(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179356
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】教示支援装置、教示支援方法、及び教示支援プログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20241219BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241219BHJP
B23K 26/044 20140101ALI20241219BHJP
B25J 9/22 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B23K26/08 H
B23K26/21 A
B23K26/044
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098132
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】錦戸 洋航
【テーマコード(参考)】
3C707
4E168
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS10
3C707JS02
3C707JU07
3C707KS06
3C707LS06
3C707MT04
3C707NS09
4E168BA00
4E168CB03
4E168CB08
4E168CB20
(57)【要約】
【課題】 複数の溶接予定位置の面直方向が同一では無く、これら複数の溶接予定位置が同一平面上に無い場合でも、適切な位置にレーザの照射部を停止させるための適切な姿勢をロボット部に教示することができる。
【解決手段】 教示支援装置は、照射部とロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援し、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定部と、ロボット部の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定部により特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接物にレーザを照射する照射部と、前記照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援装置であって、
複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付部と、
前記ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付部と、
前記溶接予定情報及び前記ロボット情報に基づいて、前記複数の溶接予定位置に対して前記ロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したまま前記レーザの照射方向を前記照射部により変化させながら照射する際に、前記溶接予定位置に対して前記面直方向から所定角度範囲内で前記レーザを照射できる複数の前記溶接予定位置を前記同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定部と、
前記ロボット部の前記同一の姿勢に関する姿勢情報、及び前記特定部により特定された前記同一の姿勢に対応する溶接可能位置の前記位置情報及び前記方向情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする教示支援装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記ロボット部の前記同一の姿勢に対応して特定した前記溶接可能位置に含めなかった前記溶接予定位置に対して、前記同一の姿勢とは異なる他の姿勢に前記ロボット部を維持し、当該溶接予定位置の前記面直方向から所定角度範囲内で前記レーザを照射できる複数の前記溶接予定位置を前記他の姿勢に対応する溶接可能位置として特定し、
前記出力部は、前記ロボット部の前記他の姿勢に関する姿勢情報、及び前記特定部により特定された前記他の姿勢に対応する前記溶接可能位置の前記位置情報及び前記方向情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の教示支援装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記複数の溶接予定位置の全てを溶接するために必要となる前記ロボット部の前記姿勢の数が最少となるように、最少の前記姿勢に複数の前記溶接予定位置を割り当ててそれぞれの前記姿勢に対応する前記溶接可能位置として特定することを特徴とする請求項1に記載の教示支援装置。
【請求項4】
前記ロボット部は、アーム同士を連結する関節を複数有する多関節ロボットであり、
前記ロボット情報は、前記アームの長さ及び前記関節の数の情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の教示支援装置。
【請求項5】
前記姿勢情報は、前記多関節ロボットの前記関節の回動角度に関する回動角度情報を含むことを特徴とする請求項4に記載の教示支援装置。
【請求項6】
被溶接物にレーザを照射する照射部と、前記照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援方法であって、
コンピュータに、
複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付ステップと、
前記ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付ステップと、
