(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179493
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20241219BHJP
E06B 3/12 20060101ALI20241219BHJP
E06B 3/58 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/12
E06B3/58 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098375
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】半坂 昌広
(72)【発明者】
【氏名】内田 真裕
【テーマコード(参考)】
2E014
2E016
2E239
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014BA02
2E014BB00
2E016AA02
2E016BA09
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016DA01
2E016DA06
2E016DB02
2E016DC01
2E016DD01
2E239CA02
2E239CA12
2E239CA32
2E239CA46
2E239CA47
2E239CA54
2E239CA64
(57)【要約】
【課題】防火性能を高めることができ、かつ、生産性を向上できる建具を提供すること。
【解決手段】建具1は、複数の面材を備える複層パネルである複層ガラス70と、複層ガラス70の外周縁部を保持する上框30、下框40および左右の縦框とを備える。上框30、下框40および左右の縦框は、上框本体31、下框本体41と、上框本体31、下框本体41に取り付けられる押縁36、46とをそれぞれ備える。少なくとも1つの押縁46には、所定の発泡温度に加熱されると発泡して下框40と複層ガラス70の小口との隙間を塞ぐ押縁側加熱発泡材112が、押縁46の長手方向に沿って配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の面材を備える複層パネルと、前記複層パネルの外周縁部を保持する上框、下框および左右の縦框とを備える建具であって、
前記上框、下框および左右の縦框は、框本体と、前記框本体に取り付けられる押縁とをそれぞれ備え、
少なくとも1つの押縁には、所定の発泡温度に加熱されると発泡して前記框と前記複層パネルの小口との隙間を塞ぐ押縁側加熱発泡材が、前記押縁の長手方向に沿って配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記押縁側加熱発泡材は、前記下框の押縁に配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1に記載の建具において、
前記下框の框本体は、前記複層パネルの室外面に対向する室外側側面を有し、
前記室外側側面には、框本体側加熱発泡材が、前記下框の長手方向に沿って配置されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項3に記載の建具において、
前記框本体側加熱発泡材は、前記押縁側加熱発泡材に比べて低温で発泡する加熱発泡材である
ことを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1に記載の建具において、
前記押縁側加熱発泡材は、前記上框、下框および左右の縦框のそれぞれの押縁に配置されている
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層パネルを枠体で保持した建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の窓やドアに用いられる建具として、複層面材を用いた建具が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1には、複層面材と、複層面材を保持する開口枠とを備えたはめ殺し窓が開示され、複層面材は、防火用ガラスからなる室外側面材と、合わせガラスからなる室内側面材とを備える。
