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特開2024-17938被計量者の後退を検知して報知する大型体重計および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017938
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】被計量者の後退を検知して報知する大型体重計および方法
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/50 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
G01G19/50 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120915
(22)【出願日】2022-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】古和 勉
(57)【要約】
【課題】被計量者の踏面での後退を検知して報知する大型体重計とその方法に関する。
【解決手段】被計量者が載る矩形状の計量台、前記計量台の四隅に配置された計量センサと、前記計量センサの出力値に基づいて前記被計量者の計量値を算出する制御部と、を備えた、前記被計量者が前記計量台の踏面を移動可能な大型体重計において、前記計量台の前辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第1合計値と、前記計量台の後辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第2合計値と、全ての前記計量センサの出力値の第3合計値とに基づいて、前記被計量者の移動方向を検知し、後退を検知した場合には報知を行う検知部とを備えたことを特徴とする大型体重計を提供する。計量センサの出力値から被計量者の移動方向が検知される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量者が載る矩形状の計量台と、
前記計量台の四隅に配置された計量センサと、
前記計量センサの出力値に基づいて前記被計量者の計量値を算出する制御部と、
を備えた、前記被計量者が前記計量台の踏面を移動可能な大型体重計において、
前記計量台の前辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第1合計値と、前記計量台の後辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第2合計値と、全ての前記計量センサの出力値の第3合計値とに基づいて、前記被計量者の移動方向を検知し、後退を検知した場合には報知を行う検知部と、
を備えたことを特徴とする大型体重計。
【請求項2】
前記検知部は、前記第3合計値が所定時間安定した後に、前記第1合計値から前記第2合計値を引いた値と、前記第3合計値との比率が、所定値以上減少した場合、後退と判定して報知を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の大型体重計。
【請求項3】
被計量者を載せる矩形状の計量台の四隅に計量センサが配置された、前記被計量者が前記計量台の踏面を移動可能な大型体重計による、前記被計量者の後退を検知して報知する方法であって、
前記計量台の前辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第1合計値と、前記計量台の後辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第2合計値と、全ての前記計量センサの出力値の第3合計値とを算出し、
前記第3合計値が所定時間安定した後に、前記第1合計値から前記第2合計値を引いた値と、前記第3合計値との比率から移動方向を検知し、前記比率が所定値以上に減少した場合、後退と判定して報知を行う、
ことを特徴とする被計量者の後退を検知して報知する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、被計量者が踏面を移動可能な大型体重計に関し、特に被計量者の踏面での後退を検知して報知する大型体重計とその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院や介護施設などでは、車椅子に乗ったまま計量台に乗り上げたり、脚を高く上げることなく直接計量台に乗って計量できるように、手すりやスロープが付属した薄型の大型体重計が使用されている(例えば特許文献1、特許文献2)。歩行可能な被計量者は、手すりを掴んでスロープを上がって計量台に乗り上げて体重を計測し、車椅子に乗った被計量者は、自身でスロープを上がって車椅子ごと計量台に乗り上げて体重を計測する。計量を終えた後は、そのまま前方へと歩いて、または車椅子に乗ったまま前進して、計量台を降りる。スロープや手すりは計量台に一対だけ設けられており、被計量者は進行方向を認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-112359号
