(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179473
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電力需給管理システム及び電力需給管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241219BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098347
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曹 民圭
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 直
(72)【発明者】
【氏名】タマヨ ルイス エフライン エドアルド
(72)【発明者】
【氏名】定江 和貴
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】再エネ発電の不確実さを考慮してフレキシビリティを活用した電力調達を支援する。
【解決手段】電力供給事業者、発電事業者、需要家がネットワークで接続された電力需給管理システムであり、電力供給事業者のコンピュータ装置は、第三者認証機関により発行された時間属性有再エネ証書を管理し、需要家の再エネ需要の変動量を含む再エネ供給の予測値と、再エネ需要の予測値と、再エネ需要の再エネ希望比率と、再エネ需要のフレキシビリティを取得し、再エネ希望比率による再エネ需要電力量を算出する。そして、再エネ希望比率を充足するためのフレキシビリティを配分すると共に、再エネ安定分の電力量と再エネ不安定分の電力量を算出して、再エネ不安定分の電力量に対して、フレキシビリティを配分して安定化させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給事業者、発電事業者、需要家、及び第三者認証機関のそれぞれのコンピュータ装置がネットワークによって相互に接続され、前記電力供給事業者は、前記発電事業者と契約して前記需要家に、時間属性有再エネ証書とそれに紐づいた電力を供給する電力需給管理システムであって、
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
前記発電事業者の再エネ供給の変動量を含む再エネ供給の予測値と、再エネ需要の再エネ需要電力量の予測値と、前記再エネ需要のフレキシビリティを取得し、
前記再エネ需要電力量の予測値を充足するためのフレキシビリティを配分する
電力需給管理システム。
【請求項2】
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
再エネ供給の予測値から再エネ安定分と再エネ不安定分を算出して、前記再エネ不安定分に対して、フレキシビリティを配分して安定化させる
請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項3】
前記発電事業者のコンピュータ装置は、供給管理部を有し、前記供給管理部により、発電量の予測値などの発電電力情報を、前記ネットワークを通じて電力供給事業者と共有し、
前記需要家のコンピュータ装置は、エネルギー管理システムを有し、前記エネルギー管理システムにより前記ネットワークを介して前記電力供給事業者及び前記発電事業者と需要情報を共有する、
請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項4】
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
前記需要家から、需要予測値と時間属性有再エネ証書の充足が一定比率以上となる前記再エネ需要の再エネ希望比率を含む需要情報を取得する需要受信部と、
前記発電事業者からの再エネ供給データを受け付ける再エネ供給受信部と、
前記再エネ供給受信部が受け付けた前記再エネ供給データを基に、前記再エネ供給データの中の前記再エネ安定分の電力量と前記再エネ不安定分の電力量を分けて、再エネ供給データ量を計算する計画データ作成部と、を備える、
請求項2に記載の電力需給管理システム。
【請求項5】
前記計画データ作成部は、予測供給下限電力量より下回る供給可能電力量を、安定的に供給可能な電力量である前記再エネ安定分の電力量として計算し、予測供給下限電力と予測供給上限電力の間の予測電力量を不安定的に供給可能な前記再エネ不安定分の電力量として計算する
請求項4に記載の電力需給管理システム。
【請求項6】
さらに、前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、前記需要家におけるフレキシビリティ種類として、パターン、上げ、下げ、充電、または放電の少なくとも一つを含むフレキシビリティ関連情報を取得するフレキシビリティ受信部と、
前記フレキシビリティ受信部で取得された前記フレキシビリティ関連情報の中に、需要家側のパターンフレキシビリティがある場合、前記需要受信部で取得された需要予測値と再エネ希望比率に基づいて、各時刻における再エネ需要電力量を算出するフレキシビリティ付き供給計画作成部を、備える
請求項4に記載の電力需給管理システム。
【請求項7】
前記フレキシビリティ付き供給計画作成部は、各時刻における再エネ需要電力量に基づいて、各時刻における需要家の再エネ需要電力量より前記再エネ安定分の電力量が多い場合は、再エネ需要電力量を限度として、前記再エネ安定分の電力量を配分する
請求項5または6に記載の電力需給管理システム。
【請求項8】
前記フレキシビリティ付き供給計画作成部は、需要家における再エネ需要電力量と再エネ供給電力量の差分を計算し、
需要家毎に、蓄電池による放電や、下げフレキシビリティで需要の下げの計画を作成することにより、再エネ需要電力量と再エネ供給電力量の差分を低減する
請求項5または6に記載の電力需給管理システム。
【請求項9】
前記フレキシビリティ付き供給計画作成部は、電力の需要が多く供給が少ない場合には、下げのフレキシビリティを使うことで、需要家における前記再エネ需要電力量と前記再エネ供給電力量の差分を低減する
請求項8に記載の電力需給管理システム。
【請求項10】
前記フレキシビリティ付き供給計画作成部は、電力の需要が多く供給が少ない場合には、放電のフレキシビリティを使うことで、需要家における前記再エネ需要電力量と前記再エネ供給電力量の差分を低減する
