(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179413
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】フレッシュコンクリート評価システム、及びフレッシュコンクリート評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20241219BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20241219BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G01N33/38
G06Q10/04
G01N11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098252
(22)【出願日】2023-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:令和4年8月1日、ウェブサイトのアドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2022/V-446/public/pdf?type=in 学会発表による公開/学会名:令和4年度土木学会全国大会第77回年次学術講演会、開催場所:京都大学吉田キャンパス(京都府京都市左京区吉田本町)、開催日:令和4年9月16日 電気通信回線を通じた公開/ウェブサイトの掲載日:令和5年3月31日、ウェブサイトのアドレス:https://www.tekken.co.jp/media/5dfa4eed02eb20e8adae188aec118a7ee5bee9c6.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】000216025
【氏名又は名称】鉄建建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岩城 圭介
(72)【発明者】
【氏名】川又 篤
(72)【発明者】
【氏名】福岡 瑛莉奈
(72)【発明者】
【氏名】車 紅升
(72)【発明者】
【氏名】國澤 博
(72)【発明者】
【氏名】山川 勉
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを精度よく、かつ容易に評価できるフレッシュコンクリート評価システム3及びフレッシュコンクリート評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】フレッシュコンクリート評価システム3であって、画像データ38のスランプ試験体5を識別して出力する第1機械学習モデル35で構築されたコンクリート識別手段と、フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する第2機械学習モデル36で構築された粘性評価手段と、フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する第3機械学習モデル37で構築された表面粗さ評価手段と、第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37の出力情報に基づいて、フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定手段と、フレッシュコンクリートの性状の良否を画像データ38に関連付けた送信情報を出力する出力手段とが備えられたことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スランプ試験または/およびスランプフロー試験におけるスランプ試験体を撮像した撮像情報に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価するフレッシュコンクリート評価システムであって、
前記撮像情報を入力情報とし、前記撮像情報の前記スランプ試験体を識別して出力する第1機械学習モデルで構築されたコンクリート識別手段と、
前記第1機械学習モデルの出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する第2機械学習モデルで構築された粘性評価手段と、
前記第1機械学習モデルの前記出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する第3機械学習モデルで構築された表面粗さ評価手段と、
前記第2機械学習モデルの出力情報及び前記第3機械学習モデルの出力情報に基づいて、前記フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定手段と、
少なくとも前記フレッシュコンクリートの性状の良否を前記撮像情報に関連付けた出力情報を出力する出力手段とが備えられた
フレッシュコンクリート評価システム。
【請求項2】
前記コンクリート識別手段の前記第1機械学習モデルは、
前景及び背景を含む前記撮像情報から前記スランプ試験体を直接的に識別する構成である
請求項1に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項3】
前記粘性評価手段の前記第2機械学習モデルは、
前記撮像情報の前記スランプ試験体に基づいて、前記フレッシュコンクリートの粘性の度合を示す粘性評価点を出力する構成であり、
前記表面粗さ評価手段の前記第3機械学習モデルは、
前記撮像情報の前記スランプ試験体に基づいて、前記フレッシュコンクリートの表面粗さの度合を示す表面粗さ評価点を出力する構成であり、
前記判定手段は、
前記粘性評価点に基づいて前記フレッシュコンクリートの粘性の良否を判定するとともに、前記表面粗さ評価点に基づいて前記フレッシュコンクリートの表面粗さの良否を判定する構成である
請求項1に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項4】
前記出力手段は、
前記フレッシュコンクリートの粘性の度合を区分分けした粘性区分を関連付けた前記粘性評価点と、前記フレッシュコンクリートの表面粗さの度合を区分分けした表面粗さ区分を関連付けた前記表面粗さ評価点とを含む前記出力情報を出力する構成である
請求項3に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項5】
複数の技術者が前記撮像情報の前記スランプ試験体を粘性の度合に応じて評価した評価点の平均値を粘性平均値として、
前記粘性評価手段の前記第2機械学習モデルは、
前記粘性平均値が付与された前記撮像情報を教師データとして用いた学習モデルであり、
複数の技術者が前記撮像情報の前記スランプ試験体を表面粗さの度合に応じて評価した評価点の平均値を表面粗さ平均値として、
前記表面粗さ評価手段の前記第3機械学習モデルは、
前記表面粗さ平均値が付与された前記撮像情報を教師データとして用いた学習モデルである
請求項1に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項6】
前記技術者が粘性の度合に応じて評価した評価点は、
前記粘性の度合の区分を示す粘性区分ごとに関連付けられた評価点の一つであり、
前記技術者が表面粗さの度合に応じて評価した評価点は、
前記表面粗さの度合の区分を示す表面粗さ区分ごとに関連付けられた評価点の一つである
請求項5に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項7】
前記粘性区分は、
適度な流動性を有する好適な状態と、該好適な状態より流動性が低い状態と、前記好適な状態よりも流動性が高い状態と、該流動性が高い状態よりもさらに流動性が高い状態の四水準であり、
前記表面粗さ区分は、
粗骨材が目立たない好適な状態と、粗骨材が明確な状態と、前記好適な状態と前記粗骨材が明確な状態との中間の状態の三水準である
請求項6に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項8】
前記判定手段が前記フレッシュコンクリートを不良と判定した場合、前記フレッシュコンクリートの性状不良を報知する報知手段が備えられた
請求項1に記載のフレッシュコンクリート評価システム。
【請求項9】
スランプ試験または/およびスランプフロー試験におけるスランプ試験体を撮像した撮像情報に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価するフレッシュコンクリート評価方法であって、
第1機械学習モデルで構築されたコンクリート識別手段が、前記撮像情報を入力情報とし、前記撮像情報の前記スランプ試験体を識別して出力するコンクリート識別工程と、
第2機械学習モデルで構築された粘性評価手段が、前記第1機械学習モデルの出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する粘性評価工程と、
第3機械学習モデルで構築された表面粗さ評価手段が、前記第1機械学習モデルの前記出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する表面粗さ評価工程と、
判定手段が前記第2機械学習モデルの出力情報及び前記第3機械学習モデルの出力情報に基づいて、前記フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定工程と、
出力手段が少なくとも前記フレッシュコンクリートの性状の良否を前記撮像情報に関連付けた出力情報を出力する出力工程とを行う
