(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179472
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】調光シート、調光装置、および調光シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1334 20060101AFI20241219BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G02F1/1334
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098346
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕香
(72)【発明者】
【氏名】金田 怜士
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA10
2H088GA13
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA03
2H088KA06
2H088KA26
2H088KA27
2H088MA20
2H189AA04
2H189AA05
2H189CA07
2H189CA11
2H189FA37
2H189GA06
2H189HA16
2H189LA01
2H189LA03
2H189LA05
(57)【要約】
【課題】調光シートの面内における領域間で調光シートの視認性を異ならせる調光シート、調光装置、および調光シートの製造方法を提供する。
【解決手段】調光シート11は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、第1領域A1と、第1領域A1に連なる第2領域A2と、を備え、各透明電極層は、第1領域A1から第2領域A2まで連なり、調光層は、第1領域A1から第2領域A2まで連なり、第1領域A1と第2領域A2とに共通した透明電極層間の電圧によって第1領域A1の光学特性が第2領域A2の光学特性とは異なるように、第1領域A1における空隙の構造は、第2領域A2における前記空隙の構造とは異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明電極層と、
第2透明電極層と、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に配置された調光層と、を備え、
前記調光層が、
複数の空隙を区画する電離線硬化樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える
調光シートであって、
前記調光シートは、
前記調光シートの表面と対向する視点から見て、
第1領域と、
前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、
各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記第1領域における前記空隙の構造は、前記第1領域と前記第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように、前記第2領域における前記空隙の構造とは異なる、
ことを特徴とする調光シート。
【請求項2】
前記電離線硬化樹脂層は、前記第1透明電極層と対向する第1面を備え、
前記空隙の構造は、前記第1面のなかの各領域を構成する部分における前記空隙の最大径である、
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記第2領域における前記空隙の最大径は、前記第1領域における前記空隙の最大径の9倍以上である、
請求項2に記載の調光シート。
【請求項4】
前記第1領域、および前記第2領域における前記空隙の最大径は、300nm以上1mm以下である、
請求項2に記載の調光シート。
【請求項5】
前記第1領域、および前記第2領域における前記空隙の最大径は、70μm以下である、
請求項2に記載の調光シート。
【請求項6】
前記第1透明電極層を備える第1透明電極基材と、
前記第2透明電極層を備える第2透明電極基材と、を備え、
前記調光層は、前記第1透明電極基材と前記第2透明電極基材とに接するように、前記第1透明電極基材と前記第2透明電極基材との間に配置され、
JIS Z-0237:2009に準じた測定による前記調光層と前記第1透明電極基材との180°における剥離強度が密着強度であり、
前記第1領域の密着強度は、前記第2領域の密着強度の2倍以下である、
請求項1に記載の調光シート。
【請求項7】
前記電離線硬化樹脂層のなかで前記第1領域を構成する部分の厚さは、
前記電離線硬化樹脂層のなかで前記第2領域を構成する部分の厚さと同じであり、
前記電離線硬化樹脂層のなかで前記第1領域を構成する部分の材料は、
前記電離線硬化樹脂層のなかで前記第2領域を構成する部分の材料と同じである、
請求項1に記載の調光シート。
【請求項8】
前記調光層のなかで前記第1領域を構成する部分の厚さは、
前記調光層のなかで前記第2領域を構成する部分の厚さと同じであり、
前記調光層のなかで前記第1領域を構成する部分の材料は、
前記調光層のなかで前記第2領域を構成する部分の材料と同じである、
請求項1に記載の調光シート。
【請求項9】
前記第1領域のヘイズから前記第2領域のヘイズを差し引いた値が20%以上である状態を有する
請求項1に記載の調光シート。
【請求項10】
前記調光層のなかで前記第1領域を構成する部分の厚さは、
前記調光層のなかで前記第2領域を構成する部分の厚さと同じであり、
前記電離線硬化樹脂層は、前記第1透明電極層と対向する第1面を備え、
前記空隙の構造は、前記第1面のなかの各領域を構成する部分における前記空隙の最大径、前記空隙の平均径、前記空隙の密度、および前記電離線硬化樹脂層の厚さ方向において各領域を構成する部分における前記空隙の偏り、からなる群から選択される少なくとも1つである
請求項1に記載の調光シート。
【請求項11】
前記第2領域は、前記調光シートの表面と対向する視点から見て、文字、図形、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも1つを表す
請求項1に記載の調光シート。
【請求項12】
調光シートと、
前記調光シートを駆動する駆動部と、
を備える調光装置であって、
前記調光シートは、
第1透明電極層と、
第2透明電極層と、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に配置された調光層と、を備え、
前記調光層が、
複数の空隙を区画する電離線硬化樹脂層と、
前記空隙を充填する液晶組成物と、を備え、
前記調光シートは、前記調光シートの表面と対向する視点から見て、
第1領域と、
前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、
各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記駆動部は、
前記第1領域と前記第2領域とに共通した駆動信号を透明電極層間に入力し、
前記第1領域における前記空隙の構造は、
前記駆動信号の入力によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように前記第2領域における前記空隙の構造とは異なる、
ことを特徴とする調光装置。
【請求項13】
前記駆動部は、
前記第1領域のヘイズから前記第2領域のヘイズを差し引いた値の前記駆動信号の入力による変化分を20%以上にする
請求項12に記載の調光装置。
【請求項14】
第1透明電極層と第2透明電極層との間に、電離線硬化樹脂層を形成する電離線硬化性組成物と液晶組成物とを含有した塗工層を形成することと、
前記塗工層に電離線を照射して前記電離線硬化性組成物から前記電離線硬化樹脂層を形成し、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に、複数の空隙を区画する前記電離線硬化樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える調光層を形成することと、
を含む調光シートの製造方法であって、
前記調光シートは、
前記調光シートの表面と対向する視点から見て、
第1領域と、
前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、
各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記第1領域と前記第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように、前記第1領域における前記空隙の構造が前記第2領域における前記空隙の構造と異なり、
前記調光層を形成することは、
前記塗工層のなかで前記第1領域を形成する部分と、前記塗工層のなかで前記第2領域を形成する部分との間で前記電離線の照射態様を異ならせることによって、前記第1領域における前記空隙の構造を前記第2領域における前記空隙の構造と異ならせる、
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【請求項15】
第1透明電極層と第2透明電極層との間に、電離線硬化樹脂層を形成する電離線硬化性組成物と液晶組成物とを含有した塗工層を形成することと、
前記塗工層に電離線を照射して前記電離線硬化性組成物から前記電離線硬化樹脂層を形成し、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に、複数の空隙を区画する前記電離線硬化樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える調光層を形成することと、
を含む調光シートの製造方法であって、
前記調光シートは、
前記調光シートの表面と対向する視点から見て、
第1領域と、
前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、
各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、
前記第1領域と前記第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように、前記第1領域における前記空隙の構造が前記第2領域における前記空隙の構造と異なり、
前記塗工層を形成することは、
前記塗工層のなかで前記第1領域を形成する部分と、前記塗工層のなかで前記第2領域を形成する部分との間で前記塗工層の材料を異ならせることによって、前記第1領域における前記空隙の構造を前記第2領域における前記空隙の構造と異ならせる、
