWへ動力が伝達される。このとき、逆転機構R51を経由するので、シャフトS51と逆方向に右駆動輪RWが回転する。
【0088】
第3断続部CL53をオン状態とすると、固定スリーブG53によってシャフトS51が固定される。第3断続部CL53をオフ状態とすると、固定スリーブG53に対しシャフトS51が自由に回転することができる。
【0089】
このように構成された動力伝達装置TM5では、
図21に示すように、第1~第4断続部CL51~CL54をオン状態とすることで、シャフトS51、左駆動輪LW、及び右駆動輪RWが固定され、パーキング状態となる。
【0090】
次に、
図22に示すように、第1~第4断続部CL51~CL54をオフ状態とすることで、シャフトS51、左駆動輪LW、及び右駆動輪RWが自由に回転する、ニュートラル状態となる。
【0091】
次に、
図23に示すように、第1断続部CL51をオン状態、第2断続部CL52をオン状態且つ第4断続部CL54をオフ状態、第3断続部CL53をオフ状態とし、モータMを前進方向に回転させると、黒塗りの矢印で示すように、モータMの動力がシャフトS51を介して左駆動輪LW及び右駆動輪RWに分配され、移動体M5が前進する。モータMを後進方向に回転させると、白抜きの矢印で示すように、移動体M5が後進する。
【0092】
次に、
図24に示すように、第1断続部CL51をオン状態、第2断続部CL52をオフ状態且つ第4断続部CL54をオン状態、第3断続部CL53をオフ状態とし、モータMを前進方向に回転させると、黒塗りの矢印で示すように、モータMの動力がシャフトS51を介して左駆動輪LWと右駆動ギヤG54に分配される。右駆動ギヤG54に分配された動力は逆転機構R51を介して右駆動輪RWに伝達される。このとき、右駆動輪RWに伝達された動力は、左駆動輪LWに伝達された動力と同じ大きさで反対方向の動力となる。したがって、移動体M5は左駆動輪LWと右駆動輪RWの真ん中を中心として超信地旋回を行う。なお、モータMを後進方向に回転させると、反対方向に超信地旋回を行う。
【0093】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0094】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0095】
(1) 駆動部(モータM)と被駆動部(連接軸135/左駆動輪LW、右駆動輪RW)との動力伝達経路上に配置される動力伝達装置(変速機T/動力伝達装置TM5)であって、
第1回転体(第1従動ギヤ184/左駆動輪LW)と、
第2回転体(第2シャフト182/シャフトS51)と、
断続装置(断続機構210、220、230/断続部CL51、CL52、CL53)と、を備え、
該断続装置は、
前記第1回転体と前記第2回転体との間に配置される第1係合子(第1断続機構210のローラ281/第1断続部CL51のローラ281)と、
前記第1係合子を、前記第1回転体と前記第2回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第1操作部(操作機構240、断続機構210のリテーナ282、ピン283、ガイド284/操作機構CS51、第1断続部CL51のリテーナ282、ピン283、ガイド284)と、を有し、
前記第1操作部は、
前記第1係合子を動かす第1作動子(第1断続機構210のリテーナ282/第1断続部CL51のリテーナ282)と、
該第1作動子を介して前記第1係合子を操作可能に、又は該第1作動子を介さず前記第1係合子を操作可能に設けられる第1操作子(操作機構240、断続機構210のピン283、ガイド284/操作機構CS51、第1断続部CL51のピン283、ガイド284)と、を有し、
前記第1回転体及び前記第2回転体は、
互いの回転軸線が一致するように、且つ、前記回転軸線と直交する直交方向視で、互いの少なくとも一部が重なり合うよう配置され、
前記第1操作子は、
前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第1進退子(第1断続機構210のピン283/第1断続部CL51のピン283)と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第1延在部(操作ロッド241/操作ロッドRD51)と、を有し、
前記動力伝達装置は、前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される第3回転体(第2従動ギヤ186/右駆動輪RW)及び第4回転体(第2シャフト182/シャフトS51)をさらに備え、
前記断続装置は、
