(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179412
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】画像形成方法及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20241219BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241219BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B41M5/00 134
B41M5/00 120
C09D11/30
B41J2/01 129
B41J2/01 123
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098249
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伴 威風
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056FC01
2C056FD01
2C056HA44
2H186AB09
2H186AB11
2H186AB23
2H186AB33
2H186AB48
2H186AB51
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB04
2H186FB15
2H186FB29
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB58
4J039AC01
4J039AE05
4J039AE07
4J039BB01
4J039BC54
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE27
4J039EA04
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、画像形成後に後処理液を塗布する場合に、活性線の照射回数を減らすことで、工程の簡略化を図れる画像形成方法及び画像形成システムを提供することである。
【解決手段】本発明の画像形成方法は、活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成方法であって、前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布工程と、活性線照射工程と、後処理工程と、をこの順に有し、前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、前記後処理工程では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成方法であって、
前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布工程と、活性線照射工程と、後処理工程と、をこの順に有し、
前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、
前記後処理工程では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させる
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物として、少なくともエポキシ系、オキセタン系及びビニルエーテル系のうちのいずれかの重合性化合物を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記活性線硬化型インクジェットインクが、ゲル化剤を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成システムであって、
前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布手段と、活性線照射手段と後処理手段と、をこの順に有し、
前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、
前記後処理手段では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させる
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法及び画像形成システムに関する。本発明は、特に、画像形成後に後処理液を塗布する場合に、活性線の照射回数を減らすことで、工程の簡略化を図れる画像形成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット画像形成方法は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェット画像形成方法の一つとして、活性線硬化型インクジェットインクの液滴を記録媒体に着弾させた後、活性線を上記液滴に照射して当該液滴を硬化させて画像を形成する方法がある。この方法は活性線硬化型インクジェット画像形成方法と言われる。
また、例えば特許文献1に開示されている技術は、インクジェット法により画像を形成した後、当該画像に光沢性の向上などを目的として、後処理液を塗布する技術である。
しかしながら、後処理液を塗布する場合、インクを硬化する過程と、後処理液を硬化する過程でどちらも活性線を照射する必要がある。そのため、多くのエネルギーを必要とし、工程が複雑化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものである。本発明の解決課題は、画像形成後に後処理液を塗布する場合に、活性線の照射回数を減らすことで、工程の簡略化を図れる画像形成方法及び画像形成システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した。その結果、活性線硬化型インクジェットインクに光酸発生剤を含有させる。そして、インクの塗布工程及び活性線照射工程を行った後、後処理工程で、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用いることで、光酸発生剤由来の酸によってカチオン重合性化合物を重合させる。その結果、活性線の照射回数を減らすことができ、工程の簡略化を図れる画像形成方法等を見いだした。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0006】
1.活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成方法であって、
前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布工程と、活性線照射工程と、後処理工程と、をこの順に有し、
前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、
前記後処理工程では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させる
ことを特徴とする画像形成方法。
【0007】
2.前記カチオン重合性化合物として、少なくともエポキシ系、オキセタン系及びビニルエーテル系のうちのいずれかの重合性化合物を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
【0008】
3.前記活性線硬化型インクジェットインクが、ゲル化剤を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
【0009】
4.活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成システムであって、
前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布手段と、活性線照射手段と後処理手段と、をこの順に有し、
