(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179427
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ワークの加工方法および工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 15/00 20060101AFI20241219BHJP
B23B 3/00 20060101ALI20241219BHJP
B23B 3/30 20060101ALI20241219BHJP
B23B 49/04 20060101ALI20241219BHJP
B23B 5/00 20060101ALI20241219BHJP
B23P 23/04 20060101ALI20241219BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241219BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B23B15/00 N
B23B3/00
B23B3/30
B23B49/04
B23B5/00 A
B23B15/00 Z
B23P23/04
B24B41/06 Z
B24B41/06 A
B23B23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098276
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 司
【テーマコード(参考)】
3C034
3C036
3C045
【Fターム(参考)】
3C034AA20
3C034BB74
3C034BB81
3C036CC01
3C045DA01
3C045DA07
3C045DA30
3C045FA06
3C045FA10
(57)【要約】
【課題】 コスト高や設置スペース大となってしまうという問題を解消して、ワークの全加工を行う。
【解決手段】 ワーク把持装置16でワークWをその軸線がワーク主軸3の軸線方向(第1軸線方向)に対して直交する第2軸線方向を向くように把持し、工具主軸2とワーク把持装置16とを相対的に移動させることで、ワークWのセンタ穴加工等のワーク端部加工を行う。続いて、工具主軸2にワークハンド13を取り付け、ワークWの軸線が第2軸線方向を向いた状態で工具主軸2およびワーク把持装置16を相対的に移動させることで、ワーク把持装置16からワークハンド13へワークWの受け渡しを行う。続いて、ワークWの軸線が第1軸線方向を向くように工具主軸2を旋回させて、工具主軸2からワーク主軸3に受け渡しができる位置にワークWを搬送する。続いて、ワーク主軸3でワークWを把持して切削加工等の加工を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具交換が可能で旋回機能を持つ工具主軸と、ワークを回転可能に支持する第1ワーク主軸と、加工空間に前記ワークを把持するワーク把持装置とを備えた工作機械を使用したワークの加工方法であって、
工程Aとして、前記ワーク把持装置で前記ワークをその軸線が前記第1ワーク主軸の軸線方向である第1軸線方向に対して直交または傾斜する第2軸線方向を向くように把持し、加工工具を前記工具主軸に取り付けた状態で前記工具主軸と前記ワーク把持装置とを相対的に移動させることで、前記ワークのセンタ穴加工および/または端面を含むその周辺のワーク端部加工を行い、
続いて、工程Bとして、前記工具主軸に前記ワークの把持およびその解除を行うワークハンドを取り付け、前記ワークの軸線が前記第2軸線方向を向いた状態で前記工具主軸と前記ワーク把持装置とを相対的に移動させることで、前記ワーク把持装置から前記ワークハンドへ前記ワークの受け渡しを行い、
続いて、工程Cとして、前記ワークの軸線が前記第1軸線方向を向くように前記工具主軸を旋回させて、前記工具主軸から前記第1ワーク主軸に受け渡しができる位置に前記ワークを搬送し、
続いて、工程Dとして、前記第1ワーク主軸で前記ワークを把持して、切削加工、熱的加工、研削加工および研磨加工の内のいずれかの加工を行うことを特徴とするワークの加工方法。
【請求項2】
前記工作機械は、前記第1ワーク主軸と対向する心押台または第2ワーク主軸をさらに備えているとともに、前記ワーク把持装置が、旋回可能なタレットに取り付けられ、
前記工程Aにおいて、前記ワークの一端部に対して前記ワーク端部加工を行った後、前記タレットを旋回させることで前記ワーク把持装置に把持された前記ワークを180°反転させて、前記ワークの他端部に対しても前記ワーク端部加工を行い、
前記工程Bの後、前記第1ワーク主軸と前記心押台または前記第2ワーク主軸とにより、前記ワークの両端を支持することを特徴とする請求項1に記載のワークの加工方法。
【請求項3】
前記工作機械の機内に前記ワークを仮置きするための仮置台が設けられており、前記工程Bにおいて、前記工具主軸に装着した前記ワークハンドで把持した前記ワークを前記仮置台に設置する工程を実行することを特徴とする請求項2に記載のワークの加工方法。
