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  • 特開-キャッチャーミット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179434
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】キャッチャーミット
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A63B69/00 505E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098285
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】523228026
【氏名又は名称】株式会社ハタケヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 穂高
(72)【発明者】
【氏名】大榮 里志
(57)【要約】
【課題】手掌面側革材の外周縁部を所定の曲率で容易かつ正確に湾曲させることが可能あり、かつ、この湾曲形状の崩れを防止して適正形状に保形することが可能なキャッチャーミットを提供する。
【解決手段】キャッチャーミット1は、捕球面側に設けられた捕球面側革材2と、前記捕球面側革材2の背面側に設けられた手掌面側革材3と、前記手掌面側革材3の背面側に設けられた手甲面側革材4とを備え、前記手掌面側革材3の指先側に位置する外周縁部には、前記手掌面側革材3の外周縁側から指元側に延びるように形成されたスリット6の両側辺部61が、前記捕球面側に折り曲げられるとともに前記両側辺部61の背面が互いに突き合わされた状態で一体に縫い合わされることにより、前記外周縁部を、前記指元側から前記外周縁側に至るに従って前記捕球面側に位置させるように湾曲させた形状に保形する保形部63が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕球面側に設けられた捕球面側革材と、前記捕球面側革材の背面側に設けられた手掌面側革材と、前記手掌面側革材の背面側に設けられた手甲面側革材とを備え、
前記手掌面側革材と前記手甲面側革材との間に使用者の手が挿入される空間部が形成されたキャッチャーミットであって、
前記手掌面側革材の指先側に位置する外周縁部には、前記手掌面側革材の外周縁側から指元側に延びるように形成されたスリットの両側辺部が、前記捕球面側に折り曲げられるとともに前記両側辺部の背面が互いに突き合わされた状態で一体に縫い合わされることにより、前記外周縁部を、前記指元側から前記外周縁側に至るに従って前記捕球面側に位置させるように湾曲させた形状に保形する保形部が設けられている、キャッチャーミット。
【請求項2】
前記背面の間にハミダシ材が配置されるとともに、前記スリットの両側辺部と前記ハミダシ材とが一体に縫い合わされている、請求項1に記載のキャッチャーミット。
【請求項3】
前記ハミダシ材は、切ハミ形成用の帯状革材である、請求項2に記載のキャッチャーミット。
【請求項4】
前記手掌面側革材の外周縁部には、複数の前記保形部が一定間隔で設けられている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のキャッチャーミット。
【請求項5】
前記手掌面側革材の外周縁部には、前記捕球面側革材と手掌面側革材とを縫合する縫合紐が挿通される外周側挿通孔と指元側挿通孔とが一定間隔で形成され、
前記スリットは、前記手掌面側革材の外周縁側端部と前記指元側挿通孔との間に形成されている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載のキャッチャーミット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野球又はソフトボール等の球技において使用されるキャッチャーミットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外側部材(手甲面側革材)及び中央部材(手掌面側革材)により手挿入空間が区画形成された手甲側外皮形成部材と、手掌側外皮形成部材(捕球面側革材)と、を有し、前記中央部材(手掌面側革材)の外周側部と手掌側外皮形成部材(捕球面側革材)の外周側部とを革紐で連結してなるキャッチャーミットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-291240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャッチャーミットにおいては、前記中央部材からなる手掌面側革材の指先側に位置する外周縁部を、その指元側から外周縁側に至るに従って捕球面側に位置させるように湾曲させることにより捕球し易い形状となる。このため、従来技術においては手掌面側革材を形成する際に、その外周縁部を手作業で湾曲させるように型付けされていた。しかし、この方法ではキャッチャーミットによって湾曲形状にばらつきが生じ易いとともに、キャッチャーミットの使用時に強い捕球圧が作用することにより、前記湾曲形状が型崩れし易いという問題があった。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、手掌面側革材の外周縁部を所定の曲率で容易かつ正確に湾曲させることが可能あり、かつ、この湾曲形状が型崩れするのを防止して手掌面側革材の外周縁部を適正形状に保形することが可能なキャッチャーミットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
