(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001795
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】リアクトル、分割片、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20231227BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20231227BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20231227BHJP
H01F 27/34 20060101ALI20231227BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F27/24 J
H01F27/24 K
H01F27/255
H01F27/34 160
H02M3/155 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100680
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】名田 將人
(72)【発明者】
【氏名】草別 和嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
【テーマコード(参考)】
5E058
5H730
【Fターム(参考)】
5E058BB19
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS13
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730FG01
5H730ZZ17
(57)【要約】
【課題】鉄損の増大及び漏れ磁束の増大を抑制できる磁性コアを備えるリアクトルを提供する。
【解決手段】巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる、リアクトル。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、
前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、
前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、
前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、
前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる、
リアクトル。
【請求項2】
前記第一比透磁率が、前記第二比透磁率よりも高い、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記第一コア片は、基部と、前記基部から延びる三つの脚部とを備えるE字形状であり、
前記基部が前記第一部分であり、
前記三つの脚部のそれぞれが前記第二部分である、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記磁性コアは、前記第一コア片と、前記第一コア片と同じ構成を備える第二コア片とからなる、請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
リアクトルに備わる磁性コアの一部を構成する分割片であって、
樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
第一部分と、
前記第一部分の延伸方向に直交する方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、
前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる、
分割片。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項7】
請求項6に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、分割片、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車などに備わるコンバータの構成部品にリアクトルがある。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されるリアクトルは、コイルと磁性コアとを備える。コイルは、巻線を巻回してなる巻回部を備える。巻回部の数は一つでも良いし複数でも良い。
【0003】
