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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179509
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】医療用磁気発生装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 2/04 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61N2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098410
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 光晴
(72)【発明者】
【氏名】橋口 聖心
(72)【発明者】
【氏名】福原 佳世子
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博
【テーマコード(参考)】
4C106
【Fターム(参考)】
4C106AA03
4C106AA05
4C106BB21
4C106CC03
(57)【要約】
【課題】非侵襲であり、人体の頭部を直接刺激することなく簡便に脳に作用し、認知症やうつ病をはじめとする精神・神経疾患の治療または予防を行うことができる医療用磁気発生装置を提供する。
【解決手段】交番磁界を人体の頭部以外の部分に照射して渦電流を発生させ、精神・神経疾患の治療または予防を行う、医療用磁気発生装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番磁界を人体の頭部以外の部分に照射して渦電流を発生させ、精神・神経疾患の治療または予防を行う、医療用磁気発生装置。
【請求項2】
1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界を照射して渦電流を発生させる、請求項1に記載の医療用磁気発生装置。
【請求項3】
1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界の出力磁束密度が10mT以下である、請求項2に記載の医療用磁気発生装置。
【請求項4】
1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界に同期して、225~275MHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界をさらに照射して渦電流を発生させる、請求項2に記載の医療用磁気発生装置。
【請求項5】
精神・神経疾患が、脳卒中、認知症、うつ病、統合失調症、パーキンソン病、てんかん、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、線維筋痛症、適応障害および睡眠障害からなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項1に記載の医療用磁気発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界を人体の頭部以外の部分に照射することで、非侵襲かつ簡便に脳へ作用し、認知症やうつ病をはじめとする精神・神経疾患の治療または予防を行うための医療用磁気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精神・神経疾患とは、脳・脊髄・末梢神経などの機能障害を引き起こす病気の総称で、脳血管障害、認知障害、精神疾患、変性疾患、脱髄疾患、神経免疫疾患、中枢神経疾患、末梢神経疾患、筋疾患など多岐にわたり、それぞれ脳卒中、認知症、うつ病、統合失調症、パーキンソン病、てんかん、多発性硬化症(MS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症などが含まれる。たとえば、うつ病を治療する方法として、経頭蓋治療用磁気刺激(rTMS:repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)装置が存在する。Anke Post et al., "Transcranial magnetic stimulation as a therapeutic tool in psychiatry: what do we know about the neurobiological mechanisms?", (2001), Journal of Psychiatric Research, 35(4):193-215(非特許文献1)、Shinsuke Kito et al., "Regional cerebral blood flow changes after low-frequency transcranial magnetic stimulation of the right dorsolateral prefrontal cortex in treatment-resistant depression", (2008), Neuropsychobiology, 58(1): 29-36(非特許文献2)によれば、rTMS装置は、頭部に当てた磁気コイルから、非侵襲的に「左背外側前頭前野」に磁気刺激を与え、神経伝達物質の放出を促すことで脳内を活性化させるものであり、約40分の治療を週5回、計20~30回行うことで、うつ症状を軽減、消失する効果が期待される。