開口枠は、上枠、下枠、左右の縦枠を備え、各枠は、金属製の室外側部位と、樹脂製の押縁とを備えている。各枠は面材保持部を有し、面材保持部は、室外側部位に形成された室外側面材押え片と、押縁に形成された室内側面材押え片と、室外側部位に形成された底板とで形成された溝部である。底板の枠内側見込み面と、室外側面材押え片の内面とには、それぞれ熱膨張性部材が貼り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、金属製の室外側部位の室外側面材押え片の内面と、底板の枠内側見込み面との直交する2つの面に、熱膨張性部材をそれぞれ貼り付ける必要があるため、熱膨張性部材の貼り付け作業に手間が掛かり、建具の生産性を低下させるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、防火性能を高めることができ、かつ、生産性を向上できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、複数の面材を備える複層パネルと、前記複層パネルの外周縁部を保持する上框、下框および左右の縦框とを備える建具であって、前記上框、下框および左右の縦框は、框本体と、前記框本体に取り付けられる押縁とをそれぞれ備え、少なくとも1つの押縁には、所定の発泡温度に加熱されると発泡して前記框と前記複層パネルの小口との隙間を塞ぐ押縁側加熱発泡材が、前記押縁の長手方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、防火性能を高めることができ、かつ、生産性を向上できる建具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】前記建具の下框本体を示す拡大断面図である。
【
図5】(A)は前記下框本体の上面図、(B)は前記下框本体の下面図である。
【
図6】(A)は押縁の側面図、(B)は押縁の上面図である。
【
図7】下框のパネル保持溝内の加熱発泡材が発泡した状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から
図3に示すように、本実施形態の建具1は、建物の開口に取り付けられたドア枠2と、このドア枠2内に配置されたドア本体3とを備える片開きドアである。
【0010】
ドア枠2は、
図1に示すように、上枠21、下枠22、吊元側の縦枠23、戸先側の縦枠24を四角枠状に接合して形成されている。
上枠21は、
図2に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部211と、見込面部211から下方に延出された戸当り部212とを備える。見込面部211の室外側端部には下面に開口する保持溝が形成され、この保持溝には上枠21とドア本体3との間から雨風が浸入することを一次的に防ぐシール材215が取り付けられている。戸当り部212には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材216が取り付けられている。また、見込面部211の下面には、後述する加熱発泡材101が設けられている。
【0011】
下枠22は、
図2に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部221と、見込面部221の室内側端部から連続して形成された見付け片部222とを備える。見付け片部222には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材226が取り付けられている。また、見付け片部222には、後述する加熱発泡材102、103が設けられている。
【0012】
吊元側の縦枠23は、
図3に示すように、見込方向に沿って設けられた見込面部231と、見込面部231から縦枠24側に延出された戸当り部232とを備える。戸当り部232には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材236が取り付けられている。
戸先側の縦枠24は、見込方向に沿って設けられた見込面部241と、見込面部241から縦枠23側に延出された戸当り部242とを備える。戸当り部242には室外側に開口する保持溝が形成され、この保持溝にはドア本体3に当接して気密性を確保するシール材246が取り付けられている。
縦枠23、24の見込面部231、241には、後述する加熱発泡材104~107が設けられている。
【0013】
[ドア本体]
ドア本体3は、
