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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179480
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】硬貨処理装置及び自動取引装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 1/00 20060101AFI20241219BHJP
   G07D 11/10 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
G07D1/00 Z GBL
G07D11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098358
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】田尻 俊也
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA08
3E141BA07
3E141DA08
3E141GA01
3E141GB03
3E141JA14
(57)【要約】
【課題】硬貨を安定的に搬送する。
【解決手段】硬貨処理装置10は、硬貨CNが集積される硬貨集積空間50を形成する集積タンク41と、集積タンク41と共に硬貨集積空間50を形成し、硬貨集積空間50に面した円盤面45Sを有し硬貨CNと当接して該硬貨CNを搬送する分離突起47が形成され回転することにより硬貨集積空間50内の硬貨CNを分離する傾斜円盤45と、傾斜円盤45により分離された硬貨CNを、円盤面45Sと連なる左搬送面LSに対向させながら搬送路Wに沿って搬送する搬送部51と、所定のタイミングにおいて傾斜円盤45の回転を一時停止させ所定の停止時間経過後に傾斜円盤45の回転を再開させる間欠分離制御を行う硬貨制御部12とを設ける。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨が集積される集積空間を形成する集積部と、
前記集積部と共に前記集積空間を形成し、前記集積空間に面した円盤面を有し前記硬貨と当接して該硬貨を搬送する突起部が形成され回転することにより前記集積空間内の前記硬貨を分離する回転体と、
前記回転体により分離された前記硬貨を、前記円盤面と連なる搬送面に対向させながら搬送路に沿って搬送する搬送部と、
所定のタイミングにおいて前記回転体の回転を一時停止させ所定の停止時間経過後に前記回転体の回転を再開させる間欠分離制御を行う制御部と
を有する硬貨処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記回転体の所定の回転方向への回転を一時停止させ前記停止時間経過後に前記回転方向への前記回転体の回転を再開させる前記間欠分離制御を行う
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記円盤面と対向する範囲の外側において前記搬送面と対向して設けられ前記硬貨の2枚分の厚さよりも狭い間隔を前記搬送面との間に空けて配置された規制部材と、前記搬送面とにより構成された分離ゲート
をさらに有し、
前記制御部は、
前記突起部により持ち上げられた前記硬貨が前記分離ゲートに到達する前に前記回転体の回転を一時停止させ前記停止時間経過後に前記回転体の回転を再開させ前記分離ゲートを通過させる前記間欠分離制御を行う
請求項2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記集積空間に集積された前記硬貨の量を検出する硬貨検知センサ
をさらに有し、
前記制御部は、
前記硬貨検知センサの検知結果に基づき前記集積空間に集積された前記硬貨の量が多いと判定した場合、前記集積空間に集積された前記硬貨の量が少ないと判定した場合よりも、前記停止時間を長くする
請求項3に記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記集積空間に集積された前記硬貨の量が多い場合は前記間欠分離制御を行う一方、前記集積空間に集積された前記硬貨の量が少ない場合は前記間欠分離制御を行わずに前記回転体を連続的に回転させる
請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記集積空間に集積された前記硬貨の量が多い場合、前記集積空間に集積された前記硬貨の量が少ない場合よりも、前記回転体の回転速度を速くした上で前記間欠分離制御を行う
請求項4に記載の硬貨処理装置。
【請求項7】
前記搬送部により搬送された前記硬貨を一時的に保留する一時保留部
をさらに有し、
前記制御部は、
前記一時保留部における前記硬貨の量が所定量よりも多い場合、前記間欠分離制御を行う
請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項8】
前記一時保留部に集積された前記硬貨の量を検出する一時保留部硬貨検知センサ
をさらに有し、
前記制御部は、
前記一時保留部がフル状態となったと前記一時保留部硬貨検知センサの検知結果に基づき判定するよりも前の時点において、前記一時保留部における前記硬貨の量が前記所定量よりも多い場合、前記間欠分離制御を行う
請求項7に記載の硬貨処理装置。
【請求項9】
使用者の操作を受け付ける操作部と、
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の硬貨処理装置と
を有する自動取引装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置及び自動取引装置に関し、例えば顧客に紙幣や硬貨を投入させて所望の取引を行う現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関やスーパー等で使用される現金自動預払機等においては、顧客との取引内容に応じて、例えば顧客又は店員に紙幣や硬貨等の現金を入金させ、また顧客又は店員へ現金を出金するものが広く普及している。
【0003】
この現金自動預払機等としては、例えば硬貨に関する処理を行う硬貨処理装置を内部に有するものがある。硬貨処理装置は、例えば顧客又は店員との間で硬貨の授受を行う入出金部、硬貨を集積すると共に集積した硬貨を1枚ずつに分離して繰り出す分離部、硬貨を搬送する搬送部、硬貨の金種や真偽等を識別する識別部(認識部とも呼ぶ)、及び金種毎に硬貨を収納する収納部等を有している。
【0004】
このうち分離部としては、例えば中心軸を水平方向から傾斜させた傾斜円盤(回転体とも呼ばれる)を回転可能に構成し、円盤面に突起を設けると共に、硬貨を集積する集積空間を形成する集積カバー(集積部とも呼ばれる)の下端を、回転体の外周における下側部分に沿うように形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この分離部では、回転体を回転させることにより、突起に硬貨を1枚ずつ引っかけて繰り出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-86655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような硬貨処理装置においては、連続的に回転体が回転することにより、硬貨の搬送で不具合が生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、硬貨を安定的に搬送し得る硬貨処理装置及び自動取引装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の硬貨処理装置においては、硬貨が集積される集積空間を形成する集積部と、集積部と共に集積空間を形成し、硬貨と当接して該硬貨を搬送する突起部が形成され集積空間に面した円盤面を有する回転体を回転させて集積空間内の硬貨を分離する分離部と、分離部により分離された硬貨を、円盤面と連なる搬送面に対向させながら搬送路に沿って搬送する搬送部と、所定のタイミングにおいて回転体の回転を一時停止させ所定の停止時間経過後に回転体の回転を再開させる間欠分離制御を行う制御部とを設けるようにした。
【0009】
また本発明の自動取引装置においては、使用者の操作を受け付ける操作部と、上述した硬貨処理装置とを設けるようにした。
【0010】
本発明は、集積空間から搬送部へ硬貨を正常に受け渡せなかったり、集積部よりも下流側の一時保留部において硬貨が溢れてしまったりといった、連続的に回転体が回転することに起因する硬貨の搬送の不具合の発生を防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、集積空間から搬送部へ硬貨を正常に受け渡せなかったり、集積部よりも下流側の一時保留部において硬貨が溢れてしまったりといった、連続的に回転体が回転することに起因する硬貨の搬送の不具合の発生を防止でき、硬貨を安定的に搬送し得る硬貨処理装置及び自動取引装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】現金自動預払機の外観構成を示す斜視図である。
図2】硬貨処理装置の内部構成を示す右側面図である。
図3】上分離部の外部構成を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図である。
図4】上分離部の内部構成(1)を示し、図3(A)におけるA-A矢視断面図である。
図5】上分離部の内部構成(2)を示し、図4におけるB-B矢視断面図である。
図6】分離ゲートの構成を示す斜視図である。
図7】硬貨が分離ゲートを通過する様子(1)を示す右側面図である。
図8】硬貨が分離ゲートを通過する様子(2)を示し、図7(C)におけるC-C矢視断面図である。
図9】ロック状態を示し、図8と対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0014】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.現金自動預払機の構成]
図1に外観を示すように、自動取引装置としての現金自動預払機1は、箱状の筐体2を中心に構成されており、例えば金融機関や各種商業施設等に設置され、使用者(すなわち金融機関や商業施設の顧客、行員や保守員等)との間で、入金処理や出金処理等の現金に関する取引を行う。
【0015】
筐体2は、その前側に使用者が対峙した状態で紙幣の投入やタッチパネルによる操作等をしやすい箇所に応対部3が設けられている。応対部3は、通帳入出口4、カード入出口5、硬貨入出金口6、紙幣入出金口7及び操作表示部8等が設けられており、使用者との間で例えば現金やカード等を直接やり取りすると共に、取引に関する情報の通知や操作指示の受付を行う。
