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  • 特開-発泡成形用金型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179424
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】発泡成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/26 20060101AFI20241219BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B29C39/26
B29C33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098273
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池邉 学
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AB01C
4F202AB02C
4F202AC05
4F202AD05
4F202AE10
4F202AG13
4F202AH55
4F202AJ02
4F202AJ03
4F202AJ09
4F202AJ15
4F202AR12
4F202CA01
4F202CB01
4F202CB12
4F202CD22
(57)【要約】
【課題】膨張黒鉛を含有する発泡樹脂成形体を成形する、新規な発泡成形用金型を提供する。
【解決手段】 膨張黒鉛を含有する発泡樹脂成形体を成形する発泡成形用金型であって、第1型と、第1型に対して開閉可能であり、型開き時に膨張黒鉛を含有する発泡樹脂原料を受け入れ、型閉じ時に発泡樹脂原料を発泡成形する成形用キャビティを形成する第2型と、を備え、第1型および第2型の一方は、型閉じ時に第1型および第2型の他方とで発泡樹脂原料を挟んで潰す先端面を有する突部を含み、先端面は、樹脂でコーティングされている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張黒鉛を含有する発泡樹脂成形体を成形する発泡成形用金型であって、
第1型と、
前記第1型に対して開閉可能であり、型開き時に膨張黒鉛を含有する発泡樹脂原料を受け入れ、型閉じ時に前記発泡樹脂原料を発泡成形する成形用キャビティを形成する第2型と、を備え、
前記第1型および前記第2型の一方は、型閉じ時に前記第1型および前記第2型の他方とで前記発泡樹脂原料を挟んで潰す先端面を有する突部を含み、
前記先端面は、樹脂でコーティングされている、
発泡成形用金型。
【請求項2】
前記第1型および前記第2型の前記他方は、前記先端面とで前記発泡樹脂原料を挟んで潰す受け面を有する受け部を含み、
前記受け面は、樹脂でコーティングされている、
請求項1に記載の発泡成形用金型。
【請求項3】
前記樹脂は、フッ素樹脂である請求項1または2に記載の発泡成形用金型。
【請求項4】
前記突部および/または受け部は、主型よりも硬い材料で形成された入子である、
請求項1または2に記載の発泡成形用金型。
【請求項5】
前記発泡樹脂成形体は、インサート部品を内包し、
前記突部は、前記先端面と交差する第1側面を有し、
前記第1側面は、
前記インサート部品に接触して前記インサート部品の位置決めをする第1領域を有する、
請求項1に記載の発泡成形用金型。
【請求項6】
前記発泡樹脂成形体は、インサート部品を内包し、
前記突部は、前記インサート部品を保持する係止部を有する、
請求項1に記載の発泡成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡樹脂原料を発泡成形するための発泡成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発泡成形用金型は、第1型と、第1型に対して開閉可能な第2型とを備える。第2型は、型閉じ時に、第1型と共に発泡樹脂原料を発泡成形するための成形用キャビティを形成する。特許文献1~3は、発泡成形用金型からの発泡樹脂成形体の離型性を高めるためのフッ素樹脂層をキャビティ内に備えた発泡成形用金型を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-67045号公報
【特許文献2】特開平6-335927号公報
【特許文献3】実開昭57-183137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある特殊用途の発泡樹脂成形体は、高温時に膨張する膨張黒鉛を含有する。膨張黒鉛は、硫酸のような腐食性成分を含有しており、この腐食性成分により発泡成形用金型を比較的短期間で劣化させることがある。本開示は、膨張黒鉛を含有する発泡樹脂成形体を成形する、新規な発泡成形用金型を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る発泡成形用金型は、膨張黒鉛を含有する発泡樹脂成形体を成形する発泡成形用金型であって、第1型と、第1型に対して開閉可能であり、型開き時に膨張黒鉛を含有する発泡樹脂原料を受け入れ、型閉じ時に発泡樹脂原料を発泡成形する成形用キャビティを形成する第2型と、を備え、第1型および第2型の一方は、型閉じ時に第1型および第2型の他方とで発泡樹脂原料を挟んで潰す先端面を有する突部を含み、先端面は、樹脂でコーティングされている。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、膨張黒鉛を含有する発泡樹脂成形体を成形する、新規な発泡成形用金型を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の実施形態に係る発泡成形用金型により製造される発泡樹脂成形体を示す斜視図である。