【特許文献2】特開平11-211550号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被計量者の中には、計量後に前進して計量台を降りるのではなく、後退して計量台を降りようとする者もいる。車椅子や歩行補助器具を使用している者がスロープを後退しようとすることは、足元の状態が確認できず転倒する可能性があり、非常に危険である。特許文献2では、被計測者の位置を複数の位置センサで検知しているが、被計量者の位置を把握して表示器を追従させるだけであるうえ、追加装置が極めて大がかりとなる。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、被計量者の移動方向、特に後退を検知して危険を報知する体重計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示のある態様においては、被計量者が載る矩形状の計量台と、前記計量台の四隅に配置された計量センサと、前記計量センサの出力値に基づいて前記被計量者の計量値を算出する制御部と、を備えた、前記被計量者が前記計量台の踏面を移動可能な大型体重計において、前記計量台の前辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第1合計値と、前記計量台の後辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第2合計値と、全ての前記計量センサの出力値の第3合計値とに基づいて、前記被計量者の移動方向を検知し、後退を検知した場合には報知を行う検知部とを備えたことを特徴とする大型体重計を提供する。
【0007】
上記態様によれば、計量に用いる計量センサの出力値から被計量者の移動方向が検知される。特別な機器の追加をすることなく、被計量者の体重を計測するとともに、移動方向を検知できる。被計量者の後退が検知された場合には報知を行うことで、被計量者の後退による転倒のリスクを抑制できる。
【0008】
また、ある態様においては、前記検知部は、前記第3合計値が所定時間安定した後に、前記第1合計値から前記第2合計値を引いた値と、前記第3合計値との比率が、所定値以上減少した場合、後退と判定して報知を行うものとした。
【0009】
また、本開示のある態様における被計量者の後退を検知して報知を行う方法においては、被計量者を載せる矩形状の計量台の四隅に計量センサが配置された、前記被計量者が前記計量台の踏面を移動可能な大型体重計を用いて、前記被計量者の後退を検知して報知を行う方法であって、前記計量台の前辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第1合計値と、前記計量台の後辺に配置された一対の前記計量センサの出力値の第2合計値と、全ての前記計量センサの出力値の第3合計値とを算出し、前記第3合計値が所定時間安定した後に、前記第1合計値から前記第2合計値を引いた値と、前記第3合計値との比率から移動方向を検知し、前記比率が所定値以上に減少した場合、後退と判定して報知を行うように構成した。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、被計量者の後退を検知して報知する体重計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の構成の好適な実施形態に係る体重計の斜視図を示す。
図2】同体重計の背面図である。
図3】同体重計の平面図である。
図4】同体重計の制御ブロック図である。
図5】同体重計を用いた計量フローである。
図6】試験データのグラフであり、出力値を示す。
図7】試験データのグラフであり、第1合計値および第2合計値を示す。
図8】試験データのグラフであり、前後率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の構成の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
(実施形態)
本開示の構成に係る好ましい実施形態を図面に従って説明する。図1は実施形態に係る体重計100の斜視図である。図2は体重計100の正面図である。図3は体重計100の平面図である。図4は体重計100の制御系のブロック図である。
【0014】
図1に示すように、体重計100は大型体重計であり、被計量者がそのまま乗り上げて体重を計測するだけでなく、被計量者が車椅子に乗ったままでも体重を計測することができるように構成される。
【0015】
体重計100は、被計量荷重が載加される計量台20、脚8、手すり6、および表示器10を有する。
【0016】
計量台20は大きな矩形状に形成されており、被計量者が安全に乗り上げるため、踏面となる上面が広く、かつ全体が薄く構成される。計量台20は、十分な剛性を有する構造となっており、例えば、ハニカム状の補強板(不図示)を鉄製の枠体と鉄板とで挟み込むことによって構成されている。
【0017】
