(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179437
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】分割型複合繊維
(51)【国際特許分類】
D01F 8/06 20060101AFI20241219BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20241219BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20241219BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20241219BHJP
【FI】
D01F8/06
D01F8/14 Z
D04H1/492
D04H1/4382
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098291
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶
【テーマコード(参考)】
4L041
4L047
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA12
4L041BC05
4L041BD11
4L041CA05
4L041CA06
4L041CA38
4L041DD01
4L041DD06
4L041EE05
4L041EE20
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA29
4L047AB02
4L047AB08
4L047BA04
(57)【要約】
【課題】低コストで、取り扱い性が良好で、繊維製造における紡糸性が良好で、かつ優れた分割性能を発揮する分割型複合繊維を提供すること、また、ソフトな風合いを有する不織布を得ることができる分割型複合繊維を提供する。
【解決手段】ポリプロピレンとポリエステルとから構成された分割型複合繊維であって、ポリプロピレン中に無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下、かつこれら無機物の合計含有量が100ppm以下であり、横断面において、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなり、両成分が繊維表面に露出している分割型複合形態であり、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、繊維表面に占めるポリエステルの面積比率よりも小さく、複合繊維の繊度が1~6dtex、セグメントの合計数が10~30個、個々のセグメントの繊度が0.30dtex以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンとポリエステルとから構成された分割型複合繊維であって、ポリプロピレンとポリエステルの比率が30/70~70/30wt%であり、ポリプロピレン中に無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下、かつこれら無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量が100ppm以下であり、
横断面において、ポリプロピレンとポリエステルとの2成分のうち、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなり、
ポリプロピレンとポリエステルとのいずれもが、繊維表面に露出している分割型複合形態であり、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、繊維表面に占めるポリエステルの面積比率よりも小さく、
複合繊維の繊度が1~6dtex、セグメントの合計数が10~30個、かつ、個々のセグメントの繊度が0.30dtex以下であることを特徴とする分割型複合繊維。
【請求項2】
分割型複合繊維の横断面が、ポリプロピレンからなるセグメントとポリエスエルからなるセグメントとが放射状に交互に配されてなる横断面であることを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維。
【請求項3】
繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、10~40%であることを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維。
【請求項4】
分割型複合繊維のポリプロピレンからなるセグメントとポリエステルからなるセグメントとの境界面に剥離箇所が存在することを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維。
【請求項5】
110℃、15分間熱処理による熱収縮率が5%未満であることを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維。
【請求項6】
無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下、かつこれら無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量が100ppm以下であり、285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が650~850dPa・Sであるポリプロピレンを準備し、
