(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179393
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】インク組成物、硬化物及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20241219BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241219BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20241219BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C09D11/30
H01L33/00 L
H01L33/60
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098206
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】九澤 昌祥
(72)【発明者】
【氏名】山門 祥彦
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
5F142
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2H186AA17
2H186AB11
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA18
2H186FA09
2H186FB04
2H186FB32
2H186FB40
2H186FB41
2H186FB44
2H186FB45
2H186FB46
2H186FB56
4J039AD21
4J039BA20
4J039BC31
4J039BE01
4J039FA07
4J039GA24
5F142BA32
5F142CB12
5F142CB14
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD16
5F142CD17
5F142CD18
5F142CE03
5F142CE16
5F142CG03
5F142CG13
5F142CG24
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5F142DA15
5F142DA22
5F142DA23
5F142DA36
5F142DA64
5F142DB17
5F142DB40
5F142FA21
5F142GA02
(57)【要約】
【課題】画像表示装置等の作製に有用なインク組成物等を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、インク組成物が提供される。このインク組成物は、反射材(A)と、カチオン重合性化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、を含む。カチオン重合性化合物(B)は、カチオン重合性基と加水分解性基とを有する金属元素含有化合物(B1)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク組成物であって、
反射材(A)と、カチオン重合性化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、を含み、
前記カチオン重合性化合物(B)は、カチオン重合性基と加水分解性基とを有する金属元素含有化合物(B1)を含む、インク組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のインク組成物において、
前記反射材(A)は、白色顔料または金属顔料を含む、インク組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のインク組成物において、
前記反射材(A)のZ平均粒子径は100nm以上1000nm以下である、インク組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のインク組成物において、
前記金属元素含有化合物(B1)はケイ素含有化合物である、インク組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のインク組成物において、
前記金属元素含有化合物(B1)の有する前記カチオン重合性基はエポキシ基である、インク組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のインク組成物において、
増感剤(D)をさらに含む、インク組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のインク組成物において、
前記カチオン重合性化合物(B)は、前記金属元素含有化合物(B1)に該当しない他のカチオン重合性化合物(B2)として、オキセタン化合物をさらに含む、インク組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のインク組成物において、
前記金属元素含有化合物(B1)の含有量は、前記インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに1.5質量部以上80質量部以下である、インク組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のインク組成物において、
インクジェット用である、インク組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のインク組成物において、
固形分濃度が70質量%以上である、インク組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のインク組成物において、
隔壁を形成するために用いられ、
前記隔壁は、複数の発光素子を備える画像表示装置において、前記複数の発光素子の間に介在するものである、インク組成物。
【請求項12】
硬化物であって、
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のインク組成物を硬化してなる、硬化物。
【請求項13】
画像表示装置であって、
請求項12に記載の硬化物を備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク組成物、硬化物及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より鮮明な画像を表示させることが可能な画像表示装置の開発がなされてきている。たとえば特許文献1には、基板に複数のLEDチップが実装されたディスプレイモジュールが開示されている。ここで、当該特許文献1には、LEDチップ間の出力光が干渉することを防止するために、LEDチップ間に光反射壁を設ける構造が示されている(特許文献1;[0043]、
図4等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、画像表示装置の発する光の輝度を向上させるための技術開拓の要請は未だ存在する。
【0005】
本発明では上記事情に鑑み、画像表示装置等の作製に有用なインク組成物等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、インク組成物が提供される。このインク組成物は、反射材(A)と、カチオン重合性化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、を含む。カチオン重合性化合物(B)は、カチオン重合性基と加水分解性基とを有する金属元素含有化合物(B1)を含む。
【0007】
上記態様によれば、画像表示装置等の作製に有用なインク組成物等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態にかかるインク組成物の硬化物を隔壁として適用した画像表示装置の断面図である。