前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、
前記後処理手段では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させる
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記手段により、画像形成後に後処理液を塗布する場合に、活性線の照射回数を減らすことで、工程の簡略化を図れる画像形成方法及び画像形成システムを提供できる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明の画像形成方法において、活性線硬化型インクジェットインクは、活性線重合性化合物、色材及び光重合開始剤に加えて、光酸発生剤を含有する。そして、本発明の画像形成方法では、当該インクの塗布工程、活性線照射工程、後処理工程をこの順に行い、後処理工程において、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用いる。その結果、後処理工程では、光酸発生剤由来の酸によって、カチオン重合性化合物が重合するため、後処理工程後に活性線を照射しなくとも後処理液を硬化できる。
活性線硬化型インクジェットインクに光酸発生剤を含有させることで、インクの塗布工程後の前記活性線照射工程で酸を発生させることができる。そのため、後処理工程で後処理液をインクに塗布した際に、前記活性線照射工程で発生した酸によってカチオン重合が開始し、後処理液が硬化すると推察される。
以上のように、本発明の画像形成方法は、後処理工程後に活性線を照射しなくとも、インクの塗布工程後に活性線を1回照射するだけで、後処理液を硬化させることができる。よって、工程の簡略化を図れる。
【0011】
インクを光硬化させるときにインク中の光酸発生剤が酸を発生させる機構については、下記の機構のとおりである。
【0012】
【0013】
すなわち、上記のように、光酸発生剤が光を吸収し、次いで分解して、周囲に存在する溶媒等の化合物又は酸発生剤自身から水素を引き抜くことで酸を発生させる。その後、後処理工程において、前記工程で発生させた前記酸の触媒的作用によりカチオン重合反応が開始し、後処理液が硬化する。カチオン重合性化合物がエポキシ系化合物の場合の重合反応の機構の一例は、下記のとおりである。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の画像形成方法は、活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成方法であって、前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布工程と、活性線照射工程と、後処理工程と、をこの順に有し、前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、前記後処理工程では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させることを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0017】
本発明の実施態様としては、前記カチオン重合性化合物として、少なくともエポキシ系、オキセタン系及びビニルエーテル系のうちのいずれかの重合性化合物を含有することが、硬化性の点で好ましい。
【0018】
前記活性線硬化型インクジェットインクが、ゲル化剤を含有することが、基材にインクを着弾した時、インクドットが濡れ広がることを防止し、画像の精細性に優れる点で好ましい。
【0019】
本発明の画像形成システムは、活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成システムであって、前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布手段と、活性線照射手段と後処理手段と、をこの順に有し、前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、前記後処理手段では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させることを特徴とする。
これにより、後処理手段では、光酸発生剤由来の酸によって、カチオン重合性化合物が重合するため、後処理手段後に活性線を照射しなくとも後処理液を硬化できる。したがって、インクを塗布した後に活性線を1回照射するだけで、後処理液を硬化させることができ、工程の簡略化を図れる。
【0020】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0021】
[本発明の画像形成方法の概要]
本発明の画像形成方法は、活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成方法であって、前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布工程と、活性線照射工程と、後処理工程と、をこの順に有し、前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、前記後処理工程では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させることを特徴とする。
まず、本発明の画像形成方法で用いる活性線硬化型インクジェットインクの構成について説明する。
【0022】
[活性線硬化型インクジェットインク]
本発明に係る活性線硬化型インクジェットインクは、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有する。
以下、活性線硬化型インクジェットインクを、単に「インク」ともいう。
【0023】
<活性線重合性化合物>
「活性線重合性化合物」とは、活性線の照射により架橋又は重合する化合物のことをいう。
「活性線」とは、正確には「活性エネルギー線」ともいう。また、活性線とは、その照射によりインク中に反応開始種を発生させるエネルギーを付与できる光線である。本発明における活性線は、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線である。
また、本発明に係るインクジェットインクに含有される活性線重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好ましい。ここで、本発明におけるインクジェットインクに含有される活性線重合性化合物としては、カチオン重合性化合物を含有しない。活性線重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマー、及びこれらの混合物のいずれであってもよい。
【0024】
「ラジカル重合性化合物」とは、分子中にエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物のことをいう。ラジカル重合性化合物は、単官能又は多官能の化合物であり得る。ラジカル重合性化合物の例には、不飽和カルボン酸エステル化合物である、(メタ)アクリレートが含まれる。本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタアクリロイル基を意味する。「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0025】
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0026】
多官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びトリプロピレングリコールジアクリレートなどの2官能の(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の(メタ)アクリレート;ポリエステルアクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー、これらの変性物等が含まれる。変性物の例には、エチレンオキサイド基を挿入したエチレンオキサイド変性(EO変性)アクリレート、プロピレンオキサイドを挿入したプロピレンオキサイド変性(PO変性)アクリレート等が含まれる。
