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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179479
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】送風機および送風機の防振装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/62 20060101AFI20241219BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20241219BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20241219BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F04D29/62 F
F04D29/66 L
F16F15/08 L
F04B39/00 102Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098357
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 恒
(72)【発明者】
【氏名】武田 諭
【テーマコード(参考)】
3H003
3H130
3J048
【Fターム(参考)】
3H003AA06
3H003AB07
3H003AC02
3H003AD03
3H003BB06
3H003CD01
3H130AA13
3H130AB12
3H130AB26
3H130AB42
3H130AC01
3H130AC30
3H130BA06Z
3H130BA15Z
3H130CA24
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DF03X
3H130DJ01X
3H130DJ06X
3H130EA03Z
3H130EA07Z
3H130EB01Z
3H130EC08Z
3H130ED03Z
3H130ED05Z
3J048AA01
3J048AB11
3J048BA02
3J048CB23
3J048DA01
3J048EA07
(57)【要約】
【課題】送風機を設置した後でも、送風機を取り外すことなく共振を回避することが可能な送風機および送風機の防振装置を提供する。
【解決手段】モータ1、モータ1の駆動により回転する羽根車2、およびモータ1を支持するベース3を備えた送風機部5と、送風機部5を支持する防振部10と、モータ1の回転速度を制御するインバータと、送風機部5の振動値を検出する振動加速度センサ4と、を備える。防振部10は、可動することでベース3を支持する複数の可動防振ゴム20を備える。インバータによってモータ1の回転速度を変えて送風機部5が共振した場合、可動防振ゴム20を駆動させてベース3に押し当てて、可動防振ゴム20による支持点数を変えて送風機部5の固有振動数を変化させることで共振を回避する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ、前記モータの駆動により回転する羽根車、および前記モータを支持するベースを備えた送風機部と、前記送風機部を支持する防振部と、前記モータの回転速度を制御するインバータと、前記送風機部の振動値を検出する振動加速度センサと、を備え、
前記防振部は、可動することで前記ベースを支持する複数の可動防振弾性体を備え、
前記インバータによって前記モータの回転速度を変えて前記送風機部が共振した場合、前記可動防振弾性体を駆動させて前記可動防振弾性体を前記ベースに押し当てて、前記可動防振弾性体によって前記ベースの支持点数を変えて前記送風機部の固有振動数を変化させることで共振を回避することを特徴とする送風機。
【請求項2】
請求項1に記載の送風機において、
前記可動防振弾性体は、弾性体としてゴムを用いた可動防振ゴムであり、
前記防振部は、前記ベースの最低限四隅に固定防振ゴムを備え、
前記可動防振ゴムは、前記固定防振ゴムを除いて複数個所に配置されていることを特徴とする送風機。
【請求項3】
請求項2に記載の送風機において、
前記可動防振ゴムは、防振ゴムと、前記防振ゴムを上下に駆動する電動ジャッキを備えることを特徴とする送風機。
【請求項4】
請求項3に記載の送風機において、
前記電動ジャッキは、ネジ式であることを特徴とする送風機。
【請求項5】
請求項2に記載の送風機において、
前記固定防振ゴムは、前記ベースに固定され、
前記可動防振ゴムは、前記送風機部の荷重が均等に掛かるように前記ベースの各辺を等分した位置に配置されていることを特徴とする送風機。
【請求項6】
請求項5に記載の送風機において、
