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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179508
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】建物の空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20241219BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20241219BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20241219BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20241219BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20241219BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20241219BHJP
   F24F 11/72 20180101ALI20241219BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20241219BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241219BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20241219BHJP
【FI】
F24F5/00 K
F24F7/00 C
F24F7/007 D
F24F7/06 Z
F24F7/08 Z
F24F13/06 Z
F24F11/72
G06F1/20 C
G06F1/20 B
F24F110:10
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098407
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 洋
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BA05
3L058BE06
3L080BE04
3L260AB09
3L260AB15
3L260BA24
3L260CA22
3L260CA32
3L260CA33
3L260CB51
3L260EA07
3L260FC01
(57)【要約】
【課題】サーバ室の冷房負荷の低減だけでなく免震ピットの結露の防止を両立することが可能なサーバ室の空調システムを提供すること。
【解決手段】空調システムは、電子機器のサーバ装置(20)が設置されるサーバ室(2)と、サーバ室に隣接して設けられ、サーバ室の空気の温度を制御可能な空調機(30)が設置される空調室(3)と、地下に設けられる免震ピット(5)と、サーバ室からの空気を空調室に戻すための第1経路(I)と、免震ピットの空気を空調室に導入するための第2経路(II)と、屋外の空気を、免震ピットを介して屋外に連通させるための連通経路(IV)と、連通経路を介して、免震ピット内の空気を屋外に排出する換気装置(54)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のサーバ装置が設置されるサーバ室と、
前記サーバ室に隣接して設けられ、前記サーバ室の空気の温度を制御可能な空調機が設置される空調室と、
地下に設けられる免震ピットと、
前記サーバ室からの空気を前記空調室に戻すための第1経路と、
前記免震ピットの空気を前記空調室に導入するための第2経路と、
屋外の空気を、前記免震ピットを介して屋外に連通させるための連通経路と、
前記連通経路を介して、前記免震ピット内の空気を屋外に排出する換気装置とを備える、建物の空調システム。
【請求項2】
前記免震ピット内の結露リスクを判断する手段をさらに備え、
前記換気装置を駆動して、前記結露リスクが高いと判断された場合には、前記第2経路を閉鎖して前記免震ピット内の換気を促す、請求項1に記載の建物の空調システム。
【請求項3】
屋外の空気を前記空調室に導入するための第3経路をさらに備える、請求項1または2に記載の建物の空調システム。
【請求項4】
前記免震ピットの床面温度が屋外の温湿度よりも小さい場合は、前記換気装置を駆動させる、請求項1または2に記載の建物の空調システム。
【請求項5】
前記免震ピットの温湿度が所定値以下の場合は、前記換気装置を駆動させる、請求項2に記載の建物の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の空調システムに関し、特に、地下に免震ピットを有し、空調室とサーバ室が隣接して設けられる建物の空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、データセンタや企業のサーバ室などには、サーバ装置が複数台設置されているため、サーバ装置から発生する大量の熱を除去するために、季節を問わずほぼ常時冷房を行う必要がある。そのため、データセンタでは、冷房負荷をいかに下げるかが非常に重要である。
