(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179360
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発電装置及びそれを用いる発電システム
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20241219BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H10N10/17 Z
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098143
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】522253184
【氏名又は名称】許斐 正明
(74)【代理人】
【識別番号】100109254
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 雅典
(72)【発明者】
【氏名】許斐 正明
(57)【要約】
【課題】 熱電素子モジュールからなる発電装置及びそれを用いる発電システムにおいて、装置構造を複雑化させることなく、製作コストの上昇を抑えながら、多くの熱電素子モジュールに本来の発電能力を発揮させることを目的とする。
【解決手段】 冷水が通過する冷却用熱交換室と加熱水蒸気が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記加熱用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷水が通過する冷却用熱交換室と加熱水蒸気が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記加熱用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記冷却用熱交換室は、それぞれ箱状体で形成されており、
前記加熱用熱交換室は、互いに対向する二つの冷却用熱交換室の側壁と、前記二つの冷却用熱交換室の側壁の周縁間の隙間を閉鎖する蓋状部材により形成されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項3】
前記蓋状部材が、着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の発電装置。
【請求項4】
前記冷却用熱交換室と前記加熱用熱交換室は、横方向に層を成すように設けられていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項5】
前記隔壁において、マトリクス状に配列される凸部が前記加熱用熱交換室の内壁面側に形成されており、
前記熱電素子モジュールは、それぞれ前記凸部に接着されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項6】
前記複数の熱電素子モジュールは、それぞれ前記隔壁に接着されている面とは反対側の面に複数のフィン状又はピン状の突起を有する吸熱板が接着されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項7】
前記冷却用熱交換室は、冷水を通過させるための連通管で前記層の重ね方向の順に一連に接続されており、
前記加熱用熱交換室は、加熱水蒸気を通過させるための連通管で前記層の重ね方向の順に一連に接続されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項8】
前記冷却用熱交換室と前記加熱用熱交換室は、前記層の重ね方向と直交する横方向に長く形成されており、
前記冷却用熱交換室は、その長手方向の一端に冷水を通過させるための入口を有し他端に冷水を通過させるための出口を有しており、
前記加熱用熱交換室は、その長手方向の一端に加熱水蒸気を通過させるための入口を有し他端に加熱水蒸気を通過させるため出口を有していることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項9】
前記冷却用熱交換室は、冷水を通過させるための出口が入口より高く設定されており、
