IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-蓄電デバイス 図1
  • 特開-蓄電デバイス 図2
  • 特開-蓄電デバイス 図3
  • 特開-蓄電デバイス 図4
  • 特開-蓄電デバイス 図5
  • 特開-蓄電デバイス 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179467
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/176 20210101AFI20241219BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20241219BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20241219BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20241219BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20241219BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M50/176
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/188
H01M50/564
H01M50/55 101
H01G11/80
H01G11/74
H01M50/588
H01M50/591
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098339
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】横山 喜紀
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 一生
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB06
5E078EA03
5E078EA06
5E078EA09
5E078EA11
5E078HA05
5E078HA12
5E078KA04
5E078KA06
5H011AA09
5H011AA13
5H011BB04
5H011DD01
5H011DD10
5H011FF03
5H011FF04
5H011JJ02
5H011KK01
5H043AA04
5H043AA11
5H043AA13
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043CA13
5H043CA14
5H043DA09
5H043HA25D
5H043HA31D
5H043JA02D
5H043LA02D
(57)【要約】
【課題】安全性が好適に向上された蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】ここで開示される蓄電デバイスは、正極および負極を有する電極体と、開口部を有し、電極体を収容するケースと、端子装着孔を有し、開口部を封口する封口板14と、一端がケースの内部で電極体と電気的に接続され、他端が端子装着孔に挿通されて封口板14の外側に露出する電極端子と、封口板14の表面であって、開口部を封口した状態でケースの外側にある外表面14Aと、電極端子とを絶縁する樹脂製の絶縁部材50と、を備える。封口板14と電極端子と絶縁部材50とがインサート成形されており、封口板14は、封口板14の外表面14A側において絶縁部材50との境界に溝部14tを有しており、溝部14tは、電極端子の全周に亘って設けられている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する電極体と、
開口部を有し、前記電極体を収容するケースと、
端子装着孔を有し、前記開口部を封口する封口板と、
一端が前記ケースの内部で前記電極体と電気的に接続され、他端が前記端子装着孔に挿通されて前記封口板の外側に露出する電極端子と、
前記封口板の表面であって、前記開口部を封口した状態で前記ケースの外側にある外表面と、前記電極端子とを絶縁する樹脂製の絶縁部材と、を備え、
前記封口板と前記電極端子と前記絶縁部材とがインサート成形されており、
前記封口板は、該封口板の外表面側において前記絶縁部材との境界部分に溝部を有しており、
前記溝部は、前記電極端子の全周に亘って設けられている、蓄電デバイス。
【請求項2】
前記溝部は、溝幅をXmm、溝深さをYmmとしたときに、溝幅Xと溝深さYとの合計が1mm以上である、請求項1に記載の蓄電デバイス。
【請求項3】
前記溝深さYが0.1mm以上である、請求項2に記載の蓄電デバイス。
【請求項4】
前記封口板は、該封口板と前記絶縁部材との境界部分の少なくとも一部に粗面化処理部を有している、請求項1または2に記載の蓄電デバイス。
【請求項5】
前記電極端子は、該電極端子と前記絶縁部材との境界部分の少なくとも一部に粗面化処理部を有している、請求項1または2に記載の蓄電デバイス。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池やリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタを包含するいわゆる蓄電デバイスは、パソコンや携帯端末等のポータブル電源のほか、BEV(電気自動車)、HEV(ハイブリッド自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド自動車)等の車両駆動用電源として普及している。