【0003】
図15は、rTMS装置による磁気刺激を模式的に示す図である。rTMS装置は、パルス磁場によってトリートメントコイル直下の領域の皮質内に電場が誘導され、誘導電場が局所的に渦電流を引き起こし、この皮質内に生じた渦電流により電荷がニューロン膜に蓄積される。ニューロンの電位が活性化されるほど電荷密度が十分に高くなった場合、神経伝達物質が放出される。規則的な刺激を繰り返し行うことで、生理学的変化をもたらし、うつ症状の改善が期待できる。
【0004】
しかしながら、rTMS装置を用いた治療では、高出力(装置により0.5T(テスラ)あるいは1.2~2.4T)の磁気を頭部に直接照射することから、頭痛、耳鳴り、めまい、不快感が比較的高頻度で認められ、重大な副作用として失神、けいれん発作も報告されるなど、侵襲度が高い。また、施術中は脳の局所に照射する為に頭部固定が必要で、拘束時間も長いなど、簡便ではないといった問題もある。高出力の磁気を発生させる為に大がかりな装置・コイルが必要であり、電磁防護の観点から施術場所が病院での使用に限られるなど、患者や施術者の負担も大きい。経頭蓋磁気刺激を用いたシステム、方法は、たとえば特開2020-36704号公報(特許文献1)にも提案されているが、同様の問題を抱えていると考えられる。
【0005】
また、人体の頭部以外の部分(これらの部分を「末梢」と総称する)を刺激する方法として、たとえば特開2021-166665号公報(特許文献2)には経皮的電気刺激(TENS:transcutaneous electrical nerve stimulation)が提案され、また、たとえば特開2022-134700号公報(特許文献3)には磁気刺激装置が、特開2013-103121号公報(特許文献4)にはリハビリ治療用磁気刺激装置が提案されている。しかしながら、これらはいずれも、筋の収縮を誘発する、末梢の制御を目的としたリハビリテーション用治療装置である。
【0006】
特開2022-168040号公報(特許文献5)には、末梢を電気刺激することで、脳に作用させ、振戦を治療するためのシステムが提案されている。また、末梢への2kHz付近(低周波)の電気刺激が、触覚神経であるAβ線維と同調して脊髄後角から延髄、中脳に伝導されることは以前より知られている。神経機能診断装置Neurometer(商標)(ニューロトロン社製)を用いた電流知覚閾値検査では2kHzの電流刺激によりAβ線維を選択的に興奮させることができる。Aβ線維は触覚(感覚神経)を脊髄後角灰白質の第III層に伝導する。しかしながら、この原理を利用した低周波治療器は、皮膚から筋肉に電気刺激を与えるため、皮膚での電気抵抗により不快感や刺激痛が生じるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-36704号公報
【特許文献2】特開2021-166665号公報
【特許文献3】特開2022-134700号公報
【特許文献4】特開2013-103121号公報
【特許文献5】特開2022-168040号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Anke Post et al., "Transcranial magnetic stimulation as a therapeutic tool in psychiatry: what do we know about the neurobiological mechanisms?", (2001), Journal of Psychiatric Research, 35(4):193-215
【非特許文献2】Shinsuke Kito et al., "Regional cerebral blood flow changes after low-frequency transcranial magnetic stimulation of the right dorsolateral prefrontal cortex in treatment-resistant depression", (2008), Neuropsychobiology, 58(1): 29-36
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、非侵襲であり、人体の頭部を直接刺激することなく簡便に脳に作用し、認知症やうつ病をはじめとする精神・神経疾患の治療または予防を行うことができる医療用磁気発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の医療用磁気発生装置は、交番磁界を人体の頭部以外の部分に照射して渦電流を発生させ、精神・神経疾患の治療または予防を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の医療用磁気発生装置において、1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界を照射して渦電流を発生させることが好ましい。
