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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179496
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】スイッチングモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098383
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100206184
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 敦司
(74)【代理人】
【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司
(72)【発明者】
【氏名】安田 司
(72)【発明者】
【氏名】深井 真志
(57)【要約】
【課題】ケルビン接続された配線を有し且つ互いに並列に接続された複数のスイッチング素子のタイミングのずれが許容限度を超えることを低減する。
【解決手段】本開示のスイッチングモジュール100は、第1電極Ef、第2電極Es、及び制御電極Ecを有する複数のスイッチング素子SW1~SWnと、第1電極配線Wfと、第2電極配線Wsと、制御電極配線Wcと、共通ケルビン配線Wkc及び当該共通ケルビン配線と複数のスイッチング素子の各々の第2電極とを電気的に接続する個別ケルビン配線Wki1~Wkinを含むケルビン配線Wkと、を備える。ケルビン配線所定部分Pkは、複数のスイッチング素子の少なくとも1つに対応する個別ケルビン配線であって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、ケルビン配線所定部分Pkが共通ケルビン配線の少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチング素子が並列接続されたスイッチングモジュールであって、
第1電極、第2電極、及び前記第2電極に対する電位差によって前記第1電極と前記第2電極との間に流れるメイン電流を制御する制御電極を有する複数のスイッチング素子と、
前記複数のスイッチング素子の各々の前記第1電極と電気的に接続された第1電極配線と、
前記複数のスイッチング素子の各々の前記第2電極と電気的に接続された第2電極配線と、
前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御電極と電気的に接続された制御電極配線と、
共通ケルビン配線及び当該共通ケルビン配線と前記複数のスイッチング素子の各々の前記第2電極とを電気的に接続する個別ケルビン配線を含むケルビン配線と、を備え、
前記ケルビン配線の少なくとも一部であるケルビン配線所定部分が、前記複数のスイッチング素子の少なくとも1つに対応する前記個別ケルビン配線であって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、前記ケルビン配線所定部分が前記共通ケルビン配線の少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有する、スイッチングモジュール。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子がn(nは2以上の整数)個のスイッチング素子であり、前記ケルビン配線所定部分が、n個又はn-1個の前記スイッチング素子に対応する前記個別ケルビン配線である、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項3】
前記ケルビン配線所定部分が4mΩ以上の抵抗値を有する、請求項2に記載のスイッチングモジュール。
【請求項4】
前記ケルビン配線所定部分が10mΩ以上の抵抗値を有する、請求項2に記載のスイッチングモジュール。
【請求項5】
前記ケルビン配線所定部分が100mΩ以上の抵抗値を有する、請求項2に記載のスイッチングモジュール。
【請求項6】
前記共通ケルビン配線は、両端を有するように延在し、
前記複数のスイッチング素子の各々に対応する前記個別ケルビン配線が、互いに間隔を有して前記共通ケルビン配線に電気的に接続されており、且つ、
前記ケルビン配線所定部分が、全ての前記スイッチング素子に対応する、前記共通ケルビン配線における、互いに隣接する一対の前記スイッチング素子の各々の前記個別ケルビン配線が接続された一対の箇所の間の部分である、請求項1に記載のスイッチングモジュール。
【請求項7】
前記ケルビン配線所定部分が12mΩ以上の抵抗値を有する、請求項6に記載のスイッチングモジュール。
【請求項8】
前記ケルビン配線所定部分が30mΩ以上の抵抗値を有する、請求項6に記載のスイッチングモジュール。
【請求項9】
前記ケルビン配線所定部分が300mΩ以上の抵抗値を有する、請求項6に記載のスイッチングモジュール。
【請求項10】
前記ケルビン配線所定部分の抵抗値と、当該ケルビン配線所定部分に対応するスイッチング素子の前記制御電極配線上に配置された制御電極抵抗の抵抗値との和が、前記スイッチング素子の推奨ゲート抵抗値である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のスイッチングモジュール。
【請求項11】
前記ケルビン配線所定部分は、1kΩ以下の抵抗値を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のスイッチングモジュール。
【請求項12】
前記制御電極配線は、一端が制御配線端子に接続されるとともに他端が終端である共通制御電極配線と、当該共通制御電極配線と前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御電極とを電気的に接続する個別制御電極配線と、を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のスイッチングモジュール。
【請求項13】
前記制御電極配線は、各々の一端が複数の制御配線端子の各々と接続されるとともに各々の他端が前記複数のスイッチング素子の前記制御電極の各々と電気的に接続された複数の単一制御電極配線を含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のスイッチングモジュール。
【請求項14】
前記スイッチング素子は、IGBT、電界効果トランジスタ又はバイポーラトランジスタである、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のスイッチングモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチング素子にケルビン接続された配線を設け、このケルビン接続された配線とスイッチング素子のゲートとの間にゲート電圧を印加することが知られている。
【0003】
また、特許文献1には、スイッチング素子を含むパワーモジュールにおいて、ケルビン接続された配線を流れる電流とスイッチング素子の主端子間を流れる電流とを分けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-220563公報(特に段落[0116]-[0117]及び図22参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、SiC、GaN等のワイドバンドギャップ半導体がスイッチング素子として採用され、それに伴ってスイッチング素子の動作が高速化している。また、スイッチング素子の電流容量が高電流化している。一方、ワイドバンドギャップ半導体の製造においては、基材の結晶欠陥が歩留まりを低下させ、スイッチング素子を内蔵するチップのサイズの拡大が制限される。そのため、ワイドバンドギャップ半導体を用いたスイッチング素子を高電流容量の用途に適用する場合、低電流容量の用途における1つのスイッチング素子の代わりに、互いに並列に接続された複数のスイッチング素子が用いられる。
【0006】
ところが、互いに並列に接続された複数のスイッチング素子がそれぞれケルビン接続された配線を有する場合、スイッチング素子のターンオン又はターンオフ(以下、スイッチングという)のタイミングのずれが許容限度を超える場合があった。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、ケルビン接続された配線を有し且つ互いに並列に接続された複数のスイッチング素子を備えていて、スイッチング素子のスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超えることを低減することが可能なスイッチングモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<本発明の契機となった知見>
本発明者等は、上述の課題を解決すべく鋭意検討し、その過程において、互いに並列に接続された複数のスイッチング素子がそれぞれケルビン接続された配線を有するスイッチングモジュールを高速動作させると、スイッチング素子及び配線のレイアウト条件によっては、複数のスイッチング素子のメイン電流の一部がケルビン接続された配線に分流し、且つ、その分流に、スイッチングモジュールの配線の寄生インピーダンスに起因するスイッチングノイズが重畳するという現象を発見した。この現象は、本発明者等にとって、想定外の現象であった。本発明者等は、後述するシミュレーション等による原因究明を行い、この現象の発生原因を次のように結論付けた。
【0009】
1つのスイッチング素子の代わりに、互いに並列に接続された複数のスイッチング素子が用いられる場合、当該複数のスイッチング素子のケルビン接続された配線(以下、ケルビンセンス配線という)が、共通のケルビン配線によって連結される場合がある。一方、互いに並列に接続された複数のスイッチング素子にメイン電流を供給する配線には寄生抵抗が存在し、一般的に、当該寄生抵抗に起因して複数のスイッチング素子のソースの間には電位差が発生する。この状態において、共通のケルビン配線が、複数のスイッチング素子のそれぞれのソースを連結すると、複数のスイッチング素子のソースが、互いに、ケルビンセンス配線及び共通ケルビン配線の抵抗値に応じた電位差を有するように、短絡電流が流れる。具体的には、この短絡電流は、ソース電位の高いスイッチング素子のケルビンセンス配線から流出し、ソース電位の低いスイッチング素子のケルビンセンス配線を逆流して、当該スイッチング素子のメイン電流に合流する。その結果、ソース電位の高いスイッチング素子では、流出した短絡電流の分だけメイン電流が減少して、ソース電位が下降し、ソース電位の低いスイッチング素子では、合流した短絡電流の分だけメイン電流が増加して、ソース電位が上昇し、双方のスイッチング素子のソースの電位差の減少と短絡電流の減少とが平衡するように短絡電流の大きさが定まる。この短絡電流が「分流」である。
【0010】
そして、本発明者等は、このメイン電流の「分流」がスイッチングノイズに起因して変動し、それが限度を超えると上記課題が発生するという結論を得た。
【0011】