前記第3回転体と前記第4回転体との間に配置される第2係合子(第2断続機構220のローラ281、第2断続部CL52のローラ281)と、前記第2係合子を、前記第3回転体と前記第4回転体とが一体回転可能な係合状態と、前記第3回転体と前記第4回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第2操作部(操作機構240、第2断続機構220のリテーナ282、ピン283、ガイド284/操作機構CS51、第2断続部CL52のリテーナ282、ピン283、ガイド284)と、をさらに有し、
前記動力伝達装置は、前記回転軸線と回転軸線が一致するよう配置される第5回転体(第2シャフト182/シャフトS51)と、該第5回転体を収容するよう設けられる非回転体(ロックギヤ402/固定スリーブG53)と、をさらに備え、
前記断続装置は、
前記第5回転体と前記非回転体との間に配置される第3係合子(第3断続機構230のローラ281/第3断続部CL53のローラ281)と、
前記第3係合子を、前記第5回転体と前記非回転体とが相対回転不能な係合状態と、前記第5回転体と前記非回転体とが相対回転可能な非係合状態と、に操作する第3操作部(操作機構240、第3断続機構230のリテーナ282、ピン283、ガイド284/操作機構CS51、第3断続部CL53のリテーナ282、ピン283、ガイド284)と、をさらに有する、動力伝達装置。
【0096】
(1)によれば、第3係合子を係合状態とすることで、非回転体に対する第5回転体の相対回転が規制されるので、第5回転体をロックすることができる。これにより、第5回転体を介して被駆動部をロック状態に維持することが可能となる。
【0097】
(2) (1)に記載の動力伝達装置であって、
前記第2操作部は、
前記第2係合子を動かす第2作動子(第2断続機構220のリテーナ282/第2断続部CL52のリテーナ282)と、
該第2作動子を介して前記第2係合子を操作可能に、又は該第2作動子を介さず前記第2係合子を操作可能に設けられる第2操作子(操作機構240、第2断続機構220のピン283、ガイド284/操作機構CS51、第2断続部CL52のピン283、ガイド284)と、を有し、
前記第3操作部は、
前記第3係合子を動かす第3作動子(第3断続機構230のリテーナ282/第3断続部CL53のリテーナ282)と、
該第3作動子を介して前記第3係合子を操作可能に、又は該第3作動子を介さず前記第3係合子を操作可能に設けられる第3操作子(操作機構240、第3断続機構230のピン283、ガイド284/操作機構CS51、第3断続部CL53のピン283、ガイド284)と、を有する、動力伝達装置。
【0098】
(3) (2)に記載の動力伝達装置であって、
前記第2操作子は、前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第2進退子(第2断続機構220のピン283/第2断続部CL52のピン283)と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第2延在部(操作ロッド241/操作ロッドRD51)と、を有し、
前記第2進退子は、該第2進退子の前記直交方向における前記回転軸線側の端部である内端が、前記第2延在部と当接するよう設けられ、
前記第3操作子は、
前記回転軸線と直交する直交方向に沿って進退移動可能に設けられる第3進退子(第3断続機構230のピン283/第3断続部CL53のピン283)と、
前記回転軸線に沿って延在し、かつ該回転軸線に沿って進退移動可能に設けられる第3延在部(操作ロッド241/操作ロッドRD51)と、を有し、
前記第3進退子は、該第3進退子の前記直交方向における前記回転軸線側の端部である内端が、前記第3延在部と当接するよう設けられる、動力伝達装置。
【0099】
(4) (3)に記載の動力伝達装置であって、
前記第2回転体、前記第4回転体、及び前記第5回転体は一体回転可能に設けられ、
前記第1延在部、前記第2延在部、及び第3延在部は一体に設けられるとともに、前記回転軸線方向において異なる位置に位置するよう配置される、動力伝達装置。
【0100】
(4)によれば、部品点数を削減できる。また、組付けが容易になる。
【0101】
(5) (4)に記載の動力伝達装置であって、
一体に設けられた前記第1延在部、前記第2延在部、及び第3延在部を延在部(操作ロッド241/操作ロッドRD51)とすると、
前記延材部が、
前記回転軸線方向における第1の位置(中下ポジション)に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における内側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における外側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、
