(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179396
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】防災設備、消火栓設備、固定部材及び設置方法
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20241219BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098210
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竜治
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189DB07
2E189EC07
(57)【要約】
【課題】トンネル補強工事後に十分な設置強度を備えた防災設備、消火栓設備、固定部材及び設置方法を提供する。
【解決手段】トンネル10の補強工事が行われる前に、監視員通路の所定箇所に開口を形成し、当該開口に対応した既存のトンネル壁面18aに固定部材70の側面を固定し、補強工事が行われるときに、消火栓装置30を設置する架台62が固定される上面が露出するように、固定部材70の側面をコンクリート覆工体16に埋設し、補強工事が終了した後に、固定部材70の上面に架台62を固定し、当該架台62に消火栓装置30を設置する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存のトンネル壁面に設置された防災装置が、前記トンネル壁面を覆工する補強工事に伴って、前記トンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置される防災設備であって、
前記既存のトンネル壁面に固定され、覆工されたトンネル壁面に一部が埋込設置された固定部材と、
前記固定部材上に連結固定され、前記防災装置が設置される架台と、
を備えたことを特徴とする防災設備。
【請求項2】
既存のトンネル壁面に設置された消火栓装置が、前記トンネル壁面を覆工する補強工事に伴って、前記トンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置される消火栓設備であって、
前記既存のトンネル壁面に固定され、覆工されたトンネル壁面に一部が埋込設置された固定部材と、
前記固定部材上に連結固定され、前記消火栓装置が設置される架台と、
を備えたことを特徴とする消火栓設備。
【請求項3】
請求項2記載の消火栓設備において、
前記固定部材は、前記覆工されたトンネル壁面内部の少なくとも2個所に埋込設置されたことを特徴とする消火栓設備。
【請求項4】
請求項2記載の消火栓設備において、
前記固定部材は、
前記既存のトンネル壁面に固定されると共に、前記覆工されたトンネル壁面に埋設される第1面と、
前記第1面が前記既存のトンネル壁面に固定された状態で、前記架台を水平に固定可能な第2面と、
を備えたことを特徴とする消火栓設備。
【請求項5】
請求項4記載の消火栓設備において、
前記固定部材の前記第1面は、前記既存のトンネル壁面に略等しい湾曲形状であることを特徴とする消火栓設備。
【請求項6】
請求項2記載の消火栓設備において、
前記架台上に移設設置された前記消火栓装置の側方に設置され、前記監視員通路下の配水本管から分岐して当該消火栓装置に接続された給水配管及び当該給水配管に設けられた制水弁を収納する配管格納箱を備えたことを特徴とする消火栓設備。
【請求項7】
請求項6記載の消火栓設備において、
前記配管格納箱は、前記架台に設置されたことを特徴とする消火栓設備。
【請求項8】
トンネル壁面を覆工する補強工事が行われる際に、消火栓設備をトンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置するための固定部材であって、
既存のトンネル壁面に固定される側の第1面と、
消火栓装置が設置される架台を連結固定する側の第2面と、
を備え、
前記補強工事が行われるときに、前記第1面側が前記覆工されたトンネル壁面に埋設されることを特徴とする固定部材。
【請求項9】
トンネル壁面を覆工する補強工事が行われる際に、消火栓設備を前記トンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に移設する消火栓設備の設置方法であって、
前記補強工事が行われる前に、前記監査廊又は前記監視員通路の所定箇所に開口を形成し、当該開口に対応した既存のトンネル壁面に固定部材の第1面を固定し、
前記補強工事が行われるときに、前記固定部材の消火栓装置を設置する架台が固定される部位である第2面が露出するように、前記固定部材の第1面側を前記覆工されるトンネル壁面に埋設し、
前記補強工事が終了した後に、前記固定部材の第2面に前記架台を固定し、当該架台に前記消火栓装置を設置することを特徴とする消火栓設備の設置設法。
【請求項10】
請求項9記載の消火栓設備の設置方法において、