請求項8に記載の電力需給管理システム。
【請求項11】
前記フレキシビリティ付き供給計画作成部は、前記フレキシビリティ受信部により取得された需要家の下げフレキシビリティと放電フレキシビリティの合計量の中で小さい方を限度として、蓄電池による放電または下げフレキシビリティの量を割り当てる
請求項9または10に記載の電力需給管理システム。
【請求項12】
前記フレキシビリティ付き供給計画作成部は、下げフレキシビリティまたは放電フレキシビリティを有する対象需要家に分配された再エネ供給電力量を減らし、減らした再エネ供給電力量分を前記再エネ供給電力量が不足している他の需要家に配分するとともに、前記再エネ供給電力量が不足している他の需要家が複数存在する場合は、減らした再エネ供給電力量分を、各需要家に均等に配分する
請求項10に記載の電力需給管理システム。
【請求項13】
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
前記第三者認証機関を通じて再エネの供給量の認証を受け、前記第三者認証機関により発行された時間属性有再エネ証書を管理する
請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項14】
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
前記需要家から、需要予測値と時間属性有再エネ証書の充足が一定比率以上となる再エネ需要の再エネ希望比率を含む需要情報を取得し、
前記需要予測値及び前記再エネ希望比率から前記再エネ需要電力量を算出する
請求項1に記載の電力需給管理システム。
【請求項15】
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
各需要家の有するフレキシビリティの量に基づき、再エネ不安定電力量を配分する
請求項2に記載の電力需給管理システム。
【請求項16】
電力供給事業者、発電事業者、需要家、及び第三者認証機関のそれぞれのコンピュータ装置がネットワークによって相互に接続され、前記電力供給事業者は、前記発電事業者と契約して前記需要家に、時間属性有再エネ証書とそれに紐づいた電力を供給する電力需給管理方法であって、
前記電力供給事業者のコンピュータ装置は、
前記第三者認証機関を通じて再エネの供給量の認証を受け、前記第三者認証機関により発行された時間属性有再エネ証書を管理し、
前記需要家の再エネ需要の変動量を含む再エネ供給の予測値と、前記再エネ需要の予測値と、前記再エネ需要の再エネ希望比率と、前記再エネ需要のフレキシビリティを取得し、
前記再エネ希望比率による再エネ需要電力量を算出し、
前記再エネ希望比率を充足するためのフレキシビリティを配分する
電力需給管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力需給管理システム及び電力需給管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、24/7カーボンフリーエネルギーの動きが活発になっている。24/7カーボンフリーエネルギーとは、需要家側が24時間365日、CO2排出量ゼロの電力を使用するというものである。そのため、時間属性情報付きでCO2排出量ゼロの電力の供給と使用を証明する仕組みが、独立した非営利の業界主導のイニシアチブなどで策定されている。このような独立した非営利のイニシアチブはEnergy Tagと呼ばれている。
その仕組みとしては、時間ごとのCO2排出量ゼロの電力の発電量に合わせて証書を発行し、需要家側がその電力を使用することで証書が償却される。このような証書を時間属性有再エネ証書とよぶ。
【0003】
電力供給事業者または大口需要家は、一定比率以上の時間属性有再エネ証書の充足などの需要家側の再エネ希望比率に応じて、時間属性有再エネ証書と紐づいた電力を配分して供給する必要がある。
しかし、再エネ供給が限られている場合には、電力供給事業者は、すべての需要家の再エネ希望比率に対応することができない。そのため、電力供給事業者は、需要家側にデマンドレスポンスなどの実施を依頼し、需要家の再エネ希望比率を満たす仕組みを作る必要がある。
【0004】
特許文献1には、設定された需要電力量を時間情報有CO2フリー電力、もしくは時間情報無CO2フリー電力により充当できない場合に、電力供給事業者が電力需要家に対してデマンドレスポンス指令を行うCO2フリー電力の配分方法が記載されている。
ここで、時間情報無CO2フリー電力とは、時間情報、すなわち単位時間毎の発電量を有しないために、単位時間毎の紐づけができない電力である。つまり、特定のCO2フリー電力発電設備と時間単位ではなく、年単位以下での発電合計量が紐づけされたCO2フリー電力をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、効率的に再エネを配分するためには、デマンドレスポンスはその量が限られるため、実際に再エネが発電された後、それに対応してフレキシビリティの発動を指令するだけでは十分ではなく、事前にデマンドレスポンスを含むフレキシビリティの発動を計画する必要がある。また、再エネは天候変動により供給量の変動もあるので、フレキシビリティを活用した安定的な時間属性有再エネ証書の分配が難しくなるという課題もある。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、需要家の再エネ電力需要のフレキシビリティを活用して、安定的に再エネ希望比率を達成することができる電力需給管理システム及び電力需給管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本発明の電力需給管理システムは、電力供給事業者、発電事業者、需要家、及び第三者認証機関のそれぞれのコンピュータ装置がネットワークによって相互に接続され、電力供給事業者は、発電事業者と契約して需要家に、時間属性有再エネ証書とそれに紐づいた電力を供給する電力需給管理システムである。