【
図2】本実施形態にかかるインク組成物の硬化物を隔壁として適用した画像表示装置の断面図である。
【
図3】本実施形態にかかるインク組成物の硬化物を隔壁として適用した画像表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
また、本明細書中における「~」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
【0010】
<インク組成物>
本実施形態のインク組成物は以下に示すものである。
インク組成物であって、
反射材(A)と、カチオン重合性化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、を含み、
前記カチオン重合性化合物(B)は、カチオン重合性基と加水分解性基とを有する金属元素含有化合物(B1)を含む、インク組成物。
以下、本実施形態のインク組成物を構成する成分、インク組成物の製造方法、用途等について説明を行う。
【0011】
[反射材(A)]
本実施形態のインク組成物は反射材(A)を含む。後述するように、本実施形態のインク組成物は、典型的には発光素子を備える画像表示装置の隔壁を形成する際に用いられる。ここで、このようにインク組成物が反射材(A)を含むことにより、かかる隔壁が発光素子の発した光を反射させ、結果、画像表示装置の輝度向上に寄与することができる。
【0012】
この反射材(A)は、光を反射させることのできる公知の材料の中から適宜選択して用いればよい。入手容易性が高い観点からは、反射材(A)は、白色顔料または金属顔料を含むことが好ましい。
【0013】
白色顔料としては、酸化チタン(チタン白)、酸化亜鉛(亜鉛華)、鉛白、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、アンチモン白、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、タルク等を用いることができる。
一方、金属顔料としては、単体としての金属や各種合金等を用いることができる。この金属や各種合金を構成することのできる金属元素としては、例えば、インジウム、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、チタン、鉄、銅等が挙げられる。光の反射性能の高さの観点から、金属顔料は、これらのうちインジウム又はアルミニウムを含むことが好ましい。また、インク組成物の塗工性を向上させる観点から、金属顔料はインジウムを含むことが好ましい。
【0014】
その他、反射材(A)としては、光を反射しない粒子の表面に酸化チタン等の金属化合物を付着させて得られる材料を採用してもよい。
【0015】
本実施形態において、反射材(A)は粒子形状を有していてもよい。この、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状等であってよい。なお、反射材(A)が、このように粒子形状を有している場合は、その平均粒子径が制御されていることが好ましい。一例として、反射材(A)のZ平均粒子径は、100nm以上1000nm以下であってよく、150nm以上800nm以下であってよく、180nm以上600nm以下であってよい。反射材(A)の粒径をこのような範囲に設定することにより、インク組成物としての塗工性と、得られる硬化物の反射特性とのバランスの向上に寄与することができる。なお、このZ平均粒子径は、ゼータサイザーナノZS(マルバーン社製)等を用いて測定することができる。
【0016】
本実施形態のインク組成物において、反射材(A)の含有量は用途等に応じて適宜設定することができる。一方、反射材(A)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに0.5質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。反射材(A)の含有量をこのような範囲に設定することにより、インク組成物の硬化性を担保しつつ、得られる硬化物についてより高い反射特性を実現することができる。
【0017】
[カチオン重合性化合物(B)]
本実施形態のインク組成物はカチオン重合性化合物(B)を含む。このカチオン重合性化合物(B)は、その化学構造中にカチオン重合性基を含む化合物である。具体的に、このカチオン重合性基としては、エポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基のほか、ビニルエーテル基等が挙げられる。また、本実施形態のカチオン重合性化合物(B)としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物のほか、オキソラン化合物(テトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフランなど)等の化合物が包含される。
【0018】
本実施形態のインク組成物は、このカチオン重合性化合物(B)として、カチオン重合性基と加水分解性基とを有する金属元素含有化合物(B1)を含む。なお、本実施形態のインク組成物は、この金属元素含有化合物(B1)に該当しない他のカチオン重合性化合物(B2)をさらに含んでもよい。以下、これらの成分について説明を続ける。
【0019】
本実施形態における金属元素含有化合物(B1)は、その化学構造中に前述のカチオン重合性基と、金属元素とを含む。具体的には、この金属元素含有化合物(B1)は以下の構造式(1)で表すことができる。
M(R)x(X)y ・・・ (1)
ここで、構造式(1)中のMは金属元素であり、Rはその構造中にカチオン重合性基を含む有機基であり、かつ、Rの有する炭素原子とMとが結合するものである。Xは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基からなる群から選択される基である。xとyは1以上の整数であり、xとyとの和はMの結合手数である。
【0020】
上述の金属元素としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、ホウ素等が挙げられる。この中でも入手容易性が高く、取り扱い性に優れる観点から、上述の金属元素はケイ素であることが好ましく、すなわち、金属元素含有化合物(B1)はケイ素含有化合物であることが好ましい。また、上述の通り、金属元素含有化合物(B1)はRの構造中にカチオン重合性基を含むものである。この点に関して、その反応性の高さ等の観点から、Rの構造中にエポキシ基を含むことが好ましく、すなわち、金属元素含有化合物(B1)の有するカチオン重合性基はエポキシ基であることが好ましい。また、Rの構造中に含まれるカチオン重合性基は、オキセタニル基であってもよい。また、Xがアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基の炭素数はたとえば1~8であり、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。Xがフェノキシ基である場合、このフェノキシ基を構成するベンゼン環の水素原子は種々の置換基により置換されていてもよい。
なお、Mがケイ素である場合、xは1または2,yは2または3である態様が例示される。
【0021】
本実施形態の金属元素含有化合物(B1)は、後述する光酸発生剤(C)の発した酸によりカチオン重合を行いつつ、その構造に備えられる金属元素がインク組成物を適用する基板の表面部位との化学結合を形成し得る。このような寄与もあり、本実施形態のインク組成物は高い基板密着性を発現し得る。
【0022】
この金属元素含有化合物(B1)のとくに好ましい化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリメトキシ)シラン、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリエトキシ)シラン、3-[(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリメトキシ)シラン、3-[(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリエトキシ)シラン等を挙げることができる。
