(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179352
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジンの軸受構造
(51)【国際特許分類】
F02C 7/06 20060101AFI20241219BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20241219BHJP
F02C 7/32 20060101ALI20241219BHJP
F02C 3/08 20060101ALI20241219BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20241219BHJP
F16C 35/08 20060101ALI20241219BHJP
F16C 23/06 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F02C7/06 A
F02C6/00 B
F02C7/32
F02C3/08
F01D25/16 Z
F16C35/08
F16C23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098125
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 篤典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿宏
(72)【発明者】
【氏名】大▲桑▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】西澤 拓磨
【テーマコード(参考)】
3J012
【Fターム(参考)】
3J012AB07
3J012BB05
(57)【要約】
【課題】エンジン内部の温度により、エンジンシャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制し、エンジンシャフトを安定して支持可能なガスタービンエンジンの軸受構造を提供する。
【解決手段】
ガスタービンエンジンの軸受構造は、前後方向に延びるエンジンシャフトと、エンジンシャフトの軸方向に並んで配置されている圧縮機、燃焼器、及び、タービンと、エンジンシャフトを支持する複数の軸受と、を備える。複数の軸受は、燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びるエンジンシャフトと、
前記エンジンシャフトの軸方向に並んで配置されている圧縮機、燃焼器、及び、タービンと、
前記エンジンシャフトを支持する複数の軸受と、を備え、
前記複数の軸受は、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている、ガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項2】
前記圧縮機は、高圧圧縮機、及び、前記高圧圧縮機よりも前記軸方向の前方に配置されている低圧圧縮機を含み、
前記タービンは、高圧タービン、及び、前記高圧タービンよりも前記軸方向の後方に配置されている低圧タービンを含み、
前記エンジンシャフトは、前記高圧圧縮機及び前記高圧タービンを接続する中空の高圧シャフト、及び、前記高圧シャフトに挿通され、前記低圧圧縮機及び前記低圧タービンを接続する低圧シャフトを含み、
前記複数の軸受は、前記高圧シャフトを支持するように配置されている、請求項1に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項3】
前記高圧圧縮機は、軸流圧縮機又は遠心圧縮機である、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項4】
前記複数の軸受のうち、隣接する前記軸受の間の前記高圧シャフトの最大外径は、前記複数の軸受のうち、最も後方に位置する軸受よりも後方の前記高圧シャフトの最大外径より大きい、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項5】
前記低圧圧縮機が配置されている領域の前記高圧シャフトの最大外径は、前記領域よりも前記軸方向の後方の領域の前記高圧シャフトの最大外径より大きい、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項6】
前記高圧圧縮機は、前記エンジンシャフトの回転軸線の周りに回転するインペラを有し、
前記複数の軸受は、前記インペラよりも前記軸方向の前方に配置されている、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項7】