電力供給事業者のコンピュータ装置は、発電事業者の再エネ供給の変動量を含む再エネ供給の予測値と、再エネ需要の再エネ需要電力量の予測値と、再エネ需要のフレキシビリティを取得し、再エネ需要電力量の予測値を充足するためのフレキシビリティを配分する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、需要家はフレキシビリティを活用して、安定的に再エネ希望比率を達成することが可能な電力調達を実現することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態例に係る電力需給管理システムを構成する各事業者間の関係図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態例における電力供給事業者が備える電力需給計画システムの全体構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態例における需要予測値の例を示す図である
【
図4】本発明の第1の実施形態例における再エネ希望比率の例を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態例における需要家1と需要家2からのフレキシビリティの情報の例を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態例におけるフレキシビリティ種類としてのパターン例を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態例におけるフレキシビリティ種類としての上げの例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態例におけるフレキシビリティ種類としての下げの例を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態例におけるフレキシビリティ種類としての充電の例を示す図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態例におけるフレキシビリティ種類としての放電の例を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態例における再エネ供給データの例を示す図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態例において、計画データ作成部で不安定な量を計算した例を示す図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態例において、フレキシビリティ付き供給計画作成部の処理の手順を示すフローチャートである。
【
図14】本発明の第1の実施形態例における再エネ供給量の例を示す図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態例におけるフレキシビリティによる差分低減の例を示す図である。
【
図16】本発明の第3の実施形態例における電力需給計画システム全体構成を示す図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態例に係る電力需給管理システム(
図1)の変形例を示す各事業者間の関係図である。
【
図18】本発明の第7の実施形態例において、フレキシビリティ付き供給計画作成部の処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための第1の形態例(以下、「本例」と称する)について説明する。
【0012】
<第1の実施形態例>
[関連事業者の関係]
図1は、本例の電力需給管理システムにおいて、想定される各事業者間の関係を示した図である。
図1に示すように、本例の電力需給管理システムは、電力供給事業者1、発電事業者1と発電事業者2(以下、「発電事業者1、2」)、需要家1と需要家2(以下、「需要家1、2」)及び第三者認証機関11が通信ネットワーク9によって相互に接続されている。また、発電事業者1、2と需要家1、2は、電力ネットワーク10により相互に接続されている。
電力供給事業者1は、電力需給計画システム4が搭載されたコンピュータ装置を備え、発電事業者1、2と契約して計画した時間属性有再エネ証書とそれに紐づいた電力を需要家1、2に供給する。
【0013】
また、電力供給事業者1は、第三者認証機関11を通じて再エネの供給量の認証を受け、発行された時間属性有再エネ証書を管理する。
発電事業者1、2は、それぞれ供給管理部7、8を有し、この供給管理部7、8により、発電量の予測値などの発電電力情報を、通信ネットワーク9を通じて電力供給事業者1と共有する。
【0014】
需要家1、2は、それぞれEMS(Energy Management System)5、6を有し、通信ネットワーク9を介して電力供給事業者1及び発電事業者1、2と需要情報を共有する。需要家1、2が計画した時間属性有再エネ証書とそれに紐づいた電力は、電力ネットワーク10を通じて、発電事業者1及び/または発電事業者2から需要家1、2に供給される。
【0015】
[電力需給計画システム4の構成]
図2は、電力供給事業者1のコンピュータ装置に搭載される電力需給計画システム4の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、電力需給計画システム4は、本例の電力需給管理システムにおいて、中心的な機能を実現するためのシステムであり、入力部100及び計画部200を備える。
【0016】
入力部100は、需要受信部110、フレキシビリティ受信部120、及び再エネ供給受信部130を有する。また、計画部200は、計画データ作成部210、フレキシビリティ付き供給計画作成部220、及び計画出力部230を有する。
ここでフレキシビリティとは、デマンドレスポンス、生産スケジュール調整による複数パターンの予測電力消費量、及び蓄電池による充放電も含む電力消費と供給を可能にする、電力の総需要に対する柔軟(フレキシブル)な供給能力を意味する。
【0017】
[需要受信部110]
電力需給計画システム4の需要受信部110は、需要家1、2から、需要予測値と再エネ希望比率などの需要情報を取得する。ここで、再エネ希望比率とは、時間属性有再エネ証書の充足の比率であり、需要情報には再エネ希望比率が一定比率以上となっているかどうかも含まれる。
また、時間属性有再エネ証書とは、一日24時間の中の特定時間に電力供給網に電力を供給するという時間属性を有する再生可能エネルギー(再エネ)を第三者認証機関11が証明した証書をいう。
【0018】
図3は、需要受信部110が取得する需要予測値の例を示している。
図3に示すように、需要受信部110は、需要家ID、予測対象日、予測対象時刻、予測需要電力量を含む需要予測値を取得する。
