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特開2024-179459樹脂発泡体の製造方法、ポリエチレン樹脂発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179459
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】樹脂発泡体の製造方法、ポリエチレン樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098319
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AB05
4F074AC21
4F074AD10
4F074AD12
4F074AD17
4F074AG04
4F074AG20
4F074BA13
4F074BA28
4F074BB22
4F074BB25
4F074CA24
4F074CA29
4F074CC06X
4F074CC06Z
4F074CC28Z
4F074CC48X
4F074DA02
4F074DA04
4F074DA08
(57)【要約】
【課題】製造が容易であり、耐久に優れる樹脂発泡体の製造方法、ポリエチレン樹脂発泡体を提供できる。
【解決手段】樹脂発泡体1の製造方法は、ポリエチレンを含む樹脂、シランカップリング剤、及び発泡剤を含む原料を混練して原料組成物とし、原料組成物に電子線を照射して被照射原料とし、被照射原料を型内で発泡させて発泡体とし、発泡体を水に曝す。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを含む樹脂、シランカップリング剤、及び発泡剤を含む原料を混練して原料組成物とし、
前記原料組成物に電子線を照射して被照射原料とし、
前記被照射原料を型内で発泡させて発泡体とし、
前記発泡体を水に曝す、樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
JIS K 6796に準じて測定した前記樹脂発泡体のゲル分率が、15%以上である、請求項1に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
JIS K 6767に準じて測定した前記樹脂発泡体の圧縮永久歪みが、10%以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項4】
JIS K 7199-1999に準じて測定した前記被照射原料のせん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、500Pa・s以上7500Pa・s以下である、請求項1に記載の樹脂発泡体の製造方法。
【請求項5】
電子線架橋及びシラノール架橋された、ポリエチレン樹脂発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂発泡体の製造方法、ポリエチレン樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発泡性粒子を物理架橋させ、金型内で発泡させて得られる発泡体が開示されている。物理架橋された発泡性粒子は、ポリオレフィン樹脂などの発泡性粒子に電子線を照射して得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-521182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造が容易であり、耐久に優れる樹脂発泡体が求められている。
本開示は、製造が容易であり、耐久に優れる樹脂発泡体の製造方法、ポリエチレン樹脂発泡体を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕ポリエチレンを含む樹脂、シランカップリング剤、及び発泡剤を含む原料を混練して原料組成物とし、
前記原料組成物に電子線を照射して被照射原料とし、
前記被照射原料を型内で発泡させて発泡体とし、
前記発泡体を水に曝す、樹脂発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、製造が容易であり、耐久に優れる樹脂発泡体の製造方法、ポリエチレン樹脂発泡体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】シート状の原料組成物に電子線を照射する工程を説明する説明図である。
図2】被照射原料を金型内に入れる工程を説明する説明図である。
図3】金型内で被照射原料を発泡させる工程を説明する概略図である。
図4】発泡体を水に曝して得られる樹脂発泡体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕JIS K 6796に準じて測定した前記樹脂発泡体のゲル分率が、15%以上である、〔1〕に記載の樹脂発泡体の製造方法。
〔3〕JIS K 6767に準じて測定した前記樹脂発泡体の圧縮永久歪みが、10%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂発泡体の製造方法。
〔4〕JIS K 7199-1999に準じて測定した前記被照射原料のせん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度が、500Pa・s以上7500Pa・s以下である、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の樹脂発泡体の製造方法。