前記回転軸線方向における第2の位置(下ポジション)に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記内側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記外側に位置する、動力伝達装置。
【0102】
(5)によれば、変速比の異なる変速機構を利用することができる。
【0103】
(6) (4)又は(5)に記載の動力伝達装置であって、
前記延在部が、
前記回転軸線方向における第3の位置(中上ポジション)に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における外側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記外側に位置する、動力伝達装置。
【0104】
(6)によれば、動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態を実現できる。
【0105】
(7) (6)に記載の動力伝達装置であって、
前記第1進退子は、前記直交方向における前記外側に位置するときに前記第1係合子が前記非係合状態となり、内側に位置するときに前記第1係合子が前記係合状態となるよう設けられ、
前記第2進退子は、前記直交方向における前記外側に位置するときに前記第2係合子が前記非係合状態となり、前記内側に位置するときに前記第2係合子が前記係合状態となるよう設けられ、
前記第3進退子は、前記直交方向における前記外側に位置するときに前記第3係合子が前記非係合状態となり、前記内側に位置するときに前記第3係合子が前記係合状態となるよう設けられる、動力伝達装置。
【0106】
(7)によれば、進退子の位置を管理することで係合子の状態を統一できるので、制御が容易になる。
【0107】
(8) (4)から(7)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記延在部が、
前記回転軸線方向における第4の位置(上ポジション)に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における外側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記外側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における内側に位置する、動力伝達装置。
【0108】
(8)によれば、延材部をロックすることで被駆動部をロック状態に維持することが可能となる。
【0109】
(9) (4)から(8)のいずれかに記載の動力伝達装置であって、
前記延在部が、
前記回転軸線方向における第5の位置に位置するときに、前記第1進退子が前記直交方向における内側に位置し、前記第2進退子が前記直交方向における前記内側に位置し、且つ、前記第3進退子が前記直交方向における前記内側に位置する、動力伝達装置。
【0110】
(9)によれば、延材部をロックすることに加えて異なる変速機構も係合状態になるので、被駆動部をロック状態に維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0111】
135 連接軸(被駆動部)
182 第2シャフト(第2回転体、第4回転体、第5回転体)
184 第1従動ギヤ(第1回転体)
186 第2従動ギヤ(第3回転体)
210 第1断続機構(断続装置)
220 第2断続機構(断続装置)
230第3断続機構(断続装置)
240 操作機構(第1操作部、第1操作子、第2操作部、第2操作子、第3操作部、第3操作子)
241 操作ロッド(第1延在部、第2延在部、第3延在部、延材部)
281 ローラ(第1係合子、第2係合子、第3係合子)
282 リテーナ(第1操作部、第1作動子、第2操作部、第2作動子、第3操作部、第3作動子)
283 ピン(第1操作部、第1操作子、第1進退子、第2操作部、第2操作子、第2進退子、第3操作部、第3操作子、第3進退子)
284 ガイド(第1操作部、第1操作子、第2操作部、第2操作子、第3操作部、第3操作子)
402 ロックギヤ(非回転体)
CS51 操作機構(第1操作部、第1操作子、第2操作部、第2操作子、第3操作部、第3操作子)
G53 固定スリーブ(非回転体)
LW 左駆動輪(被駆動部、第1回転体)
RW 右駆動輪(被駆動部、第3回転体)
RD51 操作ロッド(第1延在部、第2延在部、第3延在部、延材部)
M モータ(駆動部)
S51 シャフト(第2回転体、第4回転体、第5回転体)
T 変速機(動力伝達装置)
TM5 動力伝達装置