(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179399
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発熱素子の放熱構造および熱媒体ヒータ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/34 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H01L23/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098221
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 亨
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136DA08
5F136DA27
5F136DA41
5F136EA36
(57)【要約】
【課題】発熱素子周辺の設計自由度を向上する発熱素子の放熱構造および熱媒体ヒータを提供すること。
【解決手段】基板30に実装される発熱素子40を配置する筐体20を備え、筐体20に対して発熱素子40の発熱を放熱させる発熱素子40の放熱構造であって、筐体20は、基板30側に面する基板対向面20aにおいて開口し、基板30から遠ざかる側に向けて凹設されたポケット21を有し、発熱素子40は、そのリード突出面41aを基板30側に向けた状態で、ポケット21内に配置されている発熱素子40の放熱構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装される発熱素子を配置する筐体を備え、前記筐体に対して前記発熱素子の発熱を放熱させる発熱素子の放熱構造であって、
前記筐体は、前記基板側に面する基板対向面において開口し、前記基板から遠ざかる側に向けて凹設されたポケットを有し、
前記発熱素子は、そのリード突出面を前記基板側に向けた状態で、前記ポケット内に配置されていることを特徴とする発熱素子の放熱構造。
【請求項2】
前記ポケット内には、放熱充填剤が充填されていることを特徴とする請求項1に記載の発熱素子の放熱構造。
【請求項3】
請求項1に記載の発熱素子の放熱構造を備えた熱媒体ヒータであって、
前記筐体内に設けられた熱媒体流路と、前記熱媒体流路を流れる熱媒体を加熱するためのヒータとを備え、
前記ポケットは、前記基板に対して垂直な基板垂直方向に対して直交する横方向において、前記熱媒体流路の側方に設けられていることを特徴とする熱媒体ヒータ。
【請求項4】
前記ポケットは、前記横方向における前記熱媒体流路を挟んだ両側にそれぞれ設けられ、
前記各ポケットに、前記発熱素子がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項3に記載の熱媒体ヒータ。
【請求項5】
前記筐体に対して前記発熱素子を固定するための固定部材を更に備え、
前記固定部材は、前記横方向において前記ポケットを挟んで前記熱媒体流路の反対側に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の熱媒体ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子の放熱構造および熱媒体ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に実装されるIGBT等の発熱素子を配置する筐体を備え、筐体に対して発熱素子の発熱を放熱させる発熱素子の放熱構造として、特許文献1に開示されるものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案公告第211788988号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示される発熱素子の放熱構造では、発熱素子周辺の設計自由度について改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、発熱素子周辺の設計自由度を向上する発熱素子の放熱構造および熱媒体ヒータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発熱素子の放熱構造は、基板に実装される発熱素子を配置する筐体を備え、前記筐体に対して前記発熱素子の発熱を放熱させる発熱素子の放熱構造であって、前記筐体は、前記基板側に面する基板対向面において開口し、前記基板から遠ざかる側に向けて凹設されたポケットを有し、前記発熱素子は、そのリード突出面を前記基板側に向けた状態で、前記ポケット内に配置されていることにより、前記課題を解決するものである。