【0016】
通帳入出口4は、通帳が挿入又は排出される部分である。通帳入出口4の奥側には、通帳の裏表紙等に設けられた磁気記録部から磁気情報を読み取り、また該通帳に取引の内容を記録する通帳処理部(図示せず)が設けられている。カード入出口5は、キャッシュカード等の各種カードが挿入又は排出される部分である。カード入出口5の奥側には、各種カードに磁気記録された口座番号等の読み取りを行うカード処理部(図示せず)が設けられている。
【0017】
硬貨入出金口6は、使用者によって入金される硬貨が投入されると共に、使用者へ出金する硬貨が排出される部分である。紙幣入出金口7は、使用者によって入金される紙幣が投入されると共に、使用者へ出金する紙幣が排出される部分である。この硬貨入出金口6及び紙幣入出金口7は、それぞれシャッタを駆動することにより開放又は閉塞する。操作部としての操作表示部8は、取引に際して操作画面や取引内容等を表示する液晶表示パネルと、使用者の入力操作を検知するタッチセンサとが一体化されたタッチパネルである。
【0018】
以下では、現金自動預払機1のうち使用者が対峙する側を前側とし、その反対を後側とし、該前側に対峙した使用者から見て左及び右をそれぞれ左側及び右側とし、さらに上側及び下側を定義して説明する。
【0019】
筐体2の内部には、現金自動預払機1全体を統括制御する主制御部9、取引対象である硬貨に関する種々の処理を行う硬貨処理装置10、及び紙幣に関する種々の処理を行う紙幣処理装置(図示せず)等が設けられている。主制御部9は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、図示しないROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金処理や出金処理等の種々の処理を行う。また主制御部9は、内部にRAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0020】
硬貨処理装置10は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、図示しないスライドレールを介して筐体2に取り付けられている。また筐体2の前面側又は後面側には、開閉可能な扉(図示せず)が設けられている。このため現金自動預払機1は、保守作業等が行われる場合、筐体2の前面側又は後面側の扉を開放した上で、硬貨処理装置10を前方又は後方へスライドさせることにより、該硬貨処理装置10を該筐体2の外部に位置させ、また該筐体2の内部に収納させる。
【0021】
[1-2.硬貨処理装置の構成]
図2に示すように硬貨処理装置10は、硬貨処理装置筐体11の内部に、硬貨に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれている。この硬貨は、例えば銅及びニッケルの合金やアルミニウム等、十分な強度を有する非磁性体の材料でなり、薄い板状に形成されている。因みに硬貨処理装置10では、直径や厚さが異なる複数種類の硬貨を取り扱うことが想定されている。以下では、硬貨処理装置10において取り扱われる中で最も直径が大きい硬貨を最大径硬貨と呼び、最も直径が小さい硬貨を最小径硬貨と呼ぶ。また以下では、硬貨処理装置10において取り扱われる中で最も厚さが厚い硬貨を最厚硬貨と呼び、最も厚さが薄い硬貨を最薄硬貨と呼ぶ。日本国内に設置される硬貨処理装置10においては、最大径硬貨及び最厚硬貨は500円硬貨であり、最小径硬貨は1円硬貨であり、最薄硬貨は1円硬貨、5円硬貨及び10円硬貨である。因みに1円硬貨、5円硬貨及び10円硬貨の厚さは約1.5[mm]となっている。
【0022】
硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的上側ないし中央付近に、入出金部13、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18、6個のスタッカ部21、出金搬送部22及び一時保留部23が設けられている。また硬貨処理装置筐体11の内部には、比較的下側に、硬貨制御部12、補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25、第2補充リジェクト庫26、リジェクト庫27、取忘取込庫28及び下分離部29が設けられている。
【0023】
硬貨制御部12は、主制御部9と同様、図示しないCPUを中心に構成されており、図示しないROMやフラッシュメモリ等から所定のプログラムを読み出して実行することにより、入金取引や出金取引等に関する種々の処理を行い、硬貨処理装置10を統括制御する。また硬貨制御部12は、内部にRAM及びフラッシュメモリ等でなる記憶部を有しており、この記憶部に種々の情報を記憶させる。
【0024】
入出金部13は、使用者との間で硬貨を受け渡すことにより、該使用者に硬貨を入金させ、又は該使用者に硬貨を出金する。該入出金部13は、上側に開口部を有し硬貨を収容する収容器13A、該開口部を開閉するシャッタ13B等、及び収容器13A内における硬貨の有無等を検知するセンサ(図示せず)を有している。
【0025】
入出金部13は、シャッタ13Bを開放した状態で使用者により硬貨が収容器13Aに投入されると、該シャッタ13Bを閉塞し、硬貨を収容器13A内からシュート部14に引き渡して該シュート部14内を下降させ、上分離部15内に到達させる。また入出金部13は、シャッタ13Bを閉塞した状態で、後述するピンベルト搬送部18から硬貨が搬送されてくると、該硬貨を収容器13A内に収容した後、シャッタ13Bを開放して使用者に受け取らせる。
【0026】
上分離部15は、下側の比較的大きい容積を占める部分である集積分離部15Aと、該集積分離部15Aから上方に突出するように形成された分離搬送部15Bとにより構成されている。この上分離部15は、集積分離部15Aに硬貨を集積すると共に、この硬貨を1枚ずつに分離して分離搬送部15Bにより上方向へ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
【0027】
認識搬送部16は、シュート部14の右側に位置しており、硬貨を搬送しながら撮像し、得られた画像信号を基に該硬貨の金種や真偽、或いは損傷の程度等を基に該硬貨が取扱可能であるか否かを判定する。そのうえで認識搬送部16は、得られた判定結果を該硬貨の認識結果として硬貨制御部12に通知すると共に、該硬貨を受渡部17に引き渡す。受渡部17は、認識搬送部16から受け取った硬貨をピンベルト搬送部18に引き渡す。
【0028】
ピンベルト搬送部18は、スタッカ部21の前側下部、下側、後側及び上側をそれぞれ前ピンベルト搬送部18F、下ピンベルト搬送部18L、後ピンベルト搬送部18R及び上ピンベルト搬送部18Uにより取り囲み、硬貨を搬送する経路である搬送経路を形成している。ピンベルト搬送部18は、硬貨の盤面と当接し搬送経路に沿って進行するよう案内する搬送ガイドと、概ね該搬送経路に沿って走行するピンベルトとにより構成されている。このピンベルトには、硬貨の末尾側と当接し、搬送方向へ押動するためのピンが設けられている。ピンベルト搬送部18は、ピンベルトを走行させることにより、受渡部17から受け取った硬貨を搬送経路に沿って搬送し、入出金部13の収容器13A内へ放出する。
【0029】
またピンベルト搬送部18には、スタッカ部21の前側下部及び下側に配置された部分における複数箇所に、硬貨の搬送経路を分岐させる分岐部19がそれぞれ設けられている。各分岐部19の左側には、硬貨を案内する案内部30がそれぞれ設けられている。
【0030】
各分岐部19は、それぞれ回動可能な案内板及びアクチュエータ等(何れも図示せず)を有しており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各案内部30へ分岐させるかを切り替える。各案内部30は、それぞれ補充回収庫24、第1補充リジェクト庫25若しくは第2補充リジェクト庫26、一時保留部23又はリジェクト庫27若しくは取忘取込庫28等へ硬貨を進行させる。以下では、一時保留部23へ硬貨を進行させる案内部30と接続された分岐部19を、特に一時保留部分岐部34とも呼ぶ。
【0031】
さらにピンベルト搬送部18には、6個のスタッカ部21のそれぞれ上側となる6箇所に、スタッカ分岐部20が設けられている。各スタッカ分岐部20の左側には、硬貨をスタッカ部21へ案内する案内部31が設けられている。各スタッカ分岐部20は、各分岐部19と同様に構成されており、硬貨制御部12の制御に基づいて案内板を回動させることにより、硬貨を引き続きピンベルト搬送部18に沿って進行させるか、或いは各スタッカ部21へ分岐させるかを切り替える。
【0032】
スタッカ部21は、それぞれ所定の金種の硬貨と対応付けられており、上側に設けられた案内部31と、該案内部31の下側において硬貨を上下方向に沿って積み重ねるように集積する集積部32と、該集積部32の下側から硬貨を繰り出す繰出部33とを有している。このスタッカ部21は、ピンベルト搬送部18により搬送された硬貨をスタッカ分岐部20から受け取ると、該硬貨を案内部31により集積部32へ案内して集積させる。またスタッカ部21は、硬貨制御部12の制御に基づき、集積部32に集積している硬貨を繰出部33により1枚ずつ繰り出し、下方の出金搬送部22又は一時保留部23へ落下させる。
【0033】
出金搬送部22は、ピンベルト搬送部18の右側に位置しており、上側及び前側が開放された中空の直方体のように構成され、内部に硬貨を収容し得る空間を形成している。また出金搬送部22は、底部にベルトやプーリ等でなるベルト搬送機構が組み込まれており、スタッカ部21から繰り出された硬貨をベルト上に載置又は集積する。この出金搬送部22は、ベルトの上に硬貨が載置又は集積された状態で、該ベルトの上側部分を前方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の一時保留部23へ落下させる。
【0034】
一時保留部23は、出金搬送部22の後端を下げると共に前端を持ち上げ、さらに左右の側板を三角形状としたような構成となっており、その内部に硬貨を収容する一時保留部硬貨集積空間23Sを形成すると共に、底部にベルト搬送機構が組み込まれている。このため一時保留部23は、スタッカ部21から繰り出された硬貨や出金搬送部22から搬送されてきた硬貨を、一時保留部ベルト23B上に載置又は集積させる。また一時保留部23は、一時保留部ベルト23B上に硬貨が載置又は集積された状態で、該一時保留部ベルト23Bの上側部分を前斜め上方へ向けて走行させることにより、該硬貨を前側の上分離部15へ繰り出し、その内部へ落下させる。以下では、一時保留部ベルト23Bが上側部分を前斜め上方へ向けて走行させるように図2中反時計回りに回転することを正回転するとも呼ぶ。一時保留部23は、一時保留部ベルト23Bの上側部分を後ろ斜め下方へ向けて走行させることも可能となっている。以下では、一時保留部ベルト23Bが上側部分を後ろ下方へ向けて走行させるように図2中時計回りに回転することを逆回転するとも呼ぶ。