【0012】
本発明の医療用磁気発生装置において、1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界の出力磁束密度が10mT以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の医療用磁気発生装置において、1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界に同期して、225~275MHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界をさらに照射して渦電流を発生させることが好ましい。
【0014】
本発明の医療用磁気発生装置において、精神・神経疾患が、脳卒中、認知症、うつ病、統合失調症、パーキンソン病、てんかん、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、線維筋痛症、適応障害および睡眠障害からなる群から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非侵襲であり、人体の頭部を直接刺激することなく簡便に脳に作用し、認知症やうつ病をはじめとする精神・神経疾患の治療または予防を行うことができる医療用磁気発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の医療用磁気発生装置の具体例を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る医療用磁気発生装置における照射部を示す模式図であって、(a)は上面図を表し、(b)は背面図を表し、(c)はA-A断面図を表す。
図3】一実施形態に係る医療用磁気発生装置のコイル配置を示すプリント配線図であって、(a)は上面図を表し、(b)は下面図を表す。
図4】実験例1での磁界の体内浸透に関する検討実験の計算に用いられた数値人体モデルと腰部表面に配置したコイルを示す図である。
図5】実験例1での磁界の体内浸透に関する検討実験の結果を示し、(a)は高周波の最大値座標のXY平面およびXZ平面における磁界分布であり、図中の直線は、最大値座標を通るX線直線であり、(b)は高周波の最大値座標を通る直線(X軸)上の磁界強度(最大値点拡大)を示すグラフである。
図6】実験例1での磁界の体内浸透に関する検討実験の結果を示し、(a)は低周波の最大値座標のXY平面およびXZ平面における磁界分布であり、図中の直線は、最大値座標を通るX線直線であり、(b)は低周波の最大値座標を通る直線(X軸)上の磁界強度(最大値点拡大)を示すグラフである。
図7】実験例2での行動薬理試験(ラット空間認知障害モデルを用いたモリス水迷路試験)について説明するための図である。
図8】実験例2での一過性空間認知障害モデルによるプラットホーム到着時間についての結果を示すグラフである。
図9】実験例2での一過性空間認知障害モデルによる区画滞在の割合についての結果を示すグラフである。
図10】実験例2での持続性空間認知症モデルによるプラットホーム到着時間についての結果を示すグラフである。
図11】実験例2での持続性空間認知症モデルによる区画滞在の割合についての結果を示すグラフである。
図12】実験例2での組織評価について示す写真である。
図13】実験例3での強制水泳試験について説明するための図である。
図14】実験例3の結果を示すグラフである。
図15】従来技術のrTMS装置による磁気刺激を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の医療用磁気発生装置によれば、交番磁界を人体の頭部以外の部分(末梢)に照射して渦電流を発生させる。ここで、交番磁界を照射する末梢としては、頭部以外であれば、頸部、肩部、胸部、腹部、背部、腰部、腕部、臀部、腿部、手、足など特に制限されない。また、照射部位は頭部であってもよい。本発明の医療用磁気発生装置によれば、末梢神経を、従来のrTMS装置と比較して低出力の交番磁界で刺激することにより、非侵襲かつ簡便に脳へ作用し、認知症やうつ病をはじめとする精神・神経疾患の治療または予防を行うことができる。また頭部に直接作用させないので、侵襲度が低く、頭痛、耳鳴り、めまい、不快感、失神、けいれん発作が起こりにくく、施術中の拘束などもなく、大がかりな装置・コイルも必要ない。また、電気刺激を用いないので、皮膚での電気抵抗による不快感や刺激痛が生じない。
【0018】
本発明の医療用磁気発生装置では、交番磁界を利用して渦電流を発生させる。交番磁界を利用した渦電流の発生は、装置構成にて後述するように、たとえば同心円状に配置したコイルを格納した照射部(プローブ)を交番磁界を照射する末梢の生体表面にセットし、コイルに通電させることで行うことができる。原理としては図15に示して説明したのと同様であり、交番磁界の作用により、末梢の生体内で誘導電流(渦電流)が流れ、この渦電流により脳へ作用する。このように本発明では、生体内に渦電流を生じさせることで、刺激痛を与えることなく、電気的刺激と同様に神経を刺激することができる。
