(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179374
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A47J27/00 109H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098175
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 杏子
(72)【発明者】
【氏名】森井 彰
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利弘
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA31
4B055CD02
4B055CD51
4B055GD02
4B055GD03
(57)【要約】
【課題】状況に応じて被調理物の沸騰検知を適切に行うことができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】加熱調理器は、本体と、本体に収容される鍋状容器と、鍋状容器を覆う蓋体と、鍋状容器を加熱する加熱部と、加熱部を制御する制御部と、鍋状容器内の調理空間の温度である空間温度を測定する空間温度センサと、を備え、制御部は、空間温度センサにより測定された空間温度が沸騰検知温度以上となった場合に、鍋状容器内の被調理物の沸騰を検知する沸騰検知部を有し、沸騰検知部は、沸騰検知温度を変更する変更条件が満たされない場合、沸騰検知温度を第1温度に設定し、変更条件が満たされた場合、沸騰検知温度を第1温度よりも低い第2温度に設定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に収容される鍋状容器と、
前記鍋状容器を覆う蓋体と、
前記鍋状容器を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
前記鍋状容器内の調理空間の温度である空間温度を測定する空間温度センサと、を備え、
前記制御部は、前記空間温度センサにより測定された前記空間温度が沸騰検知温度以上となった場合に、前記鍋状容器内の被調理物の沸騰を検知する沸騰検知部を有し、
前記沸騰検知部は、
前記沸騰検知温度を変更する変更条件が満たされない場合、前記沸騰検知温度を第1温度に設定し、
前記変更条件が満たされた場合、前記沸騰検知温度を前記第1温度よりも低い第2温度に設定する加熱調理器。
【請求項2】
前記沸騰検知部は、前記被調理物の水分量が標準量よりも少ない場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記被調理物の前記水分量は、ユーザにより入力される請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記沸騰検知部は、ユーザにより設定された自動調理メニュー、食材の種類もしくは量、調味液の種類もしくは量、及び食材の保存状態の少なくとも何れか1つに基づいて前記水分量を判断する請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記鍋状容器の温度である容器温度を測定する底面温度センサをさらに備え、
前記沸騰検知部は、前記容器温度の時間変化から前記水分量を算出する請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記沸騰検知部は、昇温工程中に前記蓋体が開放された場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記調理空間を減圧する吸排気機構をさらに備え、
前記沸騰検知部は、前記調理空間の減圧を開始してから第1時間が経過しても前記空間温度が前記沸騰検知温度に達しない場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記鍋状容器の温度である容器温度を測定する底面温度センサをさらに備え、
前記沸騰検知部は、
前記容器温度が予め設定された閾値温度以上となってから第2時間が経過しても前記空間温度が前記沸騰検知温度に達しない場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記沸騰検知温度は前記調理空間の圧力の飽和蒸気温度よりも低い請求項1~8の何れか一項に記載の加熱調理器。
【請求項10】
本体と、
前記本体に収容される鍋状容器と、
前記鍋状容器を覆う蓋体と、
前記鍋状容器を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
前記鍋状容器内の調理空間の温度である空間温度を測定する中間温度センサと、を備え、
前記制御部は、前記中間温度センサにより測定された前記空間温度が沸騰検知温度以上となった場合に、前記鍋状容器内の被調理物の沸騰を検知する沸騰検知部を有し、
前記中間温度センサは、前記鍋状容器の底面よりも上方であって、前記蓋体よりも下方に配置された感温部を有する加熱調理器。
【請求項11】
前記蓋体内に感温部を有し、前記鍋状容器内の前記調理空間の温度である空間温度を測定する空間温度センサをさらに備え、
前記沸騰検知部は、
前記沸騰検知温度を変更する変更条件が満たされない場合、前記空間温度センサにより測定された前記空間温度と前記沸騰検知温度とを比較し、
前記変更条件が満たされた場合、前記中間温度センサにより測定された前記空間温度と前記沸騰検知温度とを比較する請求項10に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記中間温度センサは、前記感温部を前記蓋体内に移動可能に構成され、
前記沸騰検知部は、前記沸騰検知温度を変更する変更条件が満たされない場合、前記中間温度センサの前記感温部を前記蓋体内に移動させる請求項10に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被調理物の沸騰検知を行う加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に鍋状容器を収容自在に構成されている本体と、本体内の鍋状容器を覆う蓋体と、鍋状容器を加熱する加熱部と、から構成される加熱調理器が知られている。また、特許文献1には、ポンプを用いて鍋状容器内を飽和蒸気圧まで減圧して調理を行う加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、鍋状容器内を蒸気で満たして調理を行う加熱調理器においては、鍋状容器内の空間の温度に基づいて鍋状容器に収容された被調理物の沸騰を検知し、沸騰の検知から設定された時間が経過した場合に、調理を終了していた。しかしながら、加熱調理器の鍋状容器内の被調理物の水分量が少なく、発生する蒸気が少ない場合、被調理物が沸騰しているにもかかわらず鍋状容器内の空間の温度が沸騰検知温度に達さず、沸騰が検知されない場合がある。この場合は、調理の終了までに時間がかかったり、鍋状容器内の水分がなくなり被調理物が焦げてしまったりするなど、想定した調理ができなくなってしまう。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するものであり、状況に応じて被調理物の沸騰検知を適切に行うことができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る加熱調理器は、本体と、本体に収容される鍋状容器と、鍋状容器を覆う蓋体と、鍋状容器を加熱する加熱部と、加熱部を制御する制御部と、鍋状容器内の調理空間の温度である空間温度を測定する空間温度センサと、を備え、制御部は、空間温度センサにより測定された空間温度が沸騰検知温度以上となった場合に、鍋状容器内の被調理物の沸騰を検知する沸騰検知部を有し、沸騰検知部は、沸騰検知温度を変更する変更条件が満たされない場合、沸騰検知温度を第1温度に設定し、変更条件が満たされた場合、沸騰検知温度を第1温度よりも低い第2温度に設定する。
【0007】
本開示に係る別の加熱調理器は、本体と、本体に収容される鍋状容器と、鍋状容器を覆う蓋体と、鍋状容器を加熱する加熱部と、加熱部を制御する制御部と、鍋状容器内の調理空間の温度である空間温度を測定する中間温度センサと、を備え、制御部は、中間温度センサにより測定された空間温度が沸騰検知温度以上となった場合に、鍋状容器内の被調理物の沸騰を検知する沸騰検知部を有し、中間温度センサは、鍋状容器の底面よりも上方であって、蓋体よりも下方に配置された感温部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示における加熱調理器によれば、変更条件に応じて沸騰検知温度を第1温度もしくは第2温度の何れかに設定すること、又は被調理物に近い空間の温度を測定する中間温度センサを備えることで、状況に応じて被調理物の沸騰検知を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る加熱調理器の概略構成を示す断面模式図である。
【
図2】実施の形態1に係る加熱調理器の制御ブロック図である。
【
図3】水分量の相違による空間温度Tsの相違を説明するグラフである。
【
図4】実施の形態1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【
図5】変形例1に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【
図6】変形例2に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【
図7】変形例3に係る加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係る加熱調理器の概略構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る加熱調理器の実施の形態を、図面を参照して説明する。各図において、同一の符号を付した構成部材は、同一の又はこれに相当する構成部材であり、これは明細書の全文において共通している。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係又は形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0011】
実施の形態1.