【0027】
活性線重合性化合物の含有量は、インクの全質量に対して、1.0~97質量%の範囲内が好ましく、30~90質量%の範囲内がより好ましい。
【0028】
<光酸発生剤>
光酸発生剤の例には、スルホン酸を発生するスルホン化物、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物、鉄アレン錯体等が含まれる。具体的には、芳香族オニウム化合物のB(C6F5)4-、PF6-、AsF6-、SbF6-、CF3SO3-塩等が挙げられる。当該塩を形成する芳香族オニウム化合物の例には、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム等が挙げられる。
【0029】
<光重合開始剤>
インクは、光重合開始剤を含有する。
【0030】
光重合開始剤は、活性線重合性化合物の重合を開始できるものであればよい。例えば、インクがラジカル重合性化合物を有するときは、光重合開始剤は光ラジカル開始剤とすることができる。
【0031】
ラジカル重合開始剤には、分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤と分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤とが含まれる。
【0032】
分子内結合開裂型のラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が含まれる。
【0033】
分子内水素引き抜き型のラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、ミヒラーケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンなどを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン等が含まれる。
【0034】
光重合開始剤の含有量は、活性線の照射によってインクが十分に硬化し、かつインクの吐出性を低下させない範囲において、任意に設定できる。例えば、光重合開始剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.1~20質量%の範囲内が好ましく、1.0~12質量%の範囲内がより好ましい。
【0035】
<色材>
インクは、色材を含有する。色材には、顔料及び染料が含まれる。インクの分散安定性をより高め、かつ耐候性が高い画像を形成する観点からは、色材は顔料であることが好ましい。
【0036】
顔料の例には、カラーインデックスに記載される下記の有機顔料及び無機顔料が含まれる。
【0037】
赤又はマゼンタ顔料の例には、Pigment Red 3、5、19、22、31、38、43、48:1、48:2、48:3、48:4、48:5、49:1、53:1、57:1、57:2、58:4、63:1、81、81:1、81:2、81:3、81:4、88、104、108、112、122、123、144、146、149、166、168、169、170、177、178、179、184、185、208、216、226、257、Pigment Violet 3、19、23、29、30、37、50、88、Pigment Orange 13、16、20、36等が含まれる。
【0038】
青又はシアン顔料の例には、pigment Blue 1、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17-1、22、27、28、29、36、60等が含まれる。
【0039】
緑顔料の例には、Pigment Green 7、26、36、50等が含まれる。
【0040】
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94、95、97、108、109等が含まれる。また、黄顔料の例には、Pigment Yellow、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193等が含まれる。
黒顔料の例には、Pigment Black 7、26、28等が含まれる。
【0041】
白顔料として、酸化チタン又は中空粒子を用いてもよい。
【0042】
染料の例には、各種の油溶性染料が含まれる。
【0043】
顔料又は染料の含有量は、インクの全質量に対して、0.1~20質量%の範囲内が好ましく、0.4~10質量%の範囲内がより好ましい。顔料又は染料の含有量が0.1質量%以上であると、得られる画像の発色が十分となる。顔料又は染料の含有量が20質量%以下であると、インクの粘度が高くなりすぎない。
【0044】
顔料は、分散剤で分散されていてもよい。
【0045】
分散剤の例には、界面活性剤、高分子分散剤等が含まれるが、高分子分散剤が好ましい。
【0046】
高分子分散剤の例には、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、ヒドロキシ基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体、ポリアミン化合物等が含まれる。特に、高分子分散剤は、ポリアミン化合物を用いることが好ましい。
【0047】
顔料は、さらに必要に応じて分散助剤によって分散性を高められていてもよい。
【0048】
分散剤の含有量は、顔料の全質量に対して10~200質量%の範囲内が好ましい。分散剤の含有量が顔料の全質量に対して10質量%以上であると、顔料の分散安定性が高まる。分散剤の含有量が顔料の全質量に対して200質量%以下であると、インクジェットヘッドからのインクの吐出性が安定しやすくなる。
【0049】
顔料を含有するインクを調製する際は、顔料及び活性線重合性化合物を含む顔料分散液を調製し、その後、顔料分散液と他の成分とを混合することが好ましい。顔料分散液は、分散剤をさらに含んでもよい。
【0050】
顔料分散液は、活性線重合性化合物に顔料を分散して調製することができる。顔料の分散は、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いて行えばよい。このとき、分散剤を添加してもよい。
【0051】
<ゲル化剤>
インクは、後処理液の塗布性を悪化させすぎない範囲で、ゲル化剤を含有することが好ましい。
ゲル化剤を含有することにより、基材(記録媒体)上のインクをゲル状態にして仮固定(ピニング)することができ、インクの濡れ広がりを抑制できる。
ゲル化剤としてはワックスを用いることが好ましい。
本発明において、「ワックス」とは、常温では固体であるが、高温では液体となることにより、インクを温度変化に応じてゾルゲル相転移させる有機物をいう。
【0052】
以下の観点から、ワックスは、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。「ゲル化温度」とは、加熱によりゾル化又は液体化したインクを冷却していったときに、インクがゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度のことをいう。具体的には、ゾル化又は液体化したインクを、粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。このときの粘度の測定には、レオメータ(例えばPhysica社製、MCR300)を用いることができる。
【0053】
ワックスがインク中で結晶化すると、板状に結晶化したワックスによって形成された三次元空間に活性線重合性化合物が内包される構造が形成されることがある。このような構造を、以下「カードハウス構造」という。カードハウス構造が形成されると、液体の活性線重合性化合物が前記空間内に保持されるため、インクが着弾して形成されたドットがより濡れ広がりにくくなる。これにより、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、インクが基材に着弾して形成されたドット同士が合一しにくくなる。
