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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179468
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】キャスタおよび小型モビリティ
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20241219BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20241219BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   A61G 5/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
B60B33/00 502C
B60B33/00 502B
B60B33/00 J
A61G5/04 701
A61G5/10 712
A61G5/00 701
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098340
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 一
(57)【要約】
【課題】例えば直進時や方向転換時の走行性に優れたキャスタおよび小型モビリティことを目的とする。
【解決手段】キャスタ1は、車輪4と、車輪4をその中心軸O4周りに回転可能に支持する車輪支持部5と、車輪支持部5を車輪4ごと、車輪4の中心軸O4方向と直交する方向と平行な転蛇軸O1周りに回転可能に駆動させる駆動部6と、車輪支持部5を、車輪4の中心軸O4が転蛇軸O1上に位置する第1状態と、車輪4の中心軸O4が転蛇軸O1上から外れた位置に位置する第2状態とに切り換える切換部7とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、
前記車輪をその中心軸周りに回転可能に支持する車輪支持部と、
前記車輪支持部を前記車輪ごと、該車輪の中心軸方向と直交する方向と平行な転蛇軸周りに回転可能に駆動させる駆動部と、
前記車輪支持部を、前記車輪の中心軸が前記転蛇軸上に位置する第1状態と、前記車輪の中心軸が前記転蛇軸上から外れた位置に位置する第2状態と、に切り換える切換部と、を備えることを特徴とするキャスタ。
【請求項2】
前記切換部は、前記車輪の中心軸と異なる位置に配置され、該車輪の中心軸と平行な切換用回転軸周りに回転可能に、前記車輪支持部を前記車輪ごと支持することを特徴とする請求項1に記載のキャスタ。
【請求項3】
前記第1状態で前記車輪支持部と前記駆動部とを連結して、該駆動部による前記車輪支持部の前記転蛇軸周りの回転を可能とし、前記第2状態で前記車輪支持部と前記駆動部との連結を解除して、前記駆動部から独立した前記車輪支持部の前記転蛇軸周りの回転を可能とする連結部を備えることを特徴とする請求項1に記載のキャスタ。
【請求項4】
前記連結部は、前記車輪支持部および前記駆動部のうちの一方に突出して設けられた凸部と、他方に設けられ、前記凸部が前記第1状態で係合し、前記第2状態で離間する凹部とを有することを特徴とする請求項3に記載のキャスタ。
【請求項5】
前記凸部は、前記車輪支持部に設けられ、
前記凹部は、前記駆動部に、前記転蛇軸周りに等間隔に複数に設けられていることを特徴とする請求項4に記載のキャスタ。
【請求項6】
前記駆動部は、前記車輪支持部が前記転蛇軸周りに回転する際、前記第1状態および前記第2状態いずれの状態でも、前記転蛇軸に対する位置が不変であることを特徴とする請求項4に記載のキャスタ。
【請求項7】
前記駆動部は、モータを有し、
前記モータの回転軸は、前記第1状態および前記第2状態いずれの状態でも、前記転蛇軸と重なることを特徴とする請求項6に記載のキャスタ。
【請求項8】
前記連結部は、複数のリンクで構成されたリンク機構を有することを特徴とする請求項3に記載のキャスタ。
【請求項9】
前記駆動部は、モータを有し、
前記連結部は、前記車輪支持部および前記モータのうちの一方に設けられた第1歯車と、他方に設けられ、前記第1歯車が前記第1状態で噛合し、前記第2状態で離間する第2歯車とを有することを特徴とする請求項3に記載のキャスタ。
【請求項10】
前記駆動部は、前記車輪支持部が前記転蛇軸周りに回転する際、前記第1状態および前記第2状態いずれの状態でも、前記車輪支持部とともに前記転蛇軸周りに回転することを特徴とする請求項9に記載のキャスタ。
【請求項11】
前記駆動部は、モータを有し、
前記モータの回転軸は、前記第1状態および前記第2状態いずれの状態でも、前記転蛇軸から外れた位置に位置することを特徴とする請求項10に記載のキャスタ。
【請求項12】
前記第1状態と前記第2状態とをそれぞれ維持するロック部を備えることを特徴とする請求項1に記載のキャスタ。