本発明の熱媒体ヒータは、前記発熱素子の放熱構造を備えた熱媒体ヒータであって、前記筐体内に設けられた熱媒体流路と、前記熱媒体流路を流れる熱媒体を加熱するためのヒータとを備え、前記ポケットは、前記基板に対して垂直な基板垂直方向に対して直交する横方向において、前記熱媒体流路の側方に設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡素な構成で、発熱素子周辺の設計自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る熱媒体ヒータを断面視して示す説明図。
【
図2】各部の配置関係を基板垂直方向に見て示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態に係る熱媒体ヒータ10について、図面に基づいて説明する。
【0010】
まず、熱媒体ヒータ10は、自動車等の車両に搭載される空調装置に組み込まれ、クーラント(水)等の熱媒体を加熱するものであり、以下に説明する、発熱素子40の発熱を放熱させる発熱素子40の放熱構造を備えるものである。
【0011】
以下に、熱媒体ヒータ10の具体的構成について、図面に基づいて説明する。
【0012】
熱媒体ヒータ10は、
図1に示すように、各種部品を配置するための筐体20と、筐体20から離して配置される基板30と、基板30に実装される発熱素子40と、筐体20内に設けられた熱媒体流路50と、熱媒体流路50を流れる熱媒体を加熱するためのヒータ60と、発熱素子40を固定するための固定部材70と、筐体20と発熱素子40との間を絶縁する絶縁シート80と、筐体20のポケット21内に充填される放熱充填剤90とを備えている。
【0013】
筐体20は、金属等から形成され、
図1に示すように、基板30側に面する筐体20の基板対向面20aにおいて開口し、基板30から遠ざかる側に向けて延在するように凹設されたポケット21を有している。
このポケット21は、発熱素子40等を配置するための部位であり、
図1に示すように、基板対向面20a側(基板30側)のみにおいて開口するように形成され、その内壁として、
図1や
図2に示すように、底面21aと、横方向Xにおける両側の内側面21bと、流路延在方向Zにおける両側の内側面21cとを有している。
ポケット21は、
図1や
図2に示すように、横方向Xにおいて熱媒体流路50の側方に設けられており、本実施形態では、横方向Xにおいて熱媒体流路50を挟んだ両側(具体的には、横方向Xに互いに対向する位置)にそれぞれ設けられている。
【0014】
なお、上述した横方向Xは、基板30に対して垂直な基板垂直方向Yに対して直交する方向であり、流路延在方向Zは、熱媒体流路50が延在する方向であり、横方向Xおよび基板垂直方向Yに直交する。
【0015】
基板30は、リジットタイプのプリント基板(電子基板)として構成され、発熱素子40のリード42が電気的に接続されるプリント配線や各種電子部品等を有している。
基板30は、
図1に示すように、基板垂直方向Yにおいて筐体20(の基板対向面20a)から間隔を置いて離れた位置において、筐体20等の周辺部材に対して固定して配置される。
【0016】
発熱素子40は、基板30に実装され通電によって発熱を生じる半導体素子として構成され、本実施形態では、ヒータ60の電源オンオフを制御するためのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として構成されている。
発熱素子40は、
図1や
図2に示すように、合成樹脂等から成るハウジング41と、ハウジング41のリード突出面41aから突出して設けられる金属から成るリード42とを有している。
リード42は、
図1に示すように、基板30側に向けて延び、基板30に形成された貫通穴に挿入された状態で、基板30の電子回路(プリント配線等)に電気的に接続される。
【0017】
発熱素子40は、
図1に示すように、リード突出面41a(リード42)を基板30側に向けた状態で各ポケット21内にその一部が配置され、発熱素子40の熱媒体流路50側の側面とポケット21の内側面21bとの間に絶縁シート80を介在させた状態で、固定部材70によって熱媒体流路50側(絶縁シート80側)に向けて横方向Xに押し付けられることで、筐体20に対して固定されている。
なお、ポケット21内に発熱素子40が配置された状態では、
図1や