【0035】
補充回収庫24は、内部に硬貨を集積する集積部や、該集積部に集積されている硬貨を搬送する搬送機構等を有している。この補充回収庫24は、案内部30により案内されてきた硬貨を集積し、また内部に集積している硬貨を前方へ繰り出して下分離部29に引き渡す。第1補充リジェクト庫25及び第2補充リジェクト庫26は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨を集積する。リジェクト庫27及び取忘取込庫28は、それぞれ内部に硬貨を集積する空間を有しており、案内部30により案内されてきた硬貨をそれぞれ集積する。
【0036】
下分離部29は、補充回収庫24の後側に隣接する位置に配置されている。この下分離部29は、上分離部15と類似した構成となっているものの、硬貨処理装置筐体11に対する取付方向が、該上分離部15とは相違している。この下分離部29は、集積分離部15A及び分離搬送部15Bとそれぞれ対応する集積分離部29A及び分離搬送部29Bにより構成されている。下分離部29は、補充回収庫24から硬貨を受け取って内部に集積し、また集積されている硬貨を1枚ずつに分離して1枚ずつ上方へ搬送し、一時保留部23内へ放出する。
【0037】
[1-3.各種処理における硬貨の搬送]
次に、硬貨処理装置10において硬貨の搬送を伴う種々の処理、すなわち入金処理及び出金処理等における硬貨の搬送や集積等について説明する。ここでは、現金自動預払機1と使用者との間で入金取引及び出金取引を行う場合における硬貨処理装置10での各処理についてそれぞれ説明する。
【0038】
現金自動預払機1(図1)において使用者との間で入金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理により、使用者に入金された硬貨の金種等を認識しながら枚数を計数し、これに続く後段の入金収納処理により、各硬貨を適切な収納箇所へ搬送して収納する。具体的に硬貨処理装置10は、前段の入金計数処理において、使用者に入出金部13に硬貨を投入させると、シュート部14、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次介して一時保留部23に収容する。
【0039】
このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に入金額を集計して操作表示部8(図1)に表示し、使用者に入金取引を継続するか、又は中止するかを選択させる。硬貨処理装置10は、使用者により継続が選択されると、後段の入金収納処理を行う一方、中止が選択されると、入金取引を中止し、後述する出金処理の場合と同様に硬貨を入出金部13へ搬送して返却する。
【0040】
硬貨処理装置10は、後段の入金収納処理において、硬貨を一時保留部23から上分離部15、認識搬送部16、受渡部17、ピンベルト搬送部18及びスタッカ分岐部20を順次介してスタッカ部21へ搬送して集積する。このとき硬貨処理装置10は、認識搬送部16による各硬貨の認識結果を基に、該硬貨の金種に応じたスタッカ部21へ搬送する。
【0041】
また、現金自動預払機1(図1)において使用者との間で出金取引が行われる場合、硬貨処理装置10は、出金処理により、使用者に指示された金額の硬貨を入出金部13へ搬送して出金する。具体的に硬貨処理装置10は、操作表示部8(図1)を介して使用者から出金取引を開始する旨や出金額の操作入力を受け付けると、出金処理を開始し、出金額に応じた硬貨の金種及び枚数を各スタッカ部21から繰り出し、出金搬送部22を介して一時保留部23内に集積する。続いて硬貨処理装置10は、一時保留部23、上分離部15、認識搬送部16、受渡部17及びピンベルト搬送部18を順次経由して硬貨を入出金部13へ搬送して収容し、使用者に受け取らせる。
【0042】
因みに硬貨処理装置10は、入金処理及び出金処理の他、補充回収庫24からスタッカ部21へ硬貨を補充する補充処理や、該スタッカ部21から補充回収庫24へ硬貨を回収する回収処理等も行い得るようになっている。
【0043】
[1-4.上分離部の構成]
次に、上分離部15の構成について説明する。図3及び図4に示すように、上分離部15は、全体の中央乃至左側に位置する分離部フレーム40を中心として、下側の集積分離部15A及び上側の分離搬送部15Bが一体に構成されている。分離部フレーム40は、金属製の板状部材が適宜切削されると共に屈曲された構成となっており、その内部に複数のギアや軸、或いはモータ等の部品が組み込まれている。
【0044】
[1-4-1.集積タンク及び傾斜円盤の構成]
この分離部フレーム40のうち集積分離部15Aに相当する部分には、集積タンク41及び傾斜円盤45等の種々の部品が取り付けられている。傾斜円盤45は、全体として円盤状に形成されており、右側の表面である円盤面45Sが右上側を向くように傾斜し、且つ傾斜円盤中心軸45Xを回転中心として回転可能に支持されている。因みに図4では、説明の都合上、一部の部品を簡略化し、又は省略している。
【0045】
集積タンク41は、傾斜円盤45の右側に位置しており、例えば所定の樹脂材料が成型された成型部品として構成されている。この集積タンク41は、全体として椀の中心軸を傾斜円盤中心軸45Xに一致させるように傾斜させたような立体形状となっており、外周部分において円盤面45Sの直近に位置し、傾斜円盤中心軸45Xに近づくに連れて該円盤面45Sから遠ざかるような曲面を形成している。
【0046】
また集積タンク41は、傾斜円盤45の右側において、該円盤面45Sとの間に空間(以下これを硬貨集積空間50と呼ぶ)を形成しながら、該円盤面45Sを概ね全体的に覆っている。集積タンク41における後上側には、比較的大きく開口された受入開口部41Aが形成されており、シュート部14及び一時保留部23(図2)と接続される。上分離部15は、シュート部14又は一時保留部23から受入開口部41Aを介して硬貨が引き渡されると、この硬貨を硬貨集積空間50内に集積させる。
【0047】
傾斜円盤45は、硬貨と比較して十分に大きい直径でなる円盤状に形成されており、右側の表面である円盤面45Sが概ね平坦に形成されている。因みに傾斜円盤45は、例えば硬度が比較的高い金属板が切削加工されることにより製造されている。この傾斜円盤45は、傾斜円盤中心軸45Xが水平方向に対して上方へ、具体的には右斜め上方を向くようにして、傾斜している。このため円盤面45Sは、上側部分を鉛直方向に対して左方向へやや倒したように傾いている。以下では、傾斜円盤中心軸45Xに沿う方向を中心軸方向とも呼ぶ。
【0048】
さらに傾斜円盤45は、傾斜円盤中心軸45Xを回転中心として回転可能に支持されており、モータやギア等の組み合わせでなる円盤駆動部46から駆動力が供給される。この傾斜円盤45は、硬貨制御部12の制御に基づき円盤駆動部46から駆動力が供給されると、傾斜円盤中心軸45Xを回転中心として矢印R1方向(図4の時計回り、以下これを正回転方向とも呼ぶ)又はその反対の矢印R2方向(以下これを逆回転方向とも呼ぶ)に回転する。以下では、傾斜円盤45が正回転方向に回転することを正回転するとも呼び、傾斜円盤45が逆回転方向に回転することを逆回転するとも呼ぶ。
【0049】
傾斜円盤45の円盤面45Sには、法線方向である右斜め上方向に突出する複数の分離突起47が設けられている。分離突起47は、傾斜円盤45の外周をほぼ均等に複数に分割し、円盤面45Sにおける外周からやや内側に離れた箇所に取り付けられている。
【0050】
この分離突起47は、全体として直方体に類似した形状に構成されており、詳細には、外周側よりも内周側の方が細い楔形に類似した形状となっている。すなわち分離突起47は、円盤面45Sにおける傾斜円盤中心軸45Xと外周45Tとを結ぶ放射方向に関して比較的長く、周方向に関して比較的短く、左右方向に十分に短く(すなわち薄く)なっている。また分離突起47における左右方向の長さ(すなわち厚さ)は、1枚の硬貨の厚さと同等以下となっている。
【0051】
さらに傾斜円盤45は、外周のうち各分離突起47の近傍となるそれぞれの箇所に、外周から中心方向へ向かってえぐられるように切り欠かれた切欠部48が形成されている。切欠部48は、右方向から見て、傾斜円盤45の外周45Tを一辺とする三角形に類似した形状となっており、該傾斜円盤45の傾斜円盤中心軸45Xに近い頂点の近傍において、分離突起47とほぼ隣接している。
【0052】
これに加えて傾斜円盤45には、円盤面45Sにおける各切欠部48の周縁、すなわち外周の近傍に残留攪拌突起49が取り付けられている。残留攪拌突起49は、全体として円柱形状であり、その中心軸を傾斜円盤45の円盤面45Sから右斜め上方に向け、円盤面45Sの法線方向に沿わせている。また残留攪拌突起49は、円盤面45Sからの高さが分離突起47と同等となっている。
【0053】
[1-4-2.搬送部の構成]
ところで上分離部15では、下側の集積分離部15Aにおいて、傾斜円盤45の概ね下半分の範囲において、集積タンク41の一部分が外周45Tの外側に極めて近接した位置に位置している。これに加えて上分離部15には、傾斜円盤45における前側部分の上側に、分離搬送部15Bの一部である搬送部51が配置されている。この搬送部51は、傾斜円盤45の前端近傍から上方向へ向かい、やがて後方へ向かうように湾曲する搬送路Wを形成している。
【0054】
具体的に搬送部51は、図5及び図6に示すように、搬送路Wの一部に沿うようにして、前搬送ガイド52、左搬送ガイド53及び54、後搬送ガイド55、右搬送ガイド56及び規制部材57により、硬貨を搬送するための空間(以下これを搬送空間SCとも呼ぶ)を形成している。
【0055】
前搬送ガイド52は、後側面(すなわち搬送路W側の面)が平面状に形成されており、その下端において、集積タンク41の内側面と連続するように配置されている。説明の都合上、以下では前搬送ガイド52の後側面を前搬送面FSとも呼ぶ。この前搬送面FSは、搬送部51において搬送空間SC内で搬送路Wに沿って硬貨を搬送すべき方向である搬送方向と平行な平面となっている。因みに前搬送ガイド52の上端は、傾斜円盤45の上端よりも高い位置に到達している。
【0056】
前搬送ガイド52の後側における左寄りには、左搬送ガイド53及び54が設けられている。左搬送ガイド53の右側面(すなわち搬送空間SC側の面)は、傾斜円盤45の円盤面45Sを上方向へ延長した仮想的な平面に対し、上側へ進むに連れて左側へ進む方向に僅かに傾斜した平面状に形成されており、その下端が傾斜円盤45の円盤面45Sよりも僅かに左側に位置している。すなわち左搬送ガイド53の右側面は、傾斜円盤45の円盤面45Sと僅かな段差を形成しながら連なり、且つ傾きが僅かに異なる平面となっている。
