(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179388
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】金属積層造形装置および金属積層造形方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20241219BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241219BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241219BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241219BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098201
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】白瀬 隆史
(72)【発明者】
【氏名】遠山 健
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 一哉
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA34
4E168BA35
4E168BA81
4E168CB03
4E168CB07
4E168EA17
4E168FB03
(57)【要約】
【課題】溶融池およびシールドガスを一定の状態に保ち、肉盛高さおよび造形形状を安定させることができる金属積層造形装置を得ること。
【解決手段】金属積層造形装置10は、照射ヘッド21からレーザビームを造形物7に照射しながら、ワイヤノズル41を介してワイヤ42を繰り出して肉盛溶接することにより三次元の造形物7を形成する。ワイヤノズル回転駆動部54は、ワイヤノズル41を照射ヘッド21の中心軸23回りに回転する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射ヘッドからレーザビームを造形物に照射しながら、ワイヤノズルを介してワイヤを繰り出して肉盛溶接することにより三次元の前記造形物を形成する金属積層造形装置において、
前記ワイヤノズルを前記照射ヘッドの中心軸回りに回転する第1機構を備えた
ことを特徴とする金属積層造形装置。
【請求項2】
前記ワイヤが造形の進行方向の前側から供給されるよう、前記第1機構を回転駆動する制御装置を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の金属積層造形装置。
【請求項3】
前記ワイヤを前記ワイヤノズルに供給するワイヤ供給機を備え、
前記第1機構は、前記ワイヤ供給機および前記ワイヤノズルを前記照射ヘッドの中心軸回りに回転する
ことを特徴とする請求項1に記載の金属積層造形装置。
【請求項4】
前記第1機構は、
前記ワイヤノズルを支持するワイヤノズル支持部と、
前記ワイヤノズル支持部を前記照射ヘッドの中心軸回りに回転駆動するワイヤノズル回転駆動部と、
を備え、
ワイヤ供給機に接続されるワイヤチューブは前記中心軸の上方から前記ワイヤノズル回転駆動部に入り、
前記ワイヤノズル支持部の内部構造を介して前記ワイヤノズルに接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金属積層造形装置。
【請求項5】
前記ワイヤノズルの角度は、調整可能である
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一つに記載の金属積層造形装置。
【請求項6】
造形方向を時計回りと反時計回りとに交互に変えながら一層ずつ積層するよう制御する制御装置を備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の金属積層造形装置。
【請求項7】
照射ヘッドからレーザビームを造形物に照射しながら、ワイヤノズルを介してワイヤを繰り出して肉盛溶接することにより三次元の前記造形物を形成する金属積層造形方法において、
前記ワイヤが造形の進行方向の前側から供給されるよう、前記照射ヘッドの移動方向に応じて前記ワイヤノズルを前記照射ヘッドの中心軸回りに回転する
ことを特徴とする金属積層造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザビームを用いた金属積層造形装置および金属積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の造形方法として、付加製造(Additive Manufacturing:AM)による金属積層造形という方法がある。特許文献1には、レーザビームを造形物に照射しながら金属材料(粉末またはワイヤ)を熔融溜りに供給して肉盛溶接することにより、所望の三次元造形物を得る金属積層造形の方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザを用いた金属積層造形装置において、所望の三次元造形物を得るためには、照射ヘッドは水平平面を自由に移動する必要がある。