(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179512
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両管制装置および車両管制システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241219BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098415
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タンチャン キム
(72)【発明者】
【氏名】今西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】銭 智定
(72)【発明者】
【氏名】布施 康宏
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA07
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】本開示は、車両に搭載される車両センサとその車両が走行する場所に隣接して配置されるインフラセンサの双方の死角となる領域が発生する場合のリスクに対処可能な車両管制装置を提供する。
【解決手段】車両管制装置2は、情報統合部21とリスク評価部22とを備えている。情報統合部21は、車両センサVSおよびインフラセンサISの共通死角の位置情報を含む共通死角マップを生成する。リスク評価部22は、共通死角マップおよび車両Vの周囲に存在する可能性がある被遮蔽物の大きさに基いて共通死角に被遮蔽物が存在するリスクを判定する。リスク評価部22は、上記リスクの判定結果に基いて共通死角に隣接するリスク領域への車両Vの進入可否を判定し、その進入可否の判定結果が進入不可であった場合にリスク領域よりも手前の停車位置を車両Vへ送信する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて該車両の周囲の物体を検出する車両センサおよび該車両の走行経路に隣接して配置されて該車両の周囲の物体を検出するインフラセンサの双方の死角となる共通死角の位置情報を含む共通死角マップを生成する情報統合部と、
前記共通死角マップおよび前記車両の周囲に存在する可能性がある被遮蔽物の大きさに基いて前記共通死角に前記被遮蔽物が存在するリスクを判定するリスク判定部と、
前記リスク判定部による前記リスクの判定結果に基いて前記共通死角に隣接するリスク領域への前記車両の進入可否を判定し、前記進入可否の判定結果が進入不可であった場合に前記リスク領域よりも手前の停車位置を前記車両へ送信する進入可否判定部と、
を備えることを特徴とする車両管制装置。
【請求項2】
前記進入可否判定部は、前記車両が前記停車位置で停車するために減速を開始する減速開始位置を前記車両へ送信することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項3】
前記進入可否判定部は、前記車両が前記停車位置で停車するための速度プロファイルを前記車両へ送信することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項4】
前記リスク判定部によって前記共通死角に存在するリスクが判定された前記被遮蔽物としての移動体の予測経路を生成する経路予測部をさらに備え、
前記進入可否判定部は、前記リスク判定部によって前記共通死角に前記移動体が存在するリスクが判定された場合に、前記車両の予定経路と前記経路予測部によって生成された前記移動体の予測経路とに基いて前記リスク領域への前記進入可否を判定することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項5】
前記進入可否判定部による前記車両への前記停車位置の送信後に、
前記情報統合部は、前記共通死角マップを再生成し、
前記リスク判定部は、前記共通死角に前記被遮蔽物が存在するリスクを再判定し、
前記進入可否判定部は、前記リスク判定部の再判定結果に基いて前記進入可否を再判定して前記車両へ再送信することを特徴とする請求項1に記載の車両管制装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両管制装置と、前記車両に搭載されて前記車両管制装置に対して前記リスク領域への進入要求を送信する車両制御装置と、を含む車両管制システムであって、
前記車両管制装置の前記進入可否判定部は、前記車両から前記進入要求を受信すると前記車両へ前記進入可否の判定結果を送信し、
前記車両制御装置は、前記車両管制装置から前記進入不可の判定結果を受信した場合に、前記車両管制装置から前記停車位置を受信して前記車両を前記停車位置に停車させることを特徴とする車両管制システム。
【請求項7】