前記補強工事が行われるときに、前記固定部材の第2面が露出するように前記監視員通路の開口を閉塞することを特徴とする消火栓設備の設置設法。
【請求項11】
請求項9記載の消火栓設備の設置方法において、
前記固定部材の第2面に固定された前記架台に前記消火栓装置が設置された後に、制水弁が設けられた給水配管を配水本管から分岐して前記消火栓装置に接続し、
前記給水配管を前記消火栓装置に接続した後に、当該給水配管を格納する配管格納箱を、前記固定部材の第2面側に固定された架台に設置することを特徴とする消火栓設備の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用ホース等を収納してトンネル内に設置された消火栓装置を含む防災設備、消火栓設備、それらをトンネル内に設置するための固定部材及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路等のトンネル内には、防災設備として消火栓装置が設置されている。このような消火栓装置は、例えば、前傾式の消火栓扉(前傾扉)を備えた筐体内部の消火栓収納部に、先端に放水ノズルが装着された消火用ホースや消火栓弁を含むバルブ類等が収納され、また、消火器扉を備えた筐体内部の消火器収納部に、2本の消火器が収納されている。また、消火栓装置は、一般的にトンネル長手方向、例えば、50メートル間隔で、監視員通路(監査廊)が設けられたトンネル壁面の箱抜部に設置されている(特許文献1)。
【0003】
一方、このようなトンネルでは、耐震性を向上させる場合や、経年変化によりトンネル壁面が劣化した場合に、トンネル強度を向上させるための補強工事として、補強材によりトンネル覆工(巻き立て)を行う場合がある。トンネル覆工は、トンネル躯体の内壁に沿って、例えば、所定厚さのコンクリートを既存のトンネル壁面に巻き立てる内巻工法が用いられる。
【0004】
補強工事のトンネル覆工では、トンネル壁面には、消火栓装置が設置されている箱抜部を含めて新たなコンクリートが充填されるため、従来のトンネル壁面はこのコンクリートにより埋め立てられ、また、監視員通路の少なくとも一部は取り崩されてしまう。そのため、トンネル壁面の箱抜部に設置されていた既存の消火栓装置を、トンネル覆工後に監視員通路まで移設する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トンネル覆工後のトンネル壁面や既存の監視員通路の床板(コンクリート路盤)はコンクリートの強度が弱いため、従来通り消火栓装置の架台を固定するために、設置用のアンカーボルト等をトンネル壁面や監視員通路の床板に打つと、アンカー強度が不足して消火栓装置の設置に関わる耐震性が低下するという問題がある。
【0007】
架台の脚部を監視員通路の床板の下まで延ばす方法は、監視員通路の床板の下が砂や砂利などで埋め戻されている場合、架台の脚部がこの砂や砂利などの上に設置されることになるため設置強度が足らず、更に、砂や砂利に含まれる水分により架台が腐食することから採用できない。また、床板の下に敷設されている配水本管から分岐した給水配管に制水弁が設けられている場合は、制水弁の上部付近に消火栓装置が配置されるため、この制水弁の操作が困難になるという問題もある。
【0008】
本発明は、このような消火栓装置の移設の問題に対しての解決策を提案するものであり、トンネル補強工事後に十分な設置強度を備えた防災設備、消火栓設備、固定部材及び設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[防災設備]
本発明は、既存のトンネル壁面に設置された防災装置が、トンネル壁面を覆工する補強工事に伴って、トンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置される防災設備であって、
既存のトンネル壁面に固定され、覆工されたトンネル壁面に一部が埋込設置された固定部材と、
固定部材上に連結固定され、防災装置が設置される架台と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
[消火栓設備]
本発明は、既存のトンネル壁面に設置された消火栓装置が、トンネル壁面を覆工する補強工事に伴って、トンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置される消火栓設備であって、
既存のトンネル壁面に固定され、覆工されたトンネル壁面に一部が埋込設置された固定部材と、
固定部材上に連結固定され、消火栓装置が設置される架台と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
[固定部材の設置数]
固定部材は、覆工されたトンネル壁面内部の少なくとも2個所に埋込設置される。
【0012】
[固定部材の構造]
ここで、固定部材は、
既存のトンネル壁面に固定されると共に、覆工されたトンネル壁面に埋設される第1面と、
第1面が既存のトンネル壁面に固定された状態で、架台を水平に固定可能な第2面と、
を備える。
【0013】