磁性コアは複数の分割片を組み合わせることで構成されている。分割片は例えば、軟磁性粉末を加圧成形してなる圧粉成形体、又は軟磁性粉末が樹脂中に分散した複合材料の成形体である。複合材料の成形体は、軟磁性粉末と樹脂との混合比率を変化させることで、所望の磁気特性を達成し易い。複合材料の成形体は、高周波でのリアクトルの使用における鉄損を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-135334号公報
【特許文献2】特開2016-201509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、リアクトルは高周波・大電流において使用される傾向にある。圧粉成形体によって構成される分割片では、高周波化に伴い鉄損が増大する恐れがある。複合材料によって構成される分割片では、鉄損は小さいものの、漏れ磁束が大きくなり易い。従って、鉄損の増大及び漏れ磁束の増大が抑制された分割片を備えるリアクトルが求められている。そのようなリアクトルは、特に高周波・大電流において優れた磁気特性を有する。
【0006】
本開示は、鉄損の増大及び漏れ磁束の増大を抑制できる磁性コアを備えるリアクトルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、鉄損の増大及び漏れ磁束の増大を抑制できる分割片を提供することを目的の一つとする。更に、本開示は、磁気特性に優れるリアクトルを備えるコンバータ、及び電力変換装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、
前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、
前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、
前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、
前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる。
【0008】
本開示の分割片は、
リアクトルに備わる磁性コアの一部を構成する分割片であって、
樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
第一部分と、
前記第一部分の延伸方向に直交する方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、
前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる。
【0009】
本開示のコンバーターは、本開示のリアクトルを備える。
【0010】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバーターを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示のリアクトル及び分割片では、鉄損の増大及び漏れ磁束の増大が抑制される。また、本開示のコンバーター及び電力変換装置は、安定して動作する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に記載されるリアクトルの概略上面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるリアクトルに備わる第一部分のX-Y断面の写真である。
【
図3】
図3は、実施形態2に記載されるリアクトルの概略上面図である。
【
図4】
図4は、実施形態3に記載されるリアクトルの概略上面図である。
【
図5】
図5は、実施形態4に記載されるリアクトルの概略上面図である。
【
図6】
図6は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図7】
図7は、コンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルであって、
前記磁性コアは、第一コア片を含む複数の分割片を有し、
前記第一コア片は、樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
前記巻回部の軸線方向に直交する方向に延び、前記巻回部の端面に臨む位置に配置されている第一部分と、
前記第一部分から前記軸線方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、
前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる。
【0015】
複合材料によって構成された第一コア片では、圧粉成形体によって構成されたコア片に比べて、鉄損が増大し難い。なぜなら、複合材料中では樹脂が軟磁性粉末の各粒子の間に入り込み、各粒子が接触し難いため、鉄損の増大が抑制される。上記構成における第一コア片では、第一部分と第二部分とで磁束の通り易さに異方性がある。具体的には、第一部分の延伸方向と第二部分の延伸方向とが互いに直交しており、かつ第一部分の延伸方向に沿った第一比透磁率と、第二部分の延伸方向に沿った第二比透磁率のいずれか一方が他方よりも高い。この比透磁率が高い箇所が、第一コア片における漏れ磁束の増大を抑制する。このような第一コア片を備えるリアクトルは、特に高周波・大電流において優れた磁気特性を発揮する。