【請求項13】
前記ロック部は、前記第1状態と前記第2状態とで前記車輪支持部と係合する係合箇所が異なる係合部を有することを特徴とする請求項12に記載のキャスタ。
【請求項14】
前記ロック部は、アクティブサスペンションを有することを特徴とする請求項12に記載のキャスタ。
【請求項15】
請求項1に記載のキャスタを備え、該キャスタによって移動可能であることを特徴とする小型モビリティ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタおよび小型モビリティに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷物等を搬送するには、作業者が押したり、引いたりして搬送する搬送台車が用いられことがある。特許文献1(特許第6839027号公報)には、荷物等の被搬送物を載置可能な平板部材と、平板部材の底面の縁部に配置された複数のキャスタ(自由輪)と、平板部材の底面の中央部に配置された補助車輪(調整車輪)と、補助車輪を鉛直軸周りに回転させる回転機構(操舵用モータ)と、を備える搬送台車が開示されている。この特許文献1に記載の発明では、補助車輪は、回転機構による回転が可能な転舵可能状態と、回転機構による回転が規制される固定状態とに切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6839027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、搬送台車を走行させる際、その走行条件によっては、転舵可能状態では走行が容易となるが、固定状態では走行が困難となったり、その反対に、固定状態では走行が容易となるが、転舵可能状態では走行が困難となったりする場合がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明は、例えば直進時や方向転換時の走行性に優れたキャスタおよび小型モビリティを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のキャスタは、車輪と、前記車輪をその中心軸周りに回転可能に支持する車輪支持部と、前記車輪支持部を前記車輪ごと、該車輪の中心軸方向と直交する方向と平行な転蛇軸周りに回転可能に駆動させる駆動部と、前記車輪支持部を、前記車輪の中心軸が前記転蛇軸上に位置する第1状態と、前記車輪の中心軸が前記転蛇軸上から外れた位置に位置する第2状態と、に切り換える切換部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、直進時や方向転換時の走行性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る電動車椅子の斜視図である。
図2図1に示す電動車椅子が備えるキャスタ(第1状態)の斜視図である。
図3図2に示すキャスタの分解斜視図である。
図4図2中のA-A線断面図である。
図5図1に示す電動車椅子が備えるキャスタ(第2状態)の斜視図である。
図6図5中のB-B線断面図である。
図7】第2実施形態に係る電動車椅子が備えるキャスタ(第1状態)の斜視図である。
図8図7に示すキャスタの分解斜視図である。
図9】第2実施形態に係る電動車椅子が備えるキャスタ(第2状態)の斜視図ある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。しかしながら、以下の各実施形態に記載されている構成はあくまで例示に過ぎず、本発明の範囲は各実施形態に記載されている構成によって限定されることはない。例えば、本発明を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせることもできる。
【0010】
<第1実施形態>
以下、図1図6を参照して、第1実施形態について説明する。なお、以下では、説明の都合上、図1図6中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う(図7図9についても同様)。また、図1図6中の上下方向を「鉛直方向」と言うことがある。また、鉛直方向に直交する方向を「水平方向」と言うことがある。図1は、第1実施形態に係る電動車椅子の斜視図である。図1に示す電動車椅子10は、キャスタ1によって移動可能な小型モビリティを適用したものである。ここで「小型モビリティ」とは、1人または2人乗りの車両のことであり、本実施形態では電動車椅子10である。電動車椅子10は、人が座ることができる椅子2と、椅子2を支持する電動機構部3とを備える。椅子2は、座面211を有する座板21と、座板21の後方に連結された背もたれ22と、座板21の前方に連結された足置き23と、背もたれ22の背面に連結された手押しハンドル24とを備える。電動機構部3は、4つのキャスタ1と、各キャスタ1を支持する支持板31と、支持板31と椅子2の座板21とを連結する台座部32と、台座部32内に収納された電気回路基板33およびバッテリ34とを有する。