前記車両管制装置の前記進入可否判定部は、前記車両が前記停車位置で停車するために減速を開始する減速開始位置を前記車両へ送信し、
前記車両制御装置は、前記車両管制装置から受信した前記減速開始位置から前記車両を減速させることを特徴とする請求項6に記載の車両管制システム。
【請求項8】
前記車両管制装置の前記進入可否判定部は、前記車両が前記停車位置で停車するための速度プロファイルを前記車両へ送信し、
前記車両制御装置は、前記車両管制装置から受信した前記速度プロファイルに従って前記車両を減速させることを特徴とする請求項6に記載の車両管制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両管制装置および車両管制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から車両に情報が表示されるように制御を行う表示制御システムが知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1に記載された表示制御システムは、インフラセンサ情報取得部と、死角情報生成部と、表示制御部と、を有する(請求項1、第0006段落等)。
【0003】
上記インフラセンサ情報取得部は、道路の周辺に設けられたインフラセンサが道路にある車両の周辺を検出することによって得られたインフラセンサ情報を取得する。上記死角情報生成部は、インフラセンサ情報に基づいて、車両から見たときに障害物により死角となる死角領域に関する死角情報を生成する。上記表示制御部は、死角情報が車両に表示されるように制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、多数のコンテナが集積されるコンテナ港湾では、コンテナ船から降ろされたコンテナが新たに集積されたり、集積されたコンテナがトレーラに積載されて搬出されたりすることで、障害物の配置が頻繁に変更される。このような場所では、車両に搭載されて車両の周囲の障害物を検出する車両センサと、車両の外部に配置されて車両の周囲の障害物を検出するインフラセンサの双方から見て死角になる領域が発生することがある。
【0006】
上記特許文献1に記載された表示制御システムは、車両に設けられた車両センサから見て死角になる死角領域に存在する物体を道路に設けられたインフラセンサによって検出して、死角領域に関する死角情報を車両に表示させることができる。しかし、この従来の表示制御システムは、車両センサとインフラセンサの双方の死角になる領域が発生することを想定していない。
【0007】
本開示は、車両に搭載される車両センサとその車両が走行する場所に隣接して配置されるインフラセンサの双方の死角となる領域が発生する場合のリスクに対処可能な車両管制装置および車両管制システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車両に搭載されて該車両の周囲の物体を検出する車両センサおよび該車両の走行経路に隣接して配置されて該車両の周囲の物体を検出するインフラセンサの双方の死角となる共通死角の位置情報を含む共通死角マップを生成する情報統合部と、前記共通死角マップおよび前記車両の周囲に存在する可能性がある被遮蔽物の大きさに基いて前記共通死角に前記被遮蔽物が存在するリスクを判定するリスク判定部と、前記リスク判定部による前記リスクの判定結果に基いて前記共通死角に隣接するリスク領域への前記車両の進入可否を判定し、前記進入可否の判定結果が進入不可であった場合に前記リスク領域よりも手前の停車位置を前記車両へ送信する進入可否判定部と、を備えることを特徴とする車両管制装置である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記一態様によれば、車両に搭載される車両センサとその車両が走行する場所に隣接して配置されるインフラセンサの双方の死角となる領域が発生する場合のリスクに対処可能な車両管制装置および車両管制システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本開示に係る車両管制システムの実施形態1を示すブロック図。
【
図1B】
図1Aの車両管制システムのリスク評価部の詳細を示すブロック図。
【
図2A】
図1Aの車両管制装置の動作を説明するフローチャート。
【
図2B】
図1Aの車両管制装置の動作の変形例を説明するフローチャート。
【
図2C】
図1Aの車両管制装置の動作の変形例を説明するフローチャート。
【
図3】
図1Aの車両のセンサとインフラセンサとの共通死角を示す平面図。
【
図4A】
図1Aの車両の周囲に存在し得る被遮蔽物の規定方法の一例を示す平面図。
【
図4B】
図1Bのリスク評価部を構成するリスク判定部の処理を説明する平面図。
【
図4C】
図1Bのリスク評価部を構成するリスク判定部の処理を説明する平面図。
【
図5A】
図1Bのリスク評価部を構成する経路予測部の処理を説明する平面図。
【
図5B】
