(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179435
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両下部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241219BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20241219BHJP
B62D 21/15 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/00 A
B62D21/15 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098288
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】濃野 功治
(72)【発明者】
【氏名】田村 昌大
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA31
3D203AA33
3D203BA16
3D203BB06
3D203BB20
3D203BB22
3D203CA25
3D203CA38
3D203CA43
3D203DA07
3D203DB05
3D235AA01
3D235BB05
3D235BB06
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF12
3D235FF24
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】車体の補強にかける質量を抑えることができる車両下部構造を提供する。
【解決手段】本発明の車両下部構造は、車室の床面を構成するフロアパネルと、フロアパネルの下側の左右に配置された一対のサイドメンバ14と、フロアパネルの下側に一対のサイドメンバの間に配置されるバッテリ20と、を有する。車両下部構造はさらに、車両に車幅方向からの入力があった場合に、車両に対して入力の方向にバッテリを相対移動させる相対移動手段60を有する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両下部構造であって、
車室の床面を構成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの下側の左右に配置された一対のサイドメンバと、
前記フロアパネルの下側に前記一対のサイドメンバの間に配置されるバッテリと、
車両に車幅方向からの入力があった場合に、前記車両に対して前記入力の方向に前記バッテリを相対移動させる相対移動手段と、を有する車両下部構造。
【請求項2】
前記バッテリを相対移動させる方向に第1消音器を有し、
前記車両に車幅方向からの前記入力があった場合に、前記バッテリが相対移動することによって前記第1消音器を圧壊することによって前記バッテリの衝突エネルギーを吸収する、請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記第1消音器よりも小さい第2消音器をさらに有し、
前記第2消音器は前記第1消音器よりも車両後方に配置されている、請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記バッテリの下方に前記バッテリを支持するフレームをさらに有し、
前記フレームは前記サイドメンバに固定される左右一対の第1メンバと、
前記サイドメンバの左右を繋ぐ前後一対の第2メンバと、を有し
前記フレームは前記バッテリと破断可能に取り付けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記フレームは、前記前後一対の第2メンバの間に前記サイドメンバの左右を繋ぎ、且つ前記バッテリの下方に位置する第3メンバを有し、
前記第3メンバは、前記車両に車幅方向からの前記入力があった場合に、車両下方或いは車両前後方向に湾曲することを特徴とする、請求項4に記載の車両下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関及び走行用モータを有する車両に適用される車両下部構造として、消音器を衝撃吸収材として機能させる技術が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された車両下部構造は、車両の幅方向において左右一対のサイドメンバの間に、バッテリと消音器とが並んで配置されている。消音器側(例えば車両の右側)からの入力に対して、右側のサイドメンバに固定された第1衝撃吸収部材とバッテリとの間に消音器を挟み込んで衝撃を吸収することが開示されている。消音器とは反対側(例えば車両の左側)からの入力(説明の便宜上、「バッテリ側の入力」という)に対して、左側のサイドメンバに固定された第2衝撃吸収部材によって衝撃を吸収することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された車両下部構造において、消音器は、バッテリ側の衝撃を吸収する機能を発揮しない。バッテリ側の衝撃を吸収するため、第2衝撃吸収部材を設けている。