(加熱調理器100の構成)
図1は、実施の形態1に係る加熱調理器100の概略構成を示す断面模式図である。
図1に示すように、本実施の形態の加熱調理器100は、本体1と、本体1の上面を覆う蓋体10とを備える。本体1及び蓋体10は、加熱調理器100の外郭を構成する。蓋体10は、本体1にヒンジ部6を介して開閉自在に取り付けられている。
【0012】
本体1は、有底筒状に形成され、内部に容器カバー2が内装固着されている。容器カバー2は本体1の上面側に開口を有し、鍋状容器5が、容器カバー2に着脱可能に収容される。本体1の内部であって容器カバー2の下方には、鍋状容器5を加熱するための加熱部3と、鍋状容器5の温度を測定するための底面温度センサ4と、が設けられている。
【0013】
加熱部3は、例えば渦巻状又は螺旋状に形成され、インバータ部(不図示)から高周波電流が供給される誘導加熱コイルである。加熱部3は、鍋状容器5の下方において、鍋状容器5の底面及び湾曲面と対向するように配置されている。加熱部3に電流が流れると、電流によって生じる磁束により、鍋状容器5に渦電流が生じる。そして、渦電流によって鍋状容器5に生じるジュール熱により、鍋状容器5内の被調理物が加熱される。なお、加熱部3は、鍋状容器5の底面に直接接触して加熱するヒータであってもよい。
【0014】
底面温度センサ4は、例えばサーミスタである。底面温度センサ4は、容器カバー2の底面の中央に形成された孔に貫通して設けられ、圧縮バネ4aによって上方に付勢されることで、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面に接して鍋状容器5の底面の温度を測定する。以降の説明において、底面温度センサ4で測定された温度を「容器温度Tc」と称する。底面温度センサ4によって測定された容器温度Tcは、制御部7に出力される。なお、底面温度センサ4の具体的構成はサーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を測定する接触式温度センサのほか、例えば赤外線センサ等の鍋状容器5の温度を非接触で測定する非接触式温度センサであってもよい。
【0015】
鍋状容器5は、被調理物である水、食材及び調味料等が収容されるものであり、容器カバー2に着脱可能に収容されている。鍋状容器5は、有底筒形状を有し、平面視で、円形状又は横長の楕円形状を有している。鍋状容器5は、例えば誘導加熱により発熱する磁性体金属を含む材料で構成される。
【0016】
鍋状容器5の上端には、開口に沿って外側に向かって突出したフランジ部が形成されている。鍋状容器5のフランジ部と内蓋12の蓋パッキン12aとが当接することで、鍋状容器5の内部の空間が密閉される。以降の説明において、鍋状容器5内の空間を「調理空間50」と称する。鍋状容器5は、容器カバー2に収容された状態において、本体1の上面であって容器カバー2の開口の周囲に設けられた容器支持部に支持されている。
【0017】
本体1の内部であって、容器カバー2の外側には、加熱調理器100の動作を制御する制御部7が設けられている。制御部7は、制御を実現する制御回路のようなハードウェアで構成されていてもよいし、プログラムが記憶されたメモリと、プログラムを実行するCPUなどのプロセッサとで構成されてもよい。制御部7による加熱調理器100の制御については、後ほど詳述する。
【0018】
また、本体1の内部であって、容器カバー2の外側には、後述するカートリッジ23からの結露水が排出される露受け28が設けられている。露受け28は、本体1に着脱自在に取り付けられている。
【0019】
蓋体10は、本体1の上面を覆うように構成され、本体1が備える開放ボタン(不図示)によって開放され、本体1が備えるラッチ部(不図示)により係止される。蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有する。外蓋11は、蓋体10の上部及び側部を構成し、外蓋11の本体1側の面に、内蓋12が取り付けられている。
【0020】
内蓋12は、例えばステンレスなどの金属で構成されており、外蓋11の本体1側の面に係止材(不図示)を介して取り付けられている。内蓋12の周縁部には、鍋状容器5の上端部外周に設けられたフランジ部との密閉性を確保するシール材である蓋パッキン12aが取り付けられている。また、内蓋12には、複数の通気孔12bが設けられている。内蓋12の通気孔12bは、外蓋11に設けられた空間温度センサ16、並びに吸排気機構を構成する経路切替弁22、開閉弁24、蒸気排出弁25及び圧力センサ26と連通する。また、通気孔12bの外蓋11側には経路パッキン13が設けられており、経路パッキン13により、調理空間50と空間温度センサ16及び吸排気機構との密閉性が維持されている。なお、内蓋12の通気孔12bのうち、経路切替弁22及び開閉弁24に連通する通気孔12bには、異物の侵入を防ぐフィルタ(不図示)が設けられている。
【0021】
外蓋11の上面には、加熱調理器100を操作するための操作部14と、加熱調理器100の状態及び操作のための情報等が表示される表示部15と、が設けられている。操作部14は、加熱調理に関するユーザからの指示入力を受け付けるものであり、例えば、ハードウェアボタン又はタッチパネルで構成される。操作部14は、例えば、調理の開始及び取消の指示、加熱時間、火力の強弱(加熱温度)、調理方法、食材の種類又は自動調理メニュー等の設定を受け付ける。調理方法は、調理空間50内を常圧で調理する常圧調理と、調理空間50を減圧手段によって減圧して調理する減圧調理である。自動調理メニューは、例えば「炊飯」又は「カレー」などであり、予め調理方法、加熱時間及び加熱温度が決められている。操作部14に入力された指示及び設定情報は、制御部7へ出力される。
【0022】
表示部15は、操作部14において設定された設定情報、加熱調理の進行状態、及びユーザへの通知等を表示する。表示部15は、液晶画面、発光素子又は有機EL(Electro Luminescence)画面で構成される。表示部15の表示内容は、制御部7によって制御される。また、加熱調理器100は、ユーザへの通知を音声で行う報知部を備えてもよい。
【0023】
なお、
図1では、操作部14及び表示部15は、外蓋11の上面に設けられているが、操作部14及び表示部15の位置はこれに限定されず、少なくとも一方を本体1に配置してもよい。また、操作部14及び表示部15の少なくとも一方の機能は、加熱調理器100とは別の装置によって実現されてもよい。例えば、加熱調理器100はスマートフォン等の通信端末と通信する通信装置を備え、スマートフォン等の通信端末にて、操作部14に対する操作入力を受け付けるとともに、表示部15と同等の表示を行ってもよい。
