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特開2024-179395杭支持構造物の目地部構造及び杭支持構造物の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179395
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】杭支持構造物の目地部構造及び杭支持構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
E02B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098208
(22)【出願日】2023-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 港湾空港技術研究所報告,令和4年6月29日,第61巻,第1号,第28~31頁,国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 〔刊行物等〕 令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演概要集,令和4年8月1日,V-270,公益社団法人土木学会 〔刊行物等〕 日本製鉄株式会社との商取引,令和4年11月11日,五洋建設株式会社技術研究所(栃木県那須塩原市四区町1534-1) 〔刊行物等〕 日鉄テクノロジー株式会社との商取引,令和4年11月30日,日鉄テクノロジー株式会社(千葉県君津市君津1番地)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 港湾空港技術研究所報告,令和4年6月29日,第61巻,第1号,第28~31頁,国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 〔刊行物等〕 令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演概要集,令和4年8月1日,V-270,公益社団法人土木学会 〔刊行物等〕 日本製鉄株式会社との商取引,令和4年11月11日,五洋建設株式会社技術研究所(栃木県那須塩原市四区町1534-1) 〔刊行物等〕 日鉄テクノロジー株式会社との商取引,令和4年11月30日,日鉄テクノロジー株式会社(千葉県君津市君津1番地)
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595059377
【氏名又は名称】株式会社日本ピーエス
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】田中 智宏
(72)【発明者】
【氏名】石塚 新太
(72)【発明者】
【氏名】池野 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】前 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】栗原 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】金枝 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】天谷 公彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 絵万
(72)【発明者】
【氏名】岩波 光保
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA03
2D118AA28
2D118CA03
2D118DA05
2D118FA08
2D118FB01
2D118FB33
2D118GA07
(57)【要約】
【課題】安全且つ効率的に杭頭部材とプレキャスト梁部材との接合作業を行える杭支持構造物の目地部構造及び杭支持構造物の構築方法の提供。
【解決手段】この杭支持構造物1の目地部構造は、受棚部26の上面に敷設された緩衝シート材40と、受棚部26の両側面部に沿って固定されたシール材41,41と、受棚部26の下端部に固定され、プレキャスト梁部材9の側壁部13の下端が当接される底型枠部材42,42とを備え、受棚部26の上面と天板部12の底面との隙間、受棚部26の側面と側壁部13の内側面との隙間及び杭頭部材8底部と側壁部13底面との隙間が封鎖されている。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭柱状体の頭部に接合される杭頭部材と、平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるプレキャスト梁部材とを備え、前記杭頭部材の外側面に突設された受棚部に前記天板部の端縁を支持させ、前記プレキャスト梁部材が隣り合う前記杭頭部材間に架設されてなる杭支持構造物にあって、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材との目地部に間詰材が充填されてなる杭支持構造物の目地部構造において、
前記受棚部の上面に敷設された緩衝シート材と、前記受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材と、前記受棚部の下端部に固定され、前記側壁部の下端が当接される底型枠部材とを備え、前記受棚部の上面と前記天板部の底面との隙間、前記受棚部の側面と前記側壁部の内側面との隙間及び前記杭頭部材底部と前記側壁部底面との隙間が封鎖されていることを特徴とする杭支持構造物の目地部構造。
【請求項2】
外側面に受棚部が突設された杭頭部材を杭柱状体の頭部に接合させた後、
平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるプレキャスト梁部材を、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の外側面より突出した受棚部に支持させて、前記プレキャスト梁部材が隣り合う前記杭頭部材間に架設し、
