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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179362
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】入力タッチペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20241219BHJP
   G06F 3/046 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G06F3/03 400E
G06F3/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098150
(22)【出願日】2023-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪上 正史
(72)【発明者】
【氏名】住吉 聡
(57)【要約】      (修正有)
【課題】意図するとおりの操作を円滑に行い易く、操作性を向上できる入力タッチペンを提供する。
【解決手段】入力タッチペン1は、軸方向の先端の開口部である先端開口が形成された軸筒10と、軸筒の内部に収容され、先端開口から露出可能な接触先端45を有し、電磁誘導方式の位置検出装置により送信された電磁エネルギーを反射する電磁誘導リフィル40と、電磁誘導リフィル40の接触先端を軸筒の先端開口から出没させる出没機構30と、電磁誘導リフィル40が反射する電磁エネルギーの周波数を変化させる発振周波数調整部材23と、発振周波数調整部材23を電磁誘導リフィル40に対して軸方向に沿って移動させる移動機構33と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の先端の開口部である先端開口が形成された軸筒と、
前記軸筒の内部に収容され、前記先端開口から露出可能な接触先端を有し、電磁誘導方式の位置検出装置により送信された電磁エネルギーを反射する電磁誘導リフィルと、
前記電磁誘導リフィルの前記接触先端を前記軸筒の前記先端開口から出没させる出没機構と、
前記電磁誘導リフィルが反射する電磁エネルギーの周波数を変化させる発振周波数調整部材と、
前記発振周波数調整部材を前記電磁誘導リフィルに対して前記軸方向に沿って移動させる移動機構と、
を備える入力タッチペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力タッチペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導式の入力タッチペンは、電子機器のディスプレイから発せられる電磁エネルギーを電子機器に対して反射することで入力タッチペンの位置を電子機器に知らせる。また、電磁誘導式入力タッチペンが反射する電磁エネルギーの周波数によって、ディスプレイ上で発現する機能が分けられている。
【0003】
電磁誘導式入力タッチペンが反射する電磁エネルギーの周波数は、例えば筆記機能及び消去機能のような各種の機能に応じて変化する。電磁エネルギーの周波数を変化させる手段は、通常、電磁誘導式入力タッチペンが備えるLC発信回路に、コンデンサ又はインダクタを挿入する又は重ね合わせることでLC共振周波数を変えることによって、実現できる。
【0004】
特許文献1では、電磁誘導式入力タッチペンのLC発信回路にコンデンサ又はインダクタを直接挿入することなく、LC共振周波数を変化させる技術が提案されている。具体的には、入力タッチペンの接触先端は、軸筒の先端開口から常時突出している。また、入力タッチペンの軸筒の内側では接触先端の根元の位置に、LC発信回路が配置されている。
【0005】
特許文献1では、軸筒の内側でLC発信回路に対し、コンデンサ又はインダクタ等である発振周波数調整部材を軸方向に沿って移動させることによって、発振周波数調整部材のLC発信回路に対する近接移動と離隔移動とが切り替えられる。軸筒の後端には、発振周波数調整部材の移動機構として、ノック機構が設けられる。ノック機構を用いてノック操作が行われることによって、発振周波数調整部材の近接移動と離隔移動とが切り替えられ、結果、入力タッチペンの筆記機能と消去機能とが切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-207673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、例えば、入力タッチペンのような消去機能を有さない、一般的なノック機構を有するボールペン等の筆記具では、ノック操作は、ペン先の先端の突出状態と没入状態との切替え、すなわち出没の切替え操作のみにおいて習慣的に使用される場合が多い。このため、特許文献1に記載の入力タッチペンが使用される際、一般的な筆記具における習慣の影響で、周波数調整部材を移動させる移動機構であるノック機構が接触先端の出没機構と間違って操作されることが考えられる。例えば、消去機能が発現された状態の入力タッチペンで、使用者が筆記を行おうとすることが考えられる。このため、特許文献1の場合、すなわち、意図するとおりの操作を円滑に行い難い場合がある。
【0008】
本開示は、意図するとおりの操作を円滑に行い易く、操作性を向上できる入力タッチペンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の様態は、下記の通りである。
【0010】
軸方向の先端の開口部である先端開口が形成された軸筒と、前記軸筒の内部に収容され、前記先端開口から露出可能な接触先端を有し、電磁誘導方式の位置検出装置により送信された電磁エネルギーを反射する電磁誘導リフィルと、前記電磁誘導リフィルの前記接触先端を前記軸筒の前記先端開口から出没させる出没機構と、前記電磁誘導リフィルが反射する電磁エネルギーの周波数を変化させる発振周波数調整部材と、前記発振周波数調整部材を前記電磁誘導リフィルに対して前記軸方向に沿って移動させる移動機構と、を備える入力タッチペン。
【0011】
上記態様では、接触先端の出没機構が、発振周波数調整部材の移動機構とは別に設けられる。このため、発振周波数調整部材の移動機構と接触先端の出没機構とを別々に操作できるので、意図するとおりの操作を円滑に行い易く、入力タッチペンの操作性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の態様によれば、意図するとおりの操作を円滑に行い易く、操作性を向上できる入力タッチペンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンを先端開口側から見て説明する斜視図であり、図1(B)は、第1実施形態に係る入力タッチペンを後端開口側から見て説明する斜視図である。
図2図2(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンを説明する正面図であり、図2(B)は、第1実施形態に係る入力タッチペンを後端開口側から見て説明する側面図であり、図2(C)は、図2(B)中の2C-2C線断面図である。
図3図3(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの後軸を説明する正面図であり、図3(B)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの後軸を説明する平面図であり、図3(C)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの後軸を後端開口側から見て説明する側面図であり、図3(D)は、図3(B)中の3D-3D線断面図であり、図3(E)は、図3(B)中の3E-3E線断面図である。
図4図4(A)は、軸筒を除いた状態の第1実施形態に係る入力タッチペンを先端開口側から見て説明する斜視図であり、図4(B)は、軸筒を除いた状態の第1実施形態に係る入力タッチペンを図4(A)の場合とは異なる角度で先端開口側から見て説明する斜視図である。
図5図5(A)は、軸筒を除いた状態の第1実施形態に係る入力タッチペンを説明する正面図であり、図5(B)は、軸筒を除いた状態の第1実施形態に係る入力タッチペンを説明する平面図であり、図5(C)は、軸筒を除いた状態の第1実施形態に係る入力タッチペンを後端開口側から見て説明する側面図であり、図5(D)は、軸筒を除いた状態の第1実施形態に係る入力タッチペンを先端開口側から見て説明する側面図であり、図5(E)は、図5(B)中の5E-5E線断面図である。
図6図6(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンのノック棒を説明する斜視図であり、図6(B)は、第1実施形態に係る入力タッチペンのノック棒を説明する平面図であり、図6(C)は、図6(B)中の6C部拡大図であり、図6(D)は、図6(C)中の6D-6D線断面図である。