285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が1000~2000dPa・Sであるポリエステルを準備し、
該ポリプロピレンとポリエステルとを、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなる分割型複合口金を用いて、複合紡糸した後、紡糸した未延伸糸を熱延伸することを特徴とする請求項1記載の分割型複合繊維の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項記載の分割型複合繊維を含む不織ウェブを準備し、該不織ウェブに高圧液体流処理を施して、分割型複合繊維を割繊させて極細繊維を発現させるとともに、構成繊維同士を交絡させて、スパンレース不織布を得ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンとポリエステルからなる分割型複合繊維であって、ワイパー、フィルターなどの産業資材分野、おむつなどの衛生材料分野、人工皮革などに好適に用いることのできる分割性に優れた分割型複合繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ソフトな風合い、ワイピング性、ドレープ性などを有する不織布や織編物を得るために分割型複合繊維から発現した極細繊維に関する開発がなされている。例えば、特許文献1には、アルカリ易溶性のポリマーと難溶性のポリマーからなる複合繊維をアルカリ処理して分割する方法が開示されている。また特許文献2には、ポリプロピレンやポリエチレンといったオレフィン系樹脂2成分からなる分割型複合繊維を高圧液体流や抄紙法により不織布化する方法が開示されている。さらに特許文献3には、ポリエステルとポリオレフィン系樹脂からなる分割型複合繊維をウォータージェット法により不織布化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62―57981号公報
【特許文献2】特開2002―88580号公報
【特許文献3】特開平6―313215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した引用文献1は、溶剤を要するため、その取り扱いや回収が難しく、また生産コストが高くなるという問題があった。引用文献2は、複合断面形状が複雑であるため、紡糸延伸性が劣り、また、断面形状の安定性に劣るため得られる不織布等の繊維製品の品位が低下するといった問題があった。引用文献3は、比較的融点の低いオレフィン系樹脂の繊維表面への露出が多く、繊維製造工程において熱セット温度を高くすることができず、繊維の熱収縮率が高くなり風合いに劣るといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決し、低コストで、取り扱い性が良好で、繊維製造における紡糸性が良好で、かつ優れた分割性能を発揮する分割型複合繊維を提供すること、また、ソフトな風合いを有する不織布を得ることができる分割型複合繊維を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明の要旨は次のとおりである。
(1)ポリプロピレンとポリエステルとから構成された分割型複合繊維であって、ポリプロピレンとポリエステルの比率が30/70~70/30wt%であり、ポリプロピレン中に無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下、かつこれら無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウム無機物の合計含有量が100ppm以下であり、
横断面において、ポリプロピレンとポリエステルとの2成分のうち、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなり、
ポリプロピレンとポリエステルとのいずれもが、繊維表面に露出している分割型複合形態であり、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、繊維表面に占めるポリエステルの面積比率よりも小さく、
複合繊維の繊度が1~6dtex、セグメントの合計数が10~30個、かつ、セグメントの繊度が0.30dtex以下であることを特徴とする分割型複合繊維。
(2)分割型複合繊維の横断面が、ポリプロピレンからなるセグメントとポリエスエルからなるセグメントとが放射状に交互に配されてなる横断面であることを特徴とする上(1)記載の分割型複合繊維。
(3)繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、5~30%であることを特徴とする上(1)記載の分割型複合繊維。
(4)分割型複合繊維のポリプロピレンからなるセグメントとポリエステルからなるセグメントとの境界面に剥離箇所が存在することを特徴とする上(1)記載の分割型複合繊維。
(5)110℃、15分間熱処理による熱収縮率が5%未満であることを特徴とする上(1)記載の分割型複合繊維。
(6)上(1)記載の分割型複合繊維を製造する方法であって、