〔5〕電子線架橋及びシラノール架橋された、ポリエチレン樹脂発泡体。
【0009】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0010】
1.樹脂発泡体
本実施形態の樹脂発泡体1(図4参照)は、電子線架橋及びシラノール架橋されたポリエチレン樹脂発泡体である。樹脂発泡体1は、ポリエチレンを含む樹脂、シランカップリング剤、及び発泡剤を含む原料を用いて製造される。樹脂発泡体1は、原料を混練させた原料組成物に電子線を照射して(電子線架橋させて)被照射原料とし、被照射原料を型内で発泡させて発泡体とし、発泡体を水に曝して(シラノール架橋させて)得られる。原料には、さらに酸化防止剤、及び触媒が含まれることが好ましい。
【0011】
(1)樹脂発泡体1の原料
(1.1)ポリエチレン
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、エチレンと、炭素数3~10のα-オレフィン、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、共役ジエン、及び非共役ジエンから選ばれる1種以上のコモノマーと、の共重合体が挙げられる。炭素数3~10のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが例示される。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルが例示される。不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが例示される。
これらの中でも、分子鎖の架橋および発泡時の高温における溶融張力の観点から、低密度ポリエチレンであることが好ましい。
ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されない。ポリエチレンのMFRは、成形性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、1.0g/10分以上であることがさらに好ましい。ポリエチレンのMFRは、成形性の観点から、50g/10分以下であることが好ましく、30g/10分以下であることがより好ましく、10g/10分以下であることがさらに好ましい。これらの観点から、ポリエチレンのMFRは、0.1g/10分以上50g/10分以下であることが好ましく、0.5g/10分以上30g/10分以下であることがより好ましく、1.0g/10分以上10g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0012】
ポリエチレンについて、示差走査熱量計(DSC)を用いて200℃で測定した酸化誘導時間(OIT)は、10分以下が好ましく、8分以下がより好ましく、5分以下がさらに好ましい。ポリエチレンについて、示差走査熱量計を用いて200℃で測定した酸化誘導時間は、0.5分以上が好ましく、0.8分以上がより好ましく、1.0分以上がさらに好ましい。したがって、ポリエチレンについて、示差走査熱量計を用いて200℃で測定した酸化誘導時間は、0.5分以上10分以下が好ましく、0.8分以上8分以下がより好ましく、1.0分以上10分以下がさらに好ましい。ここでいう酸化誘導時間は、以下のようにして測定できる。窒素気流中(50mL/min)で、30℃から200℃まで昇温速度20℃/minで昇温する。200℃で8分間維持した後、200℃の酸素気流中(50mL/min)に暴露するときに、試料(ポリエチレン)の暴露開始から重量変化が開始するまでの時間(酸素吸収による発熱ピークの立ち上がりまでの時間)を酸化誘導時間として測定できる。
【0013】
(1.2)シランカップリング剤
シランカップリング剤は、架橋剤として用いられる。シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有するものが好ましい。アルコキシシリル基を有するシランカップリング剤としては、ビニル基を有するアルコキシシリル化合物、エポキシ基を有するアルコキシシリル化合物、アクリル基又はメタクリル基を有するアルコキシシリル化合物等が挙げられ、1種類又は2種類上併用することができる。具体的なビニル基を有するアルコキシシリル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0014】
シランカップリング剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。シランカップリング剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して5.0質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、1.5質量部以下がさらに好ましい。したがって、シランカップリング剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3.0質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上1.5質量部以下がさらに好ましい。
【0015】
(1.3)発泡剤