図7図7(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの発振周波数調整ユニットを説明する斜視図であり、図7(B)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの発振周波数調整ユニットを説明する正面図であり、図7(C)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの発振周波数調整ユニットを説明する平面図であり、図7(D)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの発振周波数調整ユニットを先端開口側から見て説明する側面図であり、図7(E)は、図7(C)中の7E-7E線断面図である。
図8図8(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの使用方法を説明する斜視図であり(その1)、図8(B)は、図8(A)の状態における第1実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒を除いて説明する斜視図である。
図9図9(A)は、第1実施形態に係る入力タッチペンの使用方法を説明する斜視図であり(その2)、図9(B)は、図9(A)の状態における第1実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒を除いて説明する斜視図である。
図10】第1実施形態に係る入力タッチペンの使用方法を説明する斜視図である(その3)。
図11図11(A)は、接触先端が没入した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを先端開口側から見て説明する斜視図であり、図11(B)は、接触先端が突出した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを先端開口側から見て説明する斜視図であり、図11(C)は、操作突起が前進した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを先端開口側から見て説明する斜視図である。
図12】第2実施形態に係る入力タッチペンの分解組立図である。
図13図13(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの中軸を説明する斜視図であり、図13(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの中軸を説明する正面図であり、図13(C)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの中軸を説明する平面図であり、図13(D)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの中軸を後側から見て説明する側面図であり、図13(E)は、図13(C)中の13E-13E線断面図である。
図14図14(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの操作部材を前側から見て説明する斜視図であり、図14(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの操作部材を後側から見て説明する斜視図である。
図15図15(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの操作部材を説明する正面図であり、図15(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの操作部材を説明する平面図であり、図15(C)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの操作部材を前側から見て説明する側面図であり、図15(D)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの操作部材を後側から見て説明する側面図であり、図15(E)は、図15(B)中の15E-15E線断面図である。
図16図16(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を前側から見て説明する斜視図であり、図16(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を後側から見て説明する斜視図である。
図17図17(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を説明する正面図であり、図17(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を説明する平面図であり、図17(C)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を前側から見て説明する側面図であり、図17(D)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を後側から見て説明する側面図であり、図17(E)は、図17(B)中の17E-17E線断面図である。
図18】第2実施形態に係る入力タッチペンのスライドカムを前側から見て説明する斜視図である。
図19図19(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を説明する正面図であり、図19(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を説明する背面図であり、図19(C)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を説明する平面図であり、図19(D)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの回転部材を後側から見て説明する側面図であり、図19(E)は、図19(C)中の19E-19E線断面図である。
図20】第2実施形態に係る入力タッチペンの出没用摺動コマを前側から見て説明する斜視図である。
図21図21(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを前側から見て説明する斜視図であり、図21(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを後側から見て説明する斜視図であり、図21(C)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを図21(A)の場合と角度を変えて前側から見て説明する斜視図である。
図22図22(A)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを説明する正面図であり、図22(B)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを説明する背面図であり、図22(C)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを説明する平面図であり、図22(D)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを説明する底面図であり、図22(E)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを前側から見て説明する側面図であり、図22(F)は、第2実施形態に係る入力タッチペンの移動用摺動コマを後側から見て説明する側面図であり、図22(G)は、図22(D)中の22G-22G線断面図である。
図23図23(A)は、ノック操作が行われる前の状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸中心を含む面で切断して説明する断面図であり、図23(B)は、ノック操作が行われた後の状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを軸中心を含む面で切断して説明する断面図である。
図24図24(A)は、接触先端が没入した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、前軸及び中軸を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図24(B)は、接触先端が突出した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、前軸及び中軸を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図24(C)は、操作突起が前進した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、前軸及び中軸を除いて先端開口側から見て説明する斜視図である。
図25図25(A)は、接触先端が没入した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図25(B)は、接触先端が突出した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図25(C)は、操作突起が前進した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒を除いて先端開口側から見て説明する斜視図である。