【0057】
また左搬送ガイド53は、前側部分を前搬送ガイド52に当接させており、下後側部分が傾斜円盤45の外周45Tに沿った緩やかな円弧状に形成されている。さらに左搬送ガイド53の後側部分は、法線を概ね後方向に向けた平面状に形成されており、右方向から見た場合に概ね上下方向に沿った直線状となっている。
【0058】
左搬送ガイド54は、左搬送ガイド53の後側に、該左搬送ガイド53からやや離れた位置に設けられている。左搬送ガイド54の右側面(すなわち搬送空間SC側の面)は、左搬送ガイド53の右側面とほぼ平行な平面状に形成されている。以下では、左搬送ガイド53の右側面と、左搬送ガイド54の右側面のうち前側部分とにより形成される平面を、左搬送面LSとも呼ぶ。
【0059】
左搬送ガイド54の下後側部分は、傾斜円盤45の外周45Tに沿った緩やかな円弧状の曲面として形成されている。また左搬送ガイド54の前側部分は、左搬送ガイド53の後側部分からやや後ろへ離れており、法線を概ね前方向に向けた平面状に形成され、右方向から見た場合に概ね上下方向に沿った直線状となっている。これにより上分離部15には、左搬送ガイド53と左搬送ガイド54との間に、概ね搬送路Wに沿った溝形状(以下これを溝部59と呼ぶ)が形成されている。
【0060】
後搬送ガイド55は、左搬送ガイド54の後側に設けられている。後搬送ガイド55は、概ね薄い平板状に形成されている。
【0061】
因みに搬送部51では、前搬送ガイド52及び左搬送ガイド53が1個の部品として構成され、また左搬送ガイド54及び後搬送ガイド55が1個の部品として構成されており、それぞれ分離部フレーム40(図3)に取り付けられている。
【0062】
右搬送ガイド56は、左搬送ガイド53及び54の右側における上側の約1/2乃至1/3の範囲に位置している。この右搬送ガイド56は、金属板が切削及び屈曲された部品や樹脂材料が成型された部品等の組み合わせにより構成されている。なお図5及び図6では、右搬送ガイド56の一部を省略している。
【0063】
右搬送ガイド56の左側面(すなわち搬送空間SC側の面、以下これを右搬送面RSと呼ぶ)は、左搬送ガイド53及び54の右側面、すなわち左搬送面LSとほぼ平行な平面状に形成されている。また右搬送ガイド56は、右搬送面RSと左搬送面LSとの間に、硬貨の厚さに換算して1枚分以上2枚分未満となるような間隔を隔てている。
【0064】
規制部材57は、右搬送ガイド56の下側であって、且つ左搬送ガイド53の右側に位置している。換言すれば、規制部材57は、傾斜円盤45の円盤面45Sと中心軸方向に対向する範囲の外側であり、且つ該傾斜円盤45の回転により分離突起47が通過する軌跡と中心軸方向に対向する範囲の外側に位置している。また規制部材57は、傾斜円盤45の円盤面45Sにおける中心よりも上側であり、硬貨集積空間50内に集積可能な最大枚数(例えば100枚)の硬貨が集積される範囲よりも上側に位置している。
【0065】
この規制部材57は、全体として左右方向に薄い板状に形成されており、右側から見て、上下方向に長い長方形から後側下端近傍が大きく切り落とされると共に前側上端が切り落とされたような形状となっている。また規制部材57は、例えばステンレスにより構成されている。
【0066】
さらに規制部材57は、左側面である規制部材搬送面57S(すなわち搬送空間SC側の面)を傾斜円盤45の円盤面45Sとほぼ平行な平面状としており、右搬送ガイド56の左側面の真下よりも僅かに左側に位置させている。また規制部材57は、規制部材搬送面57Sと左搬送面LSとの間に、硬貨1枚分以上2枚分未満となるような間隔を隔てている。さらに規制部材57は、前側面が前搬送ガイド52の後側面(すなわち前搬送面FS)と当接又は極めて近接しており、後側面が左搬送ガイド53の後側面のほぼ右側に位置している。また規制部材57は、上側面が右搬送ガイド56の下面と当接又は近接している。
【0067】
これに加えて規制部材57は、後下側の側面である規制面57Rが、前搬送ガイド52の後側面である前搬送面FSに対して所定の規制面傾斜角度だけ傾斜している。この規制面傾斜角度は、例えば約20度に設定されている。また規制面57Rは、傾斜円盤45の円盤面45Sの法線と平行な平面となっている。さらに規制面57Rは、左搬送ガイド53の下後側部分(すなわち傾斜円盤45の外周45Tに沿った部分)よりも上側に位置している。換言すれば、規制部材57は、円盤面45Sの中心よりも上側であり、集積可能な最大枚数の硬貨が硬貨集積空間50内に集積された状態において該硬貨に埋もれないような位置に、配置されている。
【0068】
また規制部材57は、右側面の前端近傍において取付部材58と連接されている。取付部材58は、薄板状の部材が屈曲されたような構成となっており、中継部58A及び取付部58Bを有している。中継部58Aは、前後方向に短い直方体又は長方形の薄板状に形成されており、その左端が規制部材57と接続されている。取付部58Bは、上下方向に短い直方体又は長方形の薄板状に形成されており、後端が中継部58Aの上端と接続されている。この取付部58Bには、上下方向に貫通する取付孔(図示せず)が形成されており、所定の取付ねじにより右搬送ガイド56の所定部分に固定されている。すなわち規制部材57は、一体に構成された取付部材58を介して、右搬送ガイド56の下側に取り付けられている。
【0069】
因みに取付部58Bの取付孔は、傾斜円盤45の円盤面45Sの法線に沿った方向、すなわち概ね左右方向に長い長孔となっている。このため搬送部51では、左右方向に関し、右搬送ガイド56に対する取付部材58の取付位置を変化させることにより、規制部材57の規制部材搬送面57Sと左搬送ガイド53の右側面(すなわち左搬送面LS)との間隔、すなわち搬送空間SCにおける左右方向の長さを、容易に調整することができる。
【0070】
このような規制部材57の規制部材搬送面57Sと左搬送ガイド53の左搬送面LSとにより、集積分離部15Aから分離搬送部15Bへ搬送される硬貨を1枚ずつに分離する分離ゲート60が構成されている。
【0071】
[1-4-3.ピンベルトの構成]
一方、分離部フレーム40の内部における傾斜円盤45の左側には、ベルトプーリ61が配置されている(図4)。ベルトプーリ61は、全体として扁平な円盤状に形成されており、その直径が傾斜円盤45の直径よりも僅かに小さくなっている。このベルトプーリ61は、傾斜円盤45と一体に回転する。
【0072】
また上分離部15には、ベルトプーリ61の上側に前プーリ62、上プーリ63及び後プーリ64が設けられている。前プーリ62は、ベルトプーリ61の前上側に位置している。上プーリ63は、前プーリ62の後上側に位置している。後プーリ64は、上プーリ63の後下側であり、ベルトプーリ61の上側に位置している。前プーリ62、上プーリ63及び後プーリ64は、それぞれ分離部フレーム40により回転可能に支持されており、またそれぞれの右側の表面が、ベルトプーリ61における右側の表面と同一の平面上又はその近傍に位置している。
【0073】
さらに上分離部15には、ベルト65が設けられている。ベルト65は、樹脂やゴム等の可撓性を有する材料で構成された無端ベルトであり、ベルトプーリ61及び上プーリ63の周囲を周回すると共に、前プーリ62及び後プーリ64の周側面にも当接するように張架されている。このベルト65は、ベルトプーリ61の回転に伴い、矢印R1方向(以下これを正回転方向とも呼ぶ)又は矢印R2方向(以下これを逆回転方向とも呼ぶ)に回転するように走行する。以下では、ベルト65が正回転方向に回転するように走行することを正回転するとも呼び、ベルト65が逆回転方向に回転するように走行ことを逆回転するとも呼ぶ。
【0074】
またベルト65には、所定間隔ごとにピン66が取り付けられている。ピン66は、中心軸を傾斜円盤中心軸45Xとほぼ平行に向けた円柱状に形成されており、その右端(すなわち先端)が傾斜円盤45の円盤面45Sよりも右側に突出し、分離突起47の右面とほぼ同等の位置に到達している。以下では、ベルト65及び複数のピン66をまとめてピンベルトとも呼ぶ。
【0075】
上分離部15では、ベルト65におけるピン66の取付間隔や取付位置が、傾斜円盤45における切欠部48の位置に合わせて設定されている。このためピン66は、ベルト65がベルトプーリ61の外周面に当接している場合、該ピン66の突出部が傾斜円盤45の切欠部48に入り込み、該切欠部48内で傾斜円盤中心軸45Xに近い箇所、すなわち分離突起47に近接した箇所に位置する。
【0076】
ピン66は、傾斜円盤45が傾斜円盤中心軸45Xを中心に回転すると、切欠部48に入り込んだ状態を維持したまま、該傾斜円盤45及びベルトプーリ61と一体に回転する。すなわちピン66は、傾斜円盤45の外周45Tと同期して円弧状に走行する。また上分離部15では、ベルト65が前プーリ62の後端近傍から上プーリ63の前端近傍にかけて張架された部分において、溝部59に沿ってベルト65を進行させる。このときピン66は、右端近傍を左搬送面LS(すなわち左搬送ガイド53及び54の右側面)よりも右側へ、すなわち搬送空間SC内へ突出させている。
【0077】
[1-5.上分離部による硬貨の分離及び搬送]
次に、上分離部15に複数の硬貨が集積されている状態で、1枚の硬貨を他の硬貨から分離して搬送する様子について説明する。上分離部15は、まず円盤駆動部46(図3)のモータから供給される駆動力によって傾斜円盤45を矢印R1方向(すなわち正回転方向)に回転させる。これにより上分離部15は、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47により適宜攪拌しながら、該分離突起47に硬貨を1枚ずつ引っ掛ける。このとき硬貨は、左側の盤面を傾斜円盤45の円盤面45Sに当接させると共に、周側面のうち末尾側(進行方向と反対側の部分、例えば硬貨が前方向へ進行している場合の後側)の一部を後側の分離突起47に当接させ、下側の一部を集積タンク41の内側面に当接させる。
【0078】
さらに上分離部15は、傾斜円盤45を引き続き回転させることにより、硬貨における左側の盤面を該傾斜円盤45の円盤面45Sに当接させ、且つ該硬貨の周側面を分離突起47及び集積タンク41に当接させた状態を維持しながら、該集積タンク41の内側面に沿って摺動させ、前上方へ持ち上げていく。
【0079】
やがて上分離部15は、図7(A)に示すように、硬貨CNが傾斜円盤45の前端付近に到達すると、該硬貨CNの前端部分を前搬送ガイド52の後側面、すなわち前搬送面FSに当接させ、分離突起47が該硬貨CNの後下側から前上方向へ力を加えるように、換言すれば駆動力を供給するようになる。これにより上分離部15は、傾斜円盤45の回転に伴って硬貨CNの前端を前搬送面FSに摺動させながら、該硬貨CNを上方向へ移動させることができる。