フレッシュコンクリート評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばフレッシュコンクリートが打設に適した性状であるかを評価するようなフレッシュコンクリート評価システム及びフレッシュコンクリート評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場から出荷されたフレッシュコンクリートは、アジテータトラックから荷卸しされる現場において、品質管理のための検査が試料を採取して行われている。例えば荷卸し時の検査の一つとして、日本産業規格のJISA1101の「コンクリートのスランプ試験方法」に準じて行われるフレッシュコンクリートのスランプ試験や、JISA1150の「コンクリートのスランプフロー試験方法」に準じて行われるスランプフロー試験がある。
【0003】
ところで、例えばスランプ値が同じスランプ試験体であっても、セメントペーストの流動性や材料分離の状態が異なることがあるため、スランプ値やスランプフロー値だけでは、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを十分に評価できないことが知られている。
【0004】
このため、作業者がセメントペーストの流動性や材料分離の状態を確認して、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを判断することが考えられるが、この場合、フレッシュコンクリートの性状の判断が作業者の経験によって左右されるだけでなく、作業者の手間が増えるという問題がある。
【0005】
そこで、スランプ試験またはスランプフロー試験におけるスランプ試験体を撮像した撮像情報を用いて、フレッシュコンクリートの性状を荷卸しの現場で評価する様々な技術が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、スランプ試験またはスランプフロー試験におけるスランプ試験体を直上から撮像した撮像情報に基づいて、フレッシュコンクリートの材料分離を評価するシステムが開示されている。
【0007】
この特許文献1では、撮像情報中のスランプ試験体を切り出して二値化したのち、低輝度画素の画素数のバラツキに基づいてフレッシュコンクリートの材料分離を評価している。
【0008】
しかしながら、特許文献1は、フレッシュコンクリートの材料分離だけを評価対象としているため、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを十分に評価できるとはいえず改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑み、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを精度よく、かつ容易に評価できるフレッシュコンクリート評価システム及びフレッシュコンクリート評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、スランプ試験または/およびスランプフロー試験におけるスランプ試験体を撮像した撮像情報に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価するフレッシュコンクリート評価システムであって、前記撮像情報を入力情報とし、前記撮像情報の前記スランプ試験体を識別して出力する第1機械学習モデルで構築されたコンクリート識別手段と、前記第1機械学習モデルの出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する第2機械学習モデルで構築された粘性評価手段と、前記第1機械学習モデルの前記出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する第3機械学習モデルで構築された表面粗さ評価手段と、前記第2機械学習モデルの出力情報及び前記第3機械学習モデルの出力情報に基づいて、前記フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定手段と、少なくとも前記フレッシュコンクリートの性状の良否を前記撮像情報に関連付けた出力情報を出力する出力手段とが備えられたことを特徴とする。
【0012】
またこの発明は、スランプ試験または/およびスランプフロー試験におけるスランプ試験体を撮像した撮像情報に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価するフレッシュコンクリート評価方法であって、第1機械学習モデルで構築されたコンクリート識別手段が、前記撮像情報を入力情報とし、前記撮像情報の前記スランプ試験体を識別して出力するコンクリート識別工程と、第2機械学習モデルで構築された粘性評価手段が、前記第1機械学習モデルの出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する粘性評価工程と、第3機械学習モデルで構築された表面粗さ評価手段が、前記第1機械学習モデルの前記出力情報を入力情報とし、前記フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する表面粗さ評価工程と、判定手段が前記第2機械学習モデルの出力情報及び前記第3機械学習モデルの出力情報に基づいて、前記フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定工程と、出力手段が少なくとも前記フレッシュコンクリートの性状の良否を前記撮像情報に関連付けた出力情報を出力する出力工程とを行うことを特徴とする。
【0013】
上記撮像情報とは、スランプ試験やスランプフロー試験で撮像された静止画像または動画像などのことをいう。
上記フレッシュコンクリートの粘性を評価する、及びフレッシュコンクリートの表面粗さを評価するとは、粘性の度合や表面粗さの度合を数値化して評価する、あるいは粘性の度合や表面粗さの度合に応じた区分で評価することをいう。
【0014】
この発明によれば、コンクリート識別手段によって識別された撮像情報のスランプ試験体に基づいて、フレッシュコンクリートの粘性及びフレッシュコンクリートの表面粗さをそれぞれ評価するため、材料分離だけを評価する場合に比べて、フレッシュコンクリートの性状を詳しく評価することができる。
【0015】
この際、コンクリート識別手段の第1機械学習モデルに入力される入力情報として、スランプ試験やスランプフロー試験の撮像情報を用いるため、フレッシュコンクリート評価システムは、荷卸しの現場において、スランプ試験体以外の試料を用意して撮像することを不要できる。
これにより、フレッシュコンクリート評価システムは、荷卸しの現場における作業者の負担を軽減することができる。
【0016】
さらに、粘性を評価する粘性評価手段が第2機械学習モデルで構築され、表面粗さを評価する表面粗さ評価手段が第3機械学習モデルで構築されているため、フレッシュコンクリート評価システムは、作業者が経験に基づいて評価する場合に比べて、フレッシュコンクリートの粘性及び表面粗さを効率よく、かつ安定した精度で評価することができる。
【0017】
そして、フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定手段を備えているため、フレッシュコンクリート評価システムは、作業者がフレッシュコンクリートの性状の良否を判断する手間を省くとともに、フレッシュコンクリートの性状の良否を安定して判定することができる。
【0018】
よって、フレッシュコンクリート評価システム、及びこれを用いたフレッシュコンクリート評価方法は、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを精度よく、かつ容易に評価することができる。
【0019】
このため、フレッシュコンクリート評価システム及びフレッシュコンクリート評価方法は、フレッシュコンクリートが荷卸しされる現場において、スランプ試験やスランプフロー試験と同様に、フレッシュコンクリートの性状の全数評価を可能にすることができる。
【0020】
この発明の態様として、前記コンクリート識別手段の前記第1機械学習モデルは、前景及び背景を含む前記撮像情報から前記スランプ試験体を直接的に識別する構成であってもよい。
この構成によれば、撮像情報の前景及び背景を削除することでスランプ試験体を識別する場合に比べて、撮像情報のスランプ試験体を効率よく識別することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記粘性評価手段の前記第2機械学習モデルは、前記撮像情報の前記スランプ試験体に基づいて、前記フレッシュコンクリートの粘性の度合を示す粘性評価点を出力する構成であり、前記表面粗さ評価手段の前記第3機械学習モデルは、前記撮像情報の前記スランプ試験体に基づいて、前記フレッシュコンクリートの表面粗さの度合を示す表面粗さ評価点を出力する構成であり、前記判定手段は、前記粘性評価点に基づいて前記フレッシュコンクリートの粘性の良否を判定するとともに、前記表面粗さ評価点に基づいて前記フレッシュコンクリートの表面粗さの良否を判定する構成であってもよい。
【0022】
この構成によれば、フレッシュコンクリートの性状をより詳しく評価できるため、フレッシュコンクリートの性状の良否をより精度よく判定することができる。
さらに、例えば粘性評価点及び表面粗さ評価点を付与した出力情報を表示手段に表示することで、フレッシュコンクリート評価システムは、作業者に対してフレッシュコンクリートの性状を客観的に伝えることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記出力手段は、前記フレッシュコンクリートの粘性の度合を区分分けした粘性区分を関連付けた前記粘性評価点と、前記フレッシュコンクリートの表面粗さの度合を区分分けした表面粗さ区分を関連付けた前記表面粗さ評価点とを含む前記出力情報を出力する構成であってもよい。