そして、種々検討した結果、ケルビンセンス配線又は共通のケルビン配線の抵抗値を高くすることによって、複数のスイッチング素子のメイン電流の一部がケルビンセンス配線に分流すること及びその分流に重畳するスイッチングノイズを低減できることを見出した。この場合、ケルビンセンス配線又は共通のケルビン配線の高い抵抗値が、当該分流自体を抑制するとともにダンパーとして機能して、分流の変動を抑制すると推定される。
【0012】
本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係るスイッチングモジュールは、複数のスイッチング素子が並列接続されたスイッチングモジュールであって、第1電極、第2電極、及び前記第2電極に対する電位差によって前記第1電極と前記第2電極との間に流れるメイン電流を制御する制御電極を有する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子の各々の前記第1電極と電気的に接続された第1電極配線と、前記複数のスイッチング素子の各々の前記第2電極と電気的に接続された第2電極配線と、前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御電極と電気的に接続された制御電極配線と、共通ケルビン配線及び当該共通ケルビン配線と前記複数のスイッチング素子の各々の前記第2電極とを電気的に接続する個別ケルビン配線を含むケルビン配線と、を備え、前記ケルビン配線の少なくとも一部であるケルビン配線所定部分が、前記複数のスイッチング素子の少なくとも1つに対応する前記個別ケルビン配線であって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、前記ケルビン配線所定部分が前記共通ケルビン配線の少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、ケルビン接続された配線を有し且つ互いに並列に接続された複数のスイッチング素子を備えていて、スイッチング素子のスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超えることを低減することが可能なスイッチングモジュールを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは、本開示の実施形態に係るスイッチングモジュールの第1構成例の概要を示す回路図である。
図1B図1Bは、本開示の実施形態に係るスイッチングモジュールの第2構成例の概要を示す回路図である。
図2A図2Aは、単一のスイッチング素子を内蔵するディスクリート部品の外観を示す斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aのディスクリート部品の等価回路を示す回路図である。
図3図3は、互いに並列接続された複数のスイッチング素子を内蔵するモジュールの1つのスイッチング素子及びそれに関連する内部配線の等価回路を示す回路図である。
図4図4は、図1Aのスイッチングモジュールの第1構成例を、図2A及び図2Bの単一のスイッチング素子を内蔵するディスクリート部品を用いて具体化したスイッチングモジュールの構成の一例を示す回路図である。
図5図5は、図1Aのスイッチングモジュールの第1構成例を、図3の互いに並列接続された複数のスイッチング素子を内蔵するモジュールを用いて具体化したスイッチングモジュールの構成の一例を示す回路図である。
図6図6は、第1のシミュレーションにおけるスイッチングモジュールの等価回路を示す回路図である。
図7図7は、図6の等価回路を用いたシミュレーションにおける個別ケルビン配線の電流値を示すグラフである。
図8図8は、第2のシミュレーションにおけるスイッチングモジュールの等価回路を示す回路図である。
図9図9は、図8の等価回路を用いたシミュレーションにおける個別ケルビン配線の電流値を示すグラフである。
図10図10は、図1Aのスイッチングモジュールをハイサイドスイッチングモジュールとして用いたフルブリッジ型電流共振回路が実装された状態の外観を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示のある形態(aspect)に係るスイッチングモジュールは、複数のスイッチング素子が並列接続されたスイッチングモジュールであって、第1電極、第2電極、及び前記第2電極に対する電位差によって前記第1電極と前記第2電極との間に流れるメイン電流を制御する制御電極を有する複数のスイッチング素子と、前記複数のスイッチング素子の各々の前記第1電極と電気的に接続された第1電極配線と、前記複数のスイッチング素子の各々の前記第2電極と電気的に接続された第2電極配線と、前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御電極と電気的に接続された制御電極配線と、共通ケルビン配線及び当該共通ケルビン配線と前記複数のスイッチング素子の各々の前記第2電極とを電気的に接続する個別ケルビン配線を含むケルビン配線と、を備え、前記ケルビン配線の少なくとも一部であるケルビン配線所定部分が、前記複数のスイッチング素子の少なくとも1つに対応する前記個別ケルビン配線であって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、前記ケルビン配線所定部分が前記共通ケルビン配線の少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有する。ここで、「共通ケルビン配線」は、ケルビン配線端子を含む概念である。
【0016】
この構成によれば、ケルビン配線所定部分が、複数のスイッチング素子の少なくとも1つに対応する個別ケルビン配線であって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、ケルビン配線所定部分が共通ケルビン配線の少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有するので、ケルビン配線が寄生抵抗のみを有する場合に較べて、スイッチング素子のオン期間において、メイン電流の一部が、個別ケルビン配線及び共通ケルビン配線に分流するのが低減され、且つ、その分流(以下、単に「分流」という場合がある)に重畳する各種配線の寄生インピーダンスに起因するスイッチングノイズ(以下、単に「重畳スイッチングノイズ」という場合がある)が低減される。その結果、スイッチング素子のスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超えることを低減することができる。
【0017】
前記複数のスイッチング素子がn(nは2以上の整数)個のスイッチング素子であり、前記ケルビン配線所定部分が、n個又はn-1個の前記スイッチング素子に対応する前記個別ケルビン配線であってもよい。
【0018】
この構成によれば、ケルビン配線所定部分が、n個のスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線である場合、全てのスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線が、1mΩ以上の抵抗値を有するので、明確に「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。また、ケルビン配線所定部分が、n-1個のスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線である場合、残りの1つのスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線がケルビン配線所定部分であるか否かは、「分流」の電流値に大きな影響を及ぼさないので、ケルビン配線所定部分がn個のスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線である場合とほぼ同様に、明確に「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0019】
前記ケルビン配線所定部分が4mΩ以上の抵抗値を有していてもよい。この構成によれば、効果的に、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0020】
前記ケルビン配線所定部分が10mΩ以上の抵抗値を有していてもよい。この構成によれば、優れて、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0021】
前記ケルビン配線所定部分が100mΩ以上の抵抗値を有していてもよい。この構成によれば、顕著に、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0022】
前記共通ケルビン配線は、両端を有するように延在し、前記複数のスイッチング素子の各々に対応する前記個別ケルビン配線が、互いに間隔を有して前記共通ケルビン配線に電気的に接続されており、且つ、前記ケルビン配線所定部分が、全ての前記スイッチング素子に対応する、前記共通ケルビン配線における、互いに隣接する一対の前記スイッチング素子の各々の前記個別ケルビン配線が接続された一対の箇所の間の部分であってもよい。ここで、「共通ケルビン配線における、互いに隣接する一対の前記スイッチング素子の各々の個別ケルビン配線が接続された一対の箇所の間の部分」を、以下、「共通ケルビン配線特定部分」という。
【0023】
この構成によれば、ケルビン配線所定部分が、全てのスイッチング素子に対応する共通ケルビン配線特定部分であって、3mΩ以上の抵抗値を有するので、明確に「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0024】
前記ケルビン配線所定部分が12mΩ以上の抵抗値を有していてもよい。
【0025】
この構成によれば、優れて、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0026】
前記ケルビン配線所定部分が30mΩ以上の抵抗値を有していてもよい。
【0027】
この構成によれば、極めて優れて、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0028】
前記ケルビン配線所定部分が300mΩ以上の抵抗値を有する、請求項6に記載のスイッチングモジュール。この構成によれば、極めて顕著に「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減される。
【0029】
前記ケルビン配線所定部分の抵抗値と、当該ケルビン配線所定部分に対応するスイッチング素子の前記制御電極配線上に配置される制御電極抵抗の抵抗値との和が、当該スイッチング素子の推奨ゲート抵抗値であってもよい。
【0030】
この構成によれば、ケルビン配線所定部分に対応するスイッチング素子の実質的な制御電極抵抗の抵抗値が当該スイッチング素子の推奨ゲート抵抗値に等しくなるので、当該スイッチング素子を好適に動作させることができる。
【0031】
前記ケルビン配線所定部分は、1kΩ以下の抵抗値を有してもよい。
【0032】