【0024】
外蓋11と内蓋12の間には、調理空間50の温度を測定する空間温度センサ16が設けられている。空間温度センサ16は、サーミスタ又は赤外線センサであり、外蓋11に取り付けられている。空間温度センサ16は、蓋体10の内部に配置された感温部を有し、内蓋12の通気孔12bを介して調理空間50の温度を測定する。以降の説明において、空間温度センサ16で測定された温度を「空間温度Ts」とする。空間温度センサ16で測定された空間温度Tsは、制御部7に出力される。
【0025】
外蓋11の内部には、鍋状容器5の内部の気体(空気及び蒸気)を吸排気するための吸排気機構として、減圧ポンプ21と、経路切替弁22と、カートリッジ23と、開閉弁24と、蒸気排出弁25と、圧力センサ26と、結露導管27と、が設けられている。
【0026】
減圧ポンプ21は、調理空間50から気体を吸入するポンプである。減圧ポンプ21は、減圧経路31を介して経路切替弁22に接続され、第1排出経路32を介してカートリッジ23に接続されている。減圧ポンプ21は、経路切替弁22から減圧経路31を介して空気を吸入し、吸入した空気を、第1排出経路32を介してカートリッジ23に排出する。
【0027】
経路切替弁22は、例えば三方向電磁弁であり、調理空間50から気体を吸入してカートリッジ23に排出する第1経路と、外蓋11内の空間から蓋内通路35を介して空気を吸入してカートリッジ23に排出する第2経路とを切り替えるよう構成されている。経路切替弁22は、無通電状態においては、第2経路に切り替えられている。この場合、経路切替弁22は、外蓋11の内部の空間と連通する蓋内通路35と減圧ポンプ21とを連通させる。このとき、減圧ポンプ21が駆動すると、減圧ポンプ21は、外蓋11の内部の空間にある空気を吸入する。これにより、調理空間50の外の空気が経路切替弁22に導入され、減圧ポンプ21を経てカートリッジ23に流入する。これにより、経路切替弁22及び減圧ポンプ21の内部の水滴がカートリッジ23に排出される。また、経路切替弁22が第2経路に切り替えられている状態(無通電状態)においては、調理空間50は外部の空間と遮断され、密閉状態が維持される。
【0028】
一方、経路切替弁22は、通電状態においては第1経路に切り替えられる。この場合、経路切替弁22は、減圧ポンプ21と調理空間50とを連通する。このとき、減圧ポンプ21を作動させると、減圧ポンプ21は、調理空間50の気体を吸入する。減圧ポンプ21が吸入した調理空間50の気体は、第1排出経路32を通ってカートリッジ23に排出される。
【0029】
カートリッジ23は、内部に空間が設けられており、第1排出経路32、第2排出経路33、及び第3排出経路34を介して、減圧ポンプ21、開閉弁24及び蒸気排出弁25とそれぞれ接続されている。カートリッジ23の上部には、外蓋11の上面に配置される通気口23aが設けられている。減圧ポンプ21、開閉弁24、及び蒸気排出弁25からカートリッジ23に排出された調理空間50の気体は、通気口23aから加熱調理器100の外に排出される。
【0030】
カートリッジ23の下方には、結露導管27が設けられている。結露導管27はカートリッジ23と一体に形成されていてもよいし、別部品として構成してもよい。結露導管27は、本体1の露受け28と連通しており、減圧ポンプ21、経路切替弁22、開閉弁24、及び蒸気排出弁25からカートリッジ23に送られ、通気口23aから排出されなかった蒸気及び結露は、結露導管27を通って露受け28に送られる。
【0031】
カートリッジ23の底面部分は傾斜しており、結露水が結露導管27に集められるよう漏斗状になっている。結露導管27の上部のカートリッジ23との接続口は、第1排出経路32~第3排出経路34とカートリッジ23との接続口よりも下方に配置されている。これにより、カートリッジ23内の結露水を効率的に集めることができ、カートリッジ23内に残った水が外蓋11を開放したときに通気口23a及びその他の隙間から外に流出することを防ぐことができる。
【0032】
開閉弁24は、一端が内蓋12の通気孔12bを介して調理空間50と接続され、他端が第2排出経路33を介してカートリッジ23と接続されており、調理空間50と外部の空間とを連通又は遮断する。開閉弁24は、調理空間50を減圧する際には流入する外気を遮断し、調理空間50を減圧された状態から常圧に昇圧する際には外部の空間から外気を取り込むために開放される。また、開閉弁24は、常圧状態で調理する場合には、調理空間50から蒸気を排出するための開口となる。開閉弁24は、例えば通電によって開閉状態が切り替えられるラッチ式の弁体を有する。開閉弁24は、閉状態のときに通電されると開状態になり、開状態のときに通電されると閉状態になる。
【0033】
蒸気排出弁25は、一端が内蓋12の通気孔12bを介して調理空間50と接続され、他端が第3排出経路34を介してカートリッジ23と接続されており、調理空間50内の気体を排出する。蒸気排出弁25は、例えばバネによって鍋状容器5に向かって一定の力で閉塞されており、調理空間50の圧力がバネの閉塞圧力よりも高くなると開放され、蒸気が放出される。蒸気排出弁25が開放される圧力は、例えばバネ定数に応じて規定できる。蒸気排出弁25が開放される圧力が、蓋パッキン12a又はその他の箇所から蒸気が噴出する圧力よりも低く設定されることで、意図しない箇所からの蒸気噴出を防ぐことができる。また、蒸気排出弁25は、調理空間50が低圧、つまり大気圧よりも低くなると、調理空間50が密閉状態となるよう構成されている。
【0034】
開閉弁24が閉じられた状態で鍋状容器5内の被調理物が加温され、蒸気が発生すると、鍋状容器5内の圧力が上昇する。被調理物が設定された温度で温調される場合には、鍋状容器5内の圧力が飽和蒸気圧よりも大幅に高くなることはなく、飽和蒸気温度と飽和蒸気圧の近傍でバランスすることになる。一方、温調温度が高く、加熱部3に通電した際の昇温で蒸気が多く発生すると、鍋状容器5内が大気圧よりも高くなる場合がある。蒸気排出弁25は、このような場合に、余剰な蒸気を放出するために開放するように設定されている。
【0035】
圧力センサ26は、調理空間50内の圧力を測定する。圧力センサ26は、外蓋11に取り付けられ、一部が内蓋12の通気孔12bを貫通している。圧力センサ26で測定された調理空間50の圧力は、制御部7に出力される。
【0036】
図2は、実施の形態1に係る加熱調理器100の制御ブロック図である。