【0024】
上記粘性区分とは、例えば粘性が低い、粘性が適正、及び粘性が高いなどのことをいう。
上記表面粗さ区分とは、例えば表面粗さが粗い、表面粗さが適正、及び表面粗さが滑らかなどのことをいう。なお、表面粗さが滑らかとは、換言すると表面粗さが細かいともいう。
【0025】
この構成によれば、例えば荷卸しの現場から離れた生産工場に出力情報を送信することで、フレッシュコンクリートの生産に関わる生産管理者に対して、撮像情報や、粘性評価点及び表面粗さ評価点だけでは伝わり難いフレッシュコンクリートの性状をより客観的に伝えることができる。
【0026】
さらに、出力情報の撮像情報に粘性区分及び表面粗さ区分が関連付けられるため、フレッシュコンクリート評価システムは、フレッシュコンクリートの性状の判断経験が浅い作業者の育成に出力情報を用いることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、複数の技術者が前記撮像情報の前記スランプ試験体を粘性の度合に応じて評価した評価点の平均値を粘性平均値として、前記粘性評価手段の前記第2機械学習モデルは、前記粘性平均値が付与された前記撮像情報を教師データとして用いた学習モデルであり、複数の技術者が前記撮像情報の前記スランプ試験体を表面粗さの度合に応じて評価した評価点の平均値を表面粗さ平均値として、前記表面粗さ評価手段の前記第3機械学習モデルは、前記表面粗さ平均値が付与された前記撮像情報を教師データとして用いた学習モデルであってもよい。
【0028】
この構成によれば、複数の技術者の経験を加味した教師データを用いて、高精度な第2機械学習モデル及び第3機械学習モデルを構築することができる。
これにより、フレッシュコンクリート評価システムは、例えば粘性の違いによる特徴を示す情報を教師データとした場合に比べて、第2機械学習モデルが評価した粘性の度合を、技術者が判断した粘性の度合に近づけることができる。
【0029】
同様に、フレッシュコンクリート評価システムは、例えば表面粗さの違いによる特徴を示す情報を教師データとした場合に比べて、第3機械学習モデルが評価した表面粗さの度合を、技術者が判断した表面粗さの度合に近づけることができる。
よって、フレッシュコンクリート評価システムは、フレッシュコンクリートの性状をさらに精度よく評価することができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記技術者が粘性の度合に応じて評価した評価点は、前記粘性の度合の区分を示す粘性区分ごとに関連付けられた評価点の一つであり、前記技術者が表面粗さの度合に応じて評価した評価点は、前記表面粗さの度合の区分を示す表面粗さ区分ごとに関連付けられた評価点の一つであってもよい。
【0031】
上記粘性区分とは、例えば粘性が低い、粘性が適正、及び粘性が高いなどのことをいう。
上記表面粗さ区分とは、例えば表面粗さが粗い、表面粗さが適正、及び表面粗さが滑らかなどのことをいう。なお、表面粗さが滑らかとは、換言すると表面粗さが細かいともいう。
この構成によれば、第2機械学習モデルに用いる教師データ、及び第3機械学習モデルに用いる教師データの精度を向上することができる。
【0032】
具体的には、教師データを生成するために、技術者が撮像情報のスランプ試験体を評価する際、技術者は、スランプ試験体の粘性が粘性区分のいずれに該当するか、スランプ試験体の表面粗さが表面粗さ区分のいずれに該当するかで判断すればよくなる。
【0033】
このため、撮像情報のスランプ試験体に対して技術者が直接的に評価点をつける場合に比べて、フレッシュコンクリート評価システムは、撮像情報のスランプ試験体に対する技術者の評価点が、技術者によってバラつくことを抑えることができる。
【0034】
これにより、フレッシュコンクリート評価システムは、安定した精度の教師データを用いた第2機械学習モデル及び第3機械学習モデルを構築できるため、フレッシュコンクリートの粘性及び表面粗さを安定した精度で評価することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記粘性区分は、適度な流動性を有する好適な状態と、該好適な状態より流動性が低い状態と、前記好適な状態よりも流動性が高い状態と、該流動性が高い状態よりもさらに流動性が高い状態の四水準であり、前記表面粗さ区分は、粗骨材が目立たない好適な状態と、粗骨材が明確な状態と、前記好適な状態と前記粗骨材が明確な状態との中間の状態の三水準であってもよい。
【0036】
この構成によれば、粘性区分及び表面粗さ区分がそれぞれ良否の二水準の場合に比べて、第2機械学習モデルに用いる教師データ、及び第3機械学習モデルに用いる教師データを、フレッシュコンクリートの性状を詳しく評価するのに好適な教師データとすることができる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記判定手段が前記フレッシュコンクリートを不良と判定した場合、前記フレッシュコンクリートの性状不良を報知する報知手段が備えられてもよい。
上記報知手段は、作業者が所有する端末に設けた報知手段、あるいは通信回線を介して接続された別の端末に設けた報知手段などのことをいう。
【0038】
この構成によれば、例えば作業者が保持する端末に報知することで、スランプ試験を行う作業者に対してフレッシュコンクリートの性状不良を速やかに知らせることができる。
【0039】
あるいは、通信回線を介して接続された生産工場の端末に報知することで、フレッシュコンクリート評価システムは、生産工場の生産管理者に対してフレッシュコンクリートの性状不良を知らせることができるとともに、生産工程の点検などを容易に促すことができる。
これにより、このため、フレッシュコンクリート評価システムは、所望される性状を満足しないフレッシュコンクリートが打設に用いられることを防止できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを精度よく、かつ容易に評価できるフレッシュコンクリート評価システム及びフレッシュコンクリート評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】フレッシュコンクリート評価システムの構成を示す構成図。
【
図3】フレッシュコンクリート評価システムの内部構成を示すブロック図。
【
図5】第1機械学習モデルの概略を説明する説明図。
【
図6】第2機械学習モデルの概略を説明する説明図。
【
図7】第3機械学習モデルの概略を説明する説明図。
【
図9】フレッシュコンクリート評価システムの処理動作を示すシーケンス図。
【
図10】性状評価処理の処理動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0042】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態は、フレッシュコンクリートが打設に適した性状であるかを評価するフレッシュコンクリート評価システム3について、
図1から
図8を用いて説明する。
【0043】
なお、
図1はコンクリート施工現場の概略図を示し、
図2はフレッシュコンクリート評価システム3の構成図を示し、
図3はフレッシュコンクリート評価システム3のブロック図を示している。
【0044】
さらに、
図4は画像データ38の概略を説明する説明図を示し、
図5は第1機械学習モデル35の概略を説明する説明図を示し、
図6は第2機械学習モデル36の概略を説明する説明図を示している。
加えて、
図7は第3機械学習モデル37の概略を説明する説明図を示し、
図8はコンクリートの性状を説明する説明図を示している。
【0045】
まず、フレッシュコンクリート(以下、コンクリートと呼ぶ)は、
図1に示すように、生産工場1からアジテータトラック2に積載されるとともに、攪拌されながら荷卸しの現場へ向けて運搬される。
【0046】
そして、荷卸しの現場にアジテータトラック2が到着すると、作業者Mは、アジテータトラック2からコンクリートを荷卸しするとともに、荷卸ししたコンクリートが打設に適した品質かを確認する。
【0047】
具体的には、作業者Mは、日本産業規格のJISA1101の「コンクリートのスランプ試験方法」に基づいたスランプ試験や、JISA1150の「コンクリートのスランプフロー試験方法」に基づいたスランプフロー試験を行い、荷卸ししたコンクリートの品質を確認する。
【0048】
さらに、上述したスランプ試験やスランプフロー試験に引き続いて、作業者Mは、コンクリートの性状が打設に適しているかを、フレッシュコンクリート評価システム3を用いて評価判定する。
【0049】
このようなフレッシュコンクリート評価システム3は、
図1及び
図2に示すように、コンクリートを生産する生産工場1に配置された生産管理端末10と、コンクリートの荷卸しの現場に配置された作業者端末20と、通信回線4を介して生産管理端末10及び作業者端末20に接続されたサーバー30とを備えている。
【0050】
生産管理端末10は、
図2に示すように、生産工場1の生産管理事務所1aに配置された端末であって、コンクリートの生産工程、コンクリートの生産量、及びコンクリートの品質を管理する生産管理者が使用している。
【0051】
また、作業者端末20は、
図2に示すように、生産工場1から離れた荷卸しの現場に配置された携帯電話型の端末であって、スランプ試験または/およびスランプフロー試験にかかわる作業者Mが使用している。