この構成によれば、ケルビン配線所定部分の抵抗値として、1kΩ以下の適宜な抵抗値を選択することによって、当該ケルビン配線所定部分に対応するスイッチング素子の実質的な制御電極抵抗の抵抗値を、当該スイッチング素子の推奨ゲート抵抗値に等しくできるので、当該スイッチング素子を好適に動作させることができる。
【0033】
前記制御電極配線は、一端が制御配線端子に接続されるとともに他端が終端である共通制御電極配線と、当該共通制御電極配線と前記複数のスイッチング素子の各々の前記制御電極とを電気的に接続する個別制御電極配線と、を含んでもよい。
【0034】
この構成によれば、複数のスイッチング素子を共通の制御電極駆動信号によって、1つのスイッチング素子のように動作させることができる。
【0035】
前記制御電極配線は、各々の一端が複数の制御配線端子の各々と接続されるとともに各々の他端が前記複数のスイッチング素子の前記制御電極の各々と電気的に接続された複数の単一制御電極配線を含んでもよい。
【0036】
この構成によれば、複数の制御配線端子に互いに異なる複数の制御電極駆動信号を入力することによって、複数のスイッチング素子を互いに異なるように動作させることができる。
【0037】
前記スイッチング素子は、IGBT、電界効果トランジスタ又はバイポーラトランジスタであってもよい。
【0038】
この構成によれば、スイッチングモジュールを容易に構成することができる。
【0039】
以下、本開示の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0040】
(実施形態)
最初に、本開示の実施形態に係るスイッチングモジュール100の概要を説明する。
【0041】
[概要]
スイッチングモジュール100は、第1構成例と第2構成例とを含む。
【0042】
{第1構成例の構成}
図1Aは、本開示の実施形態に係るスイッチングモジュール100の第1構成例の概要を示す回路図である。第1構成例は、複数のスイッチング素子SW1~SWnを1つのスイッチング素子のように動作させるように構成されている。第1構成例は、複数のスイッチング素子SW1~SWnが、所定の同一のオンタイミングでターンオンし且つ所定の同一のオフタイミングでターンオフするように設計されていて、オンタイミングからのずれ及びオフタイミングからのずれには、それぞれ、許容限度が定められている。第1構成例は、例えば、高電流容量のスイッチングモジュールに適用される。
【0043】
図1Aを参照すると、第1構成例のスイッチングモジュール100は、複数のスイッチング素子SW1~SWnと、第1電極配線Wfと、制御電極配線Wcと、第2電極配線Wsと、ケルビン配線Wkと、を備える。複数のスイッチング素子SW1~SWnは、第1電極配線Wfと第2電極配線Wsとの間に互いに並列に接続されている。以下、この構成を詳しく説明する。
【0044】
<スイッチング素子SW1~SWn>
各々のスイッチング素子SW1~SWnは、第1電極Ef、第2電極Es、及び第2電極Esに対する電位差によって第1電極Efと第2電極Esとの間に流れるメイン電流を制御する制御電極Ecを有する。すなわち、各々のスイッチング素子SW1~SWnは、トランジスタである。各々のスイッチング素子SW1~SWnとして、例えば、FET(電界効果トランジスタ)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、バイポーラトランジスタ、又はその他のトランジスタを用いることができる。FETとして、MOSFET、MESFET、JFET等が例示される。FETでは、第1電極Ef、第2電極Es、及び制御電極Ecは、それぞれ、ドレイン、ソース、及びゲートである。IGBTでは、第1電極Ef、第2電極Es、及び制御電極Ecは、それぞれ、コレクタ、エミッタ、及びゲートである。バイポーラトランジスタでは、第1電極Ef、第2電極Es、及び制御電極Ecは、それぞれ、コレクタ、エミッタ、及びベースである。
【0045】
<第1電極配線Wf>
第1電極配線Wfは、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々の第1電極Efと電気的に接続されている。第1電極配線Wfと複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々の第1電極Efとの接続態様は特に限定されない。例えば、第1電極配線Wfは、共通第1電極配線Wfcと個別第1電極配線Wfi1~Wfinとを含む。第1電極配線Wfは、一端が第1配線端子Tfに形成されるとともに他端が終端である。第1配線端子Tfは、電源の高電位側端子に接続される。共通第1電極配線Wfcは、個別第1電極配線Wfi1~Wfinによって複数のスイッチング素子SW1~SWnの第1電極Efに接続されている。第1電極配線Wfの材料は、導電性の材料であればよい。第1電極配線Wfの材料として、例えば、銅が用いられる。
【0046】
<第2電極配線Ws>
第2電極配線Wsは、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々の第2電極Esと電気的に接続されている。具体的には、第2電極配線Wsは、共通第2電極配線Wscと個別第2電極配線Wsi1~Wsinとを含む。共通第2電極配線Wscは、一端が第2配線端子Tsに形成されるとともに他端が終端である。第2配線端子Tsは、電源の負端子に接続される。共通第2電極配線Wscは、個別第2電極配線Wsi1~Wsinによって複数のスイッチング素子SW1~SWnの第2電極Esに接続されている。複数のスイッチング素子SW1~SWnにそれぞれ対応する複数の個別第2電極配線Wsi1~Wsinの共通第2電極配線Wscへの接続の態様は、特に限定されない。例えば、複数のスイッチング素子SW1~SWnに対応する複数の個別第2電極配線Wsi1~Wsinは、互いに間隔を有して共通第2電極配線Wscに接続されている。第2電極配線Wsの材料は、導電性の材料であればよい。第2電極配線Wsの材料として、例えば、銅が用いられる。
【0047】
<制御電極配線Wc>
制御電極配線Wcは、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々の制御電極Ecと電気的に接続されている。この第1構成例では、制御電極配線Wcは、共通制御電極配線Wccと個別制御電極配線Wci1~Wcinとを含む。共通制御電極配線Wccは、一端が制御配線端子Tcに形成されるとともに他端が終端である。制御配線端子Tcは、制御電極駆動回路の高電位側端子に接続される。共通制御電極配線Wccは、個別制御電極配線Wci1~Wcinによって複数のスイッチング素子SW1~SWnの制御電極Ecに接続されている。制御配線端子Tcに最も近く共通制御電極配線Wccに接続された個別制御電極配線Wci1と制御配線端子Tcとの間の共通制御電極配線Wcc上にゲート抵抗Rgが配置されている。第2電極配線Wsの材料は、導電性の材料であればよい。
【0048】
<ケルビン配線Wk>
ケルビン配線Wkは、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々のケルビンセンス配線を含むようにして当該複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々の第2電極Esと電気的に接続されている。具体的には、ケルビン配線Wkは、共通ケルビン配線Wkcと個別ケルビン配線Wki1~Wkinとを含む。共通ケルビン配線Wkcは、一端がケルビン配線端子Tkに形成されるとともに他端が終端である。ケルビン配線端子Tkは、制御電極駆動回路の低電位側端子に接続される。共通ケルビン配線Wkcは、個別ケルビン配線Wki1~Wkinによって複数のスイッチング素子SW1~SWnの第2電極Esに接続されている。個別ケルビン配線Wki1~Wkinは、それぞれ、対応するスイッチング素子SW1~SWnの各々のケルビンセンス配線を含む。個別ケルビン配線Wki1~Wkinのケルビンセンス配線以外の部分は、ケルビンセンス配線の端子Ksと共通ケルビン配線Wkcとを接続している。
【0049】
複数のスイッチング素子SW1~SWnにそれぞれ対応する複数の個別ケルビン配線Wki1~Wkinの共通ケルビン配線Wkcへの接続の態様は、特に限定されない。例えば、複数のスイッチング素子SW1~SWnに対応する複数の個別ケルビン配線Wki1~Wkinは、互いに間隔を有して共通ケルビン配線Wkcに接続されている。また、例えば、共通ケルビン配線Wkcの全体がケルビン配線端子Tkに形成され、個別ケルビン配線Wki1~Wkinがケルビン配線端子Tkに接続されていてもよい。
【0050】
ケルビン配線Wkの後述するケルビン配線所定部分Pk以外の部分の材料は、導電性の材料であれば良く、当該材料として、例えば、銅が用いられる。ケルビン配線所定部分Pkについては、以下に詳しく説明する。
【0051】
<技術的特徴>
共通ケルビン配線Wkc及び全ての個別ケルビン配線Wki1~Wkinで構成されたケルビン配線Wkの少なくとも一部であるケルビン配線所定部分Pkが、複数のスイッチング素子SW1~SWnの少なくとも1つに対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinであって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、ケルビン配線所定部分Pkが共通ケルビン配線Wkcの少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有する。この技術的特徴の技術的意義は、以下の通りである。
【0052】
≪技術的意義≫
上記技術的特徴の技術的意義を「ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の下限」、「ケルビン配線所定部分Pkの位置」、及び「ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の上限」に分けて説明する。
【0053】
{ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の下限}
まず、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の下限について説明する。
【0054】
本発明の課題は、互いに並列に接続された複数のスイッチング素子がそれぞれケルビン接続された配線を有する場合に、スイッチング素子のスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超える場合があるということである。この発生原因は、複数のスイッチング素子のメイン電流の一部がケルビンセンス配線に分流し、且つ、その分流が各種配線の寄生インピーダンスに起因するスイッチングノイズによって変動することである。
【0055】