しかる後、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材との目地部に間詰材を充填する杭支持構造物の構築方法において、
前記受棚部の上面に敷設される緩衝シート材と、前記受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材と、前記受棚部の下端部に固定された底型枠部材とを予め設けておき、
前記プレキャスト梁部材を、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の外側面より突出した受棚部に支持させるとともに、前記側壁部の下端を前記底型枠部材に当接させ、
前記受棚部の上面と前記天板部の底面との隙間、前記受棚部の側面と前記側壁部の内側面との隙間及び前記杭頭部材底部と前記側壁部底面との隙間を封鎖した後、
前記目地部に間詰材を充填することを特徴とする杭支持構造物の構築方法。
【請求項3】
杭頭部材の外側面に受棚部が突設された杭頭部材と、平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるプレキャスト梁部材とを使用し、
前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の受棚部に支持させた後、
前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材との目地部に間詰材を充填し、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材とを接合し、
しかる後、接合した前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材とを吊り上げ、前記杭頭部材を杭柱状体の頭部に接合させる杭支持構造物の構築方法において、
前記受棚部の上面に敷設される緩衝シート材と、前記受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材と、前記受棚部の下端部に固定された底型枠部材とを予め設けておき、
前記プレキャスト梁部材を、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の外側面より突出した受棚部に支持させるとともに、前記側壁部の下端を前記底型枠部材に当接させ、
前記受棚部の上面と前記天板部の底面との隙間、前記受棚部の側面と前記側壁部の内側面との隙間及び前記杭頭部材底部と前記側壁部底面との隙間を封鎖した後、
前記目地部に間詰材を充填することを特徴とする杭支持構造物の構築方法。
【請求項4】
前記シール材の上部を前記受棚部の上面より高い位置まで突出させておく請求項2又は3に記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項5】
前記シール材の下部を前記受棚部の下端より低い位置まで突出させておく請求項2又は3に記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項6】
前記シール材の表面に低摩擦材料からなる摩擦低減部が形成されている請求項2又は3に記載の杭支持構造物の構築方法。
【請求項7】
前記底型枠部材の上面に底型枠用シール材が固定されている請求項2又は3に記載の杭支持構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プレキャストコンクリート部材を用いた高架橋、ドルフィンや桟橋等の杭支持構造物の目地部構造及び杭支持構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドルフィンや桟橋等の杭支持構造物では、海象・気象条件等の影響が少なく、且つ、工期の短縮や品質向上等の生産性向上が図れることから、予め陸上の工場や製作ヤードで製作したプレキャストコンクリート部材(以下、プレキャスト部材という)を用いてコンクリート製の上部工を構築する工法が広く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、この種のプレキャスト部材を用いた工法では、上部工を支える杭の数が多い大型の杭支持構造物の場合、それを構成するプレキャスト部材も大型化し、この大型化したプレキャスト部材の一般道による運搬が重量制限等によって困難であるため、プレキャスト部材を施工現場より離れた工場で製作することが難しい。
【0004】
よって、大型化したプレキャスト部材を製作するためには、施工現場の近隣に製作ヤードを設ける必要があり、製作ヤードの確保自体が困難であるとともに、設備投資を強いられるという課題を有している。
【0005】
また、プレキャスト部材が大型化すると、その設置作業には、中型若しくは大型の起重機や起重機船が必要となり、中・大型の起重機や起重機船の確保やその運用に係る費用において課題を有しており、比較的調達が容易な小型の起重機や起重機船を用いて施工できることが望ましい。
【0006】
そこで、本願出願人は、上述の如き課題を解決すべく、平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるコ字状断面を有するプレキャスト梁部材を用いることでプレキャスト部材を軽量化し、工場で製作できる全てのプレキャスト部材の一般道による運搬を可能とし、且つ、小型の起重機や起重機船を用いて施工可能な杭支持構造物及びその構築方法の開発に至っている(特許文献2を参照)。
【0007】
この杭支持構造物の構築方法では、外側面に受棚部が突設されたプレキャスト杭頭部材(以下、杭頭部材という)を鋼管杭等からなる杭柱状体の頭部に接合させ、受棚部にプレキャスト梁部材の天板部の端縁を支持させ、プレキャスト梁部材が隣り合う杭頭部材間に架設させた後、杭頭部材とプレキャスト梁部材との目地部に間詰材を充填するとともに、杭頭部材とプレキャスト梁部材とからなる梁部全体に跨ってPC鋼材を配設し、ポストテンション方式によってプレストレスを導入することによって杭頭部材とプレキャスト梁部材とを接合するようになっている。