【0052】
また、サーバー30は、生産工場1及び荷卸しの現場から離れた場所に配置され、通信回線4を介して生産管理端末10及び作業者端末20に通信可能に接続されている。このサーバー30は、生産管理端末10との間で各種情報を授受する機能と、作業者端末20との間で各種情報を授受する機能と、作業者端末20から取得した画像データ38を解析してコンクリートの性状を評価する機能とを有している。
【0053】
詳述すると、生産管理端末10は、
図3に示すように、生産管理者の各種操作を受け付ける操作受付部11と、各種情報を表示する表示部12と、各種情報を記憶する記憶部13と、通信回線4に接続する回線接続部14と、これらの動作を制御する制御部15とを備えている。
【0054】
具体的には、操作受付部11は、
図2に示すように、例えばキーボード11aやマウス11bなどで構成され、生産管理者による入力操作を受け付ける機能と、受け付けた入力内容を示す情報を制御部15に出力する機能とを有している。
表示部12は、
図2に示すように、例えば液晶ディスプレイなどで構成され、制御部15からの制御信号により、各種情報を表示する機能を有している。
【0055】
記憶部13は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この記憶部13には、コンクリートの生産管理に係る各種プログラム、及びサーバー30との各種情報の授受に係るプログラムなどが記憶されている。
【0056】
回線接続部14は、例えば有線LANボードなどで構成され、通信回線4に接続する機能と、通信回線4を介して各種情報の受送信を行う機能とを有している。
制御部15は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
【0057】
この制御部15は、サーバー30との各種情報の授受に係る処理機能と、操作受付部11、表示部12、記憶部13及び回線接続部14との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0058】
また、作業者端末20は、
図3に示すように、各種情報を表示するとともに、作業者Mの各種操作を受け付ける操作表示部21と、各種情報を記憶する端末記憶部22と、外部を撮像するカメラ23と、通信回線4に接続する回線接続部24と、これらの動作を制御する端末制御部25とを備えている。
【0059】
具体的には、操作表示部21は、例えばタッチパネルディスプレイなどで構成され、使用者の各種操作を受け付ける機能と、スランプ試験体5(
図1参照)の撮像操作や、スランプ試験体5を撮像した画像データ38(
図4参照)の解析操作に必要な各種情報を表示する機能とを有している。
【0060】
端末記憶部22は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。この端末記憶部22には、コンクリートの性状評価に係る処理プログラムなどが記憶されている。
【0061】
カメラ23は、端末制御部25からの制御信号に基づいて被写体を撮像する機能と、被写体を撮像した撮像信号を端末制御部25に出力する機能とを有している。
回線接続部24は、例えば無線通信モジュールなどで構成され、通信回線4に接続する機能と、通信回線4を介した各種情報の送受信を行う機能とを有している。
【0062】
端末制御部25は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
この端末制御部25は、サーバー30との各種情報の授受に係る処理機能と、操作表示部21、端末記憶部22、カメラ23及び回線接続部24との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0063】
また、サーバー30は、
図3に示すように、通信回線4に接続する回線接続部31と、各種情報を記憶するサーバー記憶部32と、これらの動作を制御するサーバー制御部33とを備えている。
具体的には、回線接続部31は、例えば有線LANボードなどで構成され、通信回線4に接続する機能と、通信回線4を介して各種情報の受送信を行う機能とを有している。
【0064】
また、サーバー記憶部32は、ハードディスクあるいは不揮発性メモリなどで構成され、各種情報を書き込んで記憶する機能と、各種情報を読み出す機能とを有している。
このサーバー記憶部32には、
図3に示すように、施工現場ごとに設定登録されたプロジェクトデータ34と、コンクリートの性状を評価判定する性状評価プログラム(図示省略)と、後述するプロジェクトデータ34の画像データ38を解析してスランプ試験体5を識別する第1機械学習モデル35が記憶されている。
【0065】
さらに、サーバー記憶部32には、スランプ試験体5の粘性の度合(以下、粘性度合と呼ぶ)を解析評価する第2機械学習モデル36と、スランプ試験体5の表面粗さの度合(以下、表面粗さ度合と呼ぶ)を解析評価する第3機械学習モデル37とが記憶されている。
【0066】
サーバー制御部33は、CPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。
このサーバー制御部33は、生産管理端末10及び作業者端末20との各種情報の授受に係る処理機能と、回線接続部31及びサーバー記憶部32との各種信号の授受に係る処理機能と、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能とを有している。
【0067】
ここで、上述したプロジェクトデータ34、第1機械学習モデル35、第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37について詳述する。
まず、プロジェクトデータ34は、施工場所と、打設開始予定日時、打設終了予定日時及び打設完了日時などを示す各種情報と、画像データ38、粘性評価画像39及び表面粗さ評価画像40とが、プロジェクト名を示す情報に関連付けられたデータ群である。
【0068】
このプロジェクトデータ34の画像データ38は、
図4に示すように、スランプ試験または/およびスランプフロー試験の状況を撮像した画像であって、少なくともスランプ試験体5が被写体として撮像され、スランプ試験体5以外の被写体として例えばスランプ平板6及びスランプ検尺7が撮像されている。この画像データ38には、撮影日時を示す情報や試験体名を示す情報などが付与されている。
【0069】
また、プロジェクトデータ34の粘性評価画像39は、後述する第2機械学習モデル36が出力した画像データである。この粘性評価画像39には、後述する粘性度合に応じた粘性評価点、及び粘性評価点に対応する粘性区分を示す粘性ラベルが付与されている。
【0070】
なお、後ほど詳述するが、粘性区分は、スランプ試験体5の粘性度合を「セメントペースト先走り」、「分離気味」、「粘性適正」及び「粘性過大」の4つに区分分けしたものである。
【0071】
また、プロジェクトデータ34の表面粗さ評価画像40は、後述する第3機械学習モデル37が出力した画像データである。この表面粗さ評価画像40には、後述する表面粗さ度合に応じた表面粗さ評価点、及び表面粗さ評価点に対応する表面粗さ区分を示す表面粗さラベルが付与されている。
なお、後ほど詳述するが、表面粗さ区分は、スランプ試験体5の表面粗さ度合を「粗い」、「滑らか」及び「中間」の3つに区分分けしたものである。
【0072】
また、第1機械学習モデル35は、
図5に示すように、例えば入力情報が入力される入力層35aと、中間層35bと、出力情報が出力される出力層35cからなるニューラルネットワークを用いた画像識別アルゴリズムである。
【0073】
この第1機械学習モデル35は、画像データ38を解析して画像データ38中の各物体を識別するとともに、識別した各物体が何であるかを示す名称ラベルを識別した物体に付与するように構築されている。
【0074】
具体的には、第1機械学習モデル35は、
図5に示すように、画像データ38を入力情報とし、画像データ38中のスランプ平板6、スランプ検尺7及びスランプ試験体5などの各物体を検出した識別画像38Aが、入力情報に対する出力情報として得られるように構築されている。
【0075】
このような第1機械学習モデル35は、入力情報である画像データ38とは別の画像データである複数の学習用画像51を、入力情報に対する教師データT1として繰り返し学習して構築されている。
この際、第1機械学習モデル35は、入力情報に対する出力情報が識別画像38Aとなるように、教師データT1に基づいて重み付けや判定閾値を繰り返し調整して学習している。
【0076】
なお、教師データT1である学習用画像51は、
図5に示すように、少なくともスランプ試験体51a、スランプ平板51b及びスランプ検尺51cの形状が予め識別されている。
さらに、学習用画像51は、識別された形状にスランプ平板51bを示す名称ラベル(図示省略)、スランプ検尺51cを示す名称ラベル(図示省略)及びスランプ試験体51aを示す名称ラベル(図示省略)が付与されている。
【0077】
また、第2機械学習モデル36は、
図6に示すように、例えば第1機械学習モデル35が出力した識別画像38Aが入力される入力層36aと、中間層36bと、粘性評価画像39が出力される出力層36cからなるニューラルネットワークを用いた画像識別アルゴリズムである。
【0078】
この第2機械学習モデル36は、
図6に示すように、識別画像38Aにおけるスランプ試験体5の水平方向への広がり具合や形状の変形具合から材料分離の度合を解析するとともに、材料分離の度合をコンクリートの粘性度合として、粘性度合に応じた粘性評価点、及び粘性評価点に対応する粘性区分を示す粘性ラベルを付与するように構築されている。