図26図26(A)は、接触先端が没入した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒、操作部材、回転子及びノック部材を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図26(B)は、接触先端が突出した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒、操作部材、回転子及びノック部材を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図26(C)は、操作突起が前進した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒、操作部材、回転子及びノック部材を除いて先端開口側から見て説明する斜視図である。
図27図27(A)は、接触先端が没入した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒、操作部材、回転子、ノック部材及び回転部材を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図27(B)は、接触先端が突出した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒、操作部材、回転子、ノック部材及び回転部材を除いて先端開口側から見て説明する斜視図であり、図27(C)は、操作突起が前進した状態における第2実施形態に係る入力タッチペンを、軸筒、操作部材、回転子、ノック部材及び回転部材を除いて先端開口側から見て説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示を、第1及び第2実施形態を用いて説明する。以下の図面の記載において、同一の部分及び類似の部分には、同一の符号又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なる場合がある。したがって、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる場合がある。また、明細書中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。
【0015】
(方向の定義)
本明細書中では、入力タッチペンの軸線方向において、接触先端が配置される側を「前」側と定義すると共に、軸方向において接触先端が配置される側と反対となる側を「後」側と定義する。特に言及のない限り、中心軸線又は軸線方向とは、入力タッチペンの中心軸線又は軸線方向をいう。
【0016】
-第1実施形態-
<入力タッチペンの構造>
図1(A)及び図1(B)に示すように、第1実施形態に係る入力タッチペン1は、軸筒10と、出没機構30と、移動機構33と、を備える。また、入力タッチペン1は、図2(C)に示すように、軸筒10の内側に、発振周波数調整部材23と、電磁誘導リフィル40と、を備える。なお、第1実施形態では、入力タッチペン1にクリップが設けられていない場合が例示されているが、本開示では、入力タッチペンにクリップが設けられてもよい。
【0017】
(軸筒)
図2(A)及び図2(B)に示すように、軸筒10は、前軸12と後軸14とを有する。図2(C)に示すように、第1実施形態では、後軸14の先端の内周面には雌ネジ部が形成されると共に、前軸12の後端の外周面には雄ネジ部が形成される。雌ネジ部の符号と雄ネジ部の符号の図示は、見易さのため省略する。
【0018】
軸筒10は、ネジ結合によって前軸12の後端を後軸14の先端に連結することにより構成される。なお、本開示では、前軸と後軸との連結方法はこれに限定されず、例えば軸筒は、前軸を後軸の先端から圧入することにより構成されてもよいし、接着剤等を用いて前軸と後軸とが接合されることによって構成されてもよい。
【0019】
(前軸)
図2(A)に示すように、前軸12は、軸筒10における軸方向の先端側を構成すると共に、基部12Aと先端部12Bとを有する。基部12Aと先端部12Bとは筒状である。先端部12Bは、先細となるテーパ形状である。テーパ形状の前軸12の先端には、先端開口13が形成される。図2(C)に示すように、軸筒10の内部には、電磁誘導リフィル40と、出没機構30とが収容されている。
【0020】
(案内部)
図2(A)に示すように、第1実施形態では、前軸12の基部12Aには、案内部12A1が形成される。案内部12A1は、基部12Aと先端部12Bとの境界近傍の位置から、後軸14の側に向かって線状に延びる。案内部12A1は、例えば、基部12Aの表面に平面部分又は溝を部分的に設けることによって形成できる。また、案内部12A1は、着色部や突起部によって形成されてもよい。
【0021】
図2(A)に示すように、案内部12A1の延びる方向と、移動機構33の第一ノック部材33Aが収納された第一摺動孔14Aの延びる方向とは、ほぼ同一直線上に重なる。このため、第一ノック部材33Aの位置を、使用者が視覚的に把握し易い。なお、本開示では、第二ノック部材33B(図1(A)参照)が収納された第二摺動孔14B(図3(B)参照)に対応する案内部が、案内部12A1とは別に単独で、或いは案内部12A1と併せて設けられてもよい。
【0022】
(後軸)
図2(A)に示すように、後軸14は、軸筒10における軸方向の後端側を構成する。後軸14の後端の開口部には、円板状の天冠14Cが、嵌合又は接着等によって固定される。図2(B)に示すように、天冠14Cには、後端開口15が形成される。図2(C)に示すように、後端開口15からは、ノックボタン30Aが突出する。
【0023】
(摺動孔)
図3(A)~図3(C)に示すように、後軸14の外周面には、第一摺動孔14Aと第二摺動孔14Bとが形成される。第一摺動孔14Aと第二摺動孔14Bとは、軸線方向に沿って延在する。第一摺動孔14Aによって、第一ノック部材33Aの第一操作部34Aの突起は、軸線方向に沿って案内される。このため、第一ノック部材33Aは、軸線方向に摺動できる。また、第二摺動孔14Bによって、第二ノック部材33Bの第二操作部34Bの突起は、軸線方向に沿って案内される。このため、第二ノック部材33Bは、軸線方向に摺動できる。
【0024】
(摺動部)
後軸14の内周面上には、第一摺動孔14Aを周方向において両側から挟む部分に、第一摺動孔14Aとほぼ平行に軸方向に沿って延びる一対の第一凸部が形成される。図3(E)中には、一対の第一凸部のうちの一方の第一凸部14A1が例示されている。一対の第一凸部は、径方向内側にそれぞれ突出する。一対の第一凸部は、第一ノック部材33Aを摺動させるための、後軸14側の摺動部として機能する。
【0025】
一対の第一凸部は、第一摺動孔14Aに配置された第一ノック部材33Aの表面に形成された、一対の第一凹部(図6(A)参照)に嵌合する。図6(A)中には、一対の第一凹部のうちの一方の第一凹部36A1が例示されている。一対の第一凹部は、第一ノック部材33Aを摺動させるための、第一ノック部材33A側の摺動部として機能する。一対の第一凸部と一対の第一凹部との嵌合によって、第一ノック部材33Aが、後軸14に摺動自在に支持される。
【0026】
同様に、後軸14の内周面には、第二摺動孔14Bを周方向において両側から挟む部分に、第二摺動孔14Bとほぼ平行に軸方向に沿って延びる一対の第二凸部が形成される。図3(D)中には、一対の第二凸部のうちの一方の第二凸部14B1が例示されている。一対の第二凸部は、径方向内側にそれぞれ突出する。一対の第二凸部は、第二ノック部材33Bを摺動させるための、後軸14側の摺動部として機能する。
【0027】
一対の第二凸部は、第二摺動孔14Bに配置された第二ノック部材33Bの表面に形成された、一対の第二凹部(図6(A)参照)に嵌合する。図6(A)中には、一対の第二凹部のうちの一方の第二凹部36B1が例示されている。一対の第二凸部と一対の第二凹部との嵌合によって、第二ノック部材33Bが、後軸14に摺動自在に支持される。
【0028】
(移動機構)
図4(A)及び図4(B)に示すように、移動機構33は、発振周波数調整部材23を電磁誘導リフィル40に対して軸方向に沿って移動させる。移動機構33は、第一ノック部材33Aと第二ノック部材33Bとを有する。
【0029】
第1実施形態では、移動機構33による発振周波数調整部材23の移動は、第一ノック部材33Aと第二ノック部材33Bとの操作によって実現される。第一ノック部材33A及び第二ノック部材33Bは、出没機構30において接触先端45の出没動作を操作するノックボタン30Aとは別部材である。換言すると、移動機構33は、出没機構30とは独立して設けられる。
【0030】
(第一ノック部材)
図5(A)~図5(E)に示すように、第一ノック部材33Aは、発振周波数調整部材23が電磁誘導コイル46に近接するように発振周波数調整ユニット20を前進させる。図6(A)及び図6(B)に示すように、第一ノック部材33Aは、軸方向に沿って延びる棒状部材である。第一ノック部材33Aは、軸方向に沿って延在する第一本体部36Aと、第一本体部36Aの前方に突出して形成された嵌合部35と、第一本体部36Aの後部に形成された第一操作部34Aとを有する。