【0008】
その際、杭頭部材とプレキャスト梁部材との目地部に間詰材を充填する工程においては、杭頭部材の外側面とプレキャスト梁部材の側壁部外側面との隙間を塞ぐ「外型枠」と、受棚部の上面とプレキャスト梁部材の天板部下面との隙間を塞ぐ「上面内型枠」と、受棚部の側面とプレキャスト梁部材の側壁部内側面との隙間を塞ぐ「側面内型枠」と、杭頭部材の下面とプレキャスト梁部材の側壁部下面との隙間を塞ぐ「底型枠」とを設ける必要がある。
【0009】
「外型枠」は、プレキャスト梁部材に足場を設け、この足場を用いてコンパネ等の型枠板を作業員によって比較的容易に設置することができ、「底型枠」は、プレキャスト梁部材より先行して設置される杭頭部材の底部に予め地上で型枠板を設置することで容易に設置することができるようになっている。
【0010】
一方、「上面内型枠」及び「側面内型枠」は、プレキャスト梁部材を隣り合う杭頭部材間に架設した後、架設したプレキャスト梁部材の下方に足場を設け、この足場を用いてコンパネ等の型枠板を設置するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016-011535号公報
【特許文献2】特開2021-070949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述の如き従来の技術では、「上面内型枠」及び「側面内型枠」を設置する際、杭頭部材とプレキャスト梁部材とは未だ一体化されておらず、受棚台に天板部の端縁部を支持させているだけの状態であるため、このような不安定な状況下でプレキャスト梁部材下に足場を設け、その足場を用いてプレキャスト梁部材の内側に作業員が立ち入らなければならず、より安全に作業を進められる環境が望まれている。
【0013】
また、プレキャスト梁部材下に足場を設置する場合には、プレキャスト梁部材の側面に足場を設置する場合と比べ、「上面内型枠」及び「側面内型枠」の設置作業をより海面に近い水上で行わなければならないため、海象・気象条件等の影響を受け易く、これらの条件によっては工期が長期化するおそれがあった。
【0014】
さらに、「上面内型枠」及び「側面内型枠」にコンパネ等の一般的な型枠部材を用いた場合には、目地部に間詰材を充填した後に型枠を脱型、撤去しなくてはならないため、このような手間を省き更なる作業の効率化が望まれる。
【0015】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、安全且つ効率的に杭頭部材とプレキャスト梁部材との接合作業を行える杭支持構造物の目地部構造及び杭支持構造物の構築方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、杭柱状体の頭部に接合される杭頭部材と、平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるプレキャスト梁部材とを備え、前記杭頭部材の外側面に突設された受棚部に前記天板部の端縁を支持させ、前記プレキャスト梁部材が隣り合う前記杭頭部材間に架設されてなる杭支持構造物にあって、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材との目地部に間詰材が充填されてなる杭支持構造物の目地部構造において、前記受棚部の上面に敷設された緩衝シート材と、前記受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材と、前記受棚部の下端部に固定され、前記側壁部の下端が当接される底型枠部材とを備え、前記受棚部の上面と前記天板部の底面との隙間、前記受棚部の側面と前記側壁部の内側面との隙間及び前記杭頭部材底部と前記側壁部底面との隙間が封鎖されていることにある。
【0017】
請求項2に記載の発明の特徴は、外側面に受棚部が突設された杭頭部材を杭柱状体の頭部に接合させた後、平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるプレキャスト梁部材を、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の外側面より突出した受棚部に支持させて、前記プレキャスト梁部材が隣り合う前記杭頭部材間に架設し、しかる後、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材との目地部に間詰材を充填する杭支持構造物の構築方法において、前記受棚部の上面に敷設される緩衝シート材と、前記受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材と、前記受棚部の下端部に固定された底型枠部材とを予め設けておき、前記プレキャスト梁部材を、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の外側面より突出した受棚部に支持させるとともに、前記側壁部の下端を前記底型枠部材に当接させ、前記受棚部の上面と前記天板部の底面との隙間、前記受棚部の側面と前記側壁部の内側面との隙間及び前記杭頭部材底部と前記側壁部底面との隙間を封鎖した後、前記目地部に間詰材を充填することにある。
【0018】