【0019】
本発明の医療用磁気発生装置では、上述のように交番磁界を人体の頭部以外の部分に照射して渦電流を発生させることで、認知症やうつ病をはじめとする精神・神経疾患の治療または予防を行うことができるものである。ここで、精神・神経疾患は、脳卒中、認知症(アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症)、うつ病、統合失調症、パーキンソン病、てんかん、多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)、筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、線維筋痛症、適応障害および睡眠障害からなる群から選ばれる少なくともいずれかである。これらの疾患には薬物治療が第一選択となるが、服用により全身に作用することから、胃腸障害、頭痛、吐き気、めまい、眠気、疲労感など副作用も大きいが、本発明の医療用磁気発生装置が出力する磁界は低周波はICNIRP(International Commission on Non-Ionizing Radiation Protection:国際非電離放射線防護委員会)2010一般公衆ガイドラインの参考レベルを満たし、高周波はICNIRP2010一般公衆ガイドラインの局所SAR(Specific Energy Absorption Rate:比吸収率)の基本制限を満たしており、安全性が高く、副作用の少ない治療ができる。
【0020】
後述する実験例2で実証されたように、ラット空間認知障害モデルを用いたモリス水迷路試験による空間認知障害の評価では、一過性空間認知症モデル、持続性空間認知症モデルのいずれにおいても、本発明の医療用磁気発生装置により空間認知障害が改善された(図8~12)。また、後述する実験例3で実証されたように、ラット慢性疼痛・うつ病(CCI:chronic constriction injury/坐骨神経の慢性絞扼損傷)モデルを用いた強制水泳試験によるうつ様行動の評価では、本発明の医療用磁気発生装置によりうつ様症状が改善された(図14)。これらの実験結果から、本発明の医療用磁気発生装置は、血管性認知症の治療または予防、うつ病の治療において特に有用である。
【0021】
また、本発明の医療用磁気発生装置は、虚血性の血管障害を治療することから、脳梗塞や脳出血やクモ膜下出血を含む脳卒中、高血圧・糖尿病・肥満などにより動脈硬化を起こすことで発症する狭心症や心筋梗塞を含む虚血性心疾患の治療または予防を行うものであることが好ましい。
【0022】
本発明の医療用磁気発生装置は、1~3kHzの範囲内の周波数(低周波)に制御された交番磁界を照射して渦電流を発生させることが好ましい。また交番磁界は、1~3kHzの範囲内の周波数の高調波または低調波に制御されていてもよく、1kHz未満の交番磁界を発生させる際に生じる高調波として、1~3kHzを発生させてもよい。このような周波数に制御された交番磁界を用いることで、誘導される渦電流により生体を刺激し脳へ作用する。具体的には、外部信号からバンドパスフィルターで1~3kHzを抽出し、信号処理してデータ化し、データに従ってランダムに出力する。なお、交番磁界は混成波、低周波単独、高周波単独いずれであってもよい。
【0023】
本発明の医療用磁気発生装置は、1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界の出力磁束密度が10mT以下であることが好ましく、1mT以下であることがより好ましい。このように本発明の医療用磁気発生装置は、装置により0.5Tあるいは1.2~2.4Tと高出力であった従来のrTMS装置とは異なり、格段に低い出力で十分な治療/予防効果を達成することができる。
【0024】
本発明の医療用磁気発生装置は、1~3kHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界に同期して、225~275MHzの範囲内の周波数(高周波)に制御された交番磁界をさらに照射して渦電流を発生させることが好ましい。また交番磁界は、225~275MHzの範囲内の周波数の高調波または低調波に制御されていてもよく、225MHz未満の交番磁界を発生させる際に生じる高調波として、225~275MHzを発生させてもよい。このような低周波の交番磁界に同期させて高周波の交番磁界を照射して渦電流を発生させることで、本発明の医療用磁気発生装置による治療/予防効果がさらに高められる。具体的には、低周波に同期して出力し、AM(Amplitude Modulation)変調を行う。
【0025】
本発明の医療用磁気発生装置は、225~275MHzの範囲内の周波数に制御された交番磁界の出力磁束密度が10mT以下であることが好ましく、1μT以下であることがより好ましい。このように本発明の医療用磁気発生装置は、装置により0.5Tあるいは1.2~2.4Tと高出力であった従来のrTMS装置とは異なり、格段に低い出力で十分な治療/予防効果を達成することができる。
