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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017949
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電力系統保護用伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/7073 20110101AFI20240201BHJP
【FI】
H04B1/7073
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120937
(22)【出願日】2022-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日:令和4年2月2日 集会名:「令和3年度東北電気関係事業考案・研究発表会」審査会 開催場所:WEB開催 主催者:一般社団法人日本電気協会東北支部
(71)【出願人】
【識別番号】000215202
【氏名又は名称】通研電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】織田 健志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 範雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真俊
(57)【要約】
【課題】伝送路の品質が劣化により伝送フレームに複数のビット誤りが発生しても、送受信間でフレーム同期を確立し、制御挙動信号を送出可能な電力系統保護用伝送装置を提供すること。
【解決手段】本発明の1つの実施形態に係る電力系統保護用伝送装置は、制御挙動信号を送信する制御装置と、前記制御挙動信号を受信して電力系統保護設備を制御する電力系統保護装置と、前記制御装置と前記電力系統保護装置との間の通信手段と、を備える電力系統保護用伝送装置であって、前記制御挙動信号が、ON制御信号又はOFF制御信号を含むm個(mは整数)の要素からなり、前記制御装置は、2個(nは整数)のパターンを持つ2ビットの2行2列となるwalsh符号の中から、(m+1)個(mは整数)の任意のwalsh符号により前記制御挙動信号を多重化したフレームを送信し、前記整数nと整数mとの関係が、2≧m+1を満たすことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御挙動信号を送信する制御装置と、
前記制御挙動信号を受信して電力系統保護設備を制御する電力系統保護装置と、
前記制御装置と前記電力系統保護装置との間の通信手段と、
を備える電力系統保護用伝送装置であって、
前記制御挙動信号が、ON制御信号又はOFF制御信号を含むm個(mは整数)の要素からなり、
前記制御装置は、2個(nは整数)のパターンを持つ2ビットの2行2列となるwalsh符号の中から、(m+1)個(mは整数)の任意のwalsh符号により前記制御挙動信号を多重化したフレームを送信し、
前記整数nと整数mとの関係が、2≧m+1を満たすことを特徴とする電力系統保護用伝送装置。
【請求項2】
前記制御挙動信号の多重化に際し、1~m番目の前記walsh符号に対し、前記制御挙動信号が前記ON制御信号である時には+1又は-1のいずれか一方を乗算し、前記制御挙動信号が前記OFF制御信号である時には、+1又は-1のいずれか他方を乗算することを特徴とする請求項1に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項3】
1~m番目の前記walsh符号と、m+1番目の前記walsh符号に、2-1ビットとなるPN符号列の最後尾に1ビットの情報を付加した2ビットの符号ビット列を、それぞれ乗算し、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列を生成することを特徴とする請求項2に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項4】
前記制御挙動信号を送信する1つの前記フレームが、(m+1)番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列が同期信号として前記フレームの先頭に採用され、1~m番目の制御挙動信号に、それぞれ対応する1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列を適用した制御信号が前記同期信号の後尾以降に連結して構成され、
前記フレームがサイクリックに伝送されることを特徴とする請求項3に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項5】
前記電力系統保護装置が、1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列に対応したm個の相関器を有し、
前記相関値が正の閾値以上の場合には、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記ON制御信号又は前記OFF制御信号のいずれか一方を送出し、
前記相関値が負の閾値以下の場合には、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記ON制御信号又は前記OFF制御信号のいずれか他方を送出することを特徴とする請求項4に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項6】
前記電力系統保護装置が、(m+1)番目の同期信号に対応した相関器を有し、
前記相関器が正の閾値以上の相関値を検出すると、フレームが受信されたことを示すカウント値のカウントアップを開始し、
受信した1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列のそれぞれの相関値を計測開始するタイミングを前記カウント値により決定することを特徴とする請求項4に記載の電力系統保護用伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統保護用伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力自由化に伴い、風力発電や太陽光発電など多数の発電事業者が電気事業に参入している。これらの発電事業者と送電線で系統連系をする電気事業者間で電力系統の安定運用を行うことを目的として、送電系統事故時等に、系統連系をする電気事業者から発電事業者側の電力系統保護設備に対し、制御挙動信号の情報伝送を目的とした電力系統保護用伝送装置の設置が必須になっている。
【0003】
電力系統保護用伝送装置は、送電系統事故時等の緊急時において、送電線等の電力運用設備を速やかに保護するためのものであり、所定の伝送時間内に、確実に制御挙動信号の伝送を完了することが求められる。
【0004】
例えば、これまで電力系統保護用伝送装置における制御挙動信号の伝送方式としては、電気学会技術報告第91号で示されているCDT(Cyclic Digital data Transmission)フォーマットや、IEEE C37.94で示されている64kbps伝送フォーマットが使用されている。
【0005】
非特許文献1には、図11に示されているようなCDTフォーマットが開示されている。CDTフォーマットは、同期ワード110と情報ワード120を1フレーム100とする構成であり、同期ワード110は先頭ビット111と最後尾ビット113が「1」、それ以外の42ビットは「0」として合計44ビットの構成となる。情報ワード120は、初送21ビットデータ121に制御挙動信号の情報が入力され、初送の最後尾に奇数パリティービット122が付加される。また、反転伝送21ビットデータは、初送データ21ビットデータを反転させたものであり、最後尾に偶数パリティービット124が付加されて合計44ビットの構成となる。そして、制御挙動信号は1つの要素につき1ワードを使用して伝送される方式である。
【0006】
非特許文献2には、図12に示されているようなIEEE C37.94の64kbps伝送に用いられている伝送フォーマットが開示されている。IEEE C37.94の伝送フォーマット、12フレームを1つのスーパーフレーム130とする伝送フォーマットであり、1フレームはフレーム同期ビット140と、データビット150とで構成される。データビット150は、例えばA相電流データ151、B相電流データ152、C相電流データ153、及び電圧・転送データ154等の電流情報や電圧情報に加え、6ビットデータ155aである制御データ155からなる5つの要素の制御挙動信号として用いられる。そして、フレームの最後尾のCRC(Cyclic Redundancy Check)誤り検定符号156が付加されて合計106ビットもしくは107ビットを1フレームとして伝送する方式である。CRC誤り検定符号156は、15ビットデータ156a、「0」からなるビット156b、「1」からなるビット156cからなる。
【0007】