【請求項4】
前記仮置台は、前記工作機械の加工室内の移動体に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のワークの加工方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のワークの加工方法を実行する工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械によるワークの加工方法およびこれを実行するための工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトワークの加工においては、両端のセンタ穴、端面加工はセンタリングマシンおよび横形マシニングセンター等の工作機械で行い、その後、別の工作機械にてシャフト外径旋削加工とミーリング加工とを2工程に分割して加工を行うことが一般的である。
【0003】
上記の一般的な加工方法によると、シャフトワークの加工において両端のセンタ穴、両端の加工、外径の旋削加工、ミーリング加工がそれぞれ工程分割となり各工程にそれぞれ別機の工作機械が必要となり、コスト高や工作機械の設置スペース大となってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、対向する2つの主軸台を有するNC旋盤を使用して、ワークのセンタリング加工を含む全加工を行うことが提案されている。
【0005】
上記特許文献1のものでは、対向する2つの主軸台を使用して、各主軸台にセンタ着脱装置を設けている構成のため、コスト高や工作機械の設置スペース大となってしまうという問題が十分に解消されていないという問題があり、また、ワーク主軸にセンタ穴加工をするための工具を出し入れする機構を設けるため構造が複雑になってしまうという問題や、工具が主軸内にあるため工具状態の確認がしにくく、工具を外して確認しようとしても取り外しに手間がかかってしまう等の問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、従来の技術の有する上記課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ワークのセンタリング加工等を含む全加工を1台の工作機械を使用して行うに際し、工作機械としては、従来から使用されている複合加工機を使用することで、コスト高や工作機械の設置スペース大となってしまうという問題を解消するとともに、加工工程における新たな問題を生じさせないワークの加工方法および工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のワークの加工方法は、工具交換が可能で旋回機能を持つ工具主軸と、ワークを回転可能に支持する第1ワーク主軸と、加工空間に前記ワークを把持するワーク把持装置とを備えた工作機械を使用したワークの加工方法であって、工程Aとして、前記ワーク把持装置で前記ワークをその軸線が前記第1ワーク主軸の軸線方向である第1軸線方向に対して直交または傾斜する第2軸線方向を向くように把持し、加工工具を前記工具主軸に取り付けた状態で前記工具主軸と前記ワーク把持装置とを相対的に移動させることで、前記ワークのセンタ穴加工および/または端面を含むその周辺のワーク端部加工を行い、続いて、工程Bとして、前記工具主軸に前記ワークの把持およびその解除を行うワークハンドを取り付け、前記ワークの軸線が前記第2軸線方向を向いた状態で前記工具主軸と前記ワーク把持装置とを相対的に移動させることで、前記ワーク把持装置から前記ワークハンドへ前記ワークの受け渡しを行い、続いて、工程Cとして、前記ワークの軸線が前記第1軸線方向を向くように前記工具主軸を旋回させて、前記工具主軸から前記第1ワーク主軸に受け渡しができる位置に前記ワークを搬送し、続いて、工程Dとして、前記第1ワーク主軸で前記ワークを把持して、切削加工、熱的加工、研削加工および研磨加工の内のいずれかの加工を行うことを特徴とするものである。
【0009】
工具主軸およびワーク把持装置は、それぞれが適宜な移動(上下・前後・左右の3軸方向への直線移動および各軸回りの旋回移動の全部またはそれらのうちのいくつか)ができるものとされ、工具主軸とワーク把持装置とを相対的に移動させるに際しては、一方だけを移動させてもよく、両方を移動させてもよい。
【0010】
この発明のワークの加工方法において、工作機械としては、工具交換が可能で旋回機能を持つ工具主軸と、ワークを回転可能に支持するワーク主軸とを備えたもの(複合加工機と称されている工作機械)を使用することができる。すなわち、基本となる構成としての工具主軸およびワーク主軸は、従来と同じものを使用して、ワーク把持装置を工作機械の既存の装置または新規の構造体として機内に設けることで、複数の工作機械を使用して行っていたワークの全加工を1台の工作機械を使用して行うことができる。
【0011】