前記溶接予定情報及び前記ロボット情報に基づいて、前記複数の溶接予定位置に対して前記ロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したまま前記レーザの照射方向を前記照射部により変化させながら照射する際に、前記溶接予定位置に対して前記面直方向から所定角度範囲内で前記レーザを照射できる複数の前記溶接予定位置を前記同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定ステップと、
前記ロボット部の前記同一の姿勢に関する姿勢情報、及び前記特定ステップにより特定された前記同一の姿勢に対応する溶接可能位置の前記位置情報及び前記方向情報を出力する出力ステップと、
を実行させることを特徴とする教示支援方法。
【請求項7】
被溶接物にレーザを照射する照射部と、前記照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援プログラムであって、
コンピュータに、
複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付機能と、
前記ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付機能と、
前記溶接予定情報及び前記ロボット情報に基づいて、前記複数の溶接予定位置に対して前記ロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したまま前記レーザの照射方向を前記照射部により変化させながら照射する際に、前記溶接予定位置に対して前記面直方向から所定角度範囲内で前記レーザを照射できる複数の前記溶接予定位置を前記同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定機能と、
前記ロボット部の前記同一の姿勢に関する姿勢情報、及び前記特定機能により特定された前記同一の姿勢に対応する溶接可能位置の前記位置情報及び前記方向情報を出力する出力機能と、
を実現させることを特徴とする教示支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、教示支援装置、教示支援方法、及び教示支援プログラムに関し、特にレーザ溶接に用いられるロボットの教示(ティーチング)の支援に用いられる教示支援装置、教示支援方法、及び教示支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットにレーザ照射装置を搭載し、このロボットの動作・姿勢を制御して行われるリモート溶接が広く利用されている。このようなロボットは、教示プログラミングによって予め記憶した動作を、繰り返し実行(プレイバック)するプレイバックロボットと呼ばれる。
【0003】
このようなロボットの教示には、オンラインティーチング、オフラインティーチングなどがある。オンラインティーチングは、教示を行う人がロボットの動作を制御するための制御装置に接続されたティーチングペンダントを操作し、実際のロボットを用いてロボットの動作を確認しながら教示プログラミングを進めるものである。
【0004】
一方、オフラインティーチングは、パーソナルコンピュータなどの情報処理装置を教示支援装置として用い、モニタなどの表示装置に表示したロボットを教示プログラミングの動作内容に沿って動かしてシミュレーションを行いながら教示プログラムを現場のロボットに導入する前に作成することをいう。オフラインティーチングは、オンラインティーチングと比較して、現場でのロボットの動作チェックで想定外のトラブルを抑制することができるという利点がある。オフラインティーチングに関する技術の例としては、特許文献1に開示のものがある。
【0005】
リモート溶接をする際、ロボットの作業効率を上げるために、ロボットに搭載されたレーザの照射部にレーザの照射方向を高精度で制御できる照射方向制御機構を備え、ロボットに教示した一つの姿勢につき、複数個所のレーザ溶接を行う手法が用いられている。即ち、教示された所定の姿勢になった際にロボットは動作を一旦停止し、照射方向制御機構のみを動作させて、異なる位置にある複数個所にレーザを照射してレーザ溶接を行う。
【0006】
レーザ溶接を行う箇所が多数ある場合、ロボットの姿勢を変化させてレーザの照射部を移動させ、レーザの照射部を適切な位置に停止させながらレーザ溶接を行う。レーザの照射部を適切な位置に停止させるために、ロボットはレーザの照射部の適切な位置に関連付けられた適切な姿勢をとる。
【0007】
レーザ溶接を行う箇所が複数ある場合、ロボットが停止した状態で照射方向を制御する機構のみを動作させてレーザ溶接を行うことができる範囲(以下、レーザ照射可能範囲という。)でもって複数の溶接予定位置を分割して、適切な位置にレーザの照射部を停止させて、停止の度にこの停止位置に対応する溶接予定位置にレーザ溶接を施す。
【0008】
上述したようにリモート溶接において複数の溶接予定位置にレーザ溶接を施す場合、これら複数の溶接予定位置の表面に立てた法線方向(以下、溶接予定位置の面直方向という。)が同一では無く、これら複数の溶接予定位置が同一平面上に無い場合に、複数の溶接予定位置をレーザ照射可能範囲でもって適切に分割して、適切な位置にレーザの照射部を停止させるための適切な姿勢をロボットに教示することが困難な場合があった。なぜなら、レーザ溶接において、溶接予定位置に対するレーザの入射角には許容範囲があり所定値以下になることが求められるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、リモート溶接において複数の溶接予定位置にレーザ溶接を施す場合、これら複数の溶接予定位置の面直方向が同一では無く、これら複数の溶接予定位置が同一平面上に無い場合でも、適切な位置にレーザの照射部を停止させるための適切な姿勢をロボットに教示することができる教示支援装置、教示支援方法、及び教示支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、第1の態様に係る教示支援装置は、被溶接物にレーザを照射する照射部と、照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援装置であって、複