なお、例えばA相電流データ151、B相電流データ152、C相電流データ153、及び電圧・転送データ154のそれぞれは、最初の「1」からなるビット151a~154aに続いて16ビットデータ151b~154bからなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】電気学会技術報告第91号、電気学会、1969年8月、DOI 10.11501/2311787
【非特許文献2】IEEE C37.94-2017 「IEEE Standard for N times 64 kbps Optical Fiber Interfaces between Teleprotection and Multiplexer Equipment」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今後も増大すると予想される発電事業者は、風力発電や太陽光発電が今後も主流となる。これら発電所は山間地帯や海岸地帯となるため、自然環境や気象環境は都市部と比較し良好な場所とはならない。また、伝送路環境については、発電所から需要地までの伝送路の長距離化が要求されることになる。これら環境は、主な伝送路設備となるメタルケーブル品質を大きく劣化させる要因ともなり、ビットエラーの多発など伝送品質の劣化を誘引させる。また、現状でも伝送品質が劣化を生じている課題となっている。
【0010】
このような伝送路でCDTフォーマットや、IEEE C37.94の64kbps伝送フォーマットを用いた場合、これら伝送方式は誤り訂正機能を有していない。このため、パリティー誤り検定やCRC誤り検定などで、1ビットでも誤り検出がされた場合には、そのフレームのデータは破棄され、更新されないため、伝送したい情報が伝達されない。このため、例えば、制御挙動信号として、起動し更新された情報が伝送された場合、受信されたフレーム情報にビット誤りがあった時には、リトライが繰り返され、ビット誤りが復旧するまで制御挙動信号が電力系統保護装置に対し情報が伝達されない。このため、予め決められた時間内に電力運用設備を保護でない場合が生じ、電力系統の電圧変動などに大きな影響を与えてしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決するものであって、伝送路の品質が劣化により伝送フレームに複数のビット誤りが発生しても、送受信間でフレーム同期を確立し、制御挙動信号を送出可能な電力系統保護用伝送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の電力系統保護用伝送装置は、制御挙動信号を送信する制御装置と、前記制御挙動信号を受信して電力系統保護設備を制御する電力系統保護装置と、前記制御装置と前記電力系統保護装置との間の通信手段と、を備える電力系統保護用伝送装置であって、前記制御挙動信号が、ON制御信号又はOFF制御信号を含むm個(mは整数)の要素からなり、前記制御装置は、2個(nは整数)のパターンを持つ2ビットの2行2列となるwalsh符号の中から、(m+1)個(mは整数)の任意のwalsh符号により前記制御挙動信号を多重化したフレームを送信し、前記整数nと整数mとの関係が、2≧m+1を満たす、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様の電力系統保護用伝送装置は、第1の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記制御挙動信号の多重化に際し、1~m番目の前記walsh符号に対し、前記制御挙動信号が前記ON制御信号である時には+1又は-1のいずれか一方を乗算し、前記制御挙動信号が前記OFF制御信号である時には、+1又は-1のいずれか他方を乗算することを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様の電力系統保護用伝送装置は、第2の態様の電力系統保護用伝送装置において、1~m番目の前記walsh符号と、m+1番目の前記walsh符号に、2-1ビットとなるPN符号列の最後尾に1ビットの情報を付加した2ビットの符号ビット列を、それぞれ乗算し、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列を生成することを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様の電力系統保護用伝送装置は、第3の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記制御挙動信号を送信する1つの前記フレームが、(m+1)番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列が同期信号として前記フレームの先頭に採用され、1~m番目の制御挙動信号に、それぞれ対応する1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列を適用した制御信号が前記同期信号の後尾以降に連結して構成され、前記フレームがサイクリックに伝送されることを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様の電力系統保護用伝送装置は、第4の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記電力系統保護装置が、1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列に対応したm個の相関器を有し、前記相関値が正の閾値以上の場合には、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記ON制御信号又は前記OFF制御信号のいずれか一方を送出し、前記相関値が負の閾値以下の場合には、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記ON制御信号又は前記OFF制御信号のいずれか他方を送出することを特徴とする。
【0017】
本発明の第6の態様の電力系統保護用伝送装置は、第4の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記電力系統保護装置が、(m+1)番目の同期信号に対応した相関器を有し、前記相関器が正の閾値以上の相関値を検出すると、フレームが受信されたことを示すカウント値のカウントアップを開始し、受信した1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列のそれぞれの相関値を計測開始するタイミングを前記カウント値により決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、ON制御信号又はOFF制御信号を含むm個(mは整数)の要素からなる制御挙動信号を情報伝送するため、2個(nは整数)のパターンを持つ2ビットの2行2列となるwalsh符号の中から、(m+1)個(2≧m+1)の任意のwalsh符号により、制御挙動信号を多重化した伝送フォーマットを用いることにより、伝送路の品質が劣化により伝送フレームに複数のビット誤りが発生しても、送受信間でフレーム同期を確立し、制御挙動信号を送出可能である。これはwalsh符号は直交性が高いため、自身の符号の自己相関は高まる一方、他の符号との相互相関値は0に漸近することができるため、ビット誤りがある場合にも、同期時の相関値だけが、他の符号と比較して極めて大きくなり、伝送路の品質が劣化していても、精度よく同期信号を判別することができる。同様に、制御挙動信号がON制御信号であるかOFF制御信号であるかを精度よく判別することができる。
【0019】
本発明の第2の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、制御挙動信号の多重化に際し、1~m番目のwalsh符号に対し、制御挙動信号がON制御信号である時には+1又は-1のいずれか一方を乗算し、制御挙動信号が前記OFF制御信号である時には、+1又は-1のいずれか他方を乗算することにより、電力系統保護装置が受信した際に、例えば、制御挙動信号がON制御信号である時に+1を乗算した場合には、ON制御信号である時には受信信号は正となり、制御挙動信号がOFF制御信号である時に-1を乗算した場合には、OFF制御信号である時には受信信号が負となる。なお、乗算する+1と-1との関係が前記とは逆の場合には、受信信号は正と負との関係も前記とは逆となる。
【0020】
本発明の第3の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、1~m番目の前記walsh符号と、m+1番目の前記walsh符号に、2-1ビットとなるPN符号列の最後尾に1ビットの情報、例えば-1を付加した2nビットの符号ビット列と、前記それぞれのWalsh符号とで乗算し、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列を生成する。このことで、walsh符号からなる拡散符号系列を用いてフレームを構成することにより、この拡散符号系列はより強い自己相関・相互相関を持つため、walsh符号だけを用いる場合よりも、自己相関を高めると共に、相互相関値を0に漸近することができる。