前記複数の軸受は、前記軸方向において、前記低圧圧縮機の前端及び前記高圧圧縮機の間に配置されている、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項8】
前記軸方向に延びる中空の回転軸と、前記回転軸と一体回転するロータとを有し、且つ、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている発電機を更に備え、
前記複数の軸受は、前記発電機の前記軸方向における前方及び後方に配置されている、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項9】
前記発電機の前記回転軸及び前記ロータは、前記高圧シャフトと共に回転し、
前記高圧シャフト及び前記回転軸は、互いに周方向及び前記軸方向への相対移動が規制されている、請求項8に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項10】
前記高圧シャフト及び前記回転軸は、溶接、焼き嵌め、又はFixedスプラインのうち少なくともいずれかにより、互いに結合されている、請求項9に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項11】
前記高圧シャフトと一体回転する中空のロータを有し、且つ、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている発電機を更に備え、
前記高圧シャフトは、前記高圧圧縮機に接続される第1軸部と、前記ロータに挿入される第2軸部と、含む単一のシャフトである、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項12】
前記軸方向に延びる中空の回転軸と、前記回転軸と一体回転するロータを有し、且つ、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている発電機を更に備え、
前記高圧シャフトの最大外径は、前記回転軸の最大外径よりも大きい、請求項2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【請求項13】
前記高圧シャフトの後端は、前記低圧タービンよりも前記軸方向の前方に配置されている、請求項2~12のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンエンジンの軸受構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、ガスタービンエンジンは、圧縮機セクション、燃焼セクション、タービンセクション、及び、圧縮機セクションとタービンセクションとを接続するシャフトを含む。このシャフトは、複数の軸受により支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガスタービンエンジンが駆動すると、圧縮機とタービンとを接続するエンジンシャフトが回転すると共に、エンジン内部が温度上昇する。これにより、エンジンシャフトを支持する軸受に負荷が掛かる。このとき、特に燃焼セクション及びタービンセクションが高温になる。
【0005】
そこで、本開示の一態様は、エンジン内部の温度により、エンジンシャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制し、エンジンシャフトを安定して支持可能なガスタービンエンジンの軸受構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るガスタービンエンジンの軸受構造は、前後方向に延びるエンジンシャフトと、前記エンジンシャフトの軸方向に並んで配置されている圧縮機、燃焼器、及び、タービンと、前記エンジンシャフトを支持する複数の軸受と、を備え、
前記複数の軸受は、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、エンジン内部の温度により、エンジンシャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制し、エンジンシャフトを安定して支持可能なガスタービンエンジンの軸受構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るガスタービンエンジンの概要図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態に係るガスタービンエンジンの軸受構造を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。