【0011】
図2は、図1に示す電動車椅子が備えるキャスタ(第1状態)の斜視図である。図3は、図2に示すキャスタの分解斜視図である。図4は、図2中のA-A線断面図である。図5は、図1に示す電動車椅子が備えるキャスタ(第2状態)の斜視図である。図6は、図5中のB-B線断面図である。図2図6に示すように、キャスタ1は、車輪4と、車輪支持部5と、駆動部6と、切換部7と、連結部8と、ロック部9とを備える。車輪4は、タイヤ41と、タイヤ41の内側に嵌め込まれたホイール(ホイールベース)42とを有する。
【0012】
車輪支持部5は、車輪4をその中心軸O4周りに回転可能に支持するものである。なお、本実施形態では、中心軸O4は水平方向と平行である。図2図3および図5も同様)に示すように、車輪支持部5は、車輪4に対して、中心軸O4方向の一方側(紙面手前側)に配置された挟持片51と、他方側(紙面奥側)に配置された挟持片52とを有する。そして、図4図6も同様)に示すように、車輪4は、挟持片51の一端部と挟持片52の一端部との間に挟持され、軸部材55を介して中心軸O4周りに回転可能に支持されている。また、車輪支持部5は、挟持片51の他端部と挟持片52の他端部とを連結する連結部53と、連結部53から上側に向かって突出した突出部54とを有する。
【0013】
駆動部6は、車輪支持部5を車輪4ごと、車輪4の中心軸O4方向と直交する方向と平行な転蛇軸O1周りに回転可能に駆動させるものである。なお、本実施形態では、転蛇軸O1は鉛直方向(上下方向)と平行である。図3に示すように、駆動部6は、第1ベース61と、第2ベース62と、モータ63と、軸受け64とを有する。第1ベース61は、板状の部材であり、その内側に軸受け64の外輪641(図4図6参照)が嵌合している。また、第1ベース61の上部には、フランジ部611が突出して形成されている。フランジ部611は、例えばねじ止め等によって、電動機構部3の支持板31に固定されている。軸受け64は、転蛇軸O1周りに回転可能に支持するスラスト軸受けである。第2ベース62は、リング状の部材であり、その外側に軸受け64の内輪642(図4図6参照)が嵌合している。また、第2ベース62の下部には、フランジ部621が突出して形成されている。さらに、フランジ部621には、下方に向かって突出した挟持片622と挟持片623とが形成されている。そして、挟持片622と挟持片623との間に、車輪支持部5の突出部54が挟持されている。第2ベース62の上側には、モータ63が配置されている。モータ63は、例えばサーボモータであり、その回転軸O63が転蛇軸O1と平行となっている。また、モータ63は、電気回路基板33を介して、バッテリ34と電気的に接続されている。これにより、バッテリ34からモータ63に電力を供給されて、モータ63を駆動させることができる。この駆動力は、連結部8を介して車輪支持部5に伝達されて、当該車輪支持部5を車輪4ごと、転蛇軸O1周りに回転させることができる。なお、モータ63の固定方法としては、特に限定されず、例えば、電動機構部3の台座部32に対して、固定部材を介して固定する方法等が挙げられる。
【0014】
切換部7は、車輪支持部5を、図2に示す第1状態(図3および図4も同様)と、図5示す第2状態(図6も同様)とに切り換えるものである。図4に示すように、側面視で、すなわち、中心軸O4方向から見たとき、第1状態では、車輪4の中心軸O4が転蛇軸O1上に位置する。また、図6に示すように、側面視で、すなわち、中心軸O4方向から見たとき、第2状態では、車輪4の中心軸O4が転蛇軸O1上から外れた位置に位置する。切換部7は、軸部材71と、レバー72とを有する。前述したように、第2ベース62の挟持片622と挟持片623との間には、車輪支持部5の突出部54が挟持されている。軸部材71は、中心軸O4と異なる位置に当該中心軸O4と平行に配置されており、本実施形態では挟持片622と突出部54と挟持片623とを順に挿通している。これにより、車輪支持部5は車輪4ごと、軸部材71周りに、すなわち、車輪4の中心軸O4と平行な切換用回転軸O71周りに回転可能に支持される。レバー72は、車輪支持部5の突出部54から、車輪4の周方向に沿って突出して形成されている。車輪支持部5を、第1状態から第2状態に切り換えたり、その反対に第2状態から第1状態に切り換えたりする際には、レバー72を把持して、手動でその切換操作を行うことができる。
【0015】