図2図2は、型開き時の発泡成形用金型を示す断面図である。
図3図3は、型閉じ時の発泡成形用金型を示す断面図である。
図4図4は、発泡成形用金型を示す上面図である。
図5図5は、型閉じ時の発泡成形用金型を示す部分断面図(図4のB-B断面)である。
図6図6は、突部を示す斜視図である。
図7図7は、突部を示す部分断面図(図2のA-A断面)である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最初に、本開示の実施形態に係る発泡成形用金型により製造される発泡樹脂成形体を説明する。本実施形態では、発泡樹脂成形体は、水素タンクを保護する水素タンクプロテクタである。
【0009】
図1に示すように、発泡樹脂成形体1は、水素タンクの底部の凸面に適合する凹面1aを有する環状部品である。発泡樹脂成形体1は、円形の開口1bと、開口1bから径方向に延びた複数(本実施形態では4つ)の矩形の切欠1cとを有する。
【0010】
発泡樹脂成形体1は、環状のインサート部品2と、インサート部品2を内包する環状の発泡樹脂部3とを含む。インサート部品2は、例えば、樹脂、ゴム、金属、その他の適切な素材により形成されている。本実施形態におけるインサート部品2は、ポリウレタンの発泡成形品である。発泡樹脂部3は、膨張黒鉛を含有する発泡樹脂により形成されている。発泡樹脂は、例えば、ポリウレタンである。膨張黒鉛は、鱗片状黒鉛の層間に酸を含む黒鉛であり、高温時に膨張する(例えば、体積で約200倍)という特性を有する。例えば、火災により熱源が水素タンクの近くに発生して水素タンクの周囲温度が高温になれば、発泡樹脂部3が膨張して水素タンクを熱源から隔離する。
【0011】
次に、本実施形態に係る発泡成形用金型を説明する。図2および図3に示すように、発泡樹脂成形体1は、発泡成形用金型により製造される。発泡成形用金型は、第1型10と、第1型10に対して開閉可能な第2型20とを備える。第2型20は、型開き時に膨張黒鉛を含有する発泡樹脂原料3aを受け入れる。また、第2型20は、型閉じ時に発泡樹脂原料3aを発泡成形する成形用キャビティ20bを形成する。成形用キャビティ20bは、第1型10の第1キャビティ面11aと第2型20の第2キャビティ面21aとで形成される。発泡樹脂原料3aは、成形用キャビティ20b内で発泡成形されて発泡樹脂部3となる。
【0012】
第1型10は、第1主型11と、第1主型11に設けられた複数(本実施形態では4つ)の突部12とを含む。第1主型11は、例えば、アルミニウム、鉄、その他の適切な金属により形成されている。複数の突部12は、図4の破線で示すように、周方向に等間隔で配置されている。本実施形態では、4つの突部12が周方向に90度間隔で配置されている。複数の突部12は、第1主型11と一体でもよく、図5に示すように第1主型11とは別体の入子でもよい。本実施形態では、複数の突部12は、それぞれ、第1主型11よりも硬い材料で形成された入子である。例えば、第1主型11がアルミニウムで形成されており、複数の突部12が炭素鋼で形成されていてもよい。
【0013】
第2型20は、第2主型21と、第2主型21に設けられた複数(本実施形態では4つ)の受け部22とを含む。第2主型21は、例えば、アルミニウム、鉄、その他の適切な金属により形成されている。複数の受け部22は、複数の突部12と同様に、周方向に等間隔で配置されている。本実施形態では、4つの受け部22が周方向に90度間隔で配置されている。複数の受け部22は、第2主型21と一体でもよく、図5に示すように第2主型21とは別体の入子でもよい。本実施形態では、複数の受け部22は、それぞれ、第2主型21よりも硬い材料で形成された入子である。例えば、第2主型21がアルミニウムで形成されており、複数の受け部22が炭素鋼で形成されていてもよい。
【0014】
図2に示すように、第1型10は、インサート部品2を保持する。インサート部品2は、型開き時に作業員またはロボットにより複数の突部12に係止される。第2型20は、発泡樹脂原料3aを受け入れる収容凹部20aを有する。発泡樹脂原料3aは、型開き時に作業員またはロボットにより収容凹部20a内に分配される。
【0015】
複数の突部12は、それぞれ先端面12aを有する。複数の受け部22は、それぞれ受け面22aを有する。図3に示すように、先端面12aは、型閉め時に受け部22と接触する、あるいは、僅かな隙間を空けて対向する。このとき、先端面12aは、受け部22とで発泡樹脂原料3aを挟んで潰す。発泡樹脂原料3aは、受け部22上から成形用キャビティ20b内に押しのけられる。
【0016】
本実施形態では、先端面12aは、樹脂でコーティングされている。上述の通り、発泡樹脂原料3aは、膨張黒鉛を含有する。膨張黒鉛は、鱗片状黒鉛の層間に酸を含む。膨張黒鉛は、先端面12aおよび受け面22aにより圧力を受けたときに、膨張黒鉛内の酸を排出することがある。先端面12aにコーティングされた樹脂は、膨張黒鉛から排出された酸を先端面12aの金属から隔離して、先端面12aの腐食を防止または低減する。樹脂は、発泡成形用金型の表面にコーティングされる樹脂のことをいい、発泡樹脂部3または発泡樹脂成形体1とは区別される。樹脂コーティングの膜厚は、例えば、30μm~80μmである。
【0017】