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付部と、ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付部と、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定部と、ロボット部の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定部により特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する出力部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に係る教示支援装置において、特定部は、ロボット部の同一の姿勢に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置に対して、同一の姿勢とは異なる他の姿勢にロボット部を維持し、当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を他の姿勢に対応する溶接可能位置として特定し、出力部は、ロボット部の他の姿勢に関する姿勢情報、及び特定部により特定された他の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力することとしてもよい。
【0013】
第3の態様は、第1の態様に係る教示支援装置において、特定部は、複数の溶接予定位置の全てを溶接するために必要となるロボット部の姿勢の数が最少となるように、最少の姿勢に複数の溶接予定位置を割り当ててそれぞれの姿勢に対応する溶接可能位置として特定することとしてもよい。
【0014】
第4の態様は、第1の態様に係る教示支援装置において、ロボット部は、アーム同士を連結する関節を複数有する多関節ロボットであり、ロボット情報は、アームの長さ及び関節の数に基づくこととしてもよい。
【0015】
第5の態様は、第4の態様に係る教示支援装置において、姿勢情報は、多関節ロボットの関節の回動角度に関する回動角度情報を含むこととしてもよい。
【0016】
第6の態様に係る教示支援方法は、被溶接物にレーザを照射する照射部と、照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援方法であって、コンピュータに、複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付ステップと、ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付ステップと、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定ステップと、ロボット部の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定ステップにより特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する出力ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0017】
第7の態様に係る教示支援プログラムは、被溶接物にレーザを照射する照射部と、照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援プログラムであって、コンピュータに、複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付機能と、ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付機能と、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定機能と、ロボット部の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定機能により特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する出力機能と、を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る教示支援装置等は、被溶接物にレーザを照射する照射部と、照射部が搭載されたロボット部とを含むレーザ溶接装置に対する動作の教示を支援する教示支援装置であって、複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける第1受付部と、ロボット部に関するロボット情報を受け付ける第2受付部と、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する特定部と、ロボット部の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定部により特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する出力部と、を備えるので、リモート溶接において複数の溶接予定位置にレーザ溶接を施す場合、これら複数の溶接予定位置の面直方向が同一では無く、これら複数の溶接予定位置が同一平面上に無い場合でも、適切な位置にレーザの照射部を停止させるための適切な姿勢をロボット部に教示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本実施形態に係る教示支援装置の教示の対象となるレーザ溶接装置及び被溶接物について説明するための図である。
【
図2】
図2は本実施形態に係る教示支援装置の構成について説明するためのブロック図である。
【
図3】
図3は本実施形態に係る教示支援装置の機能的構成について説明するためのブロック図である。
【
図4】
図4は本実施形態に係るロボット部の構成について説明するための図である。
【
図5】
図5は本実施形態に係る照射部の構成について説明するための図である。
【
図6】
図6は本実施形態に係る教示支援装置の機能について説明するための図である。