図1に示すように、上框30、下框40、吊元側の縦框50、戸先側の縦框60を枠組みして構成される枠体3Aと、枠体3Aの内部に組み込まれる複層パネルである複層ガラス70とを備えて構成されている。枠体3Aは、上框30および下框40の小口を、縦框50、60に当接させて固定している、いわゆる縦勝ちの枠体である。
吊元側の縦框50は、
図3に示すように、丁番90を介してドア枠2の吊元側の縦枠23に取り付けられる。これにより、ドア本体3はドア枠2に対して室外側に開閉自在に取り付けられている。
戸先側の縦框60の上下方向の中間位置には、
図1および
図3に示すように、レバーハンドル91および錠ケース92が取り付けられ、縦枠24には錠ケース92から出没されるラッチボルトやデッドボルトが係合される錠受93が取り付けられている。
【0014】
[下框]
下框40は、
図2に示すように、アルミ押出形材からなる下框本体41と、アルミ押出形材からなる押縁46とを備える。
下框本体41は、
図4にも示すように、室外側見付面部410と、室内側見付面部420と、内周側見込面部430と、外周側見込面部440とを備え、これらによって区画される中空部450を有する。
【0015】
室外側見付面部410の上端側は、室内側見付面部420よりも上方に延出され、その上端部には、室内側に開口する保持溝を形成する保持溝部411が形成されている。保持溝部411は、断面略L字状に突出された2つの突片を備えて構成されている。保持溝部411の下側には、後述する第1加熱発泡材111が設けられている。
内周側見込面部430は、第1見込面部431と、第2見込面部432と、ビスホール433とを備える。第1見込面部431は、室外側見付面部410から室内側に向かって延出されてビスホール433に連結されている。第2見込面部432は、室内側見付面部420から室外側に向かって延出されてビスホール433に連結されている。このため、ビスホール433は、内周側見込面部430の見込方向の略中央位置に設けられている。また、第1見込面部431は、第2見込面部432に比べて高さ位置が低くされている。
【0016】
第1見込面部431には、第1水抜き穴435が形成され、第2見込面部432には、第2水抜き穴436が形成されている。
図5(A)に示すように、第1水抜き穴435は、下框本体41の長手方向に沿って複数箇所(
図5(A)では4箇所)に形成されている。第2水抜き穴436は、下框本体41の長手方向に沿って複数箇所(
図5(A)では2箇所)に形成されている。
内周側見込面部430には、押縁46が係合される第1係合片437が下框本体41の長手方向全長に渡って形成されている。第1係合片437は、ビスホール433の上面から上方に延出され、さらに室内側に延出されて断面L字状に形成されている。
室内側見付面部420の上端には、室外側に突出されて押縁46が係合される第2係合片421が、下框本体41の長手方向全長に渡って形成されている。
【0017】
外周側見込面部440の室外側端部および室内側端部には、第3水抜き穴445および第4水抜き穴446が形成されている。
図5(B)に示すように、第3水抜き穴445および第4水抜き穴446は、下框本体41の長手方向に延長された長孔とされ、下框本体41の長手方向に沿って複数箇所(
図5(B)では2箇所)に形成されている。外周側見込面部440の下面には、後述する第3加熱発泡材113、114が設けられている。
【0018】
下框本体41の内周側見込面部430上には、セッティングブロック49が載置されている。本実施形態では、セッティングブロック49は、
図5(A)に示すように、下框本体41の長手方向の一箇所、具体的には、下框本体41の長手方向中央位置よりも吊元側の位置に配置されている。セッティングブロック49は、第1係合片437を跨いで第1見込面部431および第2見込面部432に載置されている。
【0019】
[押縁]
押縁46は、アルミ押出形材で構成され、
図2および
図6(A)に示すように、係合片部461と、パネル保持片部462とを備えて断面略L字状に形成されている。
係合片部461およびパネル保持片部462が連続する角部には、第2係合片421が係合される凹溝部463が形成されている。押縁46は、係合片部461の室外側先端が、第1係合片437と第2見込面部432との間の溝に係合し、凹溝部463に第2係合片421が係合することで、下框本体41に取り付けられている。
また、係合片部461は、パネル保持片部462に接合される室内側端部が、室外側先端よりも高い位置となるように傾斜して配置される。このため、係合片部461の表面に直交する直交方向は鉛直上方に対して室外側に傾斜している。この係合片部461の表面には後述する第2加熱発泡材112が設けられている。