【0016】
第一コア片の内部では軟磁性粉末の各粒子間に樹脂が介在しているため、第一コア片が磁気ギャップを有するとみなせる。従って、この第一コア片を含む磁性コアは磁気飽和し難い。磁気飽和し難い第一コア片を備えるリアクトルは、特に高周波・大電流において安定して動作する。
【0017】
<2>上記<1>に記載されるリアクトルにおいて、
前記第一比透磁率が、前記第二比透磁率よりも高くても良い。
【0018】
第一比透磁率を有する第一部分は、コイルの巻回部の外部に配置される。第一部分における漏れ磁束は、リアクトルの近傍に配置される他の電子機器に悪影響を及ぼす恐れがある。第一比透磁率が高いと、第一部分における漏れ磁束が低減され、他の電子機器への悪影響が低減される。
【0019】
<3>上記<1>又は<2>に記載されるリアクトルにおいて、
前記第一コア片は、基部と、前記基部から延びる三つの脚部とを備えるE字形状であり、
前記基部が前記第一部分であり、
前記三つの脚部のそれぞれが前記第二部分であっても良い。
【0020】
上記構成では、磁性コアの分割数が少なくて済む。E字形状のコア片に組み合わされるコア片は、E字形状のコア片、T字形状のコア片、又はI字形状のコア片である。この場合、磁性コアの分割数は2である。
【0021】
<4>上記<1>から<3>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記磁性コアは、前記第一コア片と、前記第一コア片と同じ構成を備える第二コア片とからなっていても良い。
【0022】
『同じ構成』とは、形状、寸法、材質、及び組織の全てが実質的に同じであることを意味する。上記<4>の構成では、第一コア片と第二コア片は、同一の複合材料及び同一の金型によって作製される。従って、磁性コアの生産性が向上し、磁性コアを備えるリアクトルの生産性も向上する。
【0023】
同じ構成を備える第一コア片と第二コア片は例えば、E字形状のコア片である。その他、第一コア片と第二コア片は例えば、F字形状のコア片であっても良い。
【0024】
<5>実施形態に係る分割片は、
リアクトルに備わる磁性コアの一部を構成する分割片であって、
樹脂と、前記樹脂中に分散した軟磁性粉末とを含む複合材料によって構成されており、
第一部分と、
前記第一部分の延伸方向に直交する方向に延びる第二部分と、を備え、
前記第一部分と前記第二部分とはつなぎ目なく、一連に形成されており、
前記第一部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第一部分の第一比透磁率と、前記第二部分の延伸方向に沿った磁束に対する前記第二部分の第二比透磁率とが異なる。
【0025】
複合材料によって構成された分割片では、圧粉成形体によって構成された分割片に比べて、鉄損が増大し難い。なぜなら、軟磁性粉末の各粒子間に樹脂が入り込み易いからである。上記構成における分割片では、第一部分と第二部分のいずれか一方が他方よりも高い比透磁率を有する。この比透磁率が高い箇所が、分割片における漏れ磁束の増大を抑制する。
【0026】
<6>実施形態に係るコンバータは、上記<1>から<5>のいずれかに記載されるリアクトルを備える。
【0027】
上記コンバータは、優れた磁気特性を備え、磁気飽和し難い実施形態のリアクトルを備える。従って、上記コンバータは、安定して優れた性能を発揮する。
【0028】
<7>実施形態に係る電力変換装置は、上記<6>に記載されるコンバータを備える。
【0029】
上記電力変換装置は、安定して優れた性能を発揮するコンバータを備える。従って、上記電力変換装置は、安定して優れた性能を発揮する。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0031】
<実施形態1>
図1に示される本例のリアクトル1は、コイル2と磁性コア3とを組み合わせて構成される。このリアクトル1の特徴の一つは、磁性コア3が複合材料の成形体によって構成される第一コア片5を備え、その第一コア片5において部分的に比透磁率が変化していることである。以下、リアクトル1に備わる各構成を詳細に説明する。
【0032】
≪コイル≫
コイル2は、少なくとも一つの巻回部21,22を有する。本例のコイル2は、巻回部21と巻回部22とを備える。巻回部21,22は巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線は、公知の巻線を利用できる。本形態の巻線は、絶縁被覆を有する導体線からなる被覆平角線である。導体線は例えば、銅製の平角線で構成されている。絶縁被覆は例えば、エナメルからなる。本例の巻回部21,22は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。