【0006】
しかしながら、バッテリが車体に固定されているため、衝撃源である物体の侵入をバッテリ損傷が発生しない位置に抑える必要がある。このため、第2衝撃吸収部材の強度を高めなければならない。車体の補強のために、第2衝撃吸収部材にかける質量が増加するという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、車体の補強にかける質量を抑えることができる車両下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の車両下部構造は、車室の床面を構成するフロアパネルと、前記フロアパネルの下側の左右に配置された一対のサイドメンバと、前記フロアパネルの下側に前記一対のサイドメンバの間に配置されるバッテリと、を有する。車両下部構造はさらに、前記車両に車幅方向からの入力があった場合に、前記車両に対して前記入力の方向に前記バッテリを相対移動させる相対移動手段を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両下部構造によれば、車両に車幅方向からの入力があった場合、相対移動手段は、車両に対して入力の方向にバッテリを相対移動させる。バッテリを相対移動させることによって、車体の変形量を増やし、エネルギー吸収量を増やすことができる。その結果、車体の補強にかける質量を抑えることができる。さらに、バッテリへの入力を逃がすことができるため、バッテリ損傷の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】バッテリと、バッテリを支持するサブフレーム(フレーム)とを分離して示す斜視図である。
【
図4A】車両に車幅方向からの入力があった後における車両の要部を示す底面図である。
【
図5A】変形例1の相対移動手段を有する車両の要部を示す底面図であって、
図4Aに相当する図である。
【
図6A】変形例2の相対移動手段を有する車両の要部を示す底面図であって、
図4Aに相当する図である。
【
図7A】変形例3の相対移動手段を有する車両の要部を示す底面図であって、
図4Aに相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。よって、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範囲、要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0012】
また、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状等について、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0013】
なお、本明細書において、「第1」、「第2」等の序数詞を付すこともある。しかしながら、これら序数詞に関する特段の説明がない限りは、説明の便宜上、構成要素を識別するために付したものであって、数又は順序を特定するものではない。
【0014】
<実施形態>
図1に示すように、実施形態の車両10は、内燃機関11及び走行用モータ12を有する。車両10は、フロアパネル13と、一対のサイドメンバ14と、バッテリ20と、を有する。フロアパネル13は、車室の床面を構成する。一対のサイドメンバ14は、フロアパネル13の下側の左右に配置されている。サイドメンバ14は、車両10の下部構造の骨格の一部を構成する。サイドメンバ14は、車両構造体の中でも剛性が強い部分である。バッテリ20は、フロアパネル13の下側に一対のサイドメンバ14の間に配置されている。バッテリ20は、走行用モータ12に電力を供給する。
【0015】
内燃機関11は、排気が流通する排気管15が車両後方に向けて伸びている。排気管15の一部は、バッテリ20と一方のサイドメンバ14(図示例では車両右側のサイドメンバ14)との間の空間において伸びている。排気管15の途上には、第1消音器31と、第2消音器32とが配置されている。第1消音器31は、バッテリ20と一方のサイドメンバ14(図示例では車両右側のサイドメンバ14)との間に配置されている。第2消音器32は、第1消音器31よりも小さい。
【0016】
なお、内燃機関11は、駆動源として利用する場合に限られない。内燃機関11は、発電用の動力源として利用できる。第1消音器31及び第2消音器32は、フィルタ部や触媒部を含むことができる。第2消音器32は必ずしも必要ではなく、第1消音器31のみを配置できる。
【0017】
図3B及び
図3Cに示すように、バッテリ20は、バッテリケース21と、バッテリケース21内に収納されたセルモジュール22と、を有する。バッテリケース21は、底板部23と、底板部23に固定される4つの側壁部24と、側壁部24の上端開口を塞ぐカバー部25と、を有する。4つの側壁部24は、車幅方向に位置する2つの側壁部24(
図3Bを参照)と、前後方向に位置する2つの側壁部24(
