(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017944
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】移動型X線撮影装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240201BHJP
【FI】
A61B6/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120930
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西来路 哲士
(72)【発明者】
【氏名】下平 隆史
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093EC04
4C093FB20
(57)【要約】
【課題】移動型X線撮影装置においてX線管を撮影位置に移動するポジショニング操作の向上に資する手段を提供する。
【解決手段】移動型X線撮影装置で撮影を行う際に行われるX線管のポジショニングにおいて、X線管を移動させるための水平機構、垂直機構及び回転機構などの各機構部に対し与えられる操作の、順序、操作タイミング、持続時間を記録する。記録した操作に係る情報を評価し、当該情報と共に提示する。記録の開始/終了は、操作者による開始ボタン/終了ボタンの操作で、或いは所定の操作をトリガーとして自動的に行う。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を含むX線発生部と、前記X線管を移動可能に支持し、複数の機構部を備えた支持機構と、操作者からの指令を受け付ける操作部と、前記X線発生部および前記支持機構を搭載する台車と、制御部と、を備え、
前記制御部が撮影条件を受け付けた後、前記台車が撮影位置に移動した後から撮影の開始までに各機構部に加えられた操作を、記録する記録部をさらに備えることを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記記録部は、前記各機構部に加えられた操作を、前記受け付けた撮影条件と紐づけて記録することを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記操作部は、前記記録部による記録の開始および終了の少なくとも一方の指定を受け付ける記録操作ボタンを備え、
前記記録部は、前記記録操作ボタンの操作をトリガーとして、記録の開始または終了を行うことを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記機構部は、前記X線管を支持するアームと、当該アームを着脱自在に固定するキャッチ部とを含み、
前記記録部は、前記キャッチ部から前記アームを外す操作が行われたことをトリガーとして記録を開始し、前記アームが前記キャッチ部に固定する操作が行われたことをトリガーとして記録を終了することを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記操作部は、X線の曝射が正しく行われなかったときに操作される写損ボタンを備え、
前記記録部は、前記写損ボタンが操作されたときに記録を停止し、その撮影における操作の記録を破棄することを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項6】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記記録部は、各機構部の操作の順序、操作量及び操作に要した時間の少なくとも一つを記録することを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項7】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記制御部は、前記記録部が記録した操作情報から、操作に要した総時間を算出する評価部を備えることを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項8】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記操作部は、撮影により生成したX線画像についての評価を受け付け、評価指標として提示することを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項9】
請求項1に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記記録部は、記録した操作情報を表示装置に表示させることを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項10】