以下に示す「前方」とは、ガスタービンエンジン内の空気の流通方向の上流側を意味する。「後方」とは、前記流通方向の下流側を意味する。「径方向」とは、エンジンシャフトの回転軸線に対する直交方向を意味する。また「軸方向」とは、エンジンシャフトの軸方向を意味する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るガスタービンエンジン1(以下、単に「エンジン1」とも称する。)の概要図である。エンジン1は、一例として乗物用であるが、これに限らない。具体的にエンジン1は、航空機用である。エンジン1は、エンジンシャフト7を支持する軸受構造2を備える。
【0011】
ガスタービンエンジンの駆動時には、通常、エンジンシャフトが高回転数で駆動されて、エンジン内部の温度が上昇する。これにより、エンジンのタービンセクションに配置されてエンジンシャフトを支持する軸受に負荷が掛かる。本実施形態の軸受構造2は、詳細を後述するように、エンジンシャフト7を支持する複数の軸受BR1、BR2を備え、且つ、複数の軸受BR1、BR2が、燃焼器5よりも軸方向の前方に配置されている。これによりエンジン1は、高温下で高回転される過酷な環境において複数の軸受BR1、BR2が使用されるのを抑制できる。このようにエンジン1は、エンジンシャフト7を複数の軸受BR1、BR2により安定して支持できるように構成されている。
【0012】
一例として、エンジン1は、2軸ガスタービンエンジンである。エンジン1は、ファン3、圧縮機4、燃焼器5、タービン6、圧縮機4及びタービン6を接続するエンジンシャフト7、発電機8、少なくとも圧縮機4及び燃焼器5を収容するケーシング9、少なくとも1つの電動補機10、及び、筒体11を備える。圧縮機4、燃焼器5、及び、タービン6は、エンジンシャフト7の軸方向に並んで配置されている。
【0013】
また、エンジン1の軸受構造2は、エンジンシャフト7を回転自在に支持する複数の軸受BR1、BR2を備える。複数の軸受BR1、BR2は、軸方向に離隔して配置されている。複数の軸受BR1、BR2は、エンジンシャフト7を複数個所で支持している。一例として、本実施形態の複数の軸受BR1、BR2は、異なる種類の軸受を含む。具体例として、複数の軸受BR1、BR2は、ボールベアリング、ローラーベアリング、又は、これらの組合せを含む。
【0014】
圧縮機4は、エンジン1の前方から供給される空気を圧縮する。燃焼器5は、燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する。燃焼器5は、燃焼ガスが生成される内部空間Sと、内部空間Sよりも後方から内部空間Sに対して燃料を噴出するノズルNとを有する。本実施形態の燃焼器5は、一例として、内部空間Sが後側に向けて折り返されるリバースフロー式である。
【0015】
タービン6は、燃焼器5で生成された燃焼ガスが供給される。エンジンシャフト7は、エンジン1の前後方向に延び、所定の回転軸線Xの周りに回転される。エンジンシャフト7は、回転自在に支持されている。ファン3は、エンジンシャフト7に機械的に接続されて、エンジンシャフト7と共に回転する。圧縮機4、燃焼器5、及び、タービン6は、この順に、前方から後方に向けて配置されている。
【0016】
圧縮機4は、低圧圧縮機13及び高圧圧縮機14を含む。本実施形態の高圧圧縮機14は、低圧圧縮機13よりも軸方向の後方に配置されている。一例として、低圧圧縮機13は、軸流圧縮機である。また一例として、高圧圧縮機14は、軸流圧縮機又は遠心圧縮機である。高圧圧縮機14は、回転軸線Xの周りに回転するインペラ15を有する。タービン6は、エンジンシャフト7に機械的に接続される。タービン6は、低圧タービン16及び高圧タービン17を含む。低圧タービン16は、高圧タービン17よりも軸方向の後方に配置されている。また一例として、エンジン1は、単一の高圧圧縮機14を備える。
【0017】
エンジンシャフト7は、高圧シャフト18及び低圧シャフト19を含む。高圧シャフト18は、中空部材であり、高圧圧縮機14及び高圧タービン17を接続する。高圧シャフト18は、軸方向において、隣接する2つの軸受BR1、BR2の間に配置されて高圧シャフト18の外径を部分的に拡大する拡径部18aを有する。拡径部18aは、高圧シャフト18の径方向厚みを増大させることで、高圧シャフト18の剛性及び機械的強度を向上させる。複数の軸受BR1、BR2は、高圧シャフト18を支持する。一例として、複数の軸受BR1、BR2のうち、隣接する軸受BR1、BR2の間の高圧シャフト18の最大外径は、複数の軸受BR1、BR2のうち、最も後方に位置する軸受BR2よりも後方の高圧シャフト18の最大外径より大きい。また一例として、低圧圧縮機13が配置されている領域の高圧シャフト18の最大外径は、前記領域よりも軸方向の後方の領域の高圧シャフト18の最大外径より大きい。一例として、低圧圧縮機13が配置されている領域の高圧シャフト18の最大外径は、拡径部18aの最大外径である。