無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下、かつこれら無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量が100ppm以下であり、285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が650~850dPa・Sであるポリプロピレンを準備し、
285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が1000~2000dPa・Sであるポリエステルを準備し、
該ポリプロピレンとポリエステルとを、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなる分割型複合口金を用いて、複合紡糸することを特徴とする分割型複合繊維の製造方法。
(7)上(1)~(5)のいずれかに記載の分割型複合繊維を含む不織ウェブを準備し、該不織ウェブに水流交絡処理を施して、分割型複合繊維を割繊させて極細繊維を発現させるとともに、構成繊維同士を交絡させて、スパンレース不織布を得ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明は、ポリプロピレンとポリエステルとから構成された分割型複合繊維である。ポリプロピレンとポリエステルとは、相溶性がなく非相溶性であることから、溶剤処理を行わなくとも物理的な衝撃を加えることにより、ポリプロピレンからなるセグメントとポリエステルからなるセグメントとの境界面で割繊し、それぞれのセグメントよりなる極細繊維を得ることができる。物理的な衝撃としては、複合繊維が短繊維の場合には開繊機やカード機による衝撃や、本発明の複合繊維を用いて布帛等にした後、高圧水流を施す方法、ニードルパンチ処理による方法、液流染色機内に通して衝撃を与える方法、座屈法等が挙げられる。
【0009】
ポリプロピレンとしては、例えばプロピレン単独重合体やプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体が挙げられ、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等を挙げることができる。かかるポリプロピレンは具体的には、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒等で重合されたシンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレンが挙げられる。ポリプロピレンには本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン=ビスステアリン酸アミドなどを紡糸時に添加してもよい。なお、ポリプロピレンに含有される酸化防止剤は耐変色性を有する成分からなることが好ましい。
【0010】
本発明においては、繊維を構成するポリプロピレン中のカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下であり、さらに好ましく40ppm以下である。また、ポリプロピレン中におけるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量が100ppm以下である。これらの無機物はポリプロピレンの重合時に添加される触媒や中和剤に由来するものであることから、ポリプロピレン中に一定量含まれている。しかしながら、これらの無機物は、複合型分割繊維の製造工程における紡糸工程にて、経時によりノズル孔に堆積する。複合型分割繊維を得るための複合断面は、分割セグメント数が10~30と多く複雑であることから、ノズル孔に無機物が堆積すると、複合断面形状が崩れ、所望の形状の分割型複合断面の繊維が得にくくなり、得られた複合繊維の割繊性は悪化する。そこで本発明では、ポリプロピレン中に含まれる前記したカルシウム、アルミニウム、ナトリウムのいずれもが60ppm以下であり、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量を100ppm以下とすることにより、連続生産においても、紡糸工程にてノズル孔に無機物の堆積が生じにくくなるため、複合断面形状の変形や崩れが生じにくく、分割セグメント数が多く複雑な複合断面形状であっても、複合断面形状を安定して保持したまま分割型複合繊維を連続生産することが可能となる。また、分割型複合繊維の複合断面の変形や崩れが生じにくいため、所望の形状の分割型複合断面の繊維を得られるため、割繊性が良好で、所望の極細繊維を得ることができる。
【0011】
本発明の分割型複合繊維は、前記したポリプロピレンと、ポリエステルにより構成される。ポリエステルは、アルキレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステルであり、アルキレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレンナフタレート等が挙げられる。なかでも、経済性、耐熱性等からエチレンテレフタレートが好ましく、また、ホモポリエステルであることが好ましい。ポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で、リン酸エステル化合物やヒンダードフェノール化合物のような安定剤、コバルト化合物、蛍光増白剤、染料のような色調改良剤、二酸化チタンのような艶消し剤、可塑剤、顔料、制電剤、難燃剤、易染化剤などの各種添加剤を1種類または2種類以上添加してもよい。
【0012】