図1Bのリスク評価部を構成する経路予測部の処理を説明する平面図。
【
図6】
図1Bのリスク評価部を構成する進入可否判定部の処理を説明する平面図。
【
図7】
図1Aの車両管制システムを構成する車両制御装置の動作を説明するフロー図。
【
図8A】
図1Aの車両の周囲に存在し得る被遮蔽物の規定方法の一例を示す平面図。
【
図8B】
図1Bのリスク評価部を構成するリスク判定部の処理を説明する平面図。
【
図8C】
図1Bのリスク評価部を構成するリスク判定部の処理を説明する平面図。
【
図9A】
図1Bのリスク評価部を構成する経路予測部の処理を説明する平面図。
【
図9B】
図1Bのリスク評価部を構成する経路予測部の処理を説明する平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示に係る車両管制装置および車両管制システムの実施形態を説明する。
【0012】
[実施形態1]
図1Aは、本開示に係る車両管制システムの実施形態1を示すブロック図である。
図1Bは、
図1Aの車両管制システム1のリスク評価部22の詳細を示すブロック図である。なお、
図1Aでは、簡略化のため複数の車両Vのうち1台の車両Vのみを図示している。
【0013】
本実施形態の車両管制システム1は、たとえば、複数の車両Vを管制する車両管制装置2と、各々の車両Vに搭載される車両制御装置3とによって構成される。本実施形態の車両管制装置2および車両管制システム1は、以下に説明するように、複数の車両Vの各々に搭載される車両センサVSと、各々の車両Vが走行する場所に隣接して配置されるインフラセンサISの双方の死角となる領域が発生する場合のリスクに対処し、車両Vの走行の安全性を確保しながら走行効率を改善する。
【0014】
車両管制装置2は、たとえば、ネットワークに接続されるネットワークサーバなどのコンピュータによって構成されている。車両管制装置2は、たとえば、
図1Aに示すように、情報統合部21と、リスク評価部22とを有している。また、リスク評価部22は、たとえば、
図1Bに示すように、リスク判定部221と、進入可否判定部223とを備えている。また、リスク評価部22は、たとえば、経路予測部222をさらに備えてもよい。これら車両管制装置2の各部は、たとえば、中央処理装置(CPU)によってROMやRAMなどのメモリに格納されたプログラムを実行することで実現される車両管制装置2の各機能を表している。
【0015】
車両制御装置3は、たとえば、車両Vに搭載された車両センサVSの検出結果を用いて車両Vの走行を制御する電子制御装置(ECU)である。すなわち、車両Vは、たとえば、車両制御装置3による自動運転(AD)が可能な自動運転車である。なお、車両Vは、たとえば、車両制御装置3を含む高度運転支援システム(ADAS)を備えた手動運転車であってもよい。車両管制装置2は、たとえば、無線通信回線およびネットワークを介して、各々の車両Vに搭載された車両制御装置3と情報通信可能に接続されている。
【0016】
車両センサVSは、たとえば、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(レーザレーダ)、超音波センサなど、車両Vに搭載されてその車両Vの周囲の物体を検出する外界センサを含む。また、車両センサVSは、たとえば、全球測位衛星システム(GNSS)の受信機、車速センサ、加速度センサ、アクセルセンサ、ブレーキセンサ、操舵角センサ、シフトポジションセンサ、トルクセンサなど、車両Vに搭載される各種のセンサを含む。
【0017】
インフラセンサISは、たとえば、カメラ、ミリ波レーダ、LiDAR(レーザレーダ)、超音波センサなどの外界センサであり、車両Vの走行経路に隣接して配置されてその車両Vの周囲の物体を検出する路側センサである。インフラセンサISは、たとえば、ネットワークを介して車両管制装置2と情報通信可能に接続されている。
【0018】
以下、
図2Aから
図7までを参照して、本実施形態の車両管制システム1の動作を説明する。
図2Aは、
図1Aの車両管制装置2の動作を説明するフローチャートである。
図2Bおよび
図2Cは、
図1Aの車両管制装置2の動作の変形例を説明するフローチャートである。
図3は、
図1Aの車両センサVSとインフラセンサISとの共通死角CBAを示す平面図である。
【0019】
車両管制装置2は、
図2Aから
図2Cに示す処理P1フローを開始すると、情報統合部21によって共通死角マップMbを生成する処理P1を実行する。より具体的には、情報統合部21は、たとえば、車両Vの車両制御装置3から無線通信回線およびネットワークを介して、その車両Vに搭載された車両センサVSによるその車両Vの周囲の物体の検出結果を取得する。
【0020】
また、情報統合部21は、たとえば、その車両Vの走行経路に隣接するインフラセンサISから、その車両Vの周囲の物体の検出結果を取得する。さらに、情報統合部21は、たとえば、車両センサVSの検出結果とインフラセンサISの検出結果を統合して、