【0079】
具体的には、第2機械学習モデル36は、識別画像38Aを入力情報とし、入力情報に対する出力情報として、識別画像38Aからスランプ試験体5を含む領域を切り出した画像に、粘性度合に応じた粘性評価点及び粘性区分を示す粘性ラベルを付与した粘性評価画像39が得られるように構築されている。
【0080】
一例として、第2機械学習モデル36は、粘性度合に応じて0点から15点の範囲で粘性評価点を算出するよう構築されている。
さらに、第2機械学習モデル36は、粘性評価点が0点以上7点以下の場合、粘性区分を「分離気味」とし、粘性評価点が7点を超えて12点以下の場合、粘性区分を「粘性適正」とし、粘性評価点が12点を超えて15点以下の場合、粘性区分を「粘性過大」とするよう構築されている。
【0081】
なお、粘性区分の「分離気味」とは、セメントペースト成分の流動性が高く、粗骨材とセメントペーストとが分離した状態を示し、「粘性適正」とは、適度な流動性と粘性とを有した状態を示し、「粘性過大」とは、セメントペースト成分の流動性が極端に低く、スランプ試験体5の裾が広がらず、かつスランプ試験体5が丸みを帯びた形状に変形した状態を示している。
【0082】
このような第2機械学習モデル36は、
図6に示すように、画像データ38とは別の画像データである複数の学習用画像52を、入力情報に対する教師データT2として繰り返し学習して構築されている。
【0083】
この際、第2機械学習モデル36は、入力情報に対する出力情報が粘性評価点及び粘性区分を付与した粘性評価画像39となるように、教師データT2に基づいて重み付けや判定閾値を繰り返し調整して学習している。
【0084】
なお、教師データT2である学習用画像52には、コンクリートの粘性度合を判断可能な複数の技術者による学習用画像52の粘性評価点を平均した粘性平均値と、粘性区分を示す粘性ラベルとが付与されている。
この学習用画像52の粘性評価点は、表1の粘性度合判定表に基づいて作業者などの技術者が決定している。
【0085】
【表1】
より詳しくは、粘性度合判定表は、表1に示すように、粘性度合を「セメントペースト先走り」、「分離気味」、「粘性適正」、及び「粘性過大」の四水準に区分分けした粘性区分に、「10」点を最良とする評価点を関連付けた表である。
【0086】
この四水準の粘性区分のうち、「セメントペースト先走り」は、
図8に示すように、セメントペースト成分の流動性が高く、粗骨材とセメントペーストとが極端に分離した状態である。この「セメントペースト先走り」には、評価点として「0」点が関連付けられている。
【0087】
また、「分離気味」は、
図8に示すように、「セメントペースト先走り」よりもセメントペースト成分の流動性が低く、かつスランプ試験体5の裾が流れて広がった状態である。この「分離気味」には、評価点として「5」点が関連付けられている。
【0088】
また、「粘性適正」は、
図8に示すように、「分離気味」の状態と後述する「粘性過大」との中間の状態であって、適度な流動性と粘性とを有した状態である。この「粘性適正」には、評価点として最良の「10」点が関連付けられている。
【0089】
また、「粘性過大」は、
図8に示すように、セメントペースト成分の流動性が極端に低く、スランプ試験体5の裾が広がらず、かつスランプ試験体5が丸みを帯びた形状に変形した状態である。この「粘性過大」には、評価点として「15」点が関連付けられている。
【0090】
このような粘性度合判定表を用いて、技術者は、学習用画像52のスランプ試験体52aの粘性度合が、表1の粘性度合判定表のいずれの粘性区分に該当するか判定し、該当する粘性区分の評価点を学習用画像52の粘性評価点として決定している。
【0091】
また、第3機械学習モデル37は、
図7に示すように、例えば第1機械学習モデル35が出力した識別画像38Aが入力される入力層37aと、中間層37bと、表面粗さ評価画像40が出力される出力層37cからなるニューラルネットワークを用いた画像識別アルゴリズムである。
【0092】
この第3機械学習モデル37は、
図7に示すように、識別画像38Aにおけるスランプ試験体5の表面テクスチャーから表面粗さを解析するとともに、表面粗さの度合をコンクリートの表面粗さ度合として、表面粗さ度合に応じた表面粗さ評価点、及び表面粗さ評価点に対応する表面粗さ区分を示す表面粗さラベルを付与するように構築されている。
【0093】
具体的には、第3機械学習モデル37は、識別画像38Aを入力情報とし、入力情報に対する出力情報として、識別画像38Aからスランプ試験体5を含む領域を切り出した画像に、表面粗さ度合に応じた表面粗さ評価点及び表面粗さ区分を示す表面粗さラベルを付与した表面粗さ評価画像40が得られるように構築されている。
【0094】
一例として、第3機械学習モデル37は、表面粗さ度合に応じて0点から10点の範囲で表面粗さ評価点を算出するよう構築されている。
さらに、第3機械学習モデル37は、表面粗さ評価点が0点以上3点以下の場合、表面粗さ区分を「粗い」とし、表面粗さ評価点が3点を超えて6点以下の場合、表面粗さ区分を「中間」とし、表面粗さ評価点が6点を超えて10点以下の場合、表面粗さ区分を「滑らか」とするよう構築されている。
【0095】
なお、表面粗さ区分の「粗い」とは、粗骨材を覆うモルタルが薄く、粗骨材の形状が明確な状態を示し、「滑らか」とは、粗骨材が適度にモルタルに覆われ、粗骨材が目立たない状態を示し、「中間」とは「粗い」と「滑らか」との中間の状態を示している。
【0096】
このような第3機械学習モデル37は、
図7に示すように、画像データ38とは別の画像データである複数の学習用画像53を、入力情報に対する教師データT3として繰り返し学習して構築されている。
この際、第3機械学習モデル37は、入力情報に対する出力情報が表面粗さ評価点及び表面粗さ区分を付与した表面粗さ評価画像40となるように、教師データT3に基づいて重み付けや判定閾値を繰り返し調整して学習している。
【0097】
なお、教師データT3である学習用画像53には、コンクリートの表面粗さ度合を判断可能な複数の技術者による学習用画像53の表面粗さ評価点を平均した表面粗さ平均値と、表面粗さ区分を示す表面粗さラベルとが付与されている。
この学習用画像53の表面粗さ評価点は、表2の表面粗さ度合判定表に基づいて作業者などの技術者が決定している。
【0098】
【表2】
より詳しくは、表面粗さ度合判定表は、表2に示すように、表面粗さ度合を「粗い」、「中間」及び「滑らか」の三水準に区分分けした表面粗さ区分に、「10」点を最良とする評価点を関連付けた表である。
【0099】
この三水準の表面粗さ区分のうち、「粗い」は、
図8に示すように、粗骨材を覆うモルタルが薄く、粗骨材の形状が明確な状態である。この「粗い」には、評価点として「0」点が関連付けられている。
【0100】
また、「中間」は、
図8に示すように、「粗い」と後述する「滑らか」との中間の状態であって、「粗い」に比べてモルタルが厚く、粗骨材の形状が明確でない状態である。この「中間」には、評価点として「5」点が関連付けられている。
【0101】
また、「滑らか」は、
図8に示すように、粗骨材が適度にモルタルに覆われ、粗骨材が目立たない状態である。この「滑らか」には、評価点として最良の「10」点が関連付けられている。
【0102】
このような表面粗さ度合判定表を用いて、技術者は、学習用画像53のスランプ試験体53aの表面粗さ度合が、表2の表面粗さ度合判定表のいずれの表面粗さ区分に該当するか判定し、該当する表面粗さ区分の評価点を学習用画像53の表面粗さ評価点として決定している。
【0103】
次に、上述した構成のフレッシュコンクリート評価システム3における処理動作について、
図9から
図11を用いて説明する。
なお、
図9はフレッシュコンクリート評価システム3の処理動作のシーケンス図を示し、
図10は性状評価処理の処理動作のフローチャートを示し、
図11は判定結果画面60の概略を説明する説明図を示している。
【0104】
まず、作業者Mが作業者端末20を操作してコンクリートの性状評価に係る処理プログラムを実行すると、作業者端末20の端末制御部25は、各種操作を案内するメニュー画面(図示省略)を操作表示部21に表示する。
【0105】
このメニュー画面には、例えばプロジェクト名や試験体名の入力を促す案内メッセージ、スランプ試験後または/およびスランプフロー試験後のスランプ試験体5を撮像開始するためのカメラボタンや、スランプ試験体5を撮像した画像データ38をサーバー30に登録する登録ボタンなどが表示されている。
【0106】
作業者端末20の操作表示部21にメニュー画面が表示されると、作業者Mは、メニュー画面の案内にしたがって、プロジェクト名や試験体名を入力したのち、カメラボタンを押下する。
【0107】
作業者Mによるカメラボタンの押下を検知すると、端末制御部25は、
図9に示すように、撮像処理を開始して(ステップS101)、スランプ試験後または/およびスランプフロー試験後のスランプ試験体5の撮像を促す画面(図示省略)を操作表示部21に表示する。
【0108】
この際、作業者Mは、操作表示部21に表示された案内にしたがって、スランプ平板6上のスランプ試験体5を直上以外の方向、好ましくはスランプ試験体5の広がり具合と高さ方向の崩れ具合とが明確となる方向から撮像するように作業者端末20を構える(
図1参照)。その後、作業者Mは、操作表示部21に表示されたシャッターボタンを押下する。
【0109】
作業者Mによるシャッターボタンの押下を検知すると、端末制御部25からの制御信号に基づいて、カメラ23は、被写体を撮像したのち、撮像信号を端末制御部25に出力する。
カメラ23から撮像信号を取得した端末制御部25は、撮像信号に試験体名及び撮像日時を関連付けた画像データ38を生成して端末記憶部22に記憶する。