工作機械においては、例えば、第1ワーク主軸は固定状態で設けられており、この第1ワーク主軸の軸線と一致する方向を第1軸線方向、第1軸線方向に対して直交または傾斜している方向を第2軸線方向として、工具主軸は、その軸線が第2軸線方向を向く状態を保っての直線移動(第1ワーク主軸に対して接近・離隔する直線移動)と、その軸線が第1ワーク主軸の軸線と平行となる状態(ワークの軸線が第1軸線方向に一致する状態)への旋回移動とが可能とされる。また、ワーク把持装置は、工作機械内に固定して設けてもよく、移動可能に設けてもよい。
【0012】
そして、例えば、工作機械はATC(自動工具交換装置)を備えているものとされ、工具主軸の先端部に、ワークを加工する加工工具やワークを把持するワークハンド等を任意に交換可能で、ワーク把持装置は、刃物台に旋回可能に取り付けられたタレットに取り付けられ、ワークの中間部を把持する機能を有し、ワークハンドは、ワーク把持装置がワークの軸線が第1軸線方向を向くようにワークの中間部を把持している状態において、ワーク把持装置と干渉することなくワークの中間部を把持可能とされる。なお、工具主軸は、タレットを旋回させることで工具交換を行うものであってもよい。
【0013】
この発明のワークの加工方法において、前記工作機械は、前記第1ワーク主軸と対向する心押台または第2ワーク主軸をさらに備えているとともに、前記ワーク把持装置が、旋回可能なタレットに取り付けられ、前記工程Aにおいて、前記ワークの一端部に対して前記ワーク端部加工を行った後、前記タレットを旋回させることで前記ワーク把持装置に把持された前記ワークを180°反転させて、前記ワークの他端部に対しても前記ワーク端部加工を行い、前記工程Bの後、前記第1ワーク主軸と前記心押台または前記第2ワーク主軸とにより、前記ワークの両端を支持することが好ましい。
【0014】
この発明のワークの加工方法において、ワーク端部加工がワークの一端部のみでよい場合には、180°反転する必要が無いのでワーク把持装置をタレット以外の工作機械内の他の構造体に設けるようにしてもよい。また、心押台または第2ワーク主軸を備えていない工作機械で前記工程A~Dを実施してもよいが、工作機械が心押台または第2ワーク主軸を備えている方が、ワークを両端から支持することができるので、切削加工、熱的加工、研削加工および研磨加工の内のいずれかの加工をワークに対して行うに際してより好ましい構成となっている。
【0015】
この発明のワークの加工方法において、前記工作機械の機内に前記ワークを仮置きするための仮置台が設けられており、前記工程Bにおいて、前記工具主軸に装着した前記ワークハンドで把持した前記ワークを前記仮置台に設置する工程を実行することが好ましい。
【0016】
仮置台は、ワーク把持装置からワークハンドへワークの受け渡しを行うに際し、必須のものではないが、仮置台が設けられていることで、ワーク把持装置からワークハンドへワークの受け渡しを容易に行うことができる。仮置台は、例えば、刃物台(移動体)に設けられているタレットに取り付けられてもよく、加工室内の構造体に固定して設けられてもよく、また、加工室内の移動体に設けられてもよい。
【0017】
この発明のワークの加工方法において、前記仮置台は、前記工作機械の加工室内の移動体に設けられていることが好ましい。
移動体としては、例えば、刃物台と一体で移動するタレットとすることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
この発明の工作機械は、上記のワークの加工方法(ワークの全加工)を実行するものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明のワークの加工方法によると、従来からある工作機械を1台だけ使用して、従来は複数台の工作機械を使用して行っていたワークの全加工を行うことができる。これにより、工作機械設備費のコストダウンおよび工作機械設置の省スペース化が実現できる。さらに、従来から工作機械に備わったタレット等にワーク把持装置を設け、タレットの旋回機能をワークの反転に利用することで安価にワークの全加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明のワークの加工方法および工作機械の第1実施形態を示す図で、工程A(ワークの端部加工)を行っている状態を示している。
【
図2】同工程B(下刃物台と工具主軸間のワーク授受)の前半部分を行っている状態を示している。
【
図3】同工程B(下刃物台と工具主軸間のワーク授受)の後半部分を行っている状態を示している。
【
図4】同工程C(ワーク主軸へのワークの搬送)を行っている状態を示している。
【
図5】同工程D(ワークの例えば外径旋削加工)を行っている状態を示している。
【
図6】同加工が完了したワークアンローディング状態を示している。
【
図7】この発明のワークの加工方法および工作機械の第2実施形態を示す図で、第1実施形態の
図1に対応する状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、
図1の左右・上下を左右・上下というものとする。
【0022】
工作機械(1)は、複合加工機と称されているもので、