分割型複合繊維において、ポリプロピレンとポリエステルの複合比率(質量比)は30/70~70/30であることが好ましく、40/60~60/40であることがより好ましい。ポリプロピレンの比率が30wt%以上とすることにより、繊維表面に占めるポリプロピレンの比率が小さくなり過ぎず、適度に露出させることができるため、分割性が良好で、所望の極細繊維を発現させることができる。一方、ポリプロピレンの比率が70wt%以下とすることにより、繊維表面に、融点の低いポリプロピレンを多く露出させることがなく、延伸後の熱セット温度を高く設定することができ、得られた複合繊維において、熱収縮率を低くすることができ寸法安定性を有する繊維となる。
【0013】
分割型複合繊維の横断面形状は、ポリプロピレンとポリエステルとの2成分のうち、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなり、ポリプロピレンとポリエステルとのいずれもが、繊維表面に露出している分割型複合形態であり、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、繊維表面に占めるポリエステルの面積比率よりも小さい。一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなることにより、物理的な衝撃が付与された際に、互いに非相溶性であるポリプロピレンとポリエステルとが接合された境界面で分割し、それぞれのセグメントからなる極細繊維を発現する。そして、ポリプロピレンとポリエステルとのいずれの成分も繊維表面に露出していることにより、物理的な衝撃により良好に分割する。また、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率が、ポリエステルの面積比率よりも小さいものであることにより、耐熱性に優れるポリエステルの露出率が高く、低融点のポリプロピレンの露出率を抑え、延伸後の熱セット温度を高く設定することができ、得られた複合繊維において、熱収縮率を低くすることができ寸法安定性を有する繊維となる。
【0014】
横断面形状としては、一方の成分からなるセグメントと他方の成分からなるセグメントとがそれぞれ放射状に交互に配された断面形状、一方の成分からなるセグメントと他方の成分からなるセグメントとがそれぞれ交互に積層されて縞模様を呈した断面形状、一方の成分が芯部のセグメントを形成し、他方の成分が芯部を取り囲むようにかつ芯部に分断されて複数の葉部のセグメントが配された多葉型の断面形状等が挙げられる。放射状に交互に配された断面形状は、セグメント数が10個以上と多いと、複合紡糸口金の構造が複雑となるが、割繊により発現する極細繊維の形状が略楔型であり、掻き取り性やワイパー性、ソフト性をも備えた繊維製品が得られるため好ましい。このような放射状に交互に配された断面形状としては、いわゆるフルーツ割繊型のものや、
図1に示す断面形状であって、一方の成分が花弁状の形状を呈する複数の花弁部(セグメント)と、他方の成分が花弁部同士を分断して存在し非花弁状の形状の複数の非花弁部(セグメント)により構成される断面形状が挙げられる。本発明においては、
図1に示す花弁部と非花弁部からなる断面形状であることがより好ましく、ポリプロピレンが繊維表面への露出が少ない花弁部に配され、ポリエステルが非花弁部に配されてなることが好ましい。
【0015】
分割型複合繊維において、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積比率は、繊維中のポリプロピレンの複合比率の値よりも小さい値であり、かつその値が10~40%であることが好ましく、さらには15~35%であることが好ましい。ポリプロピレンが繊維表面に占める面積比率が10%以上とすることにより、割繊性能が良好となり、割繊によって良好に極細繊維を発現する。一方、ポリプロピレンが繊維表面に占める面積比率が40%以下とすることにより、低融点のポリプロピレンの露出率を抑え、延伸後の熱セット温度を高く設定することができ、得られた複合繊維において、熱収縮率を低くすることができ寸法安定性を有する繊維となる。なお、繊維表面に占める面積比率は、繊維横断面より計測すればよい。
【0016】
分割型複合繊維の繊度は1~6dtexであり、2~4dtexであることが好ましい。複合繊維の繊度が1dtex以上とすることにより、分割型複合繊維の製造工程において紡糸時の切糸や延伸時の切断が発生しにくく、良好な品位の繊維が得られ、かつこの複合繊維を用いて品位の高い不織布等の繊維製品が得られる。一方、6dtex以下とすることにより、複合繊維を構成する個々のセグメントの繊度を本発明が規定する0.30dtex以下の小さい繊度のものとすることができ、風合い、ワイピング性が良好な不織布等の繊維製品を得ることができる。
【0017】
分割型複合繊維において、ポリエステルからなるセグメント数とポリプロピレンからなるセグメント数との合計数は10~30個であり、14~26個であることが好ましい。セグメントの合計数が10個以上とすることにより、個々のセグメントの繊度において、本発明が規定する所望の繊度のものが得られやすく、風合い、ワイピング性が良好な不織布等の繊維製品を得ることができる。一方、セグメントの合計数が30個以下とすることにより、紡糸時において所望する分割形状を形成することができ、紡糸性、延伸性が良好となり、また分割性能にも優れた複合繊維となる。
【0018】