請求項9に記載の移動型X線撮影装置であって、
前記制御部は、前記操作情報とともに、前記記録部が過去に記録した操作情報の過去データうち、前記記録部が受け付けた撮影条件と同じ又は近似する撮影条件の過去データを、前記表示装置に表示させることを特徴とする移動型X線撮影装置。
【請求項11】
ポジショニング支援のための移動型X線撮影装置の制御方法であって、
前記移動型X線撮影装置の操作部を介して撮影条件を受け付けるステップと、
前記移動型X線撮影装置が所定の位置に移動した後、X線照射を伴う撮影までの間に行われた操作を記録装置に記録するステップと、
前記記録装置に記録された操作を、操作に対する評価の指標及び受け付けた撮影条件とともに出力装置を介して提示するステップと、を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の移動型X線撮影装置の制御方法であって、
前記操作部を介して、操作者による記録の開始および終了の指示を受け付けるステップをさらに含み、
前記記録の開始および終了の指示に従い、記録の開始および終了を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載の移動型X線撮影装置の制御方法であって、
撮影の開始および終了に伴う、操作者によるX線管の操作を検知するステップをさらに含み、
前記X線管の操作の検知に従い、記録の開始および終了を行うことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象がいる場所(病室等)に移動して撮影を行う移動型X線撮影装置に係り、特に移動型X線撮影装置において、X線管及び検出器を検体対象に対し適切な位置に配置するポジシヨニング操作を支援するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動型X線撮影装置は、病院内を回診し、病室のベッドまで移動してX線撮影を行うための装置であり、X線を発生するX線発生装置や制御装置、充電式バッテリ等を移動台車に搭載したものである。この種の移動型X線撮影装置はX線管等のX線発生装置を任意の撮影位置に位置付けるために、X線発生装置を移動可能に支持する機構を備えている。このような機構として、具体的には、X線発生装置を水平方向に伸長可能に支持するとともに上下動可能に支持する支持機構、及び支柱の回転機構等があり、さらに、X線発生装置とそれ支持するアーム部とを回転可能な接続部で繋ぎ、接続部の伸展や屈曲により、X線発生装置を収納する構造等が備えられているものもある。
【0003】
移動型X線撮影装置は、このような機構により、移動時にはできるだけコンパクトな形態を保ち、撮影時には各機構を動作させて、X線発生装置が患者の撮影部位に対し適切な位置に位置づける。このポジショニング操作は、通常、撮影を行う技師や医師(以下、操作者という)により手動で行われる。
【0004】
ポジショニング操作では、上述したような複数の支持機構や回転機構をそれぞれ適切に動作させる必要があるが、これらの動きは複雑に絡み合っているため不慣れな操作者が適切なポジショニングを行うことは難しく、撮影までに多くの時間を要することとなり、被写体への負担も大きくなる。またポジショニングが適切に行われない場合には、所望の部位が適切に撮影範囲に含まれないなど撮影される画像の画質にも影響を与える。
【0005】
このようなポジショニング操作を支援する技術として、特許文献1には、ポジショニング操作のガイド表示を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるガイド表示は、操作者がX線発生装置の位置を変更する都度、移動可能な距離を表示するというものであり、この技術により不適切なポジショニングによる無効撮影を低減することができるが、この技術はポジショニング操作自体をガイドするものではない。ポジショニング操作は、被写体が置かれた場所や撮影部位、さらにはどの撮影部位をどのような角度で撮影するかなどの撮影手技によっても異なるため、複数の機構部を動かす順序などは操作者が手技に応じて、その都度を行う必要があり、技術の蓄積が難しく、熟練度の向上にはつながりにくい。また適切な位置にセットできたとしても、操作者によってはポジショニング操作に長い時間を要する可能性もあり、その場合、操作者及び患者ともに負担となる。
【0008】
本発明は、ポジショニング操作を行う操作者の熟練度の向上に資することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の移動型X線撮影装置は、ポジショニング操作中の操作者による各操作を記録し、その結果を提示する機能を備える。
【0010】