【0003】
この種の蓄電デバイスの一例として、封口板と電極端子と絶縁部材とが予めインサート成形によって一体化された部材(以下「封口板アッセンブリ」という。)に、所定形状の電極体を接続したものを外装体に収容した蓄電デバイスが挙げられる。かかる蓄電デバイスでは、電極体を外装体に収容した後、該外装体の開口部分と封口板とを溶接接合することによって製造され得る。また、封口板アッセンブリは、端子装着孔に電極端子を挿通させ、金型にセットした状態で溶融した樹脂を流し込み、冷却させることにより製造される。例えば、特許文献1には、一体成形された部材を用いて製造された密閉型の蓄電デバイスの一例(リチウムイオン二次電池)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-086813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが検討した結果によれば、インサート成形の際に電極端子や封口板等の各部材を金型にセットすると、部品公差に起因するわずかな隙間が生じる。溶融樹脂は、このようなわずかな隙間にも入り込みやすく、意図しない場所に漏れ出して冷却後に樹脂バリ(単に「バリ」ともいう。)が発生する。特に、電極端子と封口板の端子装着孔との間では、溶融樹脂が意図しない場所に漏れ出しやすく、金型で電極端子等を固定したとしても広い範囲にバリが発生することを見出した。このようなバリが存在すると、封口板と外装体との溶接時にバリが焦げ、さらには絶縁部材が焦げる虞がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安全性が好適に向上した蓄電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される蓄電デバイスは、正極および負極を有する電極体と、開口部を有し、上記電極体を収容するケースと、端子装着孔を有し、上記開口部を封口する封口板と、一端が上記ケースの内部で上記電極体と電気的に接続され、他端が上記端子装着孔に挿通されて上記封口板の外側に露出する電極端子と、上記封口板の表面であって、上記開口部を封口した状態で上記ケースの外側にある外表面と、上記電極端子とを絶縁する樹脂製の絶縁部材と、を備える。上記封口板と上記電極端子と上記絶縁部材とがインサート成形されており、上記封口板は、該封口板の外表面側において上記絶縁部材との境界部分に溝部を有しており、上記溝部は、上記電極端子の全周に亘って設けられている。
【0008】
かかる構成によれば、封口板の溝部を除く外表面にバリが生じることを抑制することができる。これにより、絶縁部材が焦げることを好適に抑制することができ、より安全性の高い蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る電池を模式的に示す部分断面図である。
図2図2は、図1の分解斜視図である。
図3図3は、図1の封口板の模式的な平面図である。
図4図4は、負極端子の近傍の模式的な断面図である。
図5図5は、負極端子の近傍を示す斜視図である。
図6図6は、一実施形態に係る射出成形工程の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、ここに開示される技術を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と、当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することができる。また、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号Xは「蓄電デバイスの短辺方向」を示し、符号Yは「蓄電デバイスの長辺方向」を示し、符号Zは「蓄電デバイスの高さ方向」を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、蓄電デバイス100の設置形態を何ら限定するものではない。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味するものとする。
【0011】
本明細書において「蓄電デバイス」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能なデバイス全般をいう。蓄電デバイスは、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池と、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ等のキャパシタと、を包含する概念である。
【0012】
図1は、蓄電デバイス100の部分断面図である。図2は、蓄電デバイス100の模式的な分解斜視図である。図1および図2に示すように、蓄電デバイス100は、ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、絶縁部材50とを備えている。正極端子30および/または負極端子40は電極端子の一例である。図示は省略するが、蓄電デバイス100は、ここではさらに電解液を備えている。蓄電デバイス100は、二次電池であることが好ましく、例えばリチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池であることがより好ましい。
