(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179350
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】消防車
(51)【国際特許分類】
A62C 27/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A62C27/00 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098122
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】横井 大輔
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189AA04
2E189AD00
(57)【要約】
【課題】消防ポンプの位置を工夫することによって全体の機器レイアウトの自由度を高めた電動の消防車を提供する。
【解決手段】消防車1は、キャビン10と、キャビン10よりも後方に設けられた荷台20と、車両の走行用モータ3と、消火剤を吐出する消防ポンプ30と、消防ポンプ30を駆動するポンプ用モータ40と、走行用モータ3及びポンプ用モータ40に電気を供給するバッテリ60とを備え、荷台20においてポンプ用モータ40が消防ポンプ30よりも後方に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと、
前記キャビンよりも後方に設けられた荷台と、
車両の走行用モータと、
消火剤を吐出する消防ポンプと、
前記消防ポンプを駆動するポンプ用モータと、
前記走行用モータ及び前記ポンプ用モータに電気を供給するバッテリと、を備え、
前記荷台において前記ポンプ用モータが前記消防ポンプよりも後方に設けられていることを特徴とする消防車。
【請求項2】
前記キャビンと前記消防ポンプの間には、前記消防ポンプに接続する吸管を収納する吸管収納スペースが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【請求項3】
前記吸管収納スペースに前記吸管を巻き取る吸管巻取装置を備え、
前記吸管巻取装置は、回転軸を車両前後方向として立設されていることを特徴とする請求項2に記載の消防車。
【請求項4】
前記消防ポンプは前側に前面吸水口を有し、
前記吸管巻取装置に巻回された前記吸管は、前記吸管巻取装置の中央部に設けられた吸水配管を介して前記消防ポンプの前記前面吸水口に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の消防車。
【請求項5】
前記消防ポンプが前記車両の後輪の上方に位置し、前記ポンプ用モータが前記後輪よりも後方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の消防車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防ポンプを備えた消防車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では電気で走行するEVトラックが登場しているが、消防車の電動化はあまり進んでいない。
ここで、特許文献1には、ePTOユニットを搭載可能な電動作業車両が開示されており、電動作業車両の具体例の一つとして消防車両が挙げられている(段落0003)。
また、特許文献2には、電池装置と、電池装置により駆動される電動モータと、電動モータに接続され電動モータの駆動により作動する車輌走行部と、電動モータに接続され電動モータの駆動により作動する消防用機器とを備えた電気駆動式の消防車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-101799号公報
【特許文献2】特開2013-5932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消防ポンプを有する消防車において、消防ポンプが荷台に占める割合は小さくないが、消防車の荷台に出来るだけ多くの機器や資機材を積みたいというユーザー要望に応えるべく、従来のエンジン駆動の車両においては、種々の工夫を重ねて機器や資機材の設置スペースを確保している。しかし、電気自動車はエンジン駆動の車両とは構成が異なるため、エンジン駆動の消防車におけるそれらの工夫をそのまま適用できない場合もある。
ここで、特許文献1、2は、消防ポンプの位置を工夫することにより全体の機器レイアウトの自由度を高めようとするものではない。