前記加熱用熱交換室は、加熱水蒸気を通過させるための出口が入口より低く設定されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の発電装置と、前記冷却用熱交換室を通過する冷水を供給する冷水供給源と、前記加熱用熱交換室を通過する加熱水蒸気を供給する加熱水蒸気供給源を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項11】
請求項7記載の発電装置と、前記冷却用熱交換室を通過する冷水を供給する冷水供給源と、前記加熱用熱交換室を通過する加熱水蒸気を供給する加熱水蒸気供給源を備え、
前記冷却用熱交換室を通過する冷水と前記加熱用熱交換室を通過する加熱水蒸気が前記層の重ね方向において逆方向に通過するように供給されることを特徴とする発電システム。
【請求項12】
冷却媒体が通過する冷却用熱交換室と加熱媒体が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記加熱用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする発電装置。
【請求項13】
冷却媒体が通過する冷却用熱交換室と加熱媒体が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記冷却用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする発電装置。
【請求項14】
請求項12又は13の何れかに記載の発電装置と、前記冷却用熱交換室を通過する冷却媒体を供給する冷却媒体供給源と、前記加熱用熱交換室を通過する加熱媒体を供給する加熱媒体供給源を備えることを特徴とする発電システム。
【請求項15】
前記発電装置が出力する直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーを備えたことを特徴とする請求項14記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電効果を利用する発電装置及びそれを用いる発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼーベック効果を利用する電池として、
図6(a)に示すように、P型半導体SpとN型半導体Snを電極Eで接合した半導体熱電素子が知られている。この熱電素子は、電極Eの一方を加熱部Hで加熱され、他方を冷却部Cで冷却されることによる温度差で起電力を発生させる。
図6(b)に示すように、直列接続された多数対の熱電素子を二枚のセラミック絶縁板Pの間に配設し、電力出力用のリード線Lを設けた熱電素子モジュールが実用化されている。
【0003】
熱電素子モジュールを組み込んだ発電装置として以下のようなものが提案されている。中空箱状の熱交換器と熱電素子モジュールを交互に重ねて層状に配置し、各熱電素子モジュールの一方の面に着接する熱交換器に排気ガスを供給し、他方の面に着接する熱交換器に冷水を供給して、排気ガスと冷水の温度差により各熱電素子モジュールに起電力を生じさせる発電装置である(例えば、特許文献1参照。)。タービンや発電機等の動的機器が含まれていないため、簡単に組み立てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
但し一般に製造されている熱電素子モジュールは、
図6(c)に示すようなもので、縦横数センチメートル程度と小さく、モジュール1個当たりの発電量は限られている。上記のような発電装置で十分な発電量を得るためには、熱電素子モジュールの搭載個数を大幅に増やす必要がある。しかし、そのために熱交換器と熱電素子モジュールで構成される層の数を大幅に増やすと、装置構造が複雑化し、発電量の増加と製作コストの上昇が見合わない。
【0006】
これに対し、熱交換器を大型化し、熱交換器の間に配設する熱電素子モジュールの個数を増やせば、層の数は少なくても熱電素子モジュールの搭載個数は大幅に増やせる。しかし、熱電素子モジュールの厚み寸法には製造上のバラツキがあり、多数の熱電素子モジュールの中で両面が熱交換器に密着するモジュールはごく一部に限られる。大半の熱電素子モジュールは、熱交換器との間に隙間を生じて熱電発電に必要な温度差を得られないため、本来の発電能力を発揮することはできない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、熱電素子モジュールからなる発電装置及びそれを用いる発電システムにおいて、装置構造を複雑化させることなく、製作コストの上昇を抑えながら、多くの熱電素子モジュールに本来の発電能力を発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、