図2に示すように、制御部7は、記憶部71と、加熱制御部72と、吸排気制御部73と、沸騰検知部74と、計時部75と、を有する。記憶部71は、例えば、ROM又はフラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリ、RAM等の揮発性の半導体メモリ、又はHDD等である。加熱制御部72、吸排気制御部73、及び沸騰検知部74は、制御部7のプロセッサがプログラムを実行することにより実現される機能部である。又は、加熱制御部72、吸排気制御部73、及び沸騰検知部74の少なくとも何れかを、ASIC又はFPGAなどの処理回路で実現してもよい。
【0037】
記憶部71は、制御部7が実行するプログラム及び該プログラムに用いられるパラメータ等を記憶する。例えば、記憶部71は、操作部14を介して入力された設定情報、並びに調理工程において閾値として用いられる複数の温度、圧力及び時間などを記憶する。
【0038】
加熱制御部72は、操作部14に入力された指示及び設定情報、並びに底面温度センサ4及び空間温度センサ16により測定される温度に基づいて、加熱部3を制御し、鍋状容器5を加熱する。具体的には、加熱制御部72は、底面温度センサ4又は空間温度センサ16によって測定される温度が、設定された加熱温度となるように、加熱部3への出力電流を制御する。
【0039】
吸排気制御部73は、操作部14に入力された指示及び設定情報、底面温度センサ4及び空間温度センサ16により測定される温度、並びに圧力センサ26により測定される圧力に応じて、吸排気機構を制御する。具体的には、吸排気制御部73は、減圧ポンプ21の運転及び停止、経路切替弁22の経路の切り替え、及び開閉弁24の開閉を制御する。
【0040】
沸騰検知部74は、空間温度センサ16により測定された空間温度Tsに基づき、鍋状容器5に収容された被調理物が沸騰しているか否かを検知する。具体的には、沸騰検知部74は、空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合に、被調理物の沸騰を検知したと判断する。沸騰検知温度Tbは、被調理物の沸騰を判断するための閾値であり、後述する変更条件に応じて設定される。沸騰検知部74の検知結果は、加熱制御部72及び吸排気制御部73に出力される。
【0041】
計時部75は、加熱調理器100の調理が開始されてからの時間、及び沸騰検知部74によって沸騰が検知されてからの時間などを計測する。計時部75により計測される時間は、加熱制御部72及び吸排気制御部73に出力される。
【0042】
(加熱調理器100の動作)
続いて、加熱調理器100の動作について説明する。本実施の形態の加熱調理器100で調理を行う場合、はじめに、ユーザが任意のメニューを作るための肉、魚、野菜、調味料、及び水等の材料を鍋状容器5内に入れる。その後、鍋状容器5のフランジ部を把持して容器カバー2に載置し、外蓋11を閉めると、内蓋12の蓋パッキン12aが鍋状容器5のフランジ部に圧接されて密閉される。外蓋11は常に開放方向にヒンジ部6にて付勢されており、閉塞した外蓋11は、例えば、本体1の前方に備えられたラッチ部にて係止される。ユーザが操作部14を操作して、加熱時間、加熱温度、又は自動調理メニューを選択し、調理の開始を指示することで、調理が開始される。
【0043】
本実施の形態の加熱調理器100は、調理空間50内を常圧で調理する常圧調理と、調理空間50を減圧手段によって減圧して調理する減圧調理とを実施可能である。以下、加熱調理器100による減圧調理の一例を説明する。減圧調理においては、例えば60℃~95℃の加熱温度、及び1分~120分の加熱時間が設定される。ユーザによって加熱時間及び加熱温度が設定され、加熱の開始が指示されると、まず、調理空間50が密閉されていることを確認する密閉確認工程が実施される。
【0044】
密閉確認工程において、吸排気制御部73は、経路切替弁22を減圧ポンプ21と調理空間50とが連通する第1経路に切り替えるとともに、開閉弁24を閉塞して鍋状容器5内の調理空間50を密閉状態とする。そして、吸排気制御部73は、減圧ポンプ21を駆動し、調理空間50を減圧する。吸排気制御部73は、圧力センサ26で測定される調理空間50の圧力が問題なく減圧することを確認すると、開閉弁24を開放し、経路切替弁22を第2経路に切替えて調理空間50を大気圧まで昇圧する。
【0045】
密閉確認工程の後、調理空間50の温度を上昇させる昇温工程が実施される。昇温工程において、加熱制御部72は、加熱部3へ高周波電流を供給し、鍋状容器5の加熱を開始する。加熱制御部72は、底面温度センサ4により測定された容器温度Tcが維持温度Tmに到達するまで、加熱部3による加熱を継続する。維持温度Tmは、例えば、設定された加熱温度-5℃であり、加熱によるオーバーシュートを見越して予め設定され、記憶部71に記憶されている。容器温度Tcが維持温度Tmに到達すると、減圧工程が実施される。
【0046】
減圧工程において、加熱制御部72は、容器温度Tcを維持温度Tmに維持するよう加熱部3を制御する。そして、吸排気制御部73は、開閉弁24を閉塞するとともに経路切替弁22を第1経路に切り替えて、減圧ポンプ21を駆動する。これにより、鍋状容器5内の圧力が徐々に下降し、調理空間50の温度の飽和蒸気圧に近づくと、被調理物が沸騰し、調理空間50が100℃未満の蒸気で満たされる。
【0047】
沸騰検知部74により、空間温度センサ16によって測定された空間温度Tsに基づいて調理空間50の沸騰が検知されると、沸騰維持工程が実施される。沸騰維持工程では、吸排気制御部73により、減圧ポンプ21が停止され、調理空間50の減圧状態が維持される。そして、計時部75による時間の計測が開始され、設定された加熱時間が経過するまで、沸騰状態が維持される。
【0048】
加熱時間の経過後、加熱制御部72は、加熱部3への電流の供給を停止する。これにより、鍋状容器5の加熱が停止される。そして、ユーザに対して調理終了が報知され、ユーザによって操作部14を介して真空解除が指示されると、吸排気制御部73は、開閉弁24を開放して鍋状容器5内を外気と連通して昇圧する。これにより、調理空間50が常圧に戻り、外蓋11を開くことができる。
【0049】
沸騰維持工程では、調理空間50が、設定された加熱温度の飽和蒸気圧まで減圧され、被調理物が沸騰することで、被調理物の対流が促され均一に加熱されておいしさが向上する。また、鍋状容器5内の調理空間50が100℃未満の蒸気で満たされることで、被調理物の煮汁から露出した部分も加熱されやすくなり、少ない煮汁でも均一な仕上がりを実現できる。さらに沸騰による気泡の発生によって調味料及び油分の撹拌が促され、口触り及び味が良くなるという効果もある。
【0050】