分割型複合繊維を構成する個々のセグメントの繊度は0.30dtex以下であり、0.25dtex以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.20dtex以下である。0.30dtex以下とすることにより、割繊により発現する極細繊維の繊度が小さく、風合い、ワイピング性に優れる不織布等の繊維製品が得られる。
【0019】
分割型複合繊維において、ポリプロピレンからなるセグメントとポリエステルからなるセグメントとの境界面に剥離箇所が存在することが好ましい。一方の成分からなるセグメントと他方の成分からなるセグメントとの境界面が完全に密着しているのではなく、一部に隙間が生じ、剥離した箇所が存在することにより、分割割繊処理において外力による物理的な衝撃が加わった際に、剥離箇所が割繊開始の起点となり、衝撃が全体に伝わりやすく、良好にセグメント同士が割繊されて、所望の極細繊維が発現し、風合いやワイピング性に優れる不織布等の繊維製品が得られやすい。剥離箇所とは、このようなセグメントとセグメントとの間の隙間のことである。
図2は、本発明の分割型複合繊維の側面の状態を示すSEM写真であり、
図2の繊維側面において、黒色を呈しているセグメントがポリプロピレンであり、白色を呈しているセグメントがポリエステルである。
図2において、例えば、写真中央あたりに、左上から右下にかけて斜めに存在する繊維の中央部あたりの箇所は、ポリプロピレンのセグメントとポリエステルのセグメントとが密着しておらず、隙間が生じており、剥離箇所が存在する。また、このような剥離箇所は、複合繊維を製造する工程における溶融紡糸後の延伸工程で、加熱状況下にて、適宜の延伸倍率により繊維を延伸することによって形成させることができる。すなわち、ポリプロピレンとポリエステルとの熱延伸時の流動性の差により境界面での剥離が生じるのである。より具体的には、延伸温度60~80℃、延伸倍率2~4倍により熱延伸処理することで剥離箇所を良好に形成させることができる。また、分割型複合繊維に機械捲縮を付与する工程を通して適宜の捲縮数を付与する際に剥離箇所を形成することもできる。捲縮数に関しては後述する。
【0020】
分割型複合繊維の捲縮数は、8~16個/25mmであることが好ましく、9~15個/25mmであることがより好ましい。捲縮数が8個/25mm以上であることにより、複合繊維を用いたウェブ作製時に、繊維同士の抱絡性が良好で、ウェブの形態保持性が良好となるため工程通過性が良いため好ましい。また分割開始の起点となる剥離箇所の数が維持され、分割性能が良好な複合繊維となる。一方、捲縮数が16個/25mm以下であることにより、ウェブ作製時のカード工程において開繊性が悪化することなく、地合いが良好なウェブおよび不織布が得られる。
【0021】
分割型複合繊維の捲縮率は、7~17%であることが好ましく、8~16%であることが好ましい。捲縮率が7%以上であることにより、複合繊維を用いたウェブ作製時において、繊維同士の抱絡性が良好で、ウェブの形態保持性が良好となるため工程通過性が良いため好ましい。一方、捲縮率が17%以下であることにより、ウェブ作製時のカード工程において開繊性が悪化することなく、地合いが良好なウェブおよび不織布が得られる。
【0022】
分割型複合繊維の伸度は20~70%であることが好ましく、25~60%以下であることがさらに好ましい。伸度が20%以上であることにより、延伸工程での単糸切れや切断が発生しにくく、得られる複合繊維および複合繊維を用いて得られる不織布等の繊維製品の品位が良好となる。一方、伸度が70%を超える複合繊維は、伸度が高いため、取り扱いしにくい。また、伸度70%を超える繊維を得ようとすると、繊維製造の際の延伸工程にて延伸倍率1.5を超える程度の小さい延伸倍率でよく、このような延伸倍率では、熱延伸時にポリプロピレンとポリエステルとの界面での流動性差が生じず、剥離箇所を良好に形成させることができず、割繊処理によって良好に極細繊維を発現させにくい。なお、複合繊維の伸度は、JIS L1015記載の伸び率に基づき、定速伸長形引張試験機を用いて、つかみ間隔20mm、引張速度20mm/分の条件で測定する。
【0023】
分割型複合繊維は、110℃、15分間の処理における乾熱収縮率は5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。5%を超えると、複合繊維を用いて不織布を作製する際の熱処理により、分割型複合繊維の収縮が進み、風合いに劣る不織布となる。
【0024】
次に、本発明の分割型複合繊維の製造方法について説明する。
【0025】
まず、分割型複合繊維の原料なるポリプロピレンとポリエステルを準備する。ポリプロピレンとしては、上記したポリプロピレンであって、無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下、かつこれら無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量が100ppm以下であるポリプロピレンを準備する。ポリプロピレンが含有する無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの含有量がいずれも60ppm以下であること、かつこれら無機物であるカルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計含有量が100ppm以下とする理由は、上記したとおりであって、連続生産においても、紡糸工程にてノズル孔に無機物の堆積が生じにくくなるため、複合断面形状の変形や崩れが生じにくく、分割セグメント数が多く複雑な複合断面形状であっても、複合断面形状を安定して保持したまま分割型複合繊維を連続生産することが可能となり、また、所望の形状の分割型複合断面繊維を得られるため、割繊性が良好で、所望の極細繊維を得ることができるためである。