【0023】
また、本実施形態のインク組成物が含み得る他のカチオン重合性化合物(B2)としては、入手容易性と反応性の高さからエポキシ化合物やオキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等が好ましい。なお、この他のカチオン重合性化合物は、その化学構造中に前述の金属元素を含まないものである。
【0024】
カチオン重合性化合物(B)は、金属元素含有化合物(B1)に該当しない他のカチオン重合性化合物(B2)として、エポキシ化合物をさらに含んでもよい。
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物であり、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、エポキシ化合物において、エポキシ基の数は1以上であればよいが、2以上のエポキシ基を有する化合物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態の他のカチオン重合性化合物(B2)におけるエポキシ化合物は単官能エポキシ化合物であっても多官能エポキシ化合物であってもよい。
【0025】
エポキシ化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4,3',4'-ジエポキシビシクロヘキシル、1,2-エポキシ4-ビニルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン変性3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、リモネンジオキサイド、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパンと1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノールとの混合物、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0026】
また、エポキシ化合物としては、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー及びエポキシ樹脂のいずれであってもよく、下記のような市販品を用いることもできる。
すなわち、セロキサイド(登録商標)CEL2021P、CEL2000、CEL8000(株式会社ダイセル製)等の多官能エポキシモノマーをエポキシ化合物として用いてもよい。
また、TECHMOREVG3101L(株式会社プリンテック製)、EPPN-501H、502H(日本化薬株式会社製)、JER1032H60(三菱ケミカル株式会社製)等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;JER157S65、157S70(三菱ケミカル株式会社製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;EPPN-201(日本化薬株式会社製)、JER152、154(三菱化学株式会社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等の樹脂を本実施形態におけるエポキシ化合物として用いることもできる。
【0027】
カチオン重合性化合物(B)は、金属元素含有化合物(B1)に該当しない他のカチオン重合性化合物(B2)として、オキセタン化合物をさらに含んでもよい。
オキセタン化合物としては、オキセタニル基の数は1以上であればよいが、2以上のオキセタニル基を有する化合物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態の他のカチオン重合性化合物(B2)におけるオキセタン化合物は単官能オキセタン化合物であっても多官能オキセタン化合物であってもよい。
【0028】
オキセタン化合物の例としては、2-エチルヘキシルオキセタン、3-エチル-3-エトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ブトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヘキシルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、[(1-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]シクロヘキサン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-メトキシメチルオキセタン、オキセタンアルコール、3-エチル-3{[3-エチルオキセタンー3―イル]メトキシ}メチル)オキセタン、ビス[(1-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]シクロヘキサン、ビス[(1-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]ノルボルナン、1,4-ビス((1-エチル-3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、1,3-ビス((1-エチル-3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、4,4'-ビス((3-エチル-3オキセタニル)メトキシ)ビフェニル、キシリレンビスオキセタン等が挙げられる。
【0029】
カチオン重合性化合物(B)は、金属元素含有化合物(B1)に該当しない他のカチオン重合性化合物(B2)として、ビニルエーテル化合物をさらに含んでもよい。
ビニルエーテル化合物の例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0030】
本実施形態のインク組成物が他のカチオン重合性化合物(B2)を含む場合、この他のカチオン重合性化合物(B2)は、その化学構造中にカチオン重合性基を1つ含む化合物を含有することが好ましい。
典型的には、本実施形態のインク組成物は、単官能エポキシ化合物または単官能オキセタン化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は硬化時の硬化収縮が起こりづらく、結果、硬化膜の基板密着性に寄与することになる。
一例として、単官能エポキシ化合物または単官能オキセタン化合物の含有量は、他のカチオン重合性化合物(B2)全体を100質量部としたときに、5質量部以上であってもよく、20質量部以上であってもよく、40質量部以上であってもよい。上限はとくに制限されず、他のカチオン重合性化合物(B2)のすべてが単官能エポキシ化合物または単官能オキセタン化合物であってもよく、単官能エポキシ化合物または単官能オキセタン化合物の含有量は、他のカチオン重合性化合物(B2)全体を100質量部としたときに、85質量部以下であるように調整してもよい。
【0031】
また、本実施形態のインク組成物が他のカチオン重合性化合物(B2)を含む場合、この他のカチオン重合性化合物(B2)が2種以上の成分となっていることが好ましい。このような構成を採用することにより、硬化性や、硬化膜の密着性や硬度のバランスに優れたインク組成物を実現しやすくなる。
【0032】
本実施形態のインク組成物において、カチオン重合性化合物(B)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに5質量部以上96質量部以下であることが好ましく、7質量部以上95質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上94質量部以下であることがさらに好ましい。カチオン重合性化合物(B)の含有量をこのような範囲に設定することにより、インク組成物の保存安定性を担保しつつ、インク組成物の硬化性を高い水準にすることができる。