請求項3に記載の発明の特徴は、杭頭部材の外側面に受棚部が突設された杭頭部材と、平板状の天板部の両側縁より側壁部が垂下されてなるプレキャスト梁部材とを使用し、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の受棚部に支持させた後、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材との目地部に間詰材を充填し、前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材とを接合し、しかる後、接合した前記杭頭部材と前記プレキャスト梁部材とを吊り上げ、前記杭頭部材を杭柱状体の頭部に接合させる杭支持構造物の構築方法において、前記受棚部の上面に敷設される緩衝シート材と、前記受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材と、前記受棚部の下端部に固定された底型枠部材とを予め設けておき、前記プレキャスト梁部材を、前記天板部の端部を隣り合う前記杭頭部材の外側面より突出した受棚部に支持させるとともに、前記側壁部の下端を前記底型枠部材に当接させ、前記受棚部の上面と前記天板部の底面との隙間、前記受棚部の側面と前記側壁部の内側面との隙間及び前記杭頭部材底部と前記側壁部底面との隙間を封鎖した後、前記目地部に間詰材を充填することにある。
【0019】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の構成に加え、前記シール材の上部を前記受棚部の上面より高い位置まで突出させておくことにある。
【0020】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の構成に加え、前記シール材の下部を前記受棚部の下端より低い位置まで突出させておくことにある。
【0021】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の構成に加え、前記シール材の表面に低摩擦材料からなる摩擦低減部が形成されていることにある。
【0022】
請求項7に記載の発明の特徴は、請求項2又は3の構成に加え、前記底型枠部材の上面に底型枠用シール材が固定されていることにある。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る杭支持構造物の目地部構造は、請求項1の構成を具備することによって、不安定な状況にあるプレキャスト梁部材下への足場設置を省略でき、且つ、内型枠の設置を予め地上部で行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る杭支持構造物の構築方法は、請求項2の構成を具備することによって、不安定な状況にあるプレキャスト梁部材下への足場設置を省略でき、且つ、内型枠の設置を予め地上部で行うことにより、安全かつ効率よく杭支持構造物の上部工を構築することができることができる。
【0025】
さらに、本発明において、請求項3の構成を具備することによって、地上部で杭頭部材とプレキャスト梁部材とを接合させる際に、内型枠を設置するために杭頭部材及びプレキャスト梁部材を浮かせる必要がなく効率よく杭頭部材とプレキャスト梁部材との接合作業を行うことができる。
【0026】
また、本発明において、請求項4の構成を具備することによって、当該突出した部分がプレキャスト梁部材に圧し潰されてプレキャスト梁部材と受棚部との間の隙間に密着し、隙間なく封鎖することができる。
【0027】
また、本発明において、請求項5の構成を具備することによって、当該突出した部分が底型枠部材に圧し潰されてプレキャスト梁部材と受棚部との間の隙間に密着し、隙間なく封鎖することができる。
【0028】
さらに、本発明において、請求項6の構成を具備することによって、受棚部とプレキャスト梁部材との接合作業を円滑に行うことができる。
【0029】
また、本発明において、請求項7の構成を具備することによって、当該底型枠用シール材と受棚部の両側面部に沿って固定されたシール材とが相互に圧し潰されてプレキャスト梁部材と受棚部との間の隙間に密着し、隙間なく封鎖することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る杭支持構造物の一例を示す正面図である。
図2】同上の杭柱状体との接合部を示す拡大平面図である。
図3】同上の縦断面図である。
図4】同上のA-A線矢視断面図である。
図5】(a)は図1中のプレキャスト梁部材の一例を示す正面図、(b)は同端部の平面図、(c)は同端部の側面図である。
図6】(a)は図1中の杭頭部材の一例を示す平面図、(b)は同正面図、(c)は同縦断面図である。
図7】本発明に係る杭支持構造物の構築方法における作業手順を示す正面図であって、(a)は杭柱状体を打設した状態、(b)は同杭柱状体に杭頭部材を設置した状態、(c)はプレキャスト梁部材の設置作業の状態を示す図である。
図8】同上のプレキャスト梁部材の設置作業の状態を説明するための簡略化した断面図である。
図9図8(b)におけるシール材の状態を示す簡略化した拡大図である。
図10図8(c)におけるプレキャスト梁部材と接合された際の受棚部の隅部の状態を示す簡略化した拡大図である。
図11】同上のジョイントシースを接続した状態を示す拡大断面図である。
図12】本発明に係る杭支持構造物の構築方法における作業手順を示す正面図であって、(a)はプレストレス導入時の状態を示す図、(b)は完成時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明に係る杭支持構造物の目地部構造の実施態様を図1図6に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1は桟橋等の杭支持構造物、符号2は水底地盤、符号3は水面である。
【0032】
杭支持構造物1は、図1に示すように、水底地盤2に打設された複数の鋼管杭等の杭柱状体4,4…と、杭柱状体4,4…に支持されたコンクリート造の梁部5とを備え、梁部5上に床版部6が形成され、梁部5と床版部6とで上部工7を成している。
【0033】