前記可動防振ゴムを2等分または3等分した位置に配置することを特徴とする送風機。
【請求項7】
請求項3に記載の送風機において、
前記防振部の筐体には、前記電動ジャッキを貫通して配置するための円形の孔が形成されていることを特徴とする送風機。
【請求項8】
請求項1に記載の送風機において、
前記振動加速度センサは、前記ベースの中央に設けられていることを特徴とする送風機。
【請求項9】
請求項1に記載の送風機において、
前記振動値から前記送風機部の固有振動数および共振周波数を分析する分析装置を備えることを特徴とする送風機。
【請求項10】
請求項1に記載の送風機において、
前記送風機部の共振を騒音検知器または電流検知器によって検知することを特徴とする送風機。
【請求項11】
請求項3に記載の送風機において、
前記振動値に基づいて共振周波数を特定し、前記共振周波数を避ける特定の固有振動数に変化させるための前記可動防振ゴムの個数を算出し、前記電動ジャッキを駆動させるための信号を出力する制御装置を備えることを特徴とする送風機。
【請求項12】
モータ、前記モータの駆動により回転する羽根車、および前記モータを支持するベースを備えた送風機部と、前記モータの回転速度を制御するインバータと、を備えた送風機の防振装置であって、
前記ベースが固定される基板と、
前記基板を支持する防振部と、
可動することで前記基板を支持する複数の可動防振弾性体と、を備え、
前記インバータによって前記モータの回転速度を変えて前記送風機部が共振した場合、前記可動防振弾性体を駆動させて前記可動防振弾性体を前記ベースに押し当てて、前記可動防振弾性体による前記基板の支持点数を変えて前記送風機部の固有振動数を変化させることで共振を回避することを特徴とする送風機の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機および送風機の防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送風機は、運転中、或る特定の回転数(回転速度)のときに大きい振動を発生することがある。これは、送風機の羽根車が固有値として持つ共振周波数が送風機の運転周波数と一致したことによる共振現象である。また、送風機の場合、ダクトなどに接続した場合に送風機の固有振動数が変化するため、送風機単品の状態では意図しない周波数で共振が起こる虞がある。この場合、共振現象による異常振動や過大な応力が発生し、製品の信頼性が著しく低下する。
【0003】
特許文献1には、送風機のモータの回転速度を制御する装置を備え、共振と判定された場合に共振と判定された周波数をスキップすることで共振を回避する技術が提案されている。特許文献2には、防振機構を設けることによって共振した際の振動応答を低減させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/140582号
【特許文献2】特開2019-199904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、共振と判定された周波数をスキップする方法であるため、運転したい周波数で連続運転することはできない。また、特許文献2では共振時の振動応答を低減させることはできるが、共振自体を回避することはできない。
【0006】
また、送風機を例えばダクトに接続して使用する場合、設置条件や固定条件により、送風機自体の固有振動数が変化するため、送風機を設置して実際に運転した時に共振することが初めて分かるため、場合によっては送風機の取り外しや再設計、再製作に多大な工数が掛かりコストも要していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、送風機を設置した後でも送風機を取り外すことなく共振を回避することが可能な送風機および送風機の防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータ、前記モータの駆動により回転する羽根車、および前記モータを支持するベースを備えた送風機部と、前記送風機部を支持する防振部と、前記モータの回転速度を制御するインバータと、前記送風機部の振動値を検出する振動加速度センサと、を備え、前記防振部は、可動することで前記ベースを支持する複数の可動防振弾性体を備え、前記インバータによって前記モータの回転速度を変えて前記送風機部が共振した場合、前記可動防振弾性体を駆動させて前記可動防振弾性体を前記ベースに押し当てて、前記可動防振弾性体によって前記ベースの支持点数を変えて前記送風機部の固有振動数を変化させることで共振を回避することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、送風機を設置した後でも、送風機を取り外すことなく共振を回避することが可能な送風機および送風機の防振装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の送風機を示す正面図である。