図3に示すように、車両センサVSおよびインフラセンサISの双方の死角となる共通死角CBAの位置情報を含む共通死角マップMbを生成する。
【0021】
次に、車両管制装置2は、たとえば、
図2Aに示すように、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの車両Vの進入可否を判定する処理P6を実行する。なお、情報統合部21は、処理P1の終了後、処理P6の開始前に、
図2Bおよび
図2Cに示す処理P2から処理P5を実行してもよい。
【0022】
処理P2において、情報統合部21は、車両Vから後述するリスク領域RAへの進入要求を受信したか否かを判定する。情報統合部21は、処理P2で進入要求を未受信であること(NO)を判定すると、進入要求を受信したこと(YES)が判定されるまで、処理P1で共通死角マップMbを生成する処理を所定の周期で繰り返す。これにより、車両Vからリスク領域RAへの進入要求を受信するまで、共通死角マップMbを最新の状態に更新することができる。車両管制装置2は、処理P2で進入要求を受信したこと(YES)を判定すると、たとえば、リスクマップMr(
図4C参照)を生成する処理P3を実行する。
【0023】
図4Aは、
図1Aの車両Vの周囲に存在し得る被遮蔽物HOの規定方法の一例を示す平面図である。
図4Bおよび
図4Cは、
図1Bのリスク評価部22を構成するリスク判定部221の処理P3を説明する平面図である。処理P3において、リスク判定部221は、たとえば、
図4Aに示すように、車両管制装置2のメモリに格納された被遮蔽物HOの大きさを取得する。
【0024】
車両Vの周囲に存在する可能性がある被遮蔽物HOの形状および大きさは、たとえば、車両管制システム1および車両管制装置2のユーザまたは管理者によってあらかじめ設定されて車両管制装置2のメモリに格納される。被遮蔽物HOは、たとえば、移動体と静止物を含む。移動体は、たとえば、車両および歩行者を含む。静止物は、たとえば、駐車車両やその他の障害物OBを含む。
【0025】
たとえば、車両Vがコンテナ港湾でコンテナを搬出するトレーラである場合、車両Vの周囲には他のトレーラが存在する可能性がある。そのため、車両管制システム1および車両管制装置2のユーザまたは管理者は、たとえば、
図4Aに示すように、被遮蔽物HOとしてトレーラを規定し、被遮蔽物HOの大きさとして、トレーラの全長Lや幅Wなどを車両管制装置2に入力してメモリに格納する。
【0026】
処理P3において、リスク判定部221は、たとえば、
図4Bに示すように、共通死角マップMbと被遮蔽物HOの大きさに基いて、共通死角CBAを被遮蔽物HOで走査し、共通死角CBAにおける被遮蔽物HOの全体を包含する領域の有無を判定する。リスク判定部221は、
図4Bに示すように、共通死角CBAに被遮蔽物HOの全体を包含する領域があることを判定すると、
図4Cに示すように、その被遮蔽物HOを包含する領域の位置情報を含むリスクマップMrを生成する。
【0027】
その後、車両管制装置2は、たとえば、経路予測部222によって被遮蔽物HOの予測経路ER(
図5B参照)を生成する処理P4を実行する。この処理P4において、経路予測部222は、リスク判定部221によって共通死角CBAに存在するリスクが判定された被遮蔽物HOとしての移動体の予測経路ERを生成する。
【0028】
図5Aおよび
図5Bは、
図1Bのリスク評価部22を構成する経路予測部222の処理を説明する平面図である。経路予測部222は、車両Vの周囲の高精度地図データHDを取得する。高精度地図データHDは、たとえば、道路位置、道路方向、交通規制、速度制限などの情報を含み、車両管制装置2のメモリに格納されている。さらに、経路予測部222は、たとえば、取得した高精度地図データHDと、
図4Cに示すリスクマップMrと、に基いて、
図5Bに示すように、共通死角CBAに存在し得る移動体としての被遮蔽物HOの予測経路ERを生成する。その後、車両管制装置2は、たとえば、
図2Bに示すように、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの車両Vの進入可否を判定する処理P6を実行する。
【0029】
なお、車両管制装置2は、たとえば、
図2Cに示すように、処理P6の前に、車両Vの経路を取得する処理P5を実行してもよい。この処理P5において、車両管制装置2の進入可否判定部223は、たとえば、車両Vの車両制御装置3から、無線通信回線およびネットワークを介して、車両Vが走行を予定している経路である予定経路VR(
図6参照)を取得する。その後、車両管制装置2は、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの車両Vの進入可否を判定する処理P6を実行する。
【0030】
図6は、
図1Bのリスク評価部22を構成する進入可否判定部223の処理を説明する平面図である。