図6(B)に示すように、係合片部461には、セッティングブロック49の配置位置に合わせて切欠464が形成されている。
【0020】
下框40では、
図2に示すように、下框本体41および押縁46によって、複層パネルである複層ガラス70を保持するパネル保持溝48が構成されている。すなわち、下框本体41の内周側見込面部430および押縁46の係合片部461によってパネル保持溝48の底面部が構成され、室外側見付面部410において内周側見込面部430との接合部から上方に延出する部分によってパネル保持溝48の室外側側面つまり複層ガラス70の室外面に対向する室外側側面が構成され、押縁46のパネル保持片部462によってパネル保持溝48の室内側側面つまり複層ガラス70の室内面に対向する室内側側面が構成される。
【0021】
[上框]
上框30は、
図2に示すように、上框本体31と、押縁36とを備えている。上框本体31は、下框本体41と同じ断面形状のアルミ押出形材であり、押縁36は、押縁46と同じ断面形状のアルミ押出形材である。すなわち、上框本体31は、下框本体41と同様に、室外側見付面部310、室内側見付面部320、内周側見込面部330、外周側見込面部340を備えている。ただし、水抜き穴が形成されていない点が下框本体41と相違する。
押縁36は、切欠が形成されていない点が押縁46と相違するが、係合片部361、パネル保持片部362を備える等、その他の構成は押縁46と同一であるため説明を省略する。
このため、上框30においても、下框40と同様に、上框本体31および押縁36によって、パネル保持溝38が構成される。すなわち、上框本体31の内周側見込面部330および押縁36の係合片部361によってパネル保持溝38の底面部が構成され、室外側見付面部310において内周側見込面部330との接合部から下方に延出する部分によってパネル保持溝38の室外側側面が構成され、押縁36のパネル保持片部362によってパネル保持溝38の室内側側面が構成される。
【0022】
[縦框]
吊元側の縦框50は、
図3に示すように、縦框本体51と、押縁56とを備えている。
縦框本体51は、上框本体31と同様に中空筒状のアルミ押出形材で構成される。すなわち、縦框本体51は、室外側見付面部510、室内側見付面部520、内周側見込面部530、外周側見込面部540を備えている。押縁56は、係合片部561、パネル保持片部562を備える等、押縁46と同様の部品である。
【0023】
戸先側の縦框60は、縦框本体61と、押縁66とを備えている。
縦框本体61は、縦框本体51と同様の構成であり、室外側見付面部610、室内側見付面部620、内周側見込面部630、外周側見込面部640を備えている。押縁66は、係合片部661、パネル保持片部662を備える等、押縁46と同様の部品である。
【0024】
縦框本体51、61の内周側見込面部530、630には、セッティングブロック59、69が両面テープ等で取り付けられている。このため、押縁56、66には、セッティングブロック59、69が配置可能な切欠が形成されている。
縦框50、60においても、上框30や下框40と同様に、縦框本体51、61および押縁56、66によって、パネル保持溝58、68が構成される。
また、縦框50、60の外周側見込面部540、640には、後述する加熱発泡材121、122、131、132が設けられている。さらに、縦框60の中空部には、錠ケース92の取付高さ位置に合わせて、加熱発泡材133が貼られた補強板65が取り付けられている。
【0025】
[複層ガラス]
ドア本体3の枠体3Aの開口に取り付けられる複層パネルである複層ガラス70は、
図2、
図3に示すように、面材である室外側ガラス71および室内側ガラス72と、室外側ガラス71および室内側ガラス72間に配置されるスペーサー73および封着材74を備える。複層ガラス70の外周縁部は、バックアップ材75およびシーリング材76を介して、各パネル保持溝38、48、58、68内に保持されている。
【0026】
室外側ガラス71は、網入ガラスからなる防火ガラスで構成され、室内側ガラス72は、例えば、Low-Eガラスで構成される。なお、室外側ガラス71を板ガラスで構成し、室内側ガラス72を防火ガラスで構成してもよいし、室外側ガラス71および室内側ガラス72を防火ガラスで構成してもよい。なお、防火ガラスとしては、網入ガラスに限定されず、耐熱強化ガラス等の各種の防火ガラスを用いることができる。