図3に示す例では、需要家D0001は、関東地域において、2021年1月1日の終日24時間、0時30分から30分おきに10kWhの電力を必要とすることを示している。
【0019】
図4は、需要受信部110が取得する需要家からの再エネ希望比率の例を示す。
図2で説明したように、需要受信部110は、時間属性有再エネ証書を活用するため、各需要家から、1日24時間における各時刻別に設定される再エネ希望比率を取得する。
しかし、需要家によっては、
図4に示すように、各時刻別に再エネ希望比率の値を設定しないで、1日における各時刻の再エネ希望比率の平均値を設定することもある。このため、再エネ希望比率は、必ずしも1日における各時刻別に設定した値に限定されない。
図4の例では、時間に関係なく、再エネ比率が50%になっているが、これは1日24時間における1時間当たりの平均値を表している。また、需要家から後述する再エネ需要電力量を取得した場合、再エネ希望比率の取得を省略してもよい。
【0020】
[フレキシビリティ受信部120]
電力需給計画システム4のフレキシビリティ受信部120は、需要家1、2からフレキシビリティ関連情報を取得する。
図5は、需要家1、2からフレキシビリティ受信部120が取得するフレキシビリティに関連する情報を示す。
図5の例では、フレキシビリティ関連情報として、需要家ID、フレキシビリティID、及びフレキシビリティの種類(以下、「フレキシビリティ種類」という)が含まれている。
【0021】
図5に示すように、各需要家におけるフレキシビリティ種類として、パターン、上げ、下げ、充電、放電が定義される。そして、このフレキシビリティ種類に対応して、フレキシビリティIDとして、パターンがFP、上げがFU、下げがFD、充電がFCH,放電がFDCHという記号が付けられている。
ここで、Pはパターン、Uはアップ(上げ)、Dはダウン(下げ)、CHはチャージ(充電)、DCHはディスチャージ(放電)を示している。
【0022】
パターンは、各需要家における生産計画調整で電力消費量を調整することにより計画される複数の需要予測値である。例えば、需要家が持つ工場などの場合、1日に複数の生産計画を生成する場合がある。各生産計画は異なるエネルギー需要に変換されるので、各需要家は複数の電力の需要パターンを持つことになる。
【0023】
これに対して、「上げ」と「下げ」は、特定時刻において電力の「上げ」または「下げ」を行うことで、デマンドレスポンスに対する電力需要の変更を行うことを意味する。
例えば、ある時刻で元の需要が10kWhの場合、1kWh分の電力を下げて9kWhにしたり、別の時刻では1kWh分の電力を上げて11kwhにしたりすることをいう。
また、「充電」と「放電」は、デマンドレスポンスに対して、供給電力を蓄電池などに充電したり、蓄電池から放電したりすることを意味する。
ここで、デマンドレスポンスとは、電力需要がピーク時に集中することが予想される場合などに、電力供給事業者が各需要家に対して、電力使用の削減などを呼び掛けることである。
【0024】
図6は、フレキシビリティ種類がパターンの例を示す。
図6に示すように、フレキシビリティ種類の一つであるパターンは、需要家ID、フレキシビリティID、フレキシビリティ種類、予測対象日、予測対象時刻、及び予測需要電力量(kWh)の項目を含む。
【0025】
図6の例では、需要家IDが「D0001」の需要家は、フレキシビリティIDがFP001のパターンの場合、予測対象日2021年1月1日の1日24時間において、予測対象時刻30分毎に予測需要電力量を15kWhに調整していることを示す。
また、同じ需要家D0001のレキシビリティIDがFP002のパターンの場合、予測対象日2021年1月1日の1日24時間において、予測対象時刻30分毎に予測需要電力量を10kWhに調整していることを示している。
【0026】
図7は、フレキシビリティ種類として、デマンドレスポンスに対する需要の「上げ」の例を示す。
図7に示す「上げ」の例は、需要家ID、フレキシビリティID、フレキシビリティ種類、予測対象日、予測対象開始時刻、予測対象終了時刻、上げ電力量(kWh)を含む。
図7の例では、需要家IDが「D0001」の需要家は、フレキシビリティIDがFU001の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が0時で予測対象終了時刻1時の1時間の間、上げ電力量を1kWhとすることを示す。
また、同じ需要家D0001で、フレキシビリティIDがFP002の場合も、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が3時で予測対象終了時刻が4時の1時間の間の上げ電力量が、同様に1kWhであることを示している。
【0027】
図8は、フレキシビリティ種類として、デマンドレスポンスに対する需要の「下げ」の例を示す。
図8に示す「下げ」の例も、
図7に示す「上げ」の例と同様に、需要家ID、フレキシビリティID、フレキシビリティ種類、予測対象日、予測対象開始時刻、予測対象終了時刻の項目を含み、上げ電力量(kWh)の代わりに下げ電力量(kWh)を含む。
【0028】
図8の例では、需要家IDが「D0001」の需要家は、フレキシビリティIDが「下げ」を意味するFD001の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が2時で予測対象終了時刻3時の1時間の間、下げ電力量を1kWhとすることを示す。また、同じ需要家D0001で、フレキシビリティIDがFD002の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が5時で予測対象終了時刻が6時の1時間の下げ電力量が、同様に1kWhであることを示している。
【0029】
図9は、フレキシビリティ種類として、蓄電池などの「充電」の例を示す。
図9に示すように、デマンドレスポンスへの対応が「充電」の場合、計画データ作成部210(
図2参照)が作成する計画データは、フレキシビリティID、フレキシビリティ種類、予測対象日、予測対象開始時刻、予測対象終了時刻の他に、再エネ充電可能電力量(kWh)を含む。
【0030】