しかしながら、ワイヤの供給方向が造形する方向に関わらず固定であると、溶融池(熔融溜り)およびシールドガスを一定の状態に保つことが難しく、肉盛高さがばらつき、造形形状が安定しない問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、溶融池およびシールドガスを一定の状態に保ち、肉盛高さおよび造形形状を安定させることができる金属積層造形装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の金属積層造形装置は、照射ヘッドからレーザビームを造形物に照射しながら、ワイヤノズルを介してワイヤを繰り出して肉盛溶接することにより三次元の造形物を形成する金属積層造形装置において、ワイヤノズルを照射ヘッドの中心軸回りに回転する第1機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の金属積層造形装置によれば、溶融池およびシールドガスを一定の状態に保ち、肉盛高さおよび造形形状を安定させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1にかかる金属積層造形装置の構成を示す図
【
図2】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の造形方法(その1)を説明するための図
【
図3】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の造形方法(その2)を説明するための図
【
図4】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の造形方法(その3)を説明するための図
【
図5】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の造形方法(その4)を説明するための図
【
図6】実施の形態1にかかる金属積層造形装置において、照射ヘッドが造形物に対して移動しない場合の造形物の温度分布を示す平面図
【
図7】実施の形態1にかかる金属積層造形装置において、照射ヘッドが造形物に対して移動する場合の造形物の温度分布を示す平面図
【
図8】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の他の造形方法(その1)を説明するための図
【
図9】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の他の造形方法(その2)を説明するための図
【
図10】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の他の造形方法(その3)を説明するための図
【
図11】実施の形態1にかかる金属積層造形装置による三次元造形物の他の造形方法(その4)を説明するための図
【
図12】実施の形態3にかかる金属積層造形装置の構成を示す図
【
図13】実施の形態4にかかる金属積層造形装置の構成を示す図
【
図14】実施の形態5にかかる金属積層造形装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる金属積層造形装置および金属積層造形方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10の構成を示す図である。金属積層造形装置10は、レーザ発振器2と、レーザビーム照射装置20と、ワイヤ供給装置40と、ガス供給装置30と、ステージ61と、ヘッド駆動装置5と、ステージ駆動装置6と、制御装置1と、を備える。金属積層造形装置10は、ステージ61上の不図示の基材上に金属の材料を溶融させ、溶融した金属の層である造形層を積層させて造形物7を形成する。具体的には、金属積層造形装置10は、金属の材料であるワイヤ42を下地である被加工物の一部とともに溶融させて溶融池71を形成し、溶融池71を固化させたビードと呼ばれる造形層を被加工物に形成する。このように、金属の材料による造形層を被加工物上に堆積させて、造形層を被加工物の表面に形成し、造形物7を形成する。
図1において、Z方向は鉛直方向であり、X方向およびY方向はZ方向に直交する。
【0011】
レーザビーム照射装置20は、ファイバケーブル22と、X軸駆動部51と、Y軸駆動部52と、Z軸駆動部53と、照射ヘッド21と、を備える。+Z方向は上方向に、-Z方向は下方向に対応する。レーザ発振器2と照射ヘッド21とはファイバケーブル22で接続されていて、レーザ発振器2で発生したレーザビームが照射ヘッド21に導光される。照射ヘッド21から加工点である溶融池71にレーザ光が、-Z方向すなわち下方向に照射される。
【0012】
ガス供給装置30は、ガス供給機3と、ガス配管31と、ガス噴射装置32と、を備える。ガス供給機3とガス噴射装置32とはガス配管31で接続されている。ガス噴射装置32から噴射される、アルゴン、二酸化炭素などを含むシールドガスによって、高温になる溶融池71の周辺を覆うことで、大気中の酸素によって造形物7が酸化するのを防ぐ。
【0013】
ワイヤ供給装置40は、ワイヤ供給機4と、ワイヤチューブ43と、ワイヤノズル41と、内部構造として連結部55を有するワイヤノズル支持部44と、ワイヤノズル回転駆動部54と、を備える。ワイヤ42は、ワイヤ供給機4によってワイヤチューブ43およびワイヤノズル41を通って加工点に供給される。ワイヤノズル41は、ワイヤノズル支持部44によってステージ61上の造形物7に対し一定角度になるように支持されている。ワイヤノズル支持部44は連結部55を介してワイヤノズル回転駆動部54に連結されている。ワイヤノズル回転駆動部54は、矢印F1,F2で示すように、Z方向に延びる照射ヘッド21の中心軸23の回りに回転可能となっている。ワイヤノズル回転駆動部54は、制御装置1によって駆動制御される。ワイヤノズル回転駆動部54が回転することによって、ワイヤノズル支持部44によって支持されたワイヤノズル41を照射ヘッド21の中心軸23の回りに回転させることができる。ワイヤノズル回転駆動部54およびワイヤノズル支持部44が第1機構に対応する。