図2】第1実施形態の送風機を示す側面図である。
図3】第1実施形態の送風機の可動防振ゴムを示す断面図である。
図4】第1実施形態の送風機の回路構成図である。
図5図1のV-V線断面図である。
図6】可動防振ゴムでベースを支持した状態を示す図である。
図7図6のVII-VII線断面図である。
図8】可動防振ゴムによる別の支持パターンを示す図である。
図9】可動防振ゴムによるさらに別の支持パターンを示す図である。
図10】第2実施形態の送風機を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態例について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。なお、各実施形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の送風機を示す正面図、図2は、第1実施形態の送風機を示す側面図である。
図1および図2に示すように、送風機100は、モータ1、モータ1の駆動により回転し送風する羽根車2、モータ1を支持するベース3を備えた送風機部5と、送風機部5を支持する防振部10と、を備える。また、送風機100は、モータ1の回転速度を制御するインバータ30(図4参照)と、送風機部5が振動する振動値を検出する振動加速度センサ4と、を備える。また、送風機100は、例えば、ターボファンやシロッコファンと称されるものである。
【0013】
羽根車2は、吐き出し口2b(図1参照)と吸い込み口2c(図2参照)とを備えたケーシング2aに収容されている。吐き出し口2bは、ケーシング2aの羽根車2の回転軸方向に直交する方向を向いて形成されている。吸い込み口2cは、円形の開口であり、羽根車2の回転軸方向の一面側に形成されている。
【0014】
モータ1は、例えば、シャフト(回転軸)1a、このシャフト1aに固定されるロータ(不図示)、ロータに回転力を与えるステータ(不図示)などを備えて構成されている。シャフト1aは、横向きに配置され、シャフト1aの先端に羽根車2が片持ち状態で固定されている。また、モータ1は、ベース3によって支持されている。このベース3は、モータ1が固定される台座部3aと、台座部3aの下端から水平方向外側に延びて形成される矩形状の板部3bと、を有している。台座部3aの内側は空洞であり、空洞内の板部3b上に振動加速度センサ4が配置されている。また、台座部3aは、ケーシング2aと一体である。
【0015】
防振部10は、送風機部5の下方に位置し、送風機部5を弾性支持している。また、防振部10は、基盤11と、固定防振ゴム12とを備えて構成されている。固定防振ゴム12は、ベース3に対してモータ1およびケーシング2aよりも水平方向の外側に位置している(図1参照)。また、固定防振ゴム12は、台座部3aよりも水平方向の外側に位置している(図2参照)。
【0016】
基盤11は、鋼板を折り曲げて扁平な四角箱型にした筐体である。また、基盤11は、板部3bよりも厚く形成され、設備や地面に設置される。また、基盤11は、板部3bとほぼ重なる面積を有し、または板部3bよりも若干大きい面積を有している。
【0017】
固定防振ゴム12は、送風機部5が発生する振動を抑制したり、地面や設備に伝わる振動を抑制する。また、固定防振ゴム12は、板部3bの四隅に位置するように配置されている。また、固定防振ゴム12は、モータなどで可動するものではなく、基盤11とベース3の板部3bとにボルト(不図示)を介して固定されている。これにより、送風機100の運転時に送風機部5が防振部10から浮き上がるのを防いでいる。なお、固定防振ゴム12のゴムの種類としては、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムなどを用いることができるが、特に限定されない。
【0018】
振動加速度センサ4は、送風機部5の振動を検出するセンサである。本実施形態では、振動加速度センサ4は、1軸方向つまり上下方向の振動を検出するセンサである。また、本実施形態では、振動加速度センサ4は、ベース3の中央に配置されている。
【0019】
防振部10には、複数の可動防振ゴム20が設けられている。この可動防振ゴム20は、防振ゴム部21を備え、ベース3(板部3b)の下面から離間して配置されている。後記するように、共振時にこの可動防振ゴム20の防振ゴム部21が上昇することで、ベース3(板部3b)の下面に当接して、送風機部5を支持するようになっている。
【0020】
図3は、第1実施形態の送風機の可動防振ゴムを示す断面図である。