【0026】
また、ポリプロピレンは、285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が650~850dPa・Sがよい。ポリプロピレンの285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が650dPa・S以上であることにより、紡糸時における溶融粘度が低くなり過ぎず、所望の分割形状を形成することが可能となり、本発明の複合型分割繊維が得られる。一方、850dPa・S以下であることにより、紡糸後の未延伸糸の伸度が低くなり過ぎることなく、延伸工程において所望の高い延伸倍率にて延伸を行うことができるため、大きい繊度ではなく、所望の繊度の分割型複合繊維を得ることができる。
【0027】
複合繊維の他方の原料であるポリエステルは、上記したポリエステルであって、285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が1000~2000dPa・Sがよい。また、1200~1800dPa・Sであることが好ましい。ポリエステルの285℃、シェアレート1000S―1における溶融粘度が1000dPa・S以上であることにより、紡糸時における溶融粘度が低くなり過ぎず、所望の分割形状を形成することが可能となり、本発明の複合型分割繊維が得られる。一方、2000dPa・S以下であることにより、紡糸後の未延伸糸の伸度が低くなり過ぎることなく、延伸工程において所望の高い延伸倍率にて延伸を行うことができるため、延伸性が良好となり、また、得られる複合繊維は大きい繊度ではなく、所望の繊度のものを得ることができる。
【0028】
次いで、準備したポリプロピレンとポリエステルとを、一方の成分が他方の成分によって複数個のセグメントに分断されてなる形状となる分割型複合口金を用いて、複合紡糸装置により複合紡糸する。その後、得られた未延伸糸を50~100万デニールの糸束に集束し、この未延伸糸を熱延伸した後、110~140℃の温度に加熱されたヒートドラムを用いて熱処理することで繊維は熱セットされ、本発明の分割型複合繊維を得る。未延伸糸を熱延伸する際の条件は、上記したように、延伸温度60~80℃、延伸倍率2~4倍により熱延伸処理することが好ましい。
【0029】
熱セットにより得られた分割型複合繊維は、押し込み式クリンパーを用いて機械捲縮を付与し、仕上げ油剤を付与した後で糸条束を所望の長さに切断して短繊維とするとよい。なお、付与する仕上げ油剤のpHは5.0~6.5と弱酸性であることが好ましい。仕上げ油剤のpHを弱酸性とすることで、ポリプロピレンの変色を軽減できるためである。
【0030】
得られた複合繊維は、撚りをかける、あるいは紡績することにより糸条とし、また得られた糸条を製編織することにより織編物とする等により、繊維製品とするとよい。
【0031】
また、本発明は、分割型複合繊維を用いて不織布とすることが好ましい。分割型複合繊維を用いて不織布を得る好ましい方法について説明する。不織布の構成繊維となる繊維(本発明の分割型複合繊維)を、カード機等を用いてカーディングしてカードウェブを作製し、得られたカードウェブに高圧液体流処理を施して構成繊維同士を三次元的に交絡させて一体化し、スパンレース不織布を得る。カーディングの際に、分割型複合繊維において剥離箇所がより形成されることとなる。ウェブを作成する方法として、カード機を用いた方法以外としては、湿式抄紙法やエアレイド法等が挙げられる。得られたウェブは、高圧液体流が施されることによって、分割型複合繊維を分割割繊させて極細繊維を発現させるとともに、構成繊維同士を交絡させる。また、高圧液体流の水圧を大きくすることにより分割割繊度合いを高くすることが可能となる。高圧水流交絡法は、ウェブ全体にわたって均一に高圧水流を施すため、得られる不織布全体にわたり、また繊維全体においても均一に分割割繊することができるため、好ましい。また、上記した繊維製品である糸条や織編物も、物理的な衝撃を与えることにより、複合繊維を分割割繊させて、極細繊維を発現させるとよい。分割割繊する方法としては、高圧液体流を施す水流交絡法、ニードルを突刺して抜くことによる物理的な衝撃を与えるニードルパンチ法、液流染色機内を通して衝撃を与える方法、座屈法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0032】
極細繊維を発現させる際に溶剤を要することがなく、低コストで、取り扱い性が良好であり、また、繊維製造における紡糸性が良好で、かつ優れた分割性能を発揮する分割型複合繊維が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の分割型複合繊維の横断面の一例である花弁部と非花弁部からなる断面形状を示す。
【
図2】本発明の分割型複合繊維の側面の状態を示すSEM写真である。
【実施例0034】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例における特性値等の測定方法は次の通りである。
(1)単繊維繊度
JIS L1015 8.5.1 B法により測定した。
(2)セグメント繊度
上記に記載の測定方法により得られた単繊維繊度からセグメント数、複合比より算出した。
(3)無機物含有量