ことを特徴とする調光シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の空隙を区画する電離線硬化樹脂層を備えた調光シート、調光装置、および調光シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、第1透明電極層と第2透明電極層との間に調光層を備える。調光層は、複数の空隙を区画する電離線硬化樹脂層と、各空隙に充填された液晶組成物と、を備える。第1透明電極層と第2透明電極層との間における電圧変更は、液晶化合物の配向状態を変更する。液晶化合物における配向状態の変更は、電離線硬化樹脂層と液晶組成物との界面における光の散乱度合いを変更して調光シートの透明度合いを変更する。調光層の面内における厚さの差異は、調光シートの面内における透明度合いの差異を生む。調光シートの面内における透明度合いの差異は、調光シートを備える装置に多様な意匠を施す(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光シートを備える装置に多様な意匠を施す構成の多様化は、調光シートの適用対象に拡張を促して調光シートの需要をさらに高める。調光シートの面内における領域間で視認性を異ならせる構成に調光層の厚さ以外の構成を加えることは、多様な意匠を施すための構成を多様化させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための調光シートは、第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に配置された調光層と、を備え、前記調光層が、複数の空隙を区画する電離線硬化樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える。前記調光シートは、前記調光シートの表面と対向する視点から見て、第1領域と、前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なる。前記第1領域における前記空隙の構造は、前記第1領域と前記第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように、前記第2領域における前記空隙の構造とは異なる。
【0006】
上記課題を解決するための調光装置は、調光シートと、前記調光シートを駆動する駆動部と、を備える。前記調光シートは、第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に配置された調光層と、を備える。前記調光層が、複数の空隙を区画する電離線硬化樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える。前記調光シートは、前記調光シートの表面と対向する視点から見て、第1領域と、前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なる。前記駆動部は、前記第1領域と前記第2領域とに共通した駆動信号を透明電極層間に入力し、前記第1領域における前記空隙の構造は、前記駆動信号の入力によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように前記第2領域における前記空隙の構造とは異なる。
【0007】
上記課題を解決するための調光シートの製造方法は、第1透明電極層と第2透明電極層との間に、電離線硬化樹脂層を形成する電離線硬化性組成物と液晶組成物とを含有した塗工層を形成することと、前記塗工層に電離線を照射して前記電離線硬化性組成物から電離線硬化樹脂層を形成し、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に、複数の空隙を区画する前記電離線硬化樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える調光層を形成することと、を含む。前記調光シートは、前記調光シートの表面と対向する視点から見て、第1領域と、前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、前記第1領域と前記第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように、前記第1領域における前記空隙の構造が前記第2領域における前記空隙の構造とは異なる。前記調光層を形成することは、前記塗工層のなかで前記第1領域を形成する部分と、前記塗工層のなかで前記第2領域を形成する部分との間で前記電離線の照射態様を異ならせることによって、前記第1領域における前記空隙の構造を前記第2領域における前記空隙の構造と異ならせる。
【0008】
上記課題を解決するための調光シートの製造方法は、第1透明電極層と第2透明電極層との間に、電離線硬化樹脂層を形成する電離線硬化性組成物と液晶組成物とを含有した塗工層を形成することと、前記塗工層に電離線を照射して前記電離線硬化性組成物から電離線硬化樹脂層を形成し、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に、複数の空隙を区画する前記電離線硬化樹脂層と、前記空隙を充填する液晶組成物と、を備える調光層を形成することと、を含む。前記調光シートは、前記調光シートの表面と対向する視点から見て、第1領域と、前記第1領域に連なる第2領域と、を備え、各透明電極層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、前記調光層は、前記第1領域から前記第2領域まで連なり、前記第1領域と前記第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって前記第1領域の光学特性が前記第2領域の光学特性とは異なるように、前記第1領域における前記空隙の構造が前記第2領域における前記空隙の構造と異なり、前記塗工層を形成することは、前記塗工層のなかで前記第1領域を形成する部分と、前記塗工層のなかで前記第2領域を形成する部分との間で前記塗工層の材料を異ならせることによって、前記第1領域における前記空隙の構造を前記第2領域における前記空隙の構造と異ならせる。
【0009】
上記各構成によれば、第1領域と第2領域とが調光シートの面内で相互に連なる。領域間における空隙構造の差異は、第1領域と第2領域とに共通した透明電極層間の電圧によって領域間における光学特性に差異を生じさせる。このため、空隙の構造が領域間において視認性を異ならせる構成として機能する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の調光シート、調光装置、および調光シートの製造方法によれば、領域間における空隙の構造の差異が、調光シートの視認性を領域間で異ならせる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、調光シートにおける第1領域と第2領域とを示す平面図である。
【
図4】
図4は、第1領域における空隙の構造を示す平面図である。
【
図5】
図5は、第2領域における空隙の構造を示す平面図である。
【
図6】
図6は、調光シートの光学特性を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[調光装置10]
図1が示すように、調光装置10は、調光シート11と、駆動部12と、を備える。
調光装置10は、空間を区切る仕切装置に用いられてもよい。仕切装置は、空間を区切る仕切部材として、調光シート11のみを備えてもよいし、透明部材110に調光シート11を実装した調光貼着体を備えてもよい。透明部材110は、透明ガラスでもよいし、透明樹脂でもよい。透明部材110は、窓ガラスでもよいし、間仕切りでもよい。窓ガラスは、車両や航空機の移動体に搭載されてもよいし、オフィスビルや公共施設などの建物に設置されてもよい。間仕切りは、車内空間に配置されてもよいし、屋内空間に配置されてもよい。
【0013】
調光装置10は、画像を表示するスクリーンに用いられてもよい。スクリーンは、調光シート11のみから構成されてもよいし、透明部材110に調光シート11を実装した調光貼着体でもよい。スクリーンは、画像に反射光を利用するフロントスクリーンでもよいし、画像に透過光を利用するリアスクリーンでもよい。
【0014】
調光貼着体は、1つの透明部材110に1つの調光シート11を実装してもよいし、1つの透明部材110に複数の調光シート11を実装してもよい。調光貼着体は、2つの透明部材110に調光シート11を挟持してもよい。調光シート11は、可撓性を有する。調光貼着体は、可撓性を有してもよいし、可撓性を有しなくてもよい。調光貼着体は、平面状を有してもよいし、曲面状を有してもよい。
【0015】
調光シート11の駆動型式は、リバース型でもよい。駆動部12は、リバース型の調光シート11に電圧信号を入力する。リバース型の調光シート11は、電圧信号の入力に従って透明から不透明に変わる。リバース型の調光シート11は、電圧信号を入力される期間に不透明を保つ。リバース型の調光シート11は、電圧信号の入力停止に従って不透明から透明に戻る。
【0016】
調光シート11の駆動型式は、ノーマル型でもよい。駆動部12は、ノーマル型の調光シート11に電圧信号を入力する。ノーマル型の調光シート11は、電圧信号の入力に従って不透明から透明に変わる。ノーマル型の調光シート11は、電圧信号を入力される期間に透明を保つ。ノーマル型の調光シート11は、電圧信号の入力停止に従って透明から不透明に戻る。
【0017】
調光シート11は、調光シート11による入射光の散乱によって不透明を実現する。不透明な調光シート11は、透明な調光シート11よりも低い平行線透過率を有する。不透明な調光シート11は、透明な調光シート11よりも高いヘイズを有する。不透明な調光シート11の色は、無彩色でもよいし、有彩色でもよい。透明な調光シート11の色は、無彩色でもよいし、有彩色でもよい。
【0018】
調光シート11は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、第1領域A1と、第1領域A1に連なる第2領域A2と、を備える。
第1領域A1は、調光シート11の縁を備えてもよいし、調光シート11の縁を備えなくてもよい。第1領域A1は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、第2領域A2の全体を囲んでもよいし、第2領域A2の一部のみに接してもよい。第1領域A1は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、文字、図形、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも1つを縁取る形状でもよいし、これら以外の不定形状でもよい。
【0019】
第2領域A2は、調光シート11の縁を備えてもよいし、調光シート11の縁を備えなくてもよい。第2領域A2は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、第1領域A1の全体を囲んでもよいし、第1領域A1の一部のみに接してもよい。第2領域A2は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、文字、図形、記号、絵柄からなる群から選択される少なくとも1つでもよいし、これら以外の不定形状でもよい。
【0020】
第1領域A1と第2領域A2とは、それぞれ光透過率を変更可能に構成されている。第1領域A1の数量は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。第2領域A2の数量は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。なお、
図1が示す調光シート11の一例は、1つの星形の形状を有する第2領域A2と、第2領域A2の全体を囲み、かつ調光シート11の縁を備える1つの第1領域A1と、を備える。
【0021】
調光シート11は、調光シート11の表面と対向する視点から見て、第1透明電極層34を備える。調光シート11は、調光シート11の裏面と対向する視点から見て、第2透明電極層35を備える。
第1透明電極層34は、調光シート11のなかで一部を露出させる。第2透明電極層35は、調光シート11のなかで一部を露出させる。第1透明電極層34は、第1接続端子22Aを介して第1配線23Aに接続されている。第2透明電極層35は、第2接続端子22Bを介して第2配線23Bに接続されている。第1配線23Aと第2配線23Bとは、1つの駆動部12に接続されている。