ロック部9は、第1状態と第2状態とをそれぞれ維持するものである。ロック部9は、係合片91と、軸部材92と、付勢部材93とを有する。係合片91は、車輪支持部5の突出部54と同様に、挟持片622と挟持片623との間に挟持されている。軸部材92は、挟持片622と係合片91と挟持片623とを順に挿通している。これにより、係合片91は、軸部材92周りに回転可能に支持される。また、係合片91は、車輪支持部5に向かって突出した凸部(係合部)911を有する。一方、車輪支持部5の突出部54の縁部には、第1凹部541と第2凹部542とが形成されている。第1凹部541と第2凹部542とは、軸部材71周りに間隔を置いて配置されている。付勢部材93は、係合片91を突出部54に向かって付勢する板バネである。そして、第1状態では、係合片91の凸部911と車輪支持部5の第1凹部541とが係合して、その係合状態を付勢部材93で維持することができる。これにより、第1状態が維持される。第2状態では、係合片91の凸部911と車輪支持部5の第2凹部542とが係合して、その係合状態を付勢部材93で維持することができる。これにより、第2状態が維持される。
【0016】
図4図6に示すように、モータ63(駆動部6)は、車輪支持部5が転蛇軸O1周りに回転する際、第1状態および第2状態いずれの状態でも、転蛇軸O1に対する位置が不変である。すなわち、モータ63の回転軸O63は、第1状態および第2状態いずれの状態でも、転蛇軸O1と重なる。このような位置関係は、例えば回転軸O63が転蛇軸O1に対して水平方向にズレている場合に比べて、キャスタ1の水平方向での小型化を図ることができる。
【0017】
連結部8は、図4に示すように第1状態で車輪支持部5と駆動部6とを連結し、図6に示すように第2状態で車輪支持部5と駆動部6との連結を解除するものである。図3に示すように、連結部8は、車輪支持部5の突出部54に一体的に設けられた凸部81と、駆動部6のモータ63のロータに固定して設けられた凹部形成部材82とを有する。凸部81は、突出部54から上方に向かって形成されている。凹部形成部材82には、複数の凹部83が形成されている。これらの凹部83は、転蛇軸O1周りに等間隔に配置されている。凹部83は、本実施形態では6つ形成されているが、これに限定されず、例えば、2~5つ、または、7つ以上形成されていてもよい。そして、図4に示すように、第1状態では凸部81は、これらの凹部83のうちの1つの凹部83と係合することができる。これにより、駆動部6の駆動力が連結部8を介して車輪支持部5に伝達され、よって、車輪支持部5の転蛇軸O1周りの回転が可能となる。また、図6に示すように、第2状態では凸部81は、第1状態で係合していた凹部83から離間することができる。これにより、駆動部6から独立した、すなわち、駆動部6の駆動力が解除された車輪支持部5の転蛇軸O1周りの回転が可能となる。なお、本実施形態では、凸部81は、車輪支持部5側に設けられ、凹部83は、駆動部6側に設けられているが、これに限定されない。例えば、凸部81が駆動部6側に設けられ、凹部83が車輪支持部5側に設けられていてもよい。
【0018】
以上のような構成の4つのキャスタ1を有する電動車椅子10は、各キャスタ1を第1状態とすることにより、車輪4の中心軸O4(車輪4が床1000に接する接地点GP4)が転蛇軸O1上に位置することとなる(図4参照)。これにより、車輪4は、接地点GP4の位置をそのままに、転蛇軸O1周りに回転することができる。そして、この回転により、電動車椅子10は、座面211の位置がそのままで転舵する、すなわち、方向転換することができる。また、第1状態では、駆動部6と車輪支持部5とが連結部8を介して連結される。これにより、駆動部6による方向転換が可能となる。なお、手押し方向と、各車輪4の中心軸O4とが平行な状態で手押し走行させようとしても、各車輪4が回転しづらくなるため、手押し走行が困難となる。さらに、第1状態で各モータ63に対する電力の供給を停止した場合、モータ63が負荷となって、手動による方向転換が困難となる。このように第1状態は、電動(モータ63)による方向転換に適した状態といえる。
【0019】
また、各キャスタ1を第2状態とすることにより、車輪4の中心軸O4(接地点GP4)が転蛇軸O1上から外れた位置に位置することとなる。これにより、例えば、手押し方向と、各車輪4の中心軸O4とが平行な状態で手押し走行させようとした場合、この手押し操作に伴って、各車輪4が転蛇軸O1周りに回転して、各車輪4向きが変わる、すなわち、各車輪4の中心軸O4が手押し方向と直交する方向に変化する。そして、電動車椅子10は、手押しによって安定して直進することができる。このように第2状態は、第1状態よりも直進安定性が高い状態であると言うことができる。なお、電動車椅子10は、第2状態での停止時に方向転換した場合、1つの接地点GP4を中心に座面211の位置がズレる。従って、第2状態は、手動での方向転換に適した状態といえる。以上のように電動車椅子10は、1つのキャスタ1を、電動による方向転換に適した第1状態と、手動による方向転換に適した第2状態とに切り換えることができる。
【0020】
<第2実施形態>
以下、図7図9を参照して、第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。図7は、第2実施形態に係る電動車椅子が備えるキャスタ(第1状態)の斜視図である。図8は、図7に示すキャスタの分解斜視図である。図9は、第2実施形態に係る電動車椅子が備えるキャスタ(第2状態)の斜視図ある。