【0027】
スペーサー73は、室外側ガラス71および室内側ガラス72間の間隔を維持するものであり、内部に乾燥剤を充填したアルミ中空材などの公知のものを用いることができる。スペーサー73は、室外側ガラス71および室内側ガラス72の外周面よりも内側に配置されている。複層ガラス70は、室外側ガラス71、室内側ガラス72間においてスペーサー73で区画される中空部に、乾燥空気やアルゴンガスを封入したり、中空部を真空状態にしてユニット化することで、断熱性能を向上している。
【0028】
封着材74は、スペーサー73の外周側において、室外側ガラス71および室内側ガラス72の各外周端部間に形成される空間に充填されている。封着材74は、各ガラス71、72を強固に接着固定でき、中空部の水密性、気密性を確保できる材質であればよく、シリコン系シーリング材などを利用できる。なお、スペーサー73は各ガラス71、72に接着剤で接着されており、この接着剤により1次シールが構成され、封着材74により2次シールが構成される。
なお、枠体3A内に配置される複層パネルとしては、室外側ガラス71、室内側ガラス72の2枚のガラスを備えるものに限定されず、室外側ガラス71、室内側ガラス72に加えて、各ガラス71、72間に配置される1枚以上の中間ガラスを備えるものでもよい。
【0029】
[加熱発泡材]
ドア枠2の上枠21、下枠22、縦枠23、24には、加熱発泡材が両面テープ等によって貼られている。具体的には、
図2に示すように、上枠21の見込面部211の下面には、加熱発泡材101が上枠21の全長に渡って貼られている。下枠22の見付け片部222の室外面には、加熱発泡材102、103が貼られている。加熱発泡材102は、下枠22の戸先側端部から所定寸法範囲(例えば100mm)において、シール材226よりも下側に貼られている。加熱発泡材103は、下枠22の略全長に渡ってシール材226よりも上側に貼られている。
縦枠23の見込面部231には、
図3に示すように、加熱発泡材104、105が貼られている。加熱発泡材104は、見込面部231において室外側端部近くに貼られており、下側の丁番90よりも下方位置に貼られている。加熱発泡材105は、室内側端縁が戸当り部232に当接する位置において縦枠23の全長に貼られている。
縦枠24の見込面部241には、加熱発泡材106、107が貼られている。加熱発泡材106は、見込面部241において室外側端部近くであり、かつ、縦枠24の上端および下端から所定寸法範囲にそれぞれ貼られている。加熱発泡材107は、室内側端縁が戸当り部242に当接する位置において縦枠24の全長に貼られている。
これらの加熱発泡材101~107は、発泡温度が200℃程度の一般的な加熱発泡材であり、例えばエポキシ系加熱発泡材などを利用できる。
【0030】
ドア本体3の下框40、縦框50、60には、加熱発泡材が両面テープ等で貼られている。下框40の室外側見付面部410において、パネル保持溝48の室外側側面には、
図2、
図4および
図5(A)に示すように、第1加熱発泡材111が下框40の全長に渡って貼られている。したがって、第1加熱発泡材111は、パネル保持溝48の室外側側面に配置された框本体側加熱発泡材である。
下框40の押縁46の係合片部461には、
図6に示すように、第2加熱発泡材112が、押縁46の全長に渡って貼られている。なお、係合片部461には切欠464が形成されているため、第2加熱発泡材112は、切欠464を除く係合片部461の全長、つまり押縁46の長手方向の吊元側の一端から戸先側の他端の範囲において、第2加熱発泡材112と干渉する部材、例えば、セッティングブロック49が配置される切欠464部分を除いて貼られている。
下框40の外周側見込面部440の下面には、
図5(B)に示すように、第3加熱発泡材113、114が貼られている。第3加熱発泡材113は、吊元側の端部から戸先側の端部近くまで連続して貼られており、第3加熱発泡材114は、戸先側の端部に貼られている。第3加熱発泡材114は、戸先側の縦框60の下端を塞ぐ図示略の小口キャップを取り付けるためのネジ穴441が塞がれることを防止するために、第3加熱発泡材113に比べて見込方向室内側にずらして貼られている。なお、本実施形態では、吊元側の縦框50の下端を塞ぐ小口キャップは設けていないが、この小口キャップを設ける場合は、吊元側にも第3加熱発泡材114と同様に室内側にずらした加熱発泡材を配置すれば良い。