冷水が通過する冷却用熱交換室と加熱水蒸気が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記加熱用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする発電装置
を提供する。
【0009】
請求項2の発明は、
前記冷却用熱交換室は、それぞれ箱状体で形成されており、
前記加熱用熱交換室は、互いに対向する二つの冷却用熱交換室の側壁と、前記二つの冷却用熱交換室の側壁の周縁間の隙間を閉鎖する蓋状部材により形成されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0010】
請求項3の発明は、
前記蓋状部材が、着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の発電装置
を提供する。
【0011】
請求項4の発明は、
前記冷却用熱交換室と前記加熱用熱交換室は、横方向に層を成すように設けられていることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0012】
請求項5の発明は、
前記隔壁において、マトリクス状に配列される凸部が前記加熱用熱交換室の内壁面側に形成されており、
前記熱電素子モジュールは、それぞれ前記凸部に接着されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0013】
請求項6の発明は、
前記複数の熱電素子モジュールは、それぞれ前記隔壁に接着されている面とは反対側の面に複数のフィン状又はピン状の突起を有する吸熱板が接着されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0014】
請求項7の発明は、
前記冷却用熱交換室は、冷水を通過させるための連通管で前記層の重ね方向の順に一連に接続されており、
前記加熱用熱交換室は、加熱水蒸気を通過させるための連通管で前記層の重ね方向の順に一連に接続されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0015】
請求項8の発明は、
前記冷却用熱交換室と前記加熱用熱交換室は、前記層の重ね方向と直交する横方向に長く形成されており、
前記冷却用熱交換室は、その長手方向の一端に冷水を通過させるための入口を有し他端に冷水を通過させるための出口を有しており、
前記加熱用熱交換室は、その長手方向の一端に加熱水蒸気を通過させるための入口を有し他端に加熱水蒸気を通過させるため出口を有していることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0016】
請求項9の発明は、
前記冷却用熱交換室は、冷水を通過させるための出口が入口より高く設定されており、
前記加熱用熱交換室は、加熱水蒸気を通過させるための出口が入口より低く設定されていることを特徴とする請求項1記載の発電装置
を提供する。
【0017】
請求項10の発明は、
請求項1乃至9の何れかに記載の発電装置と、前記冷却用熱交換室を通過する冷水を供給する冷水供給源と、前記加熱用熱交換室を通過する加熱水蒸気を供給する加熱水蒸気供給源を備えることを特徴とする発電システム
を提供する。
【0018】
請求項11の発明は、
請求項7記載の発電装置と、前記冷却用熱交換室を通過する冷水を供給する冷水供給源と、前記加熱用熱交換室を通過する加熱水蒸気を供給する加熱水蒸気供給源を備え、
前記冷却用熱交換室を通過する冷水と前記加熱用熱交換室を通過する加熱水蒸気が前記層の重ね方向において逆方向に通過するように供給されることを特徴とする発電システム
を提供する。
【0019】
請求項12の発明は、
冷却媒体が通過する冷却用熱交換室と加熱媒体が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記加熱用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする発電装置
を提供する。
【0020】
請求項13の発明は、
冷却媒体が通過する冷却用熱交換室と加熱媒体が通過する加熱用熱交換室が隔壁で区画されると共に層を成すように交互に設けられており、