【0022】
第1透明電極層34のなかで第1接続端子22Aに接続される部分の数量は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。第2透明電極層35のなかで第2接続端子22Bに接続される部分の数量は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。第1透明電極層34のなかで第1接続端子22Aに接続される部分、および第2透明電極層35のなかで第2接続端子22Bに接続される部分は、それぞれ調光シート11の縁に配置されてもよいし、調光シート11の角部を含んでもよい。
【0023】
なお、
図1が示す調光シート11の一例は、第1透明電極層34のなかで第1接続端子22Aに接続される部分と、第2透明電極層35のなかで第2接続端子22Bに接続される部分と、を1つずつ備える。第1透明電極層34のなかで第1接続端子22Aに接続される部分と、第2透明電極層35のなかで第2接続端子22Bに接続される部分とは、調光シート11における別々の角部を含み、調光シート11の下辺の延びる方向に沿って並ぶ。
【0024】
[調光シート11]
以下、リバース型の調光シート11が備える構成と、リバース型の調光シート11が発現する作用と、を主に説明する。また、ノーマル型の調光シート11のなかでリバース型の調光シート11と異なる構成を説明すると共に、ノーマル型の調光シート11のなかでリバース型の調光シート11と重複する構成の説明を割愛する。
【0025】
図2が示すように、調光シート11は、調光層31、第1配向層32、第2配向層33、第1透明電極層34、第2透明電極層35、第1透明支持層36、および第2透明支持層37を備える。第1配向層32、第1透明電極層34、および第1透明支持層36は、第1透明電極基材を構成する。第2配向層33、第2透明電極層35、および第2透明支持層37は、第2透明電極基材を構成する。調光層31は、第1透明電極基材と第2透明電極基材との間に配置される。
【0026】
調光層31は、第1配向層32と、第2配向層33と、の間に位置する。調光層31の第1面31Fは、第1配向層32に接する。調光層31の第2面31Sは、第2配向層33に接する。第1配向層32は、調光層31と、第1透明電極層34と、の間に位置する。第1配向層32は、調光層31と、第1透明電極層34と、に接する。第2配向層33は、調光層31と、第2透明電極層35と、の間に位置する。第2配向層33は、調光層31と、第2透明電極層35と、に接する。調光層31の第1面31Fは、第1透明電極基材に接する。調光層31の第2面31Sは、第2透明電極基材に接する。
【0027】
第1透明電極層34は、第1接続端子22Aと第1配線23Aとを通じて、駆動部12に接続される。第1透明電極層34は、第1配向層32と、第1透明支持層36と、の間に位置する。第1透明電極層34は、第1配向層32と、第1透明支持層36と、に接する。
【0028】
第2透明電極層35は、第2接続端子22Bと第2配線23Bとを通じて、駆動部12に接続される。第2透明電極層35は、第2配向層33と、第2透明支持層37と、の間に位置する。第2透明電極層35は、第2配向層33と、第2透明支持層37と、に接する。
【0029】
第1透明電極層34と第2透明電極層35とは、それぞれ独立に、無色透明、あるいは有色透明に視認される。第1透明電極層34と第2透明電極層35とを構成する材料は、それぞれ独立に、導電性無機酸化物、金属、あるいは導電性有機高分子化合物からなる群から選択されるいずれか1つである。導電性無機酸化物は、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛からなる群から選択されるいずれか1種でもよい。金属は、金や銀のナノワイヤーでもよい。導電性有機高分子化合物は、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択されるいずれか1つでもよい。第1透明電極層34と第2透明電極層35との厚さは、それぞれ独立に5nm以上200nm以下でもよい。
【0030】
第1透明支持層36と第2透明支持層37とは、それぞれ独立に、無色透明、あるいは有色透明に視認される。第1透明支持層36と第2透明支持層37とを構成する材料は、それぞれ独立に、有機高分子化合物、あるいは無機高分子化合物である。有機高分子化合物は、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィンからなる群から選択されるいずれか1種でもよい。無機高分子化合物は、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素からなる群から選択されるいずれか1つでもよい。第1透明支持層36と第2透明支持層37との厚さは、それぞれ独立に20μm以上400μm以下でもよい。
【0031】
駆動部12は、第1透明電極層34と第2透明電極層35とに別々に接続される。駆動部12は、第1透明電極層34と第2透明電極層35との間に電圧信号を入力する。電圧信号の入力は、液晶化合物LCMの配向状態を変える。駆動部12は、電圧信号の入力停止によって、第1透明電極層34と第2透明電極層35とを等電位に変更する。電圧信号の入力停止は、液晶化合物LCMの配向状態を変える。駆動部12は、液晶化合物LCMの配向状態を可逆的に変え、これによって透明から不透明に調光シート11を可逆的に変える。
【0032】
駆動部12が電圧信号の入力を停止しているとき、液晶化合物LCMの配向状態は、第1配向層32と第2配向層33とによる配向規制力に従う。配向規制力に従う液晶化合物LCMの配向状態は、調光層31に可視光を透過させる。これにより、調光シート11は透明になる。駆動部12が電圧信号を入力しているとき、液晶化合物LCMが配向規制力に抗した電界の作用力を受ける。電界の作用力に従う液晶化合物LCMの配向状態は、調光層31に可視光を散乱させる。これにより、調光シート11は不透明になる。
【0033】
調光シート11は、第1透明電極層34と第1透明支持層36との間に、他の機能層を備えてもよい。調光シート11は、第2透明電極層35と第2透明支持層37との間に、他の機能層を備えてもよい。他の機能層は、調光層31に向けた酸素や水分の透過を抑えるガスバリア層でもよいし、調光層31に向けた特定波長以外の紫外光線の透過を抑える紫外線バリア層でもよい。他の機能層は、調光シート11を機械的に保護するハードコート層でもよいし、調光シート11における層間の密着性を高める接着層でもよい。
【0034】
[調光層31]
図3が示すように、調光層31は、液晶組成物31LC、スペーサーSP、および電離線硬化樹脂層31Pを備える。
【0035】
[液晶組成物31LC]
液晶組成物31LCは、液晶化合物LCMを含む。液晶組成物31LCは、二色性色素DP、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、溶剤、および粘度低下剤などの添加剤を含有してもよい。耐候剤は、紫外線吸収剤や光安定剤でもよい。
【0036】
液晶化合物LCMの長軸方向の誘電率は、液晶化合物LCMの短軸方向の誘電率よりも大きい、正の誘電異方性を有してもよい。液晶化合物LCMの長軸方向の誘電率は、液晶化合物LCMの短軸方向の誘電率よりも低い、負の誘電異方性を有してもよい。液晶化合物LCMの誘電異方性は、調光シート11の駆動型式に基づいて適宜選択される。
【0037】
液晶化合物LCMは、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系からなる群から選択される少なくとも1種である。液晶化合物LCMは、1種類の液晶化合物LCM、あるいは2種類以上の液晶化合物LCMの組み合わせである。液晶化合物LCMの屈折率差は、0.05以上でもよい。液晶化合物LCMの誘電率差は、2以上でもよいし、-2以下でもよい。
【0038】
液晶化合物LCMの構造例は、下記式1によって表される。
R11-A11-Z11-A12-Z12-A13-Z13-A14-R12 ・・・式1
式1が示すR11は、水素原子、炭素原子数1以上20以下のアルキル基である。式1が示すR11のアルキル基に含まれる1つ、または隣接しない2つ以上のメチレン結合は、酸素原子、エチレン結合、エステル結合、ジエーテル結合からなる群から選択されるいずれかに置換可能である。
【0039】
式1が示すR12は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、または、炭素原子数1以上15以下のアルキル基である。式1が示すR12のアルキル基に含まれる1つ、または隣接しない2つ以上のメチレン結合は、酸素原子、エチレン結合、エステル結合、ジエーテル結合からなる群から選択されるいずれかに置換可能である。
【0040】
式1が示すA11、A12、A13、A14は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基を表す。1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基の1つ、または2つ以上の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基に置換可能である。式1が示すA11、A12、A13、A14は、それぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン基、3,6-シクロヘキセニレン基、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基、ピリジン-2,5-ジイル基でもよい。式1が示すA13、A14は、それぞれ独立して、単結合でもよい。式1が示すZ11、Z12、Z13は、それぞれ独立して、単結合、エステル結合、ジエーテル結合、エチレン結合、フルオロエチレン結合、カルボニル結合からなる群から選択されるいずれか1種を表す。
【0041】
二色性色素DPは、液晶化合物LCMをホストとしたゲストホスト型式によって駆動されて有色を呈する。二色性色素DPは、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。二色性色素DPは、1種の化合物、あるいは2種以上の化合物の組み合わせである。耐光性を高めること、および二色比を高めることが求められる場合、二色性色素DPは、アゾ化合物、およびアントラキノン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、よりが好ましくはアゾ化合物である。
【0042】
第1領域A1の二色性色素DPが呈する色相は、第2領域A2の二色性色素DPが呈する色相と同じでもよいし、第2領域A2の二色性色素DPが呈する色相とは、異なってもよい。第1領域A1の二色性色素DPが呈する彩度は、第2領域A2の二色性色素DPが呈する彩度と同じでもよいし、第2領域A2の二色性色素DPが呈する彩度とは、異なってもよい。第1領域A1の二色性色素DPが呈する明度は、第2領域A2の二色性色素DPが呈する明度と同じでもよいし、第2領域A2の二色性色素DPが呈する明度とは、異なってもよい。
【0043】
スペーサーSPは、電離線硬化樹脂層31Pの全体にわたり分散している。スペーサーSPの厚さは、調光層31の厚さを定める。スペーサーSPの厚さは、スペーサーSPの粒径でもよい。調光層31の厚さは、5μm以上100μm以下でもよい。スペーサーSPは、調光層31の厚さを均一にする。スペーサーSPは、ビーズスペーサーでもよいし、フォトレジストの露光および現像によって形成されるフォトスペーサーでもよい。スペーサーSPは、無色透明でもよいし、有色透明でもよい。液晶組成物31LCが二色性色素DPを含む場合、スペーサーSPの色は、二色性色素DPの呈する色と同色であることが好ましい。