即ち本発明の移動型X線撮影装置は、X線管を含むX線発生部と、X線管を移動可能に支持し、複数の機構部を備えた支持機構と、操作者からの指令を受け付ける操作部と、X線発生部および支持機構を搭載する台車と、制御部と、を備え、さらに、制御部が撮影条件を受け付けた後、前記台車が撮影位置に移動した後から撮影の開始までに各機構部に加えられた操作を、記録する記録部を備える。
【0011】
また本発明の移動型X線撮影装置の制御方法は、ポジショニング支援のための制御方法であり、移動型X線撮影装置の操作部を介して撮影条件を受け付けるステップと、移動型X線撮影装置が所定の位置に移動した後、X線照射を伴う撮影までの間に行われた操作を記録装置に記録するステップと、記録装置に記録された操作を、操作に対する評価の指標及び受け付けた撮影条件とともに出力装置を介して提示するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、手技毎にポジショニングに要した操作をその順序や所要時間などとして記録し提示することで、操作者や医師は、提示された記録内容を活用して、短時間で適正なポジショニングを行うための操作技術の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】X線管及びX線絞り部の回転動作を説明する図
【
図3】機構部のセンサと制御ユニットの構成を示す図
【
図4】
図1の移動型X線撮影装置の移動時の姿勢を示す図
【
図5】実施形態1の制御部の構成を示す機能ブロック図
【
図9】実施形態2の制御部の構成を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の移動型X線撮影装置の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明が適用される移動型X線撮影装置(以下、単にX線撮影装置と略す)10の一実施形態を示す図である。このX線撮影装置10は、大きくわけてX線を発生するX線発生部110と、X線発生部を動かすための複数の機構部を有する支持機構120と、X線発生部110から発生し、被検体50を透過したX線を検出するX線検出器20からのX線信号を受け取り、X線画像を生成するX線画像処理部、及び、X線発生部110を制御する制御部133を含む制御ユニット130と、操作者が支持機構120の各機構部を操作したり、制御部133に対し撮影に必要な指令やデータを入力したりするための操作部140と、上述した各部を搭載する台車150を備える。
【0016】
台車150は車輪151を備えた台座152と、台座152の上に固定された筐体(本体)153とを備え、筐体153内に、機構部120及び台車150の駆動源121であるモータ、バッテリ、充電回路の他、前述の制御ユニット130などが収納されている。
【0017】
X線発生部110は、被検体50に照射するX線を発生させるX線管111、X線管111から照射されるX線照射領域を制限するX線絞り部112、X線管111に電力を供給する高電圧発生部115などを含む。
【0018】
支持機構120は、主たる機構として、X線発生部110(X線管111及びX線絞り部112)を支持するとともに床面に対して水平方向に移動させるアーム123と、アーム123を支持するとともに床面に対して鉛直方向に移動させる支柱部124と、を備え、アーム123を水平方向に伸縮させてX線管111の水平方向の位置を変更可能にする機構、アーム123を支柱部124に対し垂直方向に移動させる機構或いは支柱部124を中心として回転させる機構などの機構部を備える。機構部には、さらに、X線管111を図中矢印で示すようにアーム123の長軸と直交する水平軸に対し回転させる機構、
図2に示すように、垂直軸に対し回転させる機構及びX線絞り部112を水平軸に対し回転させる機構が含まれる。
【0019】
以下、支持機構120に含まれる各機構部を総称して機構部120という。これら機構部120及び台車150の操作は、手動で操作者が動かすことで行われる場合と、モータ等の電動を利用して行われる場合があり、後者の場合、操作者は各機構部に備えられた操作スイッチや操作部140を介して機構部120の操作を行うことができる。なお機構部120の機構としては、従来の移動型X線撮影装置に備えられた機構を採用することができ、例えば、特許文献1などに記載されているので、本明細書では詳細な説明は省略する。
【0020】
また上記した各機構部は単なる例示であって、本発明のX線撮影装置には、例示した機構以外の機構が備えられる場合や、例示した機構のいずれかが備えられていない場合も包含される。
【0021】
機構部120及び台車150は、その動き或いは動きにより決まる位置を検出するセンサが設けられており、センサが検出した各機構部の動きに相当する信号は動き検出センサ部125に送られる。