【0054】
ワックスは、結晶性を高めるために、活性線重合性化合物と相互作用しにくい、極性の低いワックスであることが好ましい。
【0055】
極性の低いワックスの例には、脂肪族ケトンワックス、脂肪族エステルワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が含まれる。すなわち、本発明のインクは、少なくとも、脂肪族エステル系ワックス、脂肪族ケトン系ワックス、パラフィンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスからなる群から選択されるワックスを含有することが好ましい。これらのワックスは、硬化性アミド成分などで構成される硬化性ワックスとは異なり、活性線重合性化合物と相互作用しにくい。そのため、ゲル化しやすく、インクのピニング性を維持できる。
【0056】
「脂肪族エステルワックス」とは、以下の式(1)で表されるエステル基を有するワックスのことをいう。ここで、エステルワックスを構成する分子に含まれるエステル基の数は、特に制限されないが、一つであることが好ましい。
式(1)R1-(C=O)-O-R2
(式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数が17~25である飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
【0057】
脂肪族エステルワックスの例には、ベヘン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチルが含まれる。また、脂肪族エステルワックスの例には、ミリスチン酸セチル、セロチン酸ミリシル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸オレイル、グリセリン脂肪酸エステルが含まれる。また、脂肪族エステルワックスの例には、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が含まれる。
【0058】
「脂肪族ケトンワックス」とは、以下の式(2)で表されるケトン基を有するワックスのことをいう。ここで、ケトンワックスを構成する分子に含まれるケトン基の数は、特に制限されないが、一つであることが好ましい。
式(2)R3-(C=O)-R4
(式(2)のR3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数が17~25である飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)
【0059】
脂肪族ケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ミリスチルパルミチルケトン、パルミチルステアリルケトン等が含まれる。
【0060】
「パラフィンワックス」とは、炭素数が20~40の直鎖状のパラフィン系炭化水素(ノルマル・パラフィン)を主成分とし、少量の分岐炭化水素(イソパラフィン)を含み得る、分子量が300~500程度の炭化水素の混合物のことをいう。
【0061】
パラフィンワックスの例には、Paraffin Wax-155、Paraffin
Wax-135、Paraffin Wax-115、HNP-3、HNP-9、HNP-11、SP-0165、SP-1039、SP-3040(いずれも日本精蝋社製)等が含まれる。
【0062】
「マイクロクリスタリンワックス」とは、主として原油の減圧蒸留残さ油分から取り出されるワックスである。そして、分岐炭化水素(イソパラフィン)や飽和環状炭化水素(シクロパラフィン)を含有するワックスのことをいう。マイクロクリスタリンワックスは、低結晶性のイソパラフィンやシクロパラフィンが多く含有されているために、パラフィンワックスに比べて結晶が小さく、分子量が大きいものである。
【0063】
このようなマイクロクリスタリンワックスは、炭素数が30~60であり、重量平均分子量(Mw)が500~800であり、融点が60~90℃である。マイクロクリスタリンワックスとしては、重量平均分子量(Mw)が600~800であり、融点が60~85℃であるものが好ましい。また、低分子量のもので、特に数平均分子量(Mn)が300~1000であるものが好ましく、400~800であるものがより好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.01~1.20であることが好ましい。
【0064】
マイクロクリスタリンワックスの例には、Hi-MiC-1045、Hi-MiC-1070、Hi-MiC-1080、Hi-MiC-1090、Hi-MiC-2045、Hi-MiC-2065、Hi-MiC-2095、EMW-0001、EMW-0003(いずれも日本精蝋社製)等が含まれる。
【0065】
インクのピニング性をより高める観点からは、ワックスは、12~25個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を有する脂肪族エステル又は脂肪族ケトンであることが好ましい。なお、脂肪族エステル又は脂肪族ケトンは、ケトン基又はエステル基を挟む2本の炭素鎖の一方のみが12~25個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であればよい。上記効果をより奏しやすくする観点からは、2本の炭素鎖の両方が12~25個の炭素原子を含む直鎖アルキル基であることが好ましい。上記炭素原子の数が12個以上であると、ワックスの結晶性がより高まる。そのため、インクのピニング性がより高まると考えられる。また、上記炭素原子の数が25個以下であると、インクの吐出性がよくなると考えられる。
【0066】
12~25個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を有する脂肪族エステルの例には、ベヘン酸ベヘニル(炭素数:21-22)、イコサン酸イコシル(炭素数:19-20)、ステアリン酸ベヘニル(炭素数:17-21)、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17-18)、ステアリン酸パルミチル(炭素数:17-16)、ステアリン酸ラウリル(炭素数:17-12)、パルミチン酸セチル(炭素数:15-16)、パルミチン酸ステアリル(炭素数:15-18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数:13-14)、ミリスチン酸セチル(炭素数:13-16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数:13-20)、オレイン酸ステアリル(炭素数:17-18)、エルカ酸ステアリル(炭素数:21-18)、リノール酸ステアリル(炭素数:17-18)、オレイン酸ベヘニル(炭素数:18-22)、リノール酸アラキジル(炭素数:17-20)等が含まれる。上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される二つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0067】
12~25個の炭素原子を含む直鎖アルキル基を有する脂肪族ケトンの例には、ジリグノセリルケトン(炭素数:23-23)、ジベヘニルケトン(炭素数:21-21)、ジステアリルケトン(炭素数:17-17)、ジエイコシルケトン(炭素数:19-19)、ジパルミチルケトン(炭素数:15-15)、ジミリスチルケトン(炭素数:13-13)、ラウリルミリスチルケトン(炭素数:11-14)、ラウリルパルミチルケトン(11-16)、ミリスチルパルミチルケトン(13-16)、ミリスチルステアリルケトン(13-18)、ミリスチルベヘニルケトン(13-22)、パルミチルステアリルケトン(15-18)、バルミチルベヘニルケトン(15-22)、ステアリルベヘニルケトン(17-22)等が含まれる。上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される二つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