【0044】
第1領域A1のスペーサーSPが有する厚さは、第2領域A2のスペーサーSPが有する厚さと同じでもよいし、第2領域A2のスペーサーSPが有する厚さとは、異なってもよい。第1領域A1のスペーサーSPが呈する色は、第2領域A2のスペーサーSPが呈する色と同じでもよいし、第2領域A2のスペーサーSPが呈する色とは、異なってもよい。
【0045】
[電離線硬化樹脂層31P]
電離線硬化樹脂層31Pは、電離線硬化性組成物の硬化物である。電離線は、紫外線でもよいし、電子線でもよい。電離線硬化性組成物は、紫外線硬化性組成物でもよいし、電子線硬化性組成物でもよい。電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの総量に対する電離線硬化樹脂層31Pの含有率の下限値は20質量%でもよいし、より好ましい含有率の下限値は30質量%でもよい。電離線硬化樹脂層31Pの含有率が20質量%以上であれば、透明時に高い透過率が得られやすい。電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの総量に対する電離線硬化樹脂層31Pの含有率の上限値は70質量%でもよいし、より好ましい含有率の上限値は60質量%でもよい。電離線硬化樹脂層31Pの含有率が70質量%以下であれば、不透明時に高いヘイズが得られやすい。
【0046】
電離線硬化樹脂層31Pの含有率の下限値、および上限値は、電離線硬化性組成物の重合過程において、液晶組成物31LCからなる液晶粒子が電離線硬化性組成物の重合体から相分離する範囲である。電離線硬化樹脂層31Pの機械的な強度を高めることを要する場合、電離線硬化樹脂層31Pの含有率の下限値が高いことが好ましい。液晶化合物LCMを駆動するための電圧を低めることを要する場合、電離線硬化樹脂層31Pの含有率の上限値が低いことが好ましい。
【0047】
電離線硬化樹脂層31Pのなかで第1領域A1を構成する部分の厚さは、電離線硬化樹脂層31Pのなかで第2領域A2を構成する部分の厚さと同じでもよいし、電離線硬化樹脂層31Pのなかで第2領域A2を構成する部分の厚さとは異なってもよい。電離線硬化樹脂層31Pの厚さは、5μm以上100μm以下でもよい。
【0048】
電離線硬化樹脂層31Pの材料は、単官能の電離線硬化性樹脂の硬化物でもよいし、多官能の電離線硬化性樹脂の硬化物でもよい。電離線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂でもよいし、電子線硬化性樹脂でもよい。電離線硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート化合物、アルキルアクリレート化合物、グリコールアクリレート化合物、ペンタエリスリトール化合物、トリメチロールプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。電離線硬化樹脂層31Pのなかで第1領域A1を構成する部分の材料は、電離線硬化樹脂層31Pのなかで第2領域A2を構成する部分の材料と同じでもよいし、電離線硬化樹脂層31Pのなかで第2領域A2を構成する部分の材料とは異なってもよい。
【0049】
電離線硬化樹脂層31Pは、調光層31のなかに空隙31Dを区画する。液晶組成物31LCは、空隙31Dに充填されている。空隙31Dは、当該空隙31Dに隣接する他の空隙31Dと隔絶されてもよいし、隣接する他の空隙31Dと接続されてもよい。空隙31Dの大きさは、2種以上である。空隙31Dの形状は、球形状、楕円体状、あるいは不定形状である。空隙31Dに外接する真球の直径は、0.1μm以上10μm以下でもよい。
【0050】
空隙31Dは、電離線硬化樹脂層31Pのなかに偏在してもよいし、電離線硬化樹脂層31Pのなかに均一に分散してもよい。空隙31Dは、電離線硬化樹脂層31Pの厚さ方向における中央よりも第1配向層32に近い第1範囲31H1において、第1配向層32に近い部位ほど多くなるように偏在してもよい。空隙31Dは、電離線硬化樹脂層31Pの厚さ方向における中央よりも第2配向層33に近い第2範囲31H2において、第2配向層33に近い部位ほど多くなるように偏在してもよい。
【0051】
空隙31Dは、電離線硬化性組成物の硬化物と液晶組成物31LCとの相分離によって形成される。液晶組成物31LCからなる液晶粒子は、相分離の過程において球形状を有しやすい。液晶粒子が充填される空隙31Dの形状もまた、球形状を有しやすい。第1配向層32に近い第1範囲31H1は、空隙31Dを偏在させやすい。電離線硬化樹脂層31Pのなかで第2配向層33に近い第2範囲31H2もまた、電離線の照射されはじめる部位であって、空隙31Dが形成されはじめる部位である。第2配向層33に近い第2範囲31H2もまた、空隙31Dを偏在させやすい。
【0052】
電離線硬化樹脂層31Pによる液晶組成物31LCの保持型式は、高分子分散型、ポリマーネットワーク型、カプセル型からなる群から選択されるいずれか1種である。高分子分散型の調光層31は、孤立した多数の空隙31Dを区画する電離線硬化樹脂層31Pを備える。高分子分散型の調光層31は、電離線硬化樹脂層31Pに分散した空隙31Dのなかに液晶組成物31LCを保持する。ポリマーネットワーク型の調光層31は、3次元の網目状を有した空隙31Dを電離線硬化樹脂層31Pを備える。ポリマーネットワーク型の調光層31は、相互に連通した網目状の空隙31Dのなかに液晶組成物31LCを保持する。カプセル型の調光層31は、電離線硬化樹脂層31Pのなかに分散したカプセル状の空隙31Dのなかに液晶組成物31LCを保持する。
【0053】
電離線硬化樹脂層31Pは、電離線硬化性組成物と液晶組成物31LCとを含有する調光塗工液の塗工と、塗工層に対する電離線の照射とによって形成される。調光塗工液は、電離線硬化性組成物の重合を開始するための重合開始剤を含む。電離線硬化樹脂層31Pは、重合を開始させた重合開始剤を含む。重合開始剤は、ジケトン化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサンソン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。重合開始剤は、1種類の化合物でもよいし、2種類以上の化合物の組み合わせでもよい。重合開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、シクロヘキシルフェニルケトンからなる群から選択されるいずれか1種でもよい。
【0054】
[空隙31Dの構造]
第1領域A1における空隙31Dの構造は、第2領域A2における空隙31Dの構造とは異なる。空隙31Dにおける構造の差異は、第1領域A1と第2領域A2とに共通した電圧信号によって、第1領域A1と第2領域A2との間における光学特性に差異を生じさせる。空隙31Dの構造は、下記(1A)(1B)(1C)からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。
(1A)空隙31Dの大きさ
(1B)空隙31Dの密度
(1C)空隙31Dの偏り
【0055】
空隙31Dの構造は、(1A)空隙31Dの大きさでもよい。空隙31Dの大きさは、第1面31Fの単位面積における、複数の空隙31Dのなかの最大径でもよいし、複数の空隙31Dの平均径でもよい。各空隙31Dは、第1面31Fに環状線として区画される。空隙31Dの大きさは、第1面31Fの単位面積における、各空隙31Dを区画する環状線の全長のなかの最大長でもよいし、複数の環状線の全長から得られる平均長でもよい。空隙31Dの大きさは、第2面31Sの単位面積における、複数の空隙31Dのなかの最大径でもよいし、複数の空隙31Dの平均径でもよい。空隙31Dの大きさは、第1面31Fの単位面積、および第2面31Sの単位面積における、複数の空隙31Dのなかの最大径でもよいし、複数の空隙31Dの平均径でもよい。空隙31Dの大きさは、第1面31Fの単位面積、および第2面31Sの単位面積における、複数の空隙31Dのなかの最大径でもよいし、複数の空隙31Dの平均径でもよい。調光層31の厚さ方向を含む断面において、当該断面の単位面積における、複数の空隙31Dのなかの最大径でもよいし、複数の空隙31Dの平均径でもよい。
【0056】
空隙31Dの構造は、(1B)空隙31Dの密度でもよい。空隙31Dの密度は、空隙31Dの占有面積率でもよい。占有面積率は、第1面31Fの単位面積に対する、当該単位面積のなかの全ての空隙31Dの総面積の比率でもよい。占有面積率は、第2面31Sの単位面積に対する、当該単位面積のなかの全ての空隙31Dの総面積の比率でもよい。占有面積率は、調光層31の厚さ方向を含む断面において、当該断面の単位面積に対する、当該単位面積のなかの全ての空隙31Dの総面積の比率でもよい。空隙31Dの密度は、空隙31Dの数量密度でもよい。数量密度は、第1面31Fの単位面積に対する、当該単位面積の第1面31Fに含まれる空隙31Dの総数量でもよい。数量密度は、第2面31Sの単位面積に対する、当該単位面積の第1面31Fに含まれる空隙31Dの総数量でもよい。
【0057】
空隙31Dの構造は、(1C)空隙31Dにおける偏りでもよい。空隙31Dの偏りは、電離線硬化樹脂層31Pの厚さ方向における中央と、電離線硬化樹脂層31Pの厚さ方向における全体との間の、(1A)空隙31Dの大きさの差異でもよいし、(1B)空隙31Dの密度の差異でもよい。空隙31Dの偏りは、第1範囲31H1と第2範囲31H2との間の、(1A)空隙31Dの大きさの差異でもよいし、(1B)空隙31Dの密度の差異でもよい。
【0058】
以下、第1面31Fと対向する視点から見た、各領域A1,A2における調光層31の平面構造の一例を説明する。また、第2面31Sと対向する視点から見た調光層31の平面構造のなかで第1面31Fと対向する視点から見た調光層31の平面構造と相違する構成を説明すると共に、第1面31Fと対向する視点から見た調光層31の平面構造と重複する構成の説明を割愛する。
図4、および
図5は、第1面31Fにおける空隙31Dと電離線硬化樹脂層31Pとの相違を明確に示すため、それぞれ空隙31Dにドットを付さず、かつ電離線硬化樹脂層31Pのみにドットを付す。
【0059】
図4、および
図5が示すように、調光層31は、空隙31Dが散在する電離線硬化樹脂層31P、および空隙31Dを充填する液晶組成物31LCを備える。液晶組成物31LCからなる液晶粒子は、相分離の過程において球形状を有しやすい。また、液晶粒子の相分離が第1面31Fのほぼ全面ではじまるため、電離線硬化樹脂層31Pに区画される空隙31Dは、相互に等しい大きさの球形状を有しやすい。一方、相互に等しい大きさの球形状を有した空隙31Dであっても、第1面31Fに現れる空隙31Dの外形線は、当該空隙31Dの中心が第1面31Fから離れるほど、小さい環状を有しやすい。例えば、
図4、および
図5が示すように、相対的に大きい環状を有した空隙31Dの中心は、相対的に小さい環状を有した空隙31Dの中心よりも、第1面31Fの近くに配置されやすい。
【0060】
上述したように、空隙31Dの構造は、(1A)空隙31Dの大きさでもよい。空隙31Dの大きさは、第1面31Fの単位面積における、複数の空隙31Dのなかの最大径でもよいし、複数の空隙31Dの平均径でもよい。単位面積は、1辺が100μmの矩形領域の有する面積でもよい。
【0061】