【0033】
本実施形態のインク組成物において、金属元素含有化合物(B1)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに1.5質量部以上80質量部以下であることが好ましい。このような金属元素含有化合物(B1)の含有量をこのような範囲に設定することにより、従来技術に比して、基板密着性をより高いものとすることができる。また、金属元素含有化合物(B1)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、8質量部以上であることがいっそう好ましく、10質量部以上であることが特に好ましい。金属元素含有化合物(B1)の含有量をこのような範囲に設定することで、基板密着性をより高い水準とすることができる。なお、製造コストを削減する観点から、金属元素含有化合物(B1)の含有量を、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに、78質量部以下や、70質量部以下や、60質量部以下、55質量部以下とすることもできる。
【0034】
本実施形態のインク組成物において、他のカチオン重合性化合物(B2)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、10質量部以上78質量部以下であることがより好ましく、15質量部以上75質量部以下であることがさらに好ましい。他のカチオン重合性化合物(B2)の含有量をこのような範囲に設定することで、良好な硬化性を発現でき、得られる反射部材の膜質を良好なものとすることができる。
【0035】
[光酸発生剤(C)]
本実施形態のインク組成物は光酸発生剤(C)を含む。すなわち、本実施形態のインク組成物は露光された際に、この光酸発生剤(C)が酸を発生し、前述のカチオン重合性化合物(B)の重合反応を促進する。
この光酸発生剤(C)は、公知の材料の中から適宜選択すればよいが、好ましくは光酸発生剤(C)が、スルホニウム塩化合物(C1)を含む。このようにスルホニウム塩化合物(C1)を用いることで、効率よく光によるインク組成物の硬化が進行する。
【0036】
このスルホニウム塩化合物(C1)は、スルホニウムカチオンとアニオンとの塩である。
【0037】
ここで、スルホニウムカチオンとしては、トリフェニルスルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4-(フェニルチオ)フェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ビス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2-ナフチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4-メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2-オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム等が挙げられる。
【0038】
また、アニオンとしては、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、[BX4]-(Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す。)、[PFnY6-n]-(Yは、炭素数1~9のフッ素化アルキル基又はフッ素化フェニル基を示し、nは1~6の整数である。)、スルホネート等のアニオンが挙げられる。
【0039】
その他、光酸発生剤(C)として用いることのできる化合物(他の光酸発生剤(C2)とも称す。)としては、スルホニウム塩以外のイオン系光酸発生剤や、非イオン系光酸発生剤等が挙げられる。
具体的に、他の光酸発生剤(C2)としては、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩;六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩;六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩;アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体;フェニルチオピリジウム塩;六フッ化リンアレン-鉄錯体;スルホニルジアゾメタン;フタル酸イミド型光酸発生剤やナフタルイミド型光酸発生剤等のN-スルホニルオキシイミド型光酸発生剤、オキシム-O-スルホネート型光酸発生剤等を挙げることができる。
【0040】
本実施形態のインク組成物において、光酸発生剤(C)はピーク波長を280nm以上に有する化合物を含むことが好ましい。このような化合物を用いることにより、工業的に優位に反射部材を形成しやすくなる。なお、このピーク波長を280nm以上に有する化合物は、前述のスルホニウム塩化合物(C1)に該当するものであっても、他の光酸発生剤(C2)に該当する化合物であってもよい。
【0041】
本実施形態のインク組成物において、光酸発生剤(C)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに0.1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上8質量部以下であることがさらに好ましい。光酸発生剤(C)の含有量をこのような範囲に設定することにより、インク組成物の保存安定性を担保しつつ、インク組成物の硬化性や密着性を高い水準にすることができる。
【0042】
なお、光酸発生剤(C)全体に占めるスルホニウム塩化合物(C1)の質量割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。また、光酸発生剤(C)が実質的にスルホニウム塩化合物(C1)のみから構成されてもよい。このようにすることで、上述の効果をより発揮しやすくなる。
【0043】
[増感剤(D)]
本実施形態のインク組成物は増感剤(D)を含んでもよい。すなわち、本実施形態のインク組成物は、このように増感剤(D)を含むことにより、反射材(A)を含みつつも、良好な硬化性が担保することができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、増感剤(D)はアントラセン骨格を含む化合物(D1)を含むことが好ましい。これにより、インク組成物の良好な硬化性を担保することができる。
【0045】
このアントラセン骨格を含む化合物(D1)としては、アントラセン、9-アントラセンメタノール、9-アントラセンカルボン酸、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、2-メトキシアントラセン、1,5-ジメトキシアントラセン、1,8-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ビス(オクタノイルオキシ)アントラセン、6-クロロアントラセン、1,5-ジクロロアントラセン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、本実施形態のインク組成物は、上述したアントラセン骨格を含む化合物(D1)に該当しない、他の増感剤(D2)を含んでもよい。
他の増感剤(D2)としては、芳香族ニトロ化合物;クマリン類;チアゾリン類;オキサゾリン類;チオキサントン類;ベンゾチアゾール;ニトロアニリン;ニトロアセナフテン;ベンゾインアルキルエーテル;N-アルキル化フタロン;ナフタレン類;クリセン;ピレン;ベンゾピラン;アゾインドリジン;フロクマリン;フェノチアジン;ベンゾ[c]フェノチアジン;7-H-ベンゾ[c]フェノチアジン;トリフェニレン;1,3-ジシアノベンゼン;フェニル-3-シアノベンゾエート等が挙げられる。
【0047】