【0031】
第一ノック部材33Aの先端の嵌合部35は、接続部材24を介して、発振周波数調整ユニット20の継手25の突起部25B2(図7(E)参照)と連結する。連結によって、突起部25B2は、第一ノック部材33Aと連動する。
【0032】
図6(A)に示すように、第一本体部36Aと嵌合部35との段差の位置には、第一移動用スプリング37A(図5(A)及び図5(B)参照)が当接する第一付勢面36A2が形成される。第一操作部34Aは、入力タッチペン1の組立状態において軸筒10から径方向外側に突出するので、使用者の指によって操作することができる。
【0033】
図6(A)及び図6(B)に示すように、第一本体部36Aの第一操作部34Aと反対側(すなわち、径方向の内側)に位置する底面には、第一押圧突起38Aと、第一接触突起39Aとが形成される。第一押圧突起38Aは、第一接触突起39Aよりも前方に位置する。第一押圧突起38A及び第一接触突起39Aは、入力タッチペン1の組立状態において、軸筒10の径方向内側に突出し、且つ、軸線方向に沿って延在する。
【0034】
(第二ノック部材)
第二ノック部材33Bは、発振周波数調整部材23が電磁誘導コイル46から離れるように発振周波数調整ユニット20を後退させる。
【0035】
図6(A)及び図6(B)に示すように、第二ノック部材33Bは、第一ノック部材33Aの嵌合部35を除く領域と鏡像対称に形成されている。第二ノック部材33Bは、第二本体部36Bと、第二本体部36Bの後部に形成された第二操作部34Bとを有する。第二本体部36Bの第二操作部34Bと反対側(すなわち、径方向の内側)に位置する底面には、第二押圧突起38Bと、第二接触突起39Bとが形成される。
【0036】
第二ノック部材33Bのノック操作によって発振周波数調整部材23の突出を解除するとき、第一接触突起39Aは、第二ノック部材33Bの第二押圧突起38Bによって押圧される。図6(C)及び図6(D)に示すように、第一接触突起39A及び第二押圧突起38Bは、接触時に互いに軸線方向及び径方向の力を受けるように構成される。具体的には、第1実施形態では、第一接触突起39Aは、軸方向と径方向との両方に交差する第一傾斜面39A1を有する。また、第二押圧突起38Bは、軸方向と径方向との両方に交差する第二傾斜面38B1を有する。
【0037】
(スペーサ)
図4(A)及び図4(B)に示すように、入力タッチペン1は、出没用スプリング17と、第一移動用スプリング37Aと、第二移動用スプリング37Bとを支持するスペーサ18を更に備える。
【0038】
図4(A)及び図4(B)に示すように、スペーサ18は、円柱部18Aと、円柱部から後側に延在する突起状の複数のスプリングガイド18Bとを有する。円柱部18Aには第一貫通孔18A1と第二貫通孔18A2とが形成される。
【0039】
電磁誘導リフィル40の基体41は、第一貫通孔18A1を通って延在し、図5(E)に示すように、接続部材30Eを介して、回転子30Dに連結される。発振周波数調整ユニット20の継手25における連結部25Bの突起部25B2(図7(E)参照)は、第二貫通孔18A2を通って延在し、移動機構33に固定される。
【0040】
図5(E)に示すように、出没用スプリング17は、円柱部18Aの後面と回転子30Dの前端との間に接続部材30Eを周方向に囲むように配置される。出没用スプリング17は、回転子30D及び電磁誘導リフィル40を後側に付勢する。
【0041】
図4(A)及び図4(B)に示すように、第一移動用スプリング37Aは、円柱部18Aの後面と第一ノック部材33Aの第一付勢面36A2(図6(A)参照)との間に、接続部材24を周方向に囲むように配置される。第一移動用スプリング37Aは、第一ノック部材33A及び発振周波数調整ユニット20を後側に付勢する。
【0042】
図4(A)に示すように、第二移動用スプリング37Bは、円柱部18Aの後面と第二ノック部材33Bの第二付勢面36B2(図6(A)参照)との間に配置される。第二移動用スプリング37Bは、第二ノック部材33Bを後側に付勢する。
【0043】
(電磁誘導リフィル)
図2(C)に示すように、電磁誘導リフィル40は、後端側の一部に出没機構30の接続部材30Eの先端の開口部が接続されることで、軸筒10の内部に収容される。電磁誘導リフィル40が軸筒10の内部に収容された状態では、回転子30Dの先端に出没用スプリング17の後端が接触すると共に、スペーサ18の後端に出没用スプリング17の先端が接触している。出没機構30及び電磁誘導リフィル40は、出没用スプリング17の付勢力によって常に後端側へ付勢されている。
【0044】
電磁誘導リフィル40は、電磁誘導方式の位置検出装置により送信された電磁エネルギーを反射する。電磁誘導リフィル40は、棒状の基体41を備える。基体41の先端側には、合成樹脂製の先端継手が装着されていると共に、先端継手には、略管状のコアホルダー42が内蔵されている。先端継手の符号の付記は、見易さのため省略する。
【0045】
図2(C)に示すように、コアホルダー42には、棒状のフェライトコア43が挿通されている。フェライトコア43の先端には、合成樹脂製の接触先端45が装着されている。フェライトコア43の周囲には、コアホルダー42を挟んで電磁誘導コイル46が配置されている。
【0046】
電磁誘導リフィル40の構成部材のうち、少なくとも接触先端45は、出没機構30によって、前軸12の先端開口13から露出可能である。接触先端45は、先端開口13から露出した突出状態と、軸筒10の前軸12の内側に収納された没入状態との間で切替えられる。
【0047】
図示を省略するが、基体41の内部空間におけるフェライトコア43よりも後端側には、電磁誘導コイル46と電気的に接続された、感圧センサとコンデンサとが収容されている。感圧センサは、筆圧に応じて静電容量が増加する可変のコンデンサである。感圧センサは、コンデンサと電磁誘導コイル46と共に、発振回路を構成する。また、基体41の後端には、合成樹脂製の後端継手49が突出した状態で設けられる。
【0048】
球状の後端継手49は、接続部材30Eの前側の開口部に挿入される。球状の後端継手49の最大径は、接続部材30Eの開口部の内径よりもやや大きい。このため、球状の後端継手49を接続部材30Eの開口部に圧入することで、後端継手49と接続部材30Eとが、嵌合によって連結される。結果、電磁誘導リフィル40が、後軸14に着脱可能に固定されると共に軸筒10の内部に収容される。
【0049】
電磁誘導リフィル40が後軸14に対し後端継手49によって着脱可能に固定されているため、接触先端45が摩耗したり、内蔵する電子機器類が故障したりした際には、電磁誘導リフィル40を容易に新品に交換できる。
【0050】
(発振周波数調整ユニット)
基体41の先端側の外周には、発振周波数調整ユニット20が装着されている。図7(A)~図7(E)に示すように、発振周波数調整ユニット20は、継手25と、接続部材24と、発振周波数調整部材23と、を有する。
【0051】
(継手及び接続部材)
図7(E)に示すように、継手25は、筒状部25Aと連結部25Bとを有する。筒状部25Aの内側には、基体41の先端側の領域がスライド可能に差し込まれる。筒状部25Aの先端の外周面上には、発振周波数調整部材23が装着される。
【0052】
連結部25Bは、図7(E)中で筒状部25Aの後端の外周面から上側(すなわち、筒の径方向における外側)に向かって延びる連結基部25B1と、連結基部25B1から右側に向かって(すなわち、軸方向に沿って)延びる突起部25B2とを有する。突起部25B2が筒状の接続部材24の先端の開口部に差し込まれることによって、連結部25Bと接続部材24とが嵌合すると共に一体的に固定される。
【0053】
第1実施形態では、接続部材24は、可撓性を有する素材で構成される。このため、使用時に接続部材24に力が加えられても、接続部材24が折れ難い。なお、本開示では、接続部材24の素材は、可撓性を有する素材に限定されない。
【0054】
(発振周波数調整部材)
発振周波数調整部材23は、電磁誘導リフィル40が反射する電磁エネルギーの周波数を変化させる、具体的には、電磁誘導リフィル40内部の発振回路と電磁結合する。
【0055】
発振周波数調整部材23は、コイルとコンデンサとで構成されていてもよい。発振周波数調整部材23の発振周波数は電磁誘導リフィル40内部の発振回路と等しくなるように調整されている。
【0056】
発振周波数調整部材23は、電磁誘導リフィル40と同じタイミングで位置検出装置から受け取った電磁エネルギーを反射する。近接状態においては発振周波数調整部材23が反射する磁束が電磁誘導リフィル40の電磁誘導コイル46を貫くことで、電磁誘導リフィル40の電磁誘導コイル46の鎖交磁束が変化し、電磁誘導リフィル40の発振周波数が変化する。
【0057】
第1実施形態における発振周波数調整部材23は、筒状のフェライトにコイルが配置された構造である。フェライトとは、鉄を含む酸化物磁性体を意味する。発振周波数調整部材23を構成するコイルの巻き始め部分と巻き終わり部分とは、コンデンサを搭載した基板(不図示)に接続されている。