図3に示すように、可動防振ゴム20(可動防振弾性体)は、防振ゴム部21と、防振ゴム部21を上下方向に動作させる電動ジャッキ22(駆動部)と、を備えて構成されている。
【0021】
可動防振ゴム20の防振ゴム部21の形状は、例えばベース3に押し当てやすいように丸形(半球形状)のゴムである。ただし、防振ゴム部21の形状や数は、製品重量によって推奨されるバネ定数が決まるため、丸形に限定されるものではない。なお、防振ゴム部21のゴムとしては、前記した固定防振ゴム12と同様に、種々のゴムを用いることができる。
【0022】
電動ジャッキ22は、防振ゴム部21の下側に配置され、ネジ部22aと、ネジ部22aを上下動させる動力伝達部22bと、動力伝達部22bを回転駆動させる電動機部22cと、を備えている。また、ネジ部22aは、雄ネジであり、円柱状の部材の外周面にねじ溝が形成されている。ネジ部22aの上端には、防振ゴム部21が固定され、防振ゴム部21とネジ部22aとが一体となって動作する。動力伝達部22bは、ネジ部22aが螺合する雌ネジが形成された円筒形状の部材である。電動機部22cは、動力伝達部22bを回転駆動させる動力源である。なお、防振ゴム部21とネジ部22aは、動力伝達部22bと一緒に回転しないように回り止め機構を備えている。
【0023】
防振部10の基盤11は、直方体の筐体であり、この筐体には電動ジャッキ22が貫通する分の丸型の孔11aが形成されている。この孔11aの形状は、例えば電動ジャッキ22が貫通するための面積よりも大きな孔や長穴形状にしてもよいが、電動ジャッキ22が貫通して配置されるための最小限の孔11aとすることが好ましい。これにより、筐体(基盤11)の強度を高く保つことができる。また、孔11a内に配置される電動ジャッキ22との隙間を極力小さくすることでゴミや埃が筐体(基盤11)内に侵入するのを防ぐ効果もある。
【0024】
電動機部22cの駆動力によって動力伝達部22bが一方に回転することで、ネジ部22aが動作し、防振ゴム部21が上下方向の一方(例えば、上方に向けて)に動作する。また、動力伝達部22bが他方に回転することで、ネジ部22aが動作し、防振ゴム部21が上下方向の他方(例えば、下方に向けて)に動作する。このように、外部からの信号を受けて動力伝達部22bを回転させ、防振ゴム部21を上下に動作させることができる。このようにしてネジ部22aが上昇することで、防振ゴム部21がベース3の下面に当接して、送風機部5を支持するようになっている。また、ネジ部22aが下降することで、防振ゴム部21がベース3の下面から離れ、送風機部5の支持が解除される。
【0025】
なお、電動ジャッキ22は、雄ネジによるネジ部22aと雌ネジによる動力伝達部22bとを備えたネジ式の場合を例に挙げて説明したが、油圧によって駆動するものでもよい。ネジ式にする方が構造が簡易的で高さ制御がしやすいため、ネジ式の電動ジャッキを使用する方が望ましい。
【0026】
また、駆動部について、電動ジャッキ22(ねじ)の例を示しているが、ピストンとシリンダにより構成されて空気圧や油圧によって作動するものであっても、磁力(電磁力)で作動するものであってもよい。
【0027】
また、駆動部について、電動ジャッキ22(ねじ)以外に、圧電素子(ピエゾ素子)を使うこともできる。例えば、電圧を加えると伸縮する圧電素子を多層積層することにより、小型で大変位が得られる積層圧電アクチュエータとすることができる。
【0028】
図4は、第1実施形態の送風機の回路構成図である。
図4に示すように、モータ1(図1参照)は、インバータ30によって回転速度の制御が行われる。また、モータ1は、交流電源31に接続されている。これにより、ユーザが運転したい運転周波数(回転速度)で運転することができる。しかしながら、送風機100では、運転周波数と送風機100が持っている固有振動数とが一致すると共振が発生し、過大な振動や騒音が発生する虞がある。このため、送風機100の振動値を振動加速度センサ4で取得し、取得した振動値を周波数分析することで、共振周波数を知ることができる。そこで、第1実施形態の送風機100では、振動加速度センサ4から得られた送風機100の振動値を取得し、取得した振動値を周波数分析する分析装置41に送る。制御装置40は、分析装置41と接続され、分析装置41によって共振周波数が得られた場合には、可動防振ゴム20の防振ゴム部21を上昇させてベース3に当接させ、四隅の固定防振ゴム12とともにベース3を支持する点数を増やす。
【0029】
なお、共振を判断する方法は振動加速度センサ4と分析装置41とによって測定する以外に、一般的な方法として、騒音計を用いて騒音値から判断してもよく、または電流計を用いて電流値から判断してもよい。第1実施形態のように、振動加速度センサ4を使用することで、振動現象を直接測定することができ、特定の共振を正確に捉えることができる。