【0110】
その後、作業者Mによる登録ボタンの押下を検知すると、端末制御部25は、
図9に示すように、画像データ38をサーバー30に送信する画像送信処理を開始する(ステップS102)。
この際、端末制御部25は、プロジェクト名を画像データ38に関連付けてサーバー30に送信する。
【0111】
一方、作業者端末20からの画像データ38を受信すると、サーバー30は、
図9に示すように、画像データ38を解析してコンクリートの性状を評価する性状評価処理を開始する(ステップS103)。
【0112】
具体的には、性状評価処理を開始すると、サーバー30のサーバー制御部33は、
図10に示すように、作業者端末20から取得した画像データ38をプロジェクト名に対応するプロジェクトデータ34に関連付けて記憶する(ステップS111)。
【0113】
その後、サーバー制御部33は、
図10に示すように、画像データ38を解析して、画像データ38中の各物体を識別する画像識別処理を開始する(ステップS112)。
【0114】
具体的には、サーバー制御部33は、サーバー記憶部32から読み出した第1機械学習モデル35の入力層35aに対して画像データ38を入力情報として入力する。
この際、第1機械学習モデル35は、入力情報を入力層35aから中間層35bへ、中間層35bから出力層35cへ受け渡しながら、予め学習した重みや閾値との比較判定などを行って画像データ38中の各物体を識別する。
【0115】
その後、第1機械学習モデル35は、各物体を示す情報、及び各物体の名称を示す名称ラベルを画像データ38に付与した識別画像38Aを出力情報として出力する(
図5参照)。
【0116】
例えば、第1機械学習モデル35は、画像データ38中のスランプ試験体5を示す情報、及び「スランプ試験体」という名称ラベルを画像データ38に付与した識別画像38Aを出力情報として出力する。
【0117】
画像識別処理を完了すると、サーバー制御部33は、
図10に示すように、識別画像38A中のスランプ試験体5を解析して、スランプ試験体5の水平方向への広がり具合や形状の変形具合からコンクリートの粘性度合を評価する粘性評価処理を開始する(ステップS113)。
【0118】
具体的には、サーバー制御部33は、サーバー記憶部32から読み出した第2機械学習モデル36の入力層36aに対して識別画像38Aを入力情報として入力する。
この際、第2機械学習モデル36は、入力情報を入力層36aから中間層36bへ、中間層36bから出力層36cへ受け渡しながら、予め学習した重みや閾値との比較判定などを行ってコンクリートの粘性度合を示す粘性評価点を割り当てる。
【0119】
その後、第2機械学習モデル36は、粘性評価点及び粘性評価点に対応する粘性区分を付与した粘性評価画像39を出力情報として出力する(
図6参照)。
粘性評価処理を完了すると、サーバー制御部33は、
図10に示すように、識別画像38A中のスランプ試験体5の表面テクスチャーを解析して、コンクリートの表面粗さ度合を評価する表面粗さ評価処理を開始する(ステップS114)。
具体的には、サーバー制御部33は、サーバー記憶部32から読み出した第3機械学習モデル37の入力層37aに対して識別画像38Aを入力情報として入力する。
【0120】
この際、第3機械学習モデル37は、入力情報を入力層37aから中間層37bへ、中間層37bから出力層37cへ受け渡しながら、予め学習した重みや閾値との比較判定などを行ってコンクリートの表面粗さ度合を示す表面粗さ評価点を割り当てる。
その後、第3機械学習モデル37は、表面粗さ評価点及び表面粗さ評価点に対応する表面粗さ区分を付与した表面粗さ評価画像40を出力情報として出力する(
図7参照)。
【0121】
表面粗さ評価処理を完了すると、サーバー制御部33は、
図10に示すように、粘性評価画像39の粘性評価点が粘性判定条件を満足するか否かを判定する(ステップS115)。なお、ここでは、一例として粘性判定条件を、粘性評価点が7点を超えて12点以下とする。
【0122】
粘性評価点が粘性判定条件を満足しない場合(ステップS115:No)、サーバー制御部33は、粘性度合が不良であること報知するための粘性報知フラグを生成したのち(ステップS116)、処理をステップS117に進める。
【0123】
一方、粘性評価点が粘性判定条件を満足する場合(ステップS115:Yes)、サーバー制御部33は、表面粗さ評価画像40の表面粗さ評価点が表面粗さ判定条件を満足するか否かを判定する(ステップS117)。なお、ここでは、一例として表面粗さ判定条件を、表面粗さ評価点が6点を超えて10点以下とする。
【0124】
表面粗さ評価点が表面粗さ判定条件を満足しない場合(ステップS117:No)、サーバー制御部33は、表面粗さ度合が不良であること報知するための表面粗さ報知フラグを生成したのち(ステップS118)、処理をステップS119に進める。
【0125】
一方、表面粗さ評価点が表面粗さ判定条件を満足する場合(ステップS117:Yes)、サーバー制御部33は、作業者端末20に送信する送信情報を生成する(ステップS119)。
【0126】
具体的には、サーバー制御部33は、撮像日時などが付与された画像データ38と、名称ラベルなどが付与された識別画像38Aと、粘性評価点及び粘性区分が付与された粘性評価画像39と、表面粗さ評価点及び表面粗さ区分が付与された表面粗さ評価画像40とを関連付けた送信情報を生成する。
【0127】
さらに、粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグが生成されている場合、サーバー制御部33は、粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグを送信情報に付与する。
【0128】
その後、サーバー制御部33は、プロジェクト名に対応するプロジェクトデータ34に関連付けて送信情報を記憶したのち、送信情報に粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグが付与されているか否かを判定する(ステップS120)。
【0129】
送信情報に粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグが付与されていない場合(ステップS120:Yes)、サーバー制御部33は、通信回線4を介して送信情報を作業者端末20に送信したのち(ステップS121)、性状評価処理を終了する。
【0130】
一方、送信情報に粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグが付与されている場合(ステップS120:No)、サーバー制御部33は、通信回線4を介して送信情報を作業者端末20及び生産管理端末10の双方に送信したのち(ステップS122)、性状評価処理を終了する。
【0131】
図9のステップS103に戻って、サーバー30からの送信情報を取得した作業者端末20の端末制御部25は、サーバー30から取得した送信情報に基づいて、判定結果画面60を生成するとともに、判定結果画面60を操作表示部21に表示する表示処理を開始する(ステップS104)。
【0132】
この判定結果画面60には、
図11に示すように、画面上部に、画像データ38、試験体名及び撮像日時が表示されるとともに、コンクリートの性状の良否を示す良否欄61が表示されている。
さらに、判定結果画面60には、「スランプ試験体の粘性」という項目が表示されるとともに、粘性評価画像39、粘性区分が明示された粘性区分バー62及び粘性評価点が画面中央に表示されている。
【0133】
加えて、判定結果画面60には、「スランプ試験体の表面粗さ」という項目が表示されるとともに、表面粗さ評価画像40、表面粗さ区分が明示された表面粗さ区分バー63及び表面粗さ評価点が画面下部に表示されている。
【0134】
なお、送信情報に粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグが付与されていない場合、判定結果画面60の良否欄61に「良」が表示される。一方、送信情報に粘性報知フラグまたは/および表面粗さ報知フラグが付与されている場合、判定結果画面60の良否欄61に「粘性不良」または/および「表面粗さ不良」が表示される。
【0135】
また
図9のステップS103に戻って、サーバー30からの送信情報を取得した生産管理端末10の制御部15は、サーバー30から取得した送信情報に基づいて、コンクリートの性状不良を報知する報知処理を開始する(ステップS105)。
【0136】
例えば、生産管理端末10の制御部15は、上述の判定結果画面60と同様の画面を表示部12に表示するとともに、音声による報知を行うことで、生産管理者にコンクリートの性状不良を通知する。
【0137】
このようにして、本実施形態のフレッシュコンクリート評価システム3は、フレッシュコンクリートが打設に適した性状であるかを評価するとともに、性状不良の場合には作業者M及び生産管理者に報知することで、フレッシュコンクリートの品質管理を支援している。
【0138】
以上のように、本実施形態のフレッシュコンクリート評価システム3は、スランプ試験または/およびスランプフロー試験におけるスランプ試験体5を撮像した画像データ38に基づいて、フレッシュコンクリートの性状を評価するシステムである。
【0139】
このフレッシュコンクリート評価システム3は、画像データ38を入力情報とし、画像データ38のスランプ試験体5を識別して出力する第1機械学習モデル35で構築されたコンクリート識別手段を備えている。
【0140】