本実施形態のインク組成物において、増感剤(D)の含有量は、インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに0.05質量部以上6質量部以下であることが好ましく、0.08質量部以上4質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2質量部以下であることがさらに好ましい。増感剤(D)の含有量をこのような範囲に設定することにより、インク組成物の保存安定性を担保しつつ、インク組成物の硬化性を高い水準にすることができる。
【0048】
なお、増感剤(D)全体に占めるアントラセン骨格を含む化合物(D1)の質量割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。また、増感剤(D)が実質的にアントラセン骨格を含む化合物(D1)のみから構成されてもよい。このようにすることで、上述の効果をより発揮しやすくなる。
【0049】
[溶剤(S)]
本実施形態のインク組成物は、揮発成分として溶剤(S)を含んでもよい。このように溶剤(S)を含むことにより、本実施形態のインク組成物は塗工性に優れやすくなる。この溶剤(S)はインク分野で公知の溶剤を1又は2以上用いることができる。なお、有機溶剤としては、たとえば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、カーボネート系溶剤などのうち1又は2以上を用いることができる。なお、本明細書において溶剤(S)は、前述の成分(A)~(D)に該当しない、1気圧における沸点が250℃以下である成分を指す。
【0050】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ダイアセトンアルコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
エーテルエステル系溶剤としては、例えば、酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルジグリコールアセテート、メトキシプロピオン酸メチル等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
カーボネート系溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0051】
本実施形態のインク組成物における溶剤(S)の含有量は任意である。たとえば、インク組成物の固形分濃度が70質量%以上となるように溶剤(S)の含有量を設定してもよく、インク組成物の固形分濃度が80質量%以上となるように溶剤(S)の含有量を設定してもよく、インク組成物の固形分濃度が90質量%以上となるように溶剤(S)の含有量を設定してもよい。ここで、「固形分濃度」は、インク組成物全体に対する、インク組成物全体から溶剤(S)を除いた成分全体の割合である。すなわち、本明細書では、インク組成物全体から、前述の成分(A)~(D)に該当しない、1気圧における沸点が250℃以下である成分を除いた分を固形分として扱う。
なお、本実施形態のインク組成物は、上述の溶剤(S)を実質的に含まない態様とすることもできる。なお、本明細書において、「実質的に含まない」とは、所定成分を意図的に添加する態様を排除する趣旨で用いており、製造プロセス上、所定成分の混入を避けることが不可避である態様は許容する趣旨で用いている。例示的なプロセスにおいては、本実施形態のインク組成物に露光を行う前段階として、この溶剤(S)を加熱し除去する必要がある。インク組成物が溶剤(S)の含有量を制御する場合は、このような加熱工程を省略できる点で好適である。
【0052】
[その他の添加剤]
本実施形態のインク組成物は、上述した各成分以外の添加成分を含んでもよい。この添加成分には表面調整剤が含まれるが、この表面調整剤としては、シリコーン化合物、ワックス、消泡剤、レベリング剤、ワキ防止剤(塗装時に巻き込んだ空気を破泡する成分)などが含まれる。
【0053】
表面調整剤の例としては、アクロナール4Fなどのアクロナール(登録商標)シリーズ(BASF社製、(メタ)アクリル樹脂系)、BYKシリーズ(BYK社製)、ポリフローシリーズ(共栄社化学株式会社製)、レジフローシリーズ(ESTRON CHEMICAL社製)、モダフローシリーズ(モンサント社製)等が挙げられる。
【0054】
本実施形態のインク組成物は、表面調整剤を1種のみ含んでもよいし、2種以上の表面調整剤を含んでもよい。また、本実施形態のインク組成物中の表面調整剤の量は特に限定されず、他の性能との兼ね合いにより適宜調整される。
【0055】
本実施形態のインク組成物は、上述した各種成分以外の他の添加剤として、フィラー、カップリング剤、酸化防止剤、粘度調整剤、保存安定化剤、分散剤等を含んでもよい。本実施形態のインク組成物における、これらの剤の量は特に限定されず、他の性能との兼ね合いにより適宜調整される。
【0056】
[インク組成物の製造方法]
本実施形態のインク組成物は、典型的には前述の各成分を混合することにより作製される。
【0057】
より具体的な例を挙げると、本実施形態のインク組成物は、以下のような手順で製造することができる。
(工程1):反射材(A)を分散媒に分散させることで、反射材(A)を含む分散液を得る。
(工程2):得られた分散液を他の材料と混合する。
【0058】
すなわち、上述の方法においては、(工程1)にていったん反射材(A)を含む分散液を得、これを他の材料と混合することで目的とするインク組成物を得ることができる。
なお、分散液を得る際に用いられる分散媒ついては、反射材(A)を分散させ得る種々の材料が用いられてよい。たとえば、カチオン重合性化合物(B)が液状である場合は、このカチオン重合性化合物(B)を分散媒として採用することもできる。また、分散液の分散性を向上させるために、分散剤(沈降防止剤、分散助剤と称されることもある。)を共存させてもよい。
この分散剤は公知のものを採用することができるが、典型的にはポリマー型分散剤が挙げられる。分散剤は、市販品を用いることができ、具体的には、フローレンDOPAシリーズ(共栄社化学株式会社製)、ソルスパースシリーズ(日本ルーブリゾール株式会社製)、アジスパーシリーズ(味の素ファインテクノ株式会社製)、Disper BYKシリーズ(BYK社製)、ディスパロンシリーズ(楠本化成株式会社製)などが挙げられる。
分散液における分散剤の配合割合はその種類などに応じて適宜設定できるが、反射材(A)100質量部に対して、例えば1~100質量部の範囲であり、好ましくは3~70質量部の範囲である。
【0059】
続いて、この(工程1)にて得られた分散液を、(工程2)にて他の材料と混合する。この(工程2)において、混合の方法は特に制限されることはない。
このようにして、目的のインク組成物を得ることができる。
【0060】
[用途]
本実施形態のインク組成物は、例えば画像表示装置に備えられる部材を形成するために用いられる。この画像表示装置の例としては、OLED(Organic Light Emitting Diode)素子や、ミニLED(mini Light Emitting Diode)マイクロLED(micro Light Emitting Diode)素子、量子ドット等の発光素子を備える表示装置が挙げられる。
【0061】
本実施形態のインク組成物は、露光されることで硬化し、硬化物(硬化膜)となることで、画像表示装置内の部材として機能し得る。典型的には、この部材は画像表示装置において画像が表示される表示領域に設けられる。ここで、上述の表示領域とは、画像表示装置において、この画像表示装置に対峙する者が認識することのできる画素と、この画像表示装置に対峙する者の視点とを結ぶことで規定される領域を指す。
【0062】
典型的には、インク組成物は、画像表示装置内に設けられる隔壁を形成するために用いられる。ここで、隔壁は、複数の発光素子を備える画像表示装置において、複数の発光素子の間に介在するものである。この場合、隔壁は、ある発光素子が発光する際に、光の発せられる方向を制御する機能を発揮する。また、その結果、画像表示装置としての輝度向上に寄与することができる。
【0063】