前記冷却用熱交換室は内部に複数の熱電素子モジュールを収容しており、
前記複数の熱電素子モジュールはそれぞれ片面を前記隔壁に接着されていることを特徴とする発電装置
を提供する。
【0021】
請求項14の発明は、
請求項12又は13の何れかに記載の発電装置と、前記冷却用熱交換室を通過する冷却媒体を供給する冷却媒体供給源と、前記加熱用熱交換室を通過する加熱媒体を供給する加熱媒体供給源を備えることを特徴とする発電システム
を提供する。
【0022】
請求項15の発明は、
前記発電装置が出力する直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナーを備えたことを特徴とする請求項14記載の発電システム
を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、冷水(冷却媒体)が通過する冷却用熱交換室と、加熱水蒸気(加熱媒体)が通過する加熱用熱交換室と、熱電素子モジュールで構成される発電装置及びそれを用いる発電システムにおいて、装置構造を複雑化させることなく、多数の熱電素子モジュールに本来の発電能力を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】(a)発電装置の平面図、(b)発電装置の正面図。
【
図3】(a)
図2(b)のA-A断面図、(b)
図2(a)のB-B断面図。
【
図4】(a)箱状体(冷却用熱交換室)の組立図、(b)箱状体の側面図、(c)箱状体の断面図、(d)箱状体に対する熱電素子モジュールの接着を説明する部分拡大図。
【
図5】(a)加熱用熱交換室の構成について説明する部分拡大図、(b)加熱用熱交換室が組み立てられた状態を示す図。
【
図6】(a)熱電素子の模式図、(b)熱電素子モジュールの模式図、(c)熱電素子モジュールの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発電システム1)
本発明の実施形態に係る発電システム1について図面を参照しながら説明する。発電システム1は、
図1に示すように、燃焼部2、冷却部3及び発電部4を備える。燃焼部2は加熱水蒸気(加熱媒体)の供給源を備えており、加熱水蒸気を発電部4に供給する。冷却部3は冷水(冷却媒体)の供給源を備えており、冷水を発電部4に供給する。発電部4は加熱水蒸気と冷水の温度差を利用して熱電発電し、交流電力を外部に送電する。
【0026】
(燃焼部2)
燃焼部2は、
図1に示すように、焼却炉21、廃熱ボイラー22、及び高圧蒸気溜23を備える。焼却炉21は廃材を焼却して熱エネルギーを発生させる。廃熱ボイラー22は加熱水蒸気の供給源であり、焼却炉21による熱エネルギーで水を加熱して、加熱水蒸気を発生させる。高圧蒸気溜23は廃熱ボイラー22から加熱水蒸気を導入して貯留し、供給管24を通して発電部4の加熱用熱交換室5に供給する。発電部4で利用された加熱水蒸気は排出管25を通して廃熱ボイラー22に戻される。
【0027】
(冷却部3)
冷却部3は、
図1に示すように、地下にある水源(図示しない)と、ポンプ31を備える。ポンプ31は、冷水の供給源である地下水源から冷水から汲み上げて、供給管32を通して発電部4の冷却用熱交換室6に供給する。発電部4で利用された水は排出管33を介して外部に排水される。冷水の供給源は、地下水源に代えて、海、河川、湖沼、貯水池或いは貯水タンクその他の水源を使用してもよい。発電部4で利用された水を外部に排水することに代えて、一部又は全部を回収し発電部4に再供給してもよい。
【0028】
(発電部4)
発電部4は、
図1に示すように、発電装置41と、パワーコンディショナー42を備える。発電装置41は、加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6を備えており、燃焼部2から加熱用熱交換室5に加熱水蒸気を供給される一方、冷却部3から冷却用熱交換室6に冷水を供給される。発電装置41は、加熱水蒸気と冷水の温度差を利用して熱電発電し、直流電力をパワーコンディショナー42に送電する。パワーコンディショナー42は、発電装置41から送電された直流電力を交流電力に変換して外部へ送電する。
【0029】
(発電装置41)
発電装置41は、
図1~3に示すように、三つの加熱用熱交換室5と、四つの冷却用熱交換室6と、多数の熱電素子モジュール7(
図3)を備える。加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6は熱伝導性材料で形成される隔壁41a(