【0080】
上分離部15は、引き続き傾斜円盤45を回転させると、図7(B)に示すように、該硬貨CNの左側面を傾斜円盤45の円盤面45Sに当接させた状態から、左搬送ガイド53及び54の右側面、すなわち左搬送面LSに当接させた状態となる。このとき上分離部15では、硬貨CNの中心が円盤面45Sと左搬送面LSとの境界部分を通過した段階で、該硬貨CNを上流側の集積分離部15Aから下流側の分離搬送部15Bに引き渡すことになる。
【0081】
さらに上分離部15は、図7(C)及び図8に示すように、硬貨CNの前端近傍を前搬送面FSに摺動させ、左側面を左搬送面LSに摺動させ、且つ右側面の一部を規制部材57の規制部材搬送面57Sに対向させた状態、すなわち該硬貨CNを搬送空間SC内に到達させた状態とする。
【0082】
その後、上分離部15は、ベルト65をさらに走行させることにより、分離突起47から引き継いでピン66を硬貨CNの後下側に当接させて該硬貨CNに力を作用させ、さらに該ピン66を該分離突起47から徐々に引き離し、左搬送ガイド53及び54の隙間である溝部59に沿って上方向へ進行させる。これにより上分離部15は、硬貨CNを搬送路Wに沿って上方向へ進行させることができ、その後、該硬貨CNを搬送路Wに沿って後方向へ搬送してから認識搬送部16(図2)に引き渡す。
【0083】
このように上分離部15は、分離ゲート60により硬貨CNを1枚ずつに分離して集積分離部15Aから分離搬送部15Bへ受け渡し該硬貨CNを搬送空間SC内へ進行させ、搬送路Wに沿って搬送する。
【0084】
ここで、上分離部15と認識搬送部16との接続箇所における搬送路W上には、ストッパ(図示せず)が設けられている。ストッパは、移動するピン66に押されることにより、搬送路Wから退避し、硬貨CNを上分離部15から認識搬送部16へ受け渡し可能な状態とする。一方、上分離部15と認識搬送部16との接続箇所における搬送路W上に硬貨CNが位置している状態においてベルト65の走行が停止すると、ストッパはピン66によって押されない状態となる。この状態においては、ストッパは搬送路W上に位置し、硬貨CNを上分離部15から認識搬送部16へ受け渡しさせない状態とする。
【0085】
[1-6.硬貨検知センサの構成]
図3に示すように、上分離部15には、硬貨集積空間50内の硬貨を検出する硬貨検知センサ70が設けられている。硬貨検知センサ70は、光学式のセンサであり、発光部70e及び受光部70rにより構成されている。発光部70eは、傾斜円盤45よりも後側において分離部フレーム40に取り付けられており、硬貨集積空間50に向けて前斜め上方向へ検知光Lxを発光する。受光部70rは、傾斜円盤45よりも前側における発光部70eよりも前斜め上側において分離部フレーム40に取り付けられており、発光部70eから発光され硬貨集積空間50の上側寄りを通過した検知光Lxを受光する。
【0086】
この硬貨検知センサ70は、検知光Lxの受光結果を硬貨制御部12(図2)に通知する。具体的に硬貨検知センサ70は、硬貨集積空間50内の特に上寄りに位置する硬貨が硬貨検知センサ70の検知光Lxを横切ると、検知光Lxが硬貨によって遮られ検知光Lxを受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態(遮光状態))を硬貨制御部12に通知する。一方、硬貨検知センサ70は、硬貨が硬貨検知センサ70の検知光Lxを横切っていない場合、検知光Lxを受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態(透光状態))を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されているか否かを判断する。すなわち硬貨制御部12は、受光結果としてON状態を取得した場合は硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されていると判定する一方、受光結果としてOFF状態を取得した場合は硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されていると判定する。
【0087】
[1-7.分離突起回転位置検知センサの構成]
傾斜円盤45の左側には、傾斜円盤45の回転位置を検出する分離突起回転位置検知センサ(図示せず)が設けられている。分離突起回転位置検知センサは、ベルトプーリ61に設けられたディテクタを通過させる溝を挟んで発光部と受光部とを対向させて配置した光学式のセンサである。
【0088】
この分離突起回転位置検知センサは、発光部が発した検知光の受光部による受光結果を硬貨制御部12(図2)に通知する。具体的に分離突起回転位置検知センサは、ディテクタが分離突起回転位置検知センサの検知光を横切ると、検知光がディテクタによって遮られ検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態(遮光状態))を硬貨制御部12に通知する。一方、分離突起回転位置検知センサは、ディテクタが分離突起回転位置検知センサの検知光を横切っていない場合、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態(透光状態))を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、傾斜円盤45における基準となる回転位置からの回転量(すなわち回転角度)を算出する。また硬貨制御部12は、算出した傾斜円盤45の回転角度に基づいて分離突起47の回転位置を検知することにより、該分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも下側の近傍を通過するタイミングを検出する。
【0089】
[1-8.一時保留部フル検知センサの構成]
図2に示すように、一時保留部23における一時保留部硬貨集積空間23Sの上寄りには、一時保留部硬貨集積空間23S内の硬貨を検出する一時保留部フル検知センサ80が設けられている。この一時保留部フル検知センサ80は、光学式のセンサであり、検知光の受光結果を硬貨制御部12(図2)に通知する。
具体的に一時保留部フル検知センサ80は、一時保留部硬貨集積空間23S内の特に上寄りに位置する硬貨が一時保留部フル検知センサ80の検知光を横切ると、検知光が硬貨によって遮られ検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態(遮光状態))を硬貨制御部12に通知する。一方、一時保留部フル検知センサ80は、硬貨が一時保留部フル検知センサ80の検知光を横切っていない場合、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態(透光状態))を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、一時保留部23に集積された硬貨の枚数が上限に達しフル状態となったか否かを判断する。すなわち硬貨制御部12は、受光結果としてON状態を取得した場合は一時保留部23がフル状態となったと判定する一方、受光結果としてOFF状態を取得した場合は一時保留部23は未だフル状態とはなっていないと判定する。
【0090】
[1-9.認識部受渡検知センサの構成]
図2に示すように、上分離部15と認識搬送部16との接続箇所における搬送路W上には、硬貨を検出する認識部受渡検知センサ82が設けられている。この認識部受渡検知センサ82は、光学式のセンサであり、検知光の受光結果を硬貨制御部12(図2)に通知する。具体的に認識部受渡検知センサ82は、上分離部15から認識搬送部16へ搬送される硬貨が認識部受渡検知センサ82の検知光を横切ると、検知光が硬貨によって遮られ検知光を受光していないことを示す受光結果(すなわちON状態(遮光状態))を硬貨制御部12に通知する。一方、認識部受渡検知センサ82は、硬貨が認識部受渡検知センサ82の検知光を横切っていない場合、検知光を受光していることを示す受光結果(すなわちOFF状態(透光状態))を硬貨制御部12に通知する。硬貨制御部12は、この受光結果を基に、上分離部15と認識搬送部16との接続箇所まで硬貨が搬送されたか否かを判断する。
【0091】
[1-10.入金計数処理時における分離制御及び一時保留部硬貨搬送制御について]
[1-10-1.分離制御について]
上述した入金計数処理を行う際、使用者により入出金部13に投入された全ての硬貨がシュート部14を介し上分離部15の硬貨集積空間50に落下したことを検出すると、硬貨制御部12は、上分離部15の分離動作を開始し、硬貨検知センサ70の受光結果を取得する。受光結果がOFF状態(透光状態)であった場合、硬貨制御部12は、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されていると判定し、後述する連続分離制御を行う。一方、受光結果がON状態(遮光状態)であった場合、硬貨制御部12は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されていると判定し、後述する間欠分離制御を行う。硬貨制御部12は、硬貨集積空間50内に残留した硬貨がなくなり分離動作を終了するまで、硬貨検知センサ70の受光結果に応じて連続分離制御又は間欠分離制御を切り替えつつ繰り返し行う。
【0092】
[1-10-1-1.連続分離制御について]
硬貨制御部12は、連続分離制御において、円盤駆動部46のモータを回転させることにより傾斜円盤45を矢印R1方向に正回転させると共にベルト65を矢印R1方向に回転させ、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47に1枚ずつ引っ掛けて持ち上げ、分離ゲート60を介し分離搬送部15Bへ搬送し、さらに搬送路Wに沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。その後も硬貨制御部12は、円盤駆動部46のモータを一定速度で連続的に回転させる。
【0093】
このように硬貨制御部12は、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されている場合、円盤駆動部46のモータを一定速度で連続的に回転させ続けるという、傾斜円盤45の連続分離制御を行う。
【0094】
[1-10-1-2.間欠分離制御について]
