IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電極体の製造方法 図1
  • 特開-電極体の製造方法 図2
  • 特開-電極体の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179474
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電極体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241219BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/70 A
H01M4/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098348
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】志村 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】召田 智也
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB00
5H017CC01
5H017DD01
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050DA04
5H050FA15
5H050GA22
5H050GA25
(57)【要約】
【課題】本開示は、生産設備の簡素化を図ることができ、電極層の剥離が抑制された電極体を効率よく製造することが可能な電極体の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、集電体と、上記集電体の第1面上に形成された電極層と、を有する電極体の製造方法であって、上記集電体の上記第1面における、電極層材料を塗工する塗工領域の縁部を粗化する粗化工程と、上記集電体の上記塗工領域に、上記電極層材料を塗工して上記電極層を形成する塗工工程と、有する電極体の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の第1面上に形成された電極層と、を有する電極体の製造方法であって、
前記集電体の前記第1面における、電極層材料を塗工する塗工領域の縁部を粗化する粗化工程と、
前記集電体の前記塗工領域に、前記電極層材料を塗工して前記電極層を形成する塗工工程と、を有する電極体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池の製造に用いられる電極体の製造方法に関する技術として、集電体に対し、電極層材料を塗布して電極層を得る方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、集電板の一方の面に設けられた正極層と、前記一方の面とは反対側の他方の面に設けられた負極層と、を有する複数のバイポーラ電極がセパレータを介して積層された蓄電装置であって、複数のバイポーラ電極のそれぞれは、第一の面と、前記第一の面とは反対側の面であって、前記第一の面よりも表面粗さが粗い第二の面と、を有する集電板を含むことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、集電体の基材の第1の面に対し、第1の電極層を形成する第1の電極塗料を塗工する第1の塗工工程と、第1の塗工工程における塗工領域の位置を検出する検出工程と、基材の第2の面に対し、前記第2の電極層を形成する第2の電極塗料を塗工する第2の塗工工程と、を備え、前記第2の面は、前記第1の面に比して粗度が高く、第2の塗工工程では、検出工程で検出された塗工領域に基づいて、塗工位置の調整がなされる、電極の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2では、集電体の一方の主面全体に凹凸を付与し、そのあと電極層材料を塗布することで、電極層と集電体との間のアンカー効果(密着性向上効果)を得ており、電極層の集電板からの脱離を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2018/025867号
【特許文献2】特開2020-053370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
集電体の主面全体を粗化するためには、生産設備が複雑化する傾向があり、粗化に要する時間も長時間となる。本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生産設備の簡素化を図ることができ、電極層の剥離が抑制された電極体を効率よく製造することが可能な電極体の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]