【0068】
ワックスの含有量は、インクの全質量に対して、0.01~7.0質量%の範囲内が好ましく、0.2~6.8質量%の範囲内がより好ましい。ワックスの含有量を上記範囲内とすることで、インクのピニング性を十分に高めて、より高精細な画像を形成することができる。
【0069】
ワックスは、一種類のみを単独で使用してもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0070】
<定着樹脂>
インクは、塗膜の耐擦性及びブロッキング耐性をより高めるため、定着樹脂を含有してもよい。
【0071】
定着樹脂の例には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、マレイン酸樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂が含まれる。また、定着樹脂の例には、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、アルキド樹脂等が含まれる。
【0072】
定着樹脂の含有量(固形分)は、インクの全質量に対して、1~20質量%の範囲内が好ましく、1~10質量%の範囲内がより好ましい。定着樹脂の含有量が1質量%以上であると、塗膜の耐擦性及びブロッキング耐性をより高めることができる。定着樹脂の含有量が20質量%以下であると、インクジェットヘッドからのインクの吐出性が安定しやすくなる。
【0073】
<界面活性剤>
インクは、界面活性剤を含有してもよい。
【0074】
界面活性剤は、インクの表面張力を調整して、着弾後のインクの基材に対する濡れ性を調整したり、隣接する液滴間の合一を抑制したりすることができる。
【0075】
界面活性剤の例には、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、パーフルオロアルケニル基を有するフッ素系界面活性剤等が含まれる。
【0076】
界面活性剤の含有量は、インクの全質量に対して、0.001~10質量%の範囲内が好ましく、0.001~1.0質量%の範囲内がより好ましい。
【0077】
<その他の成分>
インクは、上記成分以外に、必要に応じて、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤等を含有してもよい。
【0078】
[インクの物性]
インクジェットヘッドからの吐出性をより高める観点からは、インクの80℃における粘度は、3~20mPa・sの範囲内が好ましい。また、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点からは、インクの25℃における粘度は、1000mPa・s以上であることが好ましい。
【0079】
インクは、40~70℃の範囲内にゾルゲル相転移する相転移温度を有することが好ましい。インクの相転移温度が40℃以上であると、基材に着弾後、インクが速やかに増粘するため、濡れ広がりの程度をより調整しやすくなる。インクの相転移温度が70℃以下であると、インク温度が通常80℃程度である吐出ヘッドからの吐出時にインクがゲル化しにくい。そのため、より安定してインクを吐出することができる。
【0080】
インクの80℃における粘度、25℃における粘度、及び相転移温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することで求められる。例えば、インクを100℃に加熱し、レオメータによって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。80℃及び25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃及び25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。相転移温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度を読み取ることにより求める。レオメータには例えばストレス制御型レオメータ(AntonPaar社製、Physica MCR301、コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°)を用いることができる。
【0081】
[インクの調製方法]
インクは、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材、光重合開始剤、及び任意のその他の成分を、加熱下において混合することにより調製できる。この際、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。顔料及び分散剤を含有するインクの場合は、顔料及び分散剤が活性線重合性化合物等に分散された顔料分散液を調製し、これに残りの成分を添加して加熱・混合してもよい。
【0082】
[後処理液]
本発明において、「後処理液」とは、インクが付与された後の記録媒体に付与される液体であり、インクで形成された画像部インクを硬化する、更に保護する等の機能を有する液体である。また、前記後処理液は、インクに活性線を照射することで発生する酸により硬化し、特にカチオン重合性化合物を含有する液である。
後処理液は、溶剤、色材等を更に含有してもよい。ただし、後処理液は着色を主目的としないことから、後処理液における色材の含有量は、後処理液の全質量に対して、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0083】
<カチオン重合性化合物>
後処理液は、カチオン重合性化合物を含有する。
「カチオン重合性化合物」とは、分子中にカチオン重合性基を有する化合物のことをいう。カチオン重合性化合物の例には、エポキシ系化合物、ビニルエーテル系化合物、オキセタン系化合物等が含まれ、これらのうちのいずれかの化合物であることが好ましい。
【0084】
エポキシ(系)化合物の例には、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物等が含まれる。
脂環式エポキシ樹脂の例には、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサノン-メタ-ジオキサン、ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル等が含まれる。
【0085】
脂肪族エポキシ化合物の例には、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)に一種又は二種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル等が含まれる。
【0086】
芳香族エポキシ化合物の例には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂等が含まれる。
【0087】
ビニルエーテル(系)化合物の例には、モノビニルエーテル化合物、ジビニルエーテル化合物、トリビニルエーテル化合物等が含まれる。
ビニルエーテル化合物の例には、具体的には、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が含まれる。
【0088】