【0033】
巻回部21,22の形状は矩形筒状である。即ち、本例の巻回部21,22の端面形状は矩形枠状である。本例の巻回部21,22の角部は丸められている。巻回部21,22の形状が矩形筒状であることで、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部21と設置対象との接触面積が大きくなり易い。そのため、リアクトル1は、巻回部21,22を介して設置対象に放熱し易い。また、設置対象に対する巻回部21,22の設置状態が安定し易い。
【0034】
巻回部21,22の図示しない端部は、巻回部21,22の外周側へ引き伸ばされている。巻回部21,22の端部では絶縁被覆が剥がされて導体線が露出している。露出した導体線には、図示しない端子部材が接続される。本例の巻回部21と巻回部22はそれぞれ独立した電源につながっている。本例とは異なり、巻回部21と巻回部22は一つの電源につながっていても良い。
【0035】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、ミドルコア部30と、第一エンドコア部31と、第二エンドコア部32と、第一サイドコア部33と、第二サイドコア部34とを備える。本例の磁性コア3は、二つの環形状がつながった『8』の字形状である。
図1では、各コア部の境界が二点鎖線で示されている。ミドルコア部30は、第一サイドコア部33と第二サイドコア部34との間に挟まれている。第一エンドコア部31は、巻回部21,22の第一の端面、即ち紙面右側の端面に臨む。第二エンドコア部32は、巻回部21,22の第二の端面、即ち紙面左側の端面に臨む。第一サイドコア部33は、巻回部21の内側に配置される。第二サイドコア部34は、巻回部22の内側に配置される。
【0036】
この磁性コア3では、ミドルコア部30、第一エンドコア部31、第一サイドコア部33、及び第二エンドコア部32に、太破線で示される環状の閉磁路が形成される。また、ミドルコア部30、第一エンドコア部31、第二サイドコア部34、及び第二エンドコア部32に、太破線で示される環状の閉磁路が形成される。
【0037】
ここで、磁性コア3を基準にしてリアクトル1における方向を規定する。まず、ミドルコア部30の軸方向に沿った方向がX方向である。そのX方向に直交し、ミドルコア部30と第一サイドコア部33と第二サイドコア部34とが並列される方向がY方向である。そして、X方向とY方向の両方に直交する方向がZ方向である。
【0038】
[ミドルコア部]
ミドルコア部30の延伸方向、即ち軸方向は、巻回部21の軸線方向および巻回部22の軸線方向に沿った方向である。後述する実施形態3に示されるように、巻回部21が一つの場合、巻回部21はミドルコア部30の外周に配置される。
【0039】
ミドルコア部30の形状は、ミドルコア部30の内部に十分な磁路が形成される形状であれば特に限定されない。本例のミドルコア部30は、略直方体状である。ミドルコア部30には二つの磁路が形成される。従って、ミドルコア部30の磁路断面積は、第一サイドコア部33の磁路断面積、および第二サイドコア部34の磁路断面積よりも大きい。
【0040】
[第一エンドコア部・第二エンドコア部]
第一エンドコア部31及び第二エンドコア部32は、ミドルコア部30の軸線と直交するY方向に延びており、ミドルコア部30のY方向の幅よりも大きい。即ち、第一エンドコア部31は、ミドルコア部30よりもY方向の外側に張り出している。第二エンドコア部32は、ミドルコア部30よりもY方向の外側に張り出している。
【0041】
第一エンドコア部31と第二エンドコア部32の形状は、各エンドコア部31,32の内部に十分な磁路が形成される形状であれば特に限定されない。本例の第一エンドコア部31及び第二エンドコア部32は略直方体状である。Z方向から見た第一エンドコア部31及び第二エンドコア部32の4つの角部のうち、両サイドコア部33,34から遠い位置にある2つの角部は、丸みを有していも良い。上記2つの角部が丸みを有していると、エンドコア部31,32の重量が削減される。上記2つの角部は、磁束が通り難い箇所である。従って、上記2つの角部が丸められていても、リアクトル1の磁気特性は低下し難い。
【0042】
[第一サイドコア部・第二サイドコア部]
第一サイドコア部33は、第一エンドコア部31の延伸方向の一方の端部と、第二エンドコア部32の延伸方向の一方の端部とをつなぐ。第一サイドコア部33の軸方向は、ミドルコア部30の軸方向に平行となっている。第一サイドコア部33は、巻回部21の内部に配置される。
【0043】