図4が示すように、第1領域A1において、空隙31Dの最大径R1は、第1面31Fの単位面積に含まれる空隙31Dの外接円の直径のなかの最大値である。
図5が示すように、第2領域A2において、空隙31Dの最大径R2は、第1面31Fの単位面積に含まれる空隙31Dの外接円の直径のなかの最大値である。第1領域A1における空隙31Dの最大径R1は、第2領域A2における空隙31Dの最大径R2よりも大きくてもよい。
【0062】
第1領域A1における空隙31Dの最大径R1は、第2領域A2における空隙31Dの最大径R2の9倍以上でもよい。第1領域A1における最大径R1が第2領域A2の最大径R2の9倍以上であることは、第1領域A1と第2領域A2との間の視認性の相違を際立たせる。第1領域A1における空隙31Dの最大径R1は、第2領域A2における空隙31Dの最大径R2よりも大きく、かつ300nm以上1mm以下でもよい。最大径R1が1mm以下であることは、調光層31そのものの機械的な強度の過度な低下を抑えると共に、調光層31と他の層との間においける剥離強度の過度な低下を抑える。
【0063】
空隙31Dの中心が第1面31Fから離れるほど、第1面31Fにおける空隙31Dの外接円の直径は小さくなりやすいから、第1面31Fにおける複数の空隙31Dのなかの最大径は、電離線硬化樹脂層31Pに含まれる空隙31Dの直径そのものに近似している。第1面31Fにおける複数の空隙31Dのなかの平均径は、電離線硬化樹脂層31Pに含まれる空隙31Dの直径の大きさを示唆する。空隙31Dの直径は、例えば、液晶組成物31LCと電離線硬化樹脂層31Pとの総重量に対する電離線硬化樹脂層31Pの比率が相互にほぼ等しい前提において、電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの界面の大きさを示す。電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの界面そのものの大きさは、調光層31に入射した可視光の散乱される度合いを示す。
【0064】
上述したように、空隙31Dの構造は、(1B)空隙31Dの密度でもよい。空隙31Dの占有面積率や、空隙31Dの数量密度は、例えば、空隙31Dの直径が相互にほぼ等しい前提において、電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの界面の大きさを示す。空隙31Dの占有面積率や、空隙31Dの数量密度は、例えば、液晶組成物31LCと電離線硬化樹脂層31Pとの総重量に対する液晶組成物31LCの比率が相互にほぼ等しい前提において、電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの界面の大きさを示す。電離線硬化樹脂層31Pと液晶組成物31LCとの界面そのものの大きさは、調光層31に入射した可視光の散乱される度合いを示す。
【0065】
上述したように、空隙31Dの構造は、(1C)空隙31Dの偏りでもよい。第1配向層32に接する液晶組成物31LCは、第1配向層32に接しない液晶組成物31LCよりも、第1配向層32の配向規制力を受けやすい。第1透明電極層34に接する液晶組成物31LCは、第1透明電極層34に接しない液晶組成物31LCよりも、電場による配向規制力を受けやすい。液晶組成物31LCにおける配向規制力の作用の受けやすさは、電圧信号の入力時、あるいは電圧信号の入力停止時に、調光層31の応答する度合いを示す。
【0066】
[調光層31の密着強度]
調光層31が第1配向層32に接する調光シート11において、調光層31と第1配向層32との界面に配置される空隙31Dは、調光層31と第1配向層32との間における密着強度を低める。調光層31が第1透明電極層34に接する調光シート11において、調光層31と第1透明電極層34との界面に配置される空隙31Dは、調光層31と第1透明電極層34との間における密着強度を低める。調光層31と第1透明電極基材との界面に配置される空隙31Dの大きさが大きいほど、また空隙31Dの数量が増えるほど、調光層31と第1透明電極基材との間における密着強度は低められる。調光層31と第1透明電極基材との間における密着強度は、JIS Z-0237:2009に準じた測定による調光層31と第1透明電極基材との間の180°における剥離強度である。
【0067】
第1領域A1の密着強度は、第1領域A1と第2領域A2とに共通した透明電極層34,35の間の電圧によって各領域A1,A2の間で光学特性が異なるように、第2領域A2の密着強度とは異なってもよい。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度よりも高くてもよいし、第2領域A2の密着強度よりも低くてもよい。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度よりも高く、かつ第2領域A2の密着強度の2倍以下でもよい。第1領域A1の密着強度が第2領域A2の密着強度の2倍以下であることは、調光シート11の面内における剥離強度のばらつきを抑える。
【0068】
上述したように、第1配向層32に接する液晶組成物31LCは、第1配向層32に接しない液晶組成物31LCよりも、第1配向層32の配向規制力を受けやすい。第1透明電極層34に接する液晶組成物31LCは、第1透明電極層34に接しない液晶組成物31LCよりも、電場による配向規制力を受けやすい。第1領域A1の密着強度、および第2領域A2の密着強度は、各領域A1,A2の液晶組成物31LCにおける配向規制力の作用の受けやすさを示す。液晶組成物31LCにおける配向規制力の作用の受けやすさは、電圧信号の入力時、あるいは電圧信号の入力停止時に、調光層31の応答する度合いを示す。
【0069】
[各領域A1,A2の光学特性]
第1領域A1の光学特性と第2領域A2の光学特性との差異は、第1領域A1の視認性と第2領域A2の視認性との差異を生じさせる。第1領域A1の光学特性と第2領域A2の光学特性との差異は、下記(2A)(2B)(2C)からなる群から選択される少なくとも1つのタイミングにおける差異でもよい。第1領域A1の光学特性と第2領域A2の光学特性との差異は、調光シート11の観察者に各領域A1,A2の形状を把握させる。各領域A1,A2の光学特性は、各領域A1,A2における可視光の散乱度合いでもよいし、可視光の吸収度合いでもよい。第1領域A1の光学特性は、第1領域A1から第2領域A2に向けて、第2領域A2の光学特性に徐々に変わってもよいし、第2領域A2の光学特性に急峻に変わってもよい。第2領域A2の光学特性は、第2領域A2から第1領域A1に向けて、第1領域A1の光学特性に徐々に変わってもよいし、第1領域A1の光学特性に急峻に変わってもよい。
(2A)調光シート11の透明時における光学特性の差異
(2B)調光シート11の不透明時における光学特性の差異
(2C)調光シート11の透明時と不透明時との間の過渡状態における光学特性の差異
【0070】
第1領域A1の光学特性と第2領域A2の光学特性とは、下記(3A)~(3I)からなる群から選択される少なくとも1つの光学パラメータにおける差異でもよい。ヘイズ、直線透過率、拡散透過率、および全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準じた方法によって計測される。下記(3A)~(3I)からなる群から選択される少なくとも1つの光学パラメータの差異は、調光シート11の観察者に、(2A)透明時、(2B)不透明時、あるいは(2C)中間時に、領域A1と領域A2との境界を視認させる。
(3A)各領域A1,A2におけるヘイズ
(3B)各領域A1,A2における単位電圧あたりのヘイズの変化量
(3C)各領域A1,A2における直線透過率
(3D)各領域A1,A2における単位電圧あたりの直線透過率の変化量
(3E)各領域A1,A2における拡散透過率
(3F)各領域A1,A2における単位電圧あたりの拡散透過率の変化量
(3G)各領域A1,A2における全光線透過率
(3H)各領域A1,A2における単位電圧あたりの全光線透過率の変化量
(3I)各領域A1,A2が呈する色
【0071】
第1領域A1のヘイズから第2領域A2のヘイズを差し引いた値は、領域ヘイズ差である。領域ヘイズ差は、駆動信号である電圧信号の入力によって増大してもよいし、電圧信号の入力によって低下してもよい。領域ヘイズ差は、電圧信号の入力停止によって増大してもよいし、電圧信号の入力停止によって低下してもよい。電圧信号の入力による領域ヘイズ差の変化分は、20%以上でもよい。領域ヘイズ差の変化分が20%以上であることは、第1領域A1と第2領域A2との差異の視認性を高める。
【0072】
各領域A1,A2が呈する色は、色相、明度、および彩度からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。各領域A1,A2が呈する色は、二色性色素DPによって設定されてもよい。各領域A1,A2が呈する色は、液晶組成物31LCのなかで、色素、顔料、および発光体からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤によって設定されてもよい。
【0073】
[配向層32,33]
第1配向層32と第2配向層33とは、それぞれ液晶化合物LCMの配向方向を規制する。第1配向層32と第2配向層33とは、それぞれ無色透明、あるいは有色透明に視認される。第1配向層32と第2配向層33とは、垂直配向膜でもよいし、水平配向膜でもよい。
【0074】
第1配向層32と第2配向層33とを構成する材料は、有機高分子化合物、あるいは無機酸化物である。有機高分子化合物は、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコールからなる群から選択されるいずれか1種でもよい。無機酸化物は、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム、シリコーンからなる群から選択されるいずれか1種でもよい。第1配向層32と第2配向層33との厚さは、それぞれ独立に20nm以上500nm以下でもよい。
【0075】
第1配向層32と第2配向層33とがそれぞれ垂直配向膜である場合、第1配向層32と第2配向層33とは、それぞれ調光層31の厚さ方向に液晶化合物LCMの長軸方向を沿わせるように、液晶化合物LCMに配向規制力を加える。これによって、第1配向層32と第2配向層33とは、電圧信号の入力停止期間に、調光層31に可視光を透過させる。
【0076】
第1配向層32と第2配向層33とがそれぞれ水平配向膜である場合、調光シート11が偏光層を備える。液晶化合物LCMの長軸方向が偏光層の透過軸の延在方向と平行になるように、第1配向層32と第2配向層33とが液晶化合物LCMに配向規制力を加える。これによって、第1配向層32と第2配向層33とは、電圧信号の入力停止期間に、偏光層を通して調光層31に可視光を透過させる。
【0077】
第1配向層32と第2配向層33とがそれぞれ水平配向膜である場合、調光シート11が直交ニコルに配置された偏光層を備える。液晶化合物LCMの長軸方向が1つの偏光層の透過軸の延在方向と平行になるように、第1配向層32が液晶化合物LCMに配向規制力を加える。液晶化合物LCMの長軸方向が他の偏光層の透過軸の延在方向と平行になるように、第2配向層33が液晶化合物LCMに配向規制力を加える。すなわち、第1配向層32と第2配向層33とは、液晶化合物LCMにツイスト配向の規制力を加える。これによって、第1配向層32と第2配向層33とは、電圧信号の入力停止期間に、偏光層を通して調光層31に可視光を透過させる。
【0078】