図2に示すように、ポケット21の底面21aと発熱素子40との間、ポケット21の各内側面21cと発熱素子40との間、および、ポケット21の内側面21bのうち熱媒体流路50側とは反対側の内側面21bと発熱素子40との間には、間隔が開いており、当該間隔には放熱充填剤90が充填されている。
【0018】
ヒータ60は、熱媒体流路50を流れるクーラント(水)等の熱媒体を加熱するヒータとして構成され、本実施形態では、
図1や
図2に示すように、熱媒体流路50の内周側に、流路延在方向Zに延在して配置されている。
なお、ヒータ60の具体的態様や配置については、熱媒体流路50を流れる熱媒体を加熱することが可能なものであれば、如何なるものでもよい。
【0019】
固定部材70は、筐体20に対して発熱素子40を固定するためのものであり、本実施形態では、
図1に示すように、横方向Xにおけるポケット21(発熱素子40)の側方、具体的には、横方向Xにおいてポケット21(発熱素子40)を挟んで熱媒体流路50の反対側に設置された板バネから構成されている。
なお、固定部材70の具体的態様や配置については、筐体20に対して発熱素子40を固定することが可能なものであれば、如何なるものでもよい。
また、筐体20に対する固定部材70の取り付け態様についても、
図1の右側に示した固定部材70のように、ボルト等を用いて筐体20に対して固定部材70を取り付けるものや、
図1の左側に示した固定部材70のように、固定部材70によって筐体20の一部を挟み込むことで、筐体20に対して固定部材70を取り付けるもの等、その具体的態様は如何なるものでもよい。
【0020】
絶縁シート80は、絶縁性の高いシリコン等から成り、
図1に示すように、(その少なくとも一部分が)ポケット21内において筐体20と発熱素子40との間に配置され、筐体20と発熱素子40とを絶縁させるものである。
絶縁シート80は、発熱素子40の熱を筐体20に伝えて逃がす(放熱させる)機能も担っている。
【0021】
放熱充填剤90は、
図1に示すように、ポケット21内(具体的には、ポケット21内に配置された発熱素子40とポケット21の内壁との間の隙間)に充填されるものであり、本実施形態では、ポケット21に放熱充填剤90を充填する段階では流動性を有し、充填から一定時間後に固化する、シリコングリス等の充填剤として構成されている。
放熱充填剤90は、発熱素子40の熱を筐体20に伝えて逃がす(放熱させる)機能を担うとともに、発熱素子40と筐体20との間を絶縁させる機能も担う。
なお、本実施形態では、放熱充填剤90が、充填から一定時間後に固化する充填剤として構成されているが、放熱充填剤90の具体的態様については、発熱素子40の熱を筐体20に放熱させることが可能なものであれば、如何なるものでもよく、例えば、充填から時間が経過した後も流動性を有するもの等であってもよい。
【0022】
このようにして得られた本実施形態の発熱素子40の放熱構造(熱媒体ヒータ10)では、以下に記載する効果を奏することができる。
【0023】
(1)すなわち、本実施形態の発熱素子40の放熱構造(熱媒体ヒータ10)では、筐体20が、基板30側に面する基板対向面20aにおいて開口し、基板30から遠ざかる側に向けて凹設されたポケット21を有し、発熱素子40は、そのリード突出面41aを基板30側に向けた状態で、ポケット21内に配置されている。
これにより、ポケット21内に発熱素子40を収容して筐体20と基板30との間を簡素化することができるとともに、例えばリード突出面41aが横方向Xに向いて配置されている場合には、基板30に実装するにあたってリード42を基板30側に向けて約90度折り曲げる必要があるのに対して、本実施形態では、基板30に実装するにあたってリード42が延びる向きを変えるためにリード42を折り曲げる必要が無い(または折り曲げる程度が少なく済む)ため、筐体20の基板対向面20aと基板30との間隔を大きく確保することができる。
そして、筐体20と基板30との間隔を大きく確保することで、基板30の絶縁性を確保し易くなるとともに、筐体20の基板対向面20aと基板30との間の空間を、各種電子部品等を設置するスペースとして利用し易くなる等、発熱素子40の周辺環境の設計自由度を向上させることができ、装置構成をコンパクトに設計することができる。
【0024】
(2)また、基板対向面20aにおいて開口し基板30から遠ざかる側に向けて凹設されたポケット21内に、放熱充填剤90が充填されている。
これにより、製造時において、発熱素子40を配置したポケット21内に放熱充填剤90を充填する時に、基板対向面20a側を上方に向けた状態でポケット21内に放熱充填剤90を充填することで、ポケット21によって放熱充填剤90を受け止め、放熱充填剤90が周囲に流れてしまうことを防止できるため、放熱充填剤90を所望の態様で確実に配置して、発熱素子40の放熱性を向上させることができる。