インク組成物から形成される硬化物の反射特性は例えば以下のように設定されることが好ましい。すなわち、インク組成物から形成される硬化物の400nm~700nmの拡散反射率の平均値が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。このようにすることで、上述のような光の発せられる方向を制御する機能がより発揮されやすくなる。なお、この拡散反射率は、紫外可視分光光度計(積分球使用、株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)等を用いて測定することができる。
【0064】
このような隔壁が設けられた画像表示装置の例について、図を交えて説明する。
図1は、本実施形態にかかるインク組成物の硬化物を隔壁として適用した画像表示装置の断面図である。
図1における画像表示装置100は、基板10と、隔壁11と、発光素子12とを備えるものである。この画像表示装置100の基板10は種々の材料の中から選択される材料で構成されるものであり、無機材料で構成されていても、有機材料で構成されていても構わない。典型的な例としては、この基板10はガラス基板であるが、その他、ガラス繊維とエポキシ樹脂とを複合させた複合材料や、ポリイミド等の有機材料、ガラス以外の他のセラミックスで構成された基板であっても構わない。なお、図には詳細を記載していないが、典型的には基板10には回路や電極が設けられており、発光素子12に電流を印加することができるように構成されている。
なお、この回路や電極は、銅や酸化インジウム錫等で構成されていてもよい。
【0065】
発光素子12は、典型的にはミニLEDまたはマイクロLEDであり、発光素子12(R)、発光素子12(G)、発光素子12(B)が、それぞれ異なる波長の光(赤・緑・青)を発するものである。なお、本実施形態の画像表示装置100の備える発光素子12は、OLEDであっても構わない。
【0066】
隔壁11は、本実施形態のインク組成物を硬化してなるものであり、複数存在する発光素子12の間に設けられる。前述の通り、隔壁11は、発光素子12が発光する際に、光の発せられる方向を制御する機能を発揮する。なお、本実施形態の隔壁11においては、特定のインク組成物から形成されていることから、基板10との密着性に優れ、長期使用の場合であっても安定的にこのような機能を発現させることができる。
【0067】
このような隔壁11は、発光素子12が搭載された基板10に対し、発光素子12間にインク組成物が配置されるように塗布を行った上で、光硬化させることで得られる。このような塗布は例示的にはインクジェットプリンタを用いて行われる(すなわち、本実施形態のインク組成物はインクジェット用であるともいえる。)。なお、
図1には隔壁11が発光素子12と互いに接するような位置に配される構造が示されている(隔壁11が、複数の発光素子12のうち少なくとも1つに対し、互いに接するように設けられている)が、この隔壁11と発光素子12とが離間されるように構成されていてもよい。なお、
図1に示される画像表示装置100のように、隔壁11が発光素子12と互いに接するような位置にある場合は、上述したような光の発せられる方向を制御する機能をいっそう発揮しやすくなる点で好ましい。
【0068】
また、本実施形態において、隔壁11と発光素子12の高さ(基板10の厚み方向における厚さ)は、適宜設定することができる。一態様においては、隔壁11の平均高さ(平均高さH11)と、複数の発光素子12の平均高さ(平均高さH12)とを定義したときに、H11とH12とが略同等の高さであってよい。具体的に、H11とH12との比(H11/H12)は0.6~1.5の範囲であってよく、0.7~1.4の範囲であってよく、0.8~1.2の範囲であってよく、0.9~1.1の範囲であってよい。このような範囲とすることで発光素子12の発する光の方向をより制御しやすくなる。一方、画像表示装置100の製造プロセスを簡素化する等の観点からH11とH12との比は上述の範囲とは異なるものであってもよい。すなわち、H11とH12との比(H11/H12)は、0.1~1.1の範囲であってよく、0.2~1.0の範囲であってよく、0.3~1.0の範囲であってよく、0.8~1.0の範囲であってよい。
なお、この隔壁11や発光素子12の平均高さは、例えば、画像表示装置100を分解し、分解物を走査型電子顕微鏡等で観察することによって求めることができる。
【0069】
例示的な実施形態においては、隔壁11の平均高さH11は25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。このようにすることで、膜厚方向に均一な膜質を得やすくなる。
なお、発光素子12同士の発する光の干渉を抑制する観点からは、隔壁11の厚みは上記の数値以上であってもよい。そのような隔壁11を形成するにあたっては、たとえば以下のような手法を採用することができる。
すなわち、インク組成物が露光による硬化が可能な膜厚となるように調整し、いったん露光硬化させ、その硬化した膜上にさらにインク組成物による塗膜を形成し、高膜厚の隔壁11を形成することもできる(換言すれば、インク組成物の硬化膜を積層させることによって隔壁11を形成してもよい)。
このことから、隔壁11の厚みは必要に応じて上記以上に設計することができる。一例として、複数存在する隔壁11の平均高さH11は300μm以下であってもよいし、200μm以下であってもよい。また、隔壁11の膜質を向上させる観点からは、硬化膜を積層させた後に加熱工程を行い、膜の架橋度合を向上させてもよい。
なお、H11の下限値は特に制限されるものではないが、一例としては1μm以上である。
【0070】
一方、発光素子12の平均高さH12は、画像表示装置100の用途やスペック等に応じて適宜設定される。一例としては、発光素子12の平均高さH12は、1~100μmの範囲であってよく、2~80μmの範囲であってよく、3~50μmの範囲であってよい。
【0071】
また、得られる画像表示装置100の信頼性の向上等を目的として、隔壁11の硬度が調整されていてもよい。例示的には隔壁11の有する鉛筆硬度はH以上であってもよく、2H以上であってもよく、3H以上であってもよく、4H以上であってもよい。
【0072】
なお、本実施形態のインク組成物が適用された画像表示装置は以下に示されるものであってもよい。
図2は、本実施形態にかかるインク組成物の硬化物を隔壁として適用した画像表示装置の断面図である。
【0073】
図2における画像表示装置200は、基板20と、隔壁21と、発光素子22とを備えるものである。この画像表示装置200の基板20は前述の基板10と、発光素子22は前述の発光素子12と同様のもので構成することができる。
【0074】
画像表示装置200において、隔壁21は複数の層(2層)が積層された構造となっている。具体的に、
図2の画像表示装置200に即して説明すると、隔壁21は反射材料層21Aと、遮光材料層21Bとが積層されている。
【0075】
この反射材料層21Aは、本実施形態のインク組成物を硬化してなるものであり、前述の隔壁11と同様の材料によって構成することができる。一方、遮光材料層21Bは光を遮光する材料によって構成することができる。この光を遮光する材料は、無機材料を含むものであっても、有機材料を含むものであってもよい。この遮光材料層21Bは、複数の発光素子22の間に設けられる。この場合、遮光材料層21Bは、発光素子(例えば発光素子22(R))が発光する際に、隣接する発光素子(例えば発光素子22(G))との間の光の干渉を緩和させたり、基板20上に形成された配線(金属配線等)からの反射による表示ムラを抑制する機能を発揮する。
【0076】
反射材料層21Aは、前述の隔壁11と同様に、所定のインク組成物を基板20に塗布し、硬化させることで形成することができる。
一方、この遮光材料層21Bを、無機材料を含むものとして構成する場合、一例としては以下のように形成することができる。すなわち、遮光性を有する無機材料(Al、Cu、Ti、Mo等の金属あるいはそれらの合金等)を反射材料層21A上に堆積させることにより、遮光材料層21Bを形成することができる。