なお、第1配向層32と第2配向層33とがそれぞれ水平配向膜である場合、調光シート11が相互に平行な透過軸を有する2つの偏光層を備える。液晶化合物LCMの長軸方向が偏光層の透過軸の延在方向に45°で交差するように、第1配向層32と第2配向層33とが液晶化合物LCMに配向規制力を加える。これによって、第1配向層32と第2配向層33とは、電圧信号の入力停止期間に、偏光層を通した可視光の調光層31の透過を抑制する。第1透明電極層34と第2透明電極層35との間に印加される電圧は、配向規制力に抗した垂直配向を液晶化合物LCMに与えて、偏光層を通した可視光を調光層31に透過させる。
【0079】
[調光シート11の製造方法]
調光シート11の製造方法は、第1透明電極層34に第1配向層32を形成すること、および第2透明電極層35に第2配向層33を形成することを含む。第1配向層32は、第1透明支持層36に積層された第1透明電極層34に配向塗工液を塗工し、配向塗工層を加熱することによって形成される。第2配向層33は、第2透明支持層37に積層された第2透明電極層35に配向塗工液を塗工し、配向塗工層を加熱することによって形成される。
【0080】
調光シート11の製造方法は、第1配向層32と第2配向層33との間に、調光塗工層を形成することを含む。調光塗工層は、電離線硬化性組成物と液晶組成物31LCとを含む。調光塗工層は、第1透明支持層36に支持された第1配向層32に調光塗工液を塗工することによって形成される。調光塗工層は、第1透明支持層36に支持された第1配向層32と、第2透明支持層37に支持された第2配向層33と、に挟まれる。
【0081】
第1領域A1を形成するための調光塗工液は、第2領域A2を形成するための調光塗工液とは異なってもよい。第1領域A1と第2領域A2との間で異なる調光塗工液の構成は、電離線硬化性組成物の成分でもよいし、液晶組成物31LCの成分でもよいし、電離線硬化性組成物の成分と、液晶組成物31LCの成分と、の両方でもよい。第1領域A1と第2領域A2との間で異なる調光塗工液の構成は、電離線硬化性組成物に対する液晶組成物31LCの配合比でもよい。第1領域A1と第2領域A2との間で異なる調光塗工液の構成は、第1領域A1と第2領域A2との間で異なる空隙31Dの構造を形成する。
【0082】
例えば、第1領域A1を形成するための電離線硬化性組成物は、第2領域A2を形成するための電離線硬化性組成物よりも重合速度を低める配合であってもよいし、重合速度を高める配合であってもよい。電離線硬化性組成物の重合速度を高める成分は、チオール化合物でもよい。電離線硬化性組成物の重合速度を低める成分は、重合禁止剤でもよい。電離線硬化性組成物の重合速度を高めることは、調光塗工層のなかの相分離を速めやすく、結果として、空隙31Dの生成される点を増やして、空隙31Dの大きさを小さくしやすい。反対に、電離線硬化性組成物の重合速度を遅らせることは、調光塗工層のなかで相分離を遅らせて、結果として、空隙31Dの生成される点を減らして、空隙31Dの大きさを大きくしやすい。
【0083】
各領域A1,A2を形成するための調光塗工液が相互に異なる場合、各調光塗工液は、他の調光塗工液に対し親液性の低い成分を含有してもよい。他の調光塗工液に親液性の低い成分は、他の調光塗工液に混じらずに、所定の領域A1,A2のなかに留まりやすい。結果として、相互に異なる調光塗工液から、各調光塗工液の配合などに合致した空隙31Dの構造が得られやすい。
【0084】
調光シート11の製造方法は、調光塗工層に電離線を照射することを含む。調光塗工層に電離線を照射することは、第1配向層32と第2配向層33との間に、空隙31Dを区画する電離線硬化樹脂層31Pと、空隙31Dに充填される液晶組成物31LCと、を形成する。調光塗工層は、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて電離線を照射されてもよいし、第2透明支持層37から調光塗工層に向けて電離線を照射されてもよいし、これらの組み合わせによって電離線を照射されてもよい。
【0085】
電離線を照射された電離線硬化性組成物は、重合を開始させると共に、液晶組成物31LCからなる液晶粒子を重合体から相分離させる。液晶組成物31LCからなる液晶粒子の相分離は、電離線硬化性組成物の重合と、液晶組成物31LCの拡散と、を通じて進む。電離線硬化性組成物の重合開始は、電離線硬化性組成物に照射される電離線の照射方向によって変わる。電離線硬化性組成物の重合速度は、電離線硬化性組成物の成分、および電離線硬化性組成物に照射される電離線の照射強度や照射時間によって変わる。液晶組成物31LCの拡散速度は、電離線硬化性組成物の重合時の処理温度によって変わる。液晶組成物31LCの相分離では、液晶粒子の大きさや配置を所望の構造にするように、すなわち空隙31Dの構造を所望の構造にするように、電離線硬化性組成物の成分、あるいは電離線硬化性組成物に照射される電離線の照射態様が設定される。また、液晶組成物31LCの相分離では、液晶組成物31LCの拡散を促すための加熱を行ってもよい。
【0086】
例えば、空隙31Dの大きさを小さくすることが求められる場合、電離線硬化性組成物に照射される電離線の強度を高めて、液晶組成物31LCの拡散を抑えるための低い温度で重合を進めることが好ましい。空隙31Dの大きさを大きくすることが求められる場合、電離線硬化性組成物に照射される電離線の強度を低めて、液晶組成物31LCの拡散を促すための高い温度で重合を進めることが好ましい。
【0087】
第1領域A1を形成するための電離線の照射態様は、第2領域A2を形成するための電離線の照射態様とは異なってもよい。電離線の照射態様は、電離線の照射時間でもよいし、電離線の照射強度でもよいし、電離線の波長でもよいし、電離線の照射方向でもよいし、電離線を照射するときの調光塗工層の温度でもよい。電離線の照射方向は、第1透明電極層34から調光塗工層に向けた方向でもよいし、第2透明電極層35から調光塗工層に向けた方向でもよい。第1領域A1と第2領域A2との間で異なる電離線の照射態様は、電離線の照射時間、電離線の照射強度、電離線の波長、電離線の照射方向、および電離線を照射するときの調光塗工層の温度からなる群から選択される少なくとも1つでもよい。
【0088】
[実施例]
実施例、および比較例の調光シート11を以下に示す。実施例1から実施例4、および比較例は、各配向層32,33を割愛されたノーマル型の調光シート11を示す。実施例5は、各配向層32,33に垂直配向膜を備えたリバース型の調光シート11を示す。実施例1から実施例5、および比較例の調光シート11は、それぞれ相違する電離線の照射態様によって形成される。
【0089】
まず、実施例1から実施例5、および比較例に共通する、第1透明電極層34、第2透明電極層35、第1透明支持層36、第2透明支持層37の構成材料を以下に示す。
・第1透明電極層34:厚さが30nmの酸化インジウムスズ
・第2透明電極層35:厚さが30nmの酸化インジウムスズ
・第1透明支持層36:厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
・第2透明支持層37:厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム
【0090】
[実施例1]
次に、実施例1の調光シート11における構成材料と形成方法とを以下に示す。
まず、下記液晶化合物LCM、スペーサーSP、重合開始剤、および電離線硬化性組成物を用いて調光塗工液を生成した。調光塗工液は、50重量部の液晶化合物LCM、30μmの直径を有した1重量部のスペーサーSP、2重量部の重合開始剤、および47重量部の電離線硬化性組成物の混合物である。
【0091】
次に、バーコーターを用いて第1透明電極層34に調光塗工液を塗工し、調光塗工層の上に第2透明電極層35を配置して、第1透明支持層36と第2透明支持層37とに挟まれた調光塗工層を形成した。次に、第2領域A2となる領域に紫外線を遮蔽するマスクを配置し、かつ第1領域A1となる領域に、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて、12mW/cm2の紫外線を5秒間にわたり照射した。これによって、実施例1の調光層31として、厚さが30μmの調光層31を得た。
【0092】
[調光塗工液原料]
・液晶化合物LCM:製品名MLC-6609(メルク株式会社製)
・スペーサーSP:ジビニルベンゼン製真球状(積水化成品工業株式会社製)
・重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン
[電離線硬化性組成物]
・イソボルニルアクリレート:17重量部
・3-[(2,2-dimethyl-3-{[6-(prop-2-enoyloxy)hexanoyl]oxy}propanoyl)oxy]-2,2-dimethylpropyl-6-(prop-2-enoyloxy)hexanoate:20重量部
・ペンタエリスリトールテトラアルキレート:5重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート):5重量部
【0093】
[実施例2]
次に、実施例2の調光シート11における構成材料と形成方法とを以下に示す。
まず、実施例1の調光塗工液におけるスペーサーSPの直径を30μmから5μmに変更し、それ以外の構成を実施例1と同じくして、実施例2の調光塗工液を得た。そして、実施例1と同じく、第1透明電極層34に調光塗工液を塗工し、調光塗工層の上に第2透明電極層35を配置して、第1透明支持層36と第2透明支持層37とに挟まれた調光塗工層を形成した。次に、第2領域A2となる領域に紫外線を遮蔽するマスクを配置し、かつ第1領域A1となる領域に、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて、12mW/cm2の紫外線を5秒間にわたり照射した。これによって、実施例2の調光層31として、厚さが5μmの調光層31を得た。
【0094】
[実施例3]
次に、実施例3の調光シート11における構成材料と形成方法とを以下に示す。
まず、実施例1の調光塗工液を用い、実施例1と同じく、第1透明電極層34に調光塗工液を塗工し、調光塗工層の上に第2透明電極層35を配置して、第1透明支持層36と第2透明支持層37とに挟まれた調光塗工層を形成した。次に、第2領域A2となる領域に紫外線を遮蔽するマスクを配置し、かつ第1領域A1となる領域に、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて、50mW/cm2の紫外線を5秒間にわたり照射した。これによって、実施例3の調光層31として、厚さが30μmの調光層31を得た。
【0095】
[実施例4]
次に、実施例4の調光シート11における構成材料と形成方法とを以下に示す。
まず、実施例1における重合開始剤の配合量を2重量部から0.2重量部に変更した。また、実施例1における電離線硬化性組成物の配合量を下記のように変更した。そして、実施例1と同じく、第1透明電極層34に調光塗工液を塗工し、調光塗工層の上に第2透明電極層35を配置して、第1透明支持層36と第2透明支持層37とに挟まれた調光塗工層を形成した。次に、第2領域A2となる領域に紫外線を遮蔽するマスクを配置し、かつ第1領域A1となる領域に、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて、12mW/cm2の紫外線を5秒間にわたり照射した。これによって、実施例4の調光層31として、厚さが30μmの調光層31を得た。
【0096】
[電離線硬化性組成物]
・イソボルニルアクリレート:17重量部