本発明に係るキャッチャーミットは、捕球面側に設けられた捕球面側革材と、前記捕球面側革材の背面側に設けられた手掌面側革材と、前記手掌面側革材の背面側に設けられた手甲面側革材とを備え、前記手掌面側革材と前記手甲面側革材との間に使用者の手が挿入される空間部が形成され、前記手掌面側革材の指先側に位置する外周縁部には、前記手掌面側革材の外周縁側から指元側に延びるように形成されたスリットの両側辺部が、前記捕球面側に折り曲げられるとともに前記両側辺部の背面が互いに突き合わされた状態で一体に縫い合わされることにより、前記外周縁部を、前記指元側から前記外周縁側に至るに従って前記捕球面側に位置させるように湾曲させた形状に保形する保形部が設けられたものである。
【0008】
また、本発明に係るキャッチャーミットにおいて、前記背面の間にハミダシ材が配置されるとともに、前記スリットの両側辺部と前記ハミダシ材とが一体に縫い合わされていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るキャッチャーミットにおいて、前記ハミダシ材は、切ハミ形成用の帯状革材であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るキャッチャーミットにおいて、前記手掌面側革材の外周縁部には、複数の前記保形部が一定間隔で設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るキャッチャーミットにおいて、前記手掌面側革材の外周縁部には、前記捕球面側革材と手掌面側革材とを縫合する縫合紐が挿通される外周側挿通孔と指元側挿通孔とが一定間隔で形成され、前記スリットは、前記手掌面側革材の外周縁側端部と前記指元側挿通孔との間に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るキャッチャーミットによれば、手掌面側革材の外周縁部に上述の保形部を設けることにより、手掌面側革材の外周縁部を所定の曲率で容易かつ正確に湾曲させることが可能あり、かつ、この湾曲形状が型崩れするのを防止して手掌面側革材の外周縁部を適正形状に保形することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るキャッチャーミットの背面図。
図2】キャッチャーミットの使用状態を示す側面図。
図3】手掌面側革材及び手甲面側革材の構成を示す背面図。
図4】(a)及び(b)は手掌面側革材の成形工程を示す背面図。
図5】保形部の成形過程を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るキャッチャーミット(以下、単に「ミット」と記載する)1について、図1図5を用いて説明する。ミット1は野球又はソフトボール等の球技において、使用者であるキャッチャーが捕球のために使用する革製の道具である。本実施形態において、ミット1は使用者の左手にはめて使用する構成としているが、ミット1を右手用として構成することも可能である。
【0015】
ミット1は、図1に示す如く、使用者の親指側に位置する親指側部分11と、小指側に位置する小指側部分12と、を有する略ミトン型に形成され、親指側部分11と小指側部分12との間には、捕球用ウェブ13が設けられている。
【0016】
ミット1は、図2に示す如く、捕球面側に設けられた捕球面側革材2と、その背面側に設けられた手掌面側革材3と、その背面側に設けられた手甲面側革材4と、を備えている。これらの捕球面側革材2、手掌面側革材3、及び手甲面側革材4は、主として天然皮革材革を、五本の指が納まるように型抜きして形成されるとともに、所要部を膨らませた形状に革製の縫合紐30により縫製されている。
【0017】
捕球面側革材2と手掌面側革材3との間には、図略の親指芯、土台芯、及び小指芯等からなる芯材が配置されている。そして、使用者がボールを捕球し易いように、捕球面側革材2の中央部に設けられた捕球部を背面側に窪ませた形状としている。
【0018】
手掌面側革材3は、図3および図4(a),(b)に示すように、親指側手掌部31と、小指側手掌部32とを有する略ハート型に形成されている。手掌面側革材3の指先側に位置する外周縁部には、図4(a)に示すように、上述の縫合紐30が挿通される外周側挿通孔33と指元側挿通孔34とが一定間隔で形成されている。
【0019】
また、小指側手掌部32の外周縁部には、図4(b)に示すように、手掌面側革材3の外周縁側から指元側に延びる複数のスリット6が形成されている。当実施形態では、四つのスリット6が、一定間隔を置いて手掌面側革材3の小指側手掌部32に形成されている。
【0020】
各スリット6は、約2cm程度の長さを有し、手掌面側革材3の外周縁側端部と指元側挿通孔34との間に形成されている。なお、図例では、手掌面側革材3の外縁側に位置する部位のスリット幅が、指元側挿通孔34に連通する部位のスリット幅よりも大きく形成している。即ち、外側に向かって拡幅するテーパ形状のスリット6を手掌面側革材3の外周縁部に設けた構成としているが、スリット6の形状はこの構成には限られない。
【0021】
図5に示すように、スリット6の両側辺部61がそれぞれ捕球面側に向けて折り曲げられた状態で、両側辺部61の背面間に、所定の厚みを有する帯状革材からなる切ハミ形成用のハミダシ材60が配設されるようになっている。そして、スリット6の両側辺部61が、ハミダシ材60を介して突き合わされた状態で、縫合糸62により一体に縫い合わされている。これにより、手掌面側革材3の外周縁部を、その指元側から外周縁側に至るに従ってミット1の捕球面側に位置させるように湾曲させた状態で保形する保形部63が構成されている。
【0022】