図2Aから
図2Cに示す処理P6において、進入可否判定部223は、リスク判定部221によるリスクの判定結果に基いてリスク領域RAへの車両Vの進入可否を判定する。リスク領域RAは、たとえば、
図4Cに示すように、リスク判定部221が共通死角CBAにおいて被遮蔽物HOが存在するリスクを判定した領域に隣接する領域である。
【0031】
より具体的には、リスク領域RAは、たとえば、
図5Bに示すように、リスク判定部221によって共通死角CBAに存在するリスクが判定された被遮蔽物HOとしての移動体が、その予測経路ERに沿って移動した場合に通過する帯状の領域である。進入可否判定部223は、処理P6において、
図4Cに示すような共通死角CBAに存在するリスクがあることが判定された被遮蔽物HOに隣接するリスク領域RAへ車両Vが進入しようとしている場合に、進入不可(NO)を判定する。
【0032】
より具体的には、進入可否判定部223は、たとえば、
図5Bに示すように、共通死角CBAに存在するリスクが判定された移動体としての被遮蔽物HOがその予測経路ERに沿って移動した場合に通過する帯状のリスク領域RAへ車両Vが進入しようとしている場合に、進入不可を判定する。より詳細には、進入可否判定部223は、たとえば、
図6に示すように、予測経路ERに沿って移動する移動体としての被遮蔽物HOが通過する可能性があるリスク領域RAと車両Vの予定経路VRとが重なる場合に、進入不可を判定する。
【0033】
すなわち、進入可否判定部223は、たとえば、リスク判定部221によって共通死角CBAに移動体が存在するリスクが判定された場合に、車両Vの予定経路VRと経路予測部222によって生成された移動体の予測経路ERとに基いて、リスク領域RAへの進入可否を判定する。進入可否判定部223は、処理P6において車両Vのリスク領域RAへの進入不可(NO)を判定すると、車両Vへ停車位置SPを送信する処理P7を実行する。停車位置SPは、たとえば、
図6に示すように、車両Vの予定経路VR上で、リスク領域RAよりも手前の位置に設定される。
【0034】
図7は、
図1Aの車両管制システム1を構成する車両制御装置3の動作を説明するフロー図である。車両制御装置3は、たとえば、予定経路VRの前方にリスク領域RAが存在する場合に、
図7に示す処理フローを開始して、リスク領域RAへの進入要求を送信する処理P31を実行する。車両管制装置2は、車両Vから進入要求を受信すると、たとえば、
図2Bおよび
図2Cに示す処理P2において車両Vから進入要求があったこと(YES)を判定し、前述の処理P2から処理P6までを実行して、車両Vへ進入可否の判定結果を送信する。
【0035】
車両Vに搭載された車両制御装置3は、車両管制装置2からリスク領域RAへの進入不可の判定結果と停車位置SPを受信すると、
図7に示す進入可否判定処理P32において、進入不可(NO)を判定する。この場合、車両制御装置3は、車両Vの走行を制御して、車両管制装置2から受信した停車位置SPに車両Vを停車させる処理P33を実行する。
【0036】
なお、車両管制装置2の進入可否判定部223は、前述の停車位置SPを送信する処理P7において、停車位置SPとともに、車両Vが停車位置SPで停車するために減速を開始する減速開始位置DSP(
図6参照)を車両Vへ送信してもよい。この場合、車両制御装置3は、車両Vを停車位置SPに停車させる処理P33において、車両管制装置2から受信した減速開始位置DSPから車両Vを減速させるように、車両Vの走行を制御する。
【0037】
また、進入可否判定部223は、前述の停車位置SPを送信する処理P7の終了後、
図2Cに示すように、車両Vが停車位置SPで停車するための速度プロファイルを車両Vへ送信する処理P8を実行してもよい。この場合、車両制御装置3は、車両Vを停車位置SPに停車させる処理P33において、車両管制装置2から受信した速度プロファイルに従って車両Vを減速させるように、車両Vの走行を制御する。
【0038】
その後、車両管制装置2は、
図2Aから
図2Cに示す処理フローを終了させて所定の周期で繰り返し実行する。また、車両制御装置3は、
図7に示す処理フローを終了させて所定の周期で繰り返し実行する。すなわち、車両管制装置2は、前述の処理P7において、進入可否判定部223によって車両Vへ停車位置SPを送信した後に、処理P1を実行して情報統合部21によって共通死角CBAを再生成する。また、リスク判定部221は、共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクを再判定し、進入可否判定部223は、リスク判定部221の再判定結果に基いて進入可否を再判定して車両Vへ再送信する。
【0039】