上記のように、加熱調理器100による調理工程においては、沸騰検知部74によって被調理物の沸騰を検知し、その時点から時間を計測して調理の終了を判断する。これにより、鍋状容器5内に収容された食材の水及び調味液から露出した部分も、設定された加熱時間の間蒸気によって加熱されるため、加熱の開始時から時間を計測するよりも仕上がりが安定する。
【0051】
なお、常圧調理の場合も、沸騰検知部74による沸騰検知の役割は同様である。常圧調理においては、上記の密閉確認工程と減圧工程とが実施されない。沸騰検知部74は、昇温工程中に空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合に沸騰を検知し、沸騰維持工程に移行して、加熱時間の計測を開始する。
【0052】
ここで、鍋状容器5内の水分量が少ない場合、鍋状容器5内の食材及び調味液から露出した部分に蒸気の熱量が奪われ、調理空間50の温度が上昇しにくくなる。
図3は、水分量の相違による空間温度Tsの相違を説明するグラフである。
図3の縦軸は、空間温度センサ16によって測定される空間温度Tsであり、横軸は時間である。
図3において、実線は水分量が標準量の場合の空間温度Tsの時間変化を示し、破線は水分量が標準量よりも少ない場合の空間温度Tsの時間変化を示している。
【0053】
図3に示すように、水分量が標準量である場合、昇温工程において容器温度Tcが上昇するとともに空間温度Tsも上昇する。この場合は、沸騰検知部74によって、空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合に沸騰を検知して、沸騰維持工程に移行する。一方、水分量が標準よりも少ない場合、昇温工程及び減圧工程において、空間温度Tsが沸騰検知温度Tbまで上昇しないため、沸騰検知部74によって沸騰が検知されず、沸騰維持工程に移行できない。
【0054】
そこで、本実施の形態の沸騰検知部74は、被加熱物の水分量に応じて沸騰検知温度Tbを変更する。具体的には、被加熱物の水分量が標準量以上である場合、沸騰検知温度Tbを基準となる第1温度T1に設定し、被加熱物の水分量が標準量未満である場合、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定する。減圧調理における沸騰検知温度Tbは、調理空間50の圧力の飽和蒸気温度よりも低い温度であり、第1温度T1は例えば設定された加熱温度-5℃であり、第2温度T2は例えば第1温度T1-5℃である。また、沸点が100℃となる常圧調理における第1温度T1は例えば80℃であり、第2温度T2は例えば第1温度T1-5℃である。これにより、水分量が少ない場合も、沸騰検知部74により被調理物の沸騰を検知し、沸騰維持工程に移行することができる。
【0055】
水分量の判断に用いられる標準量は、基準となる第1温度T1で沸騰する水分量に相当する量である。被調理物の水分量は、操作部14を介してユーザによって入力することができる。例えば、操作部14において、「水量少なめ」と設定された場合に、水分量が標準量未満であると判断してもよい。又は、加熱調理器100に重量センサもしくは光学センサを設け、鍋状容器5の重量による密度算出もしくは外観から水分量を判断してもよい。又は、昇温工程時における容器温度Tcの時間変化(昇温カーブ)から水分量を算出してもよい。また、自動調理メニューでは、メニューごとに水分量が予め決められているため、ユーザにより設定された自動調理メニューに基づき水分量を判断してもよい。
【0056】
その他にも、ユーザが食材の種類もしくは量、調味液の種類もしくは量、食材の保存状態(例えば、冷凍状態か非冷凍状態)の少なくとも何れか一つの情報を入力可能に構成し、これらの情報から被調理物の水分量を推測するようにしてもよい。例えば、水分を多く含む食材は、加熱によって食材から多くの水分が発生し鍋状容器5内の水量が多くなる。また、水分量の多い調味液を使う場合も、鍋状容器5内の水量が多くなる。さらに、食材が冷凍状態の場合は、調理中に食材から発生する水分量が増え、鍋状容器5内の水量が多くなる。
【0057】
図4は、実施の形態1に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。
図4は、加熱調理器100において、減圧調理が行われる場合の動作の一例を示している。まず、密閉確認工程において、調理空間50が減圧され、調理空間50が密閉されているか否かが確認される(S1)。密閉確認工程が終了すると、昇温工程が実施される。昇温工程では、加熱制御部72により、鍋状容器5の加熱が開始される(S2)。そして、昇温工程が終了すると、減圧工程が実施される。減圧工程では、吸排気制御部73により、調理空間50の減圧が開始される(S3)。
【0058】
そして、沸騰検知部74によって、鍋状容器5内に収容されている被調理物の水分量が標準量以上であるか否かが判断される(S4)。被調理物の水分量が標準量以上である場合(S4:YES)、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第1温度T1に設定する(S5)。一方、被調理物の水分量が標準量未満である場合(S4:NO)、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定する(S6)。
【0059】
そして、沸騰検知部74によって、空間温度センサ16によって測定された調理空間50の空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上であるか否かが判断される(S7)。空間温度Tsが沸騰検知温度Tb未満である場合(S7:NO)、減圧工程が継続される。空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合(S7:YES)、沸騰検知部74は、被調理物の沸騰を検知したと判断する。
【0060】
そして、計時部75による時間の計測が開始され(S8)、沸騰維持工程が実施される(S9)。沸騰維持工程では、上記のように被調理物が沸騰した状態が維持されるよう加熱部3が制御される。そして、加熱制御部72によって、沸騰維持工程の開始から設定された加熱時間が経過したか否かが判断される(S10)。加熱時間が経過していない場合は(S10:NO)、沸騰維持工程を継続する。一方、加熱時間が経過した場合は(S10:YES)、加熱調理を終了する。
【0061】
なお、被調理物の水分量が少ない場合は、昇温工程における火力が強いと、水分が足りなくなることがある。そのため、ステップS4~S6の処理を昇温工程の前に行い、被調理物の水分量が標準量未満であると判断された場合は、昇温工程における加熱量を、被調理物の水分量が標準量以上である場合よりも小さくしてもよい。