【0026】
以下、本発明の医療用磁気発生装置の具体例を図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の説明は、本発明の技術的思想を具体化するための方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでなく、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0027】
ここで、図1は、本発明の医療用磁気発生装置の具体例を示す概略図である。図1に示される医療用磁気発生装置は、装置本体1と、装置本体1に信号ケーブル21を介して接続されたプローブ11を備え、装置本体1はまた、着脱可能に差し込み装着される電源ケーブル(図示せず)を備える。
【0028】
図1に示す医療用磁気発生装置の装置本体1は、樹脂製のケーシング2と、そのケーシング2内の前部に斜め上向きに収容されてケーシング2の前面の開口部から露出するタッチパネル式ディスプレイ3と、そのケーシング2内の後部の上側に収容された信号波出力部と、そのケーシング2内の後部の下側に収容された電源部とを有している。なお、装置本体1のケーシング2の前面の開口部の下側の左右にはアラーム停止ボタンと電源スイッチボタンが設けられている。そして、それらのボタンのさらに下側には、装置本体1への複数のプローブ11の接続を可能にするために、信号ケーブル21のプラグ用のソケットが、横並びに複数設けられている。
【0029】
図2は、本実施形態の医療用磁気発生装置のプローブ11の上面図(a)、背面図(b)およびA-A断面図(c)である。この実施形態では、プローブ11は略四辺形の柔軟な素材の外装12と、電気回路等を保護する目的で角錐台状に盛った回路部13とを備える。回路部の背部から信号ケーブル21を引き出している。
【0030】
図2(c)に示すように、プローブ11は、コイルや電気回路を配置したプリント基板である可撓性薄板14をエラストマーやゴム材料などの軟質性樹脂の外装12内に収容している。プローブ11は射出成形やRIM成形などの樹脂成形によって製造することができる。樹脂成形では自己発熱を伴うため、電気回路等の保護を目的として、樹脂モールドを回路部13に事前に施すことが好ましい。
【0031】
図3はこの実施形態の医療用磁気発生装置のコイル配置を示すプリント配線図であって、上面図(a)および下面図(b)を表す。プリント基板上に回路部、高周波出力用コイル、高周波検出用コイル、低周波出力用コイルなどが配置されている。この実施形態では、プリント基板の上面に、高周波出力用コイルを環状円板とし、その外側に高周波検出用コイルを円環状として、配置している。また、高周波出力用コイルの内側に渦巻き状の低周波出力用コイルを配置している。高周波出力用コイルおよび低周波出力用コイルはプリント基板の下面にも配置しており、それぞれ面対称に構成して、高周波電流および低周波電流がそれぞれ上下両面で同じ向きに流れるように配置している。そうすることで、上下両面のコイルが発生する磁界の中心を一致させることができる。なお、高周波出力用コイル、高周波検出用コイルおよび低周波出力用コイルを円環状形態に変えて、方形状としてもよい。
【0032】
プローブ11は、その形状に特に制限はないが、図2に示す例のように略四辺形、特に、略矩形の平板とすることで、適用対象に取り付けやすく、テープで固定しやすいというような利点がある。
【0033】
可撓性薄板14は、フィルム状のプリント基板であって、屈曲性を持つ絶縁材料のフィルムからなるベース層と、必要に応じて接着剤層とを有することが好ましい。ベース層は、ポリイミド樹脂やポリエステル樹脂、ポリアミド紙基材エポキシ樹脂、ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス基材BTレジンなどを用いることができる。各コイルは、金属箔などプリント基板14にプリントされ、あるいは、エッチングされた導体であってもよい。
【0034】
本発明の医療用磁気発生装置において、電源部は、たとえばCPUおよび二台のAC-DCコンバータにより回路構成され(図示せず)、電源ケーブル(図示せず)を介して供給される100Vの商用交流電源を、上記二台のAC-DCコンバータで所定の直流電源を得て、それらの直流電源を直列接続することでバッテリの充電電圧を得てバッテリを充電するとともに、それらの直流電源からスイッチング電源およびリニアレギュレータで降圧した所定の直流電源を、装置本体1の信号波出力部および画面制御部とプローブ11の動作状態検出部とに、それぞれに必要な電圧の直流電源として供給する。電源部は、電源ケーブルを装着されていない当該医療用磁気発生装置の通常の使用時には、バッテリからの直流電源を装置本体1の信号波出力部および画面制御部とプローブ11の動作状態検出部とに、スイッチング電源およびリニアレギュレータでそれぞれに必要な電圧の直流に降圧して供給することで、当該医療用磁気発生装置を携帯して使用可能なものとする。
【0035】