また、この遮光材料層21Bを、有機材料を含むものとして構成する場合、一例としては以下のように形成することができる。すなわち、遮光剤と、バインダー成分との混合材料を、反射材料層21Aに適用することにより、遮光材料層21Bを形成することができる。
【0077】
ここでの遮光剤としては、カーボンブラックや、カーボンブラック以外の他の遮光剤を含んでもよい。この他の遮光剤としては、チタンブラック;酸化鉄ブラック;バナジウム、銀、銅、錫などの1種以上の金属元素を含む遮光剤などの無機系遮光剤;アニリンブラック、ペリレンブラックやラクタムブラックなどの有機黒色顔料;アゾ系化合物やアジン系化合物などの黒色染料などが挙げられる。また、この他の遮光剤は、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料などの有彩色顔料や、赤色染料、青色染料、緑色染料、黄色染料などの有彩色染料を組み合わせることによって構成されてもよい。なお、この他の遮光剤は、得られる硬化物について遮光機能が担保されるようであれば単独で用いてもよく、また、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
一方、バインダー成分は可塑材料、硬化材料のいずれであってもよいが、典型的には、硬化材料である。より具体的に、このバインダー成分は重合性化合物の硬化物であってよく、この重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよい。この場合、バインダー成分には光によりラジカルや酸を発生させる剤が配合されていてもよい。
【0079】
隔壁21と、発光素子22との高さの関係は、
図1に示される画像表示装置100における隔壁11と発光素子12との高さの関係と同様であってよい。なお、反射材料層21Aと、遮光材料層21Bと、の高さの比(反射材料層21Aの高さ:遮光材料層21Bの高さ(H
21A:H
21B))は適宜設定することができる。一方、画像表示装置200の発する光の輝度の向上と、発光素子間の光の干渉を緩和させる機能とをバランスよく発揮させる観点からは、このH
21A:H
21Bは30:1~1:2の範囲であってよく、20:1~1:1の範囲であってよく、15:1~3:1の範囲であってよい。
【0080】
さらに、本実施形態のインク組成物が適用された画像表示装置は以下に示されるものであってもよい。
図3は、本実施形態にかかるインク組成物の硬化物を隔壁として適用した画像表示装置の断面図である。
【0081】
図3における画像表示装置300は、基板30と、隔壁31と、発光素子32とを備えるものである。この画像表示装置300の基板30は前述の基板10と、隔壁31は前述の隔壁11と同様のもので構成することができる。
【0082】
画像表示装置300において、複数存在する発光素子32はそれぞれ同種の色の光を発するように構成されている(
図3中、32(B)参照)。これに対し、本実施形態の画像表示装置300では、基板30上の発光素子32が発する光の波長を調整する機構(波長調整層)が設けられる。具体的に、
図3に示される画像表示装置300においては、発光素子32(B)の、基板30が存在する側とは反対側に、波長変換層(波長変換材33ともいう)が設けられている。ここで、この波長変換材33には、波長変換領域331と、波長変換領域332と、透明領域333と、が設けられている。
【0083】
すなわち、
図3における画像表示装置300においては、発光素子32(B)の発した青色光を波長変換領域331が赤色光に変換し、一方、発光素子32(B)の発した青色光を波長変換領域332が緑色光に変換し得る。この波長変換領域331、332には、例えば量子ドットが含まれ、この量子ドットにより発光素子32(B)から受けた光の波長を変換し得る。このような構成を採用することにより、同種の発光素子を基板に搭載するといった製造プロセス上の優位性を獲得しつつ、画像表示装置としてのRGB発光を実現することができる。なお、
図3においては発光素子32(B)の発した青色光が透明領域333を通過する態様が示されているが、画像表示装置300の構成は、必ずしも、これには制限されない。例えば、透明領域333に替えて、波長変換領域を用いてもよい。このようにして、発せられる青色光の色調などをコントロール(微調整)することも可能である。また、
図3における画像表示装置300では、波長変換領域331等を備える波長変換材33が採用される態様を示しているが、カラーフィルタを発光素子32上に配置することもできる。このようなカラーフィルタは、発光素子32より発せられた光の波長について、一部の波長領域の光をフィルタリングする。すなわち、本実施形態の画像表示装置300において、波長調整層として、複数の発光素子のいずれかの発した光について一部の波長領域の光をフィルタリングする層が設けられてもよい。このようにして画像表示装置300から発せられる光の色調を調整することができる。
【0084】
なお、上記の各種画像表示装置の隔壁は、図示したものと異なる構造を有していてもよい。たとえば、
図2に示される反射材料層21Aと、遮光材料層21Bと、の間に他の機能を有する層が介在されてもよい。また、各種隔壁中に、本実施形態のインク組成物の硬化物によって形成される材料以外の部材が組み合わされていてもよい。例えば、基板から高さ方向に延びる他の機能膜(遮光膜を包含する)を隔壁の中に備えてもよい。その他、本実施形態の画像表示装置は、各図に示される構成以外の構成を備えていてもよい。例えば、発光素子や隔壁の、基板の存在する側とは反対側に別途カバーガラス等が設けられていてもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0086】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0087】
(1)インク組成物であって、反射材(A)と、カチオン重合性化合物(B)と、光酸発生剤(C)と、を含み、前記カチオン重合性化合物(B)は、カチオン重合性基と加水分解性基とを有する金属元素含有化合物(B1)を含む、インク組成物。
【0088】
(2)上記(1)に記載のインク組成物において、前記反射材(A)は、白色顔料または金属顔料を含む、インク組成物。
【0089】
(3)上記(1)または(2)に記載のインク組成物において、前記反射材(A)のZ平均粒子径は100nm以上1000nm以下である、インク組成物。
【0090】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載のインク組成物において、前記金属元素含有化合物(B1)はケイ素含有化合物である、インク組成物。
【0091】
(5)上記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載のインク組成物において、前記金属元素含有化合物(B1)の有する前記カチオン重合性基はエポキシ基である、インク組成物。
【0092】
(6)上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載のインク組成物において、増感剤(D)をさらに含む、インク組成物。
【0093】
(7)上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載のインク組成物において、前記カチオン重合性化合物(B)は、前記金属元素含有化合物(B1)に該当しない他のカチオン重合性化合物(B2)として、オキセタン化合物をさらに含む、インク組成物。
【0094】
(8)上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載のインク組成物において、前記金属元素含有化合物(B1)の含有量は、前記インク組成物の固形分全体を100質量部としたときに1.5質量部以上80質量部以下である、インク組成物。
【0095】
(9)上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載のインク組成物において、インクジェット用である、インク組成物。