【0022】
センサとしては、エンコーダやポテンショメータ等の公知の位置センサが用いられ、例えば、
図3に示すように、X線管球の上下位置を検出する上下位置センサ125A、水平位置を検出する水平位置センサ125B、回転位置を検出する回転位置センサ125C、台車150の走行(有無、走行量)を検出する走行センサ125Dなどを含む。上下位置センサ125Aは、支柱部124にアーム123の垂直方向の位置を検出する。水平位置センサ125Bはアーム123の軸方向のX線管111の位置を検出する。回転位置センサ125Cは、支柱部124を軸とするアーム即ちX線管111の回転位置を検出する。
図3には示していないが、X線管111の水平軸に対する回転位置、垂直軸に対する回転位置、及びX線絞り112の回転位置を検出するセンサがある。動き検出センサ部125は、これら各センサが検出量をもとにX線管の移動量を検出し、制御部133に送る。
【0023】
制御部133は、撮影に伴う各部の制御などを行うとともに、機構部120の操作に伴って動き検出センサ部125が検出した動き量に基づいて、機構部120に対し与えられた操作に関する情報を取得し、その記録を行う。このため制御ユニット130には、
図3に示すように、記録部131が備えられ、制御部133は記録部131への記録の制御を行う。その詳細な説明は後述する。
【0024】
操作部140は、X線発生部110、制御部133、及び、台車150、場合により機構部120を動作させるために、操作者が操作を行う装置で、台車150の筐体(台車本体)153の上部など、操作者が操作しやすい場所に設置されている。また操作部140は、操作者が持ち運べる操作端末140Aを含んでもよい。
【0025】
操作部140には、X線発生部110の動作に関して操作者が操作する曝射ボタン、X線条件などの撮影条件を入力する条件設定部、制御部が行う記録に関して操作されるボタン(記録操作ボタン)などを備えることができる。また撮影後のX線画像や操作に必要なGUIなどを表示する表示部を備えていてもよい。具体的な操作部140の構成は、後述の実施形態において詳述する。
【0026】
このような構成のX線撮影装置10で、例えばX線検出器20がセットされたベッドに寝かせられ状態の被検体50の撮影を行う場合、まず、X線撮影装置10を台車150により、被検体50が居る病室などに移動させて、所定位置に配置した後、車輪151などに備えられたブレーキ(不図示)で固定する。
【0027】
X線撮影装置10の移動中は、
図4に示すように、アーム123は、X線管111が台車150の筐体153の上側に位置するように、支柱124を軸に回動した位置(待機位置)にあり、台車150の筐体153の上部(キャッチ部155)に着脱可能に固定されている。X線撮影装置10が所定位置に配置されると、操作者はアーム123を台車150の固定位置から解除し、その後、操作部140の操作によりX線管111を撮影位置に位置づける。この作業がポジショニングである。
【0028】
ポジショニングは、X線撮影装置10が配置された場所と被検体50との位置関係や、被検体の撮影する部位によって異なるが、典型的には、アーム123の回転及び伸縮(水平移動)操作によりX線管111を被検体50の真上に配置し、アーム123の垂直移動操作により、X線管111を撮影位置に接近させる。さらに、撮影部位との関係で位置の調整を行って、撮影に適した位置にX線管111を配置する。この間、必要に応じて台車位置を変更する場合もあり得る。こうしたポジショニングが完了した後、操作部140の曝射ボタンを操作することで撮影が行われる。
【0029】
前述したように、X線撮影では、このポジショニングを適切かつ迅速に行うことが求められるが、その巧拙は操作者に依存する。適切なポジショニングが行われないと診断に重要な部位を確実に捉えた画像が得られないし、またポジショニングの時間が長引くことは被検体の負担が増大する。本実施形態のX線撮影装置10は、上述のポジショニングを記録する機能を備えることで、操作者のポジショニングを評価し、またその後のガイドとして利用する。
【0030】
このため制御ユニット130には、
図3に示すように、X線撮影装置10が撮影位置に位置づけられ、撮影が終了するまでの間に、操作部140によって行われた機構部の動きを記録する記録装置として記録部131が備えられている。操作の記録は、操作を行った者(操作者)、撮影の際のX線条件などと紐づけることができる。このため制御部133は、さらに、X線条件や操作者に関する情報などを受け付ける受付部132を備えることができる。
【0031】
また制御部133は、記録した操作に関する情報を、操作中或いは操作後に表示装置に表示してもよい。表示装置は、X線撮像装置10とは独立した表示装置であってもよし、操作部140或いは操作端末140Aが表示部を備える場合には、その表示部であってもよい。