そこで、この対策として、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値を当該ケルビン配線所定部分Pkの寄生抵抗の抵抗値に較べて高くすると、メイン電流のケルビン配線Wkへの分流が低減され、且つ、ケルビン配線所定部分Pkの高い抵抗がダンパーとして機能してスイッチングノイズが低減される。従って、この対策においては、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値は大きい程好ましいが、ケルビン配線Wkへのメイン電流の分流及び当該分流に重畳するスイッチングノイズを完全に無くすことはできないことが明らかである。一方、ケルビンセンス配線にも寄生抵抗が存在し、この寄生抵抗も、ケルビンセンス配線へのメイン電流の分流(「分流」)及び当該分流に重畳するスイッチングノイズ(「重畳スイッチングノイズ」)を抑制することは明らかである。しかしながら、スイッチング素子の動作の高速化及びスイッチング素子の電流容量の高電流化に伴って、当該寄生抵抗では、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」を十分に抑制できなくなり、上記課題が発生したのである。従って、ケルビン配線Wkの少なくとも一部の抵抗値をケルビン配線の寄生抵抗より高くすれば、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」を、低減できることが明らかである。従って、本発明においては、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値が当該ケルビン配線所定部分Pkの寄生抵抗の抵抗値より大きければよい。
【0056】
しかし、一般のケルビンセンス配線の寄生抵抗を明確に特定することはできないので、本発明者等は、本発明を従来技術と明確に区別するために、後述する2つのシミュレーションを実施した。第1のシミュレーションでは、個別ケルビン配線Wki1~Wkinにケルビン配線所定部分Pkが配置された。第2のシミュレーションでは、共通ケルビン配線Wkcの共通ケルビン配線特定部分(共通ケルビン配線Wkcにおける、互いに隣接する一対のスイッチング素子SW1~SWnの各々の個別ケルビン配線Wki1~Wkinが接続された一対の箇所の間の部分)にケルビン配線所定部分Pkが配置された。
【0057】
第1のシミュレーションの結果、以下のことが確認された。
【0058】
ケルビンセンス配線を含む個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が大きくなるに連れて、単調に個別ケルビン配線Wki1~Wkinの電流の変動が小さくなる。個別ケルビン配線Wki1~Wkinの電流の変動が小さくなることは、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」が低減されることを意味する。
【0059】
個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が当該個別ケルビン配線Wki1~Wkinの寄生抵抗(以下、単に「寄生抵抗」という場合がある)の抵抗値(100μΩと想定される)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、それなりの程度である。一方、個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の10倍(1mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合のそれらに較べて、明確に低減される。但し、このシミュレーションでは、ケルビン配線所定部分Pkが全てのスイッチング素子SW1~SWnの個別ケルビン配線Wki1~Wkinに設けられることが前提であるので、例えば、ケルビン配線所定部分Pkが複数のスイッチング素子SW1~SWnのうちの1つのスイッチング素子の個別ケルビン配線のみに設けられる場合には、その効果は減少する。しかし、それによって、ケルビン配線Wk全体の抵抗値が高くなることは確かであるので、それによって、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減されることは確かである。
【0060】
個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の40倍(4mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、効果的に低減される。個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の100倍(10mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、優れて低減される。個別ケルビン配線Wki1~Wkinの抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の1000倍(100mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、顕著に低減される。
【0061】
第2のシミュレーションの結果、以下のことが確認された。
【0062】
共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩと想定される)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」はそれなりの大きさである。一方、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の10倍(3mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合のそれらに較べて、明確に小さい。但し、このシミュレーションでは、ケルビン配線所定部分Pkが全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する共通ケルビン配線特定部分に設けられることが前提であるので、例えば、ケルビン配線所定部分Pkが複数のスイッチング素子SW1~SWnのうちの1対のスイッチング素子SW1~SWnの共通ケルビン配線特定部分のみに設けられる場合には、その効果は減少する。しかし、それによって、ケルビン配線Wk全体の抵抗値が高くなることは確かであるので、それによって、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減されることは確かである。
【0063】
共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の40倍(12mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、優れて低減されると推定される。共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の100倍(30mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、極めて優れて低減されると推定される。共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の1000倍(300mΩ)である場合、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」は、極めて顕著に低減される。
【0064】
一方、本発明者等が知る限り、ケルビンセンス配線及び共通ケルビン配線特定部分の寄生抵抗は、それぞれ、100μΩ及び300μΩ程度である。ここで、特に注意すべきことは、ケルビン接続された配線と制御電極配線との間には制御電極駆動信号の電圧が印加されるので、一般的には、ケルビン接続された配線の抵抗値はなるべく低いことが好ましいと考えられていたということである。
【0065】
そこで、本発明者等は、ケルビン配線所定部分Pkが複数のスイッチング素子SW1~SWnの少なくとも1つに対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinである場合、1mΩの抵抗値を本発明におけるケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の範囲の下限として特定し、ケルビン配線所定部分Pkが共通ケルビン配線Wkcの少なくとも一部である場合、3mΩの抵抗値を本発明におけるケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の範囲の下限として特定した。これにより、本発明と従来技術とが明確に区別される。また、これにより、本発明は、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」を、ケルビン配線に寄生抵抗のみが存在する場合に較べて、低減できる。また、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の範囲の下限を、上記の抵抗値のように大きくすると、上記のように、より優れて「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」を低減できる。
【0066】
{ケルビン配線所定部分Pkの位置}
ケルビン配線所定部分Pkの位置は特に限定されない。但し、「分流」は、少なくとも1個のスイッチング素子SW1~SWnの個別ケルビン配線Wki1~Wkinから共通ケルビン配線Wkcに流入し、他の少なくとも1個のスイッチング素子SW1~SWnの個別ケルビン配線Wki1~Wkinから流出するので、確実に「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」を低減する観点からは、ケルビン配線所定部分Pkが、全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinに配置されるか、又は、全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する共通ケルビン配線特定部分に配置されることが好ましい。
【0067】
なお、ケルビン配線所定部分Pkが、複数のスイッチング素子SW1~SWnの1個を除いた残りの全てのスイッチング素子の個別ケルビン配線Wki1~Wkinに配置される場合、除かれた1個のスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinにケルビン配線所定部分Pkが配置されるか否かは、「分流」の電流値に大きな影響を及ぼさない。従って、ケルビン配線所定部分Pkが、複数のスイッチング素子SW1~SWnの1個を除いた残りの全てのスイッチング素子の個別ケルビン配線Wki1~Wkinに配置される形態においても、ケルビン配線所定部分Pkが全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinに配置される形態とほぼ同様に、「分流」及び「スイッチングノイズの重畳」が低減されるので、この形態もこの好ましい形態に含まれる。
【0068】
また、ケルビン配線所定部分Pkが全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する共通ケルビン配線特定部分に配置される形態として、文字通り、共通ケルビン配線Wkcにおける、全てのスイッチング素子SW1~SWnの互いに隣接する一対のスイッチング素子の各々の個別ケルビン配線Wki1~Wkinが接続された一対の箇所の間の部分をケルビン配線所定部分Pkとする形態の他、共通ケルビン配線Wkcの全体をケルビン配線所定部分Pkとする形態、及び、共通ケルビン配線Wkcと全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinとの接続箇所及びそれらの周囲をケルビン配線所定部分Pkとする形態が、例示される。