得られた分割型複合繊維中のポリエステルをフェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合物からなる溶媒で溶解後、ポリプロピレンのみを回収する。回収したポリプロピレンを、硝酸と硫酸により加熱分解しICP-MS分析を行ってポリプロピレン中の無機物量を測定した。なお、原料となるポリプロピレン中の無機物含有量を測定する際には、そのポリプロピレン原料をICP-MS分析を行った。
(4)溶融粘度
フローテスター(島津製作所製、型式CFT-500)を用いて、温度285℃、シェアレート1000s-1の条件で測定した。
(5)繊維観察
走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行った。
(6)熱収縮率
JIS L1015 8.15 乾熱寸法変化率に基づき測定した。なお温度は110℃、乾燥機中の放置時間は15分とし、収縮率5%未満を合格(○)とし、5%以上を不合格(×)
(7)捲縮数、捲縮率
JIS L1015 8.12.1および8.12.2により測定した。
(8)紡糸性
繊維紡糸工程における切糸回数について、紡糸量1トンあたり3回未満を合格(○)とし、3回以上を不合格(×)とした。
(9)延伸性
繊維延伸工程における単糸切れ回数が、延伸量1トンあたり3回未満を合格(○)とし、3回以上を不合格(×)とした。
(10)通気度
1日1ロットの区分単位で3日間の連続生産を行い、各ロット(生産開始より約24時間後、約48時間後、約72時間後)において生産された複合繊維群を採取した。採取JIS L1015 8.5.1 B法により測定した。
(6)繊維径の変動率(%)
繊維横断面を光学顕微鏡で観察し、50本の繊維について繊維の直径を測定し、繊維径の標準偏差および繊維径の平均値を求めた後、下式により変動率を算出した。
繊維径の変動率(%)=(繊維径の標準偏差/繊維径の平均値)×100
(7)繊維長
JIS L1015 8.4.1 A法により測定した。
(8)乾熱収縮率
JIS L1015 8.15に基づき測定した。なお測定温度は170(9)捲縮数
JIS L1015 8.12.1および8.12.2により測定した。このとき、標準状態(25(1)XB/XA(10)紡糸性
繊維紡糸工程における切糸回数について、紡糸量1トンあたり3回未満を合格(○)とし、3回以上を不合格(×)とした。
(11)延伸性
繊維延伸工程における単糸切れ回数が、延伸量1トンあたり3回未満を合格(○)とし、3回以上を不合格(×)とした。
(12)工程通過性
有限会社竹内製作所製CH-500ホッパーフィーダーのボックスに繊維10kgを順次投入し、スパイクラチスで持ち揚げ方式(設置面から約2.3mの高さまで上げる)により、繊維を搬送し、搬送された繊維量(質量)を測定した。「搬送された繊維量」を「投入した繊維量(10kg)」で除した値に100を乗じた値を搬送率とし、搬送率が、95%以上のものを合格(〇)、95%未満を不合格(×)とした。した複合繊維群を用い、目付50g/m2になるように各ロットのスパンレース不織布を作製した。その後、JIS L1096記載のフラジール法により通気度を測定した。
各ロットのスパンレース不織布の通気度を測定し、その3ロットの不織布通気度の値が全て80cc/cm2・s未満のものを、極細繊維が十分に発現し緻密であるため通気度が低くなったとして、合格(○)と判定した。
【0035】
実施例1
原料として、MFR14、285℃、シェアレート1000s-1における溶融粘度が709dPa・sのポリプロピレンと、285℃、シェアレート1000s-1における溶融粘度が1300dPa・sのポリエステルを準備した。なお、ポリプロピレン原料中の無機物の含有量は、カルシウム27ppm、アルミニウム32ppm、ナトリウム27ppmであった。
【0036】
これら原料を、孔数850H、孔径0.5mm、20分割型の紡糸口金(花弁部と非花弁部とがそれぞれ10セグメントからなりセグメント合計20である
図1に示すごとき分割型複合断面形状の繊維が得られる口金)を用い、吐出量580g/分、複合比55/45wt%(ポリプロピレン/ポリエステル))、紡糸温度285℃、紡糸速度865m/分の条件で溶融紡糸を行った。なお、ポリプロピレンが花弁形に配され、ポリエステルが非花弁形に配するようにした。
【0037】
得られた未延伸糸を収束し、60ktexのトウとし、延伸温度75℃、延伸倍率2.4倍の条件で熱延伸し、その後、130℃のヒートドラムに通して熱セットした、次いで、押し込み式クリンパーで機械捲縮を付与し、仕上げ油剤を繊維に付着させた後で、温度68℃の乾燥機にて熱処理を行い、繊維長38mmに切断し、繊度3.3dtexの分割型複合繊維を得た。得られた分割型複合繊維の捲縮数は13個/25mm、捲縮率は11%であり、ポリプロピレン中の無機物の含有量は、カルシウム27ppm、アルミニウム32ppm、ナトリウム27ppmであり、生産中に口金への無機物の堆積はほぼなかった。また、得られた分割型複合繊維のセグメント繊度、繊維表面に占めるポリプロピレンの面積率は表1に示す。
【0038】
得られた分割型複合繊維を使用し、カード機を用いてカーディングしてカードウェブを作製し、得られたカードウェブに高圧液体流処理を施し、その後、130℃、2分間の乾燥熱処理を行い、目付50g/m2のスパンレース不織布を得た。なお高圧液体流処理の条件は2MPa×1回、4MPa×1回、8MPa×3回とした。得られたスパンレース不織布の通気度の合否は表1に示す通りであった。
【0039】
実施例2