この杭支持構造物1では、各杭柱状体4の頭部に接合される杭頭部材8と、平板状の天板部12の両側縁より側壁部13が垂下されてなるプレキャスト梁部材9とを備え、杭頭部材8の外側面に突設された受棚部26に天板部12の端縁を支持させ、プレキャスト梁部材9が隣り合う杭頭部材8間に架設され、杭頭部材8とプレキャスト梁部材9との目地部に間詰材が充填されるとともに、杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9とがプレストレスによって接合され、格子状の梁部5が形成されている。
【0034】
ここで、杭頭部材8とプレキャスト梁部材9との目地部とは、杭頭部材8とプレキャスト梁部材9とを接合させる際に生じる継ぎ目であって、この杭支持構造物1の目地部構造は、杭頭部材8の外側面とそれと対向するプレキャスト梁部材9の端面との間に生じた隙間部に間詰材が充填され、杭頭部材8とプレキャスト梁部材9とを一体化するものとなっている。
【0035】
この目地部構造は、受棚部26の上面に敷設された緩衝シート材40と、受棚部26の両側面部に沿って固定されたシール材41,41と、受棚部26の下端部に固定され、側壁部13の下端が当接される底型枠部材42,42とを備え、受棚部26の上面と天板部12の底面との隙間、受棚部26の側面と側壁部13の内側面13aとの隙間及び杭頭部材8底部と側壁部13底面との隙間が封鎖されていることによって、内型枠及び底型枠を用いずに間詰材が充填可能な構造となっている。
【0036】
以下に、この杭支持構造物1及びその目地部構造の各構成について詳述する。
【0037】
杭柱状体4は、鋼管杭やPHC杭等(本実施例では鋼管杭)であって、縦向きの中空筒状に形成され、各杭柱状体4,4…の頭部に杭頭部材8が接合される。
【0038】
また、杭柱状体4は、必要に応じて杭頭部外周面、具体的には杭頭部材8が載荷される部分に上下方向に間隔を置いて複数のシアキー10,10が溶接によって固定されている。
【0039】
さらに、この杭柱状体4には、上端より所定の深さにコンクリート打設用の底型枠11が備えられている。
【0040】
プレキャスト梁部材9は、図5に示すように、工場等で製作されたプレキャストコンクリート部材であって、平板状の天板部12と、天板部12の長手方向両側縁より垂下された側壁部13,13と、側壁部13,13に埋設された梁部材シース14,14とを備えている。
【0041】
側壁部13は、互いに対向する内側面13aが下側に向けて互いの距離が拡開するように傾斜し、プレキャスト梁部材9が後述する受棚部26に対し適正な位置に誘導されるようになっている。
【0042】
各側壁部13,13には、長手方向に向けた複数の梁部材シース14,14が上下に間隔をおいて埋設され、後述する杭頭部材8に埋設された杭頭部材シース15,15と互いに連結されるようになっている。
【0043】
尚、図中符号16は梁部材シース14と杭頭部材シース15とを連結するジョイントシースであって、梁部材シース14及び杭頭部材シース15の内径よりも外径が小さく、梁部材シース14又は杭頭部材シース15の何れか一方の内部に進退可能に収容され、連結時に引き出されて他方のシースと嵌合するようになっている。
【0044】
また、側壁部13,13の接合側端部には、その上面又は外側面の少なくとも一方に開口したシース接続用凹部17,18を備え、このシース接続用凹部17,18内に側壁部13に埋設された梁部材シース14の端部が配置されている。
【0045】
シース接続用凹部17は、天板部12の上面長手方向端部に開口し、上側の梁部材シース14の深さまで至る縦溝状に形成され、シース接続用凹部18は、側壁部13の外側面長手方向端部に開口した横穴状に形成されている。
【0046】
また、各シース接続用凹部17,18は、それぞれ接合面側にも開口し、接合面側の開口を通して杭頭部材シース15,15と連結されるようになっている。
【0047】
尚、シース接続用凹部18は、側壁部13の外側面長手方向端部に開口した横穴状に形成されている場合、図5(a)(c)に示すように、上内側面が長手方向端部側より開口部奥側に向けて傾いたテーパ部18aを設けてもよい。
【0048】
尚、シース接続用凹部17,18は、上述の実施例に限定されず、特に図示しないが、例えば、上下ともに側壁部13,13の外側面長手方向端部に開口したものであってもよく、上面長手方向端部に開口し、且つ、下側の梁部材シース14まで至る深さに形成したものであってもよい。
【0049】
杭頭部材8は、図6に示すように、コンクリートによって一体に形成され、四方に外側面が配置された直方体状の本体部24と、杭柱状体4の頭部が挿入される杭接合部25と、本体部24の各外側面より突出した受棚部26,26…と、受棚部26,26…の両側に開口するように埋設された杭頭部材シース15,15とを備えている。
【0050】
本体部24には、下端部に底型枠部材42,42が固定され、プレキャスト梁部材9の側壁部13下端が当接され、杭頭部材8底部と側壁部13底面との隙間が封鎖されている。
【0051】
底型枠部材42は、鋼材や木材等によって板状に形成され、その上面に底型枠用シール材44が線状あるいは面状に敷設され、底型枠部材42の上面の略全面を覆うように接着剤等によって固定されている。
【0052】
杭接合部25は、本体部24の上下に貫通した丸孔状に形成され、その内側に鞘管27を備え、この鞘管27内に杭柱状体4の頭部が嵌まり込み、杭柱状体4と鞘管27との間隙に打設されたグラウト等の充填材32によって、杭頭部と接合されている。
【0053】
鞘管27は、内径が杭柱状体4の外径より大きく、具体的には、杭柱状体4の水平方向における打設位置のずれの公差に合わせた内径となっている。
【0054】
また、鞘管27の上部内周面には、周方向に間隔をおいて複数の支承部材29,29…が突設され、この支承部材29,29…が杭柱状体4の上端面と係合することによって、杭頭部材8が杭柱状体4の杭頭部に載置できるようになっている。
【0055】
さらに、鞘管27の内周面には、必要に応じて上下方向に間隔を置いて複数のシアキー30,30が溶接によって固定されている。
【0056】