【
図7】
図7は本実施形態に係る教示支援装置の機能について説明するための図である。
【
図8】
図8は本実施形態に係る教示支援装置の機能について説明するための図である。
【
図9】
図9は本実施形態に係る教示支援装置の実施例について説明するための図である。
【
図10】
図10は本実施形態に係る教示支援プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1乃至
図9を参照して、本発明の一実施形態に係る教示支援装置20について説明する。
先ず、
図1を参照して、本実施形態に係る教示支援装置20の教示(ティーチング)の対象となるレーザ溶接装置10及び被溶接物について説明する。
【0021】
教示支援装置20は、被溶接物にレーザを照射する照射部12と、照射部12が先端部に搭載されたロボット部11とを含むレーザ溶接装置10に対する動作の教示を支援する。なお、照射部12が搭載される位置は、ロボット部11の先端部に限定されるものではなく、ロボット部11の他の部分、例えば、後述の第1アーム13に内蔵されてもよいし、第2アーム14若しくは第3アーム15に搭載されてもよい。
レーザ溶接装置10はロボット部11と照射部12とを備える。レーザ溶接装置10は、ロボット部11の先端部に照射部12を搭載する。本実施形態に係るロボット部11は詳細については後述するが多関節ロボットであり、照射部12はレーザ溶接に用いるレーザビーム(レーザの細い光線)を被溶接物の溶接予定位置に向けて照射する。照射部12は、レーザの照射方向制御機構を備えており、レーザの照射方向を調整することができる。ロボット部11は姿勢を変えることによって、照射部12の位置及び姿勢を変化させて、照射部12から照射するレーザを所定の溶接予定位置に照射する。
【0022】
レーザ溶接装置10の被溶接物は2個の溶接部材からなり、複数の溶接予定位置にレーザ溶接を施すことでこの2個の溶接部材は接合される。被溶接物の一例として
図1に示す様に、第1溶接部材1と第2溶接部材2とを第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5及び第3溶接予定位置7にレーザ溶接を施して、第1溶接部材1と第2溶接部材2とを接合する。
【0023】
第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5、及び第3溶接予定位置7における面直方向(第1面直方向4、第2面直方向6、第3面直方向8)はそれぞれ異なる方向に向いている。レーザ溶接装置10は、第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5、及び第3溶接予定位置7のそれぞれにおける面直方向を考慮しながら、第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5、及び第3溶接予定位置7にレーザの入射角度が所定の範囲内となるように照射する。レーザ溶接は、溶接予定位置に必要な熱量を吸収させるために、レーザビームが溶接予定位置の表面に立てた法線方向(以下、溶接予定位置の面直方向という)に対してできる限り平行(即ち、入射角が0度)となるように照射する。
【0024】
なお、溶接予定位置に対するレーザビームの入射角度の許容範囲は、被溶接材の材質、照射部12の仕様、及びレーザの出力などにより異なり、例えば、レーザビームの入射角度が10度以下であるなどと規定される。また、照射部12の仕様によってはレーザビームの入射角度を0度として使用することが禁止させる場合もある。なぜなら、溶接予定位置におけるレーザビームの反射光が照射部12に直接当たることが故障の原因などになる恐れがあるからである。教示支援装置20は、溶接予定位置が複数ある場合に、ロボット部11の最少の姿勢でもって全ての溶接予定位置に溶接を行うために、ロボット部11の各姿勢においてどの溶接予定位置にレーザ溶接を行うかの組合せを特定するものである。
【0025】
次に、
図2を参照して教示支援装置20の構成について説明する。
図2は本実施形態に係る教示支援装置20の構成について説明するためのブロック図である。教示支援装置20は、パーソナルコンピュータ(以下、PC)、タブレット型PC、ノートPCなどに代表される情報処理装置(コンピュータ)の一種である。
【0026】
教示支援装置20は、通信インターフェース20a、ROM(Read Only Memory)20b、RAM(Random Access Memory)20c、記憶部20d、CPU(Central Processing Unit)20e、及び、入出力インターフェース20f等を備えている。
【0027】
通信インターフェース20aは、教示支援装置20のデータについて、インターネットを含むネットワーク21を介して、レーザ溶接装置10を含む他の機器との間の送受信を行う機能を備える。教示支援装置20のデータとしては、レーザ溶接装置10へ動作の教示を支援するための教示支援プログラム及び当該プログラムに関連するデータなどが含まれる。教示支援装置20とレーザ溶接装置10との間のプログラム及びデータなどの送受信は、ネットワーク21を介して行う他に、専用の通信ケーブルを接続して行うこともできる。
【0028】
記憶部20dは、記憶装置として利用でき、後述の教示支援プログラム、教示支援装置20が動作する上で必要となるファームウエア、各種アプリケーション及び当該アプリケーションによって利用される各種データなどが記憶される。ファームウエアは、教示支援装置20に内蔵されるソフトウエアの一種であり、教示支援装置20の基本的な制御を司る機能を持つ。
【0029】
教示支援装置20は、後述する教示支援プログラムをROM20b若しくは記憶部20dに保存し、RAM20cなどで構成されるメインメモリに当該教示支援プログラムを取り込む。CPU20eは、当該教示支援プログラムを取り込んだメインメモリにアクセスして、当該教示支援プログラムを実行する。
【0030】