図9に示す「充電」の例では、需要家IDが「D0001」の需要家は、フレキシビリティIDが「充電」を意味するFCH001の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が2時で予測対象終了時刻3時の1時間の間、再エネ充電可能電力量を1kWhとすることを示す。また、同じ需要家D0001で、フレキシビリティIDがFCH002の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が5時で予測対象終了時刻が6時の1時間の間は、再エネ充電可能電力量を2kWhとすることを示している。
【0031】
なお、蓄電池に充電される電力には、再エネ由来電力と非再エネ由来電力が混在する場合がある。再エネ充電可能電力量は、再エネ専用の蓄電池または再エネと非再エネをカラーリングすることが可能な蓄電池の場合であれば特定できるので、その量によって再エネ充電可能電力量が分かる。
【0032】
図10は、フレキシビリティ種類が蓄電池などの「放電」の例を示す。
図10に示すように、デマンドレスポンスへの対応が「放電」の場合、計画データ作成部210(
図2参照)が作成する計画データは、需要家ID、フレキシビリティID、フレキシビリティ種類、予測対象日、予測対象開始時刻、予測対象終了時刻、再エネ放電可能量を含む。
【0033】
図10に示す「放電」の例では、需要家IDが「D0001」の需要家は、フレキシビリティIDが「放電」を意味するFDCH001の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が6時で予測対象終了時刻7時の1時間の間、再エネ放電可能電力量を1kWhとすることを示す。また、同じ需要家D0001で、フレキシビリティIDがFDCH002の場合、予測対象日2021年1月1日の予測対象開始時刻が8時で予測対象終了時刻が9時の1時間の間は、再エネ放電可能電力量を2kWhとすることを示している。
【0034】
[再エネ供給受信部130]
電力需給計画システム4の再エネ供給受信部130は、発電事業者1、2から再エネ供給データを取得する。
図11は、再エネ供給データの例であり、電力供給事業者の供給者ID、予測対象日、予測対象時刻、地域、予測供給電力量(kWh)、予測供給下限電力量(kWh)、予測供給上限電力量(kWh)の情報を含む。ここで、もし電力供給事業者が予測供給下限電力量(kWh)及び予測供給上限電力量(kWh)を提供できない場合は、予測供給下限電力量(kWh)と予測供給上限電力量(kWh)の欄は、空欄となる。
【0035】
図11の例では、供給者IDが「S0001」の電力供給事業者は、地域が関東エリアで、予測対象日2021年1月1日の1日24時間において、予測対象時刻30分毎に予測供給電力量を10kWhに調整している。
そして、電力供給事業者は、30分毎の予測供給下限電力量を7~9kWhの範囲で設定し、30分毎の予測供給上限電力量は12~15kWhの範囲で設定している。
【0036】
[計画データ作成部210]
電力需給計画システム4の計画データ作成部210は、再エネ供給受信部130が受け付けた再エネ供給データを基に、どの程度、不安定な再エネ供給データ量があるかを計算する。
図12は、計画データ作成部210で、再エネ供給データの中の不安定な再エネ供給データ量を計算した例を示す。
図12は、電力供給事業者の供給者ID、予測対象日、予測対象時刻、地域、予測安定供給電力量(kWh)、予測不安定供給電力量(kWh)、予測平均供給電力量(kWh)の情報を含む。
【0037】
図12の例では、供給者IDが「S0001」の電力供給事業者は、地域が関東エリアで、予測対象日2021年1月1日の1日24時間において、予測対象時刻30分毎に予測安定供給電力量が7~9kWh、予測不安定供給電力量が3~8kWh、予測平均供給電力量が10kWhに設定されている。
【0038】
計画データ作成部210は、
図11に示した予測供給下限電力量(kWh)と予測供給上限電力量(kWh)を用いて、再エネ供給データの中の不安定な電力量と安定な電力量を分けることができる。すなわち、計画データ作成部210は、予測供給下限電力量(kWh)より下回る供給可能電力量に関しては、安定的に供給可能な電力量として計算する。
また、計画データ作成部210は、予測供給下限電力量(kWh)と予測供給上限電力量(kWh)の間の予測電力量は不安定的に供給可能な電力量として計算する。
【0039】
再エネ安定供給電力量(kWh)と再エネ不安定供給電力量(kWh)を算出する別の方式としては、予測対象日が属する季節、予測対象日の晴れ、または曇りなどの天候情報などを用いて算出できる。さらに、これらの情報に、過去の供給の予測・実績履歴などを加えて算出することもできる。
例えば、計画データ作成部210は、予測対象日が属する季節または、予測対象日の晴れ、曇りなどの天候情報と一致する、過去の供給の予測・実績履歴を取得し、過去の供給の予測・実績の予測誤差を算出することができる。
【0040】
そして、計画データ作成部210は、予測誤差の確率分布を正規分布と仮定して、複数の予測誤差の標準偏差σを算出する。この予測誤差の標準偏差σは、予測不安定供給電力量に相当し、計画データ作成部210は、この標準偏差σから予測供給電力量を引き算することで、予測安定供給電力量を算出することができる。
または、計画データ作成部210は、標準偏差σに一定の係数を掛け算することで、予測供給電力量と予測不安定供給電力量の比率を変えることも考えられる。なお、標準偏差σに掛け算する係数を大きくすればするほど、予測安定供給電力量の確度が高まる。
【0041】
[フレキシビリティ付き供給計画作成部220]
電力需給計画システム4のフレキシビリティ付き供給計画作成部220は、計画データ作成部210で作成されたデータと、入力部100のフレキシビリティ受信部120で受信されたフレキシビリティ情報に基づいてフレキシビリティ付き供給計画を作成する。
【0042】
以下、
図13を参照して、フレキシビリティ付き供給計画作成部220における処理の流れを説明する。
図13はフレキシビリティ付き供給計画作成部220における処理の流れを示すフローチャートである。
フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、フレキシビリティ受信部120で受信した需要家側のデータにパターンフレキシビリティがある場合、それに基づいて需要の組合せを作成し、それぞれの組合せに対して、以下に示す手順で計算を行う。
【0043】
まず、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、需要受信部110で取得された再エネ希望比率と需要予測値に基づいて、各時刻における再エネ需要電力量を算出する(S100)。需要家から再エネ需要電力量を取得可能とした場合、算出を省略し、当該再エネ需要電力量を用いてもよい。