オキセタン(系)化合物の例には、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ベンジルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシエチル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシプロピル-3-フェニルオキセタン、3-ヒドロキシブチル-3-メチルオキセタン、1,4ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン及びジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル等が含まれる。
【0089】
<樹脂>
後処理液が含有し得る樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル酸樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、スチレンアクリルマレイン酸樹脂が挙げられる。また、後処理液が含有し得る樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、ビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、等が挙げられる。これらの樹脂は、例えば溶剤に溶解した状態や、エマルジョン化された状態で、後処理液に含有され得る。
【0090】
<溶剤>
後処理液が含有し得る溶剤としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、プロピレングリコールが挙げられる。また、後処理液が含有し得る溶剤としては、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。また、後処理液が含有し得る溶剤としては、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチルカルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0091】
<その他の成分>
後処理液は、上記成分以外に、必要に応じて、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤等を含有してもよい。
【0092】
[後処理液の調製方法]
後処理液は、上記の成分を混合することにより調製できる。この際、得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。
【0093】
後処理液の市販品として、「CELLOXIDE 2021 P」(エポキシ系、ダイセル化学工業社製)、「OXT221 (オキセタン系、東亜合成社製)」等も用いることができる。
【0094】
[基材]
基材としては、記録媒体又は中間転写体を用いることができる。
【0095】
記録媒体としては、インクジェット法で画像を形成できる媒体であればよく、吸収性媒体でも非吸収性媒体でもよい。
吸収性媒体としては、例えば、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙、キャスト紙、非塗工紙等が挙げられる。
非吸収性媒体としては、例えば、プラスチック、ゴム、金属、ガラス等で構成される記録媒体が挙げられる。
【0096】
前記プラスチックとしては、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレンからなるものが挙げられる。また、プラスチックとしては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート、ポリアセタール、ポリビニルアルコール等からなるものが挙げられる。
【0097】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリスチレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが使用できる。また、プラスチックフィルムとしては、二軸延伸ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等が使用できる。
【0098】
中間転写体としては、インクジェット法による画像形成に用いられる公知の中間転写体を用いることができる。
【0099】
[工程]
本発明の画像形成方法は、前記インク塗布工程と、活性線照射工程と、後処理工程と、をこの順に有する。
後処理工程では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、インク中に含有される前記光酸発生剤由来の酸によって、カチオン重合性化合物を重合させる。したがって、後処理工程で、カチオン重合性化合物が重合するため、後処理工程後に再度、活性線照射工程を行う必要がない。
後処理液が溶剤を含有する場合、画像形成方法は、基材に塗布された後処理液を乾燥させる工程(後処理液乾燥工程)を有することが好ましい。
【0100】
中間転写体を用いる場合は、例えば、まず中間転写体にインクを付与する。次いで、中間転写体のインクを記録媒体に付与(転写)する。次いで、記録媒体に付与されたインクを、活性線の照射によって硬化させる。次いで、インクが付与された記録媒体に、後処理液を塗布する。次いで、必要に応じて、記録媒体に塗布された後処理液を、硬化又は/及び乾燥させる。
【0101】
<インク塗布工程>
インク塗布工程では、基材に、インクジェット方式で、活性線重合性化合物等を含有する活性線硬化型インクを付与する。
【0102】
インクジェット記録ヘッド内のインクの温度を、インクのゲル化温度より10~30℃高い温度に設定することで、インク液滴の吐出性を高めることができる。インクジェット記録ヘッド内のインク温度を、ゲル化温度+10℃以上とすることで、インクジェット記録ヘッド内又はノズル表面でインクがゲル化することを抑制できる。インクジェット記録ヘッド内のインクの温度を、ゲル化温度+30℃以下とすることで、インクが高温になる
ことによるインク成分の劣化を防ぐことができる。
【0103】
インクは、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッド、インクジェット記録ヘッドに接続したインク流路、又はインク流路に接続したインクタンク等で加熱できる。
【0104】
インクジェット記録ヘッドの各ノズルから吐出される1滴あたりの液滴量は、画像の解像度にもよるが、0.5~10plが好ましい。また、高精細の画像を形成するためには、0.5~2.5plがより好ましい。このような液滴量で高精細な画像を形成するには、着弾後のインクが合一しない、つまり、インクが十分にゾルゲル相転移する必要がある。活性線硬化型インクでは、ゾルゲル転移が速やかに行われる。したがって、このような液滴量でも高精細な画像を安定して形成できる。
【0105】
基材に着弾したインク液滴は冷却されてゾルゲル相転移により速やかにゲル化する。これにより、インク液滴が拡散せずに、ピニングすることができる。さらには、インク液滴中に酸素が入り込みにくいため、光重合性化合物の硬化が酸素によって阻害されにくい。
【0106】
インク液滴が着弾する際の基材の温度は、インクのゲル化温度よりも10~20℃低い温度に設定することが好ましい。これにより、隣り合うドットのインク同士が混じり合わない程度の適度なレベリングと、適切なピニングとを実現することができる。
【0107】
インク塗布工程は、シングルパス方式及びスキャン方式のいずれの方式で行われてもよい。シングルパス方式を採用することで、画像形成速度を速めることができる。
【0108】
基材の搬送速度は、例えば1~120m/sの間で設定することができる。
【0109】
<活性線照射工程>
活性線照射工程では、基材に付与したインクに活性線を照射し、インクを硬化定着させる。インクに活性線を照射することで、インクに含有される活性線重合性化合物を架橋又は重合させ、インクを硬化定着させることができる。ここで、インクが硬化するとともに、インク中の光酸発生剤が光を吸収して分解することで酸が発生し、この酸によって後処理工程でカチオン重合が開始し、後処理液が硬化することになる。
【0110】
活性線は、LED光源からの紫外線とすることができる。具体例には、Phoseon
Technology社製 395nm、水冷LED等が含まれる。