【0030】
図5は、図1のV-V線断面図である。なお、図5において、●(黒丸)は、ベース3を支持している状態を示し、○(白丸)は、ベース3を支持していない状態を示している。
図5に示すように、防振部10は、製品(送風機部5)を支持するためにベース3の最低限四隅に固定防振ゴム12を備えている(図5の黒丸参照)。この固定防振ゴム12は、ベース3と基盤11とにそれぞれ固定されている。これにより、製品(送風機部5)を安定して支持することができる。また、防振部10は、四隅の固定防振ゴム12以外に、複数個所においてベース3に当接して支持することが可能な可動防振ゴム20を備えている。
【0031】
可動防振ゴム20は、ベース3(板部3b)の長辺3d1を2等分した位置に配置される。これは、図5において符号20Aで示す位置のものである。また、可動防振ゴム20は、ベース3(板部3b)の短辺3c1を2等分した位置に配置される。これは、図5において符号20Bで示す位置のものである。また、可動防振ゴム20は、ベース3(板部3b)の長辺3d1を三等分した位置に配置される。これは、図5において符号20Cで示す位置である。また、可動防振ゴム20は、ベース3(板部3b)の長辺3d1の2等分した位置、かつ、ベース3(板部3b)の短辺3c1を2等分した位置に配置される。これは、図5において符号20Dで示す位置のものである。これにより、送風機部5の荷重が均等に掛かるようになり、各可動防振ゴム20による防振効果を均等に得ることができる。なお、製品(送風機部5)の大きさや重量によって可動防振ゴム20の数やバネ定数が変わるため、可動防振ゴム20の数やバネ定数は第1実施形態に限定されるものではない。
【0032】
なお、第1実施形態では、2等分の位置と3等分の位置を混合した配置としたが、2等分の位置のみの配置であってもよく、または3等分の位置のみの配置であってもよい。また、4等分の位置のみの配置であっても、または4等分と2等分や3等分とを混合した配置であってもよい。
【0033】
第1実施形態では、上下に駆動する可動防振ゴム20の個数を変えて、防振ゴム部21(図4参照)をベース3の下面に押し当てる。そして、送風機部5が固定防振ゴム12とともに支持されることで、送風機100の固有振動数が変化する。なお、固有振動数の整数倍の値が共振周波数となる。
【0034】
固有振動数fは、一般に、送風機部5の重量M、バネ定数K、バネの個数nとの関係で下記式(1)として表わされる。
f=1/2π√(K×n/M)・・・(1)
【0035】
インバータ30によってモータ1の回転速度、すなわち運転周波数を変化させると、運転周波数が固有振動数fと一致した場合に、過大振動、いわゆる共振が発生する。ここで振動加速度センサ4で得られた振動値は、分析装置41によって周波数分析される。この周波数分析によって共振周波数が特定され、特定した共振周波数を避けるような固有振動数が決定される。そして、式(1)に基づいて、支持する可動防振ゴム20の個数nが逆算される。制御装置40は、決定したn個の可動防振ゴム20に対して信号を出し、電動ジャッキ22を駆動させる。これにより、可動防振ゴム20の防振ゴム部21が上昇し、ベース3(板部3b)の下面に押し当てられることによって送風機部5が支持される。その結果、可動防振ゴム20によるベース3の支持点数が変わり、送風機100の固有振動数が遷移して(変化して)、共振を回避することが可能になる。
【0036】
図6は、第1実施形態の可動防振ゴムでベースを支持した状態を示す図、図7は、図6のVII-VII線断面図である。
図6および図7は、共振周波数が特定され、可動防振ゴム20によって支持する箇所を1か所増やす場合である。この場合には、例えば、ベース3の長辺3d1の2等分の位置、かつ、ベース3の短辺3c1の2等分の位置(ベース3の中央部)に配置される可動防振ゴム20D(図7参照)に駆動信号が送られる。これにより、可動防振ゴム20Dの電動ジャッキ22が駆動され、可動防振ゴム20Dの防振ゴム部21がベース3の下面に押し当たるように上昇する。
【0037】
図7に示すように、ベース3は、四隅の固定防振ゴム12と、中央の可動防振ゴム20Dの計5か所で支持される。なお、図7では、ベース3を支持している防振ゴムを黒丸(●)で示している。これにより、送風機部5の固有振動数が変化し、共振周波数が遷移する。
【0038】
また、ベース3の中央の可動防振ゴム20Dを駆動させることで、四隅の固定防振ゴム12と合わせてベース3を均等に支持することができる。これにより、各防振ゴム(四隅の固定防振ゴム12と中央の可動防振ゴム20D)に掛かる荷重が均等になり、各防振ゴム(固定防振ゴム12と可動防振ゴム20D)において防振効果を均等に得ることができる。
【0039】