【0014】
照射ヘッド21、ワイヤノズル回転駆動部54、およびワイヤノズル41は、矢印K1,K2で示すように、X軸駆動部51およびY軸駆動部52によってXY平面を自由に移動することができ、Z軸駆動部53によって、矢印K3で示すように、上下方向に移動して、レーザビームを溶融池71にフォーカスすることができる。X軸駆動部51、Y軸駆動部52、Z軸駆動部53、およびワイヤノズル回転駆動部54は、ヘッド駆動装置5によって制御されている。
【0015】
造形物7はステージ61に載置固定されている。ステージ61は、Z軸回りに回転する場合と、Z軸回りおよびX軸回りに回転する場合とがあり、いずれの場合もステージ61はステージ駆動装置6によって制御されている。
【0016】
制御装置1は、レーザ発振器2、ガス供給機3、ワイヤ供給機4、ヘッド駆動装置5、およびステージ駆動装置6を統括して制御する。
【0017】
このような構成によれば、造形物7が回転し、照射ヘッド21がXYZ軸方向に移動できるので、レーザビームを造形物7の任意の位置に照射しながら金属のワイヤ42を繰り出して肉盛溶接することができ、所望の三次元造形物を形成することができる。
【0018】
次に、
図2~
図5を用いて実施の形態1にかかる三次元造形物の造形方法について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の造形方法(その1)を説明するための図である。
図3は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の造形方法(その2)を説明するための図である。
図4は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の造形方法(その3)を説明するための図である。
図5は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の造形方法(その4)を説明するための図である。
図2~
図5では、造形物7が固定された、すなわちステージ61が回転しない場合について説明する。
【0019】
図2~
図5において、造形物7は中空の四角柱であり、その水平断面は長方形となる。このような形状を金属積層造形装置10で造形する場合、造形物7の水平断面である長方形の辺に沿って照射ヘッド21を移動しながら金属のワイヤ42を繰り出して肉盛溶接することを繰り返して1層ずつ積層していく。
【0020】
図2は、造形物7の手前側の辺を左から右(X軸正方向)に向かって造形している状態を示している。照射ヘッド21は、X軸駆動部51によって左から右に移動している。制御装置1は、金属のワイヤ42が照射ヘッド21の右側、つまり造形の進行方向の前側から供給されるようにワイヤノズル回転駆動部54を制御する。
【0021】
造形が進み長方形の頂点に達すると、
図3に示すように、制御装置1は、ワイヤノズル41が照射ヘッド21の右側から照射ヘッド21の奥側に回転されるようにワイヤノズル回転駆動部54を制御する。この状態で、造形物7の右側の辺が手前から奥(Y軸正方向)に向かって造形される。照射ヘッド21はY軸駆動部52によって手前から奥に移動されており、金属のワイヤ42は照射ヘッド21の奥側、つまり造形の進行方向の前側から供給されている。
【0022】
造形が進み長方形の頂点に達すると、
図4に示すように、制御装置1は、ワイヤノズル41が照射ヘッド21の奥側から照射ヘッド21の左側に回転されるようにワイヤノズル回転駆動部54を制御する。この状態で、造形物7の奥側の辺が右から左(X軸負方向)に向かって造形される。照射ヘッド21はY軸駆動部52によって右から左に移動されており、金属のワイヤ42は照射ヘッド21の左側、つまり造形の進行方向の前側から供給されている。
【0023】
造形が進み長方形の頂点に達すると、
図5に示すように、制御装置1は、ワイヤノズル41が照射ヘッド21の左側から照射ヘッド21の手前側に回転されるようにワイヤノズル回転駆動部54を制御する。この状態で、造形物7の左側の辺が奥から手前(Y軸負方向)に向かって造形される。照射ヘッド21はY軸駆動部52によって奥から手前に移動されており、金属のワイヤ42は照射ヘッド21の手前側、つまり造形の進行方向の前側から供給されている。
【0024】
このように、制御装置1がワイヤノズル回転駆動部54を駆動制御して、ワイヤノズル41を照射ヘッド21の中心軸23の回りに回転制御とすることで、造形の進行方向が変化しても金属のワイヤ42は常に造形の進行方向の前側から供給される。これにより、溶融池71およびシールドガスの分布が一定の条件に保たれるので、造形物7の形状に関わらず常に安定した造形が可能になる。
【0025】
図6は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10において、照射ヘッド21が造形物7に対して移動しない場合の造形物7の温度分布を示す平面図である。
