(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179370
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】制御コントローラ
(51)【国際特許分類】
B60W 50/04 20060101AFI20241219BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60W50/04
B60W40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098161
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森元 祐一
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA15
3D241BA49
3D241BC01
3D241BC02
3D241DC01Z
3D241DC21Z
3D241DC25Z
3D241DC33Z
3D241DC41Z
(57)【要約】
【課題】センサ信号の精度の高い統合を行うことができる制御コントローラを提供することにある。
【解決手段】車両に搭載され、車両の周囲の環境情報を取得する複数のセンサから信号を受信し、このセンサ信号を合成し、車両運動制御に用いる制御コントローラであって、前記複数のセンサのそれぞれが環境情報を取得してから前記制御コントローラが前記複数のセンサ信号を受信するまでのそれぞれの遅延時間を考慮し、前記複数のセンサ信号を選択して、結合を行うセンサ信号選択処理部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両の周囲の環境情報を取得する複数のセンサから複数のセンサ信号を受信し、前記複数のセンサ信号を合成し、車両運動制御に用いる制御コントローラであって、
前記複数のセンサのそれぞれが環境情報を取得してから前記制御コントローラが前記複数のセンサ信号を受信するまでのそれぞれの遅延時間を考慮し、前記複数のセンサ信号を選択して、結合を行うセンサ信号選択処理部を備える、制御コントローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の制御コントローラにおいて、
前記センサ信号選択処理部は、前記複数のセンサのサンプリング周期と送信周期、前記制御コントローラの受信周期のうち、一部または全てを組み合わせて、前記車両運動制御に必要なセンサ信号を選択する機能を有する、制御コントローラ。
【請求項3】
請求項2に記載の制御コントローラにおいて、
前記センサ信号選択処理部は、それぞれのセンサ信号毎にタイムスタンプの精度を設定し、精度の違いに合わせたセンサ信号を選択する機能を有する、制御コントローラ。
【請求項4】
請求項2に記載の制御コントローラにおいて、
前記センサ信号選択処理部は、それぞれのセンサ信号毎に通信方式、伝送経路の遅延時間に合わせたセンサ信号を選択する機能を有する、制御コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御コントローラに関し、特に、車両運転支援及び自動運転を実現する制御コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-105922号公報(特許文献1)に、時刻同期された車載装置と管制装置で構成される車両システムにおいて自動運転における安全性の保証と可用性の向上を両立させる制御システムが開示されている。また特許文献1では車両が通過する対象領域内の走行軌道において車両が障害物に衝突しないことを保証する走行可能時間の算出とその有効性を判定することで、走行軌道の追従を許可する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含め、時刻同期の手法としては伝送経路上の遅延を補正する処理が提案されているが、伝送経路の遅延時間は各種センサにより異なる。また、センサ毎にサンプリング周期、送信周期、受信周期も異なるため、制御ユニットで受信する時刻のタイムスタンプ精度は異なる。そのため、一律で補正してしまうと本来合成すべきセンサ信号を破棄してしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、センサ信号の精度の高い統合を行うことができる制御コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による制御コントローラは、車両に搭載され、車両の周囲の環境情報を取得する複数のセンサから信号を受信し、このセンサ信号を合成し、車両運動制御に用いる制御コントローラであって、前記複数のセンサのそれぞれが環境情報を取得してから前記制御コントローラが前記複数のセンサ信号を受信するまでのそれぞれの遅延時間を考慮し、前記複数のセンサ信号を選択して、結合を行うセンサ信号選択処理部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、精度の悪いセンサ信号が合成信号に含まれたり、含めるべきセンサ信号が排除されたりすることを抑制することができ、センサ信号の精度の高い統合を行える。結果として、より設計意図に沿った車両制御を行うことができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】比較例に係る制御ユニット2rのセンサフュージョン処理を示す図。
【
図3】実施例1に係る制御ユニット2のセンサフュージョン処理を示す図。
【
図4】実施例2に係り、センサ信号を制御ユニットで受信するまでの周期処理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【実施例0010】
[車両制御システム1の構成例]
図1は、実施例1に係る車両制御システムの構成図である。
【0011】
図1に示すように、車両制御システム1は、制御コントローラとしての制御ユニット2と、時刻管理ユニット3と、各種センサユニット5,6と、制御機構ユニット4とを含む。
【0012】
制御ユニット2は、時刻管理ユニット3と、各種センサユニット5,6と、制御機構ユニット4と、に電気的に接続されている。
図1では、各種センサユニット5はセンサユニットAと示され、各種センサユニット6はセンサユニットBと示されている。制御ユニット2は、車両に搭載され、車両の周囲の環境情報を取得する複数のセンサを含むセンサユニット5,6から複数のセンサ信号(後述する