【0069】
{ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の上限}
次に、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の上限について説明する。
【0070】
メイン電流のケルビン配線Wkへの分流及び当該分流への重畳スイッチングノイズの低減という観点からは、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値は大きい程好ましい。従って、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の理論的な上限は無限大である。換言すると、理論的には、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値に上限は存在しない。
【0071】
一方、スイッチング素子SW1~SWnの制御という観点から、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値とゲート抵抗Rgの抵抗値との和が、当該スイッチング素子SW1~SWnの推奨ゲート抵抗値に等しいことが必要とされる。しかしながら、スイッチング素子SW1~SWnの推奨ゲート抵抗値は、スイッチング素子SW1~SWnの仕様(性能)に応じて規定されるので、将来、推奨ゲート抵抗値の存在しないスイッチング素子SW1~SWnが開発される可能性がある。従って、推奨ゲート抵抗値を、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の上限を制約する要因として解釈することは不合理である。しかし、現時点の実情を考慮して、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値に現実的な上限を設定してもよい。一般的に、推奨ゲート抵抗値は、数十Ω~数百Ωである。また、推奨ゲート抵抗値については、スイッチング素子の将来の技術進歩を考慮する必要がある。その上で、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値の現実的な上限を、例えば、1kΩとしてもよい。
【0072】
以上の説明をまとめると、理論的には、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値には、上限が存在しない。しかし、現実的には、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値は、1kΩ以下であることが好ましい。
【0073】
≪ケルビン配線所定部分Pkの高抵抗化の態様≫
ケルビン配線所定部分Pkが抵抗素子であってもよい。このようにすると、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値を簡単に高くすることができる。
【0074】
ケルビン配線所定部分Pkを、電気抵抗率の高い材料で構成してもよい。このようにすると、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値を容易に高くすることができる。電気抵抗率の高い材料として、ニクロムが例示される。ニクロムは、線膨張係数が、銅と同程度であって比較的小さいので、スイッチングモジュール100の材料として好ましい。ちなみに、ニクロムの電気抵抗率は、1.10×10―6[Ω・m]であり、銅の電気抵抗率は1.68×10―8[Ω・m]である。
【0075】
ケルビン配線所定部分Pkの断面積を小さくしてもよい。このようにすると、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値を、その材質を変えることなく、高くすることができる。
【0076】
{第1構成例の動作}
次に、以上のように構成されたスイッチングモジュール100の第1構成例の動作を、図1Aを用いて説明する。
【0077】
図1Aを参照すると、制御電極駆動回路から「オン」を指示する制御電極駆動信号が制御配線端子Tcに入力されると、複数のスイッチング素子SW1~SWnがターンオンする。すると、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々において、第1電極Efと第2電極Esとの間にメイン電流が流れる。この過程において、メイン電流の一部が、相対的にソース電位の高いスイッチング素子SW1~SWnの個別ケルビン配線Wki1~Wkinに流入して共通ケルビン配線Wkcへと分流し、この分流が相対的にソース電位の低いスイッチング素子SW1~SWnの個別ケルビン配線Wki1~Wkinを逆流して、当該スイッチング素子SW1~SWnに対応する個別第2電極配線Wsi1~Wsinにおいてメイン電流に合流する。そして、この分流に、スイッチングモジュール100の配線に起因するスイッチングノイズが重畳する。しかし、スイッチングモジュール100では、ケルビン配線Wkにケルビン配線所定部分Pkが、配置されていて、このケルビン配線所定部分Pkが、複数のスイッチング素子SW1~SWnの少なくとも1つに対応する個別ケルビン配線Wki1~Wsinであって1mΩ以上の抵抗値を有するか、又は、このケルビン配線所定部分Pkが、共通ケルビン配線Wkcの少なくとも一部であって3mΩ以上の抵抗値を有するので、この抵抗値によって、上記分流及び当該分流に重畳するスイッチングノイズが低減される。それにより、複数のスイッチング素子SW1~SWnのターンオン又はターンオフのタイミングのずれが許容限度を超えることが低減される。
{第2構成例}
第2構成例では、以下の構成及び動作が第1構成例と異なり、その他の構成及び動作は第1構成例と同じである。従って、この相違点のみを説明する。
【0078】
図1Bは、本開示の実施形態に係るスイッチングモジュール100の第2構成例の概要を示す回路図である。
【0079】
図1Bを参照すると、スイッチングモジュール100の第2構成例では、制御電極配線Wcが、複数の単一制御電極配線Wc1~Wcnを含んでいる。複数の単一制御電極配線Wc1~Wcnでは、各々の一端が複数の制御配線端子Tc1~Tcnの各々と接続されている。複数の制御配線端子Tc1~Tcnには、互いに異なる複数の制御電極駆動信号が入力される。これにより、複数のスイッチング素子SW1~SWnが互いに異なるように動作する。第2構成例では、複数のスイッチング素子SW1~SWnが、所定の互いに異なるオンタイミングでターンオンし且つ所定の互いに異なるオフタイミングでターンオフするように設計されていて、オンタイミングからのずれ及びオフタイミングからのずれには、それぞれ、許容限度が定められている。スイッチングモジュール100の第2構成例は、そのような複数のスイッチング素子SW1~SWnが互いに異なるように動作するスイッチングモジュールに適用することができる。
【0080】
[具体的実施形態]
次に、本開示の実施形態に係るスイッチングモジュール100の具体的な実施形態を説明する。以下では、スイッチングモジュール100の第1構成例のみの具体的な実施形態を説明し、スイッチングモジュール100の第2構成例の具体的な実施形態は第1構成例のそれと制御電極配線Wcの構成が異なるだけであるので、その説明を省略する。
【0081】
{主要部品}
まず、スイッチングモジュール100を構成する主要部品について説明する。図2Aは、単一のスイッチング素子SWを内蔵するディスクリート部品10の外観を示す斜視図であり、図2Bは、図2Aのディスクリート部品10の等価回路を示す回路図である。ディスクリート部品10の構造は周知であるので、簡単に説明する。
【0082】
図2A及び図2Bを参照すると、ディスクリート部品10は4端子パワー半導体であって、樹脂封止体5とリード端子1~4とを備える。樹脂封止体5は、単一のスイッチング素子SWを内蔵するチップChと、当該チップChのスイッチング素子SWをリード端子1~4に電気的に接続する配線と、当該チップCh及び当該配線を封止する樹脂体とで構成されている。単一のスイッチング素子SWは、例えば、NMOSFETであり、ドレインD、ソースS、ゲートG、及びソースセンス配線SSを含む。ドレインD、ソースS、ゲートG、及びソースセンス配線SSは、それぞれ、リード端子1、2、3、及び4に接続されている。ドレインD、ソースS、ゲートG、及びソースセンス配線SSは、それぞれ、第1電極Ef、第2電極Es、制御電極Ec、及びケルビンセンス配線KSに相当する。なお、ここでは、NMOSFETのドレインとソースとの間にダイオードDiが、その順方向がNMOSFETの順方向と逆になるように接続されているが、これはボディダイオード(寄生ダイオード)である。
【0083】
図3は、互いに並列接続された複数のスイッチング素子を内蔵するモジュール20の1つのスイッチング素子SW及びそれに関連する内部配線11~13、KSの等価回路を示す回路図である。モジュール20は、4端子パワー半導体であって、複数のチップChを含む。図3には、そのうちの1つのチップChとこれに関連する部材とが示されている。図3を参照すると、チップChのスイッチング素子SWは、例えば、NMOSFETであり、ドレインD(Ef)、ソース(Es)、及びゲートG(Ec)が、それぞれ、内部配線11、12、及び13を介して、端子(ドレイン端子)1、端子(ソース端子)2、及び端子(ゲート端子)3に接続されている。また、ソースセンス配線(ケルビンセンス配線KS)がソースセンス端子4に接続されている。内部配線11,12,13及びケルビンセンス配線KSは、寄生抵抗R1~R4及び寄生インダクタンスL1~L4を有する。
【0084】
図4は、図1Aのスイッチングモジュール100の第1構成例を、図2A及び図2Bの単一のスイッチング素子SWを内蔵するディスクリート部品10を用いて具体化したスイッチングモジュール100Aの構成の一例を示す回路図である。図4には、本発明の要点を理解し易くするために、図1Aのスイッチングモジュール100の第1構成例の技術的特徴に関連する構成のみが示されている。
【0085】
図4を参照すると、スイッチングモジュール100Aは、基板上に複数のディスクリート部品10が実装されて構成される。例えば、基板上には、パターニングされた第1電極配線Wf(図4では省略)、第2電極配線Ws、制御電極配線Wc(図4では省略)、及びケルビン配線Wkが設けられ、これらの配線Wf,Ws,Wc,Wkに適宜接続されたパッドに複数のディスクリート部品10がそれぞれ装着される。これにより、基本的に、複数のディスクリート部品10の端子(リード端子)1~4が、それぞれ、対応する配線Wf,Ws,Wc、Wkに接続される。但し、ケルビン配線Wkにおいては、全てのディスクリート部品10の端子4が、それぞれ、ケルビン配線所定部分Pkによって、共通ケルビン配線Wkcに接続される。従って、各々のスイッチング素子SW1~SWnに対応するケルビン配線所定部分Pk及びケルビンセンス配線KSが、個別ケルビン配線Wki1~Wkinを構成する。また、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々に対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinは、互いに間隔を有して共通ケルビン配線Wkcに接続される。なお、複数のディスクリート部品10の端子2(複数のスイッチング素子SW1~SWnのソース)は、それぞれ、個別第2電極配線Wsi1~Wsinによって、共通第2電極配線Wscに接続される。さらに、基板上には、第1配線端子Tf、第2配線端子Ts、制御配線端子Tc、及びケルビン配線端子Tkが適宜設けられる。なお、第1配線端子Tf及び制御配線端子Tcは、図4では省略されている。