[固定部材の形状]
また、固定部材の第1面は、既存のトンネル壁面に略等しい湾曲形状である。
【0014】
[配管格納箱]
本発明の消火栓設備は、架台上に移設設置された消火栓装置の側方に設置され、監視員通路下の配水本管から分岐して当該消火栓装置に接続された給水配管及び給水配管に設けられた制水弁を収納する配管格納箱を備える。
【0015】
ここで、配管格納箱は、消火栓装置と共に架台に設置される。
【0016】
[固定部材]
本発明は、トンネル壁面を覆工する補強工事が行われる際に、消火栓設備をトンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置するための固定部材であって、
既存のトンネル壁面に固定される側の第1面と、
消火栓装置が設置される架台を連結固定する側の第2面と、
を備え、
補強工事が行われるときに、第1面側が覆工されたトンネル壁面に埋設されることを特徴とする。
【0017】
[消火栓設備の設置方法]
本発明は、トンネル壁面を覆工する補強工事が行われる際に、消火栓設備をトンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に移設する消火栓設備の設置方法であって、
補強工事が行われる前に、監査廊又は監視員通路の所定箇所に開口を形成し、当該開口に対応した既存のトンネル壁面に固定部材の第1面を固定し、
補強工事が行われるときに、固定部材の消火栓装置を設置する架台が固定される部位である第2面が露出するように、固定部材の第1面側を覆工されるトンネル壁面に埋設し、
補強工事が終了した後に、固定部材の第2面に架台を固定し、当該架台に消火栓装置を設置することを特徴とする。
【0018】
また、補強工事が行われるときに、固定部材の第2面が露出するように監視員通路の開口を閉塞する。
【0019】
[配管格納箱の設置方法]
更に、固定部材の第2面に固定された架台に消火栓装置が設置された後に、制水弁が設けられた給水配管を排水本管から分岐して消火栓装置に接続し、
給水配管を消火栓装置に接続した後に、当該給水配管及び制水弁を格納する配管格納箱を、固定部材の第2面側に固定された架台に設置する。
【発明の効果】
【0020】
[防災設備及び消火栓設備の効果]
本発明は、既存のトンネル壁面に設置された防災装置及び消火栓装置が、トンネル壁面を覆工する補強工事に伴って、トンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置される防災設備及び消火栓設備であって、既存のトンネル壁面に固定され、覆工されたトンネル壁面に一部が埋込設置された固定部材と、固定部材上に連結固定され、防災装置が設置される架台と、を備えたことで、トンネル壁面の箱抜部に設置されていた既存の消火栓装置を、高さ方向はそのままで前方の監視員通路の路面(床板)の位置に移設することができ、また、監視員通路の路面と架台が分離される場合は、架台の腐食を防止できる。
【0021】
[固定部材の効果]
固定部材は、覆工されたトンネル壁面内部の少なくとも2個所に埋込設置され、既存のトンネル壁面に固定されると共に、覆工されたトンネル壁面に埋設される第1面と、第1面が既存のトンネル壁面に固定された状態で、架台を水平に固定可能な第2面と、を備え、固定部材の第1面は、既存のトンネル壁面に略等しい湾曲形状であることで、監視員通路の下に敷設された配水本管が、監視員通路の床板の直下に配置されているような場合であっても、当該配水本管に緩衝しないように固定部材を設置することができる。
【0022】
[配管格納箱の効果]
本発明の消火栓設備は、架台上に移設設置された消火栓装置の側方に設置され、監視員通路下の配水本管から分岐して当該消火栓装置に接続された給水配管及び給水配管に設けられた制水弁を収納する配管格納箱を備え、配管格納箱は、架台に設置されたことで、消火栓装置に接続される給水配管及び制水弁の収納スペースを確保することができる。
【0023】
[固定部材の効果]
本発明は、トンネル壁面を覆工する補強工事が行われる際に、消火栓設備をトンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に設置するための固定部材であって、既存のトンネル壁面に固定される側の第1面と、消火栓装置が設置される架台を連結固定する側の第2面と、を備え、補強工事が行われるときに、第1面側が前記覆工されたトンネル壁面に埋設されることで、消火栓装置が設置される架台を固定するための固定部材を、コンクリートの強度が強い既存(トンネル覆工前)のトンネル壁面に打ち込まれたアンカー(アンカーナット)にボルトで固定することができ、消火栓装置の設置に関わる耐震性の低下を防止できる。
【0024】
[消火栓設備の設置方法の効果]
