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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179372
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】保護部材および照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21V 5/00 20180101AFI20241219BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20241219BHJP
   F21V 29/87 20150101ALI20241219BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241219BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241219BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20241219BHJP
【FI】
F21V5/00 610
F21V3/10 310
F21V5/00 100
F21V29/87
B32B27/00 B
F21Y115:10
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098171
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓海
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK02A
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AK52B
4F100AK53B
4F100BA02
4F100GB41
4F100JA02B
4F100JA04B
4F100JC00A
4F100JJ01B
4F100JJ03B
4F100JK12B
4F100JN01A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】表面の溶融および溶融片の落下を抑制した保護部材および照明器具を提供すること。
【解決手段】保護部材は、光源を有する光源部を覆うレンズもしくはカバーで構成された保護部材であって、透光性を有する第1樹脂層と、第1樹脂層に積層される第2樹脂層と、を備え、第2樹脂層は、保護部材が光源部を覆う状態において、少なくとも第1樹脂層よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、第1樹脂層よりも溶融温度が高い、あるいは熱伝導性が高いものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を有する光源部を覆うレンズもしくはカバーで構成された保護部材であって、
透光性を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層に積層される第2樹脂層と、を備え、
前記第2樹脂層は、
前記保護部材が前記光源部を覆う状態において、少なくとも前記第1樹脂層よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、前記第1樹脂層よりも溶融温度が高い、あるいは熱伝導性が高い
保護部材。
【請求項2】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも溶融温度が高い材料で構成されている
請求項1に記載の保護部材。
【請求項3】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも熱伝導性の高い材料で構成されている
請求項1に記載の保護部材。
【請求項4】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層と線膨張係数が60×10-6/Kよりも近い材料で構成されている
請求項1~3のいずれか一項に記載の保護部材。
【請求項5】
前記光源部と、
請求項1~3のいずれか一項に記載の保護部材と、を備えた
照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保護部材および照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な照明器具の光源には、配光制御あるいは光源の保護を目的にレンズまたはカバーなどの透光性の保護部材が取り付けられている。この透光性の保護部材は複雑な構造であるため、ガラスなどでは製造が困難であること、コストが上がること、および軽量化の目的などから、樹脂材料でできていることが多い。
【0003】
しかしながら、樹脂材料はガラス材料と比べて耐熱性および長期信頼性が悪く、照明器具から発される光によって劣化し、溶融、変形、および落下などの不具合が発生する。また、保護部材の表面にゴミなどの異物が付着すれば、異物が照明光を吸収し、熱を発して、溶融をさらに加速させる。
【0004】
そこで、従来、照明用カバー(保護部材)に機能性樹脂層を設けた照明器具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、照明用カバーが少なくとも2層以上で構成された複合材からなり、この2層以上の複合材は透光性を有する合成樹脂製のベース層と、このベース層とは異なった機能を備えた機能性樹脂層とで構成されている。そして、機能性樹脂層を例えば帯電防止樹脂で構成することで、表面にゴミなどの異物が付着するのを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-170412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、照明用カバーの表面に帯電防止機能を付与させても異物が付着することを完全に防ぐことはできず、表面に異物が付着すれば表面の溶融が発生し、溶融片が落下する恐れがあるという課題があった。
【0007】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたもので、表面の溶融および溶融片の落下を抑制した保護部材および照明器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る保護部材は、光源を有する光源部を覆うレンズもしくはカバーで構成された保護部材であって、透光性を有する第1樹脂層と、前記第1樹脂層に積層される第2樹脂層と、を備え、前記第2樹脂層は、前記保護部材が前記光源部を覆う状態において、少なくとも前記第1樹脂層よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、前記第1樹脂層よりも溶融温度が高い、あるいは熱伝導性が高いものである。
【0009】
また、本開示に係る照明器具は、光源部と、上記の保護部材と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る保護部材および照明器具によれば、保護部材は、透光性を有する第1樹脂層と、第1樹脂層に積層される第2樹脂層と、を備え、第2樹脂層は、保護部材が光源部を覆う状態において、少なくとも第1樹脂層よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、第1樹脂層よりも溶融温度が高い、あるいは熱伝導性が高いため、保護部材の表面に異物が付着し、異物が光吸収により発熱しても、保護部材の表面の溶融および溶融片の落下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る照明器具の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係る保護部材の層構造を説明する断面図である。