また、第3加熱発泡材113は、両面テープなどで外周側見込面部440に貼り付けられているが、さらにネジ442によって脱落しないように固定されている。
【0031】
下框40の押縁46に取り付けられる第2加熱発泡材112は、ドア枠2に取り付けられる加熱発泡材101~107と同じく、所定の発泡温度が200℃程度の一般的な加熱発泡材であり、例えばエポキシ系加熱発泡材などである。すなわち、第2加熱発泡材112は、所定の発泡温度に加熱されると発泡して下框40と複層ガラス70の小口(底面)との隙間を塞ぐ押縁側加熱発泡材である。
一方、第1加熱発泡材111および第3加熱発泡材113、114は、第2加熱発泡材112に比べて発泡温度が低い加熱発泡材であり、例えば、150℃程度で発泡する低温膨張タイプのエポキシ系加熱発泡材などである。
このため、建具1の室内側で火災が発生し、ドア本体3が熱反りして下框40の室外側見付面部410の温度の上昇スピードが遅くても、框本体側加熱発泡材である第1加熱発泡材111は低温膨張タイプであるため、発泡タイミングが遅れることを防止できる。このため、
図7に示すように、第1加熱発泡材111が早期に発泡して第1水抜き穴435を塞ぐことができる。
また、押縁46に設けられた第2加熱発泡材112は、第1加熱発泡材111に比べて発泡温度が高い通常タイプであるが、室内火災時には押縁46側の温度は上昇しやすいため、第1加熱発泡材111と同様のタイミングで発泡する。さらに、第2加熱発泡材112は、傾斜された係合片部461の表面に貼られており、複層ガラス70の小口である下面に向かって発泡する。このため、第2加熱発泡材112は、発泡時に複層ガラス70の下面、特に封着材74部分を覆うため、封着材74が加熱溶融して可燃性ガスが発生することを抑制できる。
さらに、第1加熱発泡材111および第2加熱発泡材112の発泡により、パネル保持溝48の空間を埋めて塞ぐことができる。このため、仮に複層ガラス70のバックアップ材75およびシーリング材76が切れて隙間が発生しても、可燃性ガスが複層ガラス70の室内外を流通することを防止でき、火炎の発生も抑制できる。
なお、下框40の下面に貼り付けた第3加熱発泡材113、114も低温膨張タイプであるため、熱反りで下框40の温度があまり上昇しなくても、第3加熱発泡材113、114は早期に発泡し、下框40および下枠22間を塞ぐことができる。
【0032】
吊元側の縦框50には、外周側見込面部540の外周面つまり縦枠23に対向する面に、加熱発泡材121、122が両面テープなどで貼り付けられている。加熱発泡材121は、外周側見込面部540の室外側端部に沿って、かつ、上下2箇所に設けられた丁番90間に貼られている。加熱発泡材122は、丁番90が固定された箇所を除いて縦框50の上下方向の全長に渡って貼り付けられている。
戸先側の縦框60には、外周側見込面部640の外周面つまり縦枠24に対向する面に、加熱発泡材131、132が両面テープなどで貼り付けられている。加熱発泡材131は、外周側見込面部640の室外側端部に沿って、かつ、縦框60の上下方向の全長に渡って貼り付けられている。加熱発泡材132は、外周側見込面部640の室内側端部に沿って、かつ、縦框60の上下方向の全長に渡って貼り付けられている。
戸先側の縦框60の中空部には、レバーハンドル91が設けられた高さ位置に合わせて補強板65が取り付けられており、この補強板65には加熱発泡材133が貼られている。なお、補強板65および加熱発泡材133には、レバーハンドル91の軸が挿通される貫通穴が形成されている。
縦框50、縦框60に貼り付けられた加熱発泡材121、122、131、132、133は、加熱発泡材101~107と同じく、発泡温度が200℃程度の一般的な加熱発泡材であり、例えばエポキシ系加熱発泡材などを利用できる。
【0033】
なお、加熱発泡材が枠や框の全長に渡って貼り付けられるとは、枠や框において加熱発泡材を貼付可能な面において長手方向の全長に渡って貼り付けることを意味する。したがって、縦枠23、24においては、上枠21および下枠22の小口が当接される部分を除いた全長に加熱発泡材を貼り付けることを意味し、縦框50、60においては、上框30や下框40の小口が当接される部分を除いた全長に加熱発泡材を貼り付けることを意味する。また、加熱発泡材が枠や框の全長に渡って貼り付けられるとは、加熱発泡材の発泡時に、枠や框において加熱発泡材を貼付可能な面を覆うことができるように貼り付けられていればよく、枠や框において加熱発泡材を貼付可能な面の長手方向の全長よりも僅かに短い寸法で加熱発泡材を配置してもよい。