本発明は、トンネル壁面を覆工する補強工事が行われる際に、消火栓設備をトンネル壁面に沿った監査廊又は監視員通路上に移設する消火栓設備の設置方法であって、補強工事が行われる前に、監査廊又は監視員通路の所定箇所に開口を形成し、当該開口に対応した既存のトンネル壁面に固定部材の第1面を固定し、補強工事が行われるときに、固定部材の消火栓装置を設置する架台が固定される部位である第2面が露出するように、固定部材の第1面側を覆工されるトンネル壁面に埋設すると共に、固定部材の第2面が露出するように監視員通路の開口を閉塞し、補強工事が終了した後に、固定部材の第2面に架台を固定し、当該架台に消火栓装置を設置することで、トンネル補強工事の前に、コンクリートの強度が強い既存のトンネル壁面に固定部材を設置して位置や角度の調整ができるため、監視員通路の勾配にも対応でき、また、補強工事の施工工程に支障が生じない。
【0025】
[配管格納箱の設置方法の効果]
また、固定部材の第2面に固定された架台に消火栓装置が設置された後に、制水弁が設けられた給水配管を配水本管から分岐して消火栓装置に接続し、給水配管を消火栓装置に接続した後に、当該給水配管及び制水弁を格納する配管格納箱を、固定部材の第2面側に固定された架台に設置することで、トンネル補強工事で監視員通路の配水本管を含む床板下が砂や砂利で埋設されても、給水配管に設けられた制水弁の配置や操作性が適切に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による消火栓装置の移設前の設置状態を側面から見た説明図である。
【
図2】
図1の消火栓装置を正面から見た説明図である。
【
図3】本発明による消火栓装置の移設後の設置状態を側面から見た説明図である。
【
図4】
図3の消火栓装置を正面から見た説明図である。
【
図5】
図3の消火栓装置の設置状態を詳細に示した説明図である。
【
図6】
図5の架台と固定部材を取り出して示した説明図である。
【
図7】本発明による固定部材を示した斜視図である。
【
図8】本発明による消火栓装置の設置工程を模式的に示す説明図である。
【
図9】本発明による消火栓装置の設置工程を模式的に示す説明図である。
【
図10】本発明による消火栓装置の設置工程を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る防災設備、固定部材及び設置方法の実施形態を、防災設備として消火栓設備を例にして、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0028】
[実施形態の基本的な概念]
まず、実施形態の基本的概念について説明する。実施形態は、概略的に、筐体内に収納された消火用ホースが消火活動により引き出される消火栓装置を備えた消火栓設備に関するものである。
【0029】
ここで、「消火栓装置」とは、消火対象領域となる、例えば、高速道路や自動車専用道路のトンネル内等に設置される防災設備の一種である。消火栓装置は、内部に消火用ホース、消火栓弁を含むバルブ類、消火栓弁の開閉操作を行う消火栓弁開閉レバー等の消火栓機器が収納又は設置されたものであり、その他にも、赤色表示灯や発信機等の非常通報機器が設置されたり、消火器が収納されたりするものも含まれる。
【0030】
また、実施形態の消火栓装置は、監視員通路が設けられたトンネル壁面の箱抜部に設置された状態から、トンネル補強工事に伴う移設により、監視員通路上に露出して設置される消火栓装置に関し、架台上に筐体が係合して設置されるものである。
【0031】
ここで、「トンネルの補強工事」及び「トンネル補強工事」とは、トンネルの耐震性を向上させる場合や、長期間の使用によりトンネル壁面が徐々に劣化してトンネル強度が低下した場合に、トンネル強度を向上させるための補強工事であり、既存のトンネル壁面に覆工を行うことである。
【0032】
実施形態のトンネル覆工は、補強材として所定厚さのコンクリートを巻き立てる内巻工法を想定しており、その場合、消火栓装置を設置するためにトンネル壁面に箱抜きされた空間(消火栓収納部)と、監視員通路下に敷設されている配水本管と消火栓装置とを接続するための給水配管を配置するためにトンネル壁面に箱抜きされた空間(配管収納部)とで構成された箱抜部はコンクリートにより埋め戻されるため、トンネル補強工事後に消火栓装置をトンネル補強工事前の状態に戻すことができない。
【0033】
従って、消火栓装置は、トンネル補強工事前とは別の場所に移設されることになるが、移設後の消火栓装置は、補強工事後のトンネル躯体と同等な耐震性を有する設置強度が必要となるが、既存の監視員通路の床板やトンネル覆工後のトンネル壁面(コンクリート覆工体)はコンクリートの強度が弱いため、単に、消火栓装置を監視員通路上やトンネル覆工後のトンネル壁面に設置するだけでは、このような設置強度を得ることは難しい。
【0034】
そこで、実施形態の移設作業では、補強工事前にトンネル壁面の箱抜部に設置されている消火栓装置を、架台及び配水本管と消火栓装置を接続する給水配管と共に撤去し、その後、監視員通路の箱抜部の前方の所定箇所を開削して、監視員通路の床板に所定範囲で開口を形成する。次に、当該開口の下側であって、監視員通路の床面下側となる既存のトンネル壁面に、消火栓装置を設置するための固定部材を固定する。
【0035】