硬貨制御部12は、間欠分離制御において、円盤駆動部46のモータを回転させることにより傾斜円盤45を矢印R1方向に正回転させると共にベルト65を矢印R1方向に回転させ、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47に1枚ずつ引っ掛けて持ち上げ、分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達させる(図7(A))。このとき硬貨制御部12は、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させることにより傾斜円盤45及びベルト65及びの回転を一時停止させる。具体的に硬貨制御部12は、分離突起47に載った最大径硬貨が規制部材57の下端部よりも上側まで入り込む直前のタイミングにおいて円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させる。このとき、硬貨が不安定な状態のまま分離突起47によりかき上げられた場合、該硬貨は、分離ゲート60を通過する前にバランスを崩し分離突起47から落下するか、又は、分離突起47から落下せずに分離突起47上で姿勢が安定する。
【0095】
円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから所定の停止時間経過後、硬貨制御部12は、円盤駆動部46のモータを再び回転させることにより傾斜円盤45及びベルト65を再び正回転させ、硬貨を分離ゲート60よりも上側まで搬送させて分離搬送部15Bへ搬送し、さらに搬送路Wに沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。その後も硬貨制御部12は、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから停止時間経過後に円盤駆動部46のモータを再び回転させることを繰り返す。本実施の形態において停止時間は、例えば、硬貨がその直径分の距離を自由落下する程度の時間に設定されている。
【0096】
このように硬貨制御部12は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている場合、分離突起47にかき上げられた硬貨が分離ゲート60に到達する直前に傾斜円盤45及びベルト65を一旦停止させてから停止時間経過後に正回転を再開させるという、間欠分離制御を行う。
【0097】
ここで、連続分離制御において傾斜円盤45は実際には連続的に回転し続けるものの、この連続分離制御は、停止時間を0秒とした上で傾斜円盤45が一旦停止してから停止時間(0秒)経過後に回転が再開する間欠分離制御であるとみなすこともできる。このため硬貨制御部12は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている場合、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されている場合よりも、停止時間を長くするとも言える。
【0098】
[1-10-2.一時保留部硬貨搬送制御について]
[1-10-2-1.硬貨間隔拡大制御]
また上述した入金計数処理を行う際、一時保留部23に搬送された硬貨がフル状態よりは少ないものの所定枚数である硬貨間隔拡大制御枚数以上となったことを認識搬送部16からの検知結果に基づき検出すると、硬貨制御部12は、認識部受渡検知センサ82からの検知結果を監視し、認識部受渡検知センサ82により硬貨を検知すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させることにより傾斜円盤45及びベルト65の回転を一時停止させる。このため硬貨はピン66から認識搬送部16へ受け渡されずに、上分離部15と認識搬送部16との接続箇所で停止する。
【0099】
このとき硬貨制御部12は、ピンベルト搬送部18を引き続き駆動させることにより、ピンベルト搬送部18上の硬貨(先行硬貨)を一時保留部23へ搬送させる。円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから所定の硬貨間隔拡大停止時間経過後、硬貨制御部12は、円盤駆動部46のモータを再び回転させることにより傾斜円盤45及びベルト65の正回転を再開させ、硬貨を上分離部15から認識搬送部16に引き渡す。本実施の形態において硬貨間隔拡大停止時間は、例えば、ピンベルト搬送部18において先行硬貨を押動するピンの後続のピンを1つ飛ばしたピンに後続硬貨が押動されるタイミングで認識搬送部16からピンベルト搬送部18に該後続硬貨が引き渡される程度の時間に設定されている。
【0100】
その後も硬貨制御部12は、分離動作を終了するまで、一時保留部23に搬送された硬貨が硬貨間隔拡大制御枚数以上となったことを認識搬送部16からの検知結果に基づき検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させ硬貨が上分離部15から認識搬送部16に引き渡されないようにしてから硬貨間隔拡大停止時間経過後に再び回転させるという硬貨間隔拡大制御を行う。これにより硬貨制御部12は、上分離部15と認識搬送部16との接続箇所で停止させた硬貨である後続硬貨と、該後続硬貨よりも先行し認識搬送部16へ搬送された先行硬貨との間隔を広げ、単位時間当たりに一時保留部23に搬送される硬貨の枚数を減少させ、一時保留部23がフル状態となることを抑制する。
【0101】
[1-10-2-2.一時保留部フル時制御]
一方、一時保留部23がフル状態となったことを一時保留部フル検知センサ80からの検知結果に基づき検出すると、硬貨制御部12は、一時保留部分岐部34における案内板を回動させてピンベルト搬送部18と案内部30とを連通している孔部を閉じることによりピンベルト搬送部18から一時保留部23へこれ以上硬貨が搬送されないようにすると共に、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させることにより傾斜円盤45及びベルト65の回転を一時停止させる。このとき硬貨制御部12は、ピンベルト搬送部18を引き続き駆動し、上分離部15から繰り出されピンベルト搬送部18に到達した全ての硬貨を入出金部13へ搬送させて退避させると、ピンベルト搬送部18を停止させる。
【0102】
次に硬貨制御部12は、一時保留部ベルト23Bを正回転及び逆回転に所定回数繰り返し回転させて一時保留部ベルト23Bの上側部分を前後に揺動させることにより、一時保留部ベルト23B上に積み上がった複数の硬貨の形状を崩す(以下ではならし動作とも呼ぶ)。一時保留部23がフル状態でなくなったことを一時保留部フル検知センサ80からの検知結果に基づき検出すると、硬貨制御部12は、一時保留部分岐部34における案内板を回動させてピンベルト搬送部18と案内部30とを連通している孔部を開けることによりピンベルト搬送部18から一時保留部23へ硬貨が搬送されるようにすると共に、ピンベルト搬送部18の駆動を再開させる。また硬貨制御部12は、入出金部13へ退避させた硬貨を上分離部15へ落下させてから、円盤駆動部46のモータを再び回転させることにより傾斜円盤45及びベルト65の正回転を再開させ、硬貨を集積分離部15Aから分離搬送部15Bへ搬送し、さらに搬送路に沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。
【0103】
その後も硬貨制御部12は、分離動作を終了するまで、一時保留部23がフル状態となったことを一時保留部フル検知センサ80からの検知結果に基づき検出すると、一時保留部分岐部34の閉鎖、傾斜円盤45及びベルト65の回転の一時停止、並びに入出金部13への硬貨の退避後のピンベルト搬送部18の停止を行ってから、一時保留部ベルト23Bを揺動させて一時保留部23のフル状態を解消し、一時保留部分岐部34の開放、ピンベルト搬送部18の駆動の再開、入出金部13からの上分離部15への硬貨の搬送、並びに傾斜円盤45及びベルト65の回転の再開を行うという一時保留部フル時制御を行う。
【0104】
[1-11.効果等]
ところで、上分離部15の硬貨集積空間50に硬貨が多く集積されている場合、硬貨集積空間50に集積されている硬貨にぶつかって邪魔をされ不安定な状態のまま分離突起47に硬貨がかき上げられることがある。そのように不安定な状態のまま分離突起47にかき上げられた硬貨CNは、図9に示すように、分離ゲート60を通過できずに分離ゲート60に弾かれて、後続硬貨CNfに追いつかれてしまい、規制部材57と後続硬貨CNfとの間に挟まれてしまう可能性がある。また場合によっては、不安定な状態のまま分離突起47にかき上げられた硬貨CNが規制部材57と分離突起47との間に挟まれてしまう可能性もある。
【0105】
この場合、傾斜円盤45が正回転できなくなりロック状態となってしまうため、硬貨処理装置10は、一旦、傾斜円盤45を逆回転させてから再度正回転させるというリトライ動作を行う必要がある。しかしながらその場合、リトライ動作を行うために時間を要してしまい、入金処理の処理速度が低下してしまう。また、リトライ動作が行われてもロック状態が解除されない場合もあり、その場合、硬貨処理装置10は、動作を休止させる必要があった。
【0106】
これに対し硬貨処理装置10は、間欠分離制御を行い、傾斜円盤45を正回転させて、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47に1枚ずつ引っ掛けて持ち上げ、分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側に到達させると、傾斜円盤45の回転を一時停止するようにした。このため硬貨処理装置10は、不安定な状態のまま分離突起47でかき上げた硬貨を、分離ゲート60に到達する前にバランスを崩させ分離突起47から落下させるか、又は、分離突起47から落下させずに分離突起47上で姿勢を安定させることができる。これにより硬貨処理装置10は、硬貨CNが規制部材57と後続硬貨CNfとの間に挟まったり規制部材57と分離突起47との間に挟まったりして傾斜円盤45がロック状態となってしまうことを防止でき、信頼性を向上させることができる。
【0107】
また硬貨処理装置10は、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されている少量集積状態の場合、傾斜円盤45を停止せずに連続的に回転させ続ける連続分離制御を行う一方、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている大量集積状態の場合、傾斜円盤45を間欠的に停止しつつ回転させる間欠分離制御を行うようにした。
【0108】