【0003】
データセンタの冷房負荷の低減のための手段として、外気を直接利用することが挙げられる。たとえば、特開2016-17674号公報(特許文献1)には、1階に外気取入れガラリが設けられ、1階から取り入れた外気を、2階から5階にそれぞれ設置された空調機に送り込み、その空調機からの空気をサーバ室に送り込んで省エネ効果を図った外気利用空調システムが開示されている。
【0004】
また、一般的なデータセンタには、地震対策として免震ピットが設けられることが多い。免震ピットは、地下に配置されるため、夏季において免震ピット内の空気は、地中冷熱により外気温度よりも低い温度となる。免震ピット内を経由して外気を導入することで、冷房負荷をさらに下げることが可能となる。
【0005】
そのため、データセンタの冷房負荷の低減のための手段として、免震ピット内の空気を利用することが挙げられる。たとえば、特開2013-245913号公報(特許文献2)には、免震ピット内の空気を各階に設けられる空調機に送り込み、空調機で空調された空気をサーバ室に送り込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-17674号公報
【特許文献2】特開2013-245913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免震ピットは、たとえばグレーチングなどのエキスパンションジョイントによって外気に通じているため、ファンによる給気および排気を行わない場合であっても、外気と通じている。そのため、外気の湿度が高い場合、侵入した湿気によって免震ピット内の湿度が高くなり、結露が発生するおそれがある。
【0008】
そのため、特許文献2のような空調設備を用いた場合、免震ピット内に高湿の外気が多く侵入することになり、免震ピット内での結露を助長することになる。また、階段などで1階と免震ピットが通じている場合、免震ピットの湿気およびカビの臭気が1階に侵入するという不具合が生じる場合がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的はサーバ室の冷房負荷の低減と免震ピットの結露の防止を両立することが可能な建物の空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る建物の空調システムは、電子機器のサーバ装置が設置されるサーバ室と、サーバ室に隣接して設けられ、サーバ室の空気の温度を制御可能な空調機が設置される空調室と、地下に設けられる免震ピットと、サーバ室からの空気を空調室に戻すための第1経路と、免震ピットの空気を空調室に導入するための第2経路と、屋外の空気を、免震ピットを介して屋外に連通させるための連通経路と、連通経路を介して、免震ピット内の空気を屋外に排出する換気装置とを備える。
【0011】
好ましくは、免震ピット内の結露リスクを判断する手段をさらに備え、換気装置を駆動して、結露リスクが高いと判断された場合には、第2経路を閉鎖して免震ピット内の換気を促す。
【0012】
好ましくは、屋外の空気を空調室に導入するための第3経路をさらに備える。
【0013】
好ましくは、免震ピットの床面温度が屋外の温湿度よりも小さい場合は、換気装置を駆動させる。
【0014】
好ましくは、免震ピットの温湿度が所定値以下の場合は、換気装置を駆動させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サーバ室の冷房負荷の低減と免震ピットの結露の防止を両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る空調システムが用いられた建物を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る空調処理を示すフローチャートである。
図3図2におけるパターンAの場合の制御パターンを示す図である。
図4図2におけるパターンBの場合の制御パターンを示す図である。
図5図2におけるパターンCの場合の制御パターンを示す図である。
図6図2におけるパターンDの場合の制御パターンを示す図である。
図7図2におけるパターンEの場合の制御パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
本実施の形態の空調システムは、データセンタなどのコンピュータ関連施設に設置されるサーバ室2が設けられる建物1を対象とする。本実施の形態に係る空調システムを採用した建物1について説明する。
【0019】
建物1は、たとえば地上1階建ての施設であり、屋内空間には、サーバ室2と、空調室3と、免震ピット5とが設けられる。なお、建物1は、例示的に地上1階建てであるとしたが、地上複数階建ての施設であってもよいし、上述した室以外の室(たとえば、事務室など)が設置されていてもよい。
【0020】
サーバ室2は、複数のサーバ装置20が設置されている。サーバ室2内はサーバ装置20の発熱により温度が上昇するため、サーバ装置20が熱暴走または故障するおそれがある。そのため、サーバ室2の温度は、季節を問わず一定に維持しておく必要があり、ほぼ常時冷房が行われている。常時冷房を行うために、空調室3が設けられる。