そこで、本発明は、消防ポンプの位置を工夫することによって全体の機器レイアウトの自由度を高めた電動の消防車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の消防車1は、キャビン10と、キャビン10よりも後方に設けられた荷台20と、車両の走行用モータ3と、消火剤を吐出する消防ポンプ30と、消防ポンプ30を駆動するポンプ用モータ40と、走行用モータ3及びポンプ用モータ40に電気を供給するバッテリ60とを備え、荷台20においてポンプ用モータ40が消防ポンプ30よりも後方に設けられていることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の消防車1において、キャビン10と消防ポンプ30の間には、消防ポンプ30に接続する吸管70を収納する吸管収納スペース80が設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の消防車1において、吸管収納スペース80に吸管70を巻き取る吸管巻取装置90を備え、吸管巻取装置90は、回転軸を車両前後方向として立設されていることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の消防車1において、消防ポンプ30は前側に前面吸水口33を有し、吸管巻取装置90に巻回された吸管70は、吸管巻取装置90の中央部に設けられた吸水配管110を介して消防ポンプ30の前面吸水口33に接続されていることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の消防車1において、消防ポンプ30が車両の後輪2Bの上方に位置し、ポンプ用モータ40が後輪2Bよりも後方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、全体の機器レイアウトの自由度を高めた電動の消防車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例による消防車の荷台に搭載された消防ポンプやポンプ用モータ等の配置を示す図
【
図2】同消防車の荷台にカバーや資機材載置台等を取り付けた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施の形態による消防車は、キャビンと、キャビンよりも後方に設けられた荷台と、車両の走行用モータと、消火剤を吐出する消防ポンプと、消防ポンプを駆動するポンプ用モータと、走行用モータ及びポンプ用モータに電気を供給するバッテリとを備え、荷台においてポンプ用モータが消防ポンプよりも後方に設けられているものである。
本実施の形態によれば、消防ポンプをポンプ用モータよりも前にした配置とすることにより、全体の機器レイアウトの自由度が高まり、機器の設置スペースや資機材の保管スペースなどの最適化を図りやすくなる。
【0009】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による消防車において、キャビンと消防ポンプの間には、消防ポンプに接続する吸管を収納する吸管収納スペースが設けられているものである。
本実施の形態によれば、キャビンのすぐ後方に吸管を収納できるため、現場到着後にキャビンから降りた消防隊員は、すぐに吸管の引き出し作業に取り掛かれる。これにより、吸管が車両後側に設けられている場合よりも消火開始までの時間を短縮することができる。
【0010】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による消防車において、吸管収納スペースに吸管を巻き取る吸管巻取装置を備え、吸管巻取装置は、回転軸を車両前後方向として立設されているものである。
本実施の形態によれば、消防ポンプとキャビンの間に設けた吸管収納スペースを吸管巻取装置の設置箇所とすることで、他の資機材の収納スペース等をさほど減らすことなく吸管巻取装置を設置することができ、それにより吸管の巻取りや引出しの作業効率を向上させ、消防隊員の負担を軽減することができる。
【0011】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による消防車において、消防ポンプは前側に前面吸水口を有し、吸管巻取装置に巻回された吸管は、吸管巻取装置の中央部に設けられた吸水配管を介して消防ポンプの前面吸水口に接続されているものである。
本実施の形態によれば、消防ポンプの前側に吸水口があることで、消防ポンプよりも前方に位置する吸管巻取装置に巻回された吸水管との接続に用いる吸水配管を短くすることができる。
【0012】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態による消防車において、消防ポンプが車両の後輪の上方に位置し、ポンプ用モータが後輪よりも後方に位置しているものである。
本実施の形態によれば、消防ポンプの重量によって車両の後側に荷重がかかり軸重に余裕がなくなってしまうことを抑制できる。
【実施例0013】
以下、本発明の一実施例による消防車について説明する。
図1は消防車の荷台に搭載された消防ポンプやポンプ用モータ等の配置を示す図、
図2は
図1の消防車の荷台にカバーや資機材載置台等を取り付けた状態を示す図である。
図3は消防車の平面図であり、
図3(a)は走行用モータやバッテリ等の配置を示し、
図3(b)は消防ポンプやポンプ用モータ等の配置を示している。