【0111】
活性線の照射条件は、インクの種類によって適宜設定することができる。例えば、付与されたインクの表面における最高照度が0.5~10.0W/cm2、より好ましくは1~5W/cm2とすることができる。インクに照射される光量は、350mJ/cm2未満となるようにするとよい。活性線の照射に関して、インクの厚みは無視できる範囲であるので、付与されたインクの表面における最高照度の調整は、基材表面での最高照度の調整によって行ってもよい。
【0112】
インク硬化工程にける基材の搬送速度は、インク塗布と同じ速度にすることで、効率的な印刷が可能となる。また、これ以降の工程も同じ速度で行ってもよい。搬送速度は、例えば1~120m/sの間で設定することができるし、シングルパスのインクジェット画像形成方法で適用可能な、線速50~120m/minという非常に速い線速としてもよい。
【0113】
<後処理工程>
後処理工程では、インクが付与された基材に、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を塗布する。後処理液を塗布することにより、後処理液中のカチオン重合性化合物が、インク中の前記光酸発生剤由来の酸によって重合する。したがって、後処理工程で、カチオン重合性化合物が重合するため、後処理工程後に再度、活性線照射工程を行う必要がない。
後処理液を塗布する方法は、特に限定されない。後処理液を塗布する方法は、例えば、インクジェット方式、ロールコート方式、カーテンフロー方式、スピンコート方式、エアースプレー方式、エアーレススプレー方式などから適宜選択できる。
【0114】
なお、上述のとおり、後処理液が溶剤を含有する場合、画像形成方法は、後処理液乾燥工程を有することが好ましい。後処理液乾燥工程では、基材に塗布された後処理液を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
以上のようにして、基材上のインクに後処理液が塗布されて、後処理液塗布工程後に活性線を照射しなくとも後処理液が硬化され、画像が形成される。
【0115】
[画像形成システム]
本発明の画像形成システムは、前記活性線硬化型インクジェットインクを用いて画像を形成する画像形成システムであって、前記活性線硬化型インクジェットインクの塗布手段と、活性線照射手段と後処理手段と、をこの順に有し、前記活性線硬化型インクジェットインクが、活性線重合性化合物、光酸発生剤、色材及び光重合開始剤を含有し、前記後処理手段では、カチオン重合性化合物を含有する後処理液を用い、前記光酸発生剤由来の酸によって、前記カチオン重合性化合物を重合させることを特徴とする。
【0116】
本発明の「画像形成システム」とは、画像形成方法の各工程で必要な手段要素として所定の機能を有する機器又は装置及びインク等で構成され、全体として、画像形成の機能を果たす集合体をいう。なお、各手段要素は、それぞれ離れた異なる場所に個別に配置しても、一つの装置として一定の空間に集めて配置して一体としてシステム装置としてもよい。
本発明の画像形成システムは、前記インクの塗布手段と、活性線照射手段と、後処理手段と、前記したインクを用いて画像を形成するシステムである。
以下において、説明の関係上、インクの塗布手段と、活性線照射手段を有する装置部を特に「画像形成装置」ともいう。
【0117】
本発明の画像形成システムは、前記インクの塗布手段と、活性線照射手段と、後処理手段と、前記したインクを用いて、後処理手段による工程を行った後に、活性線照射手段を有さずに、画像形成する形態又は態様のシステムであれば、画像形成装置を構成する各手段は限定されるものではない。
すなわち、本発明において用いる装置は、前記条件を満たす装置であればよく、本発明のインク専用の画像形成装置にすることは、必ずしも必要ではない。
【0118】
また、本発明の画像形成システムには、記録・複写情報を電子的データとして記録・保存する手段、当該電子的データを無線通信する手段を備えることも好ましい。例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の無線通信により情報処理手段置とデータ送受信を行うための無線インターフェースを有する形態であることも好ましい。
以下、本発明において用いることができる典型的な画像形成装置について説明する。
【0119】
[画像形成装置]
以下、シングルパス方式のインクジェット記録装置を例に、本発明の画像形成方法に適用できる画像形成装置の一例を説明する。なお、以下の例における画像形成方法は、後処理液の塗布方式はインクジェット方式であるが、これに限定されるものではない。
【0120】
図1に示す例では、インクジェット記録装置10は、ヘッドキャリッジ16と、インク流路30と、インクタンク31と、活性線照射部18と、後処理液吐出部40とを有する。
ヘッドキャリッジ16は、複数のインクジェット記録ヘッド14を収容する。
インク流路30は、ヘッドキャリッジ16に接続されている。
インクタンク31は、インク流路30を通じて供給するインクを貯留する。
活性線照射部18は、ヘッドキャリッジ16の下流側に配置されている。
後処理液吐出部40は、活性線照射部18の下流側に配置されている。
【0121】
ヘッドキャリッジ16は、記録媒体12の全幅を覆うように固定配置されており、塗布する色ごとに設けられた複数のインクジェット記録ヘッド14を収容する。インクジェット記録ヘッド14にはインクが供給されるようになっている。例えば、インクは、インクジェット記録装置10に着脱自在に装着されたインクカートリッジ(不図示)等から供給されるようになっていてもよい。また、インクは、インクカートリッジ(不図示)等からインク供給手段(不図示)を経由して供給されるようになっていてもよい。
【0122】
インクジェット記録ヘッド14は、色ごとに、記録媒体12の搬送方向に複数配置される。記録媒体12の搬送方向に配置されるインクジェット記録ヘッド14の数は、インクジェット記録ヘッド14のノズル密度と、印刷画像の解像度によって設定される。例えば、ノズル密度360dpiのインクジェット記録ヘッド14を用いて、1440dpiの解像度の画像を形成する場合には、記録媒体12の搬送方向に対して4つのインクジェット記録ヘッド14をずらして配置すればよい。また、ノズル密度360dpiのインクジェット記録ヘッド14を用いて、720×720dpiの解像度の画像を形成する場合には、2つのインクジェット記録ヘッド14をずらして配置すればよい。dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。
【0123】
インクタンク31は、ヘッドキャリッジ16に、インク流路30を介して接続されている。インク流路30は、インクタンク31中のインクをヘッドキャリッジ16に供給する経路である。インク液滴を安定して吐出するため、インクタンク31、インク流路30、ヘッドキャリッジ16及びインクジェット記録ヘッド14のインクを所定の温度に加熱してゲル状態を維持することが好ましい。
【0124】
活性線照射部18は、記録媒体12の全幅を覆い、かつ記録媒体の搬送方向についてヘッドキャリッジ16の下流側に配置されている。活性線照射部18は、記録媒体に着弾したインクに活性線を照射し、インクを硬化させる。
【0125】
後処理液吐出部40は、記録媒体12の全幅を覆うように固定配置されており、後処理液を記録媒体に塗布するための塗布口42を備える。塗布口42には、後処理液が供給されるようになっている。例えば、後処理液は、インクジェット記録装置10に着脱自在に装着された後処理液カートリッジ(不図示)等から供給されるようになっていてもよい。また、後処理液は、後処理液カートリッジ(不図示)等から後処理液供給手段(不図示)を経由して供給されるようになっていてもよい。
【0126】
後処理液タンク51は、後処理液吐出部40に、後処理液流路50を介して接続されている。後処理液流路50は、後処理液タンク51中の後処理液を後処理液吐出部40に供給する経路である。必要に応じて、後処理液の液滴を安定して吐出するため、後処理液タンク51、後処理液流路50、後処理液吐出部40の後処理液を所定の温度に加熱して、ゲル状態を維持することが好ましい。