受棚部26は、上面に平坦な支持面26aを有し、幅がプレキャスト梁部材9,9の両側壁部13内側面13a,13aの上端間距離よりやや狭い棚状に形成され、支持面26aが本体部24の上面よりプレキャスト梁部材9,9の天板部12及び緩衝シート材40の厚さ分だけ下がった位置となるように突設されている。
【0057】
尚、受棚部26,26…は、軽量化のため支持面26aの突出方向端縁より下向きに傾斜した傾斜面を有する形状を例に示すが、上面にプレキャスト梁部材9の天板部12端部を支持する支持面を備えていればよく、例えば、直方体状に形成してもよい。
【0058】
また、この受棚部26には、上面に緩衝シート材40が敷設され、両側面部に沿ってシール材41,41が固定され、受棚部26の上面と天板部12の底面との隙間及び受棚部26の側面と側壁部13の内側面13aとの隙間が封鎖されている。
【0059】
緩衝シート材40は、一定の剛性及び厚みを有するゴム板材によって矩形板状に形成され、受棚部26上面の支持面の略全面を覆うように接着剤等によって固定されている。
【0060】
尚、緩衝シート材40は、支持面より長手方向幅がやや狭く、緩衝シート材40の長手方向両端より外側に支持面の端部が露出した状態になっている。
【0061】
また、この緩衝シート材40は、一方の側縁が本体部の外側面に密着した状態で支持面に固定され、緩衝シート材40上に載置された天板部12と支持面との間に隙間が生じないようにしている。
【0062】
シール材41,41は、一定の可撓性及び弾力性を有する高分子材(ポリウレタンやポリエチレンの発泡体)によって受棚部26の全高より長い細長板状又は角棒状に形成され、一方の側縁が本体部の外側面に密着した状態で受棚部26の側面に接着剤等によって固定されている。
【0063】
ここで、一定の可撓性とは、当該シール材41,41が90度以上に折り曲げられても破断しない程度の可撓性を有することをいい、一定の弾力性とは、半分以上の幅に圧縮されても弾性を失わない程度の弾力性を有することをいう。
【0064】
このシール材41,41は、側壁部13の内側面13aと受棚部26の外側面との間に生じる隙間より幅広に形成され、図に示すように、側壁部13の内側面13aと受棚部26の外側面とに圧されて弾性圧縮された状態で両側面間を封鎖するようになっている。
【0065】
このシール材41,41は、予めシール材41,41の上部が受棚部26の上面(支持面)より高い位置まで突出させた状態で固定され、プレキャスト梁部材9を受棚部26に載置させた際に、この上部が天板部12の底面及び側壁部13の内側面13aに圧されて支持面側に折り込まれ、緩衝シート材40と接触することによって、受棚部26の側面と側壁部13の内側面13aとの隙間を封鎖するだけでなく、受棚部26の側面と上面とに跨る隅部が封鎖されるようになっている。
【0066】
また、シール材41,41の表面には、低摩擦材料からなる摩擦低減部43が形成され、互いに対向するシール材41,41と側壁部13の内側面13aとが上下方向で相対移動する際に摩擦によってシール材41,41が剥がれないようにしている。
【0067】
低摩擦材料は、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂からなるテープ材やステンレス製の薄板等を用いることができる。
【0068】
杭頭部材シース15,15は、それぞれ鞘管27の外側に配置され、受棚部26,26…の両側に開口し、且つ、上下方向に間隔をおいて本体部24内に埋設されている。
【0069】
尚、交差する各杭頭部材シース15,15は、交差する方向で互いに干渉しないように高さ位置をずらして配置され、それぞれ接合されるプレキャスト梁部材9,9の梁部材シース14,14の位置と整合するように配置されている。
【0070】
各杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9とは、連通した梁部材シース14,14と杭頭部材シース15,15とにPC部材31が挿通され、PC部材31を緊張した状態で定着することによって、杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9との間にプレストレスが付与され、互いに接合されている。
【0071】
PC部材31は、PC鋼棒、PC鋼線、PC鋼より線の他、鋼線以外の線材等を使用することができる。
【0072】
次に、このような目地部構造を具備する杭支持構造物1の構築方法について図7図12に基づいて説明する。
【0073】
事前準備として、予め工場等でプレキャスト梁部材9,9及び杭頭部材8を製作し、これを施工現場付近までトラック等の輸送手段によって運搬する。
【0074】
尚、プレキャスト梁部材9,9は、図5等に示すように、天板部12及び側壁部13,13を有する断面逆U字状に形成したことによって、従来の矩形断面を有するプレキャスト梁部材9と比べて軽量化されるので、トラック等の輸送手段による輸送が容易となっており、施工現場から離れた工場等での製作が可能となっている。
【0075】
また、杭頭部材8は、各杭柱状体4に接合する部分のみを負担する部分であるので十分に小型軽量化されており、トラック等の輸送手段による輸送が容易となっており、施工現場から離れた工場等での製作が可能となっている。
【0076】
施工現場においては、先ず、図7(a)、に示すように、所定の位置に杭柱状体4,4…を水底地盤2に打設するとともに、杭柱状体4,4…の上端側を水面3より突出した状態とする。
【0077】
そして、各杭柱状体4,4…の打設が完了したら、図3に示すように、各杭柱状体4,4…の上端より所定の深さに底型枠11を設置する。
【0078】
一方、地上においては、予め運搬された杭頭部材8の受棚部26上面に緩衝シート材40を敷設するとともに、受棚部26の両側面部に沿ってシール材41,41を固定し、受棚部26の下端部に固定された底型枠部材42,42とを設ける。尚、緩衝シート材40、シール材41,41及び底型枠部材42,42の設置作業は、杭頭部材を製作した工場において行ってもよい。
【0079】