発泡剤は、加熱により分解してガスを発生する熱分解型のものが好適に用いられ、特に制限されるものではない。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルフォニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p-t-ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の一種又は二種以上が用いられる。特にアゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好適である。
【0016】
発泡剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して1.0質量部以上が好ましく、5.0質量部以上がより好ましく、10.0質量部以上がさらに好ましい。発泡剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して40.0質量部以下が好ましく、30.0質量部以下がより好ましく、20.0質量部以下がさらに好ましい。したがって、発泡剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して1.0質量部以上40.0質量部以下が好ましく、5.0質量部以上30.0質量部以下がより好ましく、10.0質量部以上20.0質量部以下がさらに好ましい。
【0017】
(1.4)酸化防止剤
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などを挙げることができ、特に、分子量が、500以上が好ましく、600以上がより好ましく、700以上がさらに好ましく、800以上が特に好ましい。また、酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0018】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Pentaerythritol tetrakis[3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate])、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Octadecyl 3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)、4-メチル-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートがより好ましい。
【0019】
ヒンダードアミン系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシラート(Tetrakis(1,2,2,6,6-pentamethyl-4-piperidyl) butane-1,2,3,4-tetracarboxylate)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ポリ((6-((1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ)-s-テトラジン-2,4-ジジル)(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)))、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートなどを挙げられる。
【0020】
酸化防止剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。酸化防止剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して1.5質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下がさらに好ましい。したがって、酸化防止剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下がより好ましく、0.3質量部以上0.8質量部以下がさらに好ましい。
【0021】
(1.5)触媒
原料には、シラン架橋を促進する触媒が含まれることが好ましい。触媒としては、例えば、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、オレイン酸錫、オクタン酸鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛、オクタン酸コバルト、ナフテン酸鉛、カブリル酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0022】
触媒の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.03質量部以上がさらに好ましい。触媒の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.15質量部以下が好ましく、0.10質量部以下がより好ましく、0.80質量部以下がさらに好ましい。したがって、触媒の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.01質量部以上0.15質量部以下が好ましく、0.02質量部以上0.10質量部以下がより好ましく、0.03質量部以上0.80質量部以下がさらに好ましい。
【0023】
(1.6)その他の成分
組成物は、必要に応じて、発泡助剤、内添離型剤、表面張力調整剤、充填剤(炭酸カルシウム等)、顔料、可塑剤、機能付与剤(例えば、難燃剤)等を含んでいてもよい。