図3Cを参照)とを有する。車幅方向に位置する側壁部24は、縦壁部24aを有する。前後方向に位置する側壁部24は、略L字形状を有し、縦壁部24aと、縦壁部24aから車両10の前後方向に伸びているフランジ部24bとを有する。バッテリ20は、フランジ部24bにおいて、後述するサブフレーム40に取り付けられる。バッテリケース21の構成材料は特に限定されない。底板部23は、例えば中実の板材から構成できる。側壁部24は、例えばリブによって複数の中空室に仕切られた中空体から構成できる。カバー部25は、例えば中実の板材から構成できる。
【0018】
図2、
図3A、
図3B、及び
図3Cに示すように、車両10は、バッテリ20の下方にバッテリ20を支持するサブフレーム40(フレームに相当する)をさらに有する。バッテリ20は、サイドメンバ14に直接的に固定されていない。サブフレーム40は、サイドメンバ14に固定される。したがって、バッテリ20は、サブフレーム40を介しサイドメンバ14に間接的に固定される。サブフレーム40は、バッテリ20と破断可能に取り付けられている。本明細書において「破断可能に取り付ける」とは、サブフレーム40とサイドメンバ14との固定は強固にし、バッテリ20とサブフレーム40との固定は衝突時の大入力では分断するが、走行時の入力では十分保持できる程度の強度で取り付けられていることを意味する。すなわち、バッテリ20とサブフレーム40との固定部の強度は、サブフレーム40とサイドメンバ14との固定部の強度よりも低い。固定方法は特に限定されないが、例えば、ボルト固定、バンド固定、ボルト固定とバンド固定との併用等を例示できる。
【0019】
サブフレーム40は、左右一対の第1メンバ41と、前後一対の第2メンバ42と、第3メンバ43とを有し、全体として井桁形状を有する。左右の第1メンバ41は、車両10の前後方向に伸び、左右のサイドメンバ14に固定される。前後の第2メンバ42は、車幅方向に伸び、左右の第1メンバ41に固定される。第3メンバ43は、前後の第2メンバ42の間に1本又は複数本(図示例では2本)有する。第3メンバ43は、車幅方向に伸び、左右の第1メンバ41に固定される。
【0020】
図3Aに符号51によって示す第1固定部51は、サブフレーム40とサイドメンバ14とを強固に固定する部位を示している。第1固定部51の構造は特に限定されないが、ボルト53によって構成できる。
【0021】
図3Aに符号52によって示す第2固定部52は、バッテリ20とサブフレーム40とを破断可能に取り付ける部位を示している。バッテリ20は、バッテリケース21のフランジ部24bにおいて、サブフレーム40の第2メンバ42に取り付けられる。第2固定部52の構造は特に限定されないが、ボルト53によって構成できる。第2固定部52を構成するボルト53は、常用時の固定としては十分な締結強度を確保しつつ、衝撃入力より低い締結強度でバッテリ20とサブフレーム40とを固定する。
【0022】
図3Aに示すように、サブフレーム40の第2メンバ42は、車両10の右側に向かってやや拡大する孔部44を有する。孔部44は、異形穴によって形成され、ボルト53を抜くことが可能な大きさを有する。車両10に車幅方向左側からの入力があり、バッテリ20とサブフレーム40の第2メンバ42との取り付け状態が破断した場合、バッテリ20は、ボルト53ごと車両10に対して入力の方向(車幅右方向)に相対移動が可能となる。第2固定部52を構成するボルト53は、孔部44から抜ける。
【0023】
第2固定部52は、車幅方向に配列されている。第2固定部52は、バッテリ20とサブフレーム40とを破断可能に取り付ける部位である。したがって、第2固定部52は、車両10に車幅方向からの入力があった場合に、車両10に対して入力の方向にバッテリ20を相対移動させる相対移動手段60として機能する。
【0024】
次に、実施形態の作用、効果を説明する。
【0025】
物体70が相応の衝撃力でもって車両10の左側から衝突する場合の作用、効果を説明する。
【0026】
図4A、
図4B、及び
図4Cに示すように、車両10に車幅方向左側からの入力(衝撃入力)があった場合、フロアパネル13が車両左側から車幅方向中央側に向けて縮むように湾曲する。また、左側のサイドメンバ14も車両左側から車幅方向中央側に向けて移動する。サイドメンバ14が車幅方向中央側に向けて移動すると、
図4Aに符号P1によって示される位置において、変形した左側のサイドメンバ14がバッテリケース21の側壁部24に当接する。物体70の衝撃力が大きく、サイドメンバ14が車幅方向中央側に向けてさらに移動すると、相対移動手段60として機能する第2固定部52は、バッテリ20とサブフレーム40の第2メンバ42との取り付け状態を破断する。これによって、バッテリ20は、ボルト53ごと車両10に対して入力の方向(車幅右方向)に相対移動が可能となる。第2固定部52を構成するボルト53は、孔部44から抜ける。
【0027】
サブフレーム40の第3メンバ43は、車両上方以外の方向(バッテリ20が存在しない方向)に湾曲し、変形する。第3メンバ43がバッテリ20に損傷を与えないようにするためである。例えば、第3メンバ43に変形方向を規制する凹部(脆弱部)を設けておくことによって実現できるが、これに限られない。
【0028】