以下に実験例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<実験例1>
磁界の体内浸透に関する数値計算を用いた検討
解剖学的構造を有した数値人体モデルDukeおよび数値計算ソフトSim4life(ZMS Zurich MedTech AG製)、低周波解析オプション「QS-SOLVER」を用い、FDTD法および有限要素法によって数値計算を行った。波源となるコイルは、人体腰部表面(最近値:人体表面から2mm)に配置した条件でシミュレーションを行った。ここで、図4は、実験例1での磁界の体内浸透に関する検討実験の計算に用いられた数値人体モデルと腰部表面に配置したコイルを示す図である。図4は、紙面に関して左側から順に、XY平面(上面)、YZ平面(背面)、XZ平面(側面)、YZ平面(正面)を示しており、YZ平面(背面)およびXZ平面(側面)には、腰部にコイルを配置した様子が模式的に示されている。
【0037】
高周波磁界分布は1巻コイルに周波数250MHzの正弦波を入力、低周波磁界分布は7回巻コイルに2kHzの正弦波を入力し体内での三次元磁界分布を計算した。図5、6は、その結果を示すグラフであり、図5(a)は高周波の最大値座標のXY平面およびXZ平面における磁界分布であり、図中の直線は、最大値座標を通るX線直線であり、図5(b)は高周波の最大値座標を通る直線(X軸)上の磁界強度(最大値点拡大)を示すグラフである。図6(a)は低周波の最大値座標のXY平面およびXZ平面における磁界分布であり、図中の直線は、最大値座標を通るX線直線であり、図6(b)は低周波の最大値座標を通る直線(X軸)上の磁界強度(最大値点拡大)を示すグラフである。本発明の医療用磁気発生装置から照射される非常に微弱な交番磁界出力の刺激が、生体内に到達することが明らかになった。
【0038】
<実験例2>
[1]行動薬理試験-ラット空間認知障害モデルを用いたモリス水迷路試験(空間認知障害の評価)
図7は、実験例2での行動薬理試験について説明するための図であり、図7(a)は試験を行っている様子を示す模式図、図7(b)はプラットホームの一例を示す模式図である。モリス水迷路は、行動実験においてラットまたはマウスの空間記憶の試験に用いられる。通常、直径1.5~2m、深さ0.5mの水を入れたプールと、水面下数mmに隠された避難用プラットホームからなる。ラットは、このプールに放たれると出口を探して泳ぎまわり、避難用プラットホームを見つける。4日間連続で訓練すると、ラットはより迅速にプラットホームの位置に行けるようになる。避難までの潜時、すなわち水面下のプラットホームを見つけるまでの時間を測定する(空間学習)。6日目に、プラットホームを取り除いたプールに動物を放し、プラットホームが置かれていた位置で費やす時間を測定する(空間記憶の持続性と正確性)。
【0039】
具体的には、水迷路プール(ラボテック)および自動行動追跡・解析用ビデオトラッキングシステム「エソビジョンXT」(Noldus)を用い、水温25±1℃に調整したプールの中にラットを入れ、磁気刺激前、磁気刺激後に水面下にあるプラットホームに辿り着くまでの時間(プラットホーム到達時間)、およびプラットホームがある区画に滞在した割合(プラットホーム区画滞在割合)を1日1回5分間、これを14日間測定する。プール内におけるラットの行動解析はビデオ行動追跡システムを使用する。磁気刺激によりプラットホーム到達時間が短縮するか、およびプラットホーム区画滞在割合が延長するかを確認する。(記憶・学習障害の改善)
[1-1]一過性空間認知障害に対する効果
一過性空間認知症モデル(分子機構障害)として、MK801を投与したラット(MK801投与ラット)を用い、モリス水迷路試験により一過性空間認知障害に対する効果を確認した。具体的には、ラット(Crl:CD(SD)、雄)入手(チャールズリバー株式会社より入手)後約1週間環境に馴化させた後、モリス水迷路試験実施30分前にNMDA受容体(グルタメート受容体N-methyl D aspartate)の非競合的拮抗薬であるMK801を腹腔内に投与し、投与後30分に試験を実施する。正常ラットでは、試行を繰り返す毎にプラットホームの位置を認識し、到達時間が短くなった(学習獲得)。また、プラットホーム区画への滞在時間の割合も同様に増加したことから学習獲得が明らかとなり、方法確立が得られた。一方、MK801投与ラットでは、試行を同様に繰り返したがプラットホームへの到達時間の短縮及び区画到達の割合増加が認められず、認知症モデルとして有用と判断した(空間認知障害)。
【0040】
8~12日目に、MK801投与ラットの腰部背側の皮膚が比較的薄い部位に、試作磁気発生装置のプローブを密着させ、交番磁界照射により磁気刺激(混成波-1~3kHz+250MHz)を吸入麻酔下で10分間行った。同様の試験を行い、プラットホーム到着時間についての結果を示すグラフが図8、区画滞在の割合についての結果を示すグラフが図9である。図8図9において横軸は日数、図8の縦軸はプラットホーム到着時間(秒)、図9の縦軸はプラットホーム区画滞在割合(%)である。図8図9から分かるように、プラットホームへの到達時間、区画滞在の割合は正常ラットと同等までに改善され、空間認知障害の改善作用が得られた。