実施例1において、吐出量を440g/分とし、分割型複合繊維の単繊維繊度を2.5dtexとしたこと以外は実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0040】
実施例3
実施例1において、ポリプロピレンとポリエステルの複合比率を45/55wt%としたこと以外は、実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0041】
実施例4
実施例11において、ポリプロピレンとして、MFR:11、285℃、シェアレート1000s-1における溶融粘度が782dPa・sのポリプロピレンを用いたこと以外は実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0042】
比較例1
実施例1において、吐出量を140g/分とし、分割型複合繊維の単繊維繊度を0.8dtexとしたこと以外は、実施例1と同様に行おうとしたが、繊度を0.8dtexとするために吐出量を下げた影響により、紡糸性、延伸性が悪化し分割型複合繊維を得ることができなかった。
【0043】
比較例2
実施例1において、吐出量を1142g/分とし、分割型複合繊維の単繊維繊度を6.5dtexとしたこと以外は、実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0044】
比較例3
実施例1において、8分割型の紡糸口金(花弁部と非花弁部とがそれぞれ4セグメントからなりセグメント合計8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0045】
比較例4
実施例1において、40分割型の紡糸口金(花弁部と非花弁部とがそれぞれ20セグメントからなりセグメント合計40)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして行おうとしたが、セグメント合計数を40としたため、紡糸時において所望する分割形状を形成することが困難となり、紡糸性、延伸性が悪化し、分割型複合繊維を得ることができなかった。
【0046】
比較例5、6
実施例1において、ポリプロピレンとポリエステルの複合比率を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0047】
なお、比較例6においては、延伸後の熱セット温度を実施例1と同様の130℃としたところ、糸条が密着した状態になったため、110℃で熱セットした。
【0048】
比較例7
実施例1において、ポリプロピレン原料中の無機物含有量がカルシウム80ppm、アルミニウム63ppm、ナトリウム86ppmであるポリプロピレンを使用したこと以外は、実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0049】
比較例8、9
実施例1において、ポリプロピレンのMFRおよび285℃、シェアレート1000s-1における溶融粘度を表1に記載のものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして分割型複合繊維を得た。
【0050】
なお、比較例9は、ポリプロピレンのMFRが低く、285℃、シェアレート1000s-1における溶融粘度が高くなり過ぎたため、紡糸後の未延伸糸の伸度が低くなり過ぎるため、延伸工程において実施例1と同様の2.4倍もの高延伸倍率を掛けることができず、延伸することができなかった。よって、繊維の製造を中止した。
【0051】
表1に示す通り、実施例1~4で得られた分割型複合繊維は紡糸性、延伸性、熱収縮率、不織布の通気度いずれも良好であった。
【0052】
【表1】
比較例2は、単繊維繊度が6.5dtexとなり、また分割後の繊度が高くなったため、通気度が高くなり本発明が所望するものではなく、また、柔軟性やソフト性にも劣るものとなった。
【0053】
比較例3は、セグメント合計数を8としたため、分割後の繊度が大きく、通気度が高くなり、また、柔軟性やソフト性にも劣るものとなった。
【0054】
比較例5は、複合比率を20/80wt%としたため、ポリプロピレンの比率が小さい影響によって繊維表面にポリプロピレンの露出が無く、分割性能に劣るため、良好に分割されず、通気度が高くなり、柔軟性やソフト性にも劣り、不織布性能に劣る結果となった。
【0055】
比較例6は、複合比率を80/20wt%としたため、ポリプロピレンの比率が大きい影響による繊維表面にポリプロピレンが占める割合が高く、延伸後の熱セット温度を高くすることができず、熱収縮率の高い分割型複合繊維となった。
【0056】
比較例7は、ポリプロピレン中の無機物含有量が多いため、紡糸工程において、経時によりノズル孔に無機物が堆積しため、断面形状が崩れ、分割型複合繊維の分割性能が悪くなり、所望の極細繊維が発現されず、通気度が高くなり、また、柔軟性やソフト性にも劣り、不織布性能に劣る結果となった。また、得られた分割型複合繊維のポリプロピレン中の無機物の含有量は、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムの合計量が100ppmを超えていた。
【0057】
比較例8は、ポリプロピレンのMFRが高く、285℃、シェアレート1000s-1における溶融粘度が低くなり過ぎたため、所望の分割形状を形成できず、得られた分割型複合繊維の分割性能が悪くなり、通気度が高くなり、また、柔軟性やソフト性にも劣り、不織布性能に劣る結果となった。