【0058】
発振周波数調整部材23として、電磁波を吸収する軟磁性体や、電磁波シールドとして機能する素材が挙げられる。軟磁性体としては、例えばソフトフェライト、鉄、珪素鉄、パーマロイ、Fe-Si-Al、パーメンジュール、電磁ステンレス、アモルファス、ナノ結晶等が挙げられる。軟磁性体は、コイルからの漏れ磁束を減じることでコイルの見かけの透磁率を上昇させることによって、インダクタンスの値を増加させる。透磁率が上昇すると、共振周波数が減少する。
【0059】
電磁波シールドとして機能する素材としては、吸収損失優位である(すなわち、高周波に効果的である)素材と、反射損失優位である(すなわち、低周波に効果的である)素材とを含む。吸収損失優位である素材として、例えば鉄、フェライト等が挙げられる。吸収損失優位である素材は、軟磁性体である一方、吸収損失優位である素材では、比較的大きな誘導電流が得られるため、電磁波シールドとしても有効である。反射損失優位である素材として、例えば銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。
【0060】
電磁波シールドで電磁誘導コイル46の一部又は全部を覆うことで、電磁誘導コイル46が受け取る電磁エネルギーが減少する。また、更に、LC共振回路(電磁誘導回路)が反射する電磁エネルギーも電磁波シールドで減じられるため、電磁誘導コイル46の見かけの透磁率が減少する。透磁率が減少すると、共振周波数が増加する。
【0061】
(出没機構)
図2(C)に示すように、出没機構30は、筒状のノックボタン30Aと、後軸4の内周面に設けられた外カム(不図示)と、筒状の延伸カム30Bと、筒状のノックカム30Cと、ノックカム30Cの前端側に連結する回転子30Dと、を備える。
【0062】
延伸カム30Bは、ノックボタン30Aの先端に接触する。筒状のノックカム30Cは、ノックボタン30Aと延伸カム30Bとの両方の内側を貫通する。回転子30Dは、ノックカム30Cの前端側に連結する。出没機構30のノックボタン30A、外カム、延伸カム30B、ノックカム30C及び回転子30Dのそれぞれの構造は、例えば特開2023-28596号公報等に記載された同名の部材と同様である。
【0063】
<入力タッチペンの使用方法>
次に、第1実施形態に係る入力タッチペン1の使用方法を、接触先端の出没動作と発振周波数調整部材の移動動作とに分けて説明する。
【0064】
(接触先端の出没動作)
まず、入力タッチペン1の接触先端45の突出状態と没入状態とを切り替えるための出没動作について、図1図2及び図8を参照しつつ説明する。
【0065】
(突出動作)
図1(A)に示したように、接触先端45が没入した状態では、出没用スプリング17の付勢力に抗してノックボタン30Aを前方に押圧するノック操作を行う。図8(A)及び図8(B)に示すように、ノック操作によるノックボタン30Aの前進によって、延伸カム30Bを前進させる。
【0066】
延伸カム30B(図2(C)参照)の前進によって、延伸カム30Bが、内筒16及び後軸14に対して中心軸線回りに回転する。延伸カム30Bの前進及び回転に伴い、延伸カム30Bとノックカム30Cとが協働し、結果、ノックカム30Cを前進させる。ノックカム30Cの前進に伴い、回転子30D及び電磁誘導リフィル40が、一体的に前進する。
【0067】
そして、回転子30D及び電磁誘導リフィル40が一体的に前進した状態でノックボタン30Aの押圧を解除すると、延伸カム30B、ノックカム30C及び回転子30Dは出没用スプリング17の付勢力によって後退する。このとき、回転子30Dの後退は妨げられるので、図8(A)及び図8(B)に示すように、回転子30Dに固定された電磁誘導リフィル40の接触先端45が軸筒10の先端開口13から突出した状態は維持される。
【0068】
(没入動作)
一方、接触先端45の突出状態において、出没用スプリング17の付勢力に抗してノックボタン30Aを前進させると、ノックボタン30A及び延伸カム30B(図2(C)参照)を介してノックカム30Cが前進する。このため、回転子30Dが、ノックカム30Cと共に前進する。
【0069】
このとき、ノックカム30C及び回転子30Dは、互いに軸線方向及び周方向の力を受ける。その後、回転子30Dの周方向の回転の制限が解除されるので、回転子30Dは、周方向の力によって周方向に回転する。一方、ノックカム30Cは、周方向の回転が制限されるので、周方向に回転しない。
【0070】
このため、ノックボタン30Aの押圧を解除すると、延伸カム30B、ノックカム30C及び回転子30Dは出没用スプリング17の付勢力によって後退する。このため、図2(C)に示すように、回転子30Dに固定された電磁誘導リフィル40も併せて後退する。結果、電磁誘導リフィル40の突出が解除されるので、接触先端45が軸筒10の内側に収納された、図1(A)中に例示された入力タッチペン1の場合のような没入状態が形成される。
【0071】
(発振周波数調整部材の移動動作)
次に、筆記機能と消去機能とを切り替えるための発振周波数調整ユニット20の移動動作について、図6、及び図8図10を参照しつつ説明する。
【0072】
第1実施形態では、第一ノック部材33Aの第一操作部34Aが、第一摺動孔14Aの後端に位置し、且つ、第二ノック部材33Bの第二操作部34Bが、第二摺動孔14Bの後端に位置する場合、発振周波数調整部材23が、電磁誘導コイル46から離れている。このため、図8(A)中に例示された入力タッチペン1では、筆記機能が発現している。
【0073】
次に、筆記機能から消去機能へ切り替えるため、図9(A)及び図9(B)に示すように、使用者は、第一移動用スプリング37Aの付勢力に抗して、第一ノック部材33Aを前進させる。第一ノック部材33Aの前進によって、接触先端45が突出した状態のまま、第一ノック部材33Aは、内筒16(図2(C)参照)と軸線方向に係合する。
【0074】
第一ノック部材33Aが前進した状態で、突出していない第二ノック部材33Bの第二押圧突起38Bは、第一ノック部材33Aの第一接触突起39Aよりも後側に位置する。また、図6(A)~図6(D)に示したように、第一ノック部材33Aの第一接触突起39A及び第二ノック部材33Bの第二押圧突起38Bは、周方向において部分的に重なる。第一ノック部材33Aの前進によって、発振周波数調整部材23が電磁誘導コイル46に近接し、結果、接触先端45には消去機能が発現する。
【0075】
次に、消去機能から筆記機能へ切り替える場合、第一接触突起39A及び第二押圧突起38Bが重なった状態から、使用者は、図10に示すように、第二移動用スプリング37Bの付勢力に抗して、第二ノック部材33Bを前進させる。図6(A)~図6(D)に示したように、第二ノック部材33Bの前進によって、第二ノック部材33Bの第二押圧突起38Bが、第一ノック部材33Aの第一接触突起39Aと接触する。
【0076】
接触によって第一ノック部材33Aの第一接触突起39Aが第二ノック部材33Bの第二押圧突起38Bから径方向外側の力を受けるので、第一ノック部材33Aと内筒16との係合が解除される。その後、第一ノック部材33Aが第一移動用スプリング37Aの付勢力によって後退するので、第一ノック部材33Aに固定された発振周波数調整ユニット20も共に後退する。このため、第二ノック部材33Bによって、発振周波数調整部材23の突出が解除される。
【0077】
発振周波数調整部材23が後退しても、接触先端45の突出状態は保持される。すなわち、第1実施形態では、発振周波数調整部材23は、電磁誘導リフィル40の接触先端45の突出状態とは関係なく、独立して移動可能である。
【0078】
(第1実施形態の作用効果)
第1実施形態では、接触先端45の出没機構30が、発振周波数調整部材23の移動機構33とは別に設けられる。このため、発振周波数調整部材23の移動機構33と接触先端45の出没機構30とを別々に操作できるので、意図するとおりの操作を円滑に行い易く、入力タッチペン1の操作性を向上できる。また、第1実施形態では、発振周波数調整部材23の移動機構33と接触先端45の出没機構30とを互いに独立して操作できる。
【0079】
-第2実施形態-
第1実施形態では、発振周波数調整部材23の移動機構33が、第一ノック部材33Aと第二ノック部材33Bとの2つのノック部材で構成された。すなわち、筆記機能と消去機能との切替えが、互いに異なる2つの部材によって実現された。しかし、本開示では、筆記機能と消去機能との切替えが、1つの同じ部材を用いて実現されてもよい。
【0080】
第2実施形態では、電磁誘導リフィル40の接触先端45を出没させる出没機構とは別に設けられた移動機構を用いて発振周波数調整部材23を移動させることによって、筆記機能と消去機能とを切替える点は、第1実施形態と同じである。しかし、第2実施形態は、発振周波数調整部材23を移動させる具体的な構成の点において、第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について主に説明すると共に、第1実施形態と同様の構成については重複説明を省略する。
【0081】
<入力タッチペンの構造>