ここで、「架台」とは、柱と梁などによって物を支える構造を指すものであり、支持台、土台、基台、台座、ベースなどの概念を含むものである。実施形態の架台は、鋼板製、例えば、板材やアングル材が溶接により直方体のフレーム構造に形成された部材であり、消火栓装置の移設前はトンネル壁面の箱抜部に固定され、消火栓装置の移設に伴い監視員通路の路面上に固定部材を介して固定される。
【0036】
また、「固定部材」とは、消火栓装置をトンネル内に設置するために使用されるものであって、既存のトンネル壁面に固定される第1面及び消火栓装置を設置する架台が固定される第2面を備えた鋼板製、例えば、アングル材が溶接により形成された略「フ」字状の部材であり、この場合、「フ」の上側の横棒部が第1面、横棒部から下方に延びた縦棒部が第2面を構成する。
【0037】
そして、トンネル覆工が行われるときに、例えば、固定部材の第2面の架台を固定する部位が露出するように、固定部材の第1面側を補強材のコンクリートにより補強後のトンネル壁面に埋設する。
【0038】
トンネル補強工事が終了した後に、固定部材の第2面に架台を固定して、トンネル補強工事前に撤去された消火栓装置を当該架台に設置する。その後、架台に設置された消火栓装置と配水本管とを制水弁が設けられた給水配管で接続する。
【0039】
このとき、監視員通路の床板の下に配置された配水本管から分岐した給水配管は、トンネル補強工事前と同様に、消火栓装置内部の配管へ消火栓装置の側方から接続されるため、給水配管及び制水弁は、消火栓装置の側方に露出することになる。
【0040】
給水配管及び制水弁が露出しないように収納するために、露出した給水配管及び制水弁を格納する配管収納箱が消火栓装置の側方に隣接して設置されてもよく、この場合、箱配管収納箱は、消火栓装置が設置された架台に当該消火栓装置と共に設置される。
【0041】
ここで、「配管収納箱」とは、トンネル内に設置される消火栓装置に付属する箱部材であって、消火栓装置と配水本管とを接続する給水配管及び当該給水配管に設けられた制水弁を格納し、消火栓装置の側方に設置される。配管収納箱は、箱状のカバー部材消火栓装置に接する側が開口した箱状のカバー部材であり、また、前面(正面)には、制水弁を操作するための操作扉が設けられている。
【0042】
以下、具体的な実施形態を説明する。実施形態は、トンネル覆工に伴い移設される消火栓装置について、トンネル壁面の箱抜部に埋め込み設置された既存の消火栓装置をトンネル覆工後に監視員通路上に移設する場合について説明するものである。
【0043】
尚、「配置」、「設置」、「収納」、「備える」、「設けられた」等の用語は、それぞれの用語が表現として代替し得る他の用語を包括し得るものであり、その他にも「取り付け」「取付」、「固定」、「装着」等、用語の意味合いから代替し得る用語の意味合いを含み得る概念である。
【0044】
[実施形態の具体的内容]
実施形態の消火栓装置、固定部材及びそれらの設置方法について、次のように分けて具体的に説明する。
a.消火栓装置
a1.消火栓装置
a2.配管収納箱
b.架台
c.固定部材
c1.固定部材
c2.固定部材の他の実施形態
d.消火栓装置の設置方法
d1.消火栓装置及び給水配管の撤去
d2.監視員通路の床板に開口を形成
d3.固定部材の固定
d4.固定部材のトンネル覆工面内への埋設
d5.監視員通路の再構成
d6.架台の固定部材への固定
d7.消火栓装置の架台への設置
d8.配管及び制水弁の消火栓装置への接続
d9.配管収納箱の架台への設置
e.本発明の変形例
【0045】
[a.消火栓装置]
消火栓装置について具体的に説明する。当該説明にあっては、本発明による消火栓装置の移設前の設置状態を側面(トンネル断面方向)から見た
図1、
図1の消火栓装置を正面から見た
図2、本発明による消火栓装置の移設後の設置状態を側面から見た
図3、及び、
図3の消火栓装置を正面から見た
図4を参照する。
【0046】
ここで、
図1乃至
図4の説明では、X-Y-Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、消火栓装置の前面を正面に見て、X方向を左右方向とし、Y方向を上下方向とし、Z方向を前後方向とする。また、X方向における+X側を右側、-X側を左側とし、Y方向における+Y側を上側、-Y側を下側とし、Z方向における+Z側を前側、-Z側を後側とする。この点は、本発明の実施形態となる
図5乃至
図10においても同様となる。
【0047】
(a1.消火栓装置)
図1に示すように、トンネル内の路面12に並行してアーチ形状のコンクリート枠体で構築されたトンネル躯体14のトンネル壁面18aに沿って監視員通路20が設けられている。トンネル壁面18aの監視員通路20の位置には、トンネル躯体14を箱抜きして形成された消火栓収納部22aが、例えば、50m間隔で設けられ、トンネル補強工事の前には、消火栓収納部22aに移設前の消火栓装置30が収納されている。
【0048】