【0018】
高圧シャフト18の後端18bは、低圧タービン16よりも軸方向の前方に配置されている。また、高圧シャフト18の後端18bは、径方向で燃焼器5と重なる位置に配置されている。一例として、本実施形態の高圧シャフト18の後端18bは、ノズルNの噴出口よりも軸方向の前方に配置されている。
【0019】
低圧シャフト19は、低圧圧縮機13及び低圧タービン16を接続する。低圧シャフト19は、高圧シャフト18に挿通され、回転軸線Xの周りに回転される。エンジン1の駆動時において、低圧シャフト19は、高圧シャフト18よりも低速で回転される。低圧タービン16は、低圧シャフト19を介してファン3に連結されている。
【0020】
エンジン1では、高圧シャフト18を支持する全ての軸受BR1、BR2は、燃焼器5よりも、軸方向の前方に配置されている。また、複数の軸受BR1、BR2のうち、最も後方に位置する軸受BR2は、高圧圧縮機14の後端よりも軸方向の前方に配置されている。本実施形態の複数の軸受BR1、BR2は、一例として、高圧圧縮機14のインペラ15よりも軸方向の前方に配置されている。また一例として、複数の軸受BR1、BR2は、軸方向において、低圧圧縮機13の前端及び高圧圧縮機14の後端の間に配置されている。
【0021】
発電機8は、エンジンシャフト7の回転駆動力により駆動されて発電する。発電機8により発電された電力は、電動補機10を駆動する。また発電機8は、エンジン1の始動時等にエンジンシャフト7を回転駆動するスターター機能を有していてもよい。この場合、言い換えると、発電機8は、モータジェネレータである。
【0022】
発電機8は、ケーシング9の内部に配置されている。本実施形態の発電機8は、筒体11に収容された状態で、高圧圧縮機14の前方に配置されている。発電機8は、軸方向に延びる中空の回転軸20、回転軸20と一体回転するロータ21、及び、ロータ21の径方向外側に配置されたステータ22を有する。一例として、回転軸20及びロータ21は、高圧シャフト18と共に回転する。
【0023】
発電機8は、燃焼器5よりも軸方向の前方に配置されている。複数の軸受BR1、BR2は、発電機8の軸方向における前方及び後方に配置されている。複数の軸受BR1、BR2のうち、発電機8よりも前方で軸受BR1が支持する高圧シャフト18の部分の外径と、発電機8よりも後方で軸受BR2が支持する高圧シャフト18の部分の外径とは、同一でもよいし、異なっていてもよい。本実施形態の高圧シャフト18の最大外径は、回転軸20の最大外径よりも大きい。一例として、高圧シャフト18の最大外径は、拡径部18aの最大外径である。
【0024】
高圧シャフト18及び回転軸20は、互いに周方向及び軸方向への相対移動が規制されている。言い換えると、高圧シャフト18及び回転軸20は、互いに固着されている。本実施形態では、高圧シャフト18及び回転軸20は、例えば、溶接、焼き嵌め、又は、Fixedスプラインのうちの少なくともいずれかにより、互いに結合されている。ここで「Fixedスプライン」とは、高圧シャフト18及び回転軸20のスプライン構造による相対移動が、高圧シャフト18及び回転軸20の結合により不可能となるように、高圧シャフト18及び回転軸20が互いに固着される構造を指す。高圧シャフト18及び回転軸20が焼き嵌めされる場合、高圧シャフト18及び回転軸20は、例えば、カービックカップリングにより互いに結合される結合部分を含む。
【0025】
ケーシング9は、回転軸線Xの軸線方向に延びる筒体である。本実施形態のケーシング9は、エンジンシャフト7、ファン3、圧縮機4、燃焼器5、及び、タービン6を収容する。一例として、ケーシング9は、内殻25、外殻26、及び、ストラット27を有する。内殻25は、圧縮機4、燃焼器5、及び、タービン6を収容する。外殻26は、内殻25から径方向外側に離間した状態で、内殻25と同心円状に配置されている。内殻25と外殻26との間には、筒状のバイパス路BPが配置されている。ファン3により吸い込まれた空気の一部は、バイパス路BPを通流して後方に排出される。ケーシング9の外周面には、電動補機10が取り付けられている。ストラット27は、径方向に延びて内殻25と外殻26とを連結する。
【0026】