・3-[(2,2-dimethyl-3-{[6-(prop-2-enoyloxy)hexanoyl]oxy}propanoyl)oxy]-2,2-dimethylpropyl-6-(prop-2-enoyloxy)hexanoate:24.8重量部
・ペンタエリスリトールテトラアルキレート:3重量部
・ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート):5重量部
【0097】
[実施例5]
次に、実施例5の調光シート11における構成材料と形成方法とを以下に示す。
第1透明電極層34にポリアミック酸を含有する配向層塗液を塗工して第1配向層32を得た。同じく、第2透明電極層35に配向塗工液を塗工して第2配向層33を得た。
実施例1の調光塗工液における液晶化合物LCM、および重合開始剤を以下のように変更した。調光塗工液は、50重量部の液晶化合物LCM、7μmの直径を有した1重量部のスペーサーSP、1重量部の重合開始剤、および47重量部の電離線硬化性組成物の混合物である。
【0098】
次に、バーコーターを用いて第1配向層32に調光塗工液を塗工し、調光塗工層の上に第2配向層33を配置して、第1透明支持層36と第2透明支持層37とに挟まれた調光塗工層を形成した。次に、第2領域A2となる領域に紫外線を遮蔽するマスクを配置し、かつ第1領域A1となる領域に、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて、12mW/cm2の紫外線を5秒間にわたり照射した。これによって、実施例5の調光シート11として、厚さが7μmの調光層31を備えたリバース型の調光シート11を得た。
【0099】
[調光塗工液原料]
・液晶化合物LCM:製品名MLC-6608(メルク株式会社製)
・スペーサーSP:ジビニルベンゼン製真球状(積水化成品工業株式会社製)
・重合開始剤:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
【0100】
[比較例]
次に、比較例の調光シート11における構成材料と形成方法とを以下に示す。
まず、実施例1の調光塗工液を用い、第1透明電極層34に調光塗工液を塗工し、調光塗工層の上に第2透明電極層35を配置して、第1透明支持層36と第2透明支持層37とに挟まれた調光塗工層を形成した。次に、第2領域A2となる領域、および第1領域A1となる領域に、第1透明支持層36から調光塗工層に向けて、12mW/cm2の紫外線を5秒間にわたり照射した。これによって、比較例の調光層31として、厚さが30μmの調光層31を得た。
【0101】
[空隙31Dの構造]
まず、実施例1から実施例4、および比較例の調光シート11において、調光層31から第1透明電極層34を剥離し、剥離後の調光層31をアセトンによって洗浄した。実施例5の調光シート11において、調光層31から第1配向層32を剥離し、剥離後の調光層31をアセトンによって洗浄した。これによって、第1面31Fに空隙31Dを露出した電離線硬化樹脂層31Pを得た。
【0102】
次に、第1面31Fのなかの第1領域A1を構成する部分において、1辺が100μmの矩形領域を走査電子顕微鏡によって観察し、当該矩形領域のなかの最大空隙径を計測した。また、第1面31Fのなかの第2領域A2を構成する部分において、1辺が100μmの矩形領域を走査電子顕微鏡によって観察し、当該矩形領域のなかの最大空隙径を計測した。最大空隙径は、矩形領域に含まれる空隙31Dの直径のなかの最大値である最大径R1である。空隙31Dの直径は、第1面31Fにおいて空隙31Dの外接円が有する直径である。
【0103】
[光学特性]
まず、実施例1、実施例3、および比較例の調光シート11に200Vの交流電圧信号を入力し、各領域A1,A2が不透明から透明に変わることを確認した。次に、JIS K 7136:2000に準じた方法を用い、電圧信号の入力時における各領域A1,A2のヘイズと、電圧信号の入力停止時における各領域A1,A2のヘイズと、を測定した。また、不透明時に入力される電圧を徐々に高め、各領域A1,A2でヘイズが立ち上がるときの電圧を、それぞれ閾値電圧として計測した。
【0104】
また、実施例2の調光シート11に30Vの交流電圧信号を入力し、各領域A1,A2が不透明から透明に変わることを確認した。次に、JIS K 7136:2000に準じた方法を用い、電圧信号の入力時における各領域A1,A2のヘイズと、電圧信号の入力停止時における各領域A1,A2のヘイズと、を測定した。また、不透明時に入力される電圧を徐々に高め、各領域A1,A2でヘイズが立ち上がるときの電圧を、それぞれ閾値電圧として計測した。
【0105】
また、実施例4の調光シート11に48Vの交流電圧信号を入力し、各領域A1,A2が不透明から透明に変わることを確認した。次に、JIS K 7136:2000に準じた方法を用い、電圧信号の入力時における各領域A1,A2のヘイズと、電圧信号の入力停止時における各領域A1,A2のヘイズと、を測定した。また、不透明時に入力される電圧を徐々に高め、各領域A1,A2でヘイズが立ち上がるときの電圧を、それぞれ閾値電圧として計測した。
【0106】
また、実施例5の調光シート11に12Vの交流電圧信号を入力し、各領域A1,A2が透明から不透明に変わることを確認した。また、実施例5の調光シート11に48Vの交流電圧信号を入力し、各領域A1,A2が透明から不透明に変わることを確認した。次に、JIS K 7136:2000に準じた方法を用い、電圧信号の入力時における各領域A1,A2のヘイズと、電圧信号の入力停止時における各領域A1,A2のヘイズと、を測定した。また、透明時に入力される電圧を徐々に高め、各領域A1,A2でヘイズが立ち上がるときの電圧を、それぞれ閾値電圧として計測した。
【0107】
[密着強度]
実施例1から実施例5、および比較例の調光シート11から25mmの幅を有する短冊状の試験片を切り出し、JIS Z-0237:2009に準じた方法を用いて、引きはがし角度が180°であるときの剥離強度を測定した。この際、試験片の第1透明支持層36を試験板に固定すると共に、試験片の第2透明支持層37を試験板に対して180°に引きはがした。
【0108】
[評価]
図6が示すように、実施例1の調光シート11において、第1領域A1の最大空隙径は4μmであった。第2領域A2の最大空隙径は69μmであった。第1領域A1の最大空隙径に対する第2領域A2の最大空隙径の比は、17であった。これにより、第1領域A1と第2領域A2との間で電離線の照射態様が異なると、30μmの調光層31において、最大空隙径の異なる空隙31Dの構造が得られることが認められた。
【0109】
実施例1の各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ電圧信号の入力時に5%であった。実施例1における第1領域A1のヘイズは、電圧信号の入力停止時に99%であった。実施例1における第2領域A2のヘイズは、電圧信号の入力停止時に63%であった。そして、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、不透明時の白濁度合いを変えることが認められた。また、白濁度合いの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能であることが認められた。
【0110】
実施例1における第1領域A1の閾値電圧は、33Vであった。実施例1における第2領域A2の閾値電圧は、2Vであった。これにより、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、ヘイズの立ち上がる閾値電圧を変えることが認められた。そして、第1領域A1と第2領域A2との間のヘイズの立ち上がりの差異は、電圧信号の入力時に、第1領域A1のヘイズが99%、かつ第2領域A2のヘイズが5%であった状態から、第1領域A1のヘイズが5%、かつ第2領域A2のヘイズが5%であった状態に遷移させることが認められた。このように、領域A1,A2の間のヘイズの立ち上がりの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能にする演出に多様性を与える。
【0111】
実施例1における第1領域A1の剥離強度は、0.16N/25mmであった。実施例1における第2領域A2の剥離強度は、0.17N/25mmであった。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度の1倍以下であり、0.94倍であった。これにより、4μmから69μmのなかで、各領域A1,A2の最大空隙径が差異を有することは、剥離強度に差異を有することを抑える。このため、剥離強度の差異に起因した耐久性の低下が抑えられる。
【0112】
実施例2の調光シート11において、第1領域A1の最大空隙径は6μmであった。第2領域A2の最大空隙径は56μmであった。第1領域A1の最大空隙径に対する第2領域A2の最大空隙径の比は、9であった。これにより、第1領域A1と第2領域A2との間で電離線の照射態様が異なると、5μmの調光層31において、最大空隙径の異なる空隙31Dの構造が得られることが認められた。また、実施例1と実施例2との比較から、電離線硬化性組成物の配合量、および照射態様が相互に同じであっても、調光層31の厚さを厚くすることは、最大空隙径の差異を小さくすることが認められた。
【0113】
実施例2の各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ電圧信号の入力時に3%であった。実施例2における第1領域A1のヘイズは、電圧信号の入力停止時に76%であった。実施例2における第2領域A2のヘイズは、電圧信号の入力停止時に49%であった。そして、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、不透明時の白濁度合いを変えることが認められた。また、白濁度合いの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能であることが認められた。また、実施例1と実施例2との比較から、第1領域A1と第2領域A2との間で最大空隙径の差異が大きいことは、第1領域A1と第2領域A2との間でヘイズ差が大きいことであることが認められた。
【0114】
実施例2における第1領域A1の閾値電圧は、2Vであった。実施例2における第2領域A2の閾値電圧は、2Vであった。実施例1と実施例2との比較から、調光層31の厚さが5μmであれば、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、ヘイズの立ち上がる閾値電圧をほぼ等しくできることも認められた。
【0115】
実施例2における第1領域A1の剥離強度は、0.08N/25mmであった。実施例2における第2領域A2の剥離強度は、0.09N/25mmであった。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度の1倍以下であり、0.89倍であった。これにより、6μmから56μmのなかで、各領域A1,A2の最大空隙径が差異を有することは、剥離強度に差異を有することを抑える。このため、剥離強度の差異に起因した耐久性の低下が抑えられる。
【0116】
実施例3の調光シート11において、第1領域A1の最大空隙径は0.3μmであった。第2領域A2の最大空隙径は69μmであった。第1領域A1の最大空隙径に対する第2領域A2の最大空隙径の比は、230であった。これにより、第1領域A1と第2領域A2との間で電離線の照射態様が異なると、30μmの調光層31において、最大空隙径の異なる空隙31Dの構造が得られることが認められた。また、実施例1と実施例3との比較から、電離線硬化性組成物の配合量が相互に同じであっても、照射強度を高めることは、最大空隙径そのものを小さくすることが認められた。