車椅子に乗った被計量者が、車椅子のまま計量台20に乗り上げることができるように、計量台20の前辺には前方スロープ18が、計量台の後辺には後方スロープ19が、それぞれ設けられている。前方スロープ18および後方スロープ19は、床面に連なる緩勾配のスロープであり、それぞれの表面には滑り止めが取り付けられており、被計量者が乗り降りの際に滑らないように構成されている。計量台20の踏面は、被計量者が移動可能な大きさに構成されており、車椅子に乗った被計量者も安全に乗り上げ、踏面で停止できるのに十分な大きさとなっている。
【0018】
計量台20の左右両端には、左サイドバー22および右サイドバー24が連結されている。各サイドバー22,24は中空の柱状に形成されており、その内部に配線や電子基板などが収納されている。サイドバー22,24の上面には、歩行困難な被計量者が捕まり立ちできるように、手すり6が取り付けられている。
【0019】
また、サイドバー22、24のうち、一方のサイドバー(本実施形態においては、右サイドバー24)の上面には、手すり6の傍にポール30が着脱自在に、かつ回動自在に取り付けられている。ポール30は、垂直に起立した後、湾曲して水平になっており、その先端に表示器10が取り付けられている。
【0020】
図3に示すように、本実施形態においては、右サイドバーの上面前方にポール30が取り付けられており、ポール30の水平部は、前方へ向けて配置され、計量台20の右辺と平行となるように、角度を調整されている。手すり6や前方スロープ18、後方スロープ19、およびポール30などの配置から、図3の太矢印で示すように、被計量者は、計量時の移動方向は計量台20の前後方向であると判断できるようになっている。
【0021】
表示器10には、表示画面34および入力部36が設けられている。表示画面34は、例えば液晶ディスプレイである。表示画面34は、設定条件や計量結果、後述する被計量者の移動方向などのデータ、およびその他設定に必要な表示などを表示する。
【0022】
入力部36は、例えばキースイッチである。計量者は、このキースイッチから、「風袋引き」「計量値の出力」「ゼロ点リセット」など、各種設定や指令を行うことができる。なお、表示画面34と、入力部36とを一体的に構成して、タッチパネル式の入力部36として設けてもよい。
【0023】
表示器10の内部には、様々な演算処理を行うための制御部38や電源(電池など)40も設けられている。図4に示すように、表示器10は、発光形態により状態を示すLEDや、ブザー、音声を流すスピーカーなどの情報報知手段である報知部37をさらに備えている。表示画面34に報知情報を表示させ、表示画面34が報知部37を兼ねる形態でもよい。
【0024】
各サイドバー22,24の下面に脚8が設けられている。脚8は、各サイドバー22,24の両端、すなわち計量台20の各コーナー部に配置されている。各脚8とサイドバー22,24の間には、計量センサ42a~42dが設けられており、この計量センサ42a~42dを介して計量台20が支持されている。
【0025】
ここで、体重計100の奥行側を前方、手前側を後方として、左サイドバー22の前方(計量台20の左前)に設けられた第1計量センサ42a、左サイドバー22の後方(計量台20の左後)に設けられた第2計量センサ42b、右サイドバー24の前方(計量台20の左前)に設けられた第3計量センサ42c、右サイドバー24の後方(計量台20の左後)に設けられた第4計量センサ42dについて、特に指定の無い場合は、これらをまとめて計量センサ42と称する。
【0026】
計量センサ42は、計量台20にかかる荷重を計測するセンサであり、例えばロードセルが用いられる。計量センサ42a~42dは、それぞれ個別に出力を行い、それをアンプ44a~44dで増幅し、表示器10内の制御部38に送信できるようになっている。計量センサ42の構成は特に限定されるものではなく、例えばロードセルが用いられる。図示は省略するが、計量センサ42の具体的な構成としては、ロバーバル型ロードセルの起歪体の4つの薄肉部に四つのゲージが貼り付けられ、この4つのゲージがブリッジ回路を構成するように接続されておりそれぞれの出力値(計量値への換算や演算処理をしていないデータ)を制御部38で判断できるようになっている。計量センサ42の構成のみならず、起歪体の形状も、特に限定されるものではなく、コラム型、ロバーバル型、リング型など、従来周知の構成を用いてよい。
【0027】
制御部38は、少なくともCPUおよびメモリを集積回路に実装したマイクロコンピュータであり、メモリに収納されたプログラムに基づき、演算処理を行う。主として、制御部38は、計量センサ42a~42dからの出力値W1~W4に基づいて、計量台20上の被計量物の計量値を算出し、計量値を表示画面34に表示するように制御する。
【0028】
体重計100は、計量台20に乗り上げた被計量者の移動方向を検知する移動方向検知部39を有する。移動方向検知部39は、制御部38のメモリにプログラムとして収納されており、制御部38にソフトウェア的に構成されている。制御部38に入力された計量センサの出力値や、メモリ内のデータなども移動方向検知部39に提供される。
【0029】