【0021】
本発明の第4の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、制御挙動信号を送信する1つのフレームが、(m+1)番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列が同期信号としてフレームの先頭に採用され、1~m番目の制御挙動信号に、それぞれ対応する1~m番目のwalsh符号からなる拡散符号系列を適用した制御信号が同期信号の後尾以降に連結して構成されることにより、各フレームがサイクリックに伝送される。各フレームのサイクリックな伝送は、例えばTDMAと同様に時間軸の多重とすることができる。
【0022】
本発明の第5の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、電力系統保護装置が、1~m番目のwalsh符号からなる拡散符号系列に対応したm個の相関器を有しているので、制御信号の相関値から制御挙動信号がON制御信号であるか、OFF制御信号であるかを判別することができる。例えば、制御挙動信号がON制御信号である時には+1を乗算し、制御挙動信号がOFF制御信号である時には-1を乗算した場合には、相関値が正の閾値以上の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてON制御信号を送出し、相関値が負の閾値以下の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてOFF制御信号を送出する。この逆に、例えば、制御挙動信号がON制御信号である時には-1を乗算し、制御挙動信号がOFF制御信号である時には+1を乗算した場合には、相関値が正の閾値以上の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてOFF制御信号を送出し、相関値が負の閾値以下の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてON制御信号を送出する。また、ビット誤りの程度に応じて閾値を適切に設定することにより、伝送路の品質が劣化していても、制御挙動信号がON制御信号であるかOFF制御信号であるかを精度よく判別することができる。
【0023】
本発明の第6の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、電力系統保護装置が、(m+1)番目の同期信号に対応した相関器を有しており、相関器が正の閾値以上の相関値を検出すると、フレームが受信されたことが判定できる。同期信号が検出されると、カウント値のカウントアップを開始し、受信した1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列のそれぞれの相関値を計測開始するタイミングをカウント値により決定することができる。同期信号さえ検出すれば、1~m番目の各制御信号のタイミングはカウント値から検出することができる。このため、各制御信号のタイミングの検出が簡易であり、常に相関器出力を加算する演算を続ける必要が無く、各制御信号を受信したタイミングにおいてだけ相関値を加算する演算をすることにより、制御挙動信号がON制御信号であるかOFF制御信号であるかを判別することができる。また、ビット誤りの程度に応じて閾値を適切に設定することにより、伝送路の品質が劣化していても、同期信号を精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】電力系統保護用伝送装置のブロック図である。
図2】送信装置のブロック図である。
図3】フレームの構成図である。
図4】受信装置のブロック図である。
図5】相関器のブロック図である。
図6】同期信号の相関値の説明図である。
図7】制御信号の正の相関値の説明図である。
図8】制御信号の負の相関値の説明図である。
図9】拡散符号が異なる場合の制御信号の相関値の説明図である。
図10】閾値の判定タイミングの説明図である。
図11】相関値の累積確率分布図である。
図12】伝送装置が複数ある場合の電力系統保護用伝送装置のブロック図である。
図13】電気学会仕様44bit CDT伝送フォーマットの構成図である。
図14】IEEE C37.94の64kbps伝送フォーマットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る電力系統保護用伝送装置を説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための電力系統保護用伝送装置を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【0026】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る電力系統保護用伝送装置について、図1図11を参照して説明する。
【0027】
図1は、電力系統保護用伝送装置のブロック図である。発電機16を備える発電事業者15と、電気事業者10との間は送電線で接続されており、発電事業者15が発電機16により発電した電力は、送電線によって電気事業者10に送電される。発電事業者15には、水力発電、火力発電、原子力発電に加え、風力発電や太陽光発電等さまざまな発電事業者が含まれる。
【0028】
電気事業者10においては、例えば短絡事故等の事故が発生すると、制御装置としての配電盤11は、事故を検出し、遮断箇所を特定して、遮断箇所に対応する発電事業者15の電力系統保護設備に対して、遮断制御指令を出力する。出力された遮断制御指令は、電力系統保護用伝送装置によって、遮断箇所に対応する発電事業者15の電力系統保護設備に伝送される。電力系統保護用伝送装置は、送信装置12、通信線13及び受信装置17を備えている。電気事業者側の配電盤11から出力された遮断制御指令は、送信装置12から通信線13を介して受信装置17へ伝送される。受信装置17が受信した遮断制御指令は、発電事業者15側の配電盤18に送られ、配電盤18は電力系統保護設備に対して遮断指令を送信することにより、発電事業者15の電力系統保護設備は、発生した事故Aに対応して制御される。
【0029】
図2は、送信装置12のブロック図である。同期用walsh符号20、m個(mは整数)の制御用walsh符号(1)21a~制御用walsh符号(m)21mには、それぞれ乗算器24、25a~25mにより、拡散符号23が乗算される。乗算器24は1個、乗算器25a~乗算器25mはm個である。乗算器25a~25mの出力には、それぞれ乗算器26a~26mにより、制御情報(1)22a~制御情報(m)22mが乗算されるが、この時、制御情報がON制御信号である場合には+1が乗算され、制御情報がOFF制御信号である場合には-1が乗算される。なお、乗算器26a~26mはm個である。
【0030】
乗算器24の出力、及び乗算器26a~26mの出力は、多重化部27へ入力され、多重化部27では、これらの出力が多重化されて、送信信号28としてフレーム30が出力される。
【0031】
同期用walsh符号20および制御用walsh符号21a~21mとして、2n行×2n列(nは整数)となる符号行列Xnの中から、制御用walsh符号21a~21mとしてm個、同期用walsh符号20として1個、合計(m+1)個の符号列が選択される。ここで、符号行列Xnの符号の数は、選択される符号列の合計数である(m+1)個よりも大きい必要があるため、整数nと整数mとの関係が、
2n≧m+1 (1)
を満たす必要がある。
【0032】
ここでwalsh符号とは、直交符号とも呼ばれ、互いに直交している符号である。walsh符号をW(k,n)と表現し、ビット数をnのときの、k番目のwalsh符号と定義した場合に例えば次のように表される。
W(0,1) = 1
W(0,2) = 1, 1
W(1,2) = 1,-1
W(0,4) = 1, 1, 1, 1
W(1,4) = 1,-1, 1,-1
W(2,4) = 1, 1,-1,-1
W(3,4) = 1,-1,-1, 1
W(0,8) = 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1
W(1,8) = 1,-1, 1,-1, 1,-1, 1,-1
W(2,8) = 1, 1,-1,-1, 1, 1,-1,-1
W(3,8) = 1,-1,-1, 1, 1,-1,-1, 1
W(4,8) = 1, 1, 1, 1,-1,-1,-1,-1
W(5,8) = 1,-1, 1,-1,-1, 1,-1, 1
W(6,8) = 1, 1,-1,-1,-1,-1, 1, 1
W(7,8) = 1,-1,-1, 1,-1, 1, 1,-1
【0033】
また、walsh符号を行列として表記した場合には次式のように表現できる。
【0034】