【0041】
[1-2]持続性空間認知障害に対する効果
持続性空間認知症モデルとして、両側総頚動脈結紮を施したラットを用い、持続性空間認知障害に対する効果を確認した。両側総頚動脈結紮は、吸入麻酔下でラットの頸部を正中線に沿って皮膚を切開し、綿棒などで丁寧に総頸動脈を露出させた後、総頸動脈を周辺組織から剥離し、片側2箇所、左右両側結紮し、皮膚を縫合する。以下の群
・偽手術群:両側総頚動脈結紮を施さず、麻酔し、開創術のみを施した群
・非治療群:両側総頚動脈結紮を施した後、磁気刺激を行わなかった群
・治療群:両側総頚動脈結紮3週間後に、1週間(計7回)磁気刺激を行った群
・事前治療群:両側総頚動脈結紮を施す前に、1週間(計7回)磁気刺激を行った群
のラットについて、両側総頚動脈結紮4週間後よりモリス水迷路試験を行った。ラットの腰部背側の皮膚が比較的薄い部位に、試作磁気発生装置のプローブを密着させ、交番磁界照射により磁気刺激(混成波-1~3kHz+250MHz)を吸入麻酔下で10分間行った。
【0042】
プラットホーム到着時間についての結果を示すグラフが図10、区画滞在の割合についての結果を示すグラフが図11である。図10図11において横軸は日数、図10の縦軸はプラットホーム到着時間(秒)、図11の縦軸はプラットホーム区画滞在割合(%)である。非治療群では、偽手術群に比べてプラットホームへの到達が遅く、手術によって空間認知障害が起きたことが確認できた。一方、治療群では非治療群よりも到達時間が短縮し、区画滞在の割合も増加した。事前治療群では、偽手術群と同様な到達時間・区画滞在割合が得られ、虚血による局所脳部位の細胞障害にもかかわらず空間認知障害が軽減された。
【0043】
[2]組織評価
両側総頚動脈結紮による虚血状態における海馬CA1錐体細胞における障害を調べ、細胞レベルでの脳内変化に対する治療効果を確認した。非治療群、治療群、事前治療群および偽手術群についてそれぞれ、行動薬理学的試験終了後、急冷により脳組織を摘出した。海馬領域を分画後、凍結ミクロトームにより組織を薄切し切片を作製した。標本の載ったスライドグラスを、常温で約1時間乾燥させた後、HE染色、TUNEL染色およびLFB(Luxol Fast Blue)染色の各染色を行った。
【0044】
HE染色は、具体的には、
(1)ヘマトキシリン液に5分間浸す、
(2)流水水洗5分間の後、純水に置換する、
(3)エオシン液に5分間浸す、
(4)95% エタノールに浸す(5回×2)、
(5)100% エタノールに浸す(5回×3)、
(6)レモゾールで透徹を行う(5分間×3)、
(7)封入する、
という手順で行った。
【0045】
TUNEL染色は、具体的には、TACS2 TdT-DAB In situ apoptosis detection kit(Trevigen Instructions, Catシャープ4810-30-K)を用いて、製品のプロトコールに従い、
(1)1×PBSに浸し、室温で10分間放置する、
(2)50μlのプロテイナーゼ K溶液で覆い、37℃で15分間放置する、
(3)蒸留水に浸し、室温で2分間洗浄する(×2)、
(4)100μlのクエンチングソリューションで覆い、室温で5分間放置する、
(5)1×PBSに浸し、室温で1分間洗浄する、
(6)100μlの1×TdT標識バッファーで覆い、室温で5分間放置する、
(7)50μlのラベリング反応ミックスで覆い、37℃で1時間放置する、
(8)100μlの1×TdT Stopバッファーで覆い、室温で5分間放置する、
(9)蒸留水に浸し、室温で5分間洗浄する(×2)、
(10)50μlのStrep-HRP溶液で覆い、37℃で10分間放置する、
(11)1×PBSに浸し、室温で2分間洗浄する(×2)、
(12)100μlのDAB溶液で覆い、室温で5分間放置する、
(13)1×PBSに浸し、室温で2分間洗浄する(×2)、
(14)蒸留水を数回交換して、室温で2分間洗浄する(×2)、
(15)メチルグリーンに浸し、室温で5分間放置する、
(16)次の液に10回ずつ浸し、順次洗浄する、
蒸留水→70% エタノール→70% エタノール→95% エタノール→95% エタノール
(17)99% エタノールに浸す(5回×3)、
(18)レモゾールで透徹を行う(5分間×3)、
(19)封入する、
という手順で行った。
【0046】
LFB染色は、Luxol Fast Blue Stain Kit(ScyTek Laboratories, Inc., CatシャープLBC-2)を用いて、製品のプロトコールに従い、
(1)リキッドブロッカーで囲い、湿潤箱に設置する、
(2)Luxol Fast Blue Solutionを8~10滴組織片に滴下する、
(3)恒温槽に湿潤箱を設置し、60℃、10~12時間(overnight)放置する、
(4)湿潤箱を取り出し、95% エタノールで洗浄し結晶を除去する、
(5)蒸留水で洗浄しLuxol Fast Blue Solution、エタノールを除去する、
(6)Lithium Carbonate Solution(0.05%)を滴下し続け、分別を行う(20秒まで)、