【0096】
(10)上記(1)ないし(9)のいずれか1つに記載のインク組成物において、固形分濃度が70質量%以上である、インク組成物。
【0097】
(11)上記(1)ないし(10)のいずれか1つに記載のインク組成物において、隔壁を形成するために用いられ、前記隔壁は、複数の発光素子を備える画像表示装置において、前記複数の発光素子の間に介在するものである、インク組成物。
【0098】
(12)硬化物であって、上記(1)ないし(11)のいずれか1つに記載のインク組成物を硬化してなる、硬化物。
【0099】
(13)画像表示装置であって、上記(12)に記載の硬化物を備える、画像表示装置。
もちろん、この限りではない。
【実施例0100】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0101】
[使用原料]
まず、本実施例で用いた使用原料について説明する。本実施例項目で用いた各種使用原料は以下の通りである。
・A1-1:Ti-Pure R-105(ルチル型酸化チタン;ケマーズ社製)
・A1-2:49CJ-1120(鱗片状インジウムフィラー(固形分濃度20%);尾池工業株式会社製)
・B1-1:KBM-403(化学名:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業株式会社製)
・B2-1:アロンオキセタンOXT-101(化学名:3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン;東亞合成株式会社製)
・B2-2:デナコールEX-141(化学名:フェニルグリシジルエーテル;ナガセケムテックス株式会社製)
・B2-3:アロンオキセタンOXT-221(化学名:3-エチル-3{[3-エチルオキセタンー3―イル]メトキシ}メチル)オキセタン;東亞合成株式会社製)
・B2-4:デナコールEX-121(化学名:2-エチルへキシルグリシジルエーテル;ナガセケムテックス株式会社製)
・B2-5:リモネンジオキサイド(RENESSENZ,LLC.製)
・C1-1:CPI-110P(化学名:ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート;サンアプロ株式会社製)
・C1-2:CPI-110B(化学名:ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート;サンアプロ株式会社製)
・D1-1:アントラキュアー(登録商標)UVS―1331(化学名:9,10―ジブトキシアントラセン;エア・ウォーター・パフォーマンスケミカル株式会社製)
・D2-1:Omnirad DETX(化学名:2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン;IGM RESINS社製)
・X-1:ソルスパース36000(100%活性ポリマー分散剤;日本ルーブリゾール株式会社製)
・X-2:BYK―361N(ポリアクリレート系表面調整剤;BYK社製)
【0102】
[インク組成物等の作製]
以下の各工程に従い、顔料分散液と、インク組成物とを作製した。
【0103】
(顔料分散液の作製)
表1に示す比率となるように各種材料をプレミックスした後、サンドミルにて5時間処理して所定の反射材を含む顔料分散液を得た。なお、実施例8ではインジウムフィラーが分散された市販品をそのまま用いた。
【0104】
(インク組成物の製造)
上記で得られた顔料分散液と、表1に記載の各成分を十分に混合して、インク組成物を製造した。なお、表1には、インク組成物の固形分濃度と、全固形分に対する(A)成分の含有割合(質量%)と、(B1)成分の含有割合(質量%)と、オキセタン化合物の含有割合(質量%)と、をあわせて記載している。また、固形分濃度が100%に満たないインク組成物については、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルが含まれている。
【0105】
[評価]
得られたインク組成物は以下に示す各項目に沿って評価を行った。得られた評価結果は表1に示す通りである。また、試験環境は、温度:20℃、湿度:45%の条件を採用している。
【0106】
<評価基板作製>
インクジェットプリンタとして、ピエゾ型インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製、KM1024iMHE、インク液滴量13pL)を搭載したインクジェットプリンタ(株式会社トライテック製、Stage JET)を準備した。このプリンタを用い、各インク組成物を充填し、ヘッド温度35℃の条件で吐出した。塗装基板は、Eagle XG(Corning(登録商標)製Display Grade Glass)を用いた。次に、UV照射装置(USHIO製(型番)UVX-516、ランプ:USHIO製(TYPE)UVH-0501C-1200)を用いて、指触乾燥が得られるまで照射した。さらに、内温130℃に設定した金庫式オーブンで10分間加熱することで評価基板を得た。
【0107】
なお、インク組成物により形成した膜の膜厚と、UV照射における積算照射量は表1に示した通りである。ここで、照射強度および積算照射量はデジタル照度計(アイグラフィックス社製、型式:UVPF-A1、受光器:PD-365)を用いて測定している。
【0108】
また、表1における1回塗装は、インクジェット塗装を行った後に露光し、その後加熱することで硬化膜を得ている。2回塗装の場合は、インクジェット塗装を1度行った後、露光し、この露光の後に、さらにインクジェット塗装と露光を行い、さらに加熱を行っている。
【0109】
<拡散反射率測定>
紫外可視分光光度計(積分球使用、株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を用いて400~700nmの領域における拡散反射率を測定し、その平均値を拡散反射率とした。さらに、450~470nmの領域における拡散反射率を測定し、その平均値を460nmの拡散反射率とした。尚、標準反射板として、Labsphere社製スペクトラロン(登録商標)反射スタンダード(型名:SRS-99-020)を用いている。
【0110】
<透過率測定>
紫外可視分光光度計(積分球使用、株式会社島津製作所製、SolidSpec-3700)を用いて400~700nmの領域における透過率を測定し、その平均値を透過率とした。尚、ベースライン測定には無塗装のEagle XGを用いている。
【0111】
<外観>
上記評価基板において、外観は、以下の評価基準に従って評価した。
A:異常なし
B:エッジ付近にシワが発生
C:塗膜全体にシワが発生
【0112】
<密着性>
上記評価基板を密着性評価基板とした。
なお、Eagle XGで良好な結果が得られたインク組成物については、密着性評価基板として、さらにガラスエポキシ基板(Sunhayato製 片面ガラスエポキシFR-4)およびベークライト基板(アズワン社製、ベークライト紙入りフェノール樹脂)を用いて評価した。すなわち、Eagle XGを用いた際と同様の方法で塗装、硬化し、密着性評価基板を作製した。
密着性は、JIS K5600-5-6:1999に従って1mm間隔に切れ目を入れてクロスカット試験を行い、硬化膜と基板との密着性を評価した。0~3が実用範囲である。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に65%を上回ることはない。
5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
【0113】
<鉛筆硬度>
上記で成膜した基板を鉛筆硬度評価基板とした。この評価基板を用い、JIS-K5600-5-4の試験方法に準拠し、鉛筆硬度評価を行った。鉛筆はMITSU-BISHI製を用い、試験機器は、(株)東洋精機製作所製鉛筆引っかき硬度試験機を用いて評価した。
【0114】
【0115】
本実施例項の結果から分かるように、本実施形態のインク組成物によれば、基板密着性と反射特性とのバランスに優れた硬化物を与え得る。