第二サイドコア部34は、第一エンドコア部31の延伸方向の他方の端部と、第二エンドコア部32の延伸方向の他方の端部とをつなぐ。第二サイドコア部34の軸方向は、ミドルコア部30の軸方向に平行となっている。第二サイドコア部34は、巻回部22の内部に配置される。本例では、ミドルコア部30の軸線と、第一サイドコア部33の軸線と、第二サイドコア部34の軸線とは、X-Y平面上に配置されている。
【0044】
[サイズ]
図1に示されるリアクトル1が車載用である場合、磁性コア3のX方向の長さLは、例えば30mm以上150mm以下、磁性コア3のY方向の幅Wは、例えば30mm以上150mm以下、Z方向の高さは、例えば15mm以上75mm以下である。
【0045】
ミドルコア部30のY方向の長さT0は、例えば10mm以上50mm以下である。第一エンドコア部31のX方向の長さT1、及び第二エンドコア部32のX方向の長さT2は、例えば5mm以上40mm以下である。また、第一サイドコア部33のY方向の長さT3、及び第二サイドコア部34のY方向の長さT4は、例えば5mm以上40mm以下である。これらの長さは、磁性コア3の磁路断面積の大きさに関わる。
【0046】
[分割形態]
磁性コア3は、複数の分割片3A,3Bを組み合わせてなる。本例の分割片3A,3Bの数は2であるが、3以上でも良い。分割片3Aは、後述する複合材料の成形体からなる第一コア片5である。第一コア片5は一つの成形体であって、つなぎ目を有さない。分割片3Bは、複合材料の成形体からなる第二コア片6である。第二コア片6は、第一コア片5と同じ構成を備える。
【0047】
本例の第一コア片5は、基部と、基部から延びる三つの脚部とを備える。Z方向から見た第一コア片5の形状は、概略E字形状である。後述するように、基部と脚部とは異なる比透磁率を備える。従って、基部を第一部分51、脚部を第二部分52と呼ぶ。第一部分51は第一エンドコア部31に対応する。Y方向の中央に位置する第二部分52はミドルコア部30の一部に対応する。Y方向における紙面上側に位置する第二部分52は第一サイドコア部33に対応する。Y方向における紙面下側に位置する第二部分52は第二サイドコア部34に対応する。ミドルコア部30に対応する第二部分52は、Y-Z平面に平行な第一端面3aを備える。
【0048】
本例の第二コア片6は、磁性コア3における第一コア片5を除く部分を構成する。具体的には、第二コア片6は、第一コア片5と同じ構成を備える。第二コア片6は、第二エンドコア部32と、ミドルコア部30の一部と、第一サイドコア部33の一部と、第二サイドコア部34の一部とで構成されている。Z方向から見た第二コア片6の形状は、概略E字形状である。ミドルコア部30に対応する部分は、Y-Z平面に平行な第二端面3bを備える。
【0049】
第一端面3aと第二端面3bとの間には隙間3gが形成されている。この隙間3gは磁気ギャップとして機能する。
【0050】
[磁気特性・材質など]
第一コア片5は、複合材料の成形体である。
図2は、第一コア片5の第一部分51をX-Y平面で切断した断面の拡大写真である。
図2に示されるように、複合材料9は、固化した樹脂90と、樹脂90中に分散した軟磁性粉末91とを含む。
図2では、灰色部分が樹脂90であり、白色部分が軟磁性粉末91の各粒子である。軟磁性粉末91は、鉄などの鉄族金属、又はFe(鉄)-Si(シリコン)合金、Fe-Ni(ニッケル)合金などの鉄合金などで構成される軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子の表面には、リン酸塩などで構成される絶縁被覆が形成されていても良い。
【0051】
樹脂90は例えば、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂は例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂である。熱可塑性樹脂は例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂である。その他、樹脂90は、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴムでも良い。
【0052】
複合材料9は、樹脂90及び軟磁性粉末91の他に、非金属粉末を含有していても良い。非金属粉末は複合材料9の成形体の放熱性を向上させる。非金属粉末は例えば、アルミナ又はシリカなどのセラミックスフィラーである。セラミックスフィラーは非磁性材料でもある。複合材料9中の非金属粉末の含有量は例えば、0.2質量%以上20質量%以下、更に0.3質量%以上15質量%以下、0.5質量%以上10質量%以下である。
【0053】
複合材料9中の軟磁性粉末91の含有量は例えば、30体積%以上80体積%以下である。飽和磁束密度や放熱性の向上の観点から、軟磁性粉末91の含有量は更に、50体積%以上、60体積%以上、70体積%以上でも良い。製造過程での流動性の向上の観点から、軟磁性粉末91の含有量を75体積%以下でも良い。複合材料9の成形体の比透磁率は、軟磁性粉末91の充填率が小さくなるほど、小さくなり易い。複合材料9の成形体の比透磁率は、例えば5以上50以下である。複合材料9の成形体の比透磁率は、更に10以上45以下、15以上40以下、20以上35以下であっても良い。