図1、2に示すように、監視員通路20の内部(床板20aの下方)には、配水本管24がトンネル長手方向に敷設され、配水本管24から消火栓装置30の側方に立ち上げられた給水配管26が、監視員通路20の下方にトンネル躯体14を箱抜きして形成された配管収納部22bを通って、消火栓装置30の内部配管と接続されている。給水配管26には、制水弁28が設けられている。
【0049】
消火栓装置30は、消火栓収納部22aに設置された架台60上に設置され、消火栓扉32及び保守扉34の内側には消火用ホース、消火栓弁を含むバルブ類、消火栓弁の開閉操作を行う消火栓弁開閉レバー等の消火栓機器が収納又は設置されている。また、消火栓装置30の扉36には、赤色表示灯38や発信機40等の非常通報機器が設置され、消火器扉42の内側には消火器が収納されている。
【0050】
図3に示すように、トンネル補強工事の後には、トンネル躯体14の内側にコンクリート覆工体16により新たなトンネル壁面18bが形成され、トンネル補強工事の前には消火栓装置30が収納されていた消火栓収納部22aと給水配管26が収納されていた配管収納部22bで構成された箱抜部22もコンクリートが充填されている。
【0051】
図3、4に示すように、トンネル補強工事により消火栓収納部22aが埋め立てられたため、消火栓装置30は、埋め立てられた消火栓収納部22aの前方の監視員通路20の路面上に、固定部材70に固定された架台62を介して設置されている。また、配水本管24から消火栓装置30の側方に立ち上げられた給水配管26が、消火栓装置30の内部配管と接続され、給水配管26には制水弁28が設けられている。固定部材70や消火栓装置30の設置方法の具体例は後述する。
【0052】
(a2.配管収納箱)
図4に示すように、トンネル補強工事の後に監視員通路20の路面上に移設された消火栓装置30の側方には、監視員通路20の下の配水本管24から分岐して消火栓装置30に接続された給水配管26を収納する配管格納箱50が配置され、配管格納箱50には、制水弁28の操作や給水配管26を保守点検するための操作扉52が設けられている。配管格納箱50が設けられたことで、給水配管26を隠蔽することができ、また、給水配管26に設けられている制水弁28を道路利用者等が誤操作することも防止できる。
【0053】
図4において、配管格納箱50は、監視員通路20の路面上に新たに固定された架台62に消火栓装置30と共に設置されているが、トンネルの補強工事前に消火栓収納部22a内で消火栓装置30を設置していた架台60が流用(再利用)される場合には、専用の架台が使用されてもよく、架台を使用せずに直接監視員通路20の路面上に設置可能な構成であっても構わない。配管格納箱50の設置方法の具体例は後述する。
【0054】
[b.架台]
架台について具体的に説明する。当該説明にあっては、
図3の消火栓装置の設置状態を詳細に示した
図5、
図5の架台と固定部材を取り出して示した
図6を参照する。なお、
図6(A)は固定部材の平面を示し、
図6(B)固定部材に固定された架台の正面を示している。
【0055】
図5、6に示すように、架台62は、鋼板製、例えば、板材やアングル材が溶接により直方体のフレーム構造に形成され、移設される消火栓装置30を設置するために新たに設定されたものであり、移設前に使用されていた架台60(
図1、2参照)と同様に消火栓装置30が設置される消火栓装置設置面62aに加え、新たに配管格納箱50が設置される配管格納箱設置面62bを備えている。
【0056】
架台62の上面側である消火栓装置設置面62a、配管格納箱設置面62bには、消火栓装置30や配管格納箱50の筐体をボルト結合するための筐体設置孔64が、設置される筐体に応じて適宜形成されている。また、架台62の下面側の2箇所には、固定用長孔66を介して固定部材70がボルト74によりボルト留めされている。
【0057】
[c.固定部材]
固定部材について具体的に説明する。当該説明にあっては、
図5及び
図6に加え、本発明による固定部材を示した
図7を参照する。なお、
図7(A)は固定部材の実施形態を示し、
図7(B)は固定部材の他の実施形態を示す。
【0058】
(c1.固定部材)
図5及び
図7(A)に示すように、実施形態の固定部材70は、フ字形状に形成されたアングル部材により形成され、既存の(補強工事前の)トンネル壁面18aに固定されると共に、覆工された(補強工事後の)トンネル壁面18bに埋設される第1面70aと、第1面70aが既存のトンネル壁面18aに固定された状態で、架台62を水平に固定可能な第2面70bとを備える。
【0059】
固定部材70の第1面70aは、既存のトンネル壁面18aに略等しい湾曲形状を有し、既存のトンネル壁面18aに固定されるときに、トンネル躯体14に打ち込まれたアンカーナット90にボルト留めするボルト74を通すための長孔76が、例えば、2箇所空けられている。また、第2面70bには、架台62をナット80で固定するためのアンカーボルト78が、例えば、2本起立している。
【0060】
固定部材70の2本のアンカーボルト78の設置間隔は、消火栓装置30が移設前に設置されていた架台60用に消火栓収納部22aの床面に起立していたアンカーボルトの設置間隔と同寸法に設定されている。また、