【0021】
図8図7および図9も同様)に示すように、車輪支持部5は、支持部本体50と、支持部本体50と別体で構成され、支持部本体50の転蛇軸O1周りの回転を補助する補助部材57とを有する。支持部本体50は、車輪4を中心軸O4周りに回転可能に挟持する挟持片51および挟持片52と、挟持片51と挟持片52とを連結する連結部53と、連結部53から上側に向かって突出した突出部56を有する。補助部材57は、円筒状の部材であり、その中心軸が転蛇軸O1と重なる。また、補助部材57は、例えば電動機構部3の支持板31に固定されている。
【0022】
駆動部6は、モータ63と、モータ63を収納するモータカバー65と、補助部材57が挿入される円筒部66と、モータカバー65と円筒部66とを連結する連結部67とを有する。円筒部66は、補助部材57と同心的に配置されており、補助部材57に対して転蛇軸O1周りに回転することができる。連結部67は、モータカバー65をモータ63ごと、切換用回転軸O71周りに回転可能に連結する。なお、車輪支持部5の支持部本体50も、切換用回転軸O71周りに回転可能であり、この回転により、支持部本体50を、図7に示す第1状態と、図9に示す第2状態とに切り換えることができる。中心軸O4方向から見たとき、第1状態では、車輪4の中心軸O4が転蛇軸O1上に位置する。また、中心軸O4方向から見たとき、第2状態では、車輪4の中心軸O4が転蛇軸O1上から外れた位置に位置する。
【0023】
図8に示すように、連結部8は、複数のリンクで構成されたリンク機構80を有する。
【0024】
本実施形態では、リンク機構80は、支持部本体50の突出部56と駆動部6のモータカバー65とを連結する一対のリンク84と、支持部本体50の突出部56と駆動部6の連結部67とを連結する一対のリンク85とで構成されている。また、ロック部9は、アクティブサスペンション94を有する。アクティブサスペンション94は、リンク機構80の一部としても機能し、駆動部6の円筒部66と、各リンク85の長手方向の途中とに連結されている。なお、アクティブサスペンション94を駆動させる駆動部(不図示)は、別途設けられている。
【0025】
また、連結部8は、モータ63のロータに固定して設けられた第1歯車86と、補助部材57の外周部に固定して設けられた第2歯車87とを有する。第1歯車86は、モータ63が作動することにより、回転軸O63回りに回転する。第2歯車87は、図7に示す第1状態で第1歯車86が噛合し、図9に示す第2状態で第1歯車86が離間する。そして、第1歯車86と第2歯車87とが噛合する噛合状態でモータ63が作動することにより、当該モータ63の駆動力が第1歯車86を介して第2歯車87に伝達される。これにより、駆動部6は、当該駆動部6とリンク機構80を介して連結された支持部本体50ともに、転蛇軸O1周りに回転することができる。この回転により、電動車椅子10は、超信地旋回が可能となり、よって、方向転換を容易かつ迅速に行うことができる。また、噛合状態からアクティブサスペンション94が作動して、第1歯車86と第2歯車87とが離間する。この離間状態では、駆動部6と支持部本体50とは、モータ63の駆動力が解除されて、モータ63の作動から独立した転蛇軸O1周りの回転が可能となる。これにより、手押しでの電動車椅子10の直進走行が容易となる。
【0026】
また、前述したように本実施形態では、駆動部6は、支持部本体50が転蛇軸O1周りに回転する際、第1状態および第2状態いずれの状態でも、支持部本体50とともに転蛇軸O1周りに回転する。さらに、モータ63の回転軸O63は、第1状態および第2状態いずれの状態でも、転蛇軸O1から外れた位置に位置する。このような構成は、例えば、転蛇軸O1周りに回転する部品や部材を比較的多くしたい場合に有効な構成となる。また、本実施形態ではキャスタ1は、アクティブサスペンション94を有する。これにより、各キャスタ1を第1状態と第2状態とに一括して容易に切り換えることができる。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。なお、小型モビリティの適用例として、前記各実施形態では電動車椅子10としたが、その他に、例えば、荷物を搬送する搬送台車等とすることもできる。また、電動車椅子10は、前記各実施形態では手押しハンドル24を操作することにより走行するものであるが、これに限定されず、例えば、車輪4を駆動するモータ等の電動駆動部が搭載され、当該電動駆動部により自走するものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 キャスタ
4 車輪
5 車輪支持部
6 駆動部
7 切換部
8 連結部
9 ロック部
10 電動車椅子
O1 転蛇軸
O4 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9