次に、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、再エネ供給受信部130で受信された再エネ予測供給電力量を各時刻における再エネ需要電力量に基づいて、計画データ作成部210で作成した再エネ予測値を配分する(S101)。
【0044】
また、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、各時刻における各需要家の再エネ需要に基づいて、計画データ作成部210で作成した再エネ安定分を配分する(S102)。ここで、各時刻における各需要家の再エネ需要電力量より再エネ安定分が多い場合は、再エネ需要電力量を限度として配分する。
【0045】
次に、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、各需要家の各時刻での再エネ需要電力量に基づいて、計画データ作成部210で作成した再エネ不安定分を配分する(S103)。
ここで、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、各時刻における各需要家の再エネ需要電力量より、計画データ作成部210で作成された再エネ安定分と再エネ不安定分の合計が多い場合は、再エネ需要電力量として配分された再エネ予測供給電力量の中で小さい方、つまり各需要家の再エネ需要電力量を限度として配分する。
【0046】
次に、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、再エネ需要電力量と再エネ供給電力量の差分を計算する(S104)。なお、ステップS104では、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、各需要家における再エネ需要電力量と供給電力量の差分と、全需要家の総再エネ供給予測電力量と総再エネ需要予測電力量の差分を計算する。
【0047】
図14は、
図13のステップS101からS103までの処理フローによって算出された再エネ供給電力量の例を示す。横軸は時間、縦軸は需要家が必要とする電力量である。
図14は、各需要家における再エネ需要として再エネ安定分と再エネ不安定分が配分されていることがわかる。ここでは、再エネ安定分と再エネ不安定分を正方形の升の数で示し、各需要家(需要家1と需要家2)の再エネ需要電力量を太い実線で示している。
【0048】
図14では、需要家1及び需要家2のいずれも、時刻t2と時刻t3において再エネの供給電力量が2升分不足している。そこで、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、総再エネ供給予測値と総再エネ需要予測値の差分を計算する。もし再エネ供給電力量が再エネ需要電力量より大きい場合は「+」の値となり、再エネ供給電力量が再エネ需要電力量より小さい場合は「-」の値となる。
【0049】
図14の左側に示す需要家1の総再エネ需要電力量は、升目の数で数えて「24」になる。一方、総再エネ供給電力量は、再エネ安定分と再エネ不安定分の和になるので、再エネ安定分の升目数「12」と再エネ不安定分の升目数「10」を足して、総再エネ供給電力量の升目数は「22」となる。そこで、総再エネ需要電力量「24」と総再エネ供給電力量「22」の差分をとると、再エネ供給量が「2」升だけ不足していることが分かる。
すなわち、
図14の例では、時刻t2と時刻t3では、需要家1の再エネ需要電力量に対する再エネ供給電力量の比率である再エネ希望比率が「2」だけ充足されていない。
【0050】
図14の右側に示す需要家2の総再エネ需要電力量は、升目の数で数えて「30」になる。一方、総再エネ供給電力量は、再エネ安定分と再エネ不安定分の和になるので、再エネ安定分の升目数「15」と再エネ不安定分の升目数「13」を足して、総再エネ供給電力量の升目数は「28」となる。そこで、総再エネ需要電力量「30」と総再エネ供給電力量「28」の差分をとると、需要家2も、再エネ供給電力量が「2」升だけ不足していることが分かる。
すなわち、
図14の例では、時刻t2と時刻t3では、需要家1及び需要家2のいずれも再エネ需要電力量に対する再エネ供給電力量の比率である再エネ希望比率が「2」だけ充足されていないことが分かる。
【0051】
次に、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、フレキシビリティによる各需要家の再エネ需要電力量と再エネ供給電力量の差分を低減する(S105)。具体的には、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、需要家毎に、蓄電池による放電や、下げフレキシビリティで需要の下げの計画を作成する。すなわち、蓄電池に蓄積された再エネ電力の放電を供給とみなせば、再エネ需要電力量と再エネ供給電力量の差分を低減できる。また、電力の需要が多く供給が少ない場合には、下げのフレキシビリティを使うことで、再エネ需要電力量と再エネ供給電力量の差分を低減することができる。
【0052】
このため、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、需要家毎に、各時刻における差分と、フレキシビリティ受信部120により定義された下げフレキシビリティと放電フレキシビリティの合計量の中で小さい方を限度として、蓄電池による放電や、下げフレキシビリティの量を割り当てる。ここでは、フレキシビリティ割当ての優先順位としては、下げフレキシビリティ、放電フレキシビリティとしている。
【0053】
図15は、フレキシビリティ付き供給計画作成部220が行うステップS105の処理において、フレキシビリティにより差分を低減する例を示す。
図15の左側の需要家1の場合は、自身の蓄電池による放電により、時刻t2と時刻t3において、升目2個分の再エネを補い、再エネ希望比率を充足させている。
一方、
図15の右側の需要家2の場合は、時刻t2と時刻t3において、下げフレキシビリティにより、総再エネ需要量を2升分下げることで再エネ希望比率を充足させている。
【0054】
再び
図13に戻って説明を続ける。フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、ステップS104で計算した、需要家全体の総再エネ供給予測値と総再エネ需要予測値の差分を用いて、総際エネ需要電力量と総再エネ供給電力量の差分を低減する(S106)。