筒体11は、低圧圧縮機13と高圧圧縮機14とを軸方向に繋いでいる。筒体11は、前方から後方に向けて、外径及び内径が縮径している。筒体11は、低圧圧縮機13から高圧圧縮機14に向かう圧縮空気流路Rの一部を画定している。本実施形態の筒体11の内部には、発電機8が配置されている。
【0027】
エンジン1では、エンジンシャフト7を支持する複数の軸受BR1、BR2のうち、最も後方に位置する軸受BR2は、燃焼器5よりも軸方向の前方に配置されている。本実施形態のエンジン1では、高圧シャフト18を支持する全ての軸受BR1、BR2が、燃焼器5よりも軸方向の前方に配置されている。
【0028】
以上の構成を備える本実施形態では、エンジン1内部の温度により、エンジンシャフト7を支持する軸受BR1、BR2に掛かる負荷を抑制し、エンジンシャフト7を安定して支持できる。
【0029】
また、ガスタービンエンジンを小型化及び軽量化し、駆動効率を高める場合、エンジンの圧縮比及び燃焼温度を上げる必要がある。これに伴い、エンジンが高温になると共に、エンジンシャフトが高回転で駆動されることが考えられる。本実施形態によれば、このような場合であっても、軸受BR1、BR2に掛かる負荷を抑制し、エンジンシャフト7を安定して支持できる。
【0030】
また本実施形態では、エンジンシャフト7を支持する軸受のうち、高圧シャフト18を支持する全ての軸受BR1、BR2が、燃焼器5よりも軸方向の前方に配置されている。これにより、低圧シャフト19に比べて高回転で回転される高圧シャフト18を支持する軸受BR1、BR2が、燃焼器5による高温に曝されて使用されるのを抑制できる。また、エンジン1の部品点数や生産コストの低減、及び、エンジン1の軽量化にもなりうる。
【0031】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係るガスタービンエンジン101の軸受構造102を示す拡大図である。以下、第2実施形態について、第1実施形態との差異を中心に説明する。
図2に示されるように、本実施形態の高圧シャフト118は、高圧圧縮機14に接続される第1軸部118cと、発電機108のロータ21に挿入される第2軸部118dと含む単一のシャフトである。軸受構造102は、発電機108の軸方向における前方及び後方に配置された複数の軸受BR1、BR2を備える。高圧シャフト118は、軸方向において、隣接する2つの軸受BR1、BR2の間に配置された拡径部118aを有する。
【0032】
第2実施形態によれば、発電機108は、軸方向に延びる中空の回転軸を有しておらず、高圧シャフト118の一部である第2軸部118dが、実質的に発電機108の回転軸として機能する。また、第1軸部118c及び第2軸部118dを含む単一のシャフトとして高圧シャフト118が構成される。このため、第1軸部118c及び第2軸部118dを個別に構成する場合に比べて、第1軸部118c及び第2軸部118dを一体的に構成できる。よって、回転時の高圧シャフト118の振動を抑制しつつ、軸受構造102の複数の軸受BR1、BR2により高圧シャフト118を安定して支持できる。また、エンジン101の部品点数を低減できる。
【0033】
なお、低圧圧縮機13、高圧圧縮機14、及び、燃焼器5は、上記各実施形態に記載された構成に限定されない。エンジン1、101は、無人機用であってもよい。またエンジン1、101は、乗物用以外の用途のものであってもよい。また、軸受構造2、102が備える複数の軸受の種類は、限定されない。当該複数の軸受は、3個以上の軸受を含んでいてもよい。
【0034】
エンジンシャフト7、107が低圧シャフト19を含む場合、当該複数の軸受は、低圧シャフト19を支持する少なくとも1つの軸受を含んでいてもよい。前記少なくとも1つの軸受は、例えば、高圧シャフト18を支持する軸受BR1、BR2のうち、軸方向において、最も前方に位置する軸受BR1よりも前方に配置された軸受と、最も後方に位置する軸受BR2よりも後方に配置された軸受とを含んでいてもよい。
【0035】
(開示項目)
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[項目1]
前後方向に延びるエンジンシャフトと、
前記エンジンシャフトの軸方向に並んで配置されている圧縮機、燃焼器、及び、タービンと、
前記エンジンシャフトを支持する複数の軸受と、を備え、
前記複数の軸受は、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている、ガスタービンエンジンの軸受構造。
【0036】
上記構成によれば、燃焼器による高温下で高回転される過酷な環境において、エンジンシャフトを支持する軸受が使用されるのを抑制できる。よって、ガスタービンエンジン内部の温度により、エンジンシャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制できる。従って、エンジンシャフトを安定して支持可能なガスタービンエンジンの軸受構造を提供できる。