これにより、車両Vが減速して停車位置SPに停車するまでの間に、車両センサVSの死角が減少して共通死角CBAが被遮蔽物HOの大きさよりも小さくなると、リスク判定部221は、共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクがないことを判定する。その結果、進入可否判定部223は、進入可否を判定する処理P6で、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの進入可(YES)を判定し、車両Vへリスク領域RAへの進入可の判定結果を送信する処理P9を実行する。
【0040】
車両制御装置3は、車両管制装置2からリスク領域RAへの進入可の判定結果を受信すると、
図7に示す処理P32において、車両Vのリスク領域RAへの進入可(YES)を判定し、車両Vを予定経路VRに沿って走行させる処理P34を実行する。その後、車両制御装置3は、
図7に示す処理フローを終了させ、所定の周期で繰り返す。
【0041】
以下、本実施形態の車両管制システム1および車両管制装置2の作用を説明する。
【0042】
図3に示すように、たとえば、多数のコンテナなどの障害物OBが集積されるコンテナ港湾では、コンテナ船から降ろされたコンテナが新たに集積されたり、集積されたコンテナがトレーラに積載されて搬出されたりすることで、障害物OBの配置が頻繁に変更される。このような場所では、車両Vに搭載されて車両Vの周囲の障害物OBを検出する車両センサVSと、車両Vの外部に配置されて車両Vの周囲の障害物OBを検出するインフラセンサISの双方から見て死角になる領域が発生することがある。
【0043】
上記特許文献1に記載された表示制御システムは、車両に設けられた車両センサから見て死角になる死角領域に存在する物体を道路に設けられたインフラセンサによって検出して、死角領域に関する死角情報を車両に表示させることができる。しかし、この従来の表示制御システムは、車両センサとインフラセンサの双方の死角になる領域が発生することを想定していない。
【0044】
これに対し、本実施形態の車両管制装置2は、情報統合部21と、リスク判定部221と、進入可否判定部223とを備えている。情報統合部21は、車両Vに搭載されてその車両Vの周囲の物体を検出する車両センサVS、および、その車両Vの走行経路に隣接して配置されてその車両Vの周囲の物体を検出するインフラセンサISの双方の死角となる共通死角CBAの位置情報を含む共通死角マップMbを生成する。リスク判定部221は、共通死角マップMbおよび車両Vの周囲に存在する可能性がある被遮蔽物HOの大きさに基いて共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクを判定する。進入可否判定部223は、リスク判定部221による上記リスクの判定結果に基いて共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの車両Vの進入可否を判定し、その進入可否の判定結果が進入不可であった場合にリスク領域RAよりも手前の停車位置SPを車両Vへ送信する。
【0045】
このような構成により、本実施形態の車両管制装置2は、情報統合部21が生成した共通死角マップMbと被遮蔽物HOの大きさに基いて、リスク判定部221が共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクを判定することができる。そのため、リスク判定部221によって共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクがないことが判定された場合には、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAに進入する車両Vを減速および停車させることなく走行させることができる。したがって、車両センサVSとインフラセンサISが共通死角CBAを有する場合でも、安全性を確保しつつ、高度運転支援システムを備えた車両V、または、自動運転車である車両Vの走行効率を向上させることができる。また、リスク判定部221によって共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクがあることが判定された場合には、進入可否判定部223によって車両Vのリスク領域RAへの進入不可が判定され、車両Vへリスク領域RAよりも手前の停車位置SPが送信される。これにより、共通死角CBAに存在する可能性がある被遮蔽物HOと車両Vとの接触を確実に回避して安全性を向上させることが可能になる。
【0046】
また、本実施形態の車両管制装置2において、進入可否判定部223は、車両Vが停車位置SPで停車するために減速を開始する減速開始位置DSPを車両Vへ送信する。このような構成により、本実施形態の車両管制装置2によれば、停車位置SPの手前での車両Vの急な減速を回避して、車両Vをリスク領域RAの手前の停車位置SPに安全に停車させることができる。
【0047】