入出力インターフェース20fは、教示支援装置20の外部装置に対してデータなどの送受信を行う。外部装置とは、教示支援装置20に対してデータなどの入出力を行う入力装置20g及び出力装置20hのことである。入力装置20gはキーボード及びマウスなどのことであり、出力装置20hは外部モニタ、プリンタ及び外部スピーカなどのことである。
【0031】
次に
図3を参照して、教示支援装置20の機能的構成について説明する。
図3は本実施形態に係る教示支援装置20の機能的構成について説明するためのブロック図である。教示支援装置20は、後述する教示支援プログラムを実行することで、CPU20eに、第1受付部30、第2受付部31、特定部32、及び出力部33などの機能部を備える。
【0032】
第1受付部30は、複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける。
位置情報は、3次元直交座標系、または3次元極座標系により表された情報である。
方向情報は、3次元直交座標系、または3次元極座標系により表されたベクトルの情報である。
【0033】
第2受付部31は、ロボット部11に関するロボット情報を受け付ける。
ロボット部11は、第1アーム13、第2アーム14、及び第3アーム15同士を連結する第1関節16、第2関節17を有する多関節ロボットであり、ロボット情報は、第1アーム13、第2アーム14、及び第3アーム15の長さ及び第1関節16、及び第2関節17の数(2個)の情報を含む。
【0034】
図4を参照してロボット部11について説明する。
図4は本実施形態に係るロボット部11の構成について説明するための図である。
ロボット部11は、第1アーム13、第2アーム14、第3アーム15、第1関節16、第2関節17、及びベース部18を備える。
【0035】
第1アーム13と第2アーム14は第1関節16に接続され、第1アーム13と第2アーム14とのなす角は第1関節16の回動角度によって調節される。第2アーム14と第3アーム15は第2関節17に接続され、第2アーム14と第3アーム15とのなす角は第2関節17の回動角度によって調節される。
ベース部18は、ロボット部11の設置場所に直接固定される。第3アーム15は、ベース部18の上に設置される。ベース部18は、鉛直方向に伸びる回転軸によって回動することで第3アーム15の向きを変え、延いてはロボット部11の向きを変える。第1アーム13の先端部には、照射部12が搭載される。
【0036】
図5を参照して照射部12について説明する。
図5は本実施形態に係る照射部12の構成について説明するための図である。
照射部12は、ロボット部11の第1アーム13の先端に搭載される。照射部12は、照射方向制御機構を搭載しレーザの照射方向19を変更する。照射方向制御機構は、例えばレーザ光を反射するガルバノミラーを備えた機構となり、ガルバノミラーの角度を変えることでレーザ光の反射角を変えてレーザ光の照射方向を制御するものである。なお、照射方向制御機構は、特定の機構に限定されるものではなくレーザ光の照射方向を制御できるものであればよい。
【0037】
ロボット部11が停止し照射部12が所定の位置に留まった状態において、照射部12がレーザを照射することができる最大範囲を溶接可能範囲24とする。溶接予定位置22は溶接可能範囲24の範囲内に位置していることで、照射部12は溶接予定位置22に対してレーザを照射することができる。
【0038】
溶接予定位置22の面直方向23から許容角度25だけ振れた範囲までが溶接許容方向26となる。溶接予定位置22に対してレーザを照射する際の入射角度が許容角度25以内である必要があり、照射部12は溶接予定位置22から見た場合に溶接許容方向26に含まれている必要がある。即ち、
図5において、溶接許容方向26を許容角度25を変えることなく延伸させた場合に照射部12を内包している必要がある。
【0039】
照射部12と溶接予定位置22との離間距離は、レーザ光の合焦距離に合わせて決められる。レーザ光の合焦距離は、1mmから数mm若しくはそれ以上の裕度(合焦範囲)を持つ。溶接予定位置22と照射部12との離間距離は、レーザ光の合焦範囲内に収まるように設定される。
【0040】
特定部32は、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部11の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部12により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する。
【0041】
特定部32は、ロボット部11の同一の姿勢に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置に対して、同一の姿勢とは異なる他の姿勢にロボット部11を維持し、当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を他の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する。
【0042】
特定部32は、複数の溶接予定位置の全てを溶接するために必要となるロボット部11の姿勢の数が最少となるように、最少の姿勢に複数の溶接予定位置を割り当ててそれぞれの姿勢に対応する溶接可能位置として特定する。
【0043】
図6、7、8を参照して、特定部32の機能について説明する。
図6、7、8は、本実施形態に係る教示支援装置20の機能について説明するための図である。
図6を参照して溶接予定位置が4個の場合を例にして、特定部32の機能について説明する。
図6(a)に示す様に、第1溶接部材1と第2溶接部材2とをレーザ溶接によって接合する。溶接予定位置は4か所あり、第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5、第3溶接予定位置7、及び第4溶接予定位置9である。
【0044】
図6(b)、