このため硬貨処理装置10は、分離突起47でかき上げた硬貨が硬貨集積空間50に集積された他の硬貨にぶつかりやすく不安定になりやすい大量集積状態の場合はロック状態の発生を防ぐと共に、分離突起47でかき上げた硬貨が硬貨集積空間50に集積された他の硬貨にぶつかりにくく不安定になりにくい少量集積状態の場合はロック状態の発生の防止よりも処理速度を保つことを優先して処理速度が低下しないようにできる。これにより硬貨処理装置10は、硬貨集積空間50内に集積されている硬貨の枚数に応じて、処理速度の低下を最低限にしつつロック状態の発生を抑え信頼性を向上させることができる。
【0109】
また硬貨処理装置10は、大量の枚数の硬貨を入金された際に、一時保留部23のフル状態を一時保留部フル検知センサ80により検知した場合、上述した一時保留部フル時制御を行い一時保留部23のならし動作を行うことにより、一時保留部23に収容された硬貨の溢れを防いでいた。しかしながら、フル状態となった場合、ならし動作が行われても、一時保留部ベルト23Bの近傍の硬貨は移動するものの積み上がった上側の硬貨は移動せずに、一時保留部23から硬貨が溢れてしまい、硬貨処理装置10が休止してしまう場合があった。
【0110】
これに対し、一時保留部フル検知センサ80の検出光の光軸の位置を低くすることにより、一時保留部硬貨集積空間23Sに硬貨が収容され始めてから比較的早いタイミングでフル状態と判定し、一時保留部23から硬貨が溢れてしまうことを防止することも考えられる。しかしながらその場合、硬貨処理装置10は、一時保留部硬貨集積空間23Sを利用しきれずに、入金計数処理中において何度もフル状態と判定してしまい、結果として入金計数処理の処理速度が低下してしまう。
【0111】
これに対し硬貨処理装置10は、入金計数処理を行う際、一時保留部23に搬送された硬貨がフル状態よりは少ない硬貨間隔拡大制御枚数以上となったことを認識搬送部16からの検知結果に基づき検出した場合、認識部受渡検知センサ82により硬貨を検知すると、傾斜円盤45及びベルト65の回転を一時停止し一時保留部23に硬貨を搬送しないようにして、先行硬貨との後続硬貨との間隔が一定以上広がるまでの停止時間である硬貨間隔拡大停止時間経過後、傾斜円盤45及びベルト65の正回転を再開させる、硬貨間隔拡大制御を行うようにした。
【0112】
このため硬貨処理装置10は、一時保留部23においてフル状態が発生するに先立ち、予め硬貨間隔拡大制御を行うことにより、一時保留部23に搬送された硬貨が硬貨間隔拡大制御枚数以上となった場合において単位時間当たりに一時保留部23に搬送する硬貨の枚数を削減できる。これにより硬貨処理装置10は、一時保留部23においてフル状態が発生し、ならし動作が間に合わなくなってしまうことを防止し、信頼性を向上させることができる。
【0113】
以上の構成によれば、現金自動預払機1の硬貨処理装置10は、硬貨CNが集積される硬貨集積空間50を形成する集積タンク41と、集積タンク41と共に硬貨集積空間50を形成し、硬貨集積空間50に面した円盤面45Sを有し硬貨CNと当接して該硬貨CNを搬送する突起部としての分離突起47が形成され回転することにより硬貨集積空間50内の硬貨CNを分離する傾斜円盤45と、傾斜円盤45により分離された硬貨CNを、円盤面45Sと連なる搬送面としての左搬送面LSに対向させながら搬送路Wに沿って搬送する搬送部51と、所定のタイミングにおいて傾斜円盤45の回転を一時停止させ所定の停止時間経過後に傾斜円盤45の正回転を再開させる間欠分離制御を行う硬貨制御部12とを設けるようにした。
【0114】
これにより硬貨処理装置10は、硬貨集積空間50から搬送部51へ硬貨CNを正常に受け渡せなかったり、上分離部15よりも下流側の一時保留部23において硬貨CNが溢れてしまったりといった、連続的に傾斜円盤45が回転することに起因する硬貨CNの搬送の不具合の発生を防止できる。
【0115】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.現金自動預払機、硬貨処理装置及び硬貨制御部の構成]
第2の実施の形態による現金自動預払機101(図1)は、第1の実施の形態による現金自動預払機1と比較して、硬貨処理装置10に代わる硬貨処理装置110を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。第2の実施の形態による硬貨処理装置110(図2)は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と比較して、硬貨制御部12に代わる硬貨制御部112を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。第2の実施の形態による硬貨制御部112(図2)は、第1の実施の形態による硬貨制御部12と比較して、入金計数処理時において異なる分離制御を行う点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0116】
[2-2.入金計数処理時における分離制御及び一時保留部硬貨搬送制御について]
[2-2-1.分離制御について]
上述した入金計数処理を行う際、使用者により入出金部13に投入された全ての硬貨がシュート部14を介し上分離部15の硬貨集積空間50に落下したことを検出すると、硬貨制御部112は、上分離部15の分離動作を開始し、硬貨検知センサ70の受光結果を取得する。受光結果がOFF状態(透光状態)であった場合、硬貨制御部112は、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されていると判定し、後述する短時間停止間欠分離制御を行う。一方、受光結果がON状態(遮光状態)であった場合、硬貨制御部112は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されていると判定し、後述する長時間停止間欠分離制御を行う。硬貨制御部112は、硬貨集積空間50内に残留した硬貨がなくなり分離動作を終了するまで、硬貨検知センサ70の受光結果に応じて短時間停止間欠分離制御又は長時間停止間欠分離制御を切り替えつつ繰り返し行う。
【0117】
[2-2-1-1.短時間停止間欠分離制御について]
硬貨制御部112は、短時間停止間欠分離制御において、円盤駆動部46のモータを回転させることにより傾斜円盤45を矢印R1方向に正回転させると共にベルト65を矢印R1方向に回転させ、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47に1枚ずつ引っ掛けて持ち上げ、分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達させる。このとき硬貨制御部112は、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させることにより傾斜円盤45及びベルト65及びの回転を一時停止させる。このとき、硬貨が不安定な状態のまま分離突起47によりかき上げられた場合、該硬貨は、分離ゲート60を通過する前にバランスを崩し分離突起47から落下するか、又は、分離突起47から落下せずに分離突起47上で姿勢が安定する。
【0118】
円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから所定の短時間停止時間経過後、硬貨制御部112は、円盤駆動部46のモータを再び回転させることにより傾斜円盤45及びベルト65を再び回転させ、硬貨を分離ゲート60よりも上側まで搬送させて分離搬送部15Bへ搬送し、さらに搬送路Wに沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。その後も硬貨制御部112は、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから短時間停止時間経過後に円盤駆動部46のモータを再び回転させることを繰り返す。本実施の形態において停止時間は、例えば、硬貨がその直径分の距離を自由落下する程度の時間よりも短い時間に設定されている。
【0119】
このように硬貨制御部112は、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されている場合、分離突起47にかき上げられた硬貨が分離ゲート60に到達する直前に傾斜円盤45及びベルト65を一旦停止させてから短時間停止時間経過後に正回転を再開させるという、短時間停止間欠分離制御を行う。
【0120】
[2-2-1-2.長時間停止間欠分離制御について]
硬貨制御部112は、長時間停止間欠分離制御において、円盤駆動部46のモータを回転させることにより傾斜円盤45を矢印R1方向に正回転させると共にベルト65を矢印R1方向に回転させ、硬貨集積空間50内に集積された硬貨を分離突起47に1枚ずつ引っ掛けて持ち上げ、分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達させる。このとき硬貨制御部112は、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させることにより傾斜円盤45及びベルト65及びの回転を一時停止させる。このとき、硬貨が不安定な状態のまま分離突起47によりかき上げられた場合、該硬貨は、分離ゲート60を通過する前にバランスを崩し分離突起47から落下するか、又は、分離突起47から落下せずに分離突起47上で姿勢が安定する。
【0121】
円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから所定の長時間停止時間経過後、硬貨制御部112は、円盤駆動部46のモータを再び回転させることにより傾斜円盤45及びベルト65を再び回転させ、硬貨を分離ゲート60よりも上側まで搬送させて分離搬送部15Bへ搬送し、さらに搬送路Wに沿って後方向へ搬送して認識搬送部16に引き渡す。その後も硬貨制御部112は、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、円盤駆動部46のモータの回転を一時停止させてから長時間停止時間経過後に円盤駆動部46のモータを再び回転させることを繰り返す。本実施の形態において長時間停止時間は、例えば、硬貨がその直径分の距離を自由落下する程度の時間に設定されている。
【0122】
このように硬貨制御部112は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている場合、分離突起47にかき上げられた硬貨が分離ゲート60に到達する直前に傾斜円盤45及びベルト65を一旦停止させてから短時間停止時間よりも長い長時間停止時間経過後に正回転を再開させるという、長時間停止間欠分離制御を行う。
【0123】
[2-2-2.一時保留部硬貨搬送制御について]
上述した入金計数処理を行う際、硬貨制御部112は、第1の実施の形態による硬貨制御部12と同様の硬貨間隔拡大制御及び一時保留部フル時制御を行う。