拡散符号はPN(Pseudo random Noise:疑似ランダム)符号と最後尾に1bit、例えば「-1」を付与した符号列となる。PN符号は特に限定されるものではないが、例えばM系列、Gold系列等を採用することができる。2ビットのwalsh符号20、21a~21mと乗算器24、25a~25mとを乗算し、符号化を行い、walsh符号からなる拡散符号系列を生成するため、n段のPN符号を使用する。n段のPN符号は2-1の繰り返しとなるため、walsh符号とビット数を合わせるために最後尾に「-1」の1ビットを付与することにより、2ビットの繰り返しのwalsh符号からなる拡散符号系列を得る。
【0035】
n段のPN符号のビット数としては、特に限定されるものではないが、例えばn=5として、2=32とすることができる。5段のPN符号によって4種類のコードを作ることができる。送信装置12の数が4個以内である場合には、5段のPN符号で十分である。なお、送信装置12の数が多い場合には、よりビット数の多いPN符号を用いることができ、例えば、6段のPN符号を使用して64ビットとすることもできる。送信装置12毎にPN符号の異なるコードを使用することにより、各送信装置12から伝送されるフレーム30を区別することができる。
【0036】
乗算器25a~25mによって得られたwalsh符号からなる拡散符号系列は、電気事業者側の配電盤11より受信された1~m番の制御情報22a~22mのON/OFFにより二値化処理を行う。制御情報のON/OFFは、ON制御信号時は+1を乗算器26a~26mにより乗算し、OFF制御信号時は-1を乗算器26a~26mにより乗算する。これによりON制御信号送出時とOFF制御信号送出時とを比較すると、2ビットの極性が反転されて伝送される関係となる。
【0037】
乗算器24によって得られた同期信号としての1個の同期用符号と、乗算器25a~25mによって得られた制御信号としてのm個の制御用符号は、多重化部27によって多重化される。多重化されることにより、同期用符号と制御用符号が1つのフレーム30の送信信号28として、送信される。
【0038】
図3は、フレーム30の構成図である。1つのフレーム30は、同期信号31と制御信号32とから構成される。同期信号31は、2nビットの(m+1)番目のwalsh符号をPN符号で乗算した、walsh符号からなる拡散符号系列の同期符号列31aである。制御信号1(32a)、制御信号2(32b)、から制御信号m(32m)は、各要素につき2nビットのwalsh符号をPN符号で乗算した、walsh符号からなる拡散符号系列として得られる。そして、制御信号は、制御信号1(32a)~制御信号m(32m)のm個が配置されるm×2ビットからなる。1つのフレーム30は、同期信号31を先頭に採用し、この同期信号31の後尾以降に1番目からm番目までのm個の制御信号1~制御信号mを連結して構成される。そして、各フレーム30がサイクリックに伝送される。各フレーム30のサイクリックな伝送は、例えばTDMAと同様に時間軸の多重とすることができる。
【0039】
図4は、受信装置のブロック図である。図3を用いて説明したフレーム30が受信信号rd(t)40として受信され、同期用walsh符号相関器42に入力される。同期用walsh符号参照信号41には、図2を用いて説明した送信フレーム30と同一、すなわち乗算器24の出力である同期用walsh符号からなる拡散符号系列と同一の拡散符号列が設定されており、同期用walsh符号相関器42にて受信信号rd(t)40と同期用walsh符号参照信号41との比較が行われる。同期用walsh符号相関器42では、1ビット入力されるたびにデータ比較した結果が、同期閾値判定43にて閾値判定され、その結果が同期検出信号44による同期判定結果としてON/OFF信号が出力される。具体的には、例えば、同期検出された瞬間に同期検出結果ON信号を出力し、その他の期間では同期検出結果OFF信号が出力される。
【0040】
制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器46mのそれぞれにも、同期用walsh符号相関器42と同様に受信信号rd(t)が入力される。制御用walsh符号(1)参照信号45a~制御用walsh符号(m)参照信号45mには、図2を用いて説明した送信フレーム30と同一、すなわち乗算器25a~25mの出力である制御用walsh符号からなる拡散符号系列と同一の拡散符号列が、それぞれ設定されており、制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器46mは、受信信号rd(t)40と、制御用walsh符号(1)参照信号45a~制御用walsh符号(m)参照信号45mとの比較を行っている。制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器46mの各出力は、同期検出信号40がONとなり、同期が確立している場合にのみ、それぞれ閾値判定(1)47a~閾値判定(m)47mにて閾値判定され、この閾値判定の判定結果により、それぞれの制御出力部48a~48mからON/OFF制御信号49a~49m、すなわち、伝送された制御挙動信号に対応するON制御信号又はOFF制御信号のいずれか一方が出力される。
【0041】
閾値判定(1)47a~閾値判定(m)47mによる閾値判定のタイミングは、同期検出信号44の同期検出結果ON信号が検出された後の受信ビット数をカウントすることで、判別可能である。各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mはm×2ビットであるから、このビット数をカウントしておけば、各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mの受信が完了したタイミングが判別できるので、この各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mの受信が完了したタイミングだけに閾値判別(1)47a~閾値判別(m)47mにて閾値判定される。
【0042】
このため、各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mの受信が完了したタイミングの検出が簡易であり、常に相関器出力を加算する演算を続ける必要が無く、各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mの受信が完了したタイミングにおいてだけ相関値を加算する演算を行い、それぞれ閾値判別47a~47mにて閾値を判別することにより、制御挙動信号がON制御信号であるかOFF制御信号であるかを判別することができる。また、ビット誤りの程度に応じて閾値を適切に設定することにより、伝送路の品質が劣化していても、同期信号を精度よく検出することができる。
【0043】
図5は、相関器42、46a~46mのブロック図である。相関器42、46a~46mは、受信装置17において用いられ、同期用walsh符号からなる拡散符号系列、及び各制御用walsh符号からなる拡散符号系列のシンボル数2個の相関値を判定する。受信信号rd(t)50は、直列に接続され、1ビットごと受信信号rd(t)50を遅延させるための、2-1個の遅延器D1~D2-1が直列に配置列されている。遅延器D1~D2-1は、受信信号rd(t)50が1ビット入力されるごとに、直近に入力された2-1ビットの情報の各1ビットをそれぞれ出力する。
【0044】
参照信号52には、図2を用いて説明した送信フレーム30と同一、すなわち乗算器24の出力である同期用walsh符号からなる拡散符号系列と同一の2ビットの拡散符号列、及び乗算器25a~25mの出力である制御用walsh符号からなる拡散符号系列と同一の2ビットの拡散符号列がそれぞれ予め設定されている。乗算器で受信信号rd(t)と乗算される。受信信号rd(t)の1ビットの情報、及び、各遅延器D1~D2-1から出力される直近に入力された2-1ビットの情報には、それぞれ送信フレーム30と同一の2ビットの拡散符号列が各乗算器53により乗算され、この全ての乗算器53の出力が加算器54にて加算されて、合計相関値(Cwalsh)55として出力され、この合計相関値が閾値判定に用いられる。同期信号31の相関値の算出は、受信信号rd(t)50のデータが1ビット入力される毎に逐次行われる。制御信号(1)32a~制御信号(m)32mについては、2ビット毎に相関値の算出を行う。これは、同期信号31の相関値から同期タイミングが検出できれば、各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mが受信を完了するタイミングはそれぞれ2ビット毎に決定されるためである。
【0045】
図6は、同期信号の相関値の説明図であり、同期用walsh符号相関器42の相関特性を表しており、縦軸は相関値を、横軸は同期信号31のデータが全て同期用walsh符号相関器42に入力されたタイミングを0とした位相差を示している。同期信号31のデータがすべて相関器に入力された時点(a2)において、つまり位相差0の場合に、相関値がピークとなり、相関値は2となる。walsh符号にPN符号を乗算したwalsh符号からなる拡散符号系列を用いているため、位相差0の場合には自己相関が大きく、ピークとなる一方で、位相差0以外では、制御信号(1)32a~制御信号(m)32mとの相関特性(a3)を無相関に近づけているため、相互相関値は0に漸近するようになっている。また、同期信号31のデータが入力されている途中の相関値(a1)も相互相関値は0に漸近するようになっている。