【0037】
[項目2]
前記圧縮機は、高圧圧縮機、及び、前記高圧圧縮機よりも前記軸方向の前方に配置されている低圧圧縮機を含み、
前記タービンは、高圧タービン、及び、前記高圧タービンよりも前記軸方向の後方に配置されている低圧タービンを含み、
前記エンジンシャフトは、前記高圧圧縮機及び前記高圧タービンを接続する中空の高圧シャフト、及び、前記高圧シャフトに挿通され、前記低圧圧縮機及び前記低圧タービンを接続する低圧シャフトを含み、
前記複数の軸受は、前記高圧シャフトを支持するように配置されている、項目1に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0038】
上記構成によれば、燃焼器による高温下で高圧シャフトと共に高回転される過酷な環境において、高圧シャフトを支持する軸受が使用されるのを抑制できる。よって、ガスタービンエンジン内部の温度により、高圧シャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制できる。
【0039】
[項目3]
前記高圧圧縮機は、軸流圧縮機又は遠心圧縮機である、項目2に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0040】
上記構成によれば、軸流圧縮機又は遠心圧縮機である高圧圧縮機を用いることで、例えば、ガスタービンエンジンを小型化する場合でも、高圧圧縮機を用いて高効率でエンジンを駆動できる。また、ガスタービンエンジン内部の温度により、高圧シャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制できる。
【0041】
[項目4]
前記複数の軸受のうち、隣接する前記軸受の間の前記高圧シャフトの最大外径は、前記複数の軸受のうち、最も後方に位置する軸受よりも後方の前記高圧シャフトの最大外径より大きい、項目2~3のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0042】
上記構成によれば、複数の軸受のうち、隣接する軸受の間の高圧シャフトの部分の剛性及び機械的強度を向上できる。よって、当該複数の軸受により高圧シャフトを支持しながら回転駆動させる際、高圧シャフトの不要な振動を抑制し、安定して高圧シャフトを支持できる。また、ガスタービンエンジン内部の温度により、高圧シャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制できる。
【0043】
[項目5]
前記低圧圧縮機が配置されている領域の前記高圧シャフトの最大外径は、前記領域よりも前記軸方向の後方の領域の前記高圧シャフトの最大外径より大きい、項目2~4のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0044】
上記構成によれば、低圧圧縮機が配置されている高圧シャフトの領域において、高圧シャフトの剛性及び機械的強度を向上できる。よって、高圧圧縮機よりも前記軸方向の前方において、高圧シャフトの回転時の振動を抑制できる。これにより、燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置された複数の軸受により、高圧シャフトを安定して支持し易くできる。また、ガスタービンエンジン内部の温度により、高圧シャフトを支持する軸受に掛かる負荷を抑制できる。
【0045】
[項目6]
前記高圧圧縮機は、前記エンジンシャフトの回転軸線の周りに回転するインペラを有し、
前記複数の軸受は、前記インペラよりも前記軸方向の前方に配置されている、項目2~5のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0046】
上記構成によれば、高圧圧縮機のインペラの前端よりも後方で生じる高温下で高回転される過酷な環境で、高圧シャフトを支持する複数の軸受が使用されるのを抑制できる。よって、複数の軸受により、高圧シャフトを安定して支持できる。
【0047】
[項目7]
前記複数の軸受は、前記軸方向において、前記低圧圧縮機の前端及び前記高圧圧縮機の間に配置されている、項目2~6のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0048】
上記構成によれば、高圧圧縮機の前端よりも後方で生じる高温下で高回転される過酷な環境で、高圧シャフトを支持する複数の軸受が使用されるのを抑制できる。また、前記軸方向における低圧圧縮機及び高圧圧縮機の間のスペースを利用して、複数の軸受を効率よく配置できる。