図11(A)~図11(C)に示すように、第2実施形態に係る入力タッチペン1Aは、軸筒50を備える。また、図12に示すように、入力タッチペン1Aは、軸筒50の内側に、電磁誘導リフィル40と発振周波数調整部材23とを備える。
【0082】
(軸筒)
図12に示すように、軸筒50は、筒状に形成された筒状部材である。軸筒50は、前軸52と、中軸53と、後軸54とからなる。また、軸筒50内には、一端側に接触先端45を備えた電磁誘導リフィル40と、一端側に発振周波数調整部材23を備えた発振周波数調整ユニット20とが、軸方向に沿ってほぼ平行に配置されている。
【0083】
電磁誘導リフィル40と発振周波数調整ユニット20との各々は、弾性部材として対応する出没用スプリング17と第一移動用スプリング37Aによって独立的に後方に付勢されている。入力タッチペン1Aは、第1操作部である操作部材60と、回転部材70と、スライドカム80と、第2操作部であるノック部材90と、回転子100と、出没用摺動コマ111と移動用摺動コマ112とを更に有している。
【0084】
(出没機構)
図12に示すように、ノック部材90、回転子100、スライドカム80、出没用摺動コマ111、出没用スプリング17及び接続部材30Eは、本開示の出没機構を構成する。出没機構は、中軸53、後軸54、操作部材60及び回転部材70を含んでもよい。
【0085】
入力タッチペン1Aは、ノック部材90を前方に押圧するノック操作によって、電磁誘導リフィル40と発振周波数調整ユニット20とが軸筒50に対して出没するノック式筆記具である。すなわち、ノック部材90を前方に押圧するノック操作によって、発振周波数調整部材23に対して相対的に前進している電磁誘導リフィル40、具体的には接触先端45が、軸筒50の端面の先端開口52Aに対して出没する。
【0086】
一般にノック式筆記具は、回転子を有している。回転子の外周面には突起状のカム部が設けられており、軸筒の内周面には回転子のカム部と協働する突起状のカム部が設けられている。ノック操作によって、回転子のカム部と軸筒のカム部とが係止又は係止解除をすることによって、接触先端45の突出状態と没入状態とが切り替えられる。
【0087】
図12に示すように、本実施形態では、軸筒50の後軸54の後端部の内周面に、不図示のカム部が形成されている。ノック操作は、ノック部材90を前方に向かって押圧し、ノック部材90と共に回転子100を軸筒50内において所定位置まで前方に移動させることによって行われる。
【0088】
すなわち、回転子100の不図示のカム部と軸筒50のカム部とが係止するためには、回転子100のカム部の後端面が、少なくとも軸筒50のカム部の前端面よりも軸線方向の前方に配置される所定位置まで、回転子100を移動させる。
【0089】
回転子100を所定位置まで移動させた後、ノック部材90に加えている力を解放すると、出没用スプリング17と第一移動用スプリング37Aの付勢力によって回転子100が回転しながら僅かばかり後退する。結果、回転子100のカム部の後端面と軸筒50のカム部の前端面とが係止する。このため、図11(B)に示すように、入力タッチペン1Aの接触先端45の突出状態が形成される。
【0090】
接触先端45の突出状態において、ノック操作によってノック部材90を前方に向かって押圧し、回転子100を再び所定位置まで前方に移動させると、回転子100のカム部の後端面と軸筒50のカム部の前端面との係止が解除され、回転子100が回転する。その後、ノック部材90に加えている力を解放すると、出没用スプリング17と第一移動用スプリング37Aの付勢力によって回転子100がより後方へ移動する。このため、図11(A)に示すように、入力タッチペン1Aの接触先端45は、再び没入状態となる。
【0091】
(前軸及び中軸)
図12に示すように、前軸52の後端は、回転部材70の小径部71と略同一の外径及び内径を有する円筒状に形成されている。前軸52は、先端開口52Aを有する。
【0092】
(中軸)
図13(A)~図13(E)に示すように、中軸53は、筒状の部材である。中軸53の周面には、窓孔53Aが形成される。中軸53の前端部には、前軸52が嵌合している。中軸53の後端面には、後軸54と嵌合するための凹凸が形成される。
【0093】
図13(C)に示すように、窓孔53Aは、軸線方向に延びる、平面視で矩形状の貫通孔である。操作突起61が窓孔53Aの内縁に接触することによって、操作部材60の前後動を所定距離の範囲内に制限し、且つ、操作部材60の中心軸線回りの回転を制限している。なお、操作部材60を軸筒50内に配置の際には、操作部材60にスリット62及びスリット64が形成されていることによって、径方向の弾性変形が可能となり、容易に配置することができる。
【0094】
(後軸)
図12に示すように、後軸54は、入力タッチペン1Aの組み立て状態では、上方が入力タッチペン1Aの後側となるように配置される。後軸54は、筒状に形成された筒状部材である。後軸54の前端面には、中軸53の後端面の凹凸(図13(B)参照)と相補的に形成された矩形の凹凸が形成されている。後軸54の前端面の凹凸が中軸53の後端面の凹凸と嵌合することによって、後軸54と中軸53とが接合される。
【0095】
図12中に例示された後軸54の後端部の内周面には、不図示のカム部が形成されている。カム部は、軸線方向に延びる複数の突起からなり、ノック操作の際に回転子100のカム部と係止又は係止解除する。後軸54の内周面には、前端から後方に向かって延び、かつ、対向して配置された2つのスライド溝(不図示)が形成されている。
【0096】
後軸54の前端部よりも後方の内周面は、前端部の内周面よりも小径に形成され、前方に面した環状の第一段部(不図示)が形成されている。また、カム部の前方の内周面には、前方に面した環状の第二段部54E(図23(A)参照)が形成されている。
【0097】
(操作部材)
図14(A)及び図14(B)に示すように、操作部材60は、筒状部材である。図15(A)~図15(E)に示すように、操作部材60の前端部の外周面には操作突起61が形成されている。図15(B)に示すように、操作部材60の周方向において操作突起61の両側には、前端から後方に向かって平行に延びる2つのスリット62が形成されている。操作部材60の周面には、カム溝63が中心軸線回りに螺旋状に形成されている。
【0098】
図14(B)に示すように、螺旋状のカム溝63は、操作部材60を後方から見て、後端部近傍から前方に向かって時計回りに略半回転分だけ形成されている。図15(A)に示すように、操作部材60の周面には、後端から前方に向かって延びる1つのスリット64が形成されている。
【0099】
(回転部材)
図16(A)及び図16(B)に示すように、回転部材70は、棒状部材である。図17(A)~図17(E)に示すように、回転部材70は、前側に位置する円筒状の小径部71と、小径部71の後方に形成された円筒状の大径部72と、大径部72の後方に形成された円柱状の摺動部73とを有する。
【0100】
図12に示すように、回転部材70は、小径部71の前端面が前軸52の後端面に対向し、且つ、回転部材70の大径部72の後端面が後軸54の第一段部に対向するように、軸筒50内に配置されている。このため、回転部材70は、軸線方向の移動が制限されつつ、中心軸線回りに回転できるように軸筒50内に配置される。
【0101】
図17(A)に示すように、小径部71の外周面には、1つのカム突起74が形成されている。図17(B)に示すように、カム突起74の横断面形状は、楕円又は角丸長方形である。カム突起74は、図14(B)中の操作部材60のカム溝63の延在方向に沿うように配向される。なお、本開示では、カム突起は、円形であってもよい。
【0102】
図17(E)に示すように、大径部72及び摺動部73の内部は、電磁誘導リフィル40と発振周波数調整ユニット20との各々を離して配置するために、軸線方向に延びる隔壁75によって等しく隔てられている。また、大径部72の内部には、隔壁75を挟んだ対称位置に、軸線方向に延びる2つの挿入孔76が形成されている。
【0103】
挿入孔76の各々の内周面には、後方に面した支持面77が形成されている。摺動部73の周面には、軸線方向に延びる矩形の貫通孔である2つのレール溝78が、隔壁75を挟んだ対称位置に形成されている。
【0104】
(スライドカム)
図18に示すように、スライドカム80は、中心軸線回りに環状に形成された環状部81と、爪形状の爪部82とを有している。爪部82の縁部には、平坦に形成され且つ軸方向に直交する平坦面83と、軸方向と周方向とに対して斜めに形成された斜端面84とが形成されている。
【0105】
爪部82の平坦面83及び斜端面84並びに環状部81の前端面85は、カム面86を構成する。図19(A)~図19(E)に示すように、環状部81の外周面には、軸線方向に延びる2つのスライド突起87が形成されている。図19(D)に示すように、2つのスライド突起87は、中心軸線回りに対称的に形成されている。図19(E)に示すように、環状部81の後端部近傍の内周面は環状に突出しており、それによって後方に面した環状の支持面88が形成されている。
【0106】
(移動機構)
図12中に例示された回転子100、スライドカム80、移動用摺動コマ112及び第一移動用スプリング37Aは、本開示の移動機構を構成する。なお、移動機構は、中軸53、後軸54、操作部材60及び回転部材70を含んでもよい。