図6に示すように、監視員通路20に勾配θがある場合には、架台62の接合面52a、52bが水平になるように固定部材70の固定高さを調整することで、消火栓装置30が水平に設置される。
【0061】
(c2.固定部材の他の実施形態)
図7(B)に示すように、他の実施形態の固定部材72は、フ字形状に形成されたチャンネル部材により形成され、既存の(補強工事前の)トンネル壁面18aに固定されると共に、覆工された(補強工事後の)トンネル壁面18bに埋設される第1面72aと、第1面72aが既存のトンネル壁面18aに固定された状態で、架台60を水平に固定可能な第2面72bとを備える。固定部材72は、前述の固定部材70に対してアングル材がチャンネル材に変更されていること以外の形態は同様であるため、他の説明は省略する。
【0062】
[d.消火栓装置の設置方法]
消火栓装置の設置方法、特に、トンネル補強工事に付随する消火栓装置の移転方法について具体的に説明する。当該説明にあっては、
図5及び
図6に加え、本発明による消火栓装置の設置方法(移転工程)を模式的に示す
図8乃至10を参照する。なお、
図8(A)はトンネル補強工事前の状態、
図8(B)は消火栓装置及び給水配管を撤去した状態、
図8(C)は監視員通路所定箇所に開口を形成した状態を示し、
図9(A)は固定部材を既存(補強工事前)のトンネル壁面に固定した状態、
図9(B)は固定部材がトンネル覆工面内へ埋設された状態、
図9(C)は監視員通路を再構成した状態を示し、
図10(A)は架台を固定部材へ固定した状態、
図10(B)は消火栓装置を架台へ設置して配管及び制水弁を接続した状態、
図10(C)は配管収納箱を架台へ設置した状態を示している。
【0063】
(d1.消火栓装置及び給水配管の撤去)
図8(A)に示すように、トンネル補強工事が開始される以前(既存)の状態では、消火栓装置30は、トンネル躯体14を箱抜きして形成された消火栓収納部22aに収納され、監視員通路20の内部(床板20aの下方)に敷設された配水本管24から消火栓装置30の側方に立ち上げられた給水配管26が、消火栓装置30の内部配管と接続されている。給水配管26は、トンネル躯体14を箱抜きして形成された配管収納部22bに配置され、制水弁28が設けられている。
【0064】
トンネル補強工事におけるトンネル覆工により、消火栓装置30が収納された消火栓収納部22a及び給水配管26が収納された配管収納部22bは、覆工用の補強材であるコンクリートにより埋め戻されるため、トンネル補強工事後に消火栓装置をトンネル補強工事前の状態に戻すことができない。そこで、
図8(B)に示すように、消火栓装置30及び制水弁28を含む給水配管26は、トンネル覆工が始まる前に撤去される。
【0065】
(d2.監視員通路の床板に開口を形成)
消火栓装置30及び制水弁28を含む給水配管26が箱抜部22から撤去された後、トンネル覆工が始まる前に、
図8(C)に示すように、消火栓収納部22aの前方の監視員通路20の床板20aに所定箇所を開削して、床板20aに所定範囲で開口20bを形成する。
【0066】
ここで、床板20aを開削する箇所は、トンネル補強工事後に消火栓装置30を設置する位置に固定部材70を固定できる場所であり、開口20bを形成する範囲は、監視員通路20の床面下側となる既存のトンネル壁面18aに固定部材70を固定する作業ができるように設定される。実施形態では、床板20aの開口20bは固定する固定部材70毎に形成されているが、固定部材70に固定される架台62毎に形成されてもよい。
【0067】
(d3.固定部材の固定)
監視員通路20の床板20aに開口22bを形成した後、
図9(A)に示すように、消火栓装置30を設置する架台62を固定するための固定部材70を、開口22bを介して監視員通路20の床面下側となる既存のトンネル壁面18aに第1面70aが当接するように、ボルト74で(
図5に示すアンカーナット90に)固定する。
【0068】
ここで、
図6に示すように、監視員通路20に勾配θがある場合には、架台62の消火栓装置設置面62a及び配管格納箱設置面62bが水平になるように、固定部材70の長孔76により固定高さを調整することで、消火栓装置30が水平に設置される。
【0069】
(d4.固定部材のトンネル覆工面内への埋設)
トンネル壁面18aに固定部材70が固定された後、
図9(B)に示すように、トンネル躯体14のトンネル壁面18aに沿って補強材によりトンネル覆工が行われる。トンネル覆工は、例えば、補強材として所定厚さのコンクリートを既存のトンネル壁面18aに打設する(巻き立てる)。
【0070】
コンクリートが打設されるときに、固定部材70の第1面70a側を、固定部材70の第2面70bの架台62を固定する部位が露出するように、補強後のトンネル壁面18bに埋設する。
【0071】
(d5.監視員通路の再構成)
補強後のトンネル壁面18bに固定部材70の第1面70a側が埋設された後、
図9(C)に示すように、監視員通路20を再構成、すなわち、監視員通路20に形成された開口20bにコンクリートを打設して再構成床板20cとする。