【0024】
発泡助剤は特に限定されない。発泡助剤として、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩、尿素及びその誘導体等を挙げることができる。発泡助剤は、これらを単独または複数種類組み合わせて使用することができる。
【0025】
発泡助剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.03質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。発泡助剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して20.0質量部以下が好ましく、15.0質量部以下がより好ましく、10.0質量部以下がさらに好ましい。したがって、発泡助剤の量は、ポリエチレン100質量部に対して0.01質量部以上20.0質量部以下が好ましく、0.03質量部以上15.0質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上10.0質量部以下がさらに好ましい。
【0026】
(2)樹脂発泡体1の構成
(2.1)架橋構造
樹脂発泡体1には、架橋構造が形成されている。樹脂発泡体1がシート状の場合には、樹脂発泡体1における表層部又は樹脂発泡体1の全体に架橋構造が形成されている。樹脂発泡体1は、後述する各工程A~D、すなわち、原料組成物を得る工程A、電子線を照射して被照射原料を得る工程B、発泡させて発泡体を得る工程Cの後に、発泡体を水に曝す工程Dによって得られる。
【0027】
工程Bにおいて、電子線を照射して被照射原料に架橋構造を形成することが好ましい。このとき、工程Aで得られた原料組成物がシート状の場合には、そのシートの少なくとも一方の面、好ましくは両面に電子線が照射され、シートの少なくとも一方の面、好ましくは両面が照射面であることが好ましい。原料組成物のシートの厚さに応じた加速電圧で電子線を照射することで、シートにおける表層部又はシート内部に適度な架橋構造が形成され、樹脂発泡体1を得る工程Cにおいて適切に発泡することができる。工程Cにおいて、発泡体は被照射原料を加熱等により発泡させて得られる。工程Dにおいて、工程Cで得られた発泡体を水に曝すことでシラノール架橋されることが好ましい。
【0028】
(2.2)樹脂発泡体1のゲル分率
樹脂発泡体1のゲル分率は、耐久性を向上する観点から、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。樹脂発泡体1のゲル分率は、ワレや亀裂等を生じにくくする観点から、70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。これらの観点から、測定試料のゲル分率は、15%以上70%以下が好ましく、20%以上60%以下がより好ましく、25%以上50%以下がさらに好ましい。
ここでいう樹脂発泡体のゲル分率は、JIS K 6796に基づいて測定できる。
【0029】
(2.3)樹脂発泡体1の圧縮永久歪み
樹脂発泡体1の圧縮永久歪み(C/S)は、適度な復元力を確保する観点から、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。樹脂発泡体1の圧縮永久歪みの下限は、特に限定されないが、通常0.1%以上である。
ここでいう樹脂発泡体1の圧縮永久歪みは、JIS K 6767に基づいて測定できる。圧縮解放後における樹脂発泡体1の厚さの測定は、圧縮解放した後、24時間経過した時点で行う。
【0030】
(2.4)樹脂発泡体1の25%圧縮応力
樹脂発泡体1の25%圧縮応力は、80kPa以下が好ましく、75kPa以下がより好ましく、70kPa以下がさらに好ましい。樹脂発泡体1の25%圧縮応力の下限は、30kPa以上が好ましく、40kPa以上がより好ましく、50kPa以上がさらに好ましい。
ここでいう樹脂発泡体1の25%圧縮応力は、JIS K 6767に基づいて測定できる。
【0031】
(2.5)被照射原料の溶融粘度
被照射原料(原料組成物に電子線を照射したもの)の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度は、発泡成形性の観点から、500Pa・s以上が好ましく、600Pa・s以上が好ましく、700Pa・s以上がより好ましい。被照射原料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度は、樹脂発泡体1にワレや亀裂等を生じにくくする観点から、7500Pa・s以下であり、5000Pa・s以下が好ましく、4000Pa・s以下がさらに好ましい。これらの観点から、被照射原料の、せん断速度122sec-1、200℃における溶融粘度は、500Pa・s以上7500Pa・s以下が好ましく、600Pa・s以上5000Pa・s以下が好ましく、700Pa・s以上4000Pa・s以下がより好ましい。溶融粘度の測定方法は、JIS K 7199:1999「プラスチックーキャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法」に従ってすることができる。
【0032】
(2.6)被照射原料の密度