【0107】
(操作部材)
図12に示すように、操作部材60は、前軸52の後部の外面及び回転部材70の小径部71の外面の両方に亘って配置されている。また、回転部材70のカム突起74が、操作部材60のカム溝63内に配置されている。また、操作部材60の操作突起61は、中軸53の周面に形成された窓孔53A(図11(A)参照)を介して軸筒50の外部へ突出している。
【0108】
電磁誘導リフィル40と発振周波数調整ユニット20との各々は、回転部材70の対応する挿入孔76(図17(E)参照)に挿入され、隔壁75(図17(E)参照)によって隔てられている。図12に示すように、電磁誘導リフィル40の後端部には出没用摺動コマ111が挿入されると共に、発振周波数調整ユニット20の後端部には移動用摺動コマ112が挿入される。出没用摺動コマ111は、嵌合によって電磁誘導リフィル40に対して接続されていると共に、移動用摺動コマ112も、嵌合によって発振周波数調整ユニット20に対して接続されている。
【0109】
(出没用摺動コマ)
図20に示すように、出没用摺動コマ111は、軸方向に沿って延びる基部111Aと、基部111Aの軸方向における先端から軸方向に沿って更に前側に延びる棒状の延長部111Cと、延長部111Cの軸方向における先端から軸方向に沿って前側に突出する連結部111Bと、を有する。基部111Aの軸方向における後端は、出没用摺動コマ111の後端部である。連結部111Bは、先端に向かうに従って縮径する。連結部111Bには、先端側に電磁誘導リフィル40が接続される接続部材30Eの後端が連結される。
【0110】
(移動用摺動コマ)
図21(A)~図21(C)、及び図22(A)~図22(G)に示すように、移動用摺動コマ112は、軸方向に沿って延びる基部112Aと、基部111Aの軸方向における一端から突出する連結部112Bと、を有する。図21(A)に示すように、基部112Aの軸方向における後端は、移動用摺動コマ112の後端部である。連結部112Bは、先端に向かうに従って縮径する。連結部112Bには、発振周波数調整ユニット20の接続部材24の後端が連結される。
【0111】
図12に示すように、出没用摺動コマ111の基部111Aの軸方向に沿った長さと、移動用摺動コマ112の基部112Aの軸方向に沿った長さとは、ほぼ同じである。また、出没用摺動コマ111の連結部111Bの軸方向に沿った長さと移動用摺動コマ112の連結部112Bの軸方向に沿った長さとは、ほぼ同じである。また、移動用摺動コマ112には、出没用摺動コマ111の延長部111Cのような部材は設けられない。
【0112】
このため、延長部111Cによって、出没用摺動コマ111の軸方向に沿った長さは、移動用摺動コマ112の軸方向に沿った長さよりも長い。すなわち、延長部111Cは、出没用摺動コマ111の全体の長さの方が移動用摺動コマ112の全体の長さより長くなるように、出没用摺動コマ111の全体の長さを調整する。
【0113】
電磁誘導リフィル40に接続された出没用摺動コマ111は、回転部材70の一対のレール溝78(図17(E)参照)のうちの一方に嵌合することによって、脱落することなく軸線方向に摺動可能に配置されている。また、発振周波数調整ユニット20に接続された移動用摺動コマ112は、回転部材70の一対のレール溝78(図17(E)参照)のうちの他方に嵌合することによって、脱落することなく軸線方向に摺動可能に配置されている。
【0114】
図12に示すように、回転部材70の摺動部73の後端部は、スライドカム80の前側の部分に差し込まれる。スライドカム80のスライド突起87の各々は、後軸54において対応して設けられた不図示のスライド溝内に配置される。このため、スライドカム80は、中心軸線回りに回転することなく軸線方向にスライド可能に配置されている。
【0115】
出没用スプリング17と第一移動用スプリング37Aとは、対応する回転部材70のそれぞれの挿入孔76内に配置されている。出没用スプリング17の前端が、回転部材70の支持面77で支持されることによって、出没用スプリング17の後端は、出没用摺動コマ111と接触している。また、第一移動用スプリング37Aの前端が、回転部材70の支持面77で支持されることによって、第一移動用スプリング37Aの後端は、移動用摺動コマ112と接触している。
【0116】
このため、出没用スプリング17は、出没用摺動コマ111を後方に付勢し、結果、出没用摺動コマ111に接続された電磁誘導リフィル40を後方に付勢している。また、第一移動用スプリング37Aは、移動用摺動コマ112を後方に付勢し、結果、移動用摺動コマ112に接続された発振周波数調整ユニット20を後方に付勢している。
【0117】
また、出没用摺動コマ111の後端部と移動用摺動コマ112の後端部とは、スライドカム80のカム面86(図18参照)に接触している。このため、出没用スプリング17は、出没用摺動コマ111を介してスライドカム80を後方に付勢していると共に、第一移動用スプリング37Aは、移動用摺動コマ112を介してスライドカム80を後方に付勢している。
【0118】
図11(A)中に例示されたような入力タッチペン1Aの接触先端45の没入状態において、後方に付勢されたスライドカム80の後方への移動は、スライドカム80の支持面88が回転子100の前端面と接触することによって制限される(図23(A)参照)。或いは、接触先端45の没入状態において、後方に付勢されたスライドカム80の後方への移動は、スライドカム80の後端面が後軸54の第二段部54Eと接触することによって制限される(図23(A)参照)。
【0119】
また、図11(B)中に例示されたような入力タッチペン1Aの接触先端45の突出状態において、後方に付勢されたスライドカム80の後方への移動は、スライドカム80の支持面88が回転子100の前端面と接触することによって、制限される。
【0120】
<入力タッチペンの使用方法>
次に、第2実施形態に係る入力タッチペン1Aの使用方法を、接触先端の出没動作と発振周波数調整部材の移動動作とに分けて説明する。
【0121】
(接触先端の出没動作)
次に、入力タッチペン1Aの接触先端の出没動作について、図11、及び図23図27を参照しつつ説明する。
【0122】
(突出動作)
入力タッチペン1Aでは、第1操作部である操作部材60、具体的には操作突起61が軸筒50に対して軸方向に移動可能に設けられている。入力タッチペン1Aは、操作部材60の前後動に応じて操作部材60と回転部材70とが協働して回転部材70を回転させることによって、電磁誘導リフィル40と発振周波数調整ユニット20とのうちの1つが前進するように構成されている。すなわち、操作部材60の前後動が、回転部材70の回転運動に変換され、回転部材70の回転運動が、電磁誘導リフィル40と発振周波数調整ユニット20との前後動に変換される。
【0123】
電磁誘導リフィル40の接触先端45は、発振周波数調整ユニット20よりも前方に位置する。すなわち、電磁誘導リフィル40が接続された出没用摺動コマ111は、スライドカム80のカム面86において爪部82の平坦面83に配置されている。
【0124】
他方、発振周波数調整ユニット20が接続された移動用摺動コマ112は、スライドカム80のカム面86において環状部81の前端面85に配置されている。このため、電磁誘導リフィル40は、発振周波数調整ユニット20よりも相対的に前方に位置する。
【0125】
図23(A)中には、接触先端45が没入した状態における入力タッチペン1Aの後軸54側の内部の状態が例示されている。また、図11(A)、図24(A)、図25(A)、図26(A)及び図27(A)中には、接触先端45が没入した状態における入力タッチペン1Aが例示されている。
【0126】
接触先端45の没入状態において、第2操作部であるノック部材90をノック操作すると、回転子100及びスライドカム80と共に、電磁誘導リフィル40及び発振周波数調整ユニット20が前進する。結果、電磁誘導リフィル40の接触先端45のみが軸筒50から突出する。
【0127】
図23(B)中には、接触先端45が突出した状態における入力タッチペン1Aの後軸54側の内部の状態が例示されている。また、図11(B)、図24(B)、図25(B)、図26(B)及び図27(B)中には、接触先端45が突出した状態における入力タッチペン1Aが例示されている。なお、上記したノック操作によっては、操作部材60及び回転部材70が軸線方向に移動していない。
【0128】
(没入動作)
一方、接触先端45の突出状態において、出没用スプリング17の付勢力に抗してノックボタン30Aを前進させると、回転子100及びスライドカム80と共に、電磁誘導リフィル40及び発振周波数調整ユニット20が後退する。結果、電磁誘導リフィル40の接触先端45が軸筒50の内側に収納された没入状態が形成される。
【0129】
(発振周波数調整部材の移動動作)
次に、筆記機能と消去機能とを切り替えるための発振周波数調整ユニット20の移動動作について、図11、及び図24図27を参照しつつ説明する。
【0130】