さらに、フレッシュコンクリート評価システム3は、第1機械学習モデル35の出力情報(識別画像38A)を入力情報とし、フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する第2機械学習モデル36で構築された粘性評価手段を備えている。
【0141】
加えて、フレッシュコンクリート評価システム3は、第1機械学習モデル35の出力情報(識別画像38A)を入力情報とし、フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する第3機械学習モデル37で構築された表面粗さ評価手段を備えている。
【0142】
さらにまた、フレッシュコンクリート評価システム3は、第2機械学習モデル36の出力情報(粘性評価画像39)及び第3機械学習モデル37の出力情報(表面粗さ評価画像40)に基づいて、フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定手段(サーバー制御部33)を備えている。
【0143】
そして、フレッシュコンクリート評価システム3は、少なくともフレッシュコンクリートの性状の良否を画像データ38に関連付けた送信情報を出力する出力手段(サーバー制御部33)を備えている。
【0144】
また、本実施形態におけるフレッシュコンクリート評価方法は、第1機械学習モデル35で構築されたコンクリート識別手段が、画像データ38を入力情報とし、画像データ38のスランプ試験体5を識別して出力するコンクリート識別工程と、第2機械学習モデル36で構築された粘性評価手段が、第1機械学習モデル35の出力情報(識別画像38A)を入力情報とし、フレッシュコンクリートの粘性を評価して出力する粘性評価工程とを行う。
【0145】
さらに、フレッシュコンクリート評価方法は、第3機械学習モデル37で構築された表面粗さ評価手段が、第1機械学習モデル35の出力情報(識別画像38A)を入力情報とし、フレッシュコンクリートの表面粗さを評価して出力する表面粗さ評価工程と、判定手段(サーバー制御部33)が第2機械学習モデル36の出力情報(粘性評価画像39)及び第3機械学習モデル37の出力情報(表面粗さ評価画像40)に基づいて、フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定工程とを行う。
【0146】
そして、フレッシュコンクリート評価方法は、出力手段(サーバー制御部33)が少なくともフレッシュコンクリートの性状の良否を画像データ38に関連付けた送信情報を出力する出力工程を行うものである。
【0147】
この構成によれば、コンクリート識別手段によって識別された画像データ38のスランプ試験体5に基づいて、フレッシュコンクリートの粘性及びフレッシュコンクリートの表面粗さをそれぞれ評価するため、材料分離だけを評価する場合に比べて、フレッシュコンクリートの性状を詳しく評価することができる。
【0148】
この際、コンクリート識別手段の第1機械学習モデル35に入力される入力情報として、スランプ試験やスランプフロー試験の画像データ38を用いるため、フレッシュコンクリート評価システム3は、荷卸しの現場において、スランプ試験体5以外の試料を用意して撮像することを不要できる。
これにより、フレッシュコンクリート評価システム3は、荷卸しの現場における作業者Mの負担を軽減することができる。
【0149】
さらに、粘性を評価する粘性評価手段が第2機械学習モデル36で構築され、表面粗さを評価する表面粗さ評価手段が第3機械学習モデル37で構築されているため、フレッシュコンクリート評価システム3は、作業者Mが経験に基づいて評価する場合に比べて、フレッシュコンクリートの粘性及び表面粗さを効率よく、かつ安定した精度で評価することができる。
【0150】
そして、フレッシュコンクリートの性状の良否を判定する判定手段(サーバー制御部33)を備えているため、フレッシュコンクリート評価システム3は、作業者Mがフレッシュコンクリートの性状の良否を判断する手間を省くとともに、フレッシュコンクリートの性状の良否を安定して判定することができる。
【0151】
よって、フレッシュコンクリート評価システム3、及びこれを用いたフレッシュコンクリート評価方法は、打設に適した性状のフレッシュコンクリートであるかを精度よく、かつ容易に評価することができる。
【0152】
このため、フレッシュコンクリート評価システム3及びフレッシュコンクリート評価方法は、フレッシュコンクリートが荷卸しされる現場において、スランプ試験やスランプフロー試験と同様に、フレッシュコンクリートの性状の全数評価を可能にすることができる。
【0153】
また、コンクリート識別手段の第1機械学習モデル35が、前景及び背景を含む画像データ38からスランプ試験体5を直接的に識別するため、フレッシュコンクリート評価システム3は、画像データ38の前景及び背景を削除することでスランプ試験体5を識別する場合に比べて、画像データ38のスランプ試験体5を効率よく識別することができる。
【0154】
また、粘性評価手段の第2機械学習モデル36は、画像データ38のスランプ試験体5に基づいて、フレッシュコンクリートの粘性度合を示す粘性評価点を出力する構成である。
【0155】
さらに、表面粗さ評価手段の第3機械学習モデル37は、画像データ38のスランプ試験体5に基づいて、フレッシュコンクリートの表面粗さ度合を示す表面粗さ評価点を出力する構成である。
【0156】
そして、判定手段(サーバー制御部33)は、粘性評価点に基づいてフレッシュコンクリートの粘性の良否を判定するとともに、表面粗さ評価点に基づいてフレッシュコンクリートの表面粗さの良否を判定する構成である。
【0157】
この構成によれば、フレッシュコンクリートの性状をより詳しく評価できるため、フレッシュコンクリートの性状の良否をより精度よく判定することができる。
さらに、粘性評価点及び表面粗さ評価点を付与した送信情報を作業者端末20に表示することで、フレッシュコンクリート評価システム3は、作業者Mに対してフレッシュコンクリートの性状を客観的に伝えることができる。
【0158】
また、出力手段(サーバー制御部33)は、フレッシュコンクリートの粘性度合を区分分けした粘性区分を関連付けた粘性評価点と、フレッシュコンクリートの表面粗さ度合を区分分けした表面粗さ区分を関連付けた表面粗さ評価点とを含む送信情報を出力する構成である。
【0159】
この構成によれば、例えば荷卸しの現場から離れた生産工場1でフレッシュコンクリートの生産に関わる生産管理者に対して、画像データ38や、粘性評価点及び表面粗さ評価点だけでは伝わり難いフレッシュコンクリートの性状をより客観的に伝えることができる。
【0160】
さらに、送信情報の画像データ38に粘性区分及び表面粗さ区分が関連付けられるため、フレッシュコンクリート評価システム3は、フレッシュコンクリートの性状の判断経験が浅い作業者Mの育成に出力情報を用いることができる。
【0161】
また、複数の技術者が画像データ38のスランプ試験体5を粘性度合に応じて評価した評価点の平均値を粘性平均値とし、粘性評価手段の第2機械学習モデル36は、粘性平均値が付与された画像データ38を教師データT2として用いた学習モデルである。
【0162】
さらに、複数の技術者が画像データ38のスランプ試験体5を表面粗さ度合に応じて評価した評価点の平均値を表面粗さ平均値として、表面粗さ評価手段の第3機械学習モデル37は、表面粗さ平均値が付与された画像データ38を教師データT3として用いた学習モデルである。
【0163】
この構成によれば、複数の技術者の経験を加味した教師データT2,T3を用いて、高精度な第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37を構築することができる。
これにより、フレッシュコンクリート評価システム3は、例えば粘性の違いによる特徴を示す情報を教師データとした場合に比べて、第2機械学習モデル36が評価した粘性度合を、技術者が判断した粘性度合に近づけることができる。
【0164】
同様に、フレッシュコンクリート評価システム3は、例えば表面粗さの違いによる特徴を示す情報を教師データとした場合に比べて、第3機械学習モデル37が評価した表面粗さ度合を、技術者が判断した表面粗さ度合に近づけることができる。
よって、フレッシュコンクリート評価システム3は、フレッシュコンクリートの性状をさらに精度よく評価することができる。
【0165】
また、技術者が粘性度合に応じて評価した評価点は、粘性度合の区分を示す粘性区分ごとに関連付けられた評価点の一つである。さらに、技術者が表面粗さ度合に応じて評価した評価点は、表面粗さ度合の区分を示す表面粗さ区分ごとに関連付けられた評価点の一つである。
【0166】
この構成によれば、第2機械学習モデル36に用いる教師データT2、及び第3機械学習モデル37に用いる教師データT3の精度を向上することができる。
【0167】
具体的には、教師データT2,T3を生成するために、技術者が画像データ38のスランプ試験体5を評価する際、技術者は、スランプ試験体5の粘性が粘性区分のいずれに該当するか、スランプ試験体5の表面粗さが表面粗さ区分のいずれに該当するかで判断すればよくなる。
【0168】
このため、画像データ38のスランプ試験体5に対して技術者が直接的に評価点をつける場合に比べて、フレッシュコンクリート評価システム3は、画像データ38のスランプ試験体5に対する技術者の評価点が、技術者によってバラつくことを抑えることができる。
【0169】
これにより、フレッシュコンクリート評価システム3は、安定した精度の教師データT2,T3を用いた第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37を構築できるため、フレッシュコンクリートの粘性及び表面粗さを安定した精度で評価することができる。