【0124】
[2-3.効果等]
このように硬貨処理装置110は、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されている少量集積状態の場合、短時間停止時間だけ傾斜円盤45を間欠的に停止させつつ回転させる短時間停止間欠分離制御を行う。一方、硬貨処理装置110は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている大量集積状態の場合、短時間停止時間よりも長い長時間停止時間だけ傾斜円盤45を間欠的に停止させつつ回転させる長時間停止間欠分離制御を行う。
【0125】
このため硬貨処理装置110は、分離突起47でかき上げた硬貨が硬貨集積空間50に集積された他の硬貨にぶつかりやすく不安定になりやすい大量集積状態の場合は傾斜円盤45を長時間停止させて、分離突起47から硬貨が落下しやすく又は硬貨の姿勢を安定させやすくし、ロック状態の発生を防ぐことができる。それと共に硬貨処理装置110は、分離突起47でかき上げた硬貨が硬貨集積空間50に集積された他の硬貨にぶつかりにくく不安定になりにくい少量集積状態の場合は傾斜円盤45を短時間だけ停止させて、分離突起47から硬貨が落下する可能性及び硬貨の姿勢が安定する可能性は残しつつ、ロック状態の発生の防止よりも処理速度を保つことを優先して処理速度が低下しないようにできる。これにより硬貨処理装置110は、硬貨集積空間50内に集積されている硬貨の枚数に応じて、処理速度の低下を最低限にしつつロック状態の発生を抑え信頼性を向上させることができる。
【0126】
その他の点においても、第2の実施の形態による硬貨処理装置110は、第1の実施の形態による硬貨処理装置10と同様の作用効果を奏し得る。
【0127】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態において硬貨処理装置10は、上分離部15の分離動作を開始してから終了するまでの間、硬貨検知センサ70の受光結果に応じて連続分離制御又は間欠分離制御を切り替えつつ繰り返し行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨処理装置10は、上分離部15の分離動作を開始する際に、硬貨検知センサ70の受光結果に応じて連続分離制御又は間欠分離制御を選択し、それ以降は、選択した連続分離制御又は間欠分離制御を分離動作を終了するまで繰り返し行っても良い。さらに硬貨処理装置10は、硬貨集積空間50内に集積された硬貨の枚数に関わらず、分離動作を開始してから終了するまで常に間欠分離制御を行っても良い。
【0128】
さらに上述した第2の実施の形態において硬貨処理装置110は、上分離部15の分離動作を開始してから終了するまでの間、硬貨検知センサ70の受光結果に応じて短時間停止間欠分離制御又は長時間停止間欠分離制御を切り替えつつ繰り返し行う場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨処理装置110は、上分離部15の分離動作を開始する際に、硬貨検知センサ70の受光結果に応じて短時間停止間欠分離制御又は長時間停止間欠分離制御を選択し、それ以降は、選択した短時間停止間欠分離制御又は長時間停止間欠分離制御を分離動作を終了するまで繰り返し行っても良い。
【0129】
さらに第1の実施の形態において硬貨処理装置10は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている場合は、間欠分離制御において、回転時の傾斜円盤45の回転速度を遅くすることにより、分離突起47でかき上げた硬貨が分離ゲート60に到達するまでにかかる時間を長くして分離突起47から不安定な硬貨が落下する可能性を高める一方、硬貨集積空間50内に一定枚数未満の硬貨が集積されている場合は、間欠分離制御において、回転時の傾斜円盤45の回転速度を硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている場合よりも速い通常の回転速度とすることにより、分離動作の処理速度を保っても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0130】
さらに上述した第1の実施の形態において硬貨処理装置10は、間欠分離制御において、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達すると傾斜円盤45の回転を一時停止させてから停止時間経過後に正回転を再開させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨処理装置10は、間欠分離制御において、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達すると傾斜円盤45の回転速度を連続分離制御の場合よりも遅くさせてから所定時間経過後に連続分離制御の場合の回転速度に戻しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0131】
さらに上述した第1の実施の形態において硬貨処理装置10は、間欠分離制御において、分離突起47が分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達したことを分離突起回転位置検知センサの検知結果により検出すると、傾斜円盤45の回転を一時停止させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨処理装置10は、間欠分離制御において、分離突起47により持ち上げられ分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達した硬貨を種々のセンサにより検出すると、傾斜円盤45の回転を一時停止させても良い。その場合、硬貨処理装置10は、分離ゲート60の下端部よりも僅かに下側まで到達した分離突起47に硬貨が載っていない場合は間欠分離制御を行わず連続分離制御を行うため、分離突起47に硬貨が載っているかいないかに関わらず間欠分離制御を行う場合と比較して、分離動作の処理速度を向上させることができる。第2の実施の形態においても同様である。
【0132】
さらに上述した第1の実施の形態において硬貨処理装置10は、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されているか否かに応じて間欠分離制御又は連続分離制御を切り替える場合について述べた。本発明はこれに限らず、硬貨処理装置10は、例えば、硬貨集積空間50内に一定枚数以上の硬貨が集積されている場合は上述した長時間停止間欠分離制御を行い、硬貨集積空間50内に一定枚数よりは少ない所定枚数以上の硬貨が集積されている場合は上述した短時間停止間欠分離制御を行い、硬貨集積空間50内に所定枚数未満の硬貨が集積されている場合は連続分離制御を行う等、硬貨集積空間50内に集積されている硬貨の枚数に応じて種々の段階で傾斜円盤45の一時停止の時間を切り替えても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0133】
さらに上述した実施の形態においては、本発明を上分離部15に適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば下分離部29に適用しても良い。
【0134】
さらに上述した実施の形態においては、自動取引装置としての現金自動預払機1に組み込まれる硬貨処理装置10に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、例えば自動券売機等のように顧客との間で硬貨に関する取引を行う種々の装置や、金融機関の職員や小売店の店員等が現金を管理するために使用する現金管理装置や、釣り銭を出金する釣り銭機等に本発明を適用しても良い。
【0135】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。
【0136】
さらに上述した第1の実施の形態においては、集積部としての集積タンク41と、回転体としての傾斜円盤45と、搬送部としての搬送部51と、制御部としての硬貨制御部12とによって硬貨処理装置としての硬貨処理装置10を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる集積部と、回転体と、搬送部と、制御部とによって硬貨処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、例えば顧客又は店員との間で硬貨に関する取引処理を行う現金自動預払機等で利用できる。
【符号の説明】
【0138】
1、101……現金自動預払機、2……筐体、3……応対部、4……通帳入出口、5……カード入出口、6……硬貨入出金口、7……紙幣入出金口、8……操作表示部、9……主制御部、10、110……硬貨処理装置、11……硬貨処理装置筐体、12、112……硬貨制御部、13……入出金部、13A……収容器、13B……シャッタ、14……シュート部、15……上分離部、15A……集積分離部、15B……分離搬送部、16……認識搬送部、17……受渡部、18……ピンベルト搬送部、19……分岐部、20……スタッカ分岐部、21……スタッカ部、22……出金搬送部、23……一時保留部、23B……一時保留部ベルト、23S……一時保留部硬貨集積空間、24……補充回収庫、25……第1補充リジェクト庫、26……第2補充リジェクト庫、27……リジェクト庫、28……取忘取込庫、29……下分離部、29A……集積分離部、29B……分離搬送部、30、31……案内部、32……集積部、33……繰出部、34……一時保留部分岐部、40……分離部フレーム、41……集積タンク、41A……受入開口部、45……傾斜円盤、45S……円盤面、45X……傾斜円盤中心軸、45T……外周、46……円盤駆動部、47……分離突起、48……切欠部、49……残留攪拌突起、50……硬貨集積空間、51……搬送部、52……前搬送ガイド、53、54……左搬送ガイド、55……後搬送ガイド、56……右搬送ガイド、57……規制部材、57S……規制部材搬送面、57R……規制面、SC……搬送空間、FS……前搬送面、W……搬送路、LS……左搬送面、RS……右搬送面、58……取付部材、58A……中継部、58B……取付部、59……溝部、60……分離ゲート、61……ベルトプーリ、62……前プーリ、63……上プーリ、64……後プーリ、65……ベルト、66……ピン、70……硬貨検知センサ、70e……発光部、70r……受光部、Lx……検知光、80……一時保留部フル検知センサ、82……認識部受渡検知センサ。
図1
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図9