このように、相対移動手段60は、車両10に対して入力の方向(車幅右方向)にバッテリ20を相対移動させる。バッテリ20を相対移動させることによって、車体の変形量(サイドメンバ14の変形量)を増やし、エネルギー吸収量を増やすことができる。その結果、車体の補強にかける質量を抑えることができる。さらに、バッテリ20への入力を逃がすことができるため、バッテリ20の損傷の発生を抑えることができる。
【0029】
また、本実施形態の車両下部構造は、バッテリ20の下方にバッテリ20を支持するサブフレーム40をさらに有する。サブフレーム40はサイドメンバ14に固定される左右一対の第1メンバ41と、サイドメンバ14の左右を繋ぐ前後一対の第2メンバ42と、を有する。サブフレーム40はバッテリ20と破断可能に取り付けられている。
【0030】
このように構成すれば、サブフレーム40がバッテリ20の下方においてバッテリ20を支持するため、バッテリ20が車両10から脱落することを確実に防ぎつつ、バッテリ20とサブフレーム40との固定を解除してバッテリ20を移動させることができる。
【0031】
本実施形態の車両下部構造は、サブフレーム40が、前後一対の第2メンバ42の間にサイドメンバ14の左右を繋ぎ、且つバッテリ20の下方に位置する第3メンバ43を有する。第3メンバ43は、車両10に車幅方向からの入力があった場合に、車両下方或いは車両前後方向に湾曲する。
【0032】
このように構成すれば、サブフレーム40の第3メンバ43は、車幅方向からの入力によって変形するが、湾曲することによってエネルギーを吸収し、さらに、バッテリ20が車両10から脱落することを防止する。しかも、第3メンバ43の湾曲方向がバッテリ20側ではなく(バッテリ20が存在しない方向であるため)、バッテリ20が損傷することはない。
【0033】
なお、サブフレーム40からの脱落を防止できる限りにおいて、第3メンバ43に代えて、バッテリ20の重さを支えることが可能なカバーを適用できる。カバーは、例えば、バンドや金網等から形成できる。
【0034】
本実施形態の車両下部構造は、バッテリ20を相対移動させる方向(車幅右方向)に第1消音器31を有する。車両に車幅方向からの入力があった場合に、バッテリ20が相対移動することによって第1消音器31を圧壊することによってバッテリ20の衝突エネルギーを吸収する。
【0035】
このように構成すれば、第1消音器31とは反対側からの入力(説明の便宜上、「バッテリ20側の入力」という)に対して、第1消音器31は、バッテリ20と右側のサイドメンバ14との間に挟まれて潰される。より詳しく説明すると、バッテリ20が相対移動し、第1消音器31を圧壊することによってバッテリ20の衝突エネルギーを吸収する。これによって、バッテリ20への衝撃を吸収する性能をさらに向上させることができる。その結果、車体の補強にかける質量をさらに抑えることができる。
【0036】
本実施形態の車両下部構造は、第1消音器31よりも小さい第2消音器32をさらに有し、第2消音器32は第1消音器31よりも車両後方に配置されている。
【0037】
このように構成すれば、大きい方の第1消音器31によって衝撃を吸収するため、衝撃吸収性能がさらに向上する。
【0038】
物体70が相応の衝撃力でもって車両10の右側から衝突する場合の作用、効果を説明する。
【0039】
車両10に車幅方向右側からの入力(衝撃入力)があった場合、フロアパネル13が車両右側から車幅方向中央側に向けて縮むように湾曲する。また、右側のサイドメンバ14も車両右側から車幅方向中央側に向けて移動する。サイドメンバ14が車幅方向中央側に向けて移動すると、第1消音器31の側壁に当接する。物体70の衝撃力が大きく、サイドメンバ14が車幅方向中央側に向けてさらに移動すると、第1消音器31は、バッテリ20と右側のサイドメンバ14との間に挟まれて潰される。これによって、衝撃を吸収することができ、バッテリ20の損傷の発生を抑えることができる。
【0040】
実施形態において、相対移動手段60は、車両10に車幅方向の一方(例えば車両左側)から入力があった場合に、車両10に対して入力の方向(車幅右方向)にバッテリ20を相対移動させる構成とした。本発明は、この場合に限定されない。相対移動手段60は、車両10に車幅方向のいずれの方向から入力があった場合でも、車両10に対して入力の方向にバッテリ20を相対移動させる構成とできる。この場合、サブフレーム40の第2メンバ42の孔部44は、第2固定部52の位置を中心にして、車両右側及び車両左側の両方に向かって伸びている形状にできる。
【0041】
(変形例1)
図5Aは、変形例1の相対移動手段60を有する車両10の要部を示す底面図であって、
図4Aに相当する図である。
図5Bは、
図5Aの5B-5B線に沿う端面図であって、
図4Cに相当する図である。
【0042】
相対移動手段60は、車両10に車幅方向からの入力があった場合に、車両10に対して入力の方向にバッテリ20を相対移動させる機能を発揮する限りにおいて、具体的な構成は実施形態において示した構成に限定されない。
【0043】
図5A及び
図5Bに示すように、変形例1の相対移動手段60は、車両10に車幅方向からの入力があった場合に、第2固定部52を構成するボルト54自体を破断させることによって、車両10に対して入力の方向にバッテリ20を相対移動させる。第2固定部52を構成するボルト54は、常用時の固定としては十分な締結強度を確保しつつ、衝撃入力によるせん断荷重よりも低いせん断強度を有する。
