(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179466
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20241219BHJP
【FI】
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098336
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 英嗣
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC18
5H125CD03
5H125DD08
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】作業者が損傷した車両に対して適切な処置を行うことができるようにする。
【解決手段】車両1は、バッテリ10が搭載された車両であって、バッテリ1への衝撃を検知する第1センサ(Gセンサ60)と、バッテリ1の短絡または温度上昇を検知する第2センサ(電圧センサ21、電流センサ22または温度センサ23)と、バッテリ19におけるガスの発生を検知する第3センサ(ガスセンサ24)と、DCM70とを備える。DCM70は、バッテリ10への衝撃が検知された場合に、バッテリ10が発熱する可能性と、バッテリ10の外部にガスが放出される可能性とを車両1の外部に通知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリが搭載された車両であって、
前記バッテリへの衝撃を検知する第1センサと、
前記バッテリの短絡または温度上昇を検知する第2センサと、
前記バッテリにおけるガスの発生を検知する第3センサと、
前記バッテリへの衝撃が検知された場合に、前記バッテリが発熱する可能性と、前記バッテリの外部に前記ガスが放出される可能性とを前記車両の外部に通知する通信装置とを備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2013-136266号公報(特許文献1)は、電動車両の消火構造を開示する。この構造は、路上などに電動車両が残されるような種々の状況でも、外部からの消火剤の供給で、バッテリの全体を浸漬可能にすることを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリが搭載された車両が衝突等により損傷した場合には、消防士、レスキュー隊などの作業者が車両の処置を行う可能性がある。このような処置に際しては、どのような対応が必要かを作業者が判断可能であることが望ましい。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、作業者が損傷した車両に対して適切な処置を行うことができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る車両は、バッテリが搭載された車両である。車両は、バッテリへの衝撃を検知する第1センサと、バッテリの短絡または温度上昇を検知する第2センサと、バッテリにおけるガスの発生を検知する第3センサと、通信装置とを備える。通信装置は、バッテリへの衝撃が検知された場合に、バッテリが発熱する可能性と、バッテリの外部にガスが放出される可能性とを車両の外部に通知する。
【0007】
上記構成においては、バッテリへの衝撃が検知された場合に、バッテリが発熱する可能性と、バッテリの外部にガスが放出される可能性とが車両の外部に通知される。作業者は、この通知に基づいて車両の状況を把握可能であるため、損傷した車両に対して適切な処置を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業者が損傷した車両に対して適切な処置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る車両の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る通知処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0011】
[実施の形態]
<車両構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る車両の全体構成の一例を示す図である。車両1は、この例では電気自動車である。しかし、車両1は、バッテリが搭載された電動車両であれば、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などであってもよい。
【0012】
車両1は、バッテリ10と、監視ユニット20と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)30と、電力制御ユニット(PCU:Power Control Unit)40と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)50と、Gセンサ60と、DCM(Digital Communication Module)70と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)100とを備える。
【0013】
バッテリ10は、複数のセルを含む組電池である。各セルは、典型的にはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池である。各セルは全固体電池であってもよい。バッテリ10は、MG50を駆動するための電力を蓄え、PCU40を通じてMG50へ電力を供給する。また、バッテリ10は、MG50の発電時にPCU40を通じて発電電力を受けて充電される。
【0014】
監視ユニット20は、電圧センサ21と、電流センサ22と、温度センサ23と、ガスセンサ24とを含む。電圧センサ21は、バッテリ10(より詳細にはバッテリに含まれる各セル)の電圧Vを検出する。電流センサ22は、バッテリ10に入出力される電流Iを検出する。温度センサ23は、バッテリ10(より詳細にはバッテリに含まれる、いずれかのセル)の温度Tを検出する。ガスセンサ24は、バッテリ10の内部に設けられ、バッテリ10から発生したガスを検知する。各センサは、その検出値/検知結果をECU100に出力する。なお、電圧センサ21、電流センサ22および温度センサ23のうちの少なくとも1つが本開示に係る「第2センサ」に相当する。ガスセンサ24が本開示に係る「第3センサ」に相当する。
【0015】
SMR30は、バッテリ10とPCU40とを結ぶ電力線に電気的に接続されている。SMR30は、ECU100からの制御指令に応答して、バッテリ10とPCU40との間での電力の供給と遮断とを切り替える。