【0032】
操作者は、表示装置に表示された操作情報を確認することで、それが自身の操作情報であれば、その後のポジショニングに生かすことができ、また過去データの情報であれば、それをガイド或いは参考にして、効率的なポジショニングを行うことができる。
【0033】
なお本実施形態において、記録部131が記録した内容を表示装置に表示することは必須ではなく、記憶部(メモリ)に格納し、統計的なデータとして蓄積し、解析等を行うことも可能である。
【0034】
以下、ポジショニング操作の記録や開始や終了を制御する手法の具体的な実施形態を説明する。
【0035】
<実施形態1>
本実施形態は、操作部(操作端末)140に記録の開始ボタンと終了ボタンを設け、それらボタンを操作することでポジショニング操作を記録し、解析することが特徴である。
【0036】
本実施形態のX線撮影装置の構成を
図5に示す。図示するように、本実施形態のX線撮影装置は、
図5に示すように、制御ユニット130には、機構部の操作に関わる機能(四角で囲った機能)として、制御部133とポジショニング操作を記録する記録部131とを含み、制御部133は、動き検出センサ部125からの情報を受け付ける受付部132と、記録部131に記録された内容について評価を行う評価部137とを備える。操作部140は、曝射ボタン141の他に、記録部131による記録の開始と終了を指示する記録操作ボタン143を備える。記録部131は操作ボタンの操作をトリガーとして、受付部132が受け付けた操作の情報の記録を開始、或いは終了する。なお、図中、点線矢印で示すように、記録操作ボタン143の操作により、そのまま記録部131が記録を開始する態様もあり得る。
【0037】
本実施形態の操作部140の一例として、記録開始ボタンと記録終了ボタンとが設けられている操作端末140Aの構成例を
図6に示す。図示するように、操作端末140Aは、表示部145と、曝射ボタン141、X線条件を設定する条件設定部142(手技選択ボタン142A)、記録に関する操作を行う記録操作部(記録操作ボタン143:記録開始ボタン143A、記録終了ボタン143B)などを含む。なお、操作部140が備える操作ボタンとしては、曝射ボタン141、条件設定部142のボタン及び記録操作部143のボタンの他に、台車150を動かすための操作ボタンや、場合によりその他の機構部を操作するための操作ボタンがある場合もあるが、これらは、台車150に設けられた操作部140のみに設けてもよいし、操作端末140Aに設けてもよい。
【0038】
表示部145には、実際に操作された一連のポジショニングの結果が表示される。さらに、過去データのポジショニング例や、X線画像を表示してもよい。条件設定部142は、手技選択ボタン142Aを含む。手技選択ボタン142Aを操作することにより、例えば、複数の手技の選択肢がドロップダウン方式で表示され、操作者は表示された選択肢から所定の手技を選択することができる。或いは予め複数の手技に対応するボタンが用意され、いずれかを操作することで所望の手技を選択する構成としてもよい。手技選択することにより手技によって決まるX線条件(X線管から照射するX線の種類、X線照射量)が決まり、選択された手技に対応するX線条件が設定される。また設定されたX線条件は、記録部131に送られ、記録部131が記録するポジショニング操作に関する情報と紐づけられて記録される。
【0039】
次に本実施形態のX線撮影装置における記録処理の流れを、
図7を参照して説明する。ここでは操作端末140Aを用いて各種操作を行う場合を例にする。
【0040】
X線撮影装置10を撮影場所に移動した後、ポジショニングを開始する前に、操作者は、操作端末140Aの条件設定部142において、操作者の情報、例えば氏名やIDなどを入力するとともに(S1)、手技選択ボタン142Aを操作して手技を選択する(S2)。次いで記録開始ボタン143Aを操作する。
【0041】
制御部133は、この操作者の操作を受付部132により受付け、記録部131による記録を開始する(S3)。記録部131は、操作端末140Aを介して行われる各機構部及びX線発生部110の動作とその持続時間を記録する。具体的には、
図5に示したように、受付部132が動き検出センサ部125が受け取った各センサ(上下位置センサ、水平位置センサ、回転位置センサ、走行センサ)がそれぞれ検出した位置情報から、位置情報の変化が生じている時間、即ち各機構部の動作が継続している持続時間を受け付けると、記録部131はセンサ毎の持続時間として記録する。またX線曝射ボタン141が押下された場合には、その情報も受付部132を介して記録部131に渡され記録される。
【0042】
記録部131は、ポジショニングにより行われる一連の動作を、予め受け付けた操作者の情報(S1)及び選択された手技(S2)と紐づけて記録し、操作者による記録終了ボタン143Bの操作があるまで記録を継続する(S4)。