【0086】
ケルビン配線所定部分Pkは、例えば、抵抗素子からなるチップで構成される。但し、ケルビン配線所定部分Pkは、ニクロムのように電気抵抗率の高い材料で構成されてもよく、あるいは、その断面積が共通第2電極配線Wscの断面積よりも小さく構成されてもよい。
【0087】
次に、以上のように構成されたスイッチングモジュール100Aの動作を説明する。
【0088】
図2A及び図4を参照すると、制御電極駆動回路から「オン」を指示する制御電極駆動信号が制御配線端子Tcに入力されると、複数のスイッチング素子SW1~SWnがターンオンし、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々において、ドレインD(Ef)とソースS(Es)との間にメイン電流Imが流れる。ここで、スイッチング素子SW1~スイッチング素子SWnの各々のソース電位は、この順序で低くなっていると仮定する。この過程において、メイン電流Imの一部が、相対的にソース電位の高いスイッチング素子SW1~SWr(rは2以上且つn―1以下の整数)の個別ケルビン配線Wki1~Wkirに流入して共通ケルビン配線Wkcへと分流し、この分流が相対的にソース電位の低いスイッチング素子SWr+1~SWnの個別ケルビン配線Wkir+1~Wkinを逆流して、当該スイッチング素子SWr+1~SWnに対応する個別第2電極配線Wsir+1~Wsinにおいてメイン電流に合流する。そして、この分流に、スイッチングモジュール100の配線に起因するスイッチングノイズが重畳する。
【0089】
しかし、ケルビン配線所定部分Pkが、1mΩ以上の抵抗値を有するので、この抵抗値によって、当該分流Ik及び当該分流Ikに重畳するスイッチングノイズが低減され、それにより、複数のスイッチング素子SW1~SWnのスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超えることが低減される。しかも、全ての個別ケルビン配線Wki1~Wkinにケルビン配線所定部分Pkが設けられているので、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」が効率的に低減される。また、ディスクリート部品10のケルビン配線の端子4と共通ケルビン配線Wkcとが、ケルビン配線所定部分Pkによって接続されているので、汎用のディスクリート部品10を使用することができる。なお、この場合において、ディスクリート部品10内のケルビンセンス配線KS(ソースセンス配線SS)及び端子4の一方又は双方をケルビン配線所定部分Pkとしてもよい。この場合、ディスクリート部品10が専用部品となる。
【0090】
図5は、図1Aのスイッチングモジュール100の第1構成例を、図3の互いに並列接続された複数のスイッチング素子SWを内蔵するモジュール20を用いて具体化したスイッチングモジュール100Bの構成の一例を示す回路図である。図5には、本発明の要点を理解し易くするために、図1Aのスイッチングモジュール100の第1構成例の技術的特徴に関連する構成のみが示されている。
【0091】
図5を参照すると、スイッチングモジュール100Bは、ベース部材40(図10参照)にモジュール20が実装されて構成される。例えば、ベースには、第1電極配線Wf(図5では省略)、第2電極配線Ws、制御電極配線Wc(図5では省略)、及びケルビン配線Wkが設けられ、これらの配線Wf,Ws,Wc,Wkに適宜接続されるようにモジュール20が装着される。これにより、基本的に、モジュール20の端子1~4が、それぞれ、対応する配線Wf,Ws,Wc、Wkに接続される。但し、ケルビン配線Wkにおいては、モジュール20の各々のチップCh(図3参照)の端子4が、所定の配線によって、共通ケルビン配線Wkcに接続される。従って、各々のスイッチング素子SW1~SWnに対応する所定の配線及びケルビンセンス配線KSが、個別ケルビン配線Wki1~Wkinを構成する。また、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々に対応する個別ケルビン配線Wki1~Wkinは、互いに間隔を有して共通ケルビン配線Wkcに接続される。そして、共通ケルビン配線Wkcにおける、全てのスイッチング素子SW1~SWnの互いに隣接する一対のスイッチング素子の各々の個別ケルビン配線Wki1~Wkinが接続された一対の箇所の間の部分(共通ケルビン配線特定部分)にケルビン配線所定部分Pkが設けられる。
【0092】
なお、複数のスイッチング素子SW1~SWnのソース端子2は、それぞれ、個別第2電極配線Wsi1~Wsinによって、共通第2電極配線Wscに接続される。さらに、ベース部材40には、第1配線端子Tf、第2配線端子Ts、制御配線端子Tc、及びケルビン配線端子Tkが適宜設けられる。なお、第1配線端子Tf及び制御配線端子Tcは、図5では省略されている。
【0093】
次に、以上のように構成されたスイッチングモジュール100Bの動作を説明する。
【0094】
図3及び図5を参照すると、制御電極駆動回路から「オン」を指示する制御電極駆動信号が制御配線端子Tcに入力されると、複数のスイッチング素子SW1~SWnがオンし、複数のスイッチング素子SW1~SWnの各々において、ドレインD(Ef)とソースS(Es)との間にメイン電流Imが流れる。ここで、スイッチング素子SW1~スイッチング素子SWnの各々のソース電位は、この順序で低くなっていると仮定する。メイン電流Imの一部が、相対的にソース電位の高いスイッチング素子SW1~SWr(rは2以上且つn―1以下の整数)の個別ケルビン配線Wki1~Wkirに流入して共通ケルビン配線Wkcへと分流し、この分流が相対的にソース電位の低いスイッチング素子SWr+1~SWnの個別ケルビン配線Wkir+1~Wkinを逆流して、当該スイッチング素子SWr+1~SWnに対応する個別第2電極配線Wsir+1~Wsinにおいてメイン電流に合流する。そして、この分流Ikに、スイッチングモジュール100Bの配線に起因するスイッチングノイズが重畳する。
【0095】
しかし、ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値が、3mΩ以上の抵抗値を有するので、この高い抵抗値によって、当該分流Ik及び当該分流Ikに重畳するスイッチングノイズが低減され、それにより、複数のスイッチング素子SW1~SWnのスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超えることが低減される。しかも、共通ケルビン配線Wkcにおいて全てのスイッチング素子SW1~SWnに対応する共通ケルビン配線特定部分にケルビン配線所定部分Pkが設けられているので、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」が効率的に低減される。また、ケルビン配線所定部分Pkが、モジュール20の外部に設けられているので、汎用のモジュール20を使用することができる。なお、この場合において、モジュール20の内部に当該ケルビン配線所定部分Pkを有するケルビン配線Wkを設けてもよい。この場合、モジュール20が専用部品となる。
【0096】
[シミュレーション]
ケルビン配線所定部分Pkの配置及び抵抗値について、第1及び第2のシミュレーションが行われた。
【0097】
<第1のシミュレーション>
第1のシミュレーションでは、スイッチングモジュール100Cにおいて、全てのスイッチング素子に対応する個別ケルビン配線にケルビン配線所定部分Pkが配置され、当該ケルビン配線所定部分Pkの抵抗値が変化させられた。
【0098】
図6は、第1のシミュレーションにおけるスイッチングモジュール100Cの等価回路を示す回路図である。このシミュレーションは、ハイサイドの一対のスイッチングモジュールの一方が本発明のスイッチングモジュール100Cで構成されたフルブリッジ型電流共振回路について実施された。このフルブリッジ型電流共振回路について、電源電圧が直流500Vに設定され、負荷コイルのインダクタンスが800nHに設定され、負荷コンデンサの容量が300nFに設定された。
【0099】
図6を参照すると、スイッチングモジュール100Cは、NMOSFETで構成された第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3を備える。スイッチングモジュール100Cにおいて第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3にそれぞれ対応するドレイン配線(第1電極配線)、ソース配線(第2電極配線)、ゲート配線(制御電極配線)、及びケルビン配線について、互いに同じ寄生インピーダンスが設定された。従って、このスイッチングモジュール100Cでは、第1スイッチング素子UH1、第2スイッチング素子UH2、第3スイッチング素子UH3の順序で各々のソース電位が低くなる(第3スイッチング素子UH3のソース電位が最も低い)と想定される。
【0100】
このシミュレーションでは、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3の各々の個別ケルビン配線の点線の四角形で囲まれた抵抗R8、R10、及びR12の抵抗値Rtestが、パラメータとして、寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)、その10倍(1mΩ)、その20倍(2mΩ)、その40倍(4mΩ)、その100倍(10mΩ)、その200倍(20mΩ)、その500倍(50mΩ)、及びその1000倍(100mΩ)に変えられて、シミュレーションが行われた。個別ケルビン配線の電流については、ソースから共通ケルビン配線に向かう方向の電流を正の電流として扱う。
【0101】
このように設定されたフルブリッジ型電流共振回路について、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3のターンオンの前後の期間における動作がシミュレーションされ、個別ケルビン配線の電流値が取得された。
【0102】
《シミュレーションの結果》
図7図6の等価回路を用いたシミュレーションにおける個別ケルビン配線の電流値を示すグラフである。なお、図7は、実際に得られた電流の波形画像をトレースして作成されたので、それらの波形は厳密に正確ではない。図7において、横軸はシミュレーションの経過時間(単位μS)を表し、縦軸は電流(単位A)を表す。また、実線、破線、及び点線は、それぞれ、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流、第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流、及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流を表す。
