(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179524
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】タンパク質における別のタンパク質と相互作用する部分の特定方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/00 20060101AFI20241219BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C12N15/00 100Z
C12N15/63 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】42
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098438
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(72)【発明者】
【氏名】横山 三紀
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 和恵
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健作
(72)【発明者】
【氏名】大竹 和正
(57)【要約】
【課題】 本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法であって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程を含む、方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法であって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程を含む、方法。
【請求項2】
さらに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための請求項1に記載の方法であって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程である、方法。
【請求項3】
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、非天然アミノ酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、光に反応して架橋反応を起こす物質である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、非天然アミノ酸であり、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程であり、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質と、架橋物質とを含む細胞内で、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を翻訳させる工程を含み、
第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
さらに、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、架橋物質を細胞に導入する工程とを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程を含み、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質における物質が、プラスミドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
さらに、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第1のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入して、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を取得する工程を含む、請求項6~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
所定のコドンが、終止コドンである、請求項7~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
タンパク質を切断するための物質である切断物質が、非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
タンパク質を切断するための物質である切断物質が、アルカリ条件下で主鎖の切断を引き起こす物質である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質を切断するための物質である切断物質が、非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸であり、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程が、所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質と、切断物質とを含む細胞内で、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を翻訳させる工程を含み、
第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
さらに、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、架橋物質を細胞に導入する工程とを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程を含み、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、請求項16~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質における物質が、プラスミドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
さらに、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第2のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入して、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を取得する工程を含む、請求項16~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
所定のコドンが、終止コドンである、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせて、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、及び
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
【請求項26】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせ、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離する工程、
単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、及び
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
【請求項27】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせて、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程、及び
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
【請求項28】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせ、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離する工程、
単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程、及び
架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
【請求項29】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせること、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することからなる群から選ばれる少なくとも1つのことが、細胞内で行われる、請求項25~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、又は架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させることと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせることと、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することとが、細胞内で行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第2のタンパク質が、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在しうることが確認されたものである、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットであって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するための物質、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質を含む、キット。
【請求項33】
請求項32に記載のキットであって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するための物質が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質であり、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び架橋物質からなる群から選ばれる、キット。
【請求項34】
請求項32又は33に記載のキットであって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質、又は当該翻訳させるための物質を取得するための物質を含み、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、キット。
【請求項35】
請求項32~34のいずれか1項に記載のキットであって、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び切断物質からなる群から選ばれる、キット。
【請求項36】
請求項32~35のいずれか1項に記載のキットであって、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質、又は当該翻訳させるための物質を取得するための物質を含み、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、キット。
【請求項37】
所定のコドンが、終止コドンである、請求項33~36のいずれか1項に記載のキット。
【請求項38】
第1のタンパク質と相互作用する物質を製造する方法であって、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質を製造する方法。
【請求項39】
第1のタンパク質と相互作用する物質を製造するための物質を製造する方法であって、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質を製造するための物質を製造する方法。
【請求項40】
第1のタンパク質を分解するための物質を製造する方法であって、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を製造することを含む、方法。
【請求項41】
第1のタンパク質を分解するための物質を製造するための物質を製造する方法であって、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を製造するための物質を製造することを含む、方法。
【請求項42】
第1のタンパク質を分解する方法であって、請求項25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を、第1のタンパク質と接触させる工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法、及び第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットなどに関する。より具体的には、本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は20種類のアミノ酸(標準アミノ酸)から構成される。これ以外の非標準アミノ酸を部位特異的にタンパク質に導入する技術は、タンパク質の機能解明や、新しい機能を持つタンパク質の創出など、さまざまな応用可能性を持つ技術として開発されてきた。その応用例の一つとして、部位特異的に架橋部位を導入することによるタンパク質間相互作用の解析がある。例えば、非特許文献1は、非天然アミノ酸であるパラ-ベンゾイル-L-フェニルアラニンを導入する方法を開示している。非特許文献2は、非天然アミノ酸であるイプシロン-N-アロック-アルファ-ヒドロキシ-L-リジンを導入する方法を開示している。部位特異的に非天然アミノ酸を導入するにあたっては、通常は、アミノ酸に対応せずタンパク質合成を終了させる暗号(終止コドン)を、非天然アミノ酸に対応させる(非特許文献1及び4)。
【0003】
タンパク質同士がどの部分を接触面として複合体を形成しているかを知ることは、複合体形成に依存した生体反応(酵素反応、抗原抗体反応、シグナル伝達)を制御するにあたって多大な貢献をする。これまでの方法では、例えば第1のタンパク質と第2のタンパク質の接触面を調べる場合に、第1のタンパク質に