第2実施形態では、操作部材60の操作突起61が窓孔53A内の後端に配置され、且つ、回転部材70のカム突起74が操作部材60のカム溝63内の前端に配置された状態では、発振周波数調整部材23が、電磁誘導リフィル40の電磁誘導コイル(不図示)から離れている。このため、図11(B)、図24(B)、図25(B)、図26(B)及び図27(B)中に例示された入力タッチペン1Aでは、筆記機能が発現している。
【0131】
図27(B)に示すように、筆記状態が発現した状態では、電磁誘導リフィル40が接続された出没用摺動コマ111の後端部は、スライドカム80のカム面86において、爪部82の平坦面83に接触する。また、発振周波数調整ユニット20が接続された移動用摺動コマ112の後端部は、スライドカム80のカム面86において、環状部81の前端面85に接触する。
【0132】
次に、図11(C)及び図24(C)に示すように、操作突起61を前方へ移動させると、カム突起74が、カム溝63の螺旋軌道に沿って相対的に後方へ移動する。このため、図25(C)、図26(C)及び図27(C)に示すように、回転部材70が中心軸線回りに回転する。
【0133】
電磁誘導リフィル40及び出没用摺動コマ111は、出没用スプリング17の後方への付勢力に抗しながら、回転部材70と共に中心軸線回りに回転する。また、発振周波数調整ユニット20及び移動用摺動コマ112は、第一移動用スプリング37Aの後方への付勢力に抗しながら、回転部材70と共に中心軸線回りに回転する。結果、出没用摺動コマ111と移動用摺動コマ112との各々は、スライドカム80のカム面86に沿って周方向に移動する。
【0134】
図27(C)に示すように、電磁誘導リフィル40が接続された出没用摺動コマ111の後端部は、スライドカム80のカム面86において、爪部82の平坦面83上を周方向に移動する。他方、発振周波数調整ユニット20が接続された移動用摺動コマ112の後端部は、スライドカム80のカム面86において、環状部81の前端面85から、斜端面84を経由して、爪部82の平坦面83に向かって移動する。
【0135】
操作部材60の操作突起61を窓孔53A内の前端に至るまで更に前方へ移動させると、回転部材70のカム突起74は、操作部材60のカム溝63内の後端に到達する。このため、回転部材70の中心軸線回りの回転、具体的には約180度の回転が完了する。
【0136】
回転部材70の回転が完了した時点で、電磁誘導リフィル40が接続された出没用摺動コマ111の後端部は、スライドカム80のカム面86において、爪部82の平坦面83上に配置される。すなわち、回転部材70の回転に伴って、出没用摺動コマ111の後端部は、爪部82の平坦面83上で、周方向の一端側から他端側に移動する。また、出没用摺動コマ111は、軸方向には移動しない。
【0137】
また、発振周波数調整ユニット20が接続された移動用摺動コマ112の後端部は、スライドカム80のカム面86において、爪部82の平坦面83に到達する。すなわち、移動用摺動コマ112は、軸方向に沿って前進すると共に、移動用摺動コマ112に接続された発振周波数調整ユニット20も、電磁誘導リフィル40よりも相対的に前進する。このため、発振周波数調整部材23が、電磁誘導リフィル40に内蔵された電磁誘導コイル(不図示)に近接し、結果、消去機能が発現する。
【0138】
一方、筆記機能を発現させる場合には、操作部材60の操作突起61を後方へ移動させる。操作突起61の後方への移動によって、カム突起74が、カム溝63の螺旋軌道に沿って相対的に前方へ移動する。このため、回転部材70が中心軸線回りに、筆記機能を発現させる場合とは逆方向に回転する。
【0139】
図27(B)に示したように、回転部材70の逆方向の回転によって、電磁誘導リフィル40が接続された出没用摺動コマ111の後端部は、爪部82の平坦面83上で、周方向の他端側から一端側に移動する。また、発振周波数調整ユニット20が接続された移動用摺動コマ112の後端部は、スライドカム80のカム面86において、環状部81の前端面85に到達する。結果、電磁誘導リフィル40が、発振周波数調整ユニット20よりも相対的に後退することによって、発振周波数調整部材23が、電磁誘導リフィル40の電磁誘導コイル(不図示)から離れる。このため、筆記状態が発現する。
【0140】
(操作方法)
使用者は通常、入力タッチペン1Aの中軸53を、親指、人差し指及び中指で把持し、筆記する。このとき、入力タッチペン1Aは、操作部材60の操作突起61が親指と人差し指との間に配置されるように、把持される。筆記機能及び消去機能の切替えを行う場合には、人差し指及び中指で入力タッチペン1Aを支持しながら、親指を用いて操作突起61を前方又は後方にスライド操作又はフリック操作する。その後、再び親指を元の位置に戻して入力タッチペン1Aを把持することによって、筆記機能及び消去機能の切替えを行うことができる。
【0141】
(第2実施形態の作用効果)
第2実施形態においても第1実施形態の場合と同様に、発振周波数調整部材23の移動機構33と接触先端45の出没機構とを別々に操作できるので、意図するとおりの操作を円滑に行い易く、入力タッチペン1Aの操作性を向上できる。
【0142】
また、第2実施形態に係る入力タッチペン1Aによれば、筆記機能及び消去機能を簡単に切り替えることができる。親指での操作を行いやすいように、特に、第1操作部、すなわち操作部材60又は操作突起61が、軸筒50の前半分に配置されていることが好ましい。
【0143】
また、入力タッチペン1Aによれば、筆記時において筆記を中断して軸筒50を持ち替えることなく、筆記機能及び消去機能を切り替えることができる。更に、使用者は、操作突起61の窓孔53A内における位置を、見ることによって又は触ることによって、筆記機能及び消去機能のいずれが発現した状態であるか容易に判別することができる。第2実施形態の他の作用効果は、第1実施形態の場合と同様である。
【0144】
<その他の実施形態>
本開示は上記の開示された実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本開示を限定するものであると理解すべきではない。
【0145】
例えば、第2実施形態では、操作部材60にカム溝63が形成され、回転部材70にカム突起74が形成されていたが、本開示では、操作部材に径方向内側へ突出するカム突起を形成し、回転部材にカム溝を形成してもよい。すなわち、第1操作部及び回転部材の一方にカム溝が形成され、且つ、第1操作部及び回転部材の他方にカム突起が形成され、且つ、カム溝とカム突起とが協働することによって第1操作部と回転部材とが協働する限りにおいて、任意の構成を採用し得る。また、カム溝の形状は、第1操作部の前後動が、回転部材の回転運動に変換される限りにおいて、任意の構成を採用し得る。
【0146】
また、添付された複数の図面中に例示した構成を部分的に組み合わせて、本開示を構成することもできる。本開示は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本開示の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0147】
1,1A 入力タッチペン 10 軸筒
12 前軸 12A 基部
12A1 案内部 12B 先端部
13 先端開口 14 後軸
14A 第一摺動孔 14A1 第一凸部
14B 第二摺動孔 14B1 第二凸部
14C 天冠 15 後端開口
16 内筒 17 出没用スプリング
18 スペーサ 18A 円柱部
18A1 第一貫通孔 18A2 第二貫通孔
18B スプリングガイド 20 発振周波数調整ユニット
23 発振周波数調整部材 24 接続部材
25 継手 25A 筒状部
25B 連結部 25B1 連結基部
25B2 突起部 30 出没機構
30A ノックボタン 30B 延伸カム
30C ノックカム 30D 回転子
30E 接続部材 33 移動機構
33A 第一ノック部材 33B 第二ノック部材
34A 第一操作部 34B 第二操作部
35 嵌合部 36A 第一本体部
36A1 第一凹部 36A2 第一付勢面
36B 第二本体部 36B1 第二凹部
36B2 第二付勢面 37A 第一移動用スプリング
37B 第二移動用スプリング 38A 第一押圧突起
38B 第二押圧突起 38B1 第二傾斜面
39A 第一接触突起 39A1 第一傾斜面
39B 第二接触突起 40 電磁誘導リフィル
41 基体 42 コアホルダー
43 フェライトコア 45 接触先端
46 電磁誘導コイル 49 後端継手
50 軸筒 52 前軸
52A 先端開口 53 中軸
53A 窓孔 54 後軸
54E 第二段部 60 操作部材
61 操作突起 62 スリット
63 カム溝 64 スリット
70 回転部材 71 小径部
72 大径部 73 摺動部
74 カム突起 75 隔壁
76 挿入孔 77 支持面
78 レール溝 80 スライドカム
81 環状部 82 爪部
83 平坦面 84 斜端面
85 前端面 86 カム面
87 スライド突起 88 支持面
90 ノック部材 100 回転子
111 出没用摺動コマ 111A 基部
111B 連結部 111C 延長部
112 移動用摺動コマ 112A 基部
112B 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
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