【0046】
相関値を判定する閾値を設け、相関値が閾値以上となる正の相関値の場合に同期が確立したものと判断する。このように閾値を設けることでピーク値(a2)のみを検出するため、フレーム30内の制御信号(1)32a~制御信号(m)32mを受信している際(a3)は閾値未満となり判定に影響しない。
【0047】
同期信号31の閾値判定は、許容する誤りビット数により、伝送路の品質が劣化している程度に応じて、決定する。相関器42、46a~46mの加算器54による加算では、誤りなしの場合+1、誤りの場合には-1となるため、1ビット誤ると相関値が差分の2だけ減少する。例えば、n=6の場合、すなわち、2=2=64ビットを伝送した場合、最大相関値=64となり、3ビット分誤った場合には、相関値のピークが誤りなく受信した場合と比較し2×3ビット=6ビット分減少し相関値が58となる。そのため、3ビットの誤りを許容する場合には閾値を58に設定する。同様に、eビットの誤りを許容する場合には、閾値は、
(eビットの誤りを許容する閾値)=2-2e (5)
として設定して、同期信号の同期の判定、及び制御信号のON/OFF制御信号の判定を行う。
【0048】
図7は、制御信号の正の相関値の説明図である。同期信号31の閾値判定により同期確立した後、制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器46mでは相関値の判定を開始する。図7では、制御用walsh符号(1)相関器46aにおけるON制御信号の相関特性を示す。図7の縦軸は相関値を、横軸は同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングを0とした位相差を示している。
【0049】
制御信号(1)32aのデータ、すなわち制御用walsh符号(1)系列がすべて制御用walsh符号(1)相関器46aに入力された時点、つまりwalsh符号系列から位相差2の場合には、相関値がピーク(b3)となり、相関値は2となる。位相差2以外では、walsh符号にPN符号を乗算したwalsh符号からなる拡散符号系列を用いていることで、同期用walsh符号からなる拡散符号系列及び他の制御用walsh符号からなる拡散符号系列との相関特性を無相関に近づけているため、相互相関値は0に漸近するようになっている。このため、同期walsh符号系列が入力されている時の相関値(b1)、制御用walsh符号(1)系列が入力されている時の相関値(b2)、及び、制御用walsh符号(2)~(m)系列が入力されている時の相関値(b4)は、0に漸近するようになっている。
【0050】
相関値に対して閾値を設け、相関値が閾値以上となる正の相関値の場合に制御(1)出力部48aからON制御信号を出力とする。閾値を設けることでピーク値のみを検出するため、フレーム30内の制御信号(1)32aのデータ以外の制御信号のデータを受信している際(b4)や同期信号のデータを受信している際(b1)には、閾値未満となり判定に影響しない。
【0051】
同期信号31の閾値判定により同期確立した後に、制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器では、相関値の判定を開始する。例えば、同期検出信号44として同期検出結果ON信号の出力を受けて、各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mはm×2ビットであるから、このビット数をカウントしておけば、各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mの受信が完了したタイミングが判別できるので、この各制御信号(1)32a~制御信号(m)32mの受信が完了したタイミングに合わせて、完了タイミングから演算時間を考慮した所定時間の間だけ、制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器、及び、閾値判別(1)47a~閾値判別(m)47mによる演算を行うようにしてもよい。これにより、制御用walsh符号(1)相関器46a~制御用walsh符号(m)相関器、及び、閾値判別(1)47a~閾値判別(m)47mによる演算を常時行う必要がなくなる。
【0052】
図8は、制御信号の負の相関値の説明図である。縦軸は相関値を、横軸は同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングを0とした位相差を示している。図2の説明で述べたように、送信装置12の制御情報(1)がOFF制御信号の時には、-1を乗算器26aで乗算しているため、図8においてはOFF制御信号を受信した場合、位相差2の時に、相関値が負のピーク値(c3)となり、このピーク時の相関値は-2となる。これは、図7のON制御信号の相関特性のピーク値(b3)が正のピークの場合と比較すると、相関値のピークの正負が反転している。
【0053】
相関値が閾値以下となる負の相関値の場合に、制御(1)出力部48aからOFF制御信号が出力される。相関値に対して閾値を設けることで、ピーク値のみを検出するため、フレーム30内の制御信号(1)32a以外のデータを受信している際は閾値未満となり判定に影響しない。同期用walsh符号系列が入力されている途中の相関値(c1)、制御用walsh符号(1)系列が入力されている途中の相関値(c2)、及び、制御用walsh符号(2)~(m)系列が入力されている時の相関値(c4)においては、相互相関値は0に漸近するようになっている。
【0054】
これにより、1つのフレーム30内に同期信号31のデータと、制御信号(1)~制御信号(m)のデータが混在している場合でも、例えば送信装置12が制御信号(1)のデータとしてON/OFF制御信号を送出した時に、受信装置17は制御信号(1)のON/OFF制御信号のみを判定可能である。制御信号(1)のデータの閾値判別(1)47aにおける閾値判別時には、同期信号のデータ、及び、他の制御信号のデータが入力されている時には相関値は0あるいは0に漸近しており、閾値以下となるため、制御信号(1)のON/OFF制御信号の誤判定を防ぐことができる。この結果、1つのフレーム30内に同期信号31のデータ、及び制御信号(1)32a以外のデータが混在した場合でも、制御信号(1)32aを正確に伝送することができる。
【0055】
図9は、拡散符号が異なる場合の制御信号の相関値の説明図である。縦軸は相関値を、横軸は同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングを0とした位相差を示している。図9は、同期用walsh符号相関器42において参照信号52として乗算される同期用walsh符号参照信号41におけるwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号が、送信装置12の同期用のwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号とが異なる場合の、同期信号の相関値である。図9では、同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングにおいても、その他の全てのタイミングにおいて、相関値は0に漸近している。送信装置12においてwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号と、受信装置17においてwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号とが異なる場合には、受信装置17は送信装置12の送信した制御挙動信号の影響を受けない。複数の送信装置12において、それぞれwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号が異なっている場合には、通信線13において伝送信号の搬送波が干渉したとしても、1つの受信装置17で複数の送信装置12から制御挙動信号を搬送波干渉の影響なく受信することができる。
【0056】
図10は、閾値の判定タイミングの説明図である。図10において、受信データ60に含まれるフレーム30の同期信号31を、同期用walsh符号61、制御信号(1)32a~制御信号(m)32mをそれぞれ制御用walsh符号(1)62a~制御用walsh符号(m)62mと表記しており、フレーム30の判定結果出力演算のタイミングを、同期用walsh符号判定結果出力63、制御信号閾値判定タイミング64、制御用walsh符号(1)~(m)判定結果出力65~67により表現している。
【0057】
同期を確立したタイミングをt0とし、同期を確立した後に随時、制御用walsh符号(1)62a~制御用walsh符号(m)62mの各相関器46a~46mでは相関値の判定を開始する。ここで、制御用walsh符号の閾値の判定は、同期閾値判定とは異なり、1ビット入力される毎の判定は行わない。図3に示されているようにフレーム30の構成は、同期用walsh符号61、及び制御用walsh符号62a~62mいずれも2ビットとなっている。
【0058】