移動方向検知部39は、計量センサ42a~42dの出力値W1~W4に基づき、演算処理を行い、被計量者が後退していると判断した場合には、これを表示画面34や報知部37により音や光によって報知して、被計量者に危険を知らせる。
【0030】
(検知方法)
移動方向検知部39は、計量台20の前辺に配置された一対の計量センサ42a,42cの出力値W1,W3の合計値である第1合計値S1と、後辺に配置された一対の計量センサ42b,42dの出力値W2,W4の合計値である第2合計値S2と、全ての計量センサ42a~42dの合計値である第3合計値S3に基づいて、被計量台20に乗り上げた被計量者の移動方向、特に後退を検知する。具体的には、移動方向検知部39は、まず第1合計値S1、第2合計値S2、第3合計値S3を演算し、第1合計値S1と第2合計値S2との差分値の第3合計値S3に対する比率として前後率R1を算出する。前後率R1が増加した場合には、被計量者は踏面を前進したと判断され、減少した場合には被計量者は後退したと判断される。
【0031】
まず、被計量者が体重計測のために、計量台20の後辺に設けられた後方スロープ19から乗り上げ、踏面で静止すると、計量センサ42の出力値は安定し、出力値から被計量者の体重が算出される。
【0032】
計量後、被計量者が、そのまま前進して計量台20の前辺に設けられた前方スロープ18から降りるため、踏面を前方へ移動すると、前後率R1は増加し始める。逆に、計量者が後退し、乗り上げるために使用した後方スロープ19から降りようと踏面で後退すると、前後率R1は減少し始める。
【0033】
移動方向検知部39は、計量後に、前後率R1が減少した場合、または所定値以上に減少した場合、報知部37または表示画面34で直ちに報知を行い、被計量者に危険を知らせる。報知方法は、例えば、表示画面34にアラートを表示させたり、報知部37で音や音声を発したり、光(LED)を点灯または点滅させるなどである。被計量者自身にいち早く危険を知らしめ、後退動作を止めさせるため、報知方法は、光だけでなく、音を発すると好ましい。
【0034】
体重計測時、即ち、第3合計値S3が所定時間安定した状態における前後率R1を基準として、そこから前後率R1がプラスとなれば前進、マイナスとなれば後退と判定してもよい。計測時の静止状態から移動のための予備動作を考慮して、判定値を設け、前後率R1が判定値以上減少した場合(例えば0.01~0.1)に、後退と判定するように構成してもよい。
【0035】
(制御フロー)
図5は、体重計100の制御フローの一例を示している。
【0036】
図5に示すように、まずステップS101で、体重計100に電源が投入される。
【0037】
次に、ステップS102に移行して、ゼロ点リセットや風袋引きなどの設定がなされる。風袋引きが行われる場合には、衣装や車椅子などの差し引く質量分の数値が設定される。
【0038】
次に、ステップS103に移行し、被計量者が体重計100に乗る。被計量者が車椅子に乗っている場合は、後方スロープ19を使い、車椅子ごと計量台20の上に乗り上げる。
【0039】
次に、ステップS104に移行し、計量センサ42a~42dが荷重を計測する。
【0040】
次に、ステップS105に移行し、制御部38が、出力値W1~W4を基に、被計量者の体重を算出して、表示画面34に表示させる。所定時間安定した出力値W1~W4を確定値として、表示画面34に固定表示する。
【0041】
次に、ステップS106に移行し、移動方向検知部39が、ステップS105から、前後率R1が減少したか否かを判断する。換言すれば、計量台20上の被計量者が踏面を後退したか否かが判断される。具体的には、前辺の一対の計量センサ42a,42cの出力値の和(第1合計値S1)から、後辺の一対の計量センサ42b,42dの出力値の和(第2合計値S2)を引いて差分値を算出し、これを全出力値の和(第3合計値S3)で除算して算出される。ステップS105の前後率R1を基準として、そこから前後率R1が増加すれば被計量者は前進した、前後率が減少すれば被計量者は後退したこととなる。前後率R1が減少した場合、被計量者は後退しているとして、ステップS107へ移行する。前後率R1が減少していない場合、計量フローは終了となる。前後率R1が所定値以上減少した場合に後退と判断してもよい。
【0042】
前後率R1が減少した場合、ステップ107に移行し、報知部37により音や光で直ちに危険が報知される。
【0043】
上記の如く構成された体重計100により、計量後の被計量者の計量台20における移動方向が検知され、被計量者が踏面を後退すると、危険が報知される。
【0044】
体重計100などの、家庭用体重計よりも大型な体重計は、主として医療現場や介護施設などで使用されるため、被計量者は、杖などの歩行補助器具を使用したり、車椅子に乗っている場合も多い。被計量者の体重を計測することから、被計量者は一人で計量台20の踏面に上がり静止することとなる。計量後、被計量者が計量台の踏面を後退すると、下りのスロープを足元が見えない状態で降りることになり、転倒の可能性があり、非常に危険である。また、介護施設などでは、入居者が集団で体重を計測する場合もあり、後退して計量台を降りると、順番を待っていた他者に意図せずぶつかってしまい、双方が怪我を負ってしまう危険もある。特に被計量者が車椅子に乗っている場合、後退してスロープにかかると、そのまま下りのスロープを滑り落ちてしまうため、意図せぬ動きに被計量者が慌てて転倒してしまうことや、勢いをつけて他者に追突してしまうことがあり、より危険度が増す。体重計100により、被計量者の後退が検知され、上記の事故の発生が抑制される。