【0054】
図2に示されるように、第一部分51に含まれる軟磁性粉末91の複数の粒子はY方向に配向している。ここでいう『粒子がY方向に配向した状態』とは、粒子の長径がY方向におおむね沿った状態、および磁気抵抗が小さくなるように複数の粒子が鎖状に連なった状態の少なくとも一方の状態を意味する。軟磁性粉末91の複数の粒子がY方向に配向している第一部分51は、Y方向に沿った磁束を通し易い。
図1に破線矢印で示されるように、第一部分51にはY方向に磁束が流れる。従って、第一部分51の延伸方向に沿った磁束に対する第一部分51の第一比透磁率は、粒子がどの方向にも配向していない複合材料の比透磁率よりも高い。
【0055】
ここで、本例の第二部分52をX-Y平面で切断した断面も、
図2に示される断面とほぼ同じ見た目を有する。つまり、第二部分52に含まれる軟磁性粉末の複数の粒子もY方向に配向している。
図1に破線矢印で示されるように、第二部分52にはX方向に磁束が流れる。粒子の配向方向に直交するX方向には磁束が流れ難い。従って、第二部分52の延伸方向に沿った第二部分52の第二比透磁率は、粒子がどの方向にも配向していない複合材料の比透磁率と同程度、又は低い。
【0056】
上述したように、第一部分51と第二部分52とはつなぎ目なく一連に成形されているにも関わらず、第一比透磁率は第二比透磁率よりも高い。このような第一コア片5の製造方法は以下の通りである。
【0057】
複合材料9の第一コア片5は、未固化の樹脂90と軟磁性粉末91との混合物を金型に充填し、樹脂90を固化させる樹脂成形によって製造される。この樹脂成形の際、
図1の白抜き矢印に示される方向、即ちY方向に磁場を印加する。Y方向に磁場が印加されることで、軟磁性粉末91の複数の粒子がY方向に配向する。樹脂成形時の磁場が大きくなるほど、Y方向に配向した粒子の数が多くなり易い。磁場の大きさは例えば、15kOe(約1.19×10
6A/m)以上であっても良いし、18kOe(約1.43×10
6A/m)以上であっても良いし、20kOe(15.9×10
6A/m)以上でも良い。
【0058】
本例とは異なり、樹脂成形の際、
図1のX方向に沿った磁場を印加しても良い。その場合、軟磁性粉末91の複数の粒子はX方向に配向する。その結果、第二部分52の延伸方向に沿った磁束に対する第二部分52の第二透磁率が、第一部分51の延伸方向に沿った磁束に対する第一部分51の第一透磁率よりも高くなる。
【0059】
本例の第二コア片6は、既に述べたように、第一コア片5と同じ構成を備える。即ち、第二コア片6の形状、寸法、材質、及び組織の全てが、実質的に第一コア片5と同じである。従って、第二コア片6における第二エンドコア部32に相当する部分が、第一コア片5の第一部分51と同じ構成を備え、その他のコア部30,33,34に相当する部分が、第一コア片5の第二部分52と同じ構成を備える。
【0060】
≪その他≫
本例のリアクトル1は、コイル2と磁性コア3とを一体化する樹脂モールド部を備えていても良い。樹脂モールド部は、コイル2と磁性コア3の組物の全体を覆っていても良いし、組物の一部のみを覆っていても良い。樹脂モールド部を構成する樹脂は例えばPBT樹脂である。これらの樹脂にアルミナなどのセラミックスフィラーが含有されていても良い。
【0061】
≪まとめ≫
本例のリアクトル1は、高周波・大電流において優れた磁気特性を発揮する。
本例のリアクトル1は、第一コア片5を含む磁性コア3を備える。第一コア片5は複合材料によって構成されており、複合材料における鉄損は圧粉成形体における鉄損よりも小さい。また、第一コア片5の第一部分51は、第二部分52よりも磁束を通し易い。従って、第一部分51からリアクトル1の外部に磁束が漏れ難い。複合材料からなる第一コア片5は磁気ギャップを有するとみなせるので、第一コア片5は磁気飽和し難い。本例のリアクトル1は更に、第一コア片5と同じ構成を有する第二コア片6を備える。従って、本例のリアクトル1は、高周波・大電流において優れた磁気特性を発揮する。
【0062】
本例のリアクトル1は生産性に優れる。
本例のリアクトル1に備わる磁性コア3は、第一コア片5と第二コア片6とで構成されている。従って、第一コア片5と第二コア片6とが組み合わされるだけで、磁性コア3が完成する。また、第一コア片5と第二コア片6とは同じ構成を備える。即ち、第一コア片5と第二コア片6とは全く同じ製造方法によって製造される。従って、磁性コア3を作製するために用意する金型は一つで良く、複合材料も一種類で良い。
【0063】
≪変形例1≫