図7は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10において、照射ヘッド21が造形物7に対して移動する場合の造形物7の温度分布を示す平面図である。レーザビームによって与えられたエネルギーは熱となって造形物7の内部を伝導していく。その結果、照射ヘッド21が造形物7に対して移動しない場合の造形物7の温度分布は、
図6に示すように、照射ヘッド21の中心軸23に対して対称な同心円状になり、中心部の高温部分が溶融池71に対応する。
【0026】
一方、照射ヘッド21が造形物7に対して移動する場合の造形物7の温度分布は、
図7に示すように、進行方向の前側は狭い面積の分布となり、進行方向の後ろ側は広い面積の分布となるため、中心部の溶融池71も照射ヘッド21の中心軸23に対して非対称になる。また、溶融池71の酸化を防ぐためのシールドガスの分布についても、造形物7の温度分布と同様、照射ヘッド21が移動することで非対称となる。
【0027】
このように照射ヘッド21の中心軸23に対して非対称形状の溶融池71およびシールドガスの分布が存在する状況下で、金属のワイヤ42を連続的に供給して安定した肉盛溶接を実現するためには、照射ヘッド21の進行方向に対するワイヤ42の供給方向が重要であり、加工の種類に応じて最適なワイヤ42の供給方向が存在する。実施の形態1のような、中空の四角柱の造形物7を形成する場合は、進行方向の前側が最適なワイヤ42の供給方向となる。
【0028】
これに対して、ワイヤ42の供給方向が照射ヘッド21の移動方向に関わらず固定である場合は、言い換えれば、ワイヤ42の供給方向が照射ヘッド21の移動方向に追従して変化しない場合は、肉盛高さがばらつき、造形形状が安定しない。
【0029】
このため、実施の形態1では、ワイヤノズル回転駆動部54によってワイヤノズル41を照射ヘッド21の中心軸23の回りに回転可能とすることで、常に最適な供給方向からワイヤ42を供給している。
【0030】
次に、
図8~
図11を用いて実施の形態1にかかる三次元造形物の他の造形方法について説明する。
図8は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の他の造形方法(その1)を説明するための図である。
図9は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の他の造形方法(その2)を説明するための図である。
図10は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の他の造形方法(その3)を説明するための図である。
図11は、実施の形態1にかかる金属積層造形装置10による三次元造形物の他の造形方法(その4)を説明するための図である。
図8~
図11では、造形物7が回転する、すなわちステージ61がステージ駆動装置6によってZ軸回りに回転する場合について説明する。
【0031】
図8~
図11において、造形物7は中空の四角柱であり、その水平断面は長方形となる。このような形状を金属積層造形装置10で造形する場合、X軸駆動部51は動作させず、レーザビームのX軸位置はステージ61の回転軸上に固定しておく。そして、ステージ駆動装置6およびY軸駆動部52を使って、回転する造形物7の水平断面である長方形の辺に沿って照射ヘッド21を移動しながら金属のワイヤ42を繰り出して肉盛溶接することを繰り返して1層ずつ積層していく。
【0032】
図8は、時計回りに回転するステージ61に搭載された造形物7の手前側の辺を左から右(X軸正方向)に向かって造形している状態を示している。この状態では、ワイヤ42が造形の進行方向の前側から供給されている。
【0033】
造形物7の長方形の手前側の辺の中央を過ぎると、
図9に示すように、制御装置1は、Y軸駆動部52を奥から手前(Y軸負方向)に向かって移動させると同時に、ワイヤノズル回転駆動部54を時計回りに回転させて、ワイヤ42が造形物7の手前側から供給されるようワイヤノズル41を造形物7の手前側の辺に沿って平行移動させる。ただし、ステージ61がZ軸回りに回転しているので、造形の進行方向は造形物7の水平断面である長方形の辺に沿った方向であるが、照射ヘッド21の移動方向と造形の進行方向とは異なっている。
【0034】
造形が進み、レーザビームが長方形の頂点に達すると、
図10に示すように、制御装置1は、ワイヤノズル回転駆動部54を反時計回りに回転させ、ワイヤノズル41を反時計回りに回転させる。これにより、ワイヤ42の供給方向は90度方向転換される。
【0035】
さらに、レーザビームが造形物7の長方形の頂点から長方形の辺の中央に向かって進むと、
図11に示すように、制御装置1は、Y軸駆動部52を手前から奥(Y軸正方向)に向かって移動させると同時に、ワイヤノズル回転駆動部54を時計回りに回転させて、ワイヤ42が造形の進行方向の前側から供給されるようワイヤノズル41を造形物7の手前側の辺に沿って平行移動させる。
【0036】
このように、ステージ61がZ軸回りに回転する構成においても、ワイヤノズル回転駆動部54によってワイヤノズル41を照射ヘッド21の中心軸23の回りに回転可能とすることで、常に最適な造形の進行方向の前側からワイヤ42を供給している。このため、溶融池71およびシールドガスの分布が一定の条件に保たれ、造形物7の形状に関わらず安定した造形が可能になる。
【0037】
実施の形態2.