集電体と、前記集電体の第1面上に形成された電極層と、を有する電極体の製造方法であって、
前記集電体の前記第1面における、電極層材料を塗工する塗工領域の縁部を粗化する粗化工程と、
前記集電体の前記塗工領域に、前記電極層材料を塗工して前記電極層を形成する塗工工程と、を有する電極体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の電極体の製造方法によれば、生産設備の簡素化を図ることができ、かつ、電極層の剥離が抑制された電極体を効率よく製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示における粗化工程前後の集電体を例示する概略平面図である。
図2】本開示における粗化工程後の集電体の塗工領域の縁部を例示する概略断面図である。
図3】本開示における電極体の製造方法を例示する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示される各図は例示であり、各部の大きさ、および、各部の形状は、理解を容易にするために、誇張している場合がある。
【0012】
図1(a)および図1(b)は、本開示における粗化工程前後の集電体を例示する概略平面図である。図2(a)~図2(c)は、本開示における粗化工程後の集電体の塗工領域の縁部を例示する概略断面図である。図3(a)~図3(c)は、本開示における電極体の製造方法を例示する工程図である。なお、図3(a)および図3(b)は、それぞれ、図1(a)および図1(b)のA-A断面図に相当する。
【0013】
図3に示すように、本開示における電極体の製造方法は、集電体1の第1面S1における、電極層材料を塗工する塗工領域Xの縁部Pを粗化する粗化工程(図3(a)、図3(b))と、集電体1の塗工領域Xに、電極層材料を塗工して電極層2を形成する塗工工程(図3(c))と、を有する。これにより、集電体1と、集電体1の第1面S1上に形成された電極層2と、を有する電極体10が得られる。
【0014】
図3(c)に示すように、電極層2の端部Eは薄いため、乾燥が早く、過度に乾燥されやすい。そのため、電極層2の端部Eは、例えば、電極層2の中央部と比較して、集電体1に対する剥離強度が低くなり、電極層2の剥離が生じやすい。一方、本開示によれば、粗化工程において、電極層2と剥離強度が低下しやすい、塗工領域Xの縁部Pを粗化する。そのため、電極層2の端部Eと集電体1との密着性が向上し、電極層2の剥離を抑制できる。また、第1面S1の全体を粗化するのではなく、塗工領域Xの縁部Pのみを粗化するため、加工面積(粗化面積)を少なくすることができ、簡単な生産設備で効率良く、電極体を製造することができる。
【0015】
また、従来の電極体の製造方法においては、乾燥時における電極層端部の剥離強度の低下を抑制するため、未塗工領域の温度が高温とならないように乾燥条件を抑える必要があった。これに対し、本開示においては、粗化工程によって電極層端部の集電体に対する剥離強度が向上するため、乾燥エネルギーを上げることができる。従って、乾燥時間が短くなり、生産設備の簡素化および小型化を図ることができる。以下、各工程について詳述する。
【0016】
1.粗化工程
本工程は、集電体の第1面における、電極層材料を塗工する塗工領域の縁部を粗化する工程である。
図1(a)に示すように、集電体1の第1面S1は、電極層材料を塗工する塗工領域Xを有する。また、集電体1の第1面S1は、塗工領域X以外の未塗工領域Nを有していてもよい。例えば、塗工領域Xは集電体の短手方向である第2方向D2の中央部分に位置することが好ましい。また、塗工領域は集電体の長手方向である第1方向D1の中央部分に位置することが好ましい。
【0017】
集電体1は、負極集電体、正極集電体、バイポーラ集電体等の集電体として用いられることが好ましい。集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、SUS、ニッケル等の金属箔が用いられる。集電体の厚さとしては、例えば、0.1μm以上であり、1μm以上であってもよい。一方、集電体の厚さは、例えば、1mm以下であり、100μm以下であってもよい。
【0018】
本開示においては、塗工領域Xの縁部Pを粗化する。すなわち、塗工領域Xの縁部Pに、凹凸形状を付与する。集電体が第1方向D1に長手方向を有する場合、縁部Pは、例えば、第1方向D1に延びる第1縁部P1を含むことが好ましい(図1(b))。また、縁部Pは、例えば、上記第1縁部および短手方向である第2方向D2に延びる第2縁部の両方を含んでも良い。
【0019】