図3)で区画されると共に層を成すように交互に設けられている。各加熱用熱交換室5は、内部に複数の熱電素子モジュール7を収容している。熱電素子モジュール7はそれぞれ片面を熱伝導性に優れた接着剤又は両面接着テープにより隔壁41aに接着されている。なお、本願図面において熱電素子モジュール7の電力出力用のリード線は省略されている。
【0030】
燃焼部2から供給された加熱水蒸気は3つの加熱用熱交換室5(5A、5B、5C)を通過し、冷却部3から供給された冷水は冷却用熱交換室6(6A、6B、6C、6D)を通過する。これにより、熱電素子モジュール7の一方の面は加熱用熱交換室5を通過する加熱水蒸気により加熱されることになり、他方の面(接着された面)は冷却用熱交換室6を通過する冷水により隔壁41aを介して冷却される。結果として、熱電素子モジュール7は、加熱水蒸気と冷水の温度差を与えられることにより熱電発電する。以下、加熱用熱交換室5、冷却用熱交換室6及び熱電素子モジュール7について詳細に説明する。
【0031】
(加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6)
加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6は、共に直方体形状の閉鎖空間を有しており、
図1~3に示すように統合されている。冷却用熱交換室6は、
図4に示すように、横方向に長い矩形筒状の本体601と、二つの蓋体602と、二つの管体603で構成される箱状体により形成される。他方、加熱用熱交換室5は、
図5に示すように、箱状体ではなく、互いに対向する二つの冷却用熱交換室6(箱状体)の側壁6aと、これらの側壁6aの周縁間の隙間を閉鎖する蓋状部材501、502で囲まれることにより形成される。
【0032】
すなわち、加熱用熱交換室5の左右両側にある箱状体の側壁6aが、加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6の隔壁41aとなる。また、二つの冷却用熱交換室6(箱状体)の間の空間を被う蓋状部材501、502が加熱用熱交換室5の上下面及び前後面となる。これにより、
図1~3に示すように、三つの加熱用熱交換室5がそれぞれ冷却用熱交換室6の間に挟まれるように隣接配置され、加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6が横方向に層を成す。なお、冷却用熱交換室6を発電装置41の最外側に配設している理由は、常温との温度差が大きい加熱用の熱交換器5が外気に触れる面積を小さくして温度低下を防止するためである。
【0033】
冷却用熱交換室6を形成する箱状体の構成部品はすべてアルミニウム(金属)製であり、溶接で合わせ目から冷水が漏れないように連結される。本体601は、
図4(a)及び(b)に示すように、加熱用熱交換室5の内壁面となる二つの側壁6aの外側にそれぞれ二十個の凸部6bが設けられている。凸部6bは、九本の縦溝6cと一本の横溝6dでマトリクス状に区画されており、熱電素子モジュール7の板面と略同じ大きさ(55×55mm)の矩形状に形成される。各側壁6aの内側には、
図4(b)及び(c)に示すように四本のフィン6eが形成されている。フィン6eは、凸部6bの裏側において横方向に延びている。フィン6eは、冷却用熱交換室6を通過する冷水の流れを妨げることなく、冷水の低温を凸部6bに効率的に伝導する。
【0034】
二十個の凸部6bには、
図4(d)、
図5(a)に示すように、それぞれ熱電素子モジュール7が一枚ずつ接着され、その上にアルミニウム(金属)製の吸熱板8が接着される。吸熱板8は、熱電素子モジュール7と同じ大きさ(55×55mm)の矩形状であり、横方向に長い複数のフィン状の突起81を有している。吸熱板8は、加熱用熱交換室5を通過する加熱水蒸気の流れを妨げることなく、加熱水蒸気の熱を熱電素子モジュール7に効率的に伝導する。これらは、
図5(b)に示すように加熱用熱交換室5が形成されたときに、加熱用熱交換室5の内部に収容されることになる。なお、
図2及び
図3に示すように、発電装置41の最外側に配置される箱状体の凸部6bには熱電素子モジュール7及び吸熱板8は設けない。これらは発電に寄与しないからである。
【0035】