【0013】
ケース10は、外装体12と封口板14とを備えている。外装体12および封口板14は、ケース10を構成するケース部材の一例である。ケース10は、ここでは扁平な直方体形状(角型)の外形を有する。ケース10は、例えば、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば溶接接合)されることによって、一体化されている。外装体12および封口板14は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金によって形成されている。
【0014】
外装体12は、電極体20と電解液とを収容する筐体である。外装体12は、上面に開口部12hを有する有底かつ角型の容器である。開口部12hは、略矩形状である。図1および図2に示すように、外装体12は、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口部12hと対向している。
【0015】
図3は、封口板14の模式的な平面図である。封口板14は、外装体12の開口部12hを封口するプレート状の部材である。封口板14は、図3に示すように、平面視において略矩形状である。封口板の大きさは、所望する電池容量などに応じて適宜変更することができるため、特に限定されるものではない。一例として封口板14の短辺方向Xの長さは、10mm以上50mm以下程度(好ましくは20mm以上40mm以下)であってもよく、封口板14の長辺方向Yの長さは100mm以上450mm以下程度(好ましくは120mm以上400mm以下)であってもよい。また、封口板14の厚み(上下方向Zの長さ)は、0.3mm以上2mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.5mm以下であってもよい。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。図2に示すように、封口板14は、外部側を向き開口部12hを封口した状態でケース10の外側にある外表面14Aと、蓄電デバイス100の内部側を向き、電極体20と対向する内表面14Bと、を有している。また、封口板14は、外表面14Aと内表面14Bとを貫通する端子装着孔18、19を有している(図1参照)。端子装着孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部に設けられている。ここでは、端子装着孔18は、正極端子30用であり、端子装着孔19は負極端子40用である。封口板14には、ガス排出弁15と、電解液を注入するための注液孔16と、が設けられている。ガス排出弁15は、ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、ケース10内のガスを外部に排出するように構成された薄肉部である。注液孔16は、封止部材17により封止されている。
【0016】
ケース10には、上記したように電極体20とともに、電解液が収容され得る。電解液としては、従来公知の電池において使用されているものを特に制限なく使用できる。一例として、非水系溶媒に支持塩を溶解させた非水電解液を使用できる。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0017】
図2に示すように、蓄電デバイス100は、封口板アッセンブリ60を備えている。封口板アッセンブリ60は、封口板14に、電極端子(正極端子30および負極端子40)と、絶縁部材50とがインサート成形(一体成形)で組付けられたアッセンブリ部品である。電極端子は、それぞれ、絶縁部材50によって封口板14に強固に固定されている。これにより、電極端子は、かしめ加工されることなく封口板14に組付けられている。また、電極端子は、絶縁部材50によって封口板14と直接接触することなく固定されている。封口板14および電極端子が絶縁部材50に密着することにより、端子装着孔18、19が絶縁部材50により封止されている。すなわち、電極端子は、絶縁部材50によって移動不能に封口板14に固定されている。
【0018】
図1に示すように、電極体20は、外装体12の内部に収容されている。電極体20は、例えば、図示されない絶縁フィルムなどで覆われた状態で、外装体12の内部に収容されている。電極体20は、ここでは、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とが、2枚の帯状のセパレータシート70を介して絶縁された状態で積層され、巻回軸を中心として長辺方向に巻回された巻回電極体である。ただし、電極体20は、矩形状の正極シートと矩形状の負極シートとが矩形状のセパレータシートを介して交互に積層された積層型電極体であってもよい。あるいは、複数の正極シートと複数の負極シートを、つづら折り状に折り返されたセパレータシートに挟み込むことにより構成されるつづら折り状の積層型電極体であってもよい。
【0019】
正極シート22は、帯状の正極集電体22cと、正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aと、を有する(図1参照)。正極シート22を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなることが好ましい。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。なお、正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。