以下、変形例1,2を説明する。変形例1,2では、主に実施形態1との相違点を説明する。その相違点以外の構成は実施形態1と共通である。変形例1の第二コア片6は、圧粉成形体であっても良い。圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形することによって作製される。この軟磁性粉末は特に限定されない。原料粉末には潤滑剤が含まれていても良い。圧粉成形体は、複合材料9の成形体よりも軟磁性粉末の含有量を高め易い。例えば、圧粉成形体における軟磁性粉末の含有量は、80体積%超、更に85体積%以上である。圧粉成形体は、高い飽和磁束密度、及び比透磁率を有する傾向にある。圧粉成形体の比透磁率は、例えば50以上500以下である。圧粉成形体の比透磁率は、80以上、100以上、150以上、180以上であっても良い。
【0064】
磁性コア3が、複合材料の成形体からなる第一コア片5と、圧粉成形体からなる第二コア片6とを備えることで、漏れ磁束が低減され易く、またインダクタンスが調整され易い。
【0065】
≪変形例2≫
第二コア片6は、樹脂成形時に磁場を印加することなく作製された複合材料の成形体であっても良い。この変形例2では、変形例1とは異なり、圧粉成形体を作製するための金型が必要ない。
【0066】
<実施形態2>
実施形態2に係るリアクトル1を
図3に基づいて説明する。実施形態2のリアクトル1と実施形態1のリアクトル1とは、磁性コア3の分割状態が異なる。本例のリアクトル1における磁性コア3の分割状態以外の構成は、実施形態1のリアクトル1と同じである。
【0067】
本例の第一コア片5は、第一エンドコア部31と、ミドルコア部30の一部と、第一サイドコア部33とで構成される。Z方向から見た第一コア片5は概略F字形状である。第一コア片5は、Y方向又はX方向に軟磁性粉末が配向した複合材料の成形体である。
【0068】
第二コア片6は、第二エンドコア部32と、ミドルコア部30の一部と、第二サイドコア部34とで構成される。Z方向から見た第二コア片6は概略F字形状である。Z方向から見た第二コア片6の形状は、第一コア片5の形状と同じであっても良いし、異なっていても良い。第二コア片6は、Y方向又はX方向に軟磁性粉末が配向した複合材料の成形体である。本例とは異なり、第二コア片6は、圧粉成形体であっても良い。
【0069】
<実施形態3>
実施形態3に係るリアクトル1を
図4に基づいて説明する。本例では、実施形態3のリアクトル1と実施形態1のリアクトル1との相違点を中心に説明する。
【0070】
本例の第一コア片5は、第一エンドコア部31と、ミドルコア部30の一部と、第一サイドコア部33と、第二サイドコア部34とで構成される。Z方向から見た第一コア片5は概略E字形状である。第一コア片5は、Y方向又はX方向に軟磁性粉末が配向した複合材料の成形体である。
【0071】
第二コア片6は、第二エンドコア部32と、ミドルコア部30の一部とで構成される。Z方向から見た第二コア片6は概略T字形状である。第二コア片6は、Y方向又はX方向に軟磁性粉末が配向した複合材料の成形体である。
【0072】
本例のコイル2は、一つの巻回部21を備える。巻回部21は、ミドルコア部30の外周に配置されている。ミドルコア部30の外周に巻回部21が配置される本例では、第二部分52の第二比透磁率が、第一部分51の第一比透磁率よりも高い方が、リアクトル1の磁気特性が高くなり易い。
【0073】
本例とは異なり、第二コア片6は圧粉成形体でも良い。また、コイル2は二つの巻回部21を備えていても良い。その場合、一つの巻回部21は第一サイドコア部33の外周に配置され、もう一つの巻回部21は第二サイドコア部34の外周に配置される。
【0074】
<実施形態4>
実施形態4に係るリアクトル1を
図5に基づいて説明する。本例の磁性コア3は矩形環状である。磁性コア3は、二つの内側コア部35,36と二つの外側コア部37,38とを備える。内側コア部35,36は巻回部21,22の内部に配置される。外側コア部37,38は、巻回部21,22の端面に臨む位置に配置される。
【0075】
磁性コア3は、二つの分割片3C,3Dによって構成されている。分割片3Cは、内側コア部35の一部と、内側コア部36の一部と、外側コア部37とで構成されている。分割片3Dは、内側コア部35の一部と、内側コア部36の一部と、外側コア部38とで構成されている。Z方向から見た分割片3C,3Dは概略U字形状である。分割片3C,3Dは、Y方向又はX方向に軟磁性粉末が配向した複合材料の成形体である。従って、分割片3Cは、一つの第一部分51と二つの第二部分52とを備える第一コア片5であり、分割片3Dは、一つの第一部分51と二つの第二部分52とを備える第二コア片6である。第一コア片5と第二コア片6とは同じ構成を備える。本例とは異なり、第二コア片6は圧粉成形体であっても良い。
【0076】
変形例として、Z方向から見た第一コア片5と第二コア片6は、概略L字形状でも良い。即ち、第一コア片5が内側コア部35と外側コア部37とで構成され、第二コア片6が内側コア部36と外側コア部38とで構成されていても良い。
【0077】
<実施形態5>
≪コンバータ・電力変換装置≫