【0034】
[実施形態の効果]
実施形態の建具1によれば、下框40の押縁46に押縁側加熱発泡材である第2加熱発泡材112を配置したので、押縁46を下框本体41に取り付ける前に、第2加熱発泡材112を押縁46に貼り付けることができる。このため、下框本体41に第2加熱発泡材112を配置する場合に比べて、第2加熱発泡材112の貼付作業性を向上でき、建具1の生産性も向上できる。したがって、建具1の防火性能を高めることができ、かつ、生産性を向上できる。
第2加熱発泡材112を下框40の押縁46に配置したので、火災時には、複層ガラス70の下面を、発泡した第2加熱発泡材112で覆うことができる。このため、複層ガラス70の下面に露出する封着材74が溶融して可燃性ガスが発生することを抑制でき、可燃性ガスが下框40の第1水抜き穴435や第2水抜き穴436から噴出して発炎することも防止でき、防火性能を向上できる。
【0035】
さらに、下框40のパネル保持溝48の室外側側面に、低温膨張タイプの第1加熱発泡材111を下框40の長手方向に沿って配置したので、ドア本体3の熱反りによって下框40の室外面の表面温度が上昇し難い場合でも、第1加熱発泡材111を火災発生後の早いタイミングで発泡させることができる。このため、パネル保持溝48の底面に形成された第1水抜き穴435も早期に塞ぐことができ、可燃性ガスが第1水抜き穴435から噴出して発炎することも防止できる。
パネル保持溝48に、第1加熱発泡材111および第2加熱発泡材112を配置したので、火災発生時に、パネル保持溝48内を発泡した第1加熱発泡材111および第2加熱発泡材112で充填でき、封着材74を加熱発泡材111、112で覆うことで、可燃性ガスの発生も抑制できる。さらに、シーリング材76およびバックアップ材75が火炎で破損した場合でも、パネル保持溝48内に加熱発泡材111、112が充填されているので、可燃性ガスがパネル保持溝48から室内空間や室外空間に流出して発炎することも防止できる。したがって、下框40の防火性能を高めることができる。
第2加熱発泡材112は、低温膨張タイプの第1加熱発泡材111に比べてコストが低い一般的な加熱発泡材を用いているので、第2加熱発泡材112を低温膨張タイプとした場合に比べて、建具1の製造コストを低減できる。
【0036】
第2加熱発泡材112は、表面直交方向が室外側に傾いた係合片部461の表面に設けられているので、火災時に複層ガラス70の底面に向かって発泡させることができ、複層ガラス70の外周面に設けられた封着材74を第2加熱発泡材112で早期に覆うことができる。このため、封着材74が溶融して可燃性ガスが発生することを抑制でき、防火性能を向上できる。
第2加熱発泡材112は、係合片部461の長手方向の全長において、切欠464を除いて配置されるため、セッティングブロック49が配置されるパネル保持溝48の底面あるいは底面近くに配置できる。このため、第2加熱発泡材112を、複層ガラス70の下面に対向する位置に容易に配置でき、発泡時に複層ガラス70の下面を早期に覆うことができる。
【0037】
[変形例]
本発明の建具は、前記各実施形態のドアに限定されず、引違い窓等の障子が左右方向や上下方向にスライドする窓でもよいし、すべり出し窓等の障子が室内外方向に開閉される窓でもよく、さらにはFIX窓でもよい。なお、FIX窓では、パネルを保持する枠材を上枠、下枠、左右の縦枠と呼ぶこともある。このため、本発明の建具において、パネルを保持する上框、下框、左右の縦框は、FIX窓の上枠、下枠、左右の縦枠を含むものである。
また、建具は、複数の窓を組み合わせた段窓、連窓でもよい。すなわち、本発明は、複層ガラス等の複層パネルを保持する框本体および押縁を有する建具であれば適用できる。また、建具の複層パネルの面材は、ガラスパネルに限らず、樹脂パネルを利用してもよい。
【0038】
前記実施形態では、下框40の押縁46に押縁側加熱発泡材である第2加熱発泡材112を配置していたが、少なくとも4つの押縁36、46、56、66のいずれか1つに押縁側加熱発泡材を配置すればよい。このため、4つの押縁36、46、56、66のいずれか2つの押縁に押縁側加熱発泡材を配置してもよいし、いずれか3つの押縁に押縁側加熱発泡材を配置してもよいし、4つの押縁に押縁側加熱発泡材を配置してもよい。
前記実施形態では、複層ガラス70を室内側から保持する内押縁を用いていたが、室外側から保持する外押縁を用いて押縁側加熱発泡材を配置してもよい。