【0020】
負極シート24は、帯状の負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する(図1参照)。負極シート24を構成する各部材には、一般的な電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極集電体24cは、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属から構成されることが好ましい。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。なお、負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。
【0021】
セパレータシート70は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータシート70は、例えば、多孔性の樹脂基材で構成されている。樹脂基材としては、例えば、ポリエチレン(PE)や、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース等の樹脂からなるシート(フィルム)が例示される。セパレータシート70は、単層構造であってもよく、性質や性状(厚みや空孔率等)の異なる2種以上の多孔性樹脂シートが積層された構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。また、セパレータシート70は、その表面にセラミック粒子等により構成された耐熱層(Heat Resistant Layer:HRL層)を備えていてもよい。
【0022】
図1に示すように、外装体12の内部に収容された電極体20は、正極集電体22cの一端が蓄電デバイス100の長辺方向Yの左端付近となるように配置され、負極集電体24cの一端が蓄電デバイス100の長辺方向Yの右端付近となるように配置される。また、正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(図1の左端部)に取り付けられている。負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(図1の右端部)に取り付けられている。蓄電デバイス100においては、正極端子30および負極端子40は、一端がケース10の内部で上記したように電極体20と電気的に接続され、他端が端子装着孔18、19に挿通されて封口板14の外側に露出している。なお、正極端子30は、導電性に優れる金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されていることが好ましい。また、負極端子40は、導電性に優れる金属、例えば銅または銅合金で形成されていることが好ましい。
【0023】
図4は、負極端子の近傍の模式的な断面図である。図2および図4に示すように、負極端子40は、外部接続部41と、台座部42と、電極体接続部43と、を有している。負極端子40は、外部接続部41と台座部42との間に図示されない軸部を有していてもよい。以下の説明においては、電極端子として負極端子40を、絶縁部材として負極端子40側の絶縁部材50を例にして説明するが、かかる説明は、ここに開示される技術の適用対象を負極端子側の構造に限定することを意図したものではない。すなわち、ここに開示される技術は、以下で説明する負極端子40と略同等の構成を有する正極端子を備えた形態を包含する。
【0024】
図4に示すように、外部接続部41は、端子装着孔19に挿通可能な大きさに構成されている。外部接続部41の上端部は、ケース10の外側に露出するように配置されている。外部接続部41は、台座部42の上方に設けられている。台座部42は、ここでは板状に形成されている。台座部42は、ケース10の内部に配置されている。台座部42の外形は、端子装着孔19よりも大きく構成されている。電極体接続部43は、ケース10の内部に配置されている。電極体接続部43は、台座部42の一端から下方に向けて延びている。電極体接続部43の端部は、ケース10の内部で電極体20(より詳細には負極シート24)と接続されている。なお、図4に示す例では、外部接続部41が端子装着孔19を挿通可能な大きさに構成されていたが、電極端子の構成はこれに限定されない。例えば、電極端子は、電極体接続部43および台座部42が端子装着孔19を挿通可能な大きさに構成されていてもよい。
【0025】
絶縁部材50は、封口板14と正極端子30および負極端子40との間に配置されており、封口板14と正極端子30および負極端子40との導通を防止する。絶縁部材50は、樹脂材料を主成分として構成される。樹脂材料としては、例えばパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素化樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、脂肪族ポリアミド等が挙げられる。なかでも、絶縁部材50は、PPSを主成分として構成されていることが好ましい。絶縁部材50には、上記したPFA、PPS等の樹脂材料の他に、無機フィラー等が添加されてもよい。無機フィラーとしては、絶縁性を有する無機酸化物やガラスを用いることができる。具体的に、無機フィラーとしては、アルミナ、マグネシア、シリカ、チタニア等が挙げられる。なお、「AはBを主成分として構成される」とは、Aを構成する成分のうち、重量基準でBが最大成分であることを意味する。