【0127】
以上の構成からなる画像形成装置によって、後処理液吐出部40から後処理液が吐出されて記録媒体上のインクに着弾し、インクに活性線を照射することで、インクに含有する光酸発生剤により酸が発生する。その後、後処理液を塗布することで、前記光発生剤由来の酸によって後処理液がカチオン重合を開始し、後処理液が硬化する。
【実施例0128】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0129】
[インクの調製]
以下の成分により、各活性線硬化型インクジェットインクを調製した。
【0130】
<イエロー顔料分散液P1の調製>
下記分散媒及び分散剤をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌し、室温まで冷却した。その後、これに下記顔料を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れ密栓した。
これをペイントシェーカーにて、所望の粒径になるまで分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
【0131】
分散媒:TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)
77質量部
分散剤:アジスパーPB-822(味の素ファインテクノ株式会社製、酸価12mgKOH/g、アミン価17mgKOH/g) 8質量部
顔料:NAF1012イエロー(大日精化社製、PY-154) 15質量部
【0132】
<マゼンタ顔料分散液P2、シアン顔料分散液P3及びブラック顔料分散液P4の調製>
前記シアン顔料分散液P1の調製において、分散媒、分散剤及び顔料を下記表Iに示すとおりに変更した以外はイエロー顔料分散液P1と同様にして調製した。
なお、下記表で使用した顔料は以下のとおりである。
マゼンタ顔料:NAF1032レッド(大日精化社製、PV-19)
シアン顔料:NAF1052ブルー(大日精化社製、PB-15)
ブラック顔料:NAF5091ブラック(大日精化社製、PBk-7)
【0133】
【0134】
<モノマー溶液M1の調製>
下記の組成にしたがって、モノマー溶液M1を調製した。使用した活性線重合性組成物は下記のとおりである。
(活性線重合性化合物)
4-アクリロイルモルフォリン(1官能モノマー) 3.2質量部
ステアリルメタクリレート(1官能モノマー) 75.3質量部
ポリエチレングリコール#400アクリレート、n=9(2官能モノマー、製品名:A400、新中村化学工業社製) 5.4質量部
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、6EO(3官能モノマー、製品名:SR499、サートマー社製) 10.8質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(4官能モノマー、製品名:SR494、サートマー社製) 5.4質量部
【0135】
<モノマー溶液M2及びM3の調製>
前記モノマー溶液M1の調製において、活性線重合性化合物の種類及び添加量を下記表IIに記載のとおりに変更した以外は同様にしてモノマー溶液M2及びM3を調製した。
【0136】
【0137】
<光重合開始剤>
I1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(製品名:Irgacure184、BASFジャパン社製)
I2:2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルフォスフィンオキサイド(製品名:DAROCURE TPO BASFジャパン社製) I3:2-イソプロピルチオキサントン(製品名:Speedcure ITX、Lambson社製)
【0138】
<ゲル化剤>
W1:ベヘン酸ベヘニル(脂肪族エステルワックス、アルキル基の炭素数:C22-C22)
W2:ステアリン酸ステアリル(脂肪族エステルエステルワックス、アルキル基の炭素数:C17-C18)
W3:ミリスチン酸ミリスチル(脂肪族エステルエステルワックス、アルキル基の炭素数:C14-C14)
【0139】
<光酸発生剤>
A1:CPI-100P(サンアプロ社製)
A2:NP-TM2(サンアプロ社製)
【0140】
【0141】
<インク1~23の調製>
下記表III及び表IVに記載のインク組成にしたがって混合し、これを80℃に加熱して撹拌した。得られた溶液の温度を保持したまま、ADVATEC社製テフロン(登録商標)3μmメンブランフィルターで濾過し、各インクを調製した。
【0142】
<後処理液N1の調製>
下記の組成にしたがって混合し、後処理液N1を調製した。
CELLOXIDE 2021 P(エポキシ系、ダイセル化学工業社製)
40質量部
OXT221 (オキセタン系、東亜合成社製) 60質量部
【0143】
<後処理液N2の調製>
下記の組成にしたがって混合し、後処理液N2を調製した。
CELLOXIDE 2021 P(エポキシ系、ダイセル化学工業社製)
20質量部
OXT221 (オキセタン系、東亜合成社製) 60質量部
DEGDVE(ビニルエーテル系、日本カーバイド工業社製)
20質量部
【0144】
【0145】
[画像形成方法]
Y、M、C、Kのインクをそれぞれ充填した4つのインクジェット記録ヘッドを用意した。各インクジェット記録ヘッドは、ノズル径20μm、ノズル数512ノズル(256ノズル×2列、千鳥配列、1列のノズルピッチ360dpi)のピエゾヘッドを用いた。吐出条件は、1滴の液滴量が2.5plとなる条件で、液滴速度約6m/sで出射させて、1440dpi×1440dpiの解像度で記録した。画像形成は、23℃、55%RHの環境下で行った。なお、dpiは2.54cm当たりのドット数を表す。
【0146】
ライン記録方式のインクジェット記録装置を用いて、Y、M、C、Kの画像をそれぞれ形成した。具体的には、印刷用コート紙A(OKトップコート 米坪量128g/m2 王子製紙社製)を準備した。記録媒体は温度制御部により25℃に調温し、搬送速度を500mm/sとした。
一方、得られたインクを、インクジェット記録装置のインクジェット記録ヘッドに充填し、インク温度が80℃となるように加温した。そして、印刷用コート紙A上にインク滴を吐出して、5cm×5cmのベタ画像を形成した。
【0147】
印字後、Phoseo Technology社製LEDランプから光(395nm、8W/cm2、water cooled unit)を照射して、インクを硬化させた。光量は、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計 C9536、H9958で測定した。LEDランプから記録媒体面までの距離は20mmとした。
【0148】
次いで、調製した後処理液をワイヤーバーを用いて、ベタ画像上に塗布し、各画像サンプルを得た。
なお、上記画像形成方法において、使用したインク及び後処理液の組み合わせは、下記表III及び表IVに示すとおりとした。
【0149】
[評価]
<画像擦過性>
形成した画像サンプルについて、スクラッチ強度試験機 HEIDON-18(HEIDON社製)を用い、測定針は0.8mmRのサファイヤ針を用いて、スクラッチ強度の測定を行った。測定は、一定荷重で10cmの引掻き試験を3回行い、記録媒体まで傷が入った箇所が存在しない限度荷重をスクラッチ強度と定義し、その測定値より以下の基準で画像擦過性を評価した。下記基準の「A」を実用上問題ないとした。
(基準)
A:スクラッチ強度が200g以上である
B:スクラッチ強度が100~200g未満である
C:スクラッチ強度が100g未満である
【0150】
【0151】
【0152】
上記結果に示されるように、本発明のインクは、比較例のインクに比べて画像擦過性に優れていることが認められる。したがって、画像形成後に後処理液を塗布する場合に活性線を照射しなくとも硬化性が良好な画像を形成でき、工程の簡略化を図れる。