そのため、同期用walsh符号61のピークを検出のタイミングから、制御用walsh符号(1)62aは1×2ビット後、制御用walsh符号(2)62bは2×2ビット後、制御用walsh符号(m)62mはm×2ビット後に、各制御用walsh符号が全て相関器46a~46mに入力される。よって、閾値の判定タイミングは同期用walsh符号61を受信後、2ビット毎とすることで、制御用walsh符号(1)62a~制御用walsh符号(m)62mを受信したタイミングのみ相関値判定を行うことで、相関器46a~46mは1ビット毎の常時の加算処理が不要となり、処理の低減を可能としている。閾値の判定結果により制御(1)~(m)出力部48a~48mから、ON制御信号又はOFF制御信号のいずれかが出力される。
【0059】
閾値の判定結果により制御(1)~(m)出力部48a~48mから出力されるON/OFF制御信号は、次に正の閾値以上、又は負の閾値以下になるタイミング、すなわち、次のフレーム30の当該制御用walsh符号62a~62mを全て受信するまで出力を保持される。
【0060】
図11は、相関値の累積確率分布図であり、縦軸は時間率を、横軸は相関値を表している。図11では、相関値の最大が64となる場合に、信号に雑音を付加し、SN比(信号対雑音比)を変化させ、信号の品質を劣化させたシミュレーションを行った結果を示している。ここでは、SN比をSN=11~13dBまで1dB毎に変化させたシミュレーションを行った。
【0061】
このシミュレーションの結果、相関値の最低値はSN=11dBで54、SN=12dBで56、SN=13dBで60となった。このため、SN=11dBとなる伝送路品質で確実に同期が確立し制御信号を出力するためには5ビット誤りを許容する値となる閾値として54を設定することで、伝送路の品質が劣化し、複数のビット誤りが発生しても、同期信号のデータの検出、及び制御信号(1)32a~制御信号(m)32mのデータのON/OFF制御信号の出力を確実に行うことができる。
【0062】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る電力系統保護用伝送装置について説明する。第1実施形態では、図2を用いて説明したとおり、加算器26a~26mにおいて、制御情報がON制御信号である場合には+1が乗算され、制御情報がOFF制御信号である場合には-1が乗算された。これに対して、第2実施形態では、制御情報がON制御信号である場合には-1が乗算され、制御情報がOFF制御信号である場合には+1が乗算される。
【0063】
本実施形態では、制御情報がON制御信号である場合には-1が乗算され、制御情報がOFF制御信号である場合には+1が乗算されるため、電力系統保護用伝送装置の受信装置17における制御(1)出力部48a~制御(m)出力部48mは、相関値が正の閾値以上の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてOFF制御信号を送出し、相関値が負の閾値以下の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてON制御信号を送出するように構成される。このように、本実施形態では、第1実施形態と比較すると、正の相関値のピークと、負の相関値のピークとの関係が逆になっている。
【0064】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る電力系統保護用伝送装置について、図12を参照して説明する。図1~11と対応する構成には同一の符号を用い、その省略は省略する。
【0065】
図12は、伝送装置が複数ある場合の電力系統保護用伝送装置のブロック図である。電気所A70は送信装置A71を有し、制御情報A-1~A-4を送信装置A71から受信装置75へ伝送する。電気所B72は送信装置B73を有し、制御情報B-1~B-4を送信装置B73から受信装置75へ伝送する。電気所C74は受信装置75を有し、受信装置75は、電気所A70の送信装置A71から制御情報A-1~A-4を受信すると共に、電気所B72の送信装置B73から制御情報B-1~B-4を受信する。
【0066】
本実施形態では、受信装置75の1台に対して、複数の電気所A70及び電気所B72から制御情報を受信する電力系統保護用伝送装置が採用されている。搬送波を電気所A70及び電気所B72の2箇所から送信した場合、他の電気所からの搬送波の符号系列間で干渉してしまう場合がある。搬送波の符号系列間で干渉が発生した時に、同一のフレーム30を送信している場合には、従来技術では、他の電気所向けの信号により、同期信号判定、制御信号判定を誤判定してしまうおそれがあった。
【0067】
そこで、本実施形態では、電気所毎に、送信装置A71及び送信装置B73で用いる拡散符号23、例えばPN符号として異なる符号を使用することで、搬送波の符号系列間で干渉が発生した時にも、同期信号判定、制御信号判定を正確に判定することができる。送信装置A71と送信装置B73において、異なるPN符号列を用いることにより、同期用walsh符号20、制御用walsh符号(1)21a~制御用walsh符号(m)21mに対して乗算器24、25a~25mによって、送信装置A71と送信装置B73毎に異なるPN符号列を乗算すればよい。
【0068】
このように、送信装置A71と送信装置B73において、異なるPN符号列を用いれば、図9を用いて説明したとおり、同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングにおいても、その他の全てのタイミングにおいても、相関値は0に漸近している。送信装置12においてwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号と、受信装置17においてwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号とが異なる場合には、受信装置17は送信装置の送信した制御挙動信号の影響を受けない。複数の送信装置12において、それぞれwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号が異なっている場合には、通信線13において伝送信号の搬送波が干渉したとしても、1つの受信装置17で複数の送信装置12から制御挙動信号を搬送波干渉の影響なく受信することができる。したがって、各送信装置71、73において異なる拡散符号を用いることにより、搬送波が干渉した場合でも影響を受けず、一つの受信装置75で複数の電気所70、72から制御情報の受信が可能である。
【0069】
以上説明した各実施形態は、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。また、各実施形態を適宜変更したり、各実施形態を適宜組み合わせたりすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 電気事業者
11 配電盤
12 送信装置
13 通信線
15 発電事業者
16 発電機
17 受信装置
18 配電盤
20 同期用walsh符号
21a~21m 制御用walsh符号
22a~22m 制御情報
23 拡散符号
24 乗算器
25a~25m 乗算器
26a~26m 乗算器
27 多重化部
28 送信信号
30 フレーム
31 同期信号
31a 同期符号列
32 制御信号
32a~32m 制御信号(1)~制御信号(m)
41 同期用walsh符号参照信号
42 同期用walsh符号相関器
43 同期閾値判定
44 同期検出信号
45a~45m 制御用walsh符号(1)~(m)参照信号
46a~46m 制御用walsh符号(1)~(m)相関器
47a~47m 閾値判別(1)~(m)
48a~48m 制御(1)~(m)出力部
49a~49m 制御信号(1)~(m)ON/OFF
50 受診信号
51 遅延器
52 参照信号
53 乗算器
54 加算器
55 合計相関値
60 受信データ
61 同期用walsh符号
62a~62m 制御walsh符号(1)~(m)
63 同期用walsh符号判定結果出力
64 制御信号閾値判定タイミング
65、66、67 制御walsh符号(1)、(2)、(m)判定結果出力
70、72、74 電気所
71、73 送信装置
75 受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御挙動信号を送信する制御装置と、
前記制御挙動信号を受信して電力系統保護設備を制御する電力系統保護装置と、
前記制御装置と前記電力系統保護装置との間の通信手段と、
を備える電力系統保護用伝送装置であって、
前記制御挙動信号が、ON制御信号又はOFF制御信号を含むm個(mは整数)の要素からなり、
前記制御装置は、2個(nは整数)のパターンを持つ2ビットの2行2列となるwalsh符号の中から、(m+1)個(mは整数)の任意のwalsh符号に拡散符号を乗算した、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列によりm個の前記制御挙動信号と1個の同期信号を多重化したフレームを送信し、
前記整数nと整数mとの関係が、2≧m+1を満たし、