図4は消防車の側面断面図であり、
図4(a)は
図3のA-A断面を示し、
図4(b)は
図3のB-B断面を示している。なお、各図においては一部の機器や部材等を省略している。
消防車1は、電気自動車(EV)であり、車両の走行用モータ3及び走行用インバータ4と、キャビン10と、キャビン10よりも後方に設けられた荷台20と、消火水を吐出する消防ポンプ30と、消防ポンプ30を駆動するポンプ用モータ40と、ポンプ用モータ40の駆動に用いるポンプモータ用インバータ50と、走行用モータ3及びポンプ用モータ40に電気を供給する複数のバッテリ60と、消防ポンプ30が外部水源から吸水する際に用いる吸管70と、吸管70を収納する吸管収納スペース80と、円形の吸管巻取装置(ホースリール)90と、消火水を貯留する消火水タンク100を備える。
走行用モータ3にはドライブシャフト5が接続されており、デファレンシャル6を介して後輪2Bが駆動される。消防車1を電気自動車とすることで、エンジン駆動の車両よりも環境負荷や騒音を低減することができる。
キャビン10は、運転席及び助手席が設けられた前方キャビン11と、後部座席が設けられた後方キャビン12とからなる。車両の前輪2Aは前方キャビン11の下方に位置する。
【0014】
消防ポンプ30の左右側それぞれには、三つの吐水口31と一つの側面吸水口32が設けられている。また、消防ポンプ30の前側には一つの前面吸水口33が設けられている。側面吸水口32は、中継口として用いることもできる。
吐水口31や側面吸水口32の開閉に用いるコック等の弁は本実施例では手動としているが、タブレット等の無線端末で操作可能な電動弁とすることもできる。その場合は、機関員が消防車1から離れた位置で、放水ホースの筒先を目視しながら消防ポンプ30の操作を行うこと等が可能となる。
【0015】
ポンプ用モータ40は、荷台20に配置されたシャシフレーム21上にサブフレーム22を介して搭載されており、本体の大部分が後輪2Bよりも後方に位置する。消防ポンプ30は、ポンプ用モータ40よりも前方においてシャシフレーム21上にサブフレーム22を介して搭載されており、本体の大部分が後輪2Bの上方に位置する。消防ポンプ30とポンプ用モータ40は、前後方向に直列的に接続されている。
消防ポンプ30をポンプ用モータ40よりも前にした配置とすることにより、全体の機器レイアウトの自由度が高まり、機器の設置スペースや資機材の保管スペースなどの最適化を図りやすくなる。また、消防ポンプ30の大部分が後輪2Bの上方に位置し、ポンプ用モータ40の大部分が後輪2Bよりも後方に位置することで、消防ポンプ30の重量によって車両の後側に荷重がかかり軸重に余裕がなくなってしまうことを抑制できる。
【0016】
荷台20のうち消防ポンプ30とキャビン10の間には、渦巻き状にした吸管70を車両左右方向に向け立てた状態で収納される吸管収納スペース80が設けられている。
吸管収納スペース80がキャビン10に近接して設けられていることにより、現場到着後にキャビン10から降りた消防隊員は、吸管収納スペース80に収納されている吸管70の引き出し作業にすぐに取り掛かることができる。このため、吸管70が車両後側に設けられている場合よりも消火開始までの時間を短縮することが可能となる。
【0017】
吸管収納スペース80には、円形の吸管巻取装置(ホースリール)90が、回転軸を車両前後方向として立設されている。吸管70は車両の左右どちらからでも巻取り及び引出しが可能である。吸管巻取装置90に巻回された吸管70の後端は、吸管巻取装置90の中央部に設けられた吸水配管110を介して消防ポンプ30の前面吸水口33に接続されている。
消防ポンプ30とキャビン10の間に設けた吸管収納スペース80を吸管巻取装置90の設置箇所とすることで、他の資機材の収納スペース等をさほど減らすことなく吸管巻取装置90を設置することができ、それにより吸管70の巻取りや引出しの作業効率を向上させ、消防隊員の負担を軽減することができる。また、消防ポンプ30に前面吸水口33を設け、消防ポンプ30の前方に吸管巻取装置90を設置することで、吸水配管110の長さが短くて済み、スペースを節約することができる。
なお、吸管巻取装置90を電動で回転するようにすれば、吸管70の巻取りを自動化することもできる。この場合は、バッテリ60から吸管巻取装置90へ電気を供給する。
【0018】
複数のバッテリ60は、シャシフレーム21間や、シャシフレーム21の側方等に配置されており、バッテリ60の上面は、シャシフレーム21の上面以下となっている。消防ポンプ30は、バッテリ60よりも後方においてシャシフレーム21の上方に位置する。
消防ポンプ30のポンプドレン口35には、下方へ延出したドレン配管36の一端が接続されている。ドレン配管36は、他端がポンプドレン口35よりも後方となるように配設されており、他端の近傍にはドレンバルブ34が設けられている。これにより、消防ポンプ30の前方に位置するバッテリ60にドレンバルブ34が干渉することを避け、メンテナンス時等においてドレンバルブ34へのアクセスを容易とすることができる。