【0026】
絶縁部材50は、図4に示すように、筒状部51と、フランジ部52と、を有している。かかる筒状部51とフランジ部52とは、一体に形成されている。筒状部51は、外部接続部41と端子装着孔19との間に位置している。筒状部51は、負極端子40と端子装着孔19とを絶縁している。筒状部51の上端部は、ケース10の外部に露出している。フランジ部52は、筒状部51から、封口板14の内表面14Bに沿って水平方向に延びている。フランジ部52は、封口板14の内表面14Bと台座部42とを絶縁している。フランジ部52の外形は、台座部42の外形よりも大きく構成されている。
【0027】
図5は、負極端子40の周辺を拡大した斜視図である。図3図5に示すように、ここに開示される蓄電デバイス100では、封口板14の外表面側において、絶縁部材50との境界部分14Nに溝部14tを有している。溝部14tは、電極端子(正極端子30および負極端子40)の全周に亘って設けられている。かかる構成によれば、より安全性の高い蓄電デバイス100を提供することができる。詳しくは後述するが、インサート成形は、各部材を金型にセットし、溶融した樹脂を流し込むことにより実施される。このとき、各部材の間には部品公差に起因するわずかな隙間が存在する。溶融樹脂は、このようなわずかな隙間にも入り込みやすい。そして、意図しない場所に漏れ出して、冷却後に樹脂バリ(単に「バリ」ともいう。)が発生する。特に、電極端子と封口板14の端子装着孔18、19との間では、溶融樹脂が意図しない場所に漏れ出しやすく、金型で電極端子等を固定したとしても広い範囲にバリが発生し得る。このようなバリが存在すると、封口板14と外装体12との溶接時にバリが焦げ、さらには絶縁部材50が焦げる虞がある。そこで、ここに開示される蓄電デバイス100では、上記したように封口板14が溝部14tを有している。かかる溝部14tを設けることにより、溶融樹脂が流れ込む余地があり、溶融樹脂が溝部14tを超えて封口板14の外表面14Aに広がることを抑制することができる。これにより、インサート成形後に、封口板14の外表面14Aの広い範囲にバリが生じることが抑制される。かかる構成によれば、絶縁部材50が焦げることを抑制することができ、より安全性の高い蓄電デバイス100を提供することができる。
【0028】
溝部14tは、溶融樹脂が流れ込んだとしても、当該溝部14tを超えて封口板14の外表面14Aにバリが生じないように構成されていればよい。溝部14tは、封口板14の外表面14A側に位置している。溝部14tは、封口板14の外表面14Aから内表面14Bに向けて窪んだ凹部である。溝部14tは、ここでは、断面が矩形状である。溝部14tの側壁は、ここでは、溝部14tの底面に対して垂直である。ただし、溝部14tの断面の形状は多角形状や半円状であってもよい。
【0029】
溝部14tは、平面視において、封口板14と絶縁部材50との境界部分14Nに沿って、略環状に連続して形成されている。溝部14tは、図5に示すように電極端子(ここでは負極端子40)の全周に亘って略矩形状に形成されている。これにより、電極端子と端子装着孔19との間から溶融樹脂が漏れ出して、意図しない位置にバリが発生することを抑制できる。溝部14tは、電極端子の中心を基準として略均等に設けられていることが好ましい。
【0030】
特に限定されないが、溝部14tは、当該溝部14tの溝幅をXmm、溝部の溝深さをYmmとしたときに、溝幅Xと溝深さYとの合計が1mm以上となるように構成されることが好ましい。すなわち、溝部14tの断面形状は、式:(X+Y)≧1;を満たすように構成されていることが好ましい。これにより、溶融樹脂が漏れ出たとしても溝部14tを超えることがなく、封口板14の外表面14Aにバリが生じることを抑制する。溝幅Xと溝深さYとの合計は、例えば3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であってもよい。これにより、封口板14の強度が十分に確保される。
【0031】
溝部14tの溝深さYが所定の深さを有することにより、溶融樹脂が漏れ出したとしても好適に収容することができる。特に限定されないが、溝部14tの溝深さYは、0.1mm以上であることが好ましい。本発明者らが検討した結果によれば、封口板14の厚み公差は0.1mm未満である。このため、溝深さYを0.1mm以上とすることにより、溶融樹脂が溝部14tを超えて封口板14の外表面14Aに漏れ出ることを十分に抑制することができる。特に、後述するような突起部を有する金型を用いてインサート成形を実施することにより、溶融樹脂が溝部14tからはみ出すことを好適に抑制することができる。溝部14tの溝深さYの上限は、特に限定されるものではないが、封口板14の厚みtの1/2以下であることが好ましく、1/3以下であってもよい。より具体的には、1mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であってもよく、0.5mm以下であってもよい。なお、溝深さYとは、溝部14tの上端から下端までの上下方向Zの長さのことである。
【0032】