被照射原料(原料組成物に電子線を照射したもの)の密度は、900kg/m以上が好ましく、1000kg/m以上がより好ましく、1100kg/m以上がさらに好ましい。被照射原料の密度は、1300kg/m以下が好ましく、1250kg/m以下がより好ましく、1200kg/m以下がさらに好ましい。したがって、被照射原料の密度は、900kg/m以上1300kg/m以下が好ましく、1000kg/m以上1250kg/m以下がより好ましく、1100kg/m以上1200kg/m以下がさらに好ましい。被照射原料の密度は、JIS K 6268に基づいて測定できる。
【0033】
(2.7)樹脂発泡体1の密度
樹脂発泡体1の密度は、成形性の観点から、30kg/m以上が好ましく、35kg/m以上がより好ましく、40kg/m以上がさらに好ましい。樹脂発泡体1の密度は、軽量性の観点から、800kg/m以下が好ましく、500kg/m以下がより好ましく、150kg/m以下がさらに好ましく、100kg/m以下が特に好ましい。これらの観点から、樹脂発泡体1の密度は、30kg/m以上800kg/m以下が好ましく、35kg/m以上500kg/m以下がより好ましく、40kg/m以上150kg/m以下が更に好ましい。樹脂発泡体1の密度は、JIS K 6268に基づいて測定できる。
【0034】
2.樹脂発泡体1の製造方法
樹脂発泡体1の製造方法は、ポリエチレンを含む樹脂、シランカップリング剤、及び発泡剤を含む原料を混錬して原料組成物とし、原料組成物に電子線を照射して被照射原料とし、被照射原料を型内で発泡させて発泡体とし、発泡体を水に曝す。
【0035】
樹脂発泡体1の製造方法は、例えば、以下の工程A-Dを含む。
工程A:ポリエチレン、シランカップリング剤、発泡剤、及び必要に応じて配合されるその他添加剤(酸化防止剤、触媒など)をミル(例えばラボプラストミル等)で溶融混錬し、熱プレス機を用いてシート状の原料組成物を得る工程
工程B:工程Aで得た原料組成物に電子線を照射して、架橋して被照射原料を得る工程
工程C:成形用型内に工程Bで得た被照射原料をシート状、ペレット状等の所定形状にして配置し、成形用型の内部で加熱して発泡させることで、発泡体を形成する工程
工程D:工程Cで得た発泡体を水に曝して樹脂発泡体1を形成する工程
【0036】
工程Bにおいて、工程Aで得た原料組成物がシート状である場合には、少なくとも一方の面から、好ましくは両面側から電子線を少なくとも1回ずつ照射すればよい。
【0037】
樹脂発泡体1の形成において照射する電子線照射線量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、170kGy以下が好ましく、150kGy以下がより好ましく、130kGy以下がさらに好ましく、110kGy以下が特に好ましい。樹脂発泡体1の形成において照射する電子線照射線量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、1kGy以上が好ましく、3kGy以上がより好ましく、5kGy以上がさらに好ましく、10kGy以上が特に好ましい。したがって、樹脂発泡体1の形成において照射する電子線照射線量は、1kGy以上170kGy以下が好ましく、3kGy以上150kGy以下がより好ましく、5kGy以上130kGy以下がさらに好ましく、10kGy以上110kGy以下が特に好ましい。加速電圧は、発泡前のシート厚みに応じて調整する。電子線の照射による架橋の進行は、組成物の組成に影響されるため、通常はゲル分率(架橋度)を測定しながら照射量を調整する。
【0038】
工程Cにおいて、被照射原料を成形用型内で発泡させる際に、被照射原料の融点よりも高い温度(例えば200℃)で加熱して発泡成形する。
【0039】
工程Dにおいて、発泡体を水に曝すこととは、発泡体を水に浸漬すること、発泡体を水蒸気の雰囲気に曝すこと等である。
【0040】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。
【0041】
3.本実施形態の効果
本実施形態の樹脂発泡体1は、発泡性が良好である。
本実施形態の樹脂発泡体1の製造方法は、樹脂架橋度をコントロールすることで、圧縮成形することなく、簡便な方法で、樹脂発泡体1を製造できる。
本実施形態の樹脂発泡体1の製造方法は、耐久性、特に耐熱性に優れる樹脂発泡体1を得ることができる。
【実施例0042】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0043】
1.樹脂発泡体の作製
表1,2に示す配合割合で、実施例及び比較例の樹脂発泡体を作製した。表1における樹脂発泡体の原料の詳細を以下に示す。表1において、配合割合はポリエチレンを100質量部とした場合の配合割合(質量部)を表す。
【0044】
【表1】

【0045】
(1)樹脂発泡体の原料
・ポリエチレン…5321(ハンファ・ソリューションズ社製)、密度:921kg/m、MFR:3.0g/10分
・シランカップリング剤…ビニルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)、品番:KBM1003
・触媒…ジオクチル錫ジラウレート(三菱ケミカル社製)、品番:LZ082
・発泡剤…アゾジカルボンアミド(ADCA)(大塚化学社製)、品番:VI-50L3ST
・発泡助剤1…酸化亜鉛1種(白水化学工業社製)
・発泡助剤2…ステアリン酸亜鉛(淡南化学工業社製)、品番:ジンクステアレートN
・酸化防止剤…ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](ADEKA社製)、品番:AO-60
【0046】
(2)実施例及び比較例の樹脂発泡体の作製
各樹脂発泡体は、具体的には以下のように作製した。