また、本実施形態の車両管制装置2において、進入可否判定部223は、車両Vが停車位置SPで停車するための速度プロファイルを車両Vへ送信する。このような構成により、本実施形態の車両管制装置2によれば、停車位置SPの手前での車両Vの急な減速を回避することができるだけでなく、所定の減速度でより安全かつ円滑に車両Vを停車位置SPに停車させることができる。
【0048】
また、本実施形態の車両管制装置2は、リスク判定部221によって共通死角CBAに存在するリスクが判定された被遮蔽物HOとしての移動体の予測経路ERを生成する経路予測部222をさらに備えている。進入可否判定部223は、リスク判定部221によって共通死角CBAに移動体が存在するリスクが判定された場合に、車両Vの予定経路VRと経路予測部222によって生成された移動体の予測経路ERとに基いてリスク領域RAへの進入可否を判定する。
【0049】
このような構成により、予測経路ERを移動する移動体である被遮蔽物HOと車両Vとの接触をより確実に回避して安全性を向上させることができる。また、共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクある場合でも、たとえば、予測経路ERに沿って移動する被遮蔽物HOが通過する領域と、予定経路VRに沿って走行する車両Vが通過する領域とが重ならない場合がある。その場合、進入可否判定部223は、リスク領域RAへの進入可を判定することができ、車両Vがリスク領域RAの手前で減速および停車することが回避され、車両Vの安全性を確保しつつ走行効率を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態の車両管制装置2では、進入可否判定部223による車両Vへの停車位置SPの送信後に、情報統合部21は、共通死角マップMbを再生成する。また、リスク判定部221は、共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクを再判定する。そして、進入可否判定部223は、リスク判定部221の再判定結果に基いて車両Vのリスク領域RAへの進入可否を再判定して車両Vへ再送信する。
【0051】
このような構成により、前述のように、車両Vが前進して車両センサVSの死角が減少し、共通死角CBAが被遮蔽物HOの大きさよりも小さくなると、リスク判定部221によって共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクがないことが判定される。その結果、進入可否判定部223は、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの進入可を判定し、車両Vへリスク領域RAへの進入可の判定結果を送信することができる。したがって、本実施形態の車両管制装置2によれば、車両Vがリスク領域RAの手前で停車することを減少させ、安全性を確保しつつ車両Vを効率よく走行させることが可能になる。
【0052】
また、本実施形態の車両管制システム1は、前述の車両管制装置2と、車両Vに搭載されて車両管制装置2に対してリスク領域RAへの進入要求を送信する車両制御装置3と、を含む。また、車両管制装置2の進入可否判定部223は、車両Vからリスク領域RAへの進入要求を受信すると、車両Vへリスク領域RAへの進入可否の判定結果を送信する。また。車両制御装置3は、車両管制装置2から進入不可の判定結果を受信した場合に、車両管制装置2から停車位置SPを受信して車両Vを停車位置SPに停車させる。
【0053】
このような構成により、本実施形態の車両管制システム1は、車両管制装置2の情報統合部21が生成した共通死角マップMbと被遮蔽物HOの大きさに基いて、車両管制装置2のリスク判定部221が共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクを判定することができる。そのため、リスク判定部221によって共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクがないことが判定された場合には、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAに進入する車両Vを車両制御装置3によって減速および停車させることなく走行させることができる。したがって、車両センサVSとインフラセンサISが共通死角CBAを有する場合でも、安全性を確保しつつ、高度運転支援システムを備えた車両V、または、自動運転車である車両Vの走行効率を向上させることができる。また、車両管制装置2のリスク判定部221によって共通死角CBAに被遮蔽物HOが存在するリスクがあることが判定された場合には、車両管制装置2の進入可否判定部223によって車両Vのリスク領域RAへの進入不可が判定され、車両Vに搭載された車両制御装置3へリスク領域RAよりも手前の停車位置SPが送信される。これにより、共通死角CBAに存在する可能性がある被遮蔽物HOと車両Vとの接触を確実に回避して安全性を向上させることが可能になる。
【0054】