図3】実施の形態1に係る保護部材の構造を説明する断面図である。
図4】実施の形態1に係る保護部材の第1変形例の構造を説明する断面図である。
図5】実施の形態1に係る保護部材の第2変形例の構造を説明する断面図である。
図6】実施の形態2に係る保護部材の層構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本開示が限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る照明器具100の構成を示す構成図である。図2は、実施の形態1に係る保護部材11の層構造を説明する断面図である。図1に示すように、照明器具100は、発光ダイオード、有機ELあるいはレーザなどで構成された光源を有する光源部1と、光源部1を覆い、樹脂製のレンズもしくはカバーで構成された保護部材11とを備えている。保護部材11は、第1樹脂層2と、第2樹脂層3とを備え、第1樹脂層2の表面に第2樹脂層3が設けられた構造となっている。図2に示すように、実施の形態1に係る保護部材11では、第2樹脂層3として第1樹脂層2よりも溶融温度が高い(あるいは耐熱性が高い)耐熱性樹脂材料5が、第1樹脂層2に積層されている。耐熱性樹脂材料5は、透明性耐熱樹脂であり、例えば、アクリル系、シリコーン系、および、エポキシ系などのハードコート材料である。なお、第2樹脂層3は、一般的な透明熱可塑性樹脂の軟化温度である200℃以上の耐熱性を有している、つまり溶融温度が200℃以上であることが望ましい。
【0014】
第1樹脂層2は、保護部材11の主となる樹脂であり、材料は一般的な透明性樹脂であり、例えば、アクリル系樹脂、ポリステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、および、バイオポリマー系樹脂などである。
【0015】
第2樹脂層3は、上記の通り第1樹脂層2に積層されており、積層方法は、例えばコーティングあるいは接着である。第1樹脂層2と第2樹脂層3とは、線膨張係数が60×10-6/Kよりも近いことが望ましい。これは、第1樹脂層2と第2樹脂層3とで線膨張係数が遠いと、それらに割れが発生したり、それらのうち一方が剥がれ落ちたりするため、そのような事態を抑制するためである。
【0016】
第2樹脂層3は、第1樹脂層2の両面もしくはどちらか一方の面に積層されている。設置方向がダウンライトのように、光源部1よりも重力方向側に保護部材11がある場合には、第2樹脂層3は第1樹脂層2の両面もしくは光源部1から遠い側、つまり重力方向側に設けることが望ましい。溶融温度が高い(あるいは耐熱性が高い)第2樹脂層3が、光源部1から遠い側つまり重力方向側の表面に設けられることで、第1樹脂層2が熱により溶融しても第1樹脂層2の溶融片が第2樹脂層3に支持されるので、溶融片の落下を抑制することができる。また、設置方向が投光器のように、光源部1よりも反重力方向側に保護部材11がある場合には、第2樹脂層3は第1樹脂層2の両面にある方が望ましい。光源部1から遠い側、つまり反重力方向側の表面に設けられた第2樹脂層3は、第1樹脂層2に降りかかる異物から保護し、光源部1から近い側、つまり重力方向側の表面に設けられた第2樹脂層3は、熱により溶融した第1樹脂層2を光源部1に落下させないように、第1樹脂層2の溶融片を支持するための機能を果たす。
【0017】
以上のように、保護部材11は、表面に第1樹脂層2よりも溶融温度が高い(あるいは耐熱性が高い)第2樹脂層3が設けられているため、熱によって表面が溶融し、溶融片が落下することを抑制することができる。
【0018】
図3は、実施の形態1に係る保護部材11の構造を説明する断面図である。図4は、実施の形態1に係る保護部材11の第1変形例の構造を説明する断面図である。図5は、実施の形態1に係る保護部材11の第2変形例の構造を説明する断面図である。なお、図3の矢印は、重力方向を示している。
【0019】
第1樹脂層2が溶融しても、溶融した第1樹脂層2を落下させないためには、図3に示すように、第2樹脂層3を第1樹脂層2の重力方向側(図3のG側)に設けるとよい。あるいは、図4に示すように、第2樹脂層3が第1樹脂層2の(重力方向側および反重力方向側の)両面を覆うように設けるとよい。あるいは、図5に示すように、第2樹脂層3は、第1樹脂層2が溶融しても器具本体4に支持される構成とするとよい。
【0020】
図3図5に示す構成とすることで、第1樹脂層2が溶融しても、溶融して黒ずんだ第1樹脂層2の樹脂が第2樹脂層3に付くので、ユーザーは保護部材11に異常があることを認識することができる。また、図5に示す構成に関して、保護部材11の器具本体4によって支持される部分(以下、支持部分とも称する)は、照明光が当たらないような構造になっていて、第1樹脂層2の器具本体4によって支持される部分は、温度が上昇しないような構造とする。これは、第1樹脂層2の温度が上昇していくと第1樹脂層2が溶融し、それに伴って変形し、剛性が低くなることによって、器具本体4に支持されなくなるのを抑制するためである。また、保護部材11の支持部分は第2樹脂層3で受けるようにすることで、第1樹脂層2が溶融しても、それによる保護部材11の支持の影響を抑制することができる。
【0021】
以上、実施の形態1に係る保護部材11は、光源を有する光源部1を覆うレンズもしくはカバーで構成された保護部材11であって、透光性を有する第1樹脂層2と、第1樹脂層2に積層される第2樹脂層3と、を備え、第2樹脂層3は、保護部材11が光源部1を覆う状態において、少なくとも第1樹脂層2よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、第1樹脂層2よりも溶融温度が高いものである。
【0022】
実施の形態1に係る保護部材11によれば、第1樹脂層2に積層される第2樹脂層3と、を備え、第2樹脂層3は、保護部材11が光源部1を覆う状態において、少なくとも第1樹脂層2よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、第1樹脂層2よりも溶融温度が高いため、保護部材11の表面に異物が付着し、異物が光吸収により発熱しても、保護部材11の表面の溶融を抑制することができる。また、第2樹脂層3が重力方向側にあることで、仮に第1樹脂層2が熱により溶融しても第1樹脂層2の溶融片が第2樹脂層3に支持されるので、溶融片の落下を抑制することができる。
【0023】
また、実施の形態1に係る保護部材11において、第2樹脂層3は、第1樹脂層2と線膨張係数が60×10-6/Kよりも近い材料で構成されているものである。
【0024】
実施の形態1に係る保護部材11によれば、第1樹脂層2および第2樹脂層3に割れが発生したり剥がれ落ちたりするのを抑制することができる。
【0025】
また、実施の形態1に係る照明器具100は、光源部1と、上記の保護部材11と、を備えたものである。
【0026】
実施の形態1に係る照明器具100によれば、上記の保護部材11と同様の効果を得ることができる。
【0027】
実施の形態2.