【0049】
[項目8]
前記軸方向に延びる中空の回転軸と、前記回転軸と一体回転するロータとを有し、且つ、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている発電機を更に備え、
前記複数の軸受は、前記発電機の前記軸方向における前方及び後方に配置されている、項目2~7のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0050】
上記構成によれば、発電機の前記軸方向における前方及び後方の位置のスペースを利用して、高圧シャフトを支持する複数の軸受を配置し易くできる。また例えば、複数の軸受により、発電機の回転軸を安定して支持できる。
【0051】
[項目9]
前記回転軸及び前記ロータは、前記高圧シャフトと共に回転し、
前記高圧シャフト及び前記回転軸は、互いに周方向及び前記軸方向への相対移動が規制されている、項目8に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0052】
上記構成によれば、エンジンの駆動時に回転軸及び高圧シャフトの前記相対移動が規制されることで、発電機のロータが高圧シャフトと共に回転する際、複数の軸受により、高圧シャフトを安定して支持できる。
【0053】
[項目10]
前記高圧シャフト及び前記回転軸は、溶接、焼き嵌め、又はFixedスプラインのうち少なくともいずれかにより、互いに結合されている、項目9に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0054】
上記構成によれば、高圧シャフト及び回転軸を確実に連結することで、高圧シャフト及び回転軸を一体的に構成できる。これにより、回転時に高圧シャフト及び回転軸が振動するのを抑制し、高圧シャフトを複数の軸受により安定して支持できる。
【0055】
[項目11]
前記高圧シャフトと一体回転する中空のロータを有し、且つ、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている発電機を更に備え、
前記高圧シャフトは、前記高圧圧縮機に接続される第1軸部と、前記ロータに挿入される第2軸部と、含む単一のシャフトである、項目2~7のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0056】
上記構成によれば、発電機のロータに挿入される高圧シャフトの第2軸部を、実質的に発電機の回転軸として機能させることができる。また、第1軸部と第2軸部とを含む単一のシャフトとして高圧シャフトが構成される。このため、第1軸部と第2軸部とを個別に構成した場合に比べて、第1軸部及び第2軸部を一体的に構成できる。よって、複数の軸受により高圧シャフトを安定して支持できる。また、ガスタービンエンジンの部品点数を低減できる。
【0057】
[項目12]
前記軸方向に延びる中空の回転軸と、前記回転軸と一体回転するロータを有し、且つ、前記燃焼器よりも前記軸方向の前方に配置されている発電機を更に備え、
前記高圧シャフトの最大外径は、前記回転軸の最大外径よりも大きい、項目2~10のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0058】
上記構成によれば、高圧シャフトの最大外径が回転軸の最大外径よりも大きいことにより、高圧シャフトの剛性及び機械的強度を向上できる。これにより、回転時の高圧シャフトの振動を抑制し、複数の軸受により、高圧シャフトを安定して支持できる。
【0059】
[項目13]
前記高圧シャフトの後端は、前記低圧タービンよりも前記軸方向の前方に配置されている、項目2~12のいずれか1項に記載のガスタービンエンジンの軸受構造。
【0060】
上記構成によれば、高圧シャフトの後端を低圧タービンよりも前記軸方向の前方に配置することで、高圧シャフトを短縮化できる。これにより、高速回転時に高圧シャフトが振動するのを抑制できる。また、高圧シャフトを支持する軸受が、高圧シャフトを介して、低圧タービンの駆動より生じた高熱で加熱されるのを抑制できる。
【符号の説明】
【0061】
BR1、BR2 軸受
X 回転軸線
1、101 ガスタービンエンジン
2、102 ガスタービンエンジンの軸受構造
2 発電機
4 圧縮機
5 燃焼器
6 タービン
7 エンジンシャフト
8 発電機
13 低圧圧縮機
14 高圧圧縮機
15 インペラ
16 低圧タービン
17 高圧タービン
18、118 高圧シャフト
18b 高圧シャフトの後端
19 低圧シャフト
20 回転軸
21 ロータ
118c 第1軸部
118d 第2軸部