図7において説明の便宜上、レーザ溶接装置10の内、ロボット部11の図示を省略し照射部12のみを図示する。照射部12aの位置におけるロボット部11の姿勢を姿勢11a(照射部12a)として以下に説明する。さらに、照射部12b、照射部12c、照射部12d、照射部12e、照射部12f、照射部12g、照射部12h、照射部12iの位置におけるロボット部11の姿勢をそれぞれ姿勢11b(照射部12b)、姿勢11c(照射部12c)、姿勢11d(照射部12d)、姿勢11e(照射部12e)、姿勢11f(照射部12f)、姿勢11g(照射部12g)、姿勢11h(照射部12h)、姿勢11i(照射部12i)として以下に説明する。
【0045】
特定部32は、溶接範囲組合せ候補1として
図6(b)に示す様に、4個の溶接予定位置3、5、7、9に対してロボット部11の姿勢を姿勢11a(照射部12a)に維持したままレーザの照射方向を照射部12aにより変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる2個の溶接予定位置3、5を姿勢11a(照射部12a)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0046】
次に特定部32は、ロボット部11の姿勢11a(照射部12a)に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置7、9に対して、姿勢11a(照射部12a)とは異なる姿勢11b(照射部12b)にロボット部11を維持し、当該溶接予定位置7、9の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる2個の溶接予定位置7、9を姿勢11b(照射部12b)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0047】
以上の様にして、特定部32は、溶接範囲組合せ候補1として、ロボット部11の姿勢11a(照射部12a)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置3、5と、ロボット部11の姿勢11b(照射部12b)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置7、9を特定する。
【0048】
次に、特定部32は、溶接範囲組合せ候補1とは異なる溶接範囲組合せ候補2として
図6(b)に示す様に、4個の溶接予定位置3、5、7、9に対してロボット部11の姿勢を姿勢11c(照射部12c)に維持したままレーザの照射方向を照射部12cにより変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる1個の溶接予定位置3を姿勢11c(照射部12c)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0049】
次に特定部32は、ロボット部11の姿勢11c(照射部12c)に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置5、7、9に対して、姿勢11c(照射部12c)とは異なる姿勢11d(照射部12d)にロボット部11を維持し、当該溶接予定位置5、7、9の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる2個の溶接予定位置5、7を姿勢11d(照射部12d)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0050】
次に特定部32は、ロボット部11の姿勢11c(照射部12c)及び姿勢11d(照射部12d)に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置9に対して、姿勢11c(照射部12c)及び姿勢11d(照射部12d)とは異なる姿勢11e(照射部12e)にロボット部11を維持し、当該溶接予定位置9の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる1個の溶接予定位置9を姿勢11e(照射部12e)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0051】
以上の様にして、特定部32は、溶接範囲組合せ候補2として、ロボット部11の姿勢11c(照射部12c)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置3と、ロボット部11の姿勢11d(照射部12d)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置5、7と、ロボット部11の姿勢11e(照射部12e)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置9を特定する。
【0052】
次に、特定部32は、溶接範囲組合せ候補1及び2とは異なる溶接範囲組合せ候補3として
図6(b)に示す様に、4個の溶接予定位置3、5、7、9に対してロボット部11の姿勢を姿勢11f(照射部12f)に維持したままレーザの照射方向を照射部12fにより変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる2個の溶接予定位置3、5を姿勢11f(照射部12f)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0053】
次に特定部32は、ロボット部11の姿勢11f(照射部12f)に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置7、9に対して、姿勢11f(照射部12f)とは異なる姿勢11g(照射部12g)にロボット部11を維持し、当該溶接予定位置7、9の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる1個の溶接予定位置7を姿勢11g(照射部12g)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0054】