【0045】
体重を計測する流れでそのまま移動方向を知ることができ、体重計測後という判定のタイミングも出力値から知ることができる。被計量者が一人で移動しなくてはならない体重の計測においての、安全性を確保できる。
【0046】
体重を計測するための計量センサ42を利用して、被計量者の移動方向を検知しており、特別な機器を追加することなく、移動方向を容易に知ることができる。従来からある4つの計量センサを備えた体重計に、移動方向検知部39を追加して体重計100を構成することもできる。既にある体重計にプログラムとして移動方向検知部39を後付けすることも可能であり、専用の機器を導入するより、低コストで容易に後退検知機能を実装することができる。後退が検知された場合には報知を行うことで、被計量者の後退による怪我や事故発生のリスクを抑制できる。
【0047】
(試験データ)
図6図8は、実際に試験を実施し、被計量者が車椅子に乗ったまま体重計100に乗降して取得したデータを示す。比較試験として、被計量者が計量後に踏面を前進した場合と、後退した場合の両方の試験を行い、データを取得した。
【0048】
図6は、試験により取得した計量センサ42a~42dの出力値W1~W4を示すグラフである。横軸は経過時間を示す。図6(A)は、被計量者が体重計100の後方から前進し、後方スロープ19から計量台20に乗り上げ、体重を計測し、計測後、そのまま前進して前方スロープ18から降りた場合の計測データである。図6(B)は、被計量者が体重計100の後方スロープ19から計量台20に乗り上げ、体重を計測し、計測後、踏面を後退し、乗り上げた後方スロープ19から降りた場合の計測データである。
【0049】
図7は、図6で取得した出力値W1~W4を基に算出した第1合計値S1および第2合計値S2である。図6(B)および図7(B)においては、後退開始時を点線で示す。
【0050】
図8は、図6で取得したデータを基に算出した前後率R1である。1つのグラフに被計量者前進と被計量者後退の両方のケースをまとめて示した。計量時の前後率R1および時間を基準として合わせている。縦軸の前後率R1はパーセント表示となっている。
【0051】
図6に示すように、被計量者が体重計100の後方から前進して、後方スロープ19から計量台20へ乗り上げると、計量センサ42a~42dが荷重を計測し始める。後方から乗り上げるため、計量台20の後辺に配置された一対の計量センサ42b,42dの出力値W2,W4がいずれも最初は大きく検知される。計測開始直後は出力値W1~W4がばらつくが、被計量者が計量台20の踏面に静止するとともに、出力値W1~W4は収束する。計量センサ42の計測値が所定時間安定すると、その値を基に被計量者の体重が算出され、表示画面34に表示される。
【0052】
図7(A)に示すように、計量後、被計量者が計量台20の前方スロープ18から降りるために前進すると、計量台20の前辺に設けられた一対の計量センサ42a,42cの出力値合計である第1合計値S1の値は増加し、後辺に設けられた一対の計量センサ42b,42dの出力値合計である第2合計値S2が減少する。
【0053】
これに対し、図7(B)に示すように、計量後、被計量者が計量台20の後方スロープ19から降りようと後退すると、第1合計値S1は減少し、第2合計値S2は増加する。
【0054】
図8に示すように、前後率R1は、体重計測時を基準とすると、被計量者が前進した場合、増加し続け、被計量者が後退した場合、減少し続ける。
【0055】
(変形例)
本実施形態においては、ポール30が設置されている方向を前方として、被計量者は後方から計量台20に乗り上げ、前方から降りるものとしたが、これに限られない。体重計100を設置する場所のレイアウトから、進行方向を逆として、前方スロープ18から計量台20に乗り上げ、後方スロープ19から降りるようにした場合でも、後退(乗り上げた前方スロープ18から降りようとする行動)を検知できるように構成してもよい。この場合、入力部36で設定する、もしくは出力値W1~W4から侵入方向を自動で判定する。この場合、移動方向検知部39は、計量後に前後率R1が減少すると被計量者は前進、前後率R1が増加すると被計量者は後退と判定する。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
20 :計量台
38 :制御部
39 :移動方向検知部(検知部)
42 :計量センサ
100 :体重計
S1 :第1合計値
S2 :第2合計値
S3 :第3合計値
R1 :前後率(比率)
W1~W4 :出力値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8