【0043】
記録終了ボタン143Bが操作されると(S5)、記録を終了し(S6)、制御部133は記録部131が記録した一連のポジショニング操作について、その記録内容を操作者情報、手技及び評価とともに表示部145に表示する(S7、S8)。評価は、代表的かつ簡便なものとして、ポジショニングに要した時間が挙げられ、その場合、評価部137は、操作が止まっている空白時間も含めたセンサ毎の操作の持続時間を合計し、評価指標として総時間を算出する。評価として、総時間以外に、例えばポジショニングの記録からX線管の軌跡や類似する操作の繰り返し回数など抽出し、評価指標を算出してもよい。ただし、繰り返し回数が多い場合やX線管が目的位置に移動するまでの軌跡が長距離である場合は、結果的に総時間が長くなるので、評価の指標としては総時間で足りると言える。
【0044】
表示部145に表示される表示例を
図8に示す。この表示例では、記録部131が記録する各機構部の各動作をチャートで示し、撮影の手技とともに、最終的にX線曝射が行われたときまでに行われたポジショニングの工程(順序とそれぞれの所要時間)と、評価値として、ポジショニングに要した総時間を表示している。工程は、機構部支柱部124及びアーム123の動作(上下動作、水平動作、回転動作)、台車150の動作(走行動作)、及びX線管(管球)111とX線絞り部112の動作、及び曝射について、それぞれが操作されたタイミングや持続時間が時間軸上に沿って表示されている。
【0045】
評価部137が算出したポジショニングに要した総時間は、ポジショニングの巧拙を時間で評価した場合、そのまま操作者に対する評価となる。操作者は、ポジショニングで行われた各動作のチャートと、ポジショニングに要した時間とを確認することで、自身の操作に、無駄な操作や不要な試行錯誤がなかったかなど動作の順序の改善点を確認することができ、その後に同様の手技を行う場合の指標とすることができる。なお、
図8には示していないが、過去のデータが蓄積されている場合には、同様の手技において平均的なポジショニング時間を基準値として表示してもよい。このような表示は、自身のポジショニング操作改善のためのモチベーション向上につながる。
【0046】
評価(S7)及び表示(S8)は、操作者がX線撮影を終了後、その場で行ってもよいが、事後的に行ってもよい。評価及び表示を事後的に行う場合には、記録部131が保持する記録結果及び評価結果を、操作部140を介して行われる読み出す操作に応じて、表示部145或いは表示装置に表示させる。記録結果及び評価結果は、制御部133内の記録部131(メモリ)ではなく、制御部133に接続可能な外部記憶装置(データベースやクラウドなどを含む)に保存することも可能で、複数の手技についてそれぞれ行われた多数のポジショニング記録をこれら外部記憶装置に保存し統計的に処理することも可能である。
【0047】
本実施形態によれば、ポジショニング操作を記録し、その間行われた操作をチャートとして表示することにより、操作者による操作時間の長短のみならず、どの操作にどのように時間がかかったか、どのような操作順序でポジショニングが行われたかなどを事後的に評価することができ、それらの情報の蓄積により、操作者の教育や熟練度向上に寄与することができる。特に、各機構部の動作毎にその持続時間や操作された順序がチャートの形で示されるので、操作の無駄や手際が可視化され、課題が明確化する。また本実施形態によれば、ポジショニングに要した時間を評価結果として表示することで、ポジショニングの客観的な評価を行うことができる。
【0048】
また手技によってポジショニングにおいて特に配慮すべき操作などが異なるが、手技毎にポジショニング情報を取得しておくことで、手技毎の解析が可能で、手技毎に適切な評価を行うことができる。
【0049】
さらに本実施形態によれば、記録の開始と終了を、それぞれ記録開始ボタン及び記録終了ボタンの操作をトリガーとして行うので、自律的にポジショニングを管理することができ、無駄な記録をなくし、効率的にメモリを使用できる。
【0050】
<実施形態2>
本実施形態は、記録開始ボタン及び記録終了ボタンを用いることなく、操作者の所定の操作をトリガーとして記録の開始、終了を行うことが特徴である。記録の開始終了を制御する操作者の操作として、例えば、X線発生部110を待機位置から移動させる操作及びX線発生部110が待機位置に戻す操作が挙げられ、これらが行われた時点をトリガーとして記録の開始/終了を制御する。
【0051】
図9に本実施形態の制御部に係る構成例を示す。
図9において、
図5と同じ機能を持つ要素は同じ符号で示し、重複する説明は省略する。
図9に示すように、本実施形態では、実施形態1の操作部に備えられた記録開始ボタン及び記録終了ボタンは省略され、キャッチ部155(