図1に示すように、先端部に数種類の工具(11)(12)(13)(14)(15)を交換可能に把持する工具主軸(2)と、後半の工程においてワーク(W)を回転可能に支持するワーク主軸(第1ワーク主軸)(3)と、ワーク主軸(3)に対向するように設けられた心押台(5)と、タレット(8)を備えた下刃物台(7)と、NC制御装置(図示略)とを備えている。
【0023】
工具主軸(2)に取り付けられる工具(11)(12)(13)(14)(15)は、図示を省略した自動工具交換装置(ATC)によって必要に応じて交換することができるようになされており、
図1では、工具主軸(2)には、センタリング加工工具(11)が取り付けられている。
【0024】
ワーク主軸(3)は、ワーク(W)の左端部を保持するチャック(6)を有している。ワーク主軸(3)の軸線は、左右方向に延びている。以下では、ワーク主軸(3)の軸線方向を第1軸線方向というものとする。
【0025】
工具主軸(2)には、
図1では、その軸線が第1軸線方向と直交する上下方向を向いた状態でセンタリング加工工具(11)が取り付けられており、この軸線の方向(以下では、第2軸線方向という)に沿った直線移動および第2軸線方向に直交する方向への直線移動が可能とされているとともに、
図1の紙面に対して垂直方向に延びる軸を中心とする旋回が可能とされている。
【0026】
心押台(5)は、第1軸線方向に一致する軸線を有しており、左右方向に移動可能(ワーク主軸(3)に対して接近・離隔可能)とされている。
【0027】
下刃物台(7)は、第1軸線方向に平行な軸線に沿う左右方向、第1軸線方向に直交する上下方向および同期制御により斜め方向に移動可能とされている。タレット(8)は、下刃物台(7)の軸線回りに旋回可能とされている。
【0028】
タレット(8)には、複数の装置や工具(16)(17)(18)が配されており、タレット(8)の旋回位置を割り出すことで、必要に応じて使用する装置や工具(16)(17)(18)を交換することができるようになされている。ここで、複数の装置や工具(16)(17)(18)の1つとして、タレット(8)には、加工空間にワーク(W)を把持するワーク把持装置(16)が備えられており、
図1においては、ワーク(W)をその軸線が上下方向(第1軸線方向と直交する方向)を向くように把持するワーク把持装置(16)が示されている。
【0029】
この実施形態の工作機械(1)は、これ1台でワーク(W)のセンタリング加工を含む全加工を行うことができるように構成されている。
【0030】
この実施形態で工具主軸(2)に取り付けられる工具としては、
図1において工具主軸(2)に取り付けられているセンタリング加工工具(11)の他に、センタリング加工の後に使用される深穴加工工具(12)(
図1に示す)、
図2から
図4までにおいて使用されている空気圧式のワークハンド(13)、
図5から
図6までにおいて使用されている旋削工具(14)、旋削工具(14)による旋削加工の後に使用されるエンドミル工具(15)(
図5に示す)等がある。
【0031】
この実施形態でタレット(8)に取り付けられている装置や工具(16)(17)(18)としては、
図1から
図3までにおいて使用されているワーク把持装置(16)、
図4および
図6において使用されている仮置台(17)、
図5において使用されている旋削工具(18)等がある。
【0032】
上記の工作機械(1)を使用した本発明による加工方法は、以下のようにして行われる。
【0033】
まず、
図1に示すように、第1の工程(工程A)として、下刃物台(7)に取り付けられたワーク把持装置(16)によってワーク(W)をその軸線が第1軸線方向に対して直交するように把持するとともに(直交に対して傾斜するように把持してもよい)、工具主軸(2)に加工工具(11)を取り付けた状態として、工具主軸(2)とワーク把持装置(16)とを相対的に移動させることで、ワーク(W)に所定の加工を行う。ワーク把持装置(16)は、クランプ力が強い油圧式とされており、上下1対のアーム(16a)(16b)でワーク(W)の中間部を把持するものとされている。
【0034】
この工程Aでの加工としては、センタリング加工工具(11)を使用したワーク(W)のセンタ穴加工あるいは端面を含むその周辺の加工(端部の外径加工等)、深穴加工工具(12)を使用したワーク(W)のセンタ穴加工等が行われる。
【0035】
工程Aにおいては、タレットインデックスを180°とすることで、ワーク把持装置(16)によってワーク(W)を上下逆にして把持する状態とすることが可能であり、ワーク(W)の両端部に対して、センタリング加工や端部の外径加工を行うことができる。
【0036】
続いて、
図2および
図3に示すように、第2の工程(工程B)として、工具主軸(2)を上方に移動させるとともに、ワーク把持装置(16)によってワーク(W)を把持した状態を保ったまま、下刃物台(7)を右方に移動させる。そして、工具主軸(2)にワーク(W)の把持およびその解除を行うワークハンド(13)を取り付ける。ワークハンド(13)は、空気圧式とされて、その先端部(13a)によってワーク把持装置(16)の上下1対のアーム(16a)(16b)の中間位置でワーク(W)の中央部を把持するようになされている。ワークハンド(13)およびワーク把持装置(16)の両方でワーク(W)を把持している状態が