【0062】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100では、被調理物の水分量が少ない場合は、沸騰検知温度Tbを低い温度に変更することで、状況に応じて沸騰検知を適切に行うことができる。これにより、調理時間の長時間化、及び被調理物の過加熱を抑制し、意図した調理結果を得ることができる。
【0063】
なお、実施の形態1では、被調理物の水分量を沸騰検知温度Tbを変更する変更条件としたが、沸騰検知温度Tbの変更条件はこれに限定されるものではない。以下に、実施の形態1の変形例について説明する。
【0064】
(変形例1)
加熱調理器100が昇温工程を実施している途中で、新たに食材を投入するため、又は鍋状容器5内を確認するために、蓋体10が開放される場合がある。この場合は、鍋状容器5内の蒸気が外部に逃げることで、再度蓋体10を閉めた後も、調理空間50の空間温度Tsが昇温しにくくなり、沸騰検知部74による沸騰検知の遅れに繋がる場合がある。そこで、昇温工程中に蓋体10が開放された場合に、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2としてもよい。
【0065】
本変形例の場合は、蓋体10に、タッチセンサ又は傾斜センサによる蓋体開放センサを設けて、蓋体10が開放されたか否かを判断する。又は、空間温度センサ16によって測定される空間温度Tsが急激に低下した場合に、蓋体10が開放されたと判断してもよい。
【0066】
図5は、変形例1に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。
図5は、
図4と同様に、加熱調理器100において、減圧調理が行われる場合の動作の一例を示している。実施の形態1と同様に、まず密閉確認工程において調理空間50の密閉が確認され(S101)、その後、昇温工程において鍋状容器5の加熱が開始される(S102)。そして、昇温工程の終了後、沸騰検知部74によって、昇温工程中に蓋体10が開放されたか否かが判断される(S103)。
【0067】
昇温工程中に蓋体10が開放されていない場合(S103:NO)、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第1温度T1に設定する(S104)。一方、昇温工程中に蓋体10が開放された場合(S103:YES)、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定する(S105)。
【0068】
そして、減圧工程が実施され、調理空間50の減圧が開始される(S106)。その後のステップS107~S110の処理は、実施の形態1のステップS7~S10の処理と同じである。これにより、昇温工程中に蓋体10が開放されていない場合は、空間温度Tsと第1温度T1とが比較され、蓋体10が開放された場合は、空間温度Tsと第2温度T2とが比較され、沸騰検知が行われる。
【0069】
以上のように、変形例1の加熱調理器100においては、昇温工程中に蓋体10が開放されたことを変更条件とし、変更条件が満たされた場合は、沸騰検知温度Tbを低い温度に変更する。これにより、状況に応じて沸騰検知を適切に行うことができ、ユーザが意図した調理結果を得ることができる。
【0070】
(変形例2)
減圧工程において、減圧を開始してから予め設定された第1時間が経過しても空間温度Tsが沸騰検知温度Tbに達しない場合に、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2としてもよい。
【0071】
図6は、変形例2に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。
図6は、実施の形態1と同様に、加熱調理器100において、減圧調理が行われる場合の動作の一例を示している。実施の形態1と同様に、まず、密閉確認工程において、調理空間50が密閉されているか否かが確認される(S201)。密閉確認工程が終了すると、昇温工程が実施され、鍋状容器5の加熱が開始される(S202)。そして、昇温工程が終了すると、減圧工程が実施され、調理空間50の減圧が開始される(S203)。
【0072】
そして、計時部75により、減圧が開始されてからの時間の計測が開始される(S204)。続いて、沸騰検知部74によって、沸騰検知温度Tbが第1温度T1に設定され(S205)、減圧が開始されてから第1時間が経過したか否かが判断される(S206)。第1時間は、例えば10分である。減圧が開始されてから第1時間が経過していない場合(S206:NO)、沸騰検知部74によって、空間温度センサ16によって測定された調理空間50の空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上であるか否かが判断される(S207)。
【0073】
一方、減圧が開始されてから第1時間が経過した場合(S206:YES)、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第2温度T2に設定する(S208)。そして、空間温度センサ16によって測定された調理空間50の空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上であるか否かを判断する(S207)。空間温度Tsが沸騰検知温度Tb未満である場合(S207:NO)、ステップS206に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0074】
そして、空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合(S207:YES)、沸騰検知部74は、被調理物の沸騰を検知したと判断する。以降のステップS209~S211の処理は、実施の形態1と同様のステップS8~S10の処理と同じである。これにより、減圧が開始されてから第1時間が経過していない場合は、空間温度Tsと第1温度T1とが比較され、減圧が開始されてから第1時間が経過した場合は、空間温度Tsと第2温度T2とが比較され、沸騰検知が行われる。
【0075】
以上のように、変形例2の加熱調理器100においては、減圧が開始されてから第1時間が経過したことを変更条件とし、変更条件が満たされた場合は、沸騰検知温度Tbを低い温度に変更する。これにより、状況に応じて沸騰検知を適切に行うことができ、ユーザが意図した調理結果を得ることができる。
【0076】