次に特定部32は、ロボット部11の姿勢11f(照射部12f)及び姿勢11g(照射部12g)に対応して特定した溶接可能位置に含めなかった溶接予定位置9に対して、姿勢11f(照射部12f)及び姿勢11g(照射部12g)とは異なる姿勢11h(照射部12h)にロボット部11を維持し、当該溶接予定位置9の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる1個の溶接予定位置9を姿勢11h(照射部12h)に対応する溶接可能位置として特定する。
【0055】
以上の様にして、特定部32は、溶接範囲組合せ候補3として、ロボット部11の姿勢11f(照射部12f)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置3、5と、ロボット部11の姿勢11g(照射部12g)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置7と、ロボット部11の姿勢11h(照射部12h)に対応する溶接可能位置として溶接予定位置9を特定する。
【0056】
特定部32は、上記の溶接範囲組合せ候補1、2、3の内から、4個の溶接予定位置3、5、7、9の全てを溶接するために必要となるロボット部11の姿勢の数が最少となる溶接範囲組合せ候補1を選択し、最少の2の姿勢11a(照射部12a)、姿勢11b(照射部12b)に4個の溶接予定位置3、5、7、9を割り当ててそれぞれの姿勢11a(照射部12a)、姿勢11b(照射部12b)に対応する溶接可能位置として、姿勢11a(照射部12a)に溶接予定位置3、5を特定し、姿勢11b(照射部12b)に溶接予定位置7、9を特定する。
【0057】
次に
図7を参照して、特定部32が、ロボット部11の姿勢を同一の姿勢に維持したまま照射部12によりレーザの照射方向を変化させながらレーザを照射し、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる溶接予定位置を特定する方法について説明する。
【0058】
図7(a)に示す様に、例えば第1溶接部材1と第2溶接部材2とを3箇所の溶接予定位置(第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5、第3溶接予定位置7)においてレーザ溶接を施して、第1溶接部材1と第2溶接部材2とを接合する。
【0059】
第1溶接予定位置3における面直方向を第1面直方向4とする。第1溶接予定位置3にレーザを照射する際のレーザの入射角度の許容範囲を第1溶接許容方向4aとする。
図7において、2本の2点鎖線4aに挟まれた範囲を第1溶接許容方向4aとする。
第2溶接予定位置5における面直方向を第2面直方向6とする。第2溶接予定位置5にレーザを照射する際のレーザの入射角度の許容範囲を第2溶接許容方向6aとする。
図7において、2本の2点鎖線6aに挟まれた範囲を第1溶接許容方向6aとする。
第3溶接予定位置7における面直方向を第3面直方向8とする。第3溶接予定位置7にレーザを照射する際のレーザの入射角度の許容範囲を第3溶接許容方向8aとする。
図7において、2本の2点鎖線8aに挟まれた範囲を第1溶接許容方向8aとする。
【0060】
図7(b)に示す第1溶接予定位置3、第2溶接予定位置5、及び第3溶接予定位置7が、照射部12iの溶接可能範囲24に内包された状態において、照射部12iは第1溶接許容方向4aと第3溶接許容方向8aとが重畳する範囲内に位置する。
【0061】
図7(b)に示す位置に照射部12iを維持するロボット部11の姿勢11iにおいて、当該照射部12iは第1溶接予定位置3及び第3溶接予定位置7にレーザの入射角度を許容範囲内にして照射することができ、第2溶接予定位置5にレーザの入射角度を許容範囲内にして入射することができない。
【0062】
従って、特定部32は、3個の溶接予定位置3、5、7に対してロボット部11の姿勢を姿勢11iに維持したままレーザの照射方向を照射部12iにより変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる2個の溶接予定位置3、7を姿勢11iに対応する溶接可能位置として特定する。
【0063】
次に、
図8を参照して、特定部32が、溶接予定位置におけるレーザ溶接の可否を判定する方法について説明する。
ロボット部11の動作を考慮した溶接範囲42は、レーザ溶接装置10がレーザ溶接を可能とする最大範囲であり、ロボット部11の動作を考慮しない溶接範囲41にロボット部11の動作範囲を加味して導き出される。
【0064】
特定部32は、第1溶接予定位置3の溶接の可否について、ロボット部11の動作を考慮した溶接範囲42に含まれるか否かで判断する。
図8に示す第1溶接予定位置3はロボット部11の動作を考慮した溶接範囲42に含まれていないので、特定部32は第1溶接予定位置3をレーザ溶接装置10によってレーザ溶接することができないと判定する。
【0065】
出力部33は、ロボット部11の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定部32により特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する。
出力部33は、ロボット部11の他の姿勢に関する姿勢情報、及び特定部32により特定された他の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する。
【0066】
姿勢情報は、多関節ロボットの関節の回動角度に関する回動角度情報を含む。
出力部33は、ロボット部11の姿勢をロボット部11が備える関節部の回動角度によって表してもよい。
出力部33は、ロボット部11の姿勢に関する情報、及び当該姿勢により溶接可能な溶接可能位置の位置情報及び方向情報について、教示支援装置20に内蔵されるモニタなどの表示装置、又は教示支援装置20の外部装置として接続される表示装置に表示してもよい。
出力部33は、ロボット部11の姿勢に関する情報、及び当該姿勢により溶接可能な溶接可能位置の位置情報及び方向情報について、数値のみを表示装置に表示してもよいし、ロボット部11の姿勢をグラフィック映像にして表してもよい。
【0067】
図9を参照して、教示支援装置20の実施例について説明する。