図4)に備えられたセンサ156からの検知信号が制御部133(記録部131)に入力される。以下、実施形態1と異なる点を中心に本実施形態を説明する。なお、図中、点線矢印で示すように、キャッチセンサ156からの検知信号が、そのままに記録部131に送られ、記録部131が記録を開始する態様もあり得る。
【0052】
図4に示したように、一般に、移動型のX線撮影装置では、台車を移動させている最中は、アーム123の回動位置は、X線管111及びX線絞り部112が本体部153の上部にある位置となっており、アーム123は本体部153の上部に設けられたキャッチ部155の上部に載っている。
【0053】
キャッチ部155には、アーム123の有無を検知するセンサ(不図示)が備えられており、アーム123がキャッチ部155から外れたとき及びアーム123がキャッチ部155に戻されたときにそれぞれ検知信号を発し、記録部131に送る。なお記録部131に直接送るのではなく、動き検出センサ部125に送り、受付部132を介して記録部131に送る構成としてもよい。
【0054】
このような構成における本実施形態のX線撮影装置のポジショニング時の制御部(記録部)の動作の流れを、
図10に示す。
図10において、
図7と同じ処理は同じ符号で示し、重複する説明は省略する。
【0055】
操作者の情報入力(S1)及び手技選択(S2)を行った後、アーム123の操作によってアーム123がキャッチ部155から外れると(S31)、記録部131は記録を開始し(S4)、曝射ボタン141が押下されてX線管111による曝射即ち撮影が行われるまで記録を継続する。曝射ボタン141が押下された後、アーム123が操作されてキャッチ部155に戻された場合には(S52)、記録を終了する(S6)。一方、曝射ボタン141が押下されても、アーム部123が操作されない場合は、記録を継続する(S4へ戻る)。
【0056】
記録終了後に評価(S7)と表示(S8)を行うことは実施形態1と同様である。
【0057】
本実施形態によれば、操作者が記録開始ボタンや記録終了ボタンの操作を忘れていても、X線管が待機状態か否かに応じて自動的に記録の開始と終了を行うことができるので、操作者は記録操作に気を取られることなく撮影に専念でき、また記録漏れを防ぐことができる。
【0058】
また実施形態1では、操作者が記録の開始と終了を決定しているため、曝射回数に関わりなく記録が行われるが、本実施形態によれば、複数の曝射が行われる場合に、曝射と曝射との間の無駄な記録を回避し、効率的な記録(メモリ使用)を行うことができる。
【0059】
<実施形態3>
本実施形態では、写損ボタンが行われた際の処理を追加し、記録の無駄を回避する。写損は、曝射を行ったもののX線検出器20の配置角度やグリッドのセットが不適切であった場合や被写体に予期せぬ動きがあった場合など、場合によりその撮影データ(画像データ)を破棄し、撮影し直す場合の処理であり、
図11に示すように、140操作部(操作端末140A)に写損ボタン144が設けられる。この写損ボタン144が押下されると、制御部133は写損であることを表示部145等に表示する構成としてもよいし、操作者からの指示に従いX線画像データを破棄する構成としてもよい。
【0060】
本実施形態では、記録部131についても、写損ボタン144の操作に応じた処理を行う。
図11では、操作部140に、記録操作部143として記録開始ボタン143A、記録終了ボタン143Bが備えられている場合を示しているが、キャッチ部155の検知信号をトリガーとして記録を行ってもよく、その場合は、記録操作部143のボタン類は省略される。即ち本実施形態記における記録の開始終了は、実施形態1或いは実施形態2のいずれの構成(
図5又は
図9)を採用してもよい。以下、実施形態1、2と異なる点を中心に本実施形態の処理を説明する。
【0061】
【0062】
操作者の情報入力(S1)及び手技選択(S2)を行った後、記録開始ボタン143Aが押下されると(S3)、記録部131は記録を開始する(S4)。その後、写損ボタン144が押下されることなく、記録終了ボタン143Bが押下されたならば(S6)、記録を終了し、実施形態1と同様に、評価と表示を行う(S7、S8)。一方、記録終了ボタン143Bが押される前に、写損ボタン144が操作された場合は(S55)、新たに記録を開始する(S4に戻る)。それまで記録部131に記録された情報は残してもよいし、必要に応じて削除してもよい。
【0063】
なお記録の開始終了(S3、S6)を実施形態2と同様に、キャッチ部155の検知信号の有無で制御する場合は、実施形態2と同様に、複数回の曝射の有無で、記録の一時停止や終了を制御する構成を採用してもよい。
【0064】