【0039】
[本発明のまとめ]
本発明の建具は、複数の面材を備える複層パネルと、前記複層パネルの外周縁部を保持する上框、下框および左右の縦框とを備える建具であって、前記上框、下框および左右の縦框は、框本体と、前記框本体に取り付けられる押縁とをそれぞれ備え、少なくとも1つの押縁には、所定の発泡温度に加熱されると発泡して前記框と前記複層パネルの小口との隙間を塞ぐ押縁側加熱発泡材が、前記押縁の長手方向に沿って配置されていることを特徴とする。
本発明の建具によれば、複層パネルを保持する上框、下框、左右の縦框を、それぞれ框本体および押縁を備えて構成し、少なくとも1つの押縁に押縁側加熱発泡材を配置したので、押縁を框本体に取り付ける前に、押縁側加熱発泡材を押縁に貼り付けることができる。このため、框本体に加熱発泡材を配置する場合に比べて、加熱発泡材を押縁に容易に貼り付けることができ、加熱発泡材の貼付作業性を向上でき、建具の生産性も向上できる。したがって、建具の防火性能を高めることができ、かつ、生産性を向上できる。
【0040】
本発明の建具において、前記押縁側加熱発泡材は、前記下框の押縁に配置されていることが好ましい。
本発明の建具によれば、下框の押縁に押縁側加熱発泡材を配置したので、火災時には、下框に面する複層パネルの下面を、発泡した押縁側加熱発泡材で覆うことができ、複層パネルの下面に露出するシール材が溶融して可燃性ガスが発生することを抑制でき、可燃性ガスが下框に形成される水抜き穴から噴出して発炎することも防止でき、防火性能を向上できる。
【0041】
本発明の建具において、前記下框の框本体は、前記複層パネルの室外面に対向する室外側側面を有し、前記室外側側面には、框本体側加熱発泡材が、前記下框の長手方向に沿って配置されていることが好ましい。
本発明の建具によれば、下框の框本体の室外側側面に、框本体側加熱発泡材を配置したので、未発泡状態の框本体側加熱発泡材が、下框のパネル保持溝の底面に形成した水抜き穴を塞ぐことがなく、排水性を向上できる。また、框本体側加熱発泡材は、下框の長手方向に沿って配置されるため、発泡時にはパネル保持溝の底面に形成した複数の水抜き穴を確実に塞ぐことができ、可燃性ガスが水抜き穴から噴出して発炎することも防止でき、防火性能を向上できる。
【0042】
本発明の建具において、前記框本体側加熱発泡材は、前記押縁側加熱発泡材に比べて低温で発泡する加熱発泡材であることが好ましい。
本発明によれば、下框の框本体の室外側側面に、押縁側加熱発泡材に比べて低温で発泡する框本体側加熱発泡材を配置したので、下框の室外面の表面温度が上昇し難い場合でも、框本体側加熱発泡材を早期に発泡させることができる。このため、パネル保持溝の底面に形成された水抜き穴も早期に塞ぐことができ、可燃性ガスが水抜き穴から噴出することも防止できる。
また、下框に配置した框本体側加熱発泡材および押縁側加熱発泡材が発泡することで、パネル保持溝内を充填することができ、パネル保持溝内に露出するシール材等から発生する可燃性ガスがパネル開口内に蔓延することを防止できる。さらに、パネル開口と下框間のシールが火災によって破損した場合に、可燃性ガスが下框とパネルとの間を通って流通することも防止できる。これらによって、下框の防火性能を高めることができる。
その上、框本体側加熱発泡材は、押縁側加熱発泡材よりも低温で発泡するため、コストが高い加熱発泡材を用いているが、押縁側加熱発泡材は、框本体側加熱発泡材に比べて高い温度で発泡すればよく、コストが低い一般的な加熱発泡材を用いることができるので、建具の製造コストを抑制できる。
【0043】
本発明の建具において、前記押縁側加熱発泡材は、前記上框、下框および左右の縦框のそれぞれの押縁に配置されていることが好ましい。
本発明によれば、上框、下框および左右の縦框のそれぞれの押縁に押縁側加熱発泡材を配置しているので、火災時に複層ガラスの外周縁部を保持するパネル保持溝部分を発泡した押縁側加熱発泡材で塞ぐことができ、防火性能を向上できる。
【符号の説明】
【0044】
1…建具、2…ドア枠、3…ドア本体、30…上框、31…上框本体、36…押縁、40…下框、41…下框本体、46…押縁、50…縦框、51…縦框本体、56…押縁、60…縦框、61…縦框本体、66…押縁、70…複層ガラス、71…室外側ガラス、72…室内側ガラス、73…スペーサー、74…封着材、75…バックアップ材、76…シーリング材、111…第1加熱発泡材、112…第2加熱発泡材、461…係合片部、462…パネル保持片部。