また、本実施形態の車両管制システム1において、車両管制装置2の進入可否判定部223は、車両Vが停車位置SPで停車するために減速を開始する減速開始位置DSPを車両Vへ送信する。また、車両制御装置3は、車両管制装置2から受信した減速開始位置DSPから車両Vを減速させる。このような構成により、前述のように、本実施形態の車両管制システム1によれば、停車位置SPの手前での車両Vの急な減速を回避して、車両Vをリスク領域RAの手前の停車位置SPに安全に停車させることができる。
【0055】
また、本実施形態の車両管制システム1において、車両管制装置2の進入可否判定部223は、車両Vが停車位置SPで停車するための速度プロファイルを車両Vへ送信する。また、車両制御装置3は、車両管制装置2から受信した速度プロファイルに従って車両Vを減速させる。このような構成により、前述のように、本実施形態の車両管制システム1によれば、停車位置SPの手前での車両Vの急な減速を回避することができるだけでなく、所定の減速度でより安全かつ円滑に車両Vを停車位置SPに停車させることができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両Vに搭載される車両センサVSとその車両Vが走行する場所に隣接して配置されるインフラセンサISの双方の死角となる領域が発生する場合のリスクに対処可能な車両管制装置2および車両管制システム1を提供することができる。
【0057】
[実施形態2]
以下、
図8Aから
図9Bまでを参照して、本開示に係る車両管制装置および車両管制システムの実施形態2を説明する。
図8Aは、
図1Aの車両Vの周囲に存在し得る被遮蔽物HOの規定方法の一例を示す平面図である。
図8Bおよび
図8Cは、
図1Bのリスク評価部22を構成するリスク判定部221の処理を説明する平面図である。
【0058】
本実施形態の車両管制装置2および車両管制システム1は、車両管制装置2のメモリに被遮蔽物HOとして歩行者の大きさが格納されている点で、前述の実施形態1の車両管制装置2および車両管制システム1と異なっている。本実施形態の車両管制装置2および車両管制システム1のその他の点は、前述の実施形態1の車両管制装置2および車両管制システム1と同様であるので、同様の部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
前述の
図2Bおよび
図2Cに示す処理P3において、リスク判定部221は、たとえば、
図8Aに示すように、車両管制装置2のメモリに格納された被遮蔽物HOとしての歩行者の大きさを取得する。また、処理P3において、リスク判定部221は、たとえば、
図8Bに示すように、共通死角マップMbと被遮蔽物HOの大きさに基いて、共通死角CBAを被遮蔽物HOで走査し、共通死角CBAにおける被遮蔽物HOの全体を包含する領域の有無を判定する。
【0060】
リスク判定部221は、
図8Bに示すように、共通死角CBAに被遮蔽物HOの全体を包含する領域があることを判定すると、
図8Cに示すように、その被遮蔽物HOを包含する領域の位置情報を含むリスクマップMrを生成する。その後、車両管制装置2は、たとえば、経路予測部222によって被遮蔽物HOの予測経路を生成する処理P4を実行する。この処理P4において、経路予測部222は、リスク判定部221によって共通死角CBAに存在するリスクが判定された被遮蔽物HOとしての歩行者の予測経路を生成する。
【0061】
図9Aおよび
図9Bは、
図1Bのリスク評価部を構成する経路予測部222の処理を説明する平面図である。経路予測部222は、車両Vの周囲の高精度地図データHDを取得する。高精度地図データHDは、たとえば、道路位置、歩道SW、横断歩道PCなどの情報を含み、車両管制装置2のメモリに格納されている。
【0062】
さらに、経路予測部222は、たとえば、取得した高精度地図データHDと、
図8Cに示すリスクマップMrと、に基いて、
図9Bに示すように、共通死角CBAに存在し得る歩行者としての被遮蔽物HOの予測経路ERを生成する。その後、車両管制装置2は、たとえば、
図2Bに示すように、共通死角CBAに隣接するリスク領域RAへの車両Vの進入可否を判定する処理P6を実行する。
【0063】
このような構成により、本実施形態の車両管制装置2および車両管制システム1によれば、被遮蔽物HOが歩行者である場合でも、前述の実施形態1の車両管制装置2および車両管制システム1と同様の効果を奏することができる。
【0064】
以上、図面を用いて本開示に係る車両管制装置および車両管制システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 車両管制システム
2 車両管制装置
3 車両制御装置
21 情報統合部
221 リスク判定部
222 経路予測部
223 進入可否判定部
CBA 共通死角
DSP 減速開始位置
ER 予測経路
HO 被遮蔽物
IS インフラセンサ
RA リスク領域
SP 停車位置
V 車両
VR 予定経路
VS 車両センサ