なお、通常は、減圧工程の後、所定時間の経過後に沸騰を検知するが、昇温による昇圧の方が早く、被調理物の温度が沸点にぎりぎり到達しない場合がある。この場合は、再度調理空間50内を減圧することで蒸気が発生しやすくなる。そこで、減圧工程の後、第1時間経過後に沸騰を検知していない場合は、吸排気機構(減圧ポンプ41)の駆動回数を増やしてもよい。例えば、通常1回駆動の場合は、2回駆動してもよい。
【0077】
(変形例3)
底面温度センサ4で測定された容器温度Tcが、予め定められた閾値温度Tthに達した後に、第2経過時間が経過しても空間温度Tsが沸騰検知温度Tbに達しない場合に、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2としてもよい。閾値温度Tthは、例えば100℃である。
【0078】
図7は、変形例3に係る加熱調理器100の動作を示すフローチャートである。
図7は、加熱調理器100において、常圧調理が行われる場合の動作の一例を示している。本変形例では、まず、昇温工程が実施され、鍋状容器5の加熱が開始される(S301)。そして、沸騰検知部74によって、沸騰検知温度Tbが第1温度T1に設定される(S302)。
【0079】
そして、底面温度センサ4で測定された容器温度Tcが閾値温度Tth以上であるか否かが判断される(S303)。容器温度Tcが閾値温度Tth未満である場合(S303:NO)、昇温工程が継続される。一方、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となった場合(S303:YES)、計時部75により、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってからの時間の計測が開始される(S304)。
【0080】
そして、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってから第2時間が経過したか否かが判断される(S305)。第2時間は、例えば5分である。容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってから第2時間が経過していない場合(S305:NO)、沸騰検知部74によって、空間温度センサ16によって測定された調理空間50の空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上であるか否かが判断される(S306)。
【0081】
一方、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってから第2時間が経過した場合(S305:YES)、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第2温度T2に設定する(S307)。そして、空間温度センサ16によって測定された調理空間50の空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上であるか否かを判断する(S306)。空間温度Tsが沸騰検知温度Tb未満である場合(S306:NO)、ステップS305に戻り、以降の処理を繰り返す。
【0082】
そして、空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合(S306:YES)、沸騰検知部74は、被調理物の沸騰を検知したと判断する。以降のステップS308~S310の処理は、実施の形態1と同様のステップS8~S10の処理と同じである。これにより、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってから第2時間が経過していない場合は、空間温度Tsと第1温度T1とが比較される。一方、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってから第2時間が経過した場合は、空間温度Tsと第2温度T2とが比較される。
【0083】
以上のように、変形例3の加熱調理器100においては、容器温度Tcが閾値温度Tth以上となってから第2時間が経過したことを変更条件とし、変更条件が満たされた場合は、沸騰検知温度Tbを低い温度に変更する。これにより、状況に応じて沸騰検知を適切に行うことができ、ユーザが意図した調理結果を得ることができる。
【0084】
(変形例4)
また、被調理物にとろみがある場合も、沸騰時の蒸気放出が少なく、沸騰を検知しにくい。そのため、ユーザが操作部14を介して「とろみあり」と指定できる構成とし、沸騰検知部74は、被調理物にとろみがある場合に、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定してもよい。又は、肉の加熱を行う場合、もしくは煮崩れしやすい調理を行う場合など、弱い沸騰でも加熱可能なメニューが選択された場合は、沸騰検知温度Tbを第2温度T2に設定してもよい。
【0085】
(変形例5)
また、実施の形態1及び変形例1~4では、沸騰検知温度Tbを、第1温度T1又は第2温度T2の何れかに設定することとしたが、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを3段階以上に変更してもよい。例えば、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第2温度T2に設定した後に、第3時間(例えば5分)が経過しても沸騰が検知されない場合は、沸騰検知温度Tbを第2温度T2よりも低い第3温度T3に変更して、沸騰検知を行ってもよい。そして、沸騰が検知されるまで、沸騰検知温度Tbの低下を繰り返してもよい。
【0086】
又は、加熱調理器100が実施可能な自動調理メニューごとに、各メニューの水分量に応じた異なる沸騰検知温度Tbを予め記憶部71設定しておいてもよい。沸騰検知部74は、自動調理メニューが選択されると、選択された調理メニューに応じた沸騰検知温度Tbを記憶部71から取得し、沸騰検知の判断に用いる。これにより、調理の仕上がりをより安定させることができる。
【0087】
(変形例6)
また、実施の形態1及び変形例1~5では、変更条件が満たされる場合に、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定したが、変更条件が満たされる場合に、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも高い第4温度T4に設定してもよい。例えば、攪拌又は軟化のために強い沸騰が必要なメニューが選択された場合、沸騰検知部74は、沸騰検知温度Tbを第1温度T1よりも高い第4温度T4に設定してもよい。
【0088】
実施の形態2.