この時、両シール材41,41は、上部が受棚部26の上面(支持面)より高い位置まで突出し、且つ、下部が受棚部26の下端より低い位置まで突出するように固定される。
【0080】
次に、予め、緩衝シート材40、シール材41,41及び底型枠部材42,42が設置された杭頭部材8をクレーン等で吊り上げ、各受棚部26,26…の方向を調整しつつ、各杭柱状体4,4…の頭部に上方から下降させ、図7(b)に示すように、鞘管27を杭柱状体4の頭部に嵌合させるとともに、支承部材29,29…を杭柱状体4の上端面に支持させ、杭頭部材8を杭柱状体4に仮支持させる。
【0081】
その際、杭柱状体4の外径に対し、鞘管27が大きく形成されているので、杭柱状体4が水平方向の打設位置ズレを生じている場合、杭柱状体4に対し鞘管27をやや偏心した位置に設置することで水平方向の打設位置のズレを吸収し、適正な位置に杭頭部材8を設置することができる。
【0082】
また、鞘管27の内面に固定される支承部材29,29…の高さ位置を調整することによって、杭柱状体4の垂直方向における打設位置のずれを調整することができる。
【0083】
支承部材の態様は、上述の実施例に限定されず、例えば、鞘管27内にH型鋼等を架け渡した状態に設け、杭柱状体4の杭頭部に設けた切り欠け部と嵌合させてもよい。その場合、H型鋼を嵌合させる切り欠け部の切り欠け深さを調整することで杭柱状体4の垂直方向における打設位置のずれを調整することができる。
【0084】
なお、上述の実施例における鞘管27の内面への支承部材29の固定作業およびH型鋼等を使用する際の切り欠け部の切り欠け長の調整作業は、現場で杭柱状体4の打設位置を確認してから切り欠け部長を調整することで、より適正な位置に杭頭部材8を設置することができる。
【0085】
そして、杭頭部材8の杭柱状体4への仮支持が完了したら、杭柱状体4と鞘管27下端開口との間を封止部材(図示せず)によって封鎖し、杭柱状体4と鞘管27との間の間隙に高流動コンクリート又はグラウト等の充填材32を充填し、杭柱状体4に杭頭部材8を固定する。なお、充填材32は、杭柱状体4の上方から充填できるため、作業が容易で的確に充填することができる。
【0086】
次に、プレキャスト梁部材9,9をクレーン等によって吊り上げ、隣り合う各杭柱状体4,4…に接合された杭頭部材8,8間の上方に移動させ、図7(c)、図8に示すように、その位置で下降させ、各杭柱状体4,4…に接合された杭頭部材8,8間にプレキャスト梁部材9,9を架設する。尚、図8図10においては、説明の便宜上、プレキャスト梁部材9、緩衝シート材40及びシール材41にハッチングを付して説明する。
【0087】
その際、下降によってプレキャスト梁部材9の両側壁部13,13が受棚部26,26…の両側部に固定されたシール材41,41の外側に挿し込まれ、シール材41,41の表面に形成された低摩擦材料からなる摩擦低減部43の表面部に対し滑動しながら下降する。
【0088】
よって、シール材41,41と側壁部13内側面との間に生じる摩擦が軽減され、摩擦によるシール材41,41の剥がれ落ちが防止されている。
【0089】
また、プレキャスト梁部材9の側壁部13は、図9に示すように、シール材41,41を側壁部13内側面-受棚部26外側面間に圧縮しつつ降下し、目地部の内側面部、即ち、受棚部26の側面と前記側壁部13の内側面13aとの隙間を上部から順次封鎖しつつ下降する。
【0090】
そして、天板部12の両端部がそれぞれ隣り合う杭頭部材8の受棚部26,26…の支持面上に緩衝シート材40を介して載置されるとともに、側壁部13の下端が杭頭部材8に固定された底型枠部材42,42に当接する。
【0091】
その際、図10に示すように、シール材41,41の上部41aが支持面26aより高い位置まで突出しているので、当該上部41aが天板部12の底面及び側壁部13の内側面13aに押圧されて、支持面側に折り込まれ、緩衝シート材40と接触する。
【0092】
これによって、受棚部26の側面と上面(支持面)とに跨る隅部とプレキャスト梁部材9の側壁部13内側面と天板部12底面とに跨る隅部との間に折り込まれたシール材41,41の上部が隙間なく介在される。
【0093】
また、同様に、受棚部26の下端より突出したシール材41,41の下部が底型枠部材42,42に当接して内側に折り込まれ、受棚部26の側面と底型枠部材42,42との間に生じる隙間を封鎖する。
【0094】
これによって、受棚部26の上面(支持面)と天板部12の底面との隙間、受棚部26の両側面とそれと対向する各側壁部13の内側面13aとの隙間及び杭頭部材8底部と側壁部13底面との隙間が隙間なく連続して封鎖された状態となる。
【0095】
次に、図11に示すように、シース接続用凹部17,18内において作業員がジョイントシース16を梁部材シース14,14より引き出し、ジョイントシース16を杭頭部材シース15,15に連結する。
【0096】
これによって、梁部5を構成する複数のプレキャスト梁部材9,9及び複数の杭頭部材8を貫通した連続したシースが形成される。
【0097】
次に、特に図示しないが、杭頭部材8の外側面とプレキャスト梁部材9の側面、即ち、側壁部13の外側面とに跨るように外型枠を設置し、目地部の上面側を除いた外周部を封鎖する。
【0098】
そして、上面側から杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9との目地部にグラウト等の間詰材21を充填するとともに、シース接続用凹部17,18内にもグラウト等の間詰材21を充填する。
【0099】
その際、受棚部26の上面(支持面)と天板部12の底面との隙間、受棚部26の両側面とそれと対向する各側壁部13の内側面13aとの隙間及び杭頭部材8底部と側壁部13底面との隙間が緩衝シート材40、シール材41,41及び底型枠部材42,42によって隙間なく連続して封鎖された状態にあるので、内型枠を用いずに目地部にグラウト等の間詰材を充填することができ、且つ、それに伴い内型枠の設置及び撤去作業を省略することができる。