そして、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、蓄電池による放電や、下げフレキシビリティで需要の下げの計画を行う。
例えば、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、総再エネ供給予測値と総再エネ需要予測値の差分が「+」の時刻においては、総再エネ供給予測値と総再エネ需要予測値の差分を限度として充電の計画を行う。
【0055】
仮に、需要家側に複数の充電フレキシビリティがある場合は、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、それぞれの対象需要家に均等に充電を割り当てる。
総再エネ供給予測値と総再エネ需要予測値の差分が「-」の場合は、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、フレキシビリティ受信部120により定義された下げフレキシビリティと放電フレキシビリティの電力量を限度として放電させる。
【0056】
ここで、フレキシビリティ割当の優先順位は、下げフレキシビリティ、放電フレキシビリティの順序とする。もし複数の下げフレキシビリティ、放電フレキシビリティがある場合には、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、これらのフレキシビリティを対象の需要家に均等に割り当てる。
【0057】
もし、ステップS105で計算した下げ電力量または放電電力量より、大きく下げたり放電したりする場合は、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、下げフレキシビリティまたは放電フレキシビリティを有する対象需要家に分配された再エネ電力量を減らす。そして、減らした再エネ電力量分を再エネ供給電力量が不足している他の需要家に配分する。さらに、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、再エネ供給電力量が不足している他の需要家が複数存在する場合は、減らした再エネ電力量分を、各需要家に均等に配分する。
【0058】
また、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、総再エネ供給予測値と総再エネ需要予測値の差分が「-」の場合は、需要家1のように、差分の再エネ需要電力量を放電により維持してもよいし、需要家2のように、再エネ需要電力量を下げて対応するようにしてもよい。
【0059】
仮に、計算した放電量より大きく放電する場合は、それは対象需要家に分配された再エネ電力量を実質的に減らすこととなるが、そのような場合、もし他の需要家で再エネ供給電力量が不足しているならば、減らした分の再エネ供給電力量をその需要家に分配することもできる。なお、ここで、充電と放電は同時にできないことに注意すべきである。
【0060】
次に、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、フレキシビリティによる再エネ変動電力量の安定化処理を行う(S107)。そして、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、総再エネ需要電力量に下げフレキシビリティがある場合、再エネ不安定分を限度として下げフレキシビリティを配分する。
なお、
図15の需要家1の例に示すように、蓄電池による放電が可能な場合は、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、蓄電池による放電を配分する。
【0061】
また、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、再エネ安定分の比率が高い時刻において、放電フレキシビリティを優先的に配分してもよい。さらに、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、充電に関して再エネ供給の不安定分の中で供給が計画されてない量があれば、その量を充電に使用してもよい。
【0062】
[計画出力部230]
電力需給計画システム4の計画出力部230は、フレキシビリティ付き供給計画作成部220で計画された一つ以上の計画に対して、需要者側の再エネ希望比率と一番近い計画を出力する。
計画出力部230は、その指標として各時刻の再エネ希望比率と、計画上での再エネ希望比率の比率を計算し、その比率の差を指標としてもよい。
【0063】
<第2の実施形態例>
第1の実施形態例では、入力部100の需要受信部110は、需要家側から再エネ希望比率のみを取得した。これに対して、第2の実施形態例では、需要受信部110は、再エネ需要に対する安定分の比率を希望して需要家側から取得する。
その場合は、
図13のステップS102において、フレキシビリティ付き供給計画作成部220は、再エネ安定分の比率を充足するように、まず対象需要家に再エネ安定分を配分する。そして、計画出力部230は、この配分した再エネ安定分を指標として追加し、再エネ希望比率と再エネ安定分の比率の両方を充足する計画を出力する。
【0064】
<第3の実施形態例>
図16は、第3の実施形態例における電力需給計画システム4の構成を示す図である。
第3の実施形態例が第1の実施形態例と異なる点は、計画部200に、充放電能力管理部240を設けた点である。
第1の実施形態例では、フレキシビリティ受信部120は、需要家のフレキシビリティとして充電と放電を分けて取得した。しかし、蓄電池の場合、需要家は、充電または放電の両方を可能な容量として、電力供給事業者に渡すこともある。その場合、電力需給計画システム4は、充電と放電の両方を同時に管理しなければならない。そのため、
図16に示す第3の実施形態例の電力需給計画システム4では、蓄電池の充電と放電の両方を管理するために、充放電能力管理部240が設けられている。
【0065】
すなわち、
図13のステップS105において、まず時刻順に充放電計画を行う。第3の実施形態例においても、充電量と放電量の決定処理としては、第1の実施形態例で示したものと同じであるが、第3の実施形態例では、時系列的に充電量と放電量を計算して容量の上限に収まるか否かを計算する。
【0066】