溝部14tの溝幅Xが所定の長さを有することにより、封口板14の外表面14Aに樹脂が漏れ出ることを抑制することができる。溝幅Xは、例えば0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であってもよい。これにより、溶融樹脂を収容するスペースを十分に確保することができる。一方で、溝部14tが広くなりすぎる場合には、封口板14の強度が低下することや、電極端子と封口板14との密着強度が低下する虞がある。かかる観点からは溝幅Xは2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましい。なお、溝幅Xは、短辺方向Xの長さおよび長辺方向Yの長さである。
【0033】
好適な一態様では、封口板14の外表面14A(より詳細には、溝部14tを除く外表面14A)には、絶縁部材50が配置されていない。これにより、溶接接合等の際に絶縁部材50が焦げることを好適に抑制することができる。溝部14tには、絶縁部材50が配置されていてもよいし、配置されていなくてもよい。好ましくは、図4に示すように、溝部14tには絶縁部材50が配置されていないとよい。例えば、後述する突起部を有した金型を用いてインサート成形を実施することにより、溝部14tに絶縁部材50が配置されない蓄電デバイス100を製造することができる。
【0034】
封口板14のうち、絶縁部材50と接する部分の少なくとも一部の表面には、粗面化処理がなされていることが好ましい。粗面化処理は、表面に凹凸を形成することによって、表面積を大きくするとともにアンカー効果を高め、絶縁部材50との接合性や密着性を向上させる表面処理である。粗面化処理は、例えば、レーザの照射やサンドブラスト等によって行い得る。封口板14の粗面化処理された部分は、粗面化処理部14s(図4参照)を構成している。封口板14は、絶縁部材50との境界部分14Nの少なくとも一部において粗面化処理部14sを有していることが好ましい。
【0035】
粗面化処理部14sは、電解液のリーク経路(すなわち、蓄電デバイス100の内部から電解液が漏れる経路)を遮断するように配置されていることが好ましい。例えば、粗面化処理部14sは、ここでは、端子装着孔19の周辺の内表面14Bと、端子装着孔19を構成する側面であって、絶縁部材50と接する側面14cの表面と、に設けられている。封口板14の内表面14Bにおける粗面化処理部14sは、端子装着孔19を囲むように全域に設けられていることが好ましい。特に限定されないが、封口板14の内表面14Bにおける粗面化処理部14sの幅Wは、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。これにより、封口板14と絶縁部材50との密着強度が高くなり、より強固に封止することができる。より好ましくは、封口板14は、絶縁部材50と接する表面の全域において粗面化処理部14sを有しているとよい。
【0036】
また、特に限定されないが、電極端子のうち、絶縁部材50と接する部分の少なくとも一部の表面には、封口板14の粗面化処理部14sと同様に、粗面化処理がなされていることが好ましい。図4に示すように、電極端子(ここでは負極端子40)の粗面化処理された部分は、粗面化処理部40sを構成している。負極端子40は、絶縁部材50との境界部分40Nの少なくとも一部において粗面化処理部40sを有していることが好ましい。
【0037】
上記した粗面化処理部14sと同様に、負極端子40の粗面化処理部40sは、電解液のリーク経路を遮断するように配置されていることが好ましい。例えば、粗面化処理部40sは、ここでは、外部接続部41の側面41cおよび、台座部42の上面42aに設けられている。外部接続部41の側面41cに設けられている粗面化処理部40sの長さLは、例えば、側面41cに沿って1mm以上の長さで設けられていることが好ましく、3mm以上の長さで設けられていてもよい。台座部42の上面42aに設けられている粗面化処理部40sの長さLは、例えば、上面42aに沿って1mm以上の長さで設けられていることが好ましく、3mm以上の長さで設けられていてもよい。これにより、電極端子と絶縁部材50との密着強度が高くなり、より強固に封止することができる。より好ましくは、電極端子は、絶縁部材50と接する表面の全域において粗面化処理部40sを有しているとよい。
【0038】
封口板14および電極端子は、ともに粗面化処理部14sおよび粗面化処理部40sを有していてもよい。これにより、封口板14と電極端子と絶縁部材50とがより強固に封止され、安全性の高い蓄電デバイス100が実現される。
【0039】
<蓄電デバイスの製造方法>
続いて、蓄電デバイス100の製造方法の一例について説明する。ここに開示される製造方法は、例えば、(1)用意工程と、(2)封口工程と、を包含する。ここでは、(1)用意工程に(1A)インサート成形工程を含んでいる。
【0040】
(1)用意工程では、外装体12と、封口板14と、正極端子30と、負極端子40と、電極体20と、を少なくとも用意する。ここでは、封口板14は、端子装着孔18、19の周囲に溝部14tが設けられているものを用意する。
【0041】
(1A)インサート成形工程では、封口板14、正極端子30、負極端子40、および絶縁部材50を一体化してアッセンブリ部品(例えば封口板アッセンブリ60)を作成する。封口板アッセンブリ60は、封口板14、正極端子30、負極端子40、および絶縁部材50をインサート成形することにより製作することができる。これにより、部品点数を削減できるとともに、従来のリベットを用いる方法に比べて導通経路を簡便に形成できる。インサート成形は、例えば、特開2021-086813号公報、特開2021-086814号公報、特許第03986368号公報、特許第6648671号公報等に記載されるように従来公知の方法に従って、行うことができる。例えば、インサート成形工程は、上型と下型とを有する成形金型を用いて、部品セット工程、位置決め工程、上型セット工程、射出成形工程、上型リリース工程、および部品取出工程を含む方法によって実施され得る。