図8は、可動防振ゴムによる別の支持パターンを示す図、図9は、可動防振ゴムによるさらに別の支持パターンを示す図である。
図8は、式(1)に基づいて、支持する可動防振ゴム20の個数n(支持点数)が2と算出された場合を示している。この場合、制御装置40は、ベース3(板部3b)の長辺3d1の3等分の位置に配置された可動防振ゴム20C,20Cの電動ジャッキ22を駆動させる信号を出力する。この場合も、可動防振ゴム20によるベース3の支持点数が変わり、送風機100の固有振動数が遷移して(変化して)、共振を回避することが可能になる。また、ベース3に対する各防振ゴムによる荷重が均等になり、各防振ゴムにおいて防振効果を均等に得ることができる。
【0040】
図9は、式(1)に基づいて、支持する可動防振ゴム20の個数n(支持点数)が5と算出された場合を示している。この場合、制御装置40は、ベース3の長辺3d1の2等分の位置に配置された可動防振ゴム20A,20Aに対して、電動ジャッキ22を駆動させる信号を出力する。また、制御装置40は、ベース3の短辺3c1の2等分の位置に配置された可動防振ゴム20B,20Bに対して、電動ジャッキ22を駆動させる信号を出力する。さらに、制御装置40は、ベース3の長辺3d1の2等分の位置且つベース3の短辺3c1の2等分の位置に配置された可動防振ゴム20Dに対して、電動ジャッキ22を駆動させる信号を出力する。この場合も、可動防振ゴム20によるベース3の支持点数が変わり、送風機100の固有振動数が遷移して(変化して)、共振を回避することが可能になる。また、ベース3に対する各防振ゴムによる荷重が均等になり、各防振ゴムにおいて防振効果を均等に得ることができる。
【0041】
このように、第1実施形態では、送風機100の固有振動数fを変化させ、送風機100の運転周波数と一致しない範囲に共振周波数を遷移させることができる。このため、可変速運転をしたときの共振現象による異常振動や異常騒音、これに伴う過大な応力の発生を抑制することができる。
【0042】
以上説明したように、第1実施形態の送風機100は、モータ1、モータ1の駆動により回転する羽根車2、およびモータ1を支持するベース3を備えた送風機部5と、送風機部5を支持する防振部10と、を備える。また、送風機100は、モータ1の回転速度を制御するインバータ30と、送風機部5の振動値を検出する振動加速度センサ4と、を備える。防振部10は、可動することでベース3を支持する複数の可動防振ゴム20(可動防振弾性体)を備える。インバータ30によってモータ1の回転速度を変えて送風機部5が共振した場合、可動防振ゴム20を駆動させて可動防振ゴム20をベース3に押し当てる。そして、可動防振ゴム20によるベース3の支持点数が変わり、送風機部5の固有振動数が変化することで、共振を回避する(図1図2図4図5参照)。これによれば、送風機100を設置した後でも送風機100を取り外すことなく共振を回避することが可能になる。また、送風機の取り外しや再設計、再製作する必要がなくなる。なお、送風機部5が共振しなかった場合には、可動防振ゴム20による支持点数を変えることなく、送風機100を使用することができる。
【0043】
また、第1実施形態において、防振部10は、ベース3を支持する固定防振ゴム12を最低限ベース3の四隅に備える。可動防振ゴム20は、固定防振ゴム12を除いて複数ヶ所に配置される(図1図5参照)。これによれば、送風機100に固定防振ゴム12を設けて設置した後でも送風機100を取り外すことなく共振を回避することが可能になる。
【0044】
また、第1実施形態において、可動防振ゴム20は、防振ゴム部21と、防振ゴム部21を上下に駆動させる電動ジャッキ22とを備える(図3参照)。これによれば、設置面積が横方向に拡がることなくコンパクトな構成で防振ゴム部21を駆動させることができる。
【0045】
また、第1実施形態において、電動ジャッキ22は、ネジ式である(図3参照)。これによれば、油圧式などと比べて高さ調節が容易である。
【0046】
また、第1実施形態において、固定防振ゴム12は、ベース3に固定され、可動防振ゴム20は、送風機部5の荷重が均等に掛かるようにベース3の各辺(短辺3c1、長辺3d1)を等分した位置に配置される(図5参照)。これによれば、可動防振ゴム20によるベース3の支持点数を変更した場合でも、送風機部5の荷重を均等に支持できる。
【0047】
また、第1実施形態は、可動防振ゴムを2等分または3等分した位置に配置することで(図5参照)、可動防振ゴム20の個数を増やし過ぎることなく共振を回避できる。
【0048】
また、第1実施形態は、防振部10の基盤11(筐体)には、電動ジャッキ22を貫通して配置するための円形の孔11aが形成されている(図3参照)。これによれば、電動ジャッキ22の形状に合わせて円形の孔11aにすることで、電動ジャッキ22に対して大きく形成された孔や長孔などと比べて基盤11(筐体)の強度を保つことができる。