【0170】
また、粘性区分は、適度な流動性を有する好適な状態である「粘性適正」と、「粘性適正」より流動性が低い状態である「粘性過大」と、「粘性適正」よりも流動性が高い状態である「分離気味」と、「分離気味」よりも流動性が高い状態である「セメントペースト先走り」の四水準である。
一方、表面粗さ区分は、粗骨材が目立たない好適な状態である「滑らか」と、粗骨材が明確な状態である「粗い」と、「滑らか」と「粗い」との中間の状態である「中間」の三水準である。
【0171】
この構成によれば、粘性区分及び表面粗さ区分がそれぞれ良否の二水準の場合に比べて、第2機械学習モデル36に用いる教師データT2、及び第3機械学習モデル37に用いる教師データT3を、フレッシュコンクリートの性状を詳しく評価するのに好適な教師データとすることができる。
【0172】
また、フレッシュコンクリート評価システム3は、判定手段(サーバー制御部33)がフレッシュコンクリートを不良と判定した場合、フレッシュコンクリートの性状不良を報知する報知手段(生産管理端末10及び作業者端末20)を備えている。
この構成によれば、作業者Mが保持する作業者端末20に報知することで、スランプ試験を行う作業者Mに対してフレッシュコンクリートの性状不良を速やかに知らせることができる。
【0173】
さらに、通信回線4を介して接続された生産管理端末10に報知することで、フレッシュコンクリート評価システム3は、生産工場1の生産管理者に対してフレッシュコンクリートの性状不良を知らせることができるとともに、生産工程の点検などを容易に促すことができる。
これにより、このため、フレッシュコンクリート評価システム3は、所望される性状を満足しないフレッシュコンクリートが打設に用いられることを防止できる。
【0174】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の撮像情報は、実施形態の画像データ38に対応し、
以下同様に、
第1機械学習モデルの出力情報は、識別画像38Aに対応し、
第2機械学習モデルの出力情報は、粘性評価画像39に対応し、
第3機械学習モデルの出力情報は、表面粗さ評価画像40に対応し、
判定手段及び出力手段は、サーバー制御部33に対応し、
出力情報は、送信情報に対応し、
報知手段は、生産管理端末10及び作業者端末20に対応し、
コンクリート識別工程は、ステップS112に対応し、
粘性評価工程は、ステップS113に対応し、
表面粗さ評価工程は、ステップS114に対応し、
判定工程は、ステップS115及びステップS117に対応し、
出力工程は、ステップS119に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0175】
例えば上述した実施形態において、生産工場1に配置される端末として、生産管理者が使用する生産管理端末10を用いて説明したが、これに限定せず、生産工場1に配置される端末であれば、コンクリートの品質を管理する品質管理者が使用する端末などであってもよい。
また、作業者Mが使用する端末として、携帯電話型の作業者端末20としたが、これに限定せず、作業者Mが携帯して使用する端末であれば、タブレット型の端末などであってもよい。
【0176】
また、作業者端末20の端末制御部25が、ステップS101でスランプ試験体5を撮像した画像データ38を端末記憶部22に記憶したのち、ステップS102で作業者Mの操作によって画像データ38をサーバー30に送信したが、これに限定しない。
例えば
図9のステップS101において、スランプ試験体5を撮像した画像データ38を生成したのち、プロジェクト名を関連付けた画像データ38をサーバー30に自動的に送信する構成であってもよい。
【0177】
また、作業者Mが作業者端末20を操作して、端末記憶部22に記憶した処理プログラムを実行することで、操作表示部21にメニュー画面を表示したが、これに限定しない。
例えば作業者Mが作業者端末20を操作して、作業者端末20のWEBブラウザを起動するとともに、WEBブラウザを介してサーバー30にアクセスすることで、WEBブラウザ上にメニュー画面を表示する構成であってもよい。
【0178】
この際、サーバー30は、作業者端末20との間で各種情報を授受しながら、スランプ試験体5の撮像及びコンクリートの性状評価に係る各種処理を進めたのち、作業者端末20に送信情報を送信して判定結果画面60を表示させる。
なお、この場合、スランプ試験体5を撮像した画像データ38は、作業者端末20及びサーバー30の双方に記憶される構成、あるいはサーバー30にのみ記憶される構成のどちらであってもよい。
【0179】
また、スランプ試験または/およびスランプフロー試験におけるスランプ試験体5を撮像した画像データ38を用いて説明したが、これに限定せず、スランプ試験体5を撮像した動画像であってもよい。
【0180】
また、スランプ平板6及びスランプ検尺7がスランプ試験体5以外の被写体として撮像された画像データ38としたが、これに限定せず、例えば日本産業規格と同等の規格に基づいて行われる海外のスランプ試験の場合、スランプ検尺7にかえてコンベックスが被写体として撮像された画像データ38であってもよい。
【0181】
また、携帯電話型の作業者端末20でスランプ試験体5を撮像したが、これに限定せず、例えばデジタルカメラでスランプ試験体5を撮像してもよい。この場合、デジタルカメラに保存された画像データ38を、携帯可能なパソコンに取り込んでコンクリートの性状を評価してもよい。
【0182】
また、ニューラルネットワークを用いた第1機械学習モデル35、第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37としたが、これに限定せず、画像データ38のスランプ試験体5、スランプ試験体5の粘性及び表面粗さを識別できる適宜の画像識別アルゴリズムであってよい。
【0183】
また、第1機械学習モデル35が識別画像38Aを出力し、第2機械学習モデル36が粘性評価画像39を出力し、第3機械学習モデル37が表面粗さ評価画像40を出力したが、これに限定しない。
【0184】
例えば1つの機械学習モデルが識別画像38A、粘性評価画像39及び表面粗さ評価画像40を出力する構成、あるいは1つの機械学習モデルが識別画像38Aを出力し、別の機械学習モデルが粘性評価画像39及び表面粗さ評価画像40を出力する構成であってもよい。
【0185】
また、第1機械学習モデル35の教師データT1である学習用画像51、第2機械学習モデル36の教師データT2である学習用画像52、及び第3機械学習モデル37の教師データT3である学習用画像53は、画像データ38と別であれば、同じ画像データまたは互いに異なる画像データであってもよい。
【0186】
また、第2機械学習モデル36が出力する粘性評価画像39を、識別画像38Aからスランプ試験体5を含む領域を切り出した画像に、粘性評価点及び粘性ラベルを付与した構成としたが、これに限定せず、粘性評価点及び粘性ラベルを付与した識別画像38Aを粘性評価画像39としてもよい。
【0187】
同様に、第3機械学習モデル37が出力する表面粗さ評価画像40を、識別画像38Aからスランプ試験体5を含む領域を切り出した画像に、表面粗さ評価点及び表面粗さラベルを付与した構成としたが、これに限定せず、表面粗さ評価点及び表面粗さラベルを付与した識別画像38Aを表面粗さ評価画像40としてもよい。
【0188】
また、粘性評価点、表面粗さ評価点、粘性度合判定表の評価点、及び表面粗さ度合判定表の評価点は、上述した実施形態に限定せず、適宜の評価点としてもよい。
また、粘性区分、表面粗さ区分、粘性度合判定表の粘性区分、及び表面粗さ度合判定表の表面粗さ区分は、上述した実施形態に限定せず、粘性度合に応じた適宜の区分、及び表面粗さ度合に応じた表面粗さ区分としてもよい。この場合、粘性区分に対応する粘性評価点、及び表面粗さ区分に対応する表面粗さ評価点は、適宜の評価点であってよい。
【0189】
また、
図10のステップS115において粘性評価点が粘性判定条件を満足するか否かを判定し、ステップS117において表面粗さ評価点が表面粗さ判定条件を満足するか否かを判定したが、これに限定しない。
例えばステップS115において粘性区分が所望される粘性区分か否かを判定し、ステップS117において表面粗さ区分が所望される表面粗さ区分か否かを判定してもよい。
【0190】
また、
図10のステップS115において、粘性判定条件を粘性評価点が7点を超えて12点以下としたが、これに限定せず、適宜の範囲の粘性評価点であってもよい。
また、
図10のステップS117において、表面粗さ判定条件を表面粗さ評価点が6点を超えて10点以下としたが、これに限定せず、適宜の範囲の表面粗さ評価点であってもよい。
【0191】
また、第1機械学習モデル35、第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37をサーバー30に記憶し、作業者端末20から取得した画像データ38を解析する構成としたが、これに限定しない。例えば第1機械学習モデル35、第2機械学習モデル36及び第3機械学習モデル37を作業者端末20に記憶し、作業者端末20において画像データ38の解析を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0192】
3…フレッシュコンクリート評価システム
5…スランプ試験体
10…生産管理端末
20…作業者端末
33…サーバー制御部
35…第1機械学習モデル
36…第2機械学習モデル
37…第3機械学習モデル
38…画像データ
38A…識別画像
39…粘性評価画像
40…表面粗さ評価画像
T2…教師データ
T3…教師データ