なお、スリット6の両側辺部61間に配設されたハミダシ材60の指元側端部60aを、適宜に切除することにより、この指元側端部60aが手掌面側革材3の捕球面側に大きく突出した状態となるのを防止することが好ましい。
【0023】
手甲面側革材4は、図3に示す如く、例えば親指が挿入される親指挿入部41と、人差し指が挿入される人差し指挿入部42と、中指が挿入される中指挿入部43と、薬指及び小指が挿入される小指等挿入部44と、と有している。そして、手甲面側革材4が手掌面側革材3の背面上に重ねられた状態で、縫合糸45を介して一体に縫合されることにより、使用者の手が挿入される空間部が手掌面側革材3と手甲面側革材4との間に形成されている。
【0024】
上述のように構成された手掌面側革材3の捕球面側に、図略の親指芯、土台芯、及び小指芯等からなる芯材が配設された状態で、捕球面側革材2と手掌面側革材3とが縫合紐30で縫合されることにより、手掌面側革材3の外周縁部を湾曲形状に保形する保形部63を備えたミット1が形成される。
【0025】
このように本実施形態に係るミット1では、手掌面側革材3の外周縁部に形成されたスリット6の両側辺部61を捕球面側に折り曲げるとともに、スリット6の両側辺部61の背面を互いに突き合せた状態で一体に縫い合せてなる保形部63が、手掌面側革材3の外周縁部に設けられている。このため、手掌面側革材3の外周縁部を手作業で湾曲させる等の煩雑な型付け作業を要することなく、手掌面側革材の外周縁部を所定の曲率で容易かつ正確に湾曲させることができる。すなわち、前記スリット6の幅寸法、及び両側辺部61の折り曲げ量を適宜に変化させることにより、手掌面側革材3の外周縁部の湾曲度合いを容易かつ任意に変化させることができる。
【0026】
また、上述の保形部63によって手掌面側革材3の外周部が補強されるために、ミット1の使用時に強い捕球圧が作用した場合においても、手掌面側革材3の外周部が逆反り状態となる等の型崩れが生じるのを防止して、これを適正形状に保形することができる。
【0027】
なお、上述のハミダシ材60を省略し、スリット6の両側辺部61の背面を直接、突き合わせた状態で縫合糸62により一体に縫い合わせることも可能である。しかし、上述の実施形態に示すように、スリット6の両側辺部61の背面の間にハミダシ材60を配置した状態で、スリット6の両側辺部61とハミダシ材60とを一体に縫い合わせるように構成した場合には、上記保形部63の剛性を効果的に向上させることができる。したがって、手掌面側革材3の外周縁部が逆反り状態となる等の型崩れを、より確実に防止できるという利点がある。しかも、前記ハミダシ材60を手掌面側革材3とは異なる色に着色して、保形部63を目立たせることも可能であり、これによりミット1のデザイン性を向上させることができる。
【0028】
スリット6の両側辺部61の背面間に、所定の厚みを有する切ハミ形成用の帯状革材からなるハミダシ材60を配設してなる上述の実施形態に代え、前記ハミダシ材60に比べて厚みが小さい玉ハミ形成用の薄革材をU字状に折り曲げた状態で、スリット6の両側辺部61の背面間に配設し、これらを一体に縫い合わせることにより玉ハミ部を構成してもよい。
【0029】
この構成によれば、U字状に折り曲げられた薄革材の湾曲面をミット1の背面側に露出させることにより、ミット1のデザイン性を効果的に向上させることができる。しかも、玉ハミ形成用の薄革材は種々の色に着色可能であるため、使用者の好みに応じた彩色を玉ハミ部に施すことができる。
【0030】
一方、上述の実施形態に示すように、スリット6の両側辺部61の背面間に所定の厚みを有する切ハミ形成用の帯状革材からなるハミダシ材60を配設して、これらを一体に縫い合せるように構成した場合には、これにより保形部63を強固に補強することができるため、上述の玉ハミ部に比べて優れた保形性が得られるという利点がある。しかも、前記ハミダシ材60を用いた場合、経年劣化が生じ難く、優れた耐久性が得られるという利点もある。
【0031】
上述の実施形態では、手掌面側革材3の外周縁部に四つの保形部63を設けた例について説明したが、この保形部63の個数は四つに限られず、一つ乃至三つであってもよく、あるいは五つ以上であってもよい。そして、上述のように手掌面側革材3の外周縁部に複数の保形部63を一定間隔で配置した場合には、手掌面側革材3の広範囲に位置する外周部を充分に補強して、その型崩れを効果的に防止することができる。
【0032】
なお、手掌面側革材3の小指側手掌部32に保形部63を設けてなる上述の実施形態に代え、手掌面側革材3の親指側手掌部31に保形部63を設けた構成としてもよく、あるいは手掌面側革材3の親指側手掌部31および小指側手掌部32の両方に保形部63を設けた構成としてもよい。
【0033】
上述の実施形態では、捕球面側革材2と手掌面側革材3とを縫合する縫合紐30が挿通される外周側挿通孔33と指元側挿通孔34とを、一定間隔で手掌面側革材3の外周縁部に形成し、手掌面側革材3の外周縁側端部と指元側挿通孔34との間にスリット6を形成している。この構成によれば、手掌面側革材3に形成された指元側挿通孔34を利用して前記スリット6を容易に形成することができる。しかも、縫合紐30の挿通部と保形部63の指元側端部とを一箇所に集約することにより、ミット1の外観をシンプル化することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 キャッチャーミット 2 捕球面側革材
3 手掌面側革材 4 手甲面側革材
6 スリット
11 親指側部分 12 小指側部分
13 捕球用ウェブ
30 縫合糸 31 親指側手掌部
32 小指側手掌部 33 外周側挿通孔
34 指元側挿通孔
41 親指挿入部 42 人差し指挿入部
43 中指挿入部 44 小指等挿入部
45 縫合糸
60 ハミダシ材 61 側辺部
63 保形部
図1
図2
図3
図4
図5