【0044】
バッテリ20とサブフレーム40との取り付けは、車両10の前後方向及び上下方向においてはボルトによって固定せず、バンドによって固定する。バッテリ20は、前後方向及び上下方向がバンドによって押さえられているが、車幅方向に対してはバンド面の摩擦のみである。このため、第2固定部52を構成するボルト54自体が破断した場合、バッテリ20は、前後方向及び上下方向がバンドによって固定されながら、車幅方向にスライド移動が可能である。
【0045】
変形例1の相対移動手段60によっても、車両10に車幅右方向からの入力があった場合、ボルト54自体を破断させる。これによって、車両10に対して入力の方向(車幅右方向)にバッテリ20を相対移動させる。バッテリ20を相対移動させることによって、車体の変形量(サイドメンバ14の変形量)を増やし、エネルギー吸収量を増やすことができる。その結果、車体の補強にかける質量を抑えることができる。さらに、バッテリ20への入力を逃がすことができるため、バッテリ20の損傷の発生を抑えることができる。
【0046】
(変形例2)
図6Aは、変形例2の相対移動手段60を有する車両10の要部を示す底面図であって、
図4Aに相当する図である。
図6Bは、
図6Aの6B-6B線に沿う端面図であって、
図4Cに相当する図である。
【0047】
図6A及び
図6Bに示すように、変形例2の相対移動手段60は、車両10に車幅方向からの入力があった場合に、バッテリケース21の前後方向に位置する側壁部24の一部を破損させることによって、車両10に対して入力の方向にバッテリ20を相対移動させる。前後方向に位置する側壁部24のうち、縦壁部24aとフランジ部24bとの境界55が破損するように構成できる。例えば、境界55の部分を、入力より低い強度になる材質によって形成したり、板厚を薄くしたりできる。あるいは、境界55の部分に切り欠きを形成し、切り欠きの部位から破損が生じるようにできる。
【0048】
変形例2の相対移動手段60によっても、車両10に車幅右方向からの入力があった場合、前後方向に位置する側壁のうち、縦壁部24aとフランジ部24bとの境界55を破損させる。これによって、車両10に対して入力の方向(車幅右方向)にバッテリ20を相対移動させる。バッテリ20を相対移動させることによって、車体の変形量(サイドメンバ14の変形量)を増やし、エネルギー吸収量を増やすことができる。その結果、車体の補強にかける質量を抑えることができる。さらに、バッテリ20への入力を逃がすことができるため、バッテリ20の損傷の発生を抑えることができる。
【0049】
(変形例3)
図7Aは、変形例3の相対移動手段60を有する車両10の要部を示す底面図であって、
図4Aに相当する図である。
図7Bは、
図7Aの7B-7B線に沿う端面図であって、
図4Cに相当する図である。
【0050】
図7A及び
図7Bに示すように、変形例3の相対移動手段60は、車両10に車幅方向からの入力があった場合に、実施形態と同様に第2固定部52を構成するボルト53ごと、車両10に対して入力の方向にバッテリ20を相対移動させる。第2固定部52を構成するボルト53は、常用時の固定としては十分な締結強度を確保しつつ、衝撃入力より低い締結強度でバッテリ20とサブフレーム40とを固定する。変形例3は、サブフレーム40の第2メンバ42は、車幅方向に伸びている長孔56を有する。長孔56は、バッテリ20をスライド移動させたい長さを有する。ボルト53の軸部は、長孔56に沿ってスライド移動する。
【0051】
変形例3の相対移動手段60によっても、車両10に車幅右方向からの入力があった場合、ボルト53の軸部は長孔56に沿ってスライド移動する。これによって、車両10に対して入力の方向(車幅右方向)にボルト53ごとバッテリ20を相対移動させる。バッテリ20を相対移動させることによって、車体の変形量(サイドメンバ14の変形量)を増やし、エネルギー吸収量を増やすことができる。その結果、車体の補強にかける質量を抑えることができる。さらに、バッテリ20への入力を逃がすことができるため、バッテリ20の損傷の発生を抑えることができる。しかも、長孔56からボルト53が抜けないため、バッテリ20がサブフレーム40から脱落することを確実に防ぎつつ、バッテリ20とサブフレーム40との固定を解除してバッテリ20を移動させることができる。
【0052】
以上、本発明の車両下部構造の実施形態及び変形例を説明したが、本発明は上述した実施形態及び変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 車両
11 内燃機関
12 走行用モータ
13 フロアパネル
14 サイドメンバ
15 排気管
20 バッテリ
21 バッテリケース
22 セルモジュール
23 底板部
24 側壁部
24a 縦壁部
24b フランジ部
25 カバー部
31 第1消音器
32 第2消音器
40 サブフレーム(フレーム)
41 第1メンバ
42 第2メンバ
43 第3メンバ
44 孔部
51 第1固定部
52 第2固定部
53 ボルト
54 ボルト
55 境界
56 長孔
60 相対移動手段
70 物体