(2.1)実施例1
表1に記載の配合割合でポリエチレンに対してシランカップリング剤、触媒、発泡剤、発泡助剤1、発泡助剤2及び酸化防止剤を添加して原料を得た。
原料の架橋、発泡、及び水に曝す工程は、実施形態の「2.樹脂発泡体1の製造方法」に記載の方法で行った。原料をラボプラストミルで溶融混錬して原料組成物を得た後、熱プレス機を用いて120℃の加熱で厚さ2mmのシート状の原料組成物(組成物10という、図1参照)にした。
【0047】
図1に示すように、電子線照射装置20(照射線量:25kGy)によって組成物10に電子線を照射して、組成物10を架橋して被照射原料30(図2参照)を得た。電子線の照射は、組成物10に対して両面照射した。
【0048】
被照射原料30を、図2に示すように、150mm×200mm×10mmの金型40(成形用型)内に入れた。金型40を密閉して加圧条件下、200℃で8分間加熱して、図3に示すように、発泡するとともに成形した。その後、水冷により金型40を冷却した後、金型40を開けることで、発泡体50を得た。発泡体50は、金型40内のキャビティ容積が満たされた150mm×200mm×10mmの形状(金型40と同じ形状)になった。
【0049】
発泡体50を水に曝して、シラノール架橋させ、図4の樹脂発泡体1を形成した。具体的には、発泡体50を90℃の恒温の水槽に24時間浸漬させた後、乾燥させて樹脂発泡体1を得た。
【0050】
(2.2)比較例1
比較例1では、発泡体を水に曝していない点以外は実施例1と同様の方法で、樹脂発泡体(すなわち発泡体)を作製した。比較例1では、実施例1と同様の方法で組成物10に対して電子線の照射を行った。
【0051】
(2.3)比較例2
比較例2では、原料にシランカップリング剤、及び触媒が含まれない点、発泡体を水に曝していない点以外は実施例1と同様の方法で、樹脂発泡体(すなわち発泡体)を作製した。比較例2では、実施例1と同様の方法で組成物10に対して電子線の照射を行った。
【0052】
(2.4)比較例3
比較例3では、電子線の照射を行っていない点、発泡体を水に曝す工程を行っていない点以外は実施例1と同様の方法を用いた。なお、表1において、「発泡後に水に曝す工程」の欄の「-」は、発泡体が得られなかったために未実施であることを示している。また、表1において、「密度」「25%圧縮応力」「圧縮永久歪み」の欄の「-」は、発泡体が得られなかったために測定が未実施であることを示している。
【0053】
2.評価方法
(1)発泡前の評価
(1.1)発泡前密度
被照射原料(原料組成物に電子線を照射したもの)の密度(kg/m)は、JIS K 6268に準じて測定した。
【0054】
(1.2)溶融粘度
被照射原料の溶融粘度は、200℃の測定温度下で、キャピログラフを用い、せん断速度122sec-1で測定した。
【0055】
(2)樹脂発泡体の評価
(2.1)発泡性(外観)
樹脂発泡体の外観の評価は、目視により確認し、以下の基準とした。
A :型に対して同程度の寸法まで膨らんでおり、外観が良好である。
B :未発泡、又は外観が不良である。
【0056】
(2.2)密度
樹脂発泡体の密度(kg/m)は、JIS K 6268に準じて測定した。
【0057】
(2.3)25%圧縮応力
樹脂発泡体の25%圧縮応力(kPa)は、JIS K 6767に準じて測定した。
【0058】
(2.4)圧縮永久歪み
樹脂発泡体の圧縮永久歪み(%)は、JIS K 6767に準じて測定した。なお、圧縮解放後における樹脂発泡体の厚さの測定は、圧縮解放した後、24時間経過した時点で行った。
【0059】
(2.5)ゲル分率
樹脂発泡体のゲル分率(%)は、JIS K 6796に準じて測定した。
【0060】
3.結果
結果を表1に併記する。
実施例1では、発泡性(外観)が良好である樹脂発泡体が得られた。比較例3では、発泡が不良であった。比較例3では、原料組成物を電子線架橋することなく発泡工程を行っているため、発泡が不良であったと考えられる。
【0061】
実施例1では、樹脂発泡体のゲル分率が34%であった。比較例1,2では、樹脂発泡体のゲル分率が1%であった。このように比較例1,2に比べて実施例1の樹脂発泡体のゲル分率が高くなったのは、発泡体を水に曝すことで(シラノール架橋させることで)、架橋度が高くなったためと考えられる。
【0062】
実施例1では、樹脂発泡体の圧縮永久歪みが1%であった。比較例1,2では、樹脂発泡体の圧縮永久歪みがそれぞれ67%、66%であった。このように比較例1,2に比べて実施例1の樹脂発泡体の圧縮永久歪みが低くなったのは、発泡体を水に曝すことで(シラノール架橋させることで)、架橋度が高くなったためと考えられる。
【0063】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、原料組成物に対する電子線の照射(電子線架橋)と、発泡体を水に曝す工程(シラノール架橋)とにより、樹脂発泡体の架橋度をコントロールすることで、圧縮成形することなく、簡便な方法で、優れた性能の樹脂発泡体を製造できた。すなわち、発泡性(外観)が良好で、耐久性に優れる樹脂発泡体を得ることができた。特に、ゲル分率が比較的高く、耐熱性に優れる樹脂発泡体を得ることができた。
【0064】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1: 樹脂発泡体
10: シート状の原料組成物(組成物)
20: 電子線照射装置
30: 被照射原
40: 金型(成形用型)
50: 発泡体
図1
図2
図3
図4