【0103】
図7において、実線の曲線の参照符号ISS1a~ISS1hは、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流を示し、破線の曲線の参照符号ISS2a~ISS2hは、第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流を示し、点線の曲線の参照符号ISS3a~ISS3hは、第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流を示す。そして、これらの参照符号における添え字のa~hは、該当する添え字に対応する曲線が、個別ケルビン配線の抵抗値が、それぞれ、寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)、その10倍(1mΩ)、その20倍(2mΩ)、その40倍(4mΩ)、その100倍(10mΩ)、その200倍(20mΩ)、その500倍(50mΩ)、及びその1000倍(100mΩ)である場合の電流を表していることを示す。また、横軸のtoは、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3のターンオン(以下、単にターンオンという場合がある)の時刻を示す。
【0104】
{「分流」の発生}
図7を参照すると、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1hは、ターンオンのほぼ直後から正方向に流れる。第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流ISS2a~ISS2hは、ターンオン後暫くすると正方向に流れる。第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流ISS2a~ISS2hの大きさは、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1hに較べて小さい。第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3a~ISS3hは、ターンオンのほぼ直後から逆方向に流れる。また、概ね、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1hの電流値と第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流ISS2a~ISS2hの電流値との和の絶対値が、第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3a~ISS3hの電流値の絶対値と等しい。これらの結果から、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1h及び第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流ISS2a~ISS2hが、共通ケルビン配線に流入し、第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線から流出すると推察される。また、第1スイッチング素子UH1、第2スイッチング素子UH2、第3スイッチング素子UH3の降順で各々のソース電位が低くなっている(第3スイッチング素子UH3のソース電位が最も低い)と推察される。これらのことから、「分流」が発生したと推定された。
【0105】
{スイッチングノイズの重畳}
さらに、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1h及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3a~ISS3hが、ターンオンを契機として変動しならが増大し、やがて徐々に減少している。この結果から、特に、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1h及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3a~ISS3hに、配線寄生インピーダンスに起因するスイッチングノイズが重畳し、それが当該第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1h及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3a~ISS3hを大きく変動させると推定される。そして、この第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a~ISS1h及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3a~ISS3hの大きな変動に種々の悪条件が重なった場合に、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3のスイッチングのタイミングのずれが許容限度を超えることが引き起こされると推定される。
【0106】
{個別ケルビン配線の抵抗値増大の効果}
次に、個別ケルビン配線の抵抗値に着目すると、個別ケルビン配線の抵抗値が、大きくなるに連れて、単調に個別ケルビン配線の電流の変動が小さくなる。
【0107】
個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1a及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3aの変動はそれなりの大きさである。一方、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の10倍(1mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1b及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3bの変動は、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合のそれらに較べて、明確に小さい。
【0108】
個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の40倍(4mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1d及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3dの変動は、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合のそれらに較べて、効果的に低減されている。
【0109】
個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の100倍(10mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1e及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3eの変動は、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合のそれらに較べて、優れて低減されている。
【0110】
個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の1000倍(100mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1h及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3hの変動は、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合のそれらに較べて、顕著に低減されている。
【0111】
{まとめ}
第1に、全てのスイッチング素子UH1~UH3に対応する個別ケルビン配線にケルビン配線所定部分Pkを設けることは、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」の低減対策として有効である。第2に、本シミュレーションでは、スイッチング素子の数が3個であったが、スイッチング素子の数が4個以上であっても同様の効果が得られると推察される。第3に、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の10倍(1mΩ)以上であれば、個別ケルビン配線の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合と明確に区別可能な程度に、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」が低減される。
【0112】
<第2のシミュレーション>
第2のシミュレーションでは、スイッチングモジュール100Dにおいて、全てのスイッチング素子UH1~UH3に対応する、共通ケルビン配線における、互いに隣接する一対のスイッチング素子の各々の個別ケルビン配線が接続された一対の箇所の間の部分(共通ケルビン配線特定部分)がケルビン配線所定部分Pkとされ、当該共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が変化させられた。
【0113】
図8は、第2のシミュレーションにおけるスイッチングモジュール100Dの等価回路を示す回路図である。このシミュレーションは、第1のシミュレーションと同様に構成及び設定されたフルブリッジ型電流共振回路について実施された。
【0114】
図8を参照すると、このスイッチングモジュール100Dでは、共通ケルビン配線の点線の四角形で囲まれた抵抗(共通ケルビン配線特定部分の抵抗)R9及びR11がケルビン配線所定部分Pkとして設定された。そして、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3の個別ケルビン配線の抵抗R8、R10、及びR12が寄生抵抗の抵抗値である100μΩに設定された。これ以外の点は、図6のスイッチングモジュール100Cと同じである。
【0115】
このスイッチングモジュール100Dについて、抵抗値Rtestが、パラメータとして、寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)、その333倍(100mΩ)、その1000倍(300mΩ)に変えられて、シミュレーションが行われ、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3のターンオンの前後の期間における個別ケルビン配線の電流値が取得された。
【0116】
《シミュレーションの結果》