本実施形態によれば、写損の場合の記録を廃棄することで、無駄な記録を防ぐことができ、有用なポジショニング情報のみを記録することが可能となる。
【0065】
<実施形態4>
実施形態1では、ポジショニング操作の評価は、ポジショニングに要した総時間で行うものとしたが、本実施形態では、総時間に加えて或いは総時間に代えて、X線画像でポジショニングの適否を評価する。
【0066】
X線画像による評価は、X線画像処理部135が生成したX線画像をもとに行う構成としてもよいし、操作者の指示により評価を行う構成としてもよい。後者の場合、例えば、
図13に示すように、記録操作部143に画質評価ボタン143Cを追加する。なお
図13では、写損ボタンを省略しているが、
図11と同様に写損ボタンを追加してもよい。
【0067】
本実施形態の制御部133の処理の流れを
図14に示す。
図14に示すように、撮影後の入力から記録を開始して、記録を終了し、総時間の評価(総時間)を行うことは、
図7に示す実施形態と同じであるが、本実施形態では、画質評価ボタン143Cが操作されると(S9)、表示部145に評価対象であるポジショニングで得られたX線画像が表示部或いは表示装置に表示されるとともに、画像の評価結果(例えば、A、B、C)を評価者が選択するためのGUIが表示される。評価者は、表示されたX線画像を見て、例えば、撮影部位が画像の中心に所望の大きさで映し出されているかを確認する。ポジショニングが適切でないと、撮影部位が画面上で偏っていたり、一部欠落したり、またX線検出器との角度が悪いために画像に歪みが生じるなどの診断画像として不十分な画像となる。評価者は、このようなポジショニングに起因する画像の劣化を判断し、評価結果を選択する。
【0068】
これにより操作者が行ったポジショニングの巧拙を、事後的に操作者以外の第三者、例えば医者や経験を積んだ読影技師などが評価し、ポジショニングの改善につなげることができる。
【0069】
制御部133は、評価者による評価結果を追加して、記録したポジショニング操作のチャートに表示する。
図15に表示例を示す。この例では画質の欄が追加され、画質「A」が表示される場合を示しているが、評価結果の選択のみならず、必要なコメントなどを受け付けるようにしてもよく、その場合には、選択した評価結果とともに、評価者のコメントが表示される。
【0070】
なお
図15ではX線管111とX線絞り部112の回転について図示を省略しているが、これら機構部の操作についても記録し表示してもよいことは、実施形態1(
図8の表示例)と同様である。
【0071】
本実施形態によれば、総時間という客観的な評価に加え、医者や読影技師等による実務的な評価結果を得て、表示することにより、さらに、今後のポジショニングに役立つ情報が得られる。
【0072】
以上、本発明の移動型X線撮影装置のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の主旨は、ポジショニングの記録を行う機能を追加したことであり、記録する情報の態様や記録した情報の表示方法或いは使用方法は、これら実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。
【0073】
例えば、移動型X線撮影装置とは別の処理装置或いは記憶媒体などに、手技毎に行われた多数のポジショニング操作を記録し、これら蓄積された記録から、手技毎の標準的なポジショニング総時間を算出し提示したり、X線画像やその他の評価項目を通して最適と判断されたポジショニング操作を、実際に操作を行う際に提示したり、することも可能である。或いはそのような過去データを経験の浅い操作者が学習する際の参照として利用することも可能である。これにより、ポジショニング技術のさらなる向上を図ることができる。
【0074】
また記録した情報を、機構部毎に操作タイミングと操作持続時間とを示すチャートで提示する以外に、或いはチャートに加えてX線管の操作開始位置から操作終了時位置までをグラフィックに示すなど提示の仕方も種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10:移動型X線撮影装置、20:X線検出器、50:被検体、110:X線発生部、111:X線管、112:X線絞り部、115:高電圧発生部、120:支持機構(機構部)、123:支持部(アーム部)、124:支柱部、125:動き検出センサ部、130:制御ユニット、131:記録部、132:受付部、133:制御部、135:X線画像処理部、137:評価部、140:操作部、140A:操作端末、141:曝射ボタン、142:条件設定部、143:記録操作ボタン(記録操作部)、143A:記録開始ボタン、143B:記録終了ボタン、143C:画質評価ボタン、144:写損ボタン、145:表示部、150:台車、151:車輪、152:台座、153:筐体(本体)