例えば、T時刻での充電残量は、以下に示す式で計算される。すなわち、
(T時刻での充電残量)
=((T-1)時刻での充電残量)+(充電効率×充電量)-(放電効率×放電量)
として計算する。
そして、T時刻での充電可能量は、(容量-充電残量)となり、T時刻での放電可能量は充電残量となる。
【0067】
図13のステップS106において、再エネ不安定分に関しては、実際に放電が必要かどうかは計画時点ではわからない。したがって、ステップS105で計画された充放電量を確定的充放電計画とし、ステップS106で計算される充放電量は、不確定的充放電量とする。ここで、確定的充放電計画は守る必要があるため、確定的充放電計画が維持できることを前提とし、充放電能力管理部240は、不確定的充放電のための充放電可能量を算出する。
上述したように、「不確定的充放電のための充電可能量」と「不確定的充放電のための放電可能量」は、計画時点では充電するか放電するかが分からない充放電可能量である。そこで、確定的充放電計画では、計画時点でどの程度の充放電可能量があるかを見積もるように計画している。
【0068】
なお、不確定的充放電のための充電可能量としては、蓄電池の容量から次の時刻以降で一番近い計画が充電の場合には、蓄電池の容量から確定的充電量を減算した値を充電可能量とする。
また、蓄電池の容量から現時刻充電残量と、次の時刻以降における充電量の合計と、次の時刻以降で放電量の合計を減算した値を算出し、その中で小さいほうを充電可能量とする。
【0069】
すなわち、不確定的充放電のための充電可能量は、
・(蓄電池容量)-(次の時刻以降で一番近い計画が充電の場合その確定的充電量)
・(蓄電池容量)-(現時刻充電残量)-(次の時刻以降での充電量の合計)-(次の時刻以降での放電量の合計)
の式により充電可能量を算出し、その中で小さいほうを充電可能量とする。
【0070】
また、不確定的充放電のための放電可能量は、
・(蓄電池容量)-(次の時刻以降で一番近い計画が放電の場合その確定的放電量)
・(現時刻充電残量)+(次の時刻以降での充電量の合計)-(次の時刻以降での放電量の合計)
の式により放電可能量を算出し、その中で小さいほうを放電可能量とする。
図13におけるステップS107の再エネ変動電力量の安定化処理は、上記の不確定的充放電のための充電可能電力量と不確定的充放電のための放電可能電力量を上限として行われる。
【0071】
<第4の実施形態例>
以上、第1の実施形態例から第3の実施形態例を時系列順で計画される処理として説明したが、第1の実施形態から第3の実施形態例を最適化問題として処理することも可能である。
【0072】
<第5の実施形態例>
第1の実施形態例では、需要家がフレキシビリティを有する場合の処理について説明したが、電力供給事業者1が蓄電池を有する場合も考えられる。この場合、
図13におけるステップS105とステップS106の処理において、フレキシビリティ割当ての優先順位として、電力供給事業者1が有する蓄電池を最優先として処理を行うようにする。
【0073】
<第6の実施形態例>
また、第1の実施形態例では、電力供給事業者1が電力需給計画を策定しているが、
図17に示すように、需要家が自ら有する複数のサイトを管理し、各サイトの再エネ希望比率を満足させるために、電力需給計画システムを運用することも考えられる。この場合、契約した発電事業者だけではなく、自家発電機(
図17参照)も電力供給の管理対象となる。
【0074】
<第7の実施形態例>
第1の実施形態例では再エネ安定分と再エネ不安定分を公平に各需要家に配分した。しかし、契約形態によっては、各需要家への配分を公平に行わなくてもよい場合がある。例えば、フレキシビリティが多い需要家は再エネ不安定分を多く供給することも考えられる。
図18は、第7の実施形態例におけるフレキシビリティ付き供給計画作成部220における処理の流れを示すフローチャートである。
図18において、ステップS100~S103、ステップS104~S107は、
図13のフローチャートと同じであるから、説明は省略する。
【0075】
図18において、
図13のフローチャートと異なるところは、ステップS103の「再エネ変動分を配分」と、ステップS104の「再エネ需要電力量と供給電力量の差分を計算」の間に、ステップS103aとして、「再エネ安定分と再エネ変動分の調整」という項目を加えた点である。
すなわち、第7の実施形態例では、
図13に示す第1の実施形態例のステップS102とS103で再エネ安定分と再エネ変動分を配分した後、ステップS103aとして、配分した再エネ安定分と再エネ変動分の量を調整するようにした。
【0076】
すなわち、ステップS103aでは、再エネ安定分が再エネ需要電力量を満たさない場合、再エネ不安定分に対処可能な需要家のフレキシビリティの量の大きさに応じて再エネ安定分と再エネ不安定分の量を調整するようにしている。つまり、ステップS103a
では、各需要家の各時刻においてステップS103で算出した再エネ不安定分と各需要家のフレキシビリティの量を比較する。そして、フレキシビリティの量が再エネ不安定分より大きい場合、再エネ不安定分をフレキシビリティの量を上限として増やすようにする。なお、その際に需要家が設定したフレキシビリティの量の中で一部の量を上限としてもよい。
【0077】
この結果、需要家によっては再エネ不安定分が増えることで、再エネ安定分と再エネ不安定分の合計が再エネ需要電力量を超える場合がある。その場合、超えた再エネ安定分を他需要家に配分することができる。また、新たに再エネ安定分が配分された他需要家は、配分された新たな再エネ安定分を、その量と同等の再エネ不安定分と置き換えることができる。
以上のプロセスによって、フレキシビリティが多い需要家に再エネ不安定分を多く配分し、フレキシビリティが少ない他の需要家には再エネ安定分をより多く配分することが可能となる。
【0078】
なお、本発明は前述した実施の形態例に限定されるものではなく、様々な応用例、変形例が含まれる。また、前述した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではなく、適宜、その他の構成にも応用することができる。
【符号の説明】
【0079】
4…電力需給計画システム、
100…入力部、
110…需要受信部、
120…フレキシビリティ受信部、
130…再エネ供給受信部、
200…計画部、
210…計画データ作成部、
220…フレキシビリティ付き供給計画作成部、
230…計画出力部、
240…充放電能力管理部