図9は本実施形態に係る教示支援装置20の実施例について説明するための図である。
図9に示す様に、第1溶接部材48と第2溶接部材49とは鋼板を機械加工、例えば曲げ加工によりフランジ部などを形成し断面二次モーメントを大きくして曲げ剛性を向上させた部材であり、6箇所の溶接予定位置により第1溶接部材48と第2溶接部材49とを接合する。
【0068】
第1溶接予定位置50、第2溶接予定位置51、第3溶接予定位置52、第4溶接予定位置53、第5溶接予定位置54、及び第6溶接予定位置55は、それぞれ同一平面上に無く面直方向が異なる。
【0069】
図9(a)に示す溶接範囲組合せ候補1として、教示支援装置20は、第1溶接予定位置50と第2溶接予定位置51とをロボット部11の1つ目の姿勢でレーザ溶接を行う組合せとし、第3溶接予定位置52、第4溶接予定位置53、第5溶接予定位置54、及び第6溶接予定位置55をロボット部11の2つ目の姿勢でレーザ溶接を行う組合せとして特定した。
【0070】
図9(b)に示す溶接範囲組合せ候補2として、教示支援装置20は、第1溶接予定位置50と第2溶接予定位置51とをロボット部11の1つ目の姿勢でレーザ溶接を行う組合せとし、第3溶接予定位置52と第4溶接予定位置53とをロボット部11の2つ目の姿勢でレーザ溶接を行う組合せとし、第5溶接予定位置54と第6溶接予定位置55とをロボット部11の3つ目の姿勢でレーザ溶接を行う組合せとして特定した。
【0071】
溶接範囲組合せ候補1(
図9(a)参照)と溶接範囲組合せ候補2(
図9(b)参照)とを比較して、ロボット部11の姿勢の数が最少となるのは溶接範囲組合せ候補1の2個であり、溶接範囲組合せ候補1が最適な溶接範囲の組合せとなる。ただし、溶接範囲組合せ候補1のロボット部11の姿勢において、障害物等の外的要因によりロボット部11が当該姿勢をとることができない場合は溶接範囲組合せ候補2を溶接範囲の組合せとして選択してもよい。
【0072】
次に
図10を参照して、本発明の一実施形態に係る教示支援プログラムについて、教示支援方法とともに説明する。
図10は本実施形態に係る教示支援プログラムのフローチャートである。教示支援方法は、教示支援プログラムに基づいて、教示支援装置20のCPU20eにより実行される。
【0073】
教示支援プログラムは、教示支援装置20のCPU20eに対して、第1受付機能、第2受付機能、特定機能、及び出力機能などの各種機能を実現させる。これらの機能は
図10に示される順に実行されるが、適宜、順番を入れ替えて実行することもできる。なお、各機能は前述の教示支援装置20の各種機能部の説明と重複するため、その詳細な説明は省略する。
【0074】
第1受付機能は、複数の溶接予定位置の位置情報と、当該溶接予定位置における面直方向の方向情報とを示す溶接予定情報を受け付ける(S30:第1受付ステップ)。
【0075】
第2受付機能は、ロボット部11に関するロボット情報を受け付ける(S31:第2受付ステップ)。
【0076】
特定機能は、溶接予定情報及びロボット情報に基づいて、複数の溶接予定位置に対してロボット部11の姿勢を同一の姿勢に維持したままレーザの照射方向を照射部12により変化させながら照射する際に、溶接予定位置に対して当該溶接予定位置の面直方向から所定角度範囲内でレーザを照射できる複数の溶接予定位置を同一の姿勢に対応する溶接可能位置として特定する(S32:特定ステップ)。
【0077】
出力機能は、ロボット部11の同一の姿勢に関する姿勢情報、及び特定ステップにより特定された同一の姿勢に対応する溶接可能位置の位置情報及び方向情報を出力する(S33:出力ステップ)。
【0078】
上記した本実施形態に係る教示支援装置20によれば、同一平面上に無く面直方向が異なる複数の溶接予定位置に対して、レーザ溶接装置10のロボット部11の姿勢を適切に教示するために、最少の姿勢でもって全ての溶接予定位置にレーザ溶接を行う動作の教示を支援することができる。
【0079】
なお、本発明は上記した実施形態に係る教示支援装置20、教示支援方法、及び教示支援プログラムに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、若しくは応用例により実施可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 第1溶接部材
2 第2溶接部材
3 第1溶接予定位置
4 第1面直方向
4a 第1溶接許容方向
5 第2溶接予定位置
6 第2面直方向
6a 第2溶接許容方向
7 第3溶接予定位置
8 第3面直方向
8a 第3溶接許容方向
9 第4溶接予定位置
10 レーザ溶接装置
11 ロボット部
11a 姿勢
11b 姿勢
11c 姿勢
11d 姿勢
11e 姿勢
11f 姿勢
11g 姿勢
11h 姿勢
11i 姿勢
12 照射部
12a 照射部
12b 照射部
12c 照射部
12d 照射部
12e 照射部
12f 照射部
12g 照射部
12h 照射部
12i 照射部
13 第1アーム
14 第2アーム
15 第3アーム
16 第1関節
17 第2関節
18 ベース部
19 レーザの照射方向
20 教示支援装置
20a 通信インターフェース
20b ROM(Read Only Memory)
20c RAM(Random Access Memory)
20d 記憶部
20e CPU(Central Processing Unit)
20f 入出力インターフェース
20g 入力装置
20h 出力装置
21 ネットワーク
22 溶接予定位置
23 面直方向
24 溶接可能範囲
25 許容角度
26 溶接許容方向
30 第1受付部
31 第2受付部
32 特定部
33 出力部
41 ロボット部の動作を考慮しない溶接範囲
42 ロボット部の動作を考慮した溶接範囲
48 第1溶接部材
49 第2溶接部材
50 第1溶接予定位置
51 第2溶接予定位置
52 第3溶接予定位置
53 第4溶接予定位置
54 第5溶接予定位置
55 第6溶接予定位置
56 第1組合せ
57 第2組合せ
58 第1組合せ
59 第2組合せ
60 第3組合せ