図8は、実施の形態2に係る加熱調理器100Aの概略構成を示す断面模式図である。実施の形態2の加熱調理器100Aは、空間温度センサ16に替えて中間温度センサ17を備える点において、実施の形態1と相違する。以下、実施の形態1との相違点について説明し、実施の形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0089】
本実施の形態の中間温度センサ17は、外蓋11に取り付けられ、内蓋12を貫通し、本体1の上面よりも下方に突出して設けられている。中間温度センサ17は、鍋状容器5の底面よりも上方であって、蓋体10よりも下方に配置された感温部を有し、被調理物に近い空間の空間温度Tsを測定する。これにより、中間温度センサ17は、蒸気が発生した場合に、速やかに蒸気に対応する空間温度Tsを測定することができる。沸騰検知部74は、中間温度センサ17で測定された空間温度Tsが沸騰検知温度Tb以上となった場合に沸騰を検知する。
【0090】
中間温度センサ17は、水中に埋もれてしまうと沸騰を検知することができないため、ユーザによって被調理物に触れないように配置される。又は、モータを有する駆動部によって、中間温度センサ17の感温部を蓋体10内に収納される位置と、被調理物の近くの位置とに移動可能な構成とし、加熱調理の際に、被調理物に触れない位置まで自動的に下降させてもよい。
【0091】
以上のように、本実施の形態の加熱調理器100Aでは、被調理物に近い位置の空間温度Tsに基づいて沸騰を検知したか否かを判断することで、状況に応じて沸騰検知を適切に行うことができる。これにより、調理時間の長時間化、及び被調理物の過加熱を抑制し、ユーザが意図した調理結果を得ることができる。
【0092】
なお、中間温度センサ17の感温部を移動可能な構成とした場合、沸騰検知温度Tbの変更条件に応じて、中間温度センサ17の感温部の位置を変更してもよい。具体的には、変更条件が満たされる場合は、中間温度センサ17を下降させて被調理物に近い空間の温度を測定し、変更条件が満たされない場合は、中間温度センサ17を蓋体10内に収納した状態で、内蓋12に近い空間の温度を測定してもよい。
【0093】
又は、加熱調理器100Aは、実施の形態1の空間温度センサ16と、実施の形態2の中間温度センサ17との両方を備えてもよい。そして、沸騰検知温度Tbの変更条件が満たされる場合は、中間温度センサ17により測定した温度を空間温度Tsとし、変更条件が満たされない場合は、空間温度センサ16により測定された温度を空間温度Tsとして、沸騰検知温度Tbと比較してもよい。
【0094】
また、加熱調理器100Aは、実施の形態1の空間温度センサ16と、実施の形態2の中間温度センサ17との両方を備えることで、被調理物の沸騰の強さを検出して加熱を調整することができる。例えば、上記の減圧調理を実施する場合であって、調理空間50の密閉性が経年劣化又は異物のはさまり等により低下していた場合、調理空間50の圧力が十分に下がらずに沸騰が弱まる場合がある。そこで、同じ制御で調理しているにもかかわらず、沸騰が弱いことを検知することができれば、経年劣化又は密閉性の低下をユーザに報知して、部品の交換又は確認を促すことができる。
【0095】
また、被調理物によって同じ加熱量であっても沸騰の強さは異なる。実施の形態1の空間温度センサ16と、実施の形態2の中間温度センサ17とを使用して沸騰の強さを詳細に検出することで、加熱量のみを変更するよりも繊細に沸騰の強さを調整することもできる。これにより、優しい沸騰による煮崩れの抑制もしくは香りの保持、又は強い沸騰による軟化促進もしくは粘度の高い食材の攪拌などにも対応することができる。
【0096】
沸騰の強さは、沸騰検知部74により検出される。具体的には、沸騰検知部74は、中間温度センサ17により測定された空間温度Ts1が沸騰検知温度Tbに達しているが、空間温度センサ16により測定された空間温度Ts2が沸騰検知温度Tbに達していない場合、沸騰の強さを「弱」とする。また、沸騰検知部74は、中間温度センサ17により測定された空間温度Ts1と、空間温度センサ16により測定された空間温度Ts2との両方が沸騰検知温度Tbに達している場合は、沸騰の強さを「強」とする。又は、沸騰検知部74は、空間温度センサ16により測定された空間温度Ts2が中間温度センサ17により測定された空間温度Ts1よりも小さい場合に沸騰の強さを「弱」とし、空間温度センサ16により測定された空間温度Ts2と中間温度センサ17により測定された空間温度Ts1とが同じ場合に沸騰の強さを「強」としてもよい。
【0097】
以上が実施の形態の説明であるが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、本開示は、上記実施の形態に示す構成のうち、組合せ可能な構成のあらゆる組合せを含むものである。例えば、上記実施の形態の加熱調理器100は、調理空間50を減圧するための吸排気機構を備える構成としたが、加熱調理器100は吸排気機構を備えていなくてもよい。
【0098】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0099】
(付記1)
本体と、
前記本体に収容される鍋状容器と、
前記鍋状容器を覆う蓋体と、
前記鍋状容器を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御する制御部と、
前記鍋状容器内の調理空間の温度である空間温度を測定する空間温度センサと、を備え、
前記制御部は、前記空間温度センサにより測定された前記空間温度が沸騰検知温度以上となった場合に、前記鍋状容器内の被調理物の沸騰を検知する沸騰検知部を有し、
前記沸騰検知部は、
前記沸騰検知温度を変更する変更条件が満たされない場合、前記沸騰検知温度を第1温度に設定し、
前記変更条件が満たされた場合、前記沸騰検知温度を前記第1温度よりも低い第2温度に設定する加熱調理器。
(付記2)
前記沸騰検知部は、前記被調理物の水分量が標準量よりも少ない場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する付記1に記載の加熱調理器。
(付記3)
前記被調理物の前記水分量は、ユーザにより入力される付記2に記載の加熱調理器。
(付記4)
前記沸騰検知部は、ユーザにより設定された自動調理メニュー、食材の種類もしくは量、調味液の種類もしくは量、及び食材の保存状態の少なくとも何れか1つに基づいて前記水分量を判断する付記2に記載の加熱調理器。
(付記5)
前記鍋状容器の温度である容器温度を測定する底面温度センサをさらに備え、
前記沸騰検知部は、前記容器温度の時間変化から前記水分量を算出する付記2に記載の加熱調理器。
(付記6)
前記沸騰検知部は、昇温工程中に前記蓋体が開放された場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する付記1~5の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記7)
前記調理空間を減圧する吸排気機構をさらに備え、
前記沸騰検知部は、前記調理空間の減圧を開始してから第1時間が経過しても前記空間温度が前記沸騰検知温度に達しない場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する付記1~6の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記8)
前記鍋状容器の温度である容器温度を測定する底面温度センサをさらに備え、
前記沸騰検知部は、
前記容器温度が予め設定された閾値温度以上となってから第2時間が経過しても前記空間温度が前記沸騰検知温度に達しない場合に前記変更条件が満たされたと判断し、前記沸騰検知温度を前記第2温度に設定する付記1~7の何れか一つに記載の加熱調理器。
(付記9)
前記沸騰検知温度は前記調理空間の圧力の飽和蒸気温度よりも低い付記1~8の何れか一つに記載の加熱調理器。
【符号の説明】
【0100】
1 本体、2 容器カバー、3 加熱部、4 底面温度センサ、4a 圧縮バネ、5 鍋状容器、6 ヒンジ部、7 制御部、10 蓋体、11 外蓋、12 内蓋、12a 蓋パッキン、12b 通気孔、13 経路パッキン、14 操作部、15 表示部、16 空間温度センサ、17 中間温度センサ、21 減圧ポンプ、22 経路切替弁、23 カートリッジ、23a 通気口、24 開閉弁、25 蒸気排出弁、26 圧力センサ、27 結露導管、28 露受け、31 減圧経路、32 第1排出経路、33 第2排出経路、34 第3排出経路、35 蓋内通路、50 調理空間、71 記憶部、72 加熱制御部、73 吸排気制御部、74 沸騰検知部、75 計時部、100、100A 加熱調理器。