図9は、図8の等価回路を用いたシミュレーションにおける個別ケルビン配線の電流値を示すグラフである。なお、図9は、実際に得られた電流の波形画像をトレースして作成されたので、それらの波形は厳密に正確ではない。図9において、横軸はシミュレーションの経過時間(単位μS)を表し、縦軸は電流(単位A)を表す。また、実線、破線、及び点線は、それぞれ、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流、第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流、及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流を表す。図9において、実線の曲線の参照符号ISS1i~ISS1kは、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流を示し、破線の曲線の参照符号ISS2i~ISS2kは、第2スイッチング素子UH2の個別ケルビン配線の電流を示し、点線の曲線の参照符号ISS3i~ISS3kは、第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流を示す。そして、これらの参照符号における添え字のi~kは、該当する添え字に対応する曲線が、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が、それぞれ、寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)、その333倍(100mΩ)、その1000倍(300mΩ)である場合の電流を表していることを示す。また、横軸のtoは、ターンオンの時刻を示す。
【0117】
図9を参照すると、一見して理解されるように、第1乃至第3スイッチング素子UH1~UH3の個別ケルビン配線の電流に関する「分流」の発生、「スイッチングノイズの重畳」、及び個別ケルビン配線の抵抗値の増大に対する個別ケルビン配線の電流の変動の減少の態様は、図7と同様である。従って、それらの説明を省略する。
【0118】
{共通ケルビン配線特定部分の抵抗値増大の効果}
共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合、図7と同様に、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1i及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3iの変動はそれなりの大きさである。
【0119】
一方、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の333倍(100mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1j及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3jの変動は、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合のそれらに較べて、顕著に低減されている。
【0120】
共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の1000倍(300mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1k及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3kの変動は、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合のそれらに較べて、極めて顕著に低減されている。
【0121】
なお、図9に示されていないが、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の10倍(3mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3の変動は、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合のそれらに較べて、明確に小さいことが確認された。
【0122】
また、上記の結果から、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の40倍(12mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3の変動は、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合のそれらに較べて、優れて低減されることが推定される。
【0123】
また、上記の結果から、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の100倍(30mΩ)である場合、第1スイッチング素子UH1の個別ケルビン配線の電流ISS1及び第3スイッチング素子UH3の個別ケルビン配線の電流ISS3の変動は、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(300μΩ)である場合のそれらに較べて、極めて優れて低減されることが推定される。
【0124】
{まとめ}
第1に、全てのスイッチング素子UH1~UH3に対応する共通ケルビン配線特定部分にケルビン配線所定部分Pkを設けることは、全てのスイッチング素子UH1~UH3に対応する個別ケルビン配線にケルビン配線所定部分Pkを設けることに較べて、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」の低減対策として、より有効である。第2に、本シミュレーションでは、スイッチング素子の数が3個であったが、スイッチング素子の数が4個以上であっても同様の効果が得られると推察される。第3に、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値の10倍(3mΩ)以上であれば、共通ケルビン配線特定部分の抵抗値が寄生抵抗の抵抗値(100μΩ)である場合と明確に区別可能な程度に、「分流」及び「重畳スイッチングノイズ」が低減される。
【0125】
[スイッチングモジュールの実装状態]
図10は、図1Aのスイッチングモジュール100をハイサイドスイッチングモジュール100として用いたフルブリッジ型電流共振回路1000が実装された状態の外観を描いた図である。
【0126】
図10を参照すると、フルブリッジ型電流共振回路1000は、図1Aのスイッチングモジュール100がハイサイドスイッチングモジュール100として用いられる。ローサイドスイッチングモジュール300は、本発明が適用されていないスイッチングモジュールで構成される。フルブリッジ型電流共振回路1000は、ベース部材40を備える。このベース部材40にスイッチング素子SW1~SW3のチップChを含むモジュール20が埋め込まれている。このモジュール20の上面に、スイッチング素子SW1~SW3に対応する3つのパッドが形成されている。これらのパッドに、3スイッチング素子SW1~SW3に対応する個別第2電極配線Wsi1~Wsi3が接続され、これらの個別第2電極配線Wsi1~Wsi3が共通第2電極配線Wscの先端に接続され、共通第2電極配線Wscの基端にSHDL端子(第2配線端子Ts)が接続されている。個別第2電極配線Wsi1~Wsi3、共通第2電極配線Wsc、及びSHDL端子は、一体化されていて、単一の部材で構成されている。ベース部材40上には、上記3つのパッドに沿うように、共通ケルビン配線Wkcが設けられていて、上記3つのパッドと共通ケルビン配線Wkcとが個別ケルビン配線Wki1~Wki3によって接続されている。これらの個別ケルビン配線Wki1~Wki3nうちの第1スイッチング素子SW1に対応する個別ケルビン配線Wki1がケルビン配線所定部分Pkとして構成されている。ケルビン配線所定部分Pkが抵抗素子のチップで構成される場合には、当該チップがこの部分に配置される。共通ケルビン配線Wkcは基端がSSH端子(ケルビン配線端子Tk)に接続されている。第1電極配線Wfは、スイッチング素子SW1~SW3のチップの下方に位置するように設けられていて、DH端子(第1配線端子Tf)に接続されている。また、ベース部材40上に、制御電極配線Wcが上記3つのパッドに接続されるように設けられている。制御電極配線Wcの基端はGH端子(制御配線端子Tc)に接続されている。なお、参照符号SL、GL、及びSSLは、それぞれ、ローサイドのスイッチングモジュール300のソース配線端子(第2配線端子)、ゲート配線端子(制御配線端子)、及びソースセンス配線端子(ケルビン配線端子)である。このように、図1Aのスイッチングモジュール100を実装した場合に、ケルビン配線所定部分Pkを容易に高抵抗化することができる。
【0127】
(その他の実施形態)
上記第2構成例を、図4又は図5に示すように、ディスクリート部品10又はモジュール20を用いて具体化したスイッチングモジュールに構成してもよい。
【0128】
また、図4のディスクリート部品10を具体化したスイッチングモジュール100Aにおいて、ケルビン配線所定部分Pkを、図5に示すように共通ケルビン配線Wkcに設けてもよい。
【0129】
また、図5のモジュール20を用いて具体化したスイッチングモジュール100Bにおいて、ケルビン配線所定部分Pkを、図4に示すように個別ケルビン配線Wki1~Wkinに設けてもよい。
【0130】
また、図4のスイッチングモジュール100Aにおいて、ケルビン配線所定部分Pkを、複数のスイッチング素子SW1~SWnの1個を除いた残りの全てのスイッチング素子の個別ケルビン配線Wki1~Wkinに配置してもよい。
【0131】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のスイッチングモジュールは、ケルビン接続された配線を有し且つ互いに並列に接続された複数のスイッチング素子を備えていて、スイッチング素子のターンオン又はターンオフのタイミングのずれが許容限度を超えることを低減することが可能なスイッチングモジュールとして有用である。
【符号の説明】
【0133】
1~4 端子
5 樹脂封止体
10 ディスクリート部品
11~13 内部配線
20 モジュール
40 ベース部材
100,100A,100B,100C,100D スイッチングモジュール
1000 フルブリッジ型電流共振回路
Ec 制御電極
Ef 第1電極
Es 第2電極
KS ケルビンセンス配線
Pk ケルビン配線所定部分
SW,SW1~SWn スイッチング素子
Tc 制御配線端子
Tf 第1配線端子
Tk ケルビン配線端子
Ts 第2配線端子
Wc 制御電極配線
Wf 第1配線端子
Wfc 共通第1配線端子
Wfi1~Wfin 個別第1配線端子
Wk ケルビン配線
Wkc 共通ケルビン配線
Wki1~Wkin 個別ケルビン配線
Ws 第2電極配線
Wsc 共通第2電極配線
Wsi1~Wsin 個別第2電極配線
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10