図8~
図11に示したように、ステージ61を用いてZ軸回りに造形物7を回転しながら造形物7を造形する場合は問題ないが、
図2~
図5に示したように造形物7を固定して照射ヘッド21が移動して造形する場合、一層目を造形するとワイヤノズル41は照射ヘッド21の中心軸23を通るZ軸回りに1回転するので、ワイヤ供給機4とワイヤノズル41を繋ぐワイヤチューブ43も1回転することになる。このまま二層目、三層目と造形を続けると、ワイヤチューブ43はねじれが進行し、次第にワイヤノズル回転駆動部54に絡まってしまう問題が発生する。一層を造形する毎に、ワイヤノズル回転駆動部54を反対方向に回転してねじれを戻す方法も考えられるが、それでは造形時間が長くなってしまい、タイムパフォーマンスが悪化する。
【0038】
そこで、実施の形態2では、二層目の造形方向を一層目と反対回りに造形することでワイヤチューブ43のねじれを戻すことにする。つまり、実施の形態2では、制御装置1がヘッド駆動装置5を駆動制御することで、造形方向を時計回りと反時計回りとに交互に変えながら造形物7を一層ずつ積層する。これにより、実施の形態2では、造形時間を無駄にすることなく、ワイヤチューブ43がねじれてワイヤノズル回転駆動部54に絡まることが無くなる。
【0039】
実施の形態3.
図12は、実施の形態3にかかる金属積層造形装置10の構成を示す図である。
図1に示した実施の形態1においては、ワイヤ供給機4は、金属積層造形装置10の不特定の箇所に配設され、ワイヤノズル41とワイヤ供給機4はワイヤチューブ43で繋がっていた。これに対し、
図12に示すワイヤ供給機4aは、ワイヤノズル支持部44に固定されており、ワイヤ供給機4aはワイヤノズル41に直結している。ワイヤ供給機4aは、具体的にはワイヤボビン、送りローラなどから構成されている。実施の形態3のその他の構成は、実施の形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0040】
実施の形態3によれば、ワイヤ供給機4aはワイヤノズル41と一緒にワイヤノズル回転駆動部54によって回転するため、実施の形態1と同様、造形の進行方向が変化しても常に進行方向の前側から金属のワイヤ42を供給することができる。したがって、溶融池71およびシールドガスの分布が一定の条件に保たれるので、造形物7の形状に関わらず安定した造形が可能になる。さらに、ワイヤ供給機4aを小型化してワイヤノズル41と一緒に回転可能としたので、ワイヤチューブ43が存在しなくなり、ワイヤチューブ43のねじれの問題がなくなり、連続して造形することができる。
【0041】
実施の形態4.
図13は、実施の形態4にかかる金属積層造形装置10の構成を示す図である。実施の形態4においては、ワイヤ供給機4から供給されたワイヤチューブ43aは、照射ヘッド21の中心軸23の上方からワイヤノズル回転駆動部54に入り、ワイヤノズル支持部44の内部構造としての連結部55を介して、ワイヤノズル支持部44で支持されているワイヤノズル41に繋がっている。実施の形態4のその他の構成は、実施の形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0042】
実施の形態4によれば、ワイヤノズル41がワイヤノズル回転駆動部54によって回転するため、実施の形態1と同様、造形の進行方向が変化しても常に進行方向の前側から金属のワイヤ42を供給することができる。したがって、溶融池71およびシールドガスの分布が一定の条件に保たれるので、造形物7の形状に関わらず安定した造形が可能になる。さらに、ワイヤチューブ43aを照射ヘッド21の中心軸23の上方から入れ、ワイヤノズル支持部44の内部構造としての連結部55に通すことで、ワイヤチューブ43aのねじれの問題がなくなり、連続して造形することができる。
【0043】
実施の形態5.
図14は、実施の形態5にかかる金属積層造形装置10の構成を示す図である。実施の形態5では、ワイヤノズル支持部44aは、溶融池71を中心としてワイヤノズル41の角度である仰角を調整可能としている。実施の形態5のその他の構成は、実施の形態1と同様であり、重複する説明は省略する。
【0044】
実施の形態5によれば、溶融池71を中心としてワイヤノズル41の角度を調整可能としているので、造形に対して常に最適な角度からワイヤ42を供給することができ、造形物7の形状に関わらず安定した造形が可能になる。
【0045】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 制御装置、2 レーザ発振器、3 ガス供給機、4,4a ワイヤ供給機、5 ヘッド駆動装置、6 ステージ駆動装置、7 造形物、10 金属積層造形装置、20 レーザビーム照射装置、21 照射ヘッド、22 ファイバケーブル、23 中心軸、30 ガス供給装置、31 ガス配管、32 ガス噴射装置、40 ワイヤ供給装置、41 ワイヤノズル、42 ワイヤ、43,43a ワイヤチューブ、44,44a ワイヤノズル支持部、51 X軸駆動部、52 Y軸駆動部、53 Z軸駆動部、54 ワイヤノズル回転駆動部、55 連結部、61 ステージ、71 溶融池。