前記制御挙動信号の多重化に際し、1~m番目の前記walsh符号に対し、前記制御挙動信号が前記ON制御信号である時には+1又は-1のいずれか一方を乗算し、前記制御挙動信号が前記OFF制御信号である時には、+1又は-1のいずれか他方を乗算することを特徴とする電力系統保護用伝送装置。
【請求項2】
1~m番目の前記walsh符号と、m+1番目の前記walsh符号に、前記拡散符号として-1ビットとなるPN符号列の最後尾に1ビットの情報を付加した2ビットの符号ビット列を、それぞれ乗算し、(m+1)個の前記walsh符号からなる拡散符号系列を生成することを特徴とする請求項に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項3】
前記制御挙動信号を送信する1つの前記フレームにおいて、(m+1)番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列が前記同期信号として前記フレームの先頭に採用され、1~m番目の前記制御挙動信号に、それぞれ対応する1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列を適用した制御信号が前記同期信号の後尾以降に連結して構成され、
前記フレームがサイクリックに伝送されることを特徴とする請求項1または2に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項4】
前記電力系統保護装置が、1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列に対応したm個の相関器を有し、
前記相関器が検出した相関値が正の閾値以上の場合であって、前記制御挙動信号の多重化に際し、前記制御挙動信号がON制御信号である時に+1が乗算されているか、または、前記制御挙動信号がOFF制御信号である時に-1が乗算されている場合に、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記ON制御信号を送出し、
前記相関値が負の閾値以下の場合であって、前記制御挙動信号の多重化に際し、前記制御挙動信号がOFF制御信号である時に+1が乗算されているか、または、前記制御挙動信号がON制御信号である時に-1が乗算されている場合に、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記OFF制御信号を送出することを特徴とする請求項に記載の電力系統保護用伝送装置。
【請求項5】
前記電力系統保護装置が、前記同期信号に対応した相関器を有し、
前記同期信号に対応した相関器が正の閾値以上の相関値を検出すると、前記フレームが受信されたことを示すカウント値のカウントアップを開始し、
受信した1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列のそれぞれの相関値を計測開始するタイミングを前記カウント値により決定することを特徴とする請求項に記載の電力系統保護用伝送装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
非特許文献1には、図13に示されているようなCDTフォーマットが開示されている。CDTフォーマットは、同期ワード110と情報ワード120を1フレーム100とする構成であり、同期ワード110は先頭ビット111と最後尾ビット113が「1」、それ以外の42ビットは「0」として合計44ビットの構成となる。情報ワード120は、初送21ビットデータ121に制御挙動信号の情報が入力され、初送の最後尾に奇数パリティービット122が付加される。また、反転伝送21ビットデータは、初送データ21ビットデータを反転させたものであり、最後尾に偶数パリティービット124が付加されて合計44ビットの構成となる。そして、制御挙動信号は1つの要素につき1ワードを使用して伝送される方式である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
非特許文献2には、図14に示されているようなIEEE C37.94の64kbps伝送に用いられている伝送フォーマットが開示されている。IEEE C37.94の伝送フォーマット、12フレームを1つのスーパーフレーム130とする伝送フォーマットであり、1フレームはフレーム同期ビット140と、データビット150とで構成される。データビット150は、例えばA相電流データ151、B相電流データ152、C相電流データ153、及び電圧・転送データ154等の電流情報や電圧情報に加え、6ビットデータ155aである制御データ155からなる5つの要素の制御挙動信号として用いられる。そして、フレームの最後尾のCRC(Cyclic Redundancy Check)誤り検定符号156が付加されて合計106ビットもしくは107ビットを1フレームとして伝送する方式である。CRC誤り検定符号156は、15ビットデータ156a、「0」からなるビット156b、「1」からなるビット156cからなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成できる。すなわち、本発明の第1の態様の電力系統保護用伝送装置は、制御挙動信号を送信する制御装置と、前記制御挙動信号を受信して電力系統保護設備を制御する電力系統保護装置と、前記制御装置と前記電力系統保護装置との間の通信手段と、を備える電力系統保護用伝送装置であって、前記制御挙動信号が、ON制御信号又はOFF制御信号を含むm個(mは整数)の要素からなり、前記制御装置は、2個(nは整数)のパターンを持つ2ビットの2行2列となるwalsh符号の中から、(m+1)個(mは整数)の任意のwalsh符号に拡散符号を乗算した、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列によりm個の前記制御挙動信号と1個の同期信号を多重化したフレームを送信し、前記整数nと整数mとの関係が、2≧m+1を満たし、前記制御挙動信号の多重化に際し、1~m番目の前記walsh符号に対し、前記制御挙動信号が前記ON制御信号である時には+1又は-1のいずれか一方を乗算し、前記制御挙動信号が前記OFF制御信号である時には、+1又は-1のいずれか他方を乗算することを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明の第2の態様の電力系統保護用伝送装置は、第1の態様の電力系統保護用伝送装置において、1~m番目の前記walsh符号と、m+1番目の前記walsh符号に、前記拡散符号として-1ビットとなるPN符号列の最後尾に1ビットの情報を付加した2ビットの符号ビット列を、それぞれ乗算し、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列を生成することを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明の第3の態様の電力系統保護用伝送装置は、第1または第2の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記制御挙動信号を送信する1つの前記フレームにおいて、(m+1)番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列が前記同期信号として前記フレームの先頭に採用され、1~m番目の前記制御挙動信号に、それぞれ対応する1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列を適用した制御信号が前記同期信号の後尾以降に連結して構成され、前記フレームがサイクリックに伝送されることを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
本発明の第4の態様の電力系統保護用伝送装置は、第3の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記電力系統保護装置が、1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列に対応したm個の相関器を有し、前記相関器が検出した相関値が正の閾値以上の場合であって、前記制御挙動信号の多重化に際し、前記制御挙動信号がON制御信号である時に+1が乗算されているか、または、前記制御挙動信号がOFF制御信号である時に-1が乗算されている場合に、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記ON制御信号を送出し、前記相関値が負の閾値以下の場合であって、前記制御挙動信号の多重化に際し、前記制御挙動信号がOFF制御信号である時に+1が乗算されているか、または、前記制御挙動信号がON制御信号である時に-1が乗算されている場合に、前記電力系統保護設備に対する制御挙動信号として前記OFF制御信号を送出することを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本発明の第5の態様の電力系統保護用伝送装置は、第3の態様の電力系統保護用伝送装置において、前記電力系統保護装置が、前記同期信号に対応した相関器を有し、前記同期信号に対応した相関器が正の閾値以上の相関値を検出すると、前記フレームが受信されたことを示すカウント値のカウントアップを開始し、受信した1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列のそれぞれの相関値を計測開始するタイミングを前記カウント値により決定することを特徴とする。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