また、放熱性の向上によって各発熱素子40の温度上昇を抑制することが可能であるため、温度許容範囲との関係で決定される発熱素子40の実装数を減らすことができ、これにより、製造コストを低減できるとともに、実装数を低減した分だけスペースを確保して周辺環境の設計自由度を向上することができる。
また、放熱充填剤90によって発熱素子40の放熱性を向上させる構造を採用することで、発熱素子40を放熱させるための複雑な機構を設ける必要がないため、この点でも、発熱素子40の周辺環境を簡素化できる。
【0025】
(3)また、横方向Xにおける熱媒体流路50の側方に設けられたポケット21内に、リード突出面41aを基板30側に向けた状態で発熱素子40が配置されている。
これにより、発熱素子40(ポケット21)の横方向位置の設計に特段の制約が無いため、横方向Xにおける熱媒体流路50と発熱素子40(ポケット21)との間隔を容易に狭く設計することができ、その結果、熱媒体流路50を流れる熱媒体による発熱素子40の冷却効率を向上させることができる。
【0026】
(4)また、発熱素子40が配置されるポケット21が、横方向Xにおける熱媒体流路50を挟んだ両側にそれぞれ設けられていることにより、熱媒体流路50を流れる熱媒体による発熱素子40の冷却効率を向上させることができる。
すなわち、熱媒体流路50内の熱媒体は、流路延在方向Zに延在するヒータ60による加熱によって徐々に加熱されるため、熱媒体流路50の上流側(入口側)に位置する熱媒体の温度は、熱媒体流路50の下流側(出口側)に位置する熱媒体の温度よりも低い。
そして、本実施形態では、横方向Xにおける熱媒体流路50の側方にポケット21(発熱素子40)を配置する構造を採用することにより、熱媒体の温度が低い熱媒体流路50の上流側(入口側)の横方向両側を発熱素子40の設置場所として利用することが可能であるため、熱媒体流路50を流れる熱媒体による発熱素子40の冷却効率を向上させることができる。
【0027】
(5)また、発熱素子40が、リード突出面41aを基板30側に向けた状態でポケット21内に配置されるとともに、固定部材70が、横方向Xにおいてポケット21(発熱素子40)を挟んで熱媒体流路50の反対側に配置されている。
これにより、発熱素子40のリード42と固定部材70との間の干渉に配慮する必要が無い(または必要性が低い)ため、固定部材70に関する設計自由度を確保でき、また、固定部材70を発熱素子40の横方向Xにおける側方に配置することで、固定部材70が基板30の絶縁性を阻害する要因になることを回避できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記または下記の実施形態や変形例の各構成を任意に組み合わせて、熱媒体ヒータ10や発熱素子40の放熱構造を構成する等、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、発熱素子40の放熱構造が、熱媒体ヒータ10に適用されるものとして説明したが、発熱素子40の放熱構造を他の装置機器に適用してもよい。
【0030】
また、上述した実施形態では、横方向Xにおける熱媒体流路50を挟んだ両側に、それぞれ発熱素子40(ポケット21)が配置されるものとして説明したが、発熱素子40(ポケット21)の具体的配置については、如何なるものでもよく、例えば、横方向Xにおける熱媒体流路50を挟んだ両側のうち片側のみに、発熱素子40(ポケット21)を配置してもよく、また、流路延在方向Zにおいて、複数の発熱素子40(ポケット21)を並べて配置してもよい。
【0031】
また、上述した実施形態では、筐体20が一体に形成された部材として形成されているが、筐体20の具体的態様については、一体に形成されたものに限定されず、例えば、ポケット21を構成するポケット21の周辺壁のうちの一部を別体に形成し、当該別体に形成された筐体20の一部を、残りの筐体20に取り付けることで、筐体20を構成してもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 ・・・ 熱媒体ヒータ
20 ・・・ 筐体
20a ・・・ 基板対向面
21 ・・・ ポケット
21a ・・・ 底面
21b ・・・ 内側面
21c ・・・ 内側面
30 ・・・ 基板
40 ・・・ 発熱素子
41 ・・・ ハウジング
41a ・・・ リード突出面
42 ・・・ リード
50 ・・・ 熱媒体流路
60 ・・・ ヒータ
70 ・・・ 固定部材
80 ・・・ 絶縁シート
90 ・・・ 放熱充填剤
X ・・・ 横方向
Y ・・・ 基板垂直方向
Z ・・・ 流路延在方向