【0021】
空調室3は、サーバ室2に隣接して設けられ、サーバ室2の空気の温度を制御可能な空調機30が設置される。空調機30は、給気口30aと還気口30bとを含む。給気口30aは、サーバ室2に温度を調整した空気を給気する。還気口30bは、サーバ室2から天井空間4を介して戻ってきた空気および外気を取り入れる。つまり、空調機30は、空調室3の空気を空調し、サーバ室2に送り込む。
【0022】
サーバ室2および空調室3の上方には、天井空間4が設けられる。天井空間4は、サーバ室2の空気を空調室3に送り込む(戻す)ための機能を有する。
【0023】
免震ピット5は、地震が発生した場合に建物の揺れを軽減するために設けられる。免震ピット5は、地下に設置され、複数の免震ジョイントによって支持されることで空間が形成されている。免震ピット5は、グレーチングなどのエキスパンションジョイント(図示せず)によって外気に通じているため、ファンによる機械的な給排気を行わない場合であっても、自動的に屋外の空気が免震ピット5内に侵入し、免震ピット5内の空気も屋外に排気される。
【0024】
次に、空調システムを構成する給気口、排気口、ファン、ダンパ、温湿度センサなどについて説明する。
【0025】
サーバ室2には、その天井において、天井空間4と連通する屋内排気口24が設けられる。
【0026】
空調室3には、外気を取り入れる第1給気口31と、第1給気口31に設けられ、外気を空調室3に強制的に送り込む第1給気ファン32と、第1給気口31の開放・閉鎖を選択的に行うことが可能な第1給気ダンパ33とが設けられる。第1給気口31は、建物1の側壁に設けられることが好ましい。空調室3の天井には、天井空間4と連通する屋内給気口34が設けられる。
【0027】
天井空間4には、天井空間4の空気を屋外に排気する第1排気口41と、第1排気口41に設けられ、天井空間4の空気を屋外に強制的に排出する第1排気ファン42と、第1排気口41の開放・閉鎖を選択的に行うことが可能な第1排気ダンパ43とが設けられる。第1排気口41は、建物1の側壁に設けられることが好ましい。天井空間4には、天井空間温湿度センサTrが設置される。天井空間温湿度センサTrでは、天井空間の空気、すなわち、サーバ室2から空調室3に戻る戻り空気の温湿度を測定する。
【0028】
免震ピット5には、外気を取り入れる第2給気口51と、第2給気口51に設けられ、外気を免震ピット5に強制的に送り込む第2給気ファン52とが設けられる。さらに、免震ピット5には、免震ピット5の空気を屋外に排気する第2排気口53と、第2排気口53に設けられ、免震ピット5内の空気を屋外に排出する換気装置54とが設けられる。換気装置54は、強制的な空気の流れを作る排気ファンであることが好ましい。
【0029】
上述のように、免震ピット5は、エキスパンションジョイントによって常に外気に通じているが、免震ピット5内の空気の流れを操作するために、第2給気口51および第2排気口53には、その開放・閉鎖を選択的に行うことが可能なダンパが設けられてもよい。また、少なくとも換気装置54が設けられていればよく、第2給気ファン52は設けられていなくてもよい。
【0030】
免震ピット5には、免震ピット5の空気を空調室3に送り込む第3給気口55と、第3給気口55に設けられ、開放・閉鎖を選択的に行うことが可能な第3給気ダンパ56とが設けられる。上述した第1給気口31がたとえばダクトなどで設けられており、第3給気口55は、そのダクトの途中位置と連通していてもよい。その場合、免震ピット5から第3給気口55送り込まれた空気は、上述した第1給気口31の第1給気ファン32によって空調室3に給気される。
【0031】
免震ピット5には、免震ピット5内の温湿度を計測する免震ピット温湿度センサTpと、免震ピット5の床表面温度を計測する床表面温度センサTsが設置される。また、屋外には、屋外の空気の温湿度を計測する屋外温湿度センサToが設置される。
【0032】
空調システムは、天井空間温湿度センサTr、免震ピット温湿度センサTp、屋外温湿度センサTo、および免震ピット5の床表面温度を計測する床表面温度センサTsで計測した数値をもとに、免震ピット5内の結露リスクを判断する手段を備える。
【0033】
建物1内において、給気口、排気口などが設けられることで、複数の空気の経路である、第1~3経路I~III、および、連通経路IVが形成される。
【0034】
第1経路Iは、サーバ室2からの空気を空調室3に戻すための経路である。具体的には、第1経路Iは、空調室3の空気が空調機30により空調されてサーバ室2に送り出され、サーバ室2の空気が屋内排気口24を通って天井空間4に導かれ、屋内給気口34を通って空調室3に戻されるという経路である。第1経路Iは、従来のサーバ室2および空調室3の空調システムで行われる循環経路である。
【0035】
第2経路IIは、免震ピット5の空気を空調室3に導入するための経路である。具体的には、第2経路IIは、第3給気ダンパ56を開放して、第1給気ファン32を駆動させることによって、免震ピット5内の空気を、第3給気口55を介して空調室3に導く経路である。第2経路IIは、免震ピット5の空気が低温な場合に、免震ピット5内の空気を空調機30に利用し、冷房負荷を低減させるための経路である。