図3のセンサ信号SA、SBに対応する)を受信し、複数のセンサ信号を合成し、車両運動制御に用いるように構成されている。
【0013】
時刻管理ユニット3は、周期的に現在時刻を提供する。時刻管理ユニット3から現在時刻の時刻情報を受信した制御ユニット2は、正確な時刻情報を元に時刻同期を行い、常に正確な時刻となるようにする。
【0014】
各種センサユニット5、6は、例えば、Radar(レーダー)、Lidar(Light Detection and Ranging:ライダー)、Camera(CMOSイメージセンサーなどのカメラ)などのセンサ機器を含むように構成されている。各種センサユニット5、6は、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(イーサネット:Ethernetは登録商標)などの車両の通信ネットワークを介して、車両の環境情報をセンサ信号として、制御ユニット2に提供する。制御ユニット2は、後述するように、各種センサユニット5、6から受信したセンサ信号(SA、SB)に受信時の時刻情報(TSA、TSB)のタイムスタンプを付与し、時刻情報を元に各種センサ信号(SA、SB)を結合し、車両制御信号を生成する。
【0015】
制御機構ユニット4は、例えば、パワーステアリング装置の制御装置、アクセル制御用の制御装置(スロットルコントローラー)、ブレーキ装置の制御装置などである。制御機構ユニット4は、CAN、LINなどの通信ネットワークを介して、制御ユニット2からの車両制御信号(車両制御情報とも言う)を受け取り、車両を制御する。
【0016】
[制御ユニット2rの制御]
図2は、比較例に係る制御ユニット2rのセンサフュージョン処理を示している。
【0017】
まず、センサ信号受信部100rで、センサA信号とセンサB信号を受信する。
【0018】
次にセンサA信号とセンサB信号を受信したタイミングで、センサ信号選択処理部101rで受信の時刻TSA、TSBをタイムスタンプとして付与し、センサフュージョン処理を行う。
【0019】
そして、制御信号処理部102rで、制御信号を生成する。
【0020】
図2の例では、センサA信号とセンサB信号の時刻TSA、TSBが異なる為、遅い時刻TSBのセンサB信号は破棄され、早い時刻TSAのセンサA信号のみで制御信号を生成する。
【0021】
[制御ユニット2の制御]
図3は、実施例1に係る制御ユニット2のセンサフュージョン処理を示している。制御ユニット2は、センサ信号受信部100と、センサ信号選択処理部101と、制御信号処理部102と、を有する。
【0022】
まず、センサ信号受信部100で、センサユニット5のセンサAからのセンサA信号と、センサユニット6のセンサBからのセンサB信号とを受信する。
【0023】
次に、センサA信号SAとセンサB信号SBを受信したタイミングで、センサ信号選択処理部101で受信の時刻TSA、TSBをタイムスタンプとして付与する。センサ信号選択処理部101に、各種センサA、B毎に設定した補正処理200(200A、200B)を準備する。補正処理200A、200Bでは、各種センサA、Bの特性に応じた遅延時間を考慮して設定する。補正処理200Aは、遅延補正処理200A1とフィルタ処理200A2とを含むように構成される。また、補正処理200Bは、遅延補正処理200B1とフィルタ処理200B2とを含むように構成される。例えば、Radar、Lidarなど、ほぼリアルタイムに近いデータが取れるセンサ(ここではセンサAとする)に対して、Camera信号など処理に時間がかかるセンサ(ここではセンサBとする)では、制御ユニット2が受信するまでの時間に差異が出る。そのため、各種センサA、B毎に設定した遅延補正処理200A1、フィルタ処理200A2と遅延補正処理200B1、フィルタ処理200B2を設け、遅延時間を考慮して時刻TSA、TSBを補正する。
【0024】
この例では、時刻TSAに対してはフィルタ処理(少数点第2位)200A2が行われる(この例では、12:00:00.001が12:00:00.000に補正される)。時刻TSBに対してはフィルタ処理(少数点第1位)200B2が行われる(この例では、12:00:00.100が12:00:00.000にされる)。これにより、遅延補正された時刻201(12:00:00.000)および遅延補正された時刻202(12:00:00.000)が得られる。
【0025】
そして、センサ信号選択処理部101において、遅延補正された時刻201、202が付与されたセンサA信号SAとセンサB信号SBに対して、センサフュージョン処理が行われる。そして、制御信号処理部102で、センサA信号およびセンサB信号の両方を用いて制御信号を生成して、制御信号を制御機構ユニット4へ供給する。センサ信号選択処理部101は、各種センサユニット5、6に含まれる複数のセンサのそれぞれが環境情報を取得してから制御ユニット2が複数のセンサ信号SA、SBを受信するまでのそれぞれの遅延時間を考慮し(補正処理200(200A、200B)により補正し)、複数のセンサ信号SA、SBを選択して、結合を行うように構成されている。
【0026】
つまり、各種センサに応じた遅延時間を考慮することで、より近い時刻でセンシングされたセンサ信号同士を合成し、車両運動制御に用いる制御信号を生成することができる。
まず、センサユニット5において、所定のサンプリング周期でセンサ信号をサンプリングする際にサンプリング遅延300が発生する。次に、サンプリングしたセンサ信号をCAN、LIN、Ethernetなどの車両の通信ネットワークに送信する場合、そこでも送信周期の待ち時間やソフト処理などにより、送信遅延301が発生する。さらに、制御ユニット2がセンサ信号を受信する周期の受信遅延302が発生する。
これら3つの周期遅延(300、301、302)のうち、一部または全てを組み合わせて遅延補正処理200A、200Bの補正時間を設定(300+301、301+302、300+301+302等護)することで、より精度の高いセンサ信号の組み合わせの選択を行うことができる。つまり、センサ信号選択処理部101は、センサユニット5、6に含まれる複数のセンサのサンプリング周期と送信周期、制御コントローラ2の受信周期のうち、一部または全てを組み合わせて、車両運動制御に必要なセンサ信号を選択する機能(遅延補正処理200A1、200B1)を有する構成とされている。