【0100】
また、シース接続用凹部18の上内側面部にテーパ部18aを設けている場合、テーパ部18aに誘導されて奥側の隅部までグラウト等の間詰材21が不足なく充填することができる。
【0101】
次に、図12(a)に示すように、梁部5を構成する複数のプレキャスト梁部材9,9及び複数の杭頭部材8を貫通した連続したシースにPC部材31を挿通し、このPC部材31を緊張した状態でその両端部を梁部5の端部を構成する杭頭部材8に定着するか、杭頭部材8に定着用ブロック(特に図示せず)を接合してその定着用ブロックに定着し、隣り合う各杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9との間にポストテンション方式によってプレストレスを付与する。
【0102】
そして、梁部5を構成する複数のプレキャスト梁部材9,9及び複数の杭頭部材8を貫通した連続したシース内にグラウトを注入・硬化させる。
【0103】
次に、図3図12(b)に示すように、鞘管27の上方から場所打ちコンクリート28を打設し、杭柱状体4,4…内及び鞘管27内にコンクリートを充填する。
【0104】
そして、打設したコンクリートを養生・硬化させることによって杭柱状体4と杭頭部材8とが接合され、梁部5が形成され、プレキャストコンクリート床版又は場所打ちコンクリートによって床版部6を形成し、杭支持構造物1が構築される。
【0105】
尚、上述の実施例では、隣り合う各杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9との間にプレストレスを付与したのち、杭柱状体4,4…内及び鞘管27内に場所打ちコンクリート28を充填する例について説明したが、杭柱状体4,4…内及び鞘管27内に場所打ちコンクリート28を充填した後、隣り合う各杭頭部材8とプレキャスト梁部材9,9との間にプレストレスを付与してもよい。
【0106】
このように構成された杭支持構造物1の構築方法では、予め受棚部26の上面に敷設される緩衝シート材40と、受棚部26の両側面部に沿って固定されたシール材41,41と、受棚部26の下端部に固定された底型枠部材42,42とを予め設けておくことによって、目地部にグラウト等の間詰材を充填するための上面内型枠、側面内型枠及び底型枠を設ける必要がなく、杭頭部材8間に不安定な状態で架設されたプレキャスト梁部材9下に足場を設ける必要がなく、当該プレキャスト梁部材9で作業員が作業を行う必要がないので、安全に作業を行うことができる。
【0107】
また、内型枠を用いないので、内型枠を設置及び撤去する作業を省略することのみならず、水面に近い作業を省くことで気象・海象条件の影響を受けにくく、その分、工期の短縮を図ることができる。
【0108】
また、上述の実施例では、先に杭頭部材8を各杭柱状体4に接合し、その後に杭柱状体4に接合された各杭頭部材8,8間にプレキャスト梁部材9を架設し、しかる後にプレストレスを付与する場合について説明したが、先に杭頭部材8とプレキャスト梁部材9とを接合して梁状のブロック体を形成し、しかる後、ブロック体を吊り上げ杭柱状体4に接合させてもよい。
【0109】
即ち、施工現場付近の製作ヤードにおいて、受棚部26の上面に敷設される緩衝シート材40と、受棚部26の両側面部に沿って固定されたシール材41,41と、受棚部26の下端部に固定された底型枠部材42,42とを予め設けた杭頭部材8を地上に互いに間隔をおいて配置し、プレキャスト梁部材9を、天板部12の端部を隣り合う杭頭部材8の外側面より突出した受棚部26に緩衝シート材40を介して支持させるとともに、側壁部13の下端を前記底型枠部材42,42に当接させ、受棚部26の上面と天板部12の底面との隙間、受棚部26の側面と側壁部13の内側面13aとの隙間及び杭頭部材8底部と側壁部13底面との隙間を封鎖するとともに、梁部材シース14と杭頭部材シース15とジョイントシース16を介して接続し、外型枠を設置し、目地部に間詰材を充填する。
【0110】
そして、連通した梁部材シース14と杭頭部材シース15とにPC部材31を挿通し、PC部材31を緊張して定着することによって杭頭部材8とプレキャスト梁部材9とを接合してブロック体を形成し、しかる後、接合した杭頭部材8とプレキャスト梁部材9とからなるブロック体を吊り上げ、ブロック体の杭頭部材8を杭柱状体4の頭部に接合させるようにしてもよい。
【0111】
この実施形態は、施工性が向上するとともに、地上部でブロック体を形成するため品質面および安全面でも効果的である。
【0112】
また、この実施形態では、内型枠を用いないので、内型枠を設置及び撤去するためにプレキャスト梁部材9下に作業員が入り込む必要もなく、大きな嵩上げ等をせずとも地上でブロック体を組み立てることができる。
【0113】
尚、上述の実施例では、プレキャスト梁部材9の側壁部13に設けたシース接続用凹部17,18を使用して、梁部材シース14と杭頭部材シース15とが接続される例について説明したが、シース接続用凹部は、杭頭部材8に設けてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 杭支持構造物
2 水底地盤
3 水面
4 杭柱状体
5 梁部
6 床版部
7 上部工
8 杭頭部材
9 プレキャスト梁部材
10 シアキー
11 底型枠
12 天板部
13 側壁部
14 梁部材シース
15 杭頭部材シース
16 ジョイントシース
17 シース接続用凹部
18 シース接続用凹部
19 シース接続用凹部
21 充填材
22 底面部
24 本体部
25 杭接合部
26 受棚部
27 鞘管
28 場所打ちコンクリート
29 支承部材
30 シアキー
31 PC部材
32 充填材
33 閉鎖板
35 グラウト注入口
36 空気抜き孔
40 緩衝シート材
41 シール材
42 底型枠部材
43 摩擦低減部
44 底型枠用シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12