図2に示されている。
【0037】
図2の状態から、工具主軸(2)を左方および上方に移動させることで、ワーク把持装置(16)に把持されていたワーク(W)をワークハンド(13)に受け渡すことができる(この状態が
図3に示されている。)。
図3において、工具主軸(2)は、旋回したときにワーク(W)および工作機械(1)内の構造物と干渉しない位置に移動させられている。
【0038】
続いて、
図4に示すように、第3の工程(工程C)として、まず、下刃物台(7)を左方に移動させるとともに、タレット(8)を旋回させて、仮置台(17)にワーク(W)を搭載できるように割り出しておき、次いで、ワーク(W)の軸線が第1軸線方向と一致するように工具主軸(2)を旋回させてワーク(W)の姿勢を変更し、さらに、工具主軸(2)を左方、下方に移動させることで、ワーク(W)を仮置台(17)に設置する。これにより、ワーク主軸(3)に受け渡しができる位置にワーク(W)が搬送される。
【0039】
続いて、第4の工程(工程D)として、
図5に示すように、心押台(5)を左方に移動させて、ワーク主軸(3)のチャック(6)と心押台(5)とによってワーク(W)を左右の端面側から把持する。これにより、ワーク(W)に対して、切削加工、熱的加工、研削加工および研磨加工の内のいずれかの加工(1または2以上の加工)を行うことができる。
【0040】
図5においては、工具主軸(2)に旋削工具(14)を取り付けるとともに、タレット(8)も旋削工具(18)を使用する位置に旋回させられて、上下両側からワーク(W)の外径切削加工を行うことができるようになされている。この後、工具主軸(2)の旋削工具(14)を例えばエンドミル工具(15)に交換することによってミーリング加工(旋削とは異なる他の切削加工、例えば外周異形状加工等)を行うことができ、必要に応じて例えばドリルや図示を省略した各種工具を使用することでさらなる種々の加工を行うことができる。
【0041】
加工が完了すると、下刃物台(7)のタレット(8)が旋回させられて、旋削工具(18)が仮置台(17)に交換され、加工が完了したワーク(W)を取り出す(ワークアンローディングを行う)ことができる。
【0042】
上記のワークの加工方法によると、ワーク(W)の全加工を1台の工作機械(1)によって行うことができるので、工作機械設備費のコストダウンおよび工作機械設置の省スペース化が実現できる。また、ワーク(W)の両端部を加工するに際しては、工具主軸(2)の姿勢を第1軸線方向に直角にした状態で行っている(
図1参照)ので、心押台(5)との干渉が避けられ、工作機械(1)の心間距離を短縮でき、工作機械設置の省スペース化を図ることができる。さらに、従来から工作機械(1)に備わったタレット(8)等にワーク把持装置(16)を設け、タレット(8)の旋回機能をワーク(W)の反転に利用することで安価にワーク(W)の全加工を実現できる。
【0043】
なお、上記において、ワーク(W)としては、シャフトワークを図示して、これを前提として説明したが、シャフトワークに限らず、フランジワークや断面形状が円形とは異なる異形ワーク等に対し、ワーク形状に応じたワーク把持装置やワークハンドを用いることで、これらのワークにも本技術を適用することができる。
【0044】
また、ワーク主軸(3)と対向する構造体を心押台(5)として説明したが、
図7に示すように、心押台(5)に代えて周知の第2ワーク主軸(対向主軸)(4)とし、その第2ワーク主軸(4)にチャック(9)やセンタ等を取り付け、対向したワーク主軸(3)(4)間でワーク(W)を支持するようにしてもよい。
【0045】
さらに、ワーク把持装置(16)の設置場所は、刃物台(7)に限らず主軸台、心押台、振れ止め等、工作機械(1)のその他の既存装置に設けるようにしてもよいし、工作機械(1)の既存装置に設けるだけでなく、ワーク(W)を把持するための専用装置として固定あるいは送り軸等で移動可能にした状態で、工作機械(1)の加工空間に設けるようにしてもよい。また、
図7においては、第2ワーク主軸(4)にワーク把持装置(16)を取り付け、第2ワーク主軸(4)の割出機能を利用し、ワーク(W)を反転し、ワーク端面のセンタ穴加工等を行うようにしてもよい。なお、ワーク両端面のセンタ穴加工の必要がない場合は、ワーク把持装置(16)にワーク反転機能を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0046】
(1):工作機械
(2):工具主軸
(3):第1ワーク主軸
(4):第2ワーク主軸
(5):心押台
(7):下刃物台
(8):タレット
(11):センタリング加工工具
(12):深穴加工工具
(13):ワークハンド
(14):旋削工具
(15):エンドミル工具
(16):ワーク把持装置
(17):仮置台
(18):旋削工具
(W):ワーク