【0042】
部品セット工程では、正極端子30および負極端子40が封口板14の端子装着孔18、19にそれぞれ挿通された後、封口板14が下型に装着される。位置決め工程では、正極端子30および負極端子40がそれぞれ位置決めされ、固定される。上型セット工程では、上型が、下型とともに封口板14と正極端子30および負極端子40とを上下方向に挟むように装着される。射出成形工程では、まず成形金型が加熱される。次に、成形金型に溶融樹脂が注入される。溶融樹脂は上型から端子装着孔18、19を通って下型に流される。その後、成形金型と成形品とが冷却される。これにより、絶縁部材50と封口板14と電極端子とが一体化される。上型リリース工程では、上型が下型から離間される。部品取出工程では、成形品が下型から取り外される。
【0043】
図6は、射出成形工程の様子を模式的に示す図である。図6に示すように、成形金型200の上型210は、上記した溝部14tに入り込むことができる突起部212を有していてもよい。上型210の突起部212が溝部14tに入り込んだ状態で射出成形工程を実施することにより、注入された溶融樹脂が溝部14tからはみ出して封口板14の外表面14Aに付着することを抑制することができる。これにより、さらにバリの発生を低減させることができる。特に限定されないが、突起部212の上下方向Zの長さは0.05mm~0.3mm(好ましくは、0.1mm)であるとよい。上記したとおり、封口板14の厚み公差は0.1mm未満であるため、上記した範囲の長さを有する突起部212であれば、封口板14の厚み公差に対応し得る。このため、上型210と封口板14とが密着した状態で射出成形工程を実施することができ、溶融樹脂が漏れ出ることをより好適に抑制することができる。
【0044】
(2)封口工程では、電極体20および電解液を外装体12に収容した状態で、外装体12と封口板アッセンブリ60とを封止する。具体的には、まず、封口板アッセンブリ60の電極体接続部43と電極体20とを接続する。次いで、外装体12の開口部12hから電極体20を挿入し、封口板アッセンブリ60の封口板14と外装体12の開口部12hとの周縁をレーザー溶接等によって接合する。そして、注液孔16から電解液を注入し、該注液孔16を封止部材17で塞ぐことによって、蓄電デバイス100を密閉する。以上のようにして、蓄電デバイス100を製造することができる。ここに開示される蓄電デバイス100では、封口板14が溝部14tを有していることにより、バリの発生が低減されている。このため、封口工程において溶接接合を行ったとしても、バリが焼け焦げることがない。したがって、より安全性に優れる蓄電デバイス100を提供することができる。
【0045】
<電池の用途>
蓄電デバイス100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。蓄電デバイス100は、安全性が向上しているため、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0047】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:正極および負極を有する電極体と、開口部を有し、前記電極体を収容するケースと、端子装着孔を有し、前記開口部を封口する封口板と、一端が前記ケースの内部で前記電極体と電気的に接続され、他端が前記端子装着孔に挿通されて前記封口板の外側に露出する電極端子と、前記封口板の表面であって、前記開口部を封口した状態で前記ケースの外側にある外表面と、前記電極端子とを絶縁する樹脂製の絶縁部材と、を備え、前記封口板と前記電極端子と前記絶縁部材とがインサート成形されており、前記封口板は、該封口板の外表面側において前記絶縁部材との境界部分に溝部を有しており、前記溝部は、前記電極端子の全周に亘って設けられている、蓄電デバイス。
項2:前記溝部は、溝幅をXmm、溝深さをYmmとしたときに、溝幅Xと溝深さYとの合計が1mm以上である、項1に記載の蓄電デバイス。
項3:前記溝深さYが0.1mm以上である、項2に記載の蓄電デバイス。
項4:前記封口板は、該封口板と前記絶縁部材との境界部分の少なくとも一部に粗面化処理部を有している、項1から項3のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
項5:前記電極端子は、該電極端子と前記絶縁部材との境界部分の少なくとも一部に粗面化処理部を有している、項1から項4のいずれか一つに記載の蓄電デバイス。
【符号の説明】
【0048】
10 ケース
12 外装体
12a 底壁
12b 長側壁
12c 短側壁
12h 開口部
14 封口板
14A 外表面
14B 内表面
14c 側面
14N 境界部分
14s 粗面化処理部
14t 溝部
15 ガス排出弁
16 注液孔
17 封止部材
18 端子装着孔
19 端子装着孔
20 電極体
22 正極シート
24 負極シート
30 正極端子
40 負極端子
40N 境界部分
40s 粗面化処理部
41 外部接続部
41c 側面
42 台座部
42a 上面
43 電極体接続部
50 絶縁部材
51 筒状部
52 フランジ部
60 封口板アッセンブリ
70 セパレータシート
100 蓄電デバイス
200 成形金型
210 上型
212 突起部
図1
図2
図3
図4
図5
図6