【0036】
第3経路IIIは、外気を空調室3に導入するための経路である。具体的には、第3経路IIIは、第1給気ダンパ33を開放して、第1給気ファン32を駆動させることによって、第1給気口31を介して外気を空調室3に導く経路である。第3経路IIIは、たとえば、外気が低温な場合に、低温な空気を空調機30に利用し、冷房負荷を低減させるための経路である。
【0037】
連通経路IVは、屋外の空気を、免震ピット5を介して屋外に連通する経路である。具体的には、連通経路IVは、第2給気ファン52を駆動させて、外気を第2給気口51から免震ピット5内に導入し、免震ピット5を連通させ、さらに第2排気ファン54を駆動させて第2排気口53から免震ピット5内の空気を屋外に排出する経路である。連通経路IVは、たとえば、免震ピット5内の空気が低湿で、免震ピット5に結露が生じそうな場合に、免震ピット5内の空気を屋外に排出することを促進する経路である。
【0038】
これらの空気の経路I~IVは、結露リスクの有無によって使用が判断される。具体的には、換気装置54を駆動して、結露リスクが高いと判断された場合には、第2経路IIを閉鎖して免震ピット5内の換気を促す。これにより、免震ピット5内の高湿な空気が空調室3に導入されず、屋外に排出されるとともに、免震ピット5内の結露の発生を防止することができる。
【0039】
次に、図2図7を参照して、空調システムの制御方法について説明する。図2は、建物の空調処理を示すフローチャートであり、図3図7は、図2の制御パターンA~Eの状態を示す図である。図2のフローチャートの説明に先立ち、制御パターンA~Eについて説明する。
【0040】
図3には、制御パターンAが示されている。制御パターンAは、免震ピット5の空気をサーバ室2の空調に利用する。具体的には、空調室3の第1給気ダンパ33を閉鎖して、外気が空調室3に入らないようにし、天井空間5の第1排気ダンパ43を開放し、第1排気ファン42をオンにして、第1排気口41から空気を排出する。さらに、免震ピット5の第2給気ファン52をオンにして第2給気口51から外気を免震ピット5内に導入し、換気装置54をオフにして、免震ピット5の空気を空調室3に導く第1給気ファン32をオンにする。制御パターンAでは、第1経路Iと第2経路IIとを利用するものである。
【0041】
図4には、制御パターンBが示されている。制御パターンBは、外気をサーバ室2の空調に利用し、免震ピット5の空気は利用しない。具体的には、空調室3の第1給気ダンパ33を開放して、第1給気ファン32をオンにして第1給気口31から外気を空調室3に導入し、天井空間5の第1排気ダンパ43を開放して、第1排気ファン42をオンにして、第1排気口41から空気を排出する。免震ピット5の第2給気ファン52および換気装置54をオフにする。さらに、第3給気ダンパ56を閉鎖して、免震ピット5の空気を空調室3に導入しないようにする。たとえば、免震ピット5内に結露が生じそうな環境であり、外気の温度が低い場合の制御である。制御パターンBでは、第1経路Iと第3経路IIIとを利用するものである。
【0042】
図5は、制御パターンCが示されている。制御パターンCは、外気をサーバ室2の空調に利用し、免震ピット5は通気させる。つまり、サーバ室2と空調室3の空気の流れと、免震ピット5の空気の流れを独立して行う。具体的には、空調室3の第1給気ダンパ33を開放して、第1給気ファン32をオンにして第1給気口31から外気を空調室3に導入し、天井空間5の第1排気ダンパ43を開放して、第1排気ファン42をオンにして、第1排気口41から空気を排出する。免震ピット5の第2給気ファン52をオンにして外気を第2給気口51から免震ピット5内に導入し、換気装置54をオンにして、免震ピット5の空気を第2排気口53から屋外に排出する。さらに、空調室3に導く第3給気ダンパ56は閉鎖する。免震ピット5内が高湿であり、免震ピット5内に結露が生じる可能性が高い環境であり、外気の温度が低い場合の制御である。制御パターンCでは、第1経路I、第3経路III、および連通経路IVを利用するものである。
【0043】
図6は、制御パターンDが示されている。制御パターンDは、外気も免震ピット5内の空気も利用しない。具体的には、すべてのダンパ33,43,56を閉鎖し、すべてのファン32,42,52,54をオフにして、空調機30の駆動のみで屋内の空気の循環を行う。この制御は、従来のサーバ室の空調制御であり、第1経路Iだけを利用するものである。
【0044】
図7は、制御パターンEが示されている。制御パターンEは、外気をサーバ室2の空調に利用せず、免震ピット5は通気させる。つまり、サーバ室2と空調室3の空気の流れと、免震ピット5の空気の流れを独立して行う。具体的には、すべてのダンパ33,43,56を閉鎖し、地上のファン32,42をオフにして、空調機30の駆動のみで屋内の空気の循環を行う。免震ピット5の第2給気ファン52をオンにして外気を第2給気口51から免震ピット5内に導入し、換気装置54をオンにして、免震ピット5の空気を第2排気口53から屋外に排出する。この制御は、第1経路Iと連通経路IVを利用するものである。
【0045】