【0117】
実施例3の各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ電圧信号の入力時に5%であった。実施例3における第1領域A1のヘイズは、電圧信号の入力停止時に99%であった。実施例3における第2領域A2のヘイズは、電圧信号の入力停止時に63%であった。そして、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、不透明時の白濁度合いを変えることが認められた。また、白濁度合いの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能であることが認められた。
【0118】
実施例3における第1領域A1の閾値電圧は、80Vであった。実施例3における第2領域A2の閾値電圧は、2Vであった。上述したように、第1領域A1と第2領域A2との間のヘイズの立ち上がりの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能にする演出に多様性を与える。
【0119】
実施例3における第1領域A1の剥離強度は、0.15N/25mmであった。実施例3における第2領域A2の剥離強度は、0.17N/25mmであった。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度の1倍以下であり、0.88倍であった。これにより、0.3μmから69μmのなかで、各領域A1,A2の最大空隙径が差異を有することは、剥離強度に差異を有することを抑えることが認められた。このため、剥離強度の差異に起因した耐久性を抑えられる。
【0120】
実施例4の調光シート11において、第1領域A1の最大空隙径は86μmであった。第2領域A2の最大空隙径は998μmであった。第1領域A1の最大空隙径に対する第2領域A2の最大空隙径の比は、12であった。これにより、第1領域A1と第2領域A2との間で電離線の照射態様が異なると、100μmの調光層31において、最大空隙径の異なる空隙31Dの構造が得られることが認められた。また、実施例1と実施例4との比較から、照射態様が相互に同じであっても、電離線硬化性組成物の配合量、および調光層31の厚さが相互に異なることは、最大空隙径そのものを異ならせることが認められた。
【0121】
実施例4の各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ電圧信号の入力時に3%であった。実施例4における第1領域A1のヘイズは、電圧信号の入力停止時に30%であった。実施例4における第2領域A2のヘイズは、電圧信号の入力停止時に8%であった。そして、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、不透明時の白濁度合いを変えることが認められた。また、白濁度合いの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能であることが認められた。
【0122】
実施例4における第1領域A1の閾値電圧は、1Vであった。実施例4における第2領域A2の閾値電圧は、0.5Vであった。上述したように、第1領域A1と第2領域A2との間のヘイズの立ち上がりの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能にする演出に多様性を与える。
【0123】
実施例4における第1領域A1の剥離強度は、0.15N/25mmであった。実施例4における第2領域A2の剥離強度は、0.10N/25mmであった。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度の2倍以下であり、1.5倍であった。これにより、86μmから998μmのなかで、各領域A1,A2の最大空隙径が差異を有することは、剥離強度に差異を有することを抑えることが認められた。このため、剥離強度の差異に起因した耐久性の低下が抑えられる。
【0124】
実施例5の調光シート11において、第1領域A1の最大空隙径は5μmであった。第2領域A2の最大空隙径は53μmであった。第1領域A1の最大空隙径に対する第2領域A2の最大空隙径の比は、10であった。これにより、第1領域A1と第2領域A2との間で電離線の照射態様が異なると、7μmの調光層31において、最大空隙径の異なる空隙31Dの構造が得られることが認められた。また、実施例1,2と実施例5との比較から、リバース型の調光層31は、ノーマル型の調光層31とほぼ同じ程度の最大空隙径を得られることが認められた。
【0125】
実施例5の各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ電圧信号の入力停止時に5%であった。実施例5における第1領域A1のヘイズは、12Vの交流電圧信号の入力時に6%であった。実施例5における第2領域A2のヘイズは、12Vの交流電圧信号の入力時に80%であった。なお、実施例5の各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ48Vの交流電圧信号の入力時に90%であった。そして、各領域A1,A2における最大空隙径の差異は、不透明時の白濁度合いを変えることが認められた。また、白濁度合いの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能にすることが認められた。
【0126】
実施例5における第1領域A1の閾値電圧は、20Vであった。実施例4における第2領域A2の閾値電圧は、2Vであった。上述したように、第1領域A1と第2領域A2との間のヘイズの立ち上がりの差異は、各領域A1,A2を視覚によって識別可能にする演出に多様性を与える。
【0127】
実施例5における第1領域A1の剥離強度は、0.09N/25mmであった。実施例4における第2領域A2の剥離強度は、0.08N/25mmであった。第1領域A1の密着強度は、第2領域A2の密着強度の1.5倍以下であり、1.1倍であった。これにより、5μmから53μmのなかで、各領域A1,A2の最大空隙径が差異を有することは、剥離強度に差異を有することを抑えることが認められた。このため、剥離強度の差異に起因した耐久性の低下が抑えられる。
【0128】
比較例の調光シート11において、各領域A1,A2の最大空隙径は4μmであった。
各領域A1,A2におけるヘイズは、それぞれ電圧信号の入力時に5%であった。比較例における各領域A1,A2のヘイズは、電圧信号の入力停止時に99%であった。比較例における各領域A1,A2の閾値電圧は、33Vであった。比較例における各領域A1,A2の剥離強度は、0.16N/25mmであった。
【0129】
実施例1と実施例2との間でのヘイズの比較によれば、第1領域A1の最大径に対し第2領域A2の最大径が9倍以上であることは、第1領域A1と第2領域A2との間で調光層31の厚さの差が25μmであることより、大きなヘイズ差を得ることが認められた。
【0130】
実施例1~3と実施例4との間でのヘイズの比較によれば、各領域A1,A2の最大径が70μm以下であることは、第1領域A1であれ、第2領域A2であれ、電圧信号の入力時と入力停止時との間で50%以上のヘイズ差を得ることが認められた。
【0131】
[効果]
以上説明したように、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)各領域A1,A2に共通した電圧信号の入力によって第1領域A1の光学特性が第2領域A2の光学特性とは異なるように、第1領域A1と第2領域A2との間で空隙31Dの構造が異なる。このため、調光シート11は、多様な意匠を施すための構成を多様化できる。
【0132】
(2)第1領域A1と第2領域A2との間で調光層31の厚さが異なることは、電圧信号の入力時であれ、電圧信号の入力停止時であれ、厚さの相違に起因した段差の光学作用を残存させてしまう。例えば、ノーマル型の調光シート11における電圧信号の入力時に、第1領域A1と第2領域A2との境界が視認されてしまう。リバース型の調光シート11における電圧信号の入力停止時に、第1領域A1と第2領域A2との境界が視認されてしまう。そして、調光シート11のなかに領域分割が存することの意外性が損なわれる。
【0133】
一方、第1領域A1と第2領域A2との間で空隙31Dの構造が異なることは、厚さの相違による段差を有しない分だけ、第1領域A1と第2領域A2との境界に出没を演出できる。
【0134】
(3)空隙31Dの構造が、第1面31Fにおける空隙31Dの最大径である場合、調光層31の厚さ、電離線硬化性組成物の配合、および照射態様などの多様な構成によって、第1領域A1と第2領域A2との間で空隙31Dの構造を異ならせることが可能となる。
【0135】
なお、空隙31Dの最大径の差異によって得られる光学特性の差異は、液晶粒子を含む調光層31において、液晶組成物31LCと電離線硬化樹脂層31Pとの界面の大きさに起因する。このため、第1領域A1と第2領域A2との間で異なる空隙31Dの構造は、空隙31Dの平均径でもよいし、空隙31Dの密度でもよい。また、空隙31Dの最大径の差異によって得られる光学特性の差異は、液晶粒子を含む調光層31において、液晶組成物31LCに作用する電場の大きさにも起因する。このため、第1領域A1と第2領域A2との間で異なる空隙31Dの構造は、空隙31Dの偏りでもよい。
【0136】
(4)第1領域A1における空隙31Dの最大径が、第2領域A2における空隙31Dの最大径の9倍以上である場合、上記(1)~(3)に準じた効果を得ることの実効性が高まる。また、各領域A1,A2の密着強度が同じ程度であるため、調光シート11における機械的な強度が確保される。
【0137】
(5)各領域における空隙31Dの最大径が、300nm以上1mm以下である場合、上記(1)~(3)に準じた効果を得ることの実効性が高まる。また、各領域A1,A2の密着強度が同じ程度であるため、調光シート11における機械的な強度が確保される。
【0138】
(6)各領域における空隙31Dの最大径が、70μm以下である場合、上記(5)に準じた効果を得ることの実効性が高まる。また、各領域における空隙31Dの最大径が、70μm以下である場合、各領域A1,A2において、電圧信号の入力時と入力停止時との間で視認性の差異が顕著になる。
【0139】
(7)第1領域A1の密着強度が、第2領域A2の密着強度の2倍以下である場合、上記(1)~(3)に準じた効果を得ることの実効性が高まると共に、調光シート11における機械的な強度の低下が抑制される。また、第1領域A1の密着強度が、第2領域A2の密着強度の1.2倍以下である場合、上記(6)に準じた効果を得ることの実効性が高まる。
【0140】
(8)第1領域A1と第2領域A2との間で厚さと材料とそれぞれ同じである場合、上記(1)~(3)に準じた効果を得ることの実効性が高まると共に、第1領域A1と第2領域A2との間で空隙31Dの構造を異ならせる製法が簡素ともなる。
【0141】
(9)第1領域A1のヘイズから第2領域A2のヘイズを差し引いた値が20%以上である場合、上記(1)~(3)に準じた効果を得ることの実効性が高まる。
【符号の説明】
【0142】
A1…第1領域
A2…第2領域
R1,R2…最大径
10…調光装置
11…調光シート
12…駆動部
31…調光層
31D…空隙
31F…第1面
31S…第2面
31P…電離線硬化樹脂層
32…第1配向層
33…第2配向層
34…第1透明電極層
35…第2透明電極層
36…第1透明支持層
37…第2透明支持層