蓋体602は、本体601の両端開口を閉鎖する。管体603は、蓋体602に設けられた貫通穴部分に突設されて、冷却用熱交換室6の長手方向の一端に冷水を通過させるための入口を形成し他端に冷水を通過させるための出口を形成する。冷水が長手方向に通過することにより、冷却用熱交換室6内の冷水の入れ替わりがスムーズになる。また、二つの管体603は、出口の高さ位置を入口の高さ位置よりも高くするため、二枚の蓋体602を相互に上下反転することにより、
図4(b)に示すように、異なる高さ位置に設けられている。これにより、冷却用熱交換室6に低い入口から供給された水が温度上昇して上方移動すると、高い位置にある出口から優先的に排出される。上記のとおりであるから、冷却用熱交換室6は低温に維持される。
【0036】
加熱用熱交換室5は、
図2、
図3及び
図5に示すように、二つの箱状体の側壁6aにより左右の両側壁が形成され、二枚の蓋状部材501により上下両面が形成され、二枚の蓋状部材502により前後両面が形成されている。蓋状部材501、502は、箱状体に対して接着又はネジ止めにより固定される。箱状体、蓋状部材501及び蓋状部材502の合わせ目は、内部を通過する加熱水蒸気が漏れないように密閉される。蓋状部材501、502を取り付ける前の開放状態において、熱電素子モジュール7や吸熱板8を接着し、電力取り出し用の電線を配線することにより、発電装置41の組立作業を容易に行うことができる。なお、加熱用熱交換室5の内部に収容される熱電素子モジュール7やその配線を点検、修理、交換できるようにするため、蓋状部材501、502は着脱自在に設けることとしてもよい。
【0037】
二枚の蓋状部材502にはそれぞれ一つずつ貫通穴502a(
図5)が形成されている。貫通穴502aには、冷却用熱交換室6の管体603と同様の管(図示しない)が取り付けられる。これにより、加熱用熱交換室5の長手方向の一端に加熱水蒸気を通過させるための入口が形成され他端に加熱水蒸気を通過させるための出口が形成される。加熱水蒸気が長手方向に通過することにより、加熱用熱交換室6内の加熱水蒸気の入れ替わりがスムーズになる。二つの貫通穴502aは、出口の高さ位置を入口の高さ位置よりも低くするため、二枚の蓋状部材502を相互に上下反転することにより、異なる高さ位置に設けられている。これにより、加熱用熱交換室5に高い入口から供給された加熱水蒸気が温度低下して下方移動すると、低い位置にある出口から優先的に排出される。上記のとおりであるから、加熱用熱交換室5は高温に維持される。
【0038】
(熱電素子モジュール7)
熱電素子モジュール7は、二枚の矩形絶縁板の間に直列接続した複数対の半導体熱電素子を収容する矩形板状のモジュールであり、二つの板面に与えられる温度差を利用して熱電発電する。熱電素子モジュール7は、
図3、
図4(d)及び
図5に示すように、その片面が冷却用熱交換室6の側壁6aに形成された凸部6bに片面を接着されることにより、加熱用熱交換室5の内部に四十個(2×10列×2面)ずつ収容されており、隔壁41aに接着されている面とは反対側の面に吸熱板8が接着される。凸部6bに接着されている面は冷却用熱交換室6を通過する冷水により確実に冷却され、吸熱板8が接着された面は加熱熱交換室6を通過する加熱水蒸気により確実に加熱される。
【0039】
したがって、多数の熱電素子モジュールを用いる場合でも、モジュールの厚み寸法のバラツキによる影響を受けることなく、すべての熱電素子モジュール7が一定以上の温度差を与えられて、本来の発電能力を発揮することができる。これらの熱電素子モジュール7は、高い電圧が得られるように電力取り出し用のリード線を繋ぎ合わされて電気的に直列接続されている。加熱用熱交換室5で発電された電力は、加熱用熱交換室5から外部へ導出される電線(図示しない)により出力される。各加熱用熱交換室5から導出された電線も直列接続される。各熱電素子モジュールは、80℃程度の温度差において1モジュール当り5W(5V、1A)の発電能力を有している。したがって、百二十個の熱電素子モジュールを有する発電装置41全体として約600W程度を発電することができる。
【0040】
(加熱水蒸気及び冷水の供給)
本実施形態において、加熱水蒸気は、三つの加熱用熱交換室5(5A、5B、5C)に対し下記のように供給される。