上記実施形態に係るリアクトル1は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度である。実施形態に係るリアクトル1は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品、又はこのコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用される。
【0078】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、
図6に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図6では、車両1200の充電箇所はインレットであるが、プラグを備える形態でも良い。
【0079】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0080】
コンバータ1110は、
図7に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態に係るリアクトル1を備える。
【0081】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態に係るリアクトル1などと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態に係るリアクトル1などを利用することもできる。
【0082】
安定した磁気特性を有する実施形態のリアクトル1を備えるコンバータ1110及び電力変換装置1100は、安定して優れた磁気特性を発揮する。
【0083】
<試験例1>
試験例1では、比透磁率が部分的に異なる第一コア片5がリアクトル1の性能に及ぼす効果を調べた。本試験では、第一コア片5を含む試験用リアクトルと、従来の複合材料からなるコア片を含む試験用リアクトルとを作製し、両試験用リアクトルのインダクタンスを比較した。両試験用リアクトルの外観は、
図4に示されるリアクトル1と同じである。従って、以降の説明では、
図4を参照しながら説明を行う。
【0084】
≪試料No.1≫
試料No.1の試験用リアクトルにおける分割片3Aは、樹脂成形時に磁場を印加することなく作製された複合材料の成形体である。試料No.1の試験用リアクトルにおける分割片3Bは、圧粉成形体である。
【0085】
≪試料No.2≫
試料No.2の試験用リアクトルにおける分割片3Aは、X方向に磁場を印加しながら樹脂成形することによって作製された第一コア片5である。試料No.2の試験用リアクトルにおける分割片3Bは、試料No.1と同じ構成を備える圧粉成形体である。
【0086】
同一の測定条件下で試料No.1のインダクタンスと試料No.2のインダクタンスとを測定した。その結果、試料No.2のインダクタンスは、試料No.1のインダクタンスよりも6%高かった。従って、X方向に配向した軟磁性粉末を含む第一コア片5がリアクトル1の磁気特性の向上に寄与することが分かった。
【0087】
<試験例2>
試験例1の第一コア片5の第一部分51と第二部分52とからそれぞれ、立方体形状の第一試験片と第二試験片を切り出し、B-H評価設備によって各試験片の比透磁率を測定した。各試験片の大きさは7mm×7mm×7mmであった。
【0088】
第一試験片のY方向にB-H評価設備の磁場を印加することで、第一部分51のY方向における比透磁率を測定した。具体的には、第一試験片のY方向がB-H評価設備の磁場に沿った向きになるように、第一試験片をB-H評価設備にセットし、第一試験片の比透磁率を測定する。また、第二試験片のX方向にB-H評価設備の磁場を印加することで、第二部分52のX方向における比透磁率を測定した。具体的には、第二試験片のX方向がB-H評価設備の磁場に沿った向きになるように、第二試験片をB-H評価設備にセットし、第二試験片の比透磁率を測定した。その結果、第二部分52のX方向における比透磁率は、第一部分51のY方向の比透磁率よりも高いことが分かった。
【符号の説明】
【0089】
1 リアクトル
2 コイル
21 巻回部、2a,2b 端部
3 磁性コア
3a 第一端面、3b 第二端面、3g 隙間
3A,3B,3C,3D 分割片
30 ミドルコア部、31 第一エンドコア部、32 第二エンドコア部
33 第一サイドコア部、34 第二サイドコア部
35,36 内側コア部、37,38 外側コア部
5 第一コア片
51 第一部分、52 第二部分
6 第二コア片
9 複合材料
90 樹脂、91 軟磁性粉末
1100 電力変換装置
1110 コンバータ、1111 スイッチング素子、1112 駆動回路
1115 リアクトル、 1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ、1230 サブバッテリ
1240 補機類、1250 車輪
1300 エンジン
L,T0,T1,T2,T3,T4 長さ
W 幅