【0072】
その際に、固定部材70の第2面70bが露出するように、監視員通路20に形成された開口20bにコンクリートを打設することで、架台62を監視員通路20の路面から分離できるため、架台62の腐食を防止できる。但し、施工状況等により固定部材70の第2面70bが埋設され、第2面70bに起立しているアンカーボルト78だけが露出する形態であっても構わない。
【0073】
(d6.架台の固定部材への固定)
監視員通路20が再構成されて再構成床板20cが形成された後、
図10(A)に示すように、固定部材70の第2面70bに起立しているアンカーボルト78に架台62の固定用長孔66(
図6参照)を係合させ、ナット80(
図10では未図示、
図5参照)により架台62を固定する。
【0074】
(d7.消火栓装置の架台への設置)
固定部材70に架台62が固定された後、
図10(B)に示すように、架台62の消火栓装置設置面62a(
図6参照)に消火栓装置30を載置して、筐体設置孔64を使用してボルト留めすることで、架台62に消火栓装置30を設置する。
【0075】
(d8.配管及び制水弁の消火栓装置への接続)
架台62に消火栓装置30が設置された後、
図10(B)に示すように、消火栓装置30の内部配管と配水本管24とを、消火栓装置30が補強公示前の消火栓収納部22aに収納されていたときと同様に、制水弁28が設けられた給水配管26で接続する。
【0076】
ここで、給水配管26は、架台62の配管格納箱設置面62b(
図6参照)及び監視員通路20の再構成床板22cに形成した貫通孔(未図示)を通って配水本管24に接続される。
【0077】
(d9.箱配管収納部の架台への設置)
消火栓装置30に制水弁28が設けられた給水配管26が接続された後、
図10(C)に示すように、給水配管26及び制水弁28を格納する配管格納箱50を、固定部材70の第2面70bに固定された架台62の配管格納箱設置面62bに設置する。
【0078】
なお、制水弁28を設けた給水配管28を設置する前に、配管格納箱50を架台62上に設置し、その後に、消火栓装置30に制水弁28が設けられた給水配管26を接続するようにしてもよい。
【0079】
トンネルの補強工事前に消火栓収納部22a内で消火栓装置30を設置していた架台60が流用(再利用)される場合には、配管格納箱50専用の架台が使用されてもよく、架台を使用せずに直接監視員通路20の路面上に設置可能な構成であっても構わない
[e.本発明の変形例]
上記の実施形態では、トンネル補強工事に付随する消火栓装置の移転方法につて記載しているが、本発明は「移転」ではなくトンネル補強工事後に新たな消火栓装置を「設置」する場合についても適用可能である。
【0080】
また、上記の実施形態では、固定部材を既存のトンネル壁面(トンネル躯体)に固定する作業に関して、トンネル補強工事の開始前に監視員通路の床板に所定数の開口を形成しているが、トンネル補強工事において監視員通路の床板が全て撤去されるような場合には、床板の撤去後に固定部材を固定する作業を行うようにしても構わない。
【0081】
また、上記の実施形態では、車道面からの高さが高い(例えば、車道面からの高さ90cm程度)監視員通路上に消火栓装置を設置する場合について記載したが、車道面からの高さが低い(例えば、車道面からの高さ25cm程度)監視員通路上に消火栓装置を設置する場合についても適用可能である。
【0082】
また、トンネルの覆工において、型枠と旧トンネル壁面との間にコンクリートを流し込む作業を行う際に、型枠と固定部材の第1面とが干渉するおそれがある場合(型枠が固定部材を逃げられない場合)、トンネルの覆工が開始される前に、固定部材を設置する周辺をコンクリートから保護するカバーを設置するようにしてもよい。トンネルの覆工が終了した後に保護カバーを取り外し、保護カバーにより形成された空間に上述した実施形態で固定部材を設置したのち、改めて専用の型枠を設置してコンクリートを流し込むことで、一部を旧トンネル壁面に固定しつつ、消火栓装置の架台を固定する部分を露出するように固定部材を設置できる。
【0083】
(その他)
本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0084】
10:トンネル
12:路面
14:トンネル躯体(コンクリート枠体)
16:コンクリート覆工体
18a:補強工事前のトンネル壁面
18b:補強工事後のトンネル壁面
20:監視員通路
20a:床板
20b:開口
20c:再構成床板
22:箱抜部
22a:消火栓収納部
22b:配管収納部
24:配水本管
26:給水配管
28:制水弁
30:消火栓装置
32:消火栓扉
34:保守扉
36:電装扉
38:赤色表示灯
40:発信機
42:消火器扉
50:配管格納箱
52:操作扉
60、62:架台
62a:消火栓装置設置面
62b:配管格納箱設置面
64:筐体設置孔
66:固定用長孔
70、72:固定部材
70a、72a:第1面
70b、72b:第2面
74:ボルト
76:長孔
78:アンカーボルト
80:ナット
90:アンカーナット