図2~3に示すように、図中の右側に位置する加熱用熱交換室5Aは、入口に加熱水蒸気を供給する供給管24が接続され、出口に連通管51の一端が接続されている。図中の中央に位置する加熱用熱交換室5Bは、入口に連通管51の他端が接続され、出口に連通管52の一端が接続されている。図中の左側に位置する加熱用熱交換室5Cは、入口に連通管52の他端が接続され、出口に排出管25が接続されている。すなわち、三つの加熱用熱交換室5A、5B、5Cは連通管51、52により層の重ね方向の順に一連に接続されている。加熱水蒸気は、燃焼部2から熱交換器5Aに供給され、加熱用熱交換室5A、5B、5Cの順番でこれらの内部を連続的に通過して、加熱用熱交換室5Cから燃焼部2に戻される。
【0041】
本実施形態において、冷水は、四つの冷却用熱交換室6(6A、6B、6C、6D)に対し下記のように供給される。
図2~3に示すように、図中の左端に位置する冷却用熱交換室6Aは、入口に冷水を供給する供給管32が接続されて、出口に連通管61の一端が接続される。図中の左から二番目に位置する冷却用熱交換室6Bは、入口に連通管61の他端が接続されて、出口に連通管62の一端が接続される。図中の左から三番目に位置する冷却用熱交換室6Cは、入口に連通管62の他端が接続されて、出口に連通管63の一端が接続される。図中の右端に位置する冷却用熱交換室6Dは、入口に連通管63の他端が接続されて、出口に排出管33が接続される。すなわち、四つの冷却用熱交換室6A、6B、6Cは連通管61、62、63により層の重ね方向の順に一連に接続されている。冷水は、冷却部2から冷却用熱交換室6Aに供給され、冷却用熱交換室6A、6B、6C、6Dの順番でこれらの内部を連続的に通過して、冷却用熱交換室6Dから外部に排出される。
【0042】
すべての加熱用熱交換室を一連に接続し、すべての冷却用熱交換室を一連に接続することにより、加熱水蒸気や冷水(熱媒体)を各熱交換室に均等に分配するための分配機器を設ける必要がなくなる。熱媒体の通過経路を一本にまとめることにより、分配供給する場合と比べて熱媒体の供給圧力が高められる。結果として、熱交換器内における熱媒体の滞留を生じにくくなり、加熱効率及び冷却効率が向上する。
【0043】
また、加熱水蒸気は加熱用熱交換室5A、5B、5Cの順番で
図2及び
図3中の右から左へ通過する一方、冷水は冷却用熱交換室6A、6B、6C、6Dの順番で
図2及び
図3中の左から右へ通過する。すなわち加熱水蒸気と冷水は、熱交換室の層の重ね方向(図中の左右方向)において逆方向に通過するように設定されている。加熱水蒸気は、熱交換器を通過するうちに徐々に温度が低下する一方、冷水は熱交換器を通過するうちに徐々に温度が上昇するため、逆向きに通過させることにより、通過経路中の何れの位置においても熱電発電に必要な一定以上の温度差が確保される。
【0044】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態では、加熱媒体として加熱水蒸気を使用したが、これに代えて燃焼ガス等、他の気体加熱媒体や液体加熱媒体を使用してもよい。また、冷却媒体として冷水を使用したが、これに代えての他の液体冷却媒体や気体冷却媒体を使用してもよい。上記実施形態では、冷却用熱交換室6を箱状体で形成し、それらの箱状体の間に熱電素子モジュール7を収容する加熱用熱交換室5を形成したが、これに代えて、加熱用熱交換室5を箱状体で形成し、それらの箱状体の間に熱電素子モジュール7を収容する冷却用熱交換室5を形成しても良い。上記実施形態では、箱状体をアルミニウム(金属)で形成したが、これに代えて高熱伝導性プラスチック等、他の熱伝導性材料で形成してもよい。上記実施形態では、上記実施形態では、三つの加熱用熱交換室と四つの冷却用熱交換室を設けたが、異なる数の熱交換室を設けてもよい。また、一つの加熱用熱交換室に四十個の熱電素子モジュールを搭載したが、異なる個数の熱電素子モジュールを搭載してもよい。
【0045】
加熱用熱交換室5と冷却用熱交換室6の間で発電に寄与しない熱移動を生じさせないようにするために、凸部6bを区画する縦溝6cと横溝6dを断熱材で覆うことにしてもよい。熱電素子モジュール7にフィン状の突起を有する吸熱板8を接着することとしたが、これに代えて、多数のピン状の突起を有する吸熱板8を採用してもよい。また、吸熱板を設けないこととしてもよい。上記実施形態では、冷却用熱交換室が発電装置の最外側に配設されているが、代わりに加熱用熱交換室を最外側に配設してもよい。その他、本発明はその要旨を変更しない範囲で種々の変更をなし得る。
【符号の説明】
【0046】
1 発電システム
2 燃焼部
3 冷却部
4 発電部
41 発電装置
42 パワーコンディショナー
5 加熱用熱交換室
6 冷却用熱交換室
7 熱電素子モジュール