【0016】
PCU40は、ECU100からの制御指令に従って、バッテリ10とMG50との間で双方向の電力変換を実行する。PCU40は、たとえば、バッテリ10の直流電圧を昇圧するコンバータと、そのコンバータからの直流電力を交流電力に変換してMG50を駆動するインバータ(いずれも図示せず)とを含む。
【0017】
MG50は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機である。MG50は、バッテリ10からの電力を受けて駆動され、MG50の駆動力は駆動軸を介して駆動輪に伝達される。一方、車両の制動時または下り斜面での加速度低減時には、MG50は、発電機として動作して回生発電を行う。MG50により発電された電力は、PCU40を介してバッテリ10に充電される。
【0018】
Gセンサ60は、車両1(バッテリ10を含む)への衝撃を検知するように構成された加速度センサである。Gセンサ60は、その検知結果をECU100に出力する。なお、Gセンサ60は、本開示に係る「第1センサ」に相当する。
【0019】
DCM70は、ECU100が車外の機器(他の車両、サーバなど)との双方向通信が可能に構成された通信モジュールである。DCM70は、たとえば、車両緊急通報システム(eCall)を利用する機能を有する。なお、DCM70は、本開示に係る「通信装置」に相当する。
【0020】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit))などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリと、各種信号を入出力するための入出力ポート(いずれも図示せず)とを含む。ECU100は、監視ユニット20の各センサから受ける信号ならびにメモリに記憶されたプログラムおよびマップに基づいて車両1を制御する。
【0021】
<車外通知>
車両1が衝突等により損傷した場合には、消防士、レスキュー隊などの作業者が車両1の処置(移動、収容など)を行う可能性がある。このような処置に際しては、どのような対応が必要かを作業者が判断可能であることが望ましい。
【0022】
そこで、本実施の形態においては、バッテリ10への衝撃が検知された場合に、バッテリ10が発熱する可能性と、バッテリ10の外部にガスが放出される可能性とをDCM70経由で車両1の外部に通知する。この通知に基づき、作業者が車両の状況を把握できるため、作業者が適切な対応(事前準備、安全確保など)をとることが可能になる。
【0023】
<処理フロー>
図2は、本実施の形態に係る通知処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、予め定められた条件の成立時(たとえば予め定められた周期ごと)に実行される。各ステップは、ECU100によるソフトウェア処理により実現されるが、ECU100内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0024】
ECU100は、車両1の異常診断機能として、内部短絡感知ダイアグとガス検知ダイアグとを有する。
【0025】
内部短絡感知ダイアグは、正常時はオフであり、バッテリ10への衝撃、バッテリ10の劣化等に起因して生じるバッテリ10の内部短絡が感知された場合にオンされる。ECU100は、内部短絡が発生しているか否かを、たとえば、電圧センサ21による電圧Vの検出値および/または電流センサ22による電流Iの検出値に基づいて判定する。10の劣化等に起因して生じるバッテリ10の内部短絡が感知された場合にオンされる。ECU100は、内部短絡が発生しているか否かを、温度センサ23による温度Tの検出値(すなわちバッテリ10の温度上昇)に基づいて判定してもよい。
【0026】
ガス検知ダイアグは、正常時はオフであり、バッテリ10の内部短絡、過放電等に起因してバッテリ10から発生するガスが検知された場合にオンされる。ECU10ーは、ガスが発生しているか否かを、バッテリ10の内部に設けられたガスセンサ24による検知結果に基づいて判定する。
【0027】
S1において、ECU100は、Gセンサ60によりバッテリ10の衝撃が検知されたかどうかを判定する。衝撃が検知されていない場合(S1においてNO)、ECU100は処理を終了する。衝撃が検知されると(S1においてYES)、ECU100は処理をS2に進める。
【0028】
S2において、ECU100は、内部短絡感知ダイアグがオンであるかオフであるかを判定する。内部短絡感知ダイアグがオンである場合(S2においてON)、ECU100は、バッテリ10が発熱する可能性があると判定する(S3)。一方、内部短絡感知ダイアグがオフである場合(S2においてOFF)、ECU100は、バッテリ10が発熱する可能性はないと判定する(S4)。その後、ECU100は処理をS5に進める。
【0029】
S5において、ECU100は、ガス検知ダイアグがオンであるかオフであるかを判定する。ガス検知ダイアグがオンである場合(S5においてON)、ECU100は、バッテリ10から車外にガスが放出される可能性があると判定する(S6)。一方、ガス検知ダイアグがオフである場合(S5においてOFF)、ECU100は、バッテリ10から車外にガスが放出される可能性はないと判定する(S7)。その後、ECU100は処理をS8に進める。
【0030】
S8において、ECU100は、S3,S4,S6,S7の処理による判定結果を車外に通知するように、DCM70を制御する。より具体的には、ECU100は、eCallを用いて当該通知を実現し得る。これにより、作業者は、たとえば、通知を受けたサーバの表示画面(図示せず)または音声出力から、バッテリ10が発熱する可能性の有無と、車外にガスが放出される可能性の有無とを確認できる。よって、作業者が車両1に対して適切な処置を行うことが可能になる。
【0031】
以上のように、本実施の形態においては、バッテリ10への衝撃が検知された場合に、DCM70によるeCallなどの仕組みを用いて、バッテリ10が発熱する可能性と、バッテリ10の外部にガスが放出される可能性とが車両1の外部に通知される。作業者は、この通知に基づいて車両1の状況を把握し、それにより、事前準備、安全確保などに関する適切な処理を行うことができる。
【0032】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0033】
1 車両、10 バッテリ、20 監視ユニット、21 電圧センサ群、22 電流センサ、23 温度センサ、24 ガスセンサ、30 SMR、40 PCU、50 MG、60 Gセンサ、70 DCM、100 ECU。