また、本発明の第1の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、制御挙動信号の多重化に際し、1~m番目のwalsh符号に対し、制御挙動信号がON制御信号である時には+1又は-1のいずれか一方を乗算し、制御挙動信号が前記OFF制御信号である時には、+1又は-1のいずれか他方を乗算することにより、電力系統保護装置が受信した際に、例えば、制御挙動信号がON制御信号である時に+1を乗算した場合には、ON制御信号である時には受信信号は正となり、制御挙動信号がOFF制御信号である時に-1を乗算した場合には、OFF制御信号である時には受信信号が負となる。なお、乗算する+1と-1との関係が前記とは逆の場合には、受信信号は正と負との関係も前記とは逆となる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明の第2の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、1~m番目の前記walsh符号と、m+1番目の前記walsh符号に、前記拡散符号として-1ビットとなるPN符号列の最後尾に1ビットの情報、例えば-1を付加した2nビットの符号ビット列と、前記それぞれのWalsh符号とで乗算し、(m+1)個のwalsh符号からなる拡散符号系列を生成する。このことで、walsh符号からなる拡散符号系列を用いてフレームを構成することにより、この拡散符号系列はより強い自己相関・相互相関を持つため、walsh符号だけを用いる場合よりも、自己相関を高めると共に、相互相関値を0に漸近することができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の第3の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、制御挙動信号を送信する1つのフレームが、(m+1)番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列が同期信号としてフレームの先頭に採用され、1~m番目の制御挙動信号に、それぞれ対応する1~m番目のwalsh符号からなる拡散符号系列を適用した制御信号が同期信号の後尾以降に連結して構成されることにより、各フレームがサイクリックに伝送される。各フレームのサイクリックな伝送は、例えばTDMAと同様に時間軸の多重とすることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明の第4の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、電力系統保護装置が、1~m番目のwalsh符号からなる拡散符号系列に対応したm個の相関器を有しているので、制御信号の相関値から制御挙動信号がON制御信号であるか、OFF制御信号であるかを判別することができる。例えば、制御挙動信号がON制御信号である時には+1を乗算し、制御挙動信号がOFF制御信号である時には-1を乗算した場合には、相関値が正の閾値以上の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてON制御信号を送出し、相関値が負の閾値以下の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてOFF制御信号を送出する。この逆に、例えば、制御挙動信号がON制御信号である時には-1を乗算し、制御挙動信号がOFF制御信号である時には+1を乗算した場合には、相関値が正の閾値以上の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてOFF制御信号を送出し、相関値が負の閾値以下の場合には、電力系統保護設備に対する制御挙動信号としてON制御信号を送出する。また、ビット誤りの程度に応じて閾値を適切に設定することにより、伝送路の品質が劣化していても、制御挙動信号がON制御信号であるかOFF制御信号であるかを精度よく判別することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の第5の態様の電力系統保護用伝送装置によれば、電力系統保護装置が、(m+1)番目の同期信号に対応した相関器を有しており、相関器が正の閾値以上の相関値を検出すると、フレームが受信されたことが判定できる。同期信号が検出されると、カウント値のカウントアップを開始し、受信した1~m番目の前記walsh符号からなる拡散符号系列のそれぞれの相関値を計測開始するタイミングをカウント値により決定することができる。同期信号さえ検出すれば、1~m番目の各制御信号のタイミングはカウント値から検出することができる。このため、各制御信号のタイミングの検出が簡易であり、常に相関器出力を加算する演算を続ける必要が無く、各制御信号を受信したタイミングにおいてだけ相関値を加算する演算をすることにより、制御挙動信号がON制御信号であるかOFF制御信号であるかを判別することができる。また、ビット誤りの程度に応じて閾値を適切に設定することにより、伝送路の品質が劣化していても、同期信号を精度よく検出することができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る電力系統保護用伝送装置について、図1図12を参照して説明する。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
同期用walsh符号20および制御用walsh符号21a~21mとして、2n行×2n列(nは整数)となる符号行列Xnの中から、制御用walsh符号21a~21mとしてm個、同期用walsh符号20として1個、合計(m+1)個の符号列が選択される。ここで、符号行列Xnの符号の数は、選択される符号列の合計数である(m+1)個よりも大きい必要があるため、整数nと整数mとの関係が、
≧m+1 (1)
を満たす必要がある。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
同期信号31の閾値判定は、許容する誤りビット数により、伝送路の品質が劣化している程度に応じて、決定する。相関器42、46a~46mの加算器54による加算では、誤りなしの場合+1、誤りの場合には-1となるため、1ビット誤ると相関値が差分の2倍だけ減少する。例えば、n=6の場合、すなわち、2=2=64ビットを伝送した場合、最大相関値=64となり、3ビット分誤った場合には、相関値のピークが誤りなく受信した場合と比較し2×3ビット=6ビット分減少し相関値が58となる。そのため、3ビットの誤りを許容する場合には閾値を58に設定する。同様に、eビットの誤りを許容する場合には、閾値は、
(eビットの誤りを許容する閾値)=2-2e (5)
として設定して、同期信号の同期の判定、及び制御信号のON/OFF制御信号の判定を行う。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
図9は、拡散符号が異なる場合の制御信号の相関値の説明図である。縦軸は相関値を、横軸は同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングを0とした位相差を示している。図9は、同期用walsh符号相関器42において参照信号52として乗算される同期用walsh符号参照信号41におけるwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号が、送信装置12の同期用のwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号と異なる場合の、同期信号の相関値である。図9では、同期信号31のデータがすべて相関器に入力されたタイミングにおいても、その他の全てのタイミングにおいて、相関値は0に漸近している。送信装置12においてwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号と、受信装置17においてwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号とが異なる場合には、受信装置17は送信装置12の送信した制御挙動信号の影響を受けない。複数の送信装置12において、それぞれwalsh符号からなる拡散符号系列の生成に用いられたPN符号が異なっている場合には、通信線13において伝送信号の搬送波が干渉したとしても、1つの受信装置17で複数の送信装置12から制御挙動信号を搬送波干渉の影響なく受信することができる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4