【0049】
また、第1実施形態において、振動加速度センサ4は、ベース3の中央に設けられている(図1図2参照)。これによれば、送風機部5からの振動を片寄り無く検出することができる。
【0050】
また、第1実施形態は、振動加速度センサ4の振動値から送風機部5の固有振動数および共振周波数を分析する分析装置41を備える(図4参照)。これによれば、制御装置40に分析装置41に相当する制御を組み込む必要がないので、送風機100の制御システムの構成が容易になる。
【0051】
なお、分析装置41を設けずに、振動値に基づいて共振周波数を特定し、共振周波数を避ける特定の固有振動数に変化させるための可動防振ゴム20の個数を算出し、電動ジャッキ22を駆動させるための信号を出力するすべての制御を制御装置に設けてもよい。これによれば、分析装置41が不要になり、回路構成を簡略化できる。
【0052】
また、第1実施形態は、送風機部5の共振を騒音検知器または電流検知器によって検知する。送風機部5の共振を分析装置41を用いることなく、容易に検知することが可能になる。
【0053】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態の送風機を示す正面図である。
図10に示すように、第2実施形態は、防振部10の上面に一枚のベース板50を追加している点で第1実施形態と相違する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0054】
第2実施形態の送風機100Aは、送風機部5と、防振装置110とを備えて構成されている。防振装置(送風機の防振装置)110は、防振部10と送風機部5との間にベース板50を備えている。送風機部5は、ベース3がベース板50に固定される。このようなベース板50を設けることで、様々な形状、大きさの送風機100Aの形状に対応することができる。なお、ベース板50の材質は、樹脂で成形されたものでもよいが、鋼板とすることで強度を保つことができる。
【0055】
また、ベース板50は、矩形状であり、四隅に固定防振ゴム12が配置される。可動防振ゴム20は、ベース板50の下面に防振ゴム部21を押し当てることにより、送風機100Aの固有振動数を変化させることができる。
【0056】
第2実施形態の送風機100Aの防振装置110は、モータ1、モータ1の駆動により回転する羽根車2、およびモータ1を支持するベース3を備えた送風機部5と、モータ1の回転速度を制御するインバータ30と、を備える。ベース3が固定されるベース板50(基板)と、ベース板50を支持する防振部10と、可動することでベース板50を支持する複数の可動防振ゴム20(可動防振弾性体)と、を備える。インバータ30によってモータ1の回転速度を変えて送風機部5が共振した場合、可動防振ゴム20を駆動させて可動防振ゴム20をベース3に押し当て、可動防振ゴム20によるベース板50の支持点数を変えて送風機部5の固有振動数を変化させることで共振を回避する(図10参照)。これによれば、送風機100Aを設置した後でも送風機100Aを取り外すことなく共振を回避することが可能になる。
【0057】
なお、可動防振弾性体として、実施形態では、ゴムを適用した可動防振ゴムの例を説明したが、これに限定されない。可動防振弾性体は、共振時に使われるものであり、ゴムに限らず、ばね(板ばねや弦巻ばね等)などの弾性体を用いることができる。また、可動防振弾性体として、ばねの場合には、可動防振ばねである。この場合の可動防振ばねは、防振ばね部と、防振ばね部をベース3に押し当てるように駆動させる駆動部とを備えている。
【0058】
また、本実施形態では、可動防振弾性体として、ゴムを適用した可動防振ゴムの例を説明したが、これに限定されるものではなく、エラストマーを用いてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 モータ
2 羽根車
2a ケーシング
2b 吐き出し口
2c 吸い込み口
3 ベース
3a 台座部
3b 板部
3c1 短辺(辺)
3d1 長辺(辺)
4 振動加速度センサ
5 送風機部
10 防振部
11 基盤
11a 孔
12 固定防振ゴム
20,20A,20B,20C,20D 可動防振ゴム(可動防振弾性体)
21 防振ゴム部
22 電動ジャッキ(駆動部)
22a ネジ部
22b 動力伝達部
22c 電動機部
30 インバータ
40 制御装置
41 分析装置
50 ベース板(基板)
100,100A 送風機
110 防振装置(送風機の防振装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10