以上説明した5つの制御パターンA~Eのいずれを選択するかどうかを決定するために、図2のフローチャートを利用する。この判定は、一日に複数回行い、具体的には、3~4時間など任意の間隔で繰り返し行う。
【0046】
まず、屋外温湿度センサTo、天井空間温湿度センサTr、免震ピット温湿度センサTpを用いて温湿度を取得し、免震ピット5の床表面温度センサTsを用いて免震ピット5の床表面温度を取得する(ステップS10)。さらに、屋外温湿度センサToで測定した温湿度から露天温度を算出する(ステップS12)。屋外温湿度センサTo、天井空間温湿度センサTr、および免震ピット温湿度センサTpで取得した温湿度から、一般的な手法を用いて、それぞれの比エンタルピを算出する(ステップS14)。
【0047】
天井空間温湿度センサTrで取得した温湿度の比エンタルピと、免震ピット温湿度センサTpで取得した温湿度の比エンタルピとを比較し、さらに、天井空間温湿度センサTrで取得した温湿度の比エンタルピと屋外温湿度センサToで取得した温湿度の比エンタルピを比較する。具体的には、Tp比エンタルピ<Tr比エンタルピであるか、またはTo比エンタルピ<Tr比エンタルピである場合は、ステップS18に進む(ステップS16にてYes)。この場合、外気または免震ピット5内の空気を空調室3で利用することが可能である。Tp比エンタルピ<Tr比エンタルピであるか、またはTo比エンタルピ<Tr比エンタルピでない場合は、ステップS26に進む(ステップS16にてNo)。この場合、外気または免震ピット5内の空気を空調室3で利用することができない。まず、外気または免震ピット5内の空気を空調室3で利用することができるパターンについて説明する。
【0048】
ステップS18では、免震ピット温湿度センサTpで取得した温湿度の比エンタルピと屋外温湿度センサToで取得した温湿度の比エンタルピとを比較する。具体的には、Tp比エンタルピ<To比エンタルピである場合は、ステップ20に進む(ステップS18にてYes)。次に、ステップS12で算出した屋外温湿度センサToの露天温度と床表面温度センサTsで計測した温度とを比較する。To露天温度<Ts温度であれば(ステップS20にてYes)、制御パターンAを行う。To露天温度<Ts温度でなければ(ステップS20にてNo)、制御パターンBを行う。
【0049】
一方、ステップS18でTp比エンタルピ<To比エンタルピでない場合は、ステップ22に進む(ステップS18にてNo)。ステップS22では、免震ピット温湿度センサTpで測定された相対湿度が所定値以下であるか検討する。所定値とは、相対湿度の閾値であり、任意で変化可能であるが、本実施の形態では80%であるとする。具体的には、Tp相対湿度≦80%である場合は、制御パターンBを行う(ステップS22にてYes)。Tp相対湿度≦80%でない場合は(ステップS22にてNo)、免震ピット5の床表面温度センサTsで計測した相対湿度とステップS12で算出した屋外温湿度センサToの露天温度とを比較する。具体的には、Ts温度≦To露天温度である場合は、制御パターンBを行う(ステップS24にてYes)。Ts温度≦To露天温度でない場合は、制御パターンCを行う(ステップS24にてNo)。
【0050】
次に、ステップS16のNoに戻って、外気または免震ピット5内の空気を空調室3で利用しないパターンについて説明する。ステップS26では、免震ピット温湿度センサTpで測定した相対湿度が所定値以下であるか検討する。所定値とは、相対湿度の閾値であり、任意で変化可能であるが、本実施の形態では80%であるとする。具体的には、Tp相対湿度≦80%である場合は、制御パターンDを行う(ステップS26にてYes)。Tp相対湿度≦80%でない場合は(ステップS26にてNo)、免震ピット5の床表面温度センサTsで計測した相対湿度とステップS12で算出した屋外温湿度センサToの露天温度とを比較する。具体的には、Ts温度≦To露天温度である場合は、制御パターンDを行う(ステップS28にてYes)。Ts温度≦To露天温度でない場合は、制御パターンEを行う(ステップS28にてNo)。
【0051】
本実施の形態の空調システムは、通常のサーバ室および空調室の空気の経路である第1経路Iに加え、免震ピット5の空気を空調室3に導入するための第2経路IIと、免震ピット5を介して外気を屋外に連通させるための連通経路IVとを備え、さらに免震ピット5内の空気を屋外に排出する換気装置54を備える。そのため、免震ピット5内の冷気を空調室3に導入して、サーバ室2の空調負荷を低減させることができる。さらに、免震ピット5の空気を屋外に排出する換気装置54を備えるため、免震ピット5内の結露を防止することができる。このように、本実施の形態の空調システムは、サーバ室2の冷房負荷の低減だけでなく免震ピット5の結露の防止を両立することが可能となる。
【0052】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 建物、2 サーバ室、3 空調室、4 天井空間、5 免震ピット、20 サーバ装置、30 空調機、54 換気装置、I 第1経路、II 第2経路、III 第3経路、IV 連通経路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7