以下、実施の形態2について説明するが、実施の形態1と重複するものについては説明を省略し、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付す。
【0028】
図6は、実施の形態2に係る保護部材11の層構造を説明する断面図である。図6に示すように、実施の形態2に係る保護部材11では、第2樹脂層3として、第1樹脂層2よりも熱伝導性の高い高熱伝導性樹脂材料6が、第1樹脂層2に積層されている。高熱伝導性樹脂材料6は、ベース樹脂6aに熱伝導性材料6bが添加されて構成されている。ベース樹脂6aは、透明性樹脂であり、例えば、アクリル系樹脂、ポリステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、および、バイオポリマー系樹脂などである。熱伝導性材料6bは、ベース樹脂6aよりも熱伝導性の高い材料であり、例えば、金属、セラミック、および、グラファイトなどである。実施の形態2では、保護部材11の第2樹脂層3が熱伝導性の高い材料で構成されているので、異物が発する熱を拡散させるため、第1樹脂層2の溶融温度を超えるような局所的な高温には至らない。そのため、熱によって表面が溶融し、溶融片が落下することを抑制することができる。
【0029】
以上、実施の形態2に係る保護部材11は、光源を有する光源部1を覆うレンズもしくはカバーで構成された保護部材11であって、透光性を有する第1樹脂層2と、第1樹脂層2に積層される第2樹脂層3と、を備え、第2樹脂層3は、少なくとも第1樹脂層2よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、第1樹脂層2よりも熱伝導性が高いものである。
【0030】
実施の形態2に係る保護部材11によれば、透光性を有する第1樹脂層2と、第1樹脂層2に積層される第2樹脂層3と、を備え、第2樹脂層3は、少なくとも第1樹脂層2よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、第1樹脂層2よりも熱伝導性が高いため、保護部材11の表面に異物が付着し、異物が光吸収により発熱しても、その熱を拡散させるため、第1樹脂層2の溶融温度を超えるような局所的な高温には至らず、保護部材11の表面の溶融を抑制することができる。また、第2樹脂層3が重力方向側にあることで、仮に第1樹脂層2が熱により溶融しても第1樹脂層2の溶融片が第2樹脂層3に支持されるので、溶融片の落下を抑制することができる。なお、第2樹脂層3は、第1樹脂層2よりも熱伝導性が高く、かつ溶融温度が高い構成であると尚よい。
【0031】
また、実施の形態2に係る照明器具100は、光源部1と、上記の保護部材11と、を備えたものである。
【0032】
実施の形態2に係る照明器具100によれば、上記の保護部材11と同様の効果を得ることができる。
【0033】
以下、本開示の諸態様を付記する。
【0034】
(付記1)
光源を有する光源部を覆うレンズもしくはカバーで構成された保護部材であって、
透光性を有する第1樹脂層と、
前記第1樹脂層に積層される第2樹脂層と、を備え、
前記第2樹脂層は、
前記保護部材が前記光源部を覆う状態において、少なくとも前記第1樹脂層よりも重力方向側の表面に設けられ、かつ、前記第1樹脂層よりも溶融温度が高い、あるいは熱伝導性が高い
保護部材。
(付記2)
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも溶融温度が高い材料で構成されている
付記1に記載の保護部材。
(付記3)
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも熱伝導性の高い材料で構成されている
付記1に記載の保護部材。
(付記4)
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層と線膨張係数が60×10-6/Kよりも近い材料で構成されている
付記1~3のいずれか一つに記載の保護部材。
(付記5)
光源と、
付記1~4のいずれか一つに記載の保護部材と、を備えた
照明器具。
【符号の説明】
【0035】
1 光源部、2 第1樹脂層、3 第2樹脂層、4 器具本体、5 耐熱性樹脂材料、6 高熱伝導性樹脂材料、6a ベース樹脂、6b 熱伝導性材料、11 保護部材、100 照明器具。
図1
図2
図3
図4
図5
図6