樹脂は、酸を先端面12aの金属から隔離することが可能な、いかなる樹脂であってもよい。例えば、樹脂は、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスルホン、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂でもよい。
【0018】
樹脂は、発泡成形用金型の耐久性を高めるため、より好ましくは、耐酸性樹脂であってもよい。耐酸性樹脂は、例えば、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、フェノール樹脂であってもよい。フッ素樹脂は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカンポリマーであってもよい。
【0019】
同様の理由により、受け面22aは、樹脂でコーティングされていてもよい。受け面22aにコーティングされた樹脂は、膨張黒鉛から排出された酸を受け面22aの金属から隔離して、受け面22aの腐食を防止または低減する。
【0020】
図5に示すように、突部12は、先端面12aに加えて、先端面12aに交差する第1外周面12b(第1側面の一例)と、先端面12aに交差する第1内周面12cとを有する。受け部22は、型閉じ時に突部12の第1内周面12cに対面する第2外周面22cを有する。第1外周面12b、第1内周面12cおよび第2外周面22cの少なくとも1つが樹脂でコーティングされていてもよい。
【0021】
図6および図7に示すように、突部12は、第1外周面12bを有する。第1外周面12bは、全体的または部分的にインサート部品2に接触する。本実施形態では、第1外周面12bは、部分的にインサート部品2に接触する。具体的には、第1外周面12bは、第1領域12dと、第1領域12dに隣接する2つの第2領域12eとを有する。
【0022】
第1領域12dは、インサート部品2に接触してインサート部品2の位置決めをする。本実施形態では、複数の突部12がそれぞれインサート部品2の内周面に接触する第1領域12dを有する。これらの第1領域12dは、インサート部品2の内周面に接触することにより、インサート部品2の中心軸の位置決めをする。
【0023】
第2領域12eは、型閉め時に成形用キャビティ20bと連通して発泡樹脂原料3aを受け入れる隙間をインサート部品2との間に形成する。突部12は、発泡樹脂成形体1の切欠1cを形成する。発泡樹脂原料3aは、第2領域12eとインサート部品2との間の隙間で発泡成形されて発泡樹脂部3の一部となる。発泡樹脂部3は、切欠1cにおけるインサート部品2の表面にも延在してインサート部品2と接着されることになるので、インサート部品2との接着強度を高める。
【0024】
図6に示すように、突部12は、インサート部品2を保持する係止部12fを有してもよい。本実施形態では、係止部12fは、突部12の第1外周面12bに設けられて径方向外向きに突出した突起である。図5に示すように、係止部12fは、インサート部品2の底面を支持し、インサート部品2の突部12からの脱落を防止する。
【0025】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の例示は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0026】
上記実施形態では、第1型10が型閉じ時に第2型20との間で発泡樹脂原料3aを挟んで潰す突部12を有する。本開示は、これに限らず、第2型20が型閉じ時に第1型10との間で発泡樹脂原料3aを挟んで潰す突部12を有してもよい。あるいは、第1型10および第2型20のいずれもが突部12を有してもよい。いずれにしても、突部12の先端面12aが樹脂でコーティングされていることにより、膨張黒鉛から排出された酸を先端面12aの金属から隔離して、先端面12aの腐食を防止または低減できる。
【0027】
上記実施形態では、突部12の先端面12aが樹脂でコーティングされ、かつ、受け部22の受け面22aが樹脂でコーティングされている。本開示は、これに限らず、突部12の先端面12aおよび受け部22の受け面22aの一方のみが樹脂でコーティングされていてもよい。例えば、突部12の先端面12aが樹脂でコーティングされておらず、かつ、受け部22の受け面22aが樹脂でコーティングされていてもよい。
【0028】
上記実施形態では、第1型10が4つの突部12を有する。本開示は、これに限らず、第1型10が1つ、2つ、3つ、あるいは5以上の適切な数量の突部12を有してもよい。突部12の適切な数量は、一般に、発泡成形用金型により成形される発泡樹脂成形体1のサイズおよび形状に依存する。
【0029】
上記実施形態では、図6に示すように、複数の突部12がそれぞれ個別の入子である。ただし、本開示は、これに限らず、複数の突部12が環状部品で連結された1つの入子であってもよい。この環状部品は、樹脂でコーティングされていてもよい。同様に、上記実施形態では、複数の受け部22がそれぞれ個別の入子である。ただし、本開示は、これに限らず、複数の受け部22が環状部品で連結された1つの入子であってもよい。この環状部品は、樹脂でコーティングされていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 発泡樹脂成形体
2 インサート部品
3 発泡樹脂部
10 第1型
11 第1主型
12 突部
12a 先端面
12b 第1外周面(第1側面)
12d 第1領域
12f 係止部
20 第2型
21 第2主型
22 受け部
22a 受け面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7