(7)Alcohol, Reagent(70%)を滴下し続け、灰白質が無色に白質に青みが残るように適度に分別を行う、
(8)蒸留水で洗浄する、
(9)Cresyl Echt Violet(0.1%)を4~5滴スライドに滴下し、37℃で2~5分放置する、
(10)蒸留水で素早く洗浄する(×2)、
(11)無水エタノールで脱水を行う(10回×4)、
(12)レモゾールで透徹を行う(5分間×3)、
(13)封入する、
という手順で行った。
【0047】
海馬のCA1錐体細胞をBZ-X710で観察した写真(10倍)を示すのが図12であり、図12の紙面に関して左側の列がHE染色、中央の列がTUNEL染色、右側の列がLFB染色の結果についてそれぞれ示している。また図12の紙面に関して一番下側の写真は、正常ラット(positive control)についてのTUNEL染色の結果である。非治療群では、海馬CA1の錐体細胞が脱落し、細胞配列の乱れがみられた。しかし、事前治療群では細胞の脱落は軽微であり、細胞配列も保たれていたため、虚血により誘発される細胞死に対する保護作用を発揮する可能性が考えられる。事前治療群では組織上では細胞脱落が軽微となる神経保護作用が明らかとなった。
【0048】
[3]考察
上述した実験により、本発明の医療用磁気発生装置により空間認知障害の改善効果が確認され、認知症患者の約2割を占める血管性認知症の治療に有用であると考えられた。また、事前治群療では行動試験において、偽手術群と同等のプラットホーム到達時間が得られ、空間認知障害が抑制されており、組織上では細胞脱落が軽微となる神経保護作用が明らかとなった。この結果は本発明の医療用磁気発生装置の予防的効果の可能性を示唆するものであり、本発明の医療用磁気発生装置は、認知症予備軍の治療(認知症の予防)に有用である可能性がある。
【0049】
<実験例3>
[1]行動薬理試験-ラット慢性疼痛・うつ病(CCI(chronic constriction injury:坐骨神経の慢性絞扼損傷))モデルを用いた強制水泳試験(うつ様行動の評価)
図13は、実験例3での行動薬理試験について説明するための図であり、図13(a)、(b)は、実際に強制水泳試験を行っている様子の模式図、図13(c)は強制水泳試験の手順について模式的に示す図である。実験例4では、強制水泳試験を用いてうつ様行動の評価を行った。強制水泳試験は、動物モデルを用いてうつ様行動を測定する試験法であり、抗うつ薬のスクリーニングとして汎用されている。ラットを水が入った逃避不可能な円筒形の水槽内に入れると、泳ぐ、よじ登るといった逃避行動を見せるが、その後不動状態(水面上に頭だけを出し、手足を動かすことなく浮いている状態)が認められる。翌日に再度ラットを水槽に入れると早期に不動状態が発現する為、この不動時間をうつ様行動として評価する。図13(a)には、希望を持っているラットが水槽から脱出しようと奮闘している様子を示しており、図13(b)には、希望をすべて失ったラットが水槽の中でぼんやりと浮かんでいる様子を示している。
【0050】
図13(c)は、磁気刺激を施した場合の手順であり、以下の群
・偽手術群:CCI手術を施さず、麻酔し、開創術のみを施した群
・非治療群:CCI手術を施し、磁気刺激を行わなかった群
・混成波-1~3kHz+250MHz群:CCI手術の7~14日後に、試作磁気発生装置を用いて磁気刺激(低周波:1~3kHz、高周波:250MHz)を施した群
・単独波-2kHz群:CCI手術の7~14日後に、試作磁気発生装置を用いて磁気刺激(低周波:2kHz)を施した群
・単独波-250MHz群:CCI手術の7~14日後に、試作磁気発生装置を用いて磁気刺激(高周波:250MHz)を施した群
のラットについて、強制水泳試験を行った。
【0051】
より具体的には、CCI手術は、ラットを吸入麻酔下で左後肢皮膚を切開し、坐骨神経を露出させ、1mm間隔で4ヶ所、4-0絹糸を使用して不完全に結紮した後、皮膚を縫合した。磁気刺激を施す場合には、術後7日後より、吸入麻酔で鎮静状態とし、左後肢の結紮した部位に試作磁気発生装置をあて、1日1回10分間照射し、これを1週間続けた。
【0052】
強制水泳試験は、磁気刺激前、磁気刺激後に水温25±1℃に調整した円筒形の水槽内内にて5分間強制的に泳がせ、その間の不動時間(秒)を測定した。磁気刺激により不動時間が短縮するかを確認した(抑うつ状態の改善)。
【0053】
図14は、実験例3の結果を示すグラフであり、縦軸は不動時間(秒)である。非治療群では、偽手術群に比べ不動時間が延長した(うつ様症状)一方で、混成波-1~3kHz+250MHz群では不動時間の増加は抑制された。
【0054】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 医療用磁気発生装置の本体、2 ケーシング、3 ディスプレイ(タッチパネル式ディスプレイ)、11 プローブ、12 外装、13 回路部、14 可撓性薄板(プリント基板)、21 信号ケーブル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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