縁部Pの幅Wは、例えば、1mm以上であり、3mm以上であってもよい。一方、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。縁部Pの幅Wは、後述する電極層2の端部Eの幅Wと同じであってもよい。本開示において、「電極層の端部の幅Wと同じ」とは、縁部Pの幅Wが、電極層の端部の幅W±1mm以下のことをいう。
【0020】
粗化処理としては、表面に凹凸形状を付与することができる処理であれば特に限定されないが、例えば、レーザ処理が挙げられる。レーザとしては、好ましくは、ファイバーレーザを用いる。ファイバーレーザを用いることで、より径の小さいレーザビームを照射することができ、高いピークパワーが得られるため凹凸形状を形成しやすい。ファイバーレーザとしては、貫通力の高いビーム径が1mm以下のファイバーレーザを用いることが好ましい。
【0021】
本工程において縁部に付与する凹凸形状は、電極層端部との間にアンカー効果(密着性向上効果)が得られるような形状であれば特に限定されない。厚さ方向D3の断面視において、例えば、図2(a)に示す毛羽立ち形状や、図2(b)に示すピット状が挙げられる。中でも、図2(a)に示す毛羽立ち形状が好ましい。
【0022】
上記凹凸形状は、図2(a)~図2(c)に示すように、例えば、第1方向D1に交互に配置された凸部xと凹部yとを有する。凹部yとは、例えば、凹凸が形成されていない面Bよりも、凹んだ部分をいう。
【0023】
上記凹凸形状は、厚さ方向D3の断面視において、集電体1の断面積(図2(c)においては集電体1の厚さT×第1方向D1における長さL)に対する凹部yの合計断面積(図2(c)においては長さLに含まれる複数の凹部yの断面積(三角形面積)の合計)の割合は、例えば、10%以下であり、5%以下であってもよい。凹部の合計面積の割合は、プロファイル測定により、凹部のピッチおよび深さを算出することで確認することができる。集電体1の厚さTとは、凹凸が形成されていない領域における集電体の厚さをいう。
【0024】
本工程後において、未塗工領域Nは、凹凸形状を有さないことが好ましい。また、塗工領域Xの縁部P以外の領域は、凹凸形状を有さないことが好ましい。
【0025】
2.塗工工程
本工程は、上述した塗工領域に、電極層材料を塗工して電極層を形成する工程である。電極層材料は、負極材料(負極活物質層の材料)であってもよい。負極材料は、例えば、負極活物質、導電材、バインダ、及び溶媒を含む。また、電極層材料は、正極材料(正極活物質層の材料)であってもよい。正極材料は、例えば、正極活物質、導電材、バインダ、及び溶媒を含む。これらの材料としては、特に限定されず、公知の材料が用いられる。
【0026】
図3(c)に示すように、電極層2の端部Eは、表面張力と重力等によってダレが生じ、中央部よりも厚さが薄くなる。そのため、従来の電極体の製造方法によれば、電極層の端部は過度に乾燥されやすく、集電体との間の剥離強度が低下しやすい。また、電極端部の剥離強度の低下により、端部の割れが生じる場合がある。
【0027】
本開示においては、上述した粗化工程において、集電体の塗工領域の縁部を粗化するため、集電体と電極層端部との間の剥離強度を向上させることができる。本開示において、電極層2の端部Eの幅Wは、例えば、1mm以上であり、3mm以上であってもよい。一方、例えば、10mm以下であり、5mm以下であってもよい。
【0028】
3.他の工程
本開示における電極体の製造方法は、上記塗工工程後に、上記電極層を乾燥する乾燥工程を有していてもよい。乾燥工程は、レーザを照射するレーザ乾燥が好ましい。乾燥工程における二酸化炭素排出量を低減することができるためである。
【0029】
本開示における電極体の製造方法は、集電体の第2面における、電極層材料を塗工する塗工領域の縁部を粗化する粗化工程を有していても良い。平面視上、第2面における塗工領域は、第1面における塗工領域と重複していることが好ましい。さらに、粗化工程後に、第2面における塗工領域に、電極層材料を塗工する工程を有していてもよい。この場合、第2面上の電極層を乾燥するための乾燥工程を有していてもよい。
【0030】
4.電極体
本開示において製造される電極体は、集電体と、集電体の第1面上に形成された電極層と、を有するものである。また、電極体は、集電体の第2面上にも電極層を有していてもよい。すなわち、電極体は、集電体の第1面および第2面の両面上に電極層を有するものであってもよい。集電体の第1面上に形成された電極層および第2面上に形成された電極層は、ともに正極活物質層であってもよく、ともに負極活物質層であってもよく、一方が正極活物質層であり他方が負極活物質層であってもよい。
【0031】
電極体が用いられる電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0032】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0033】
1 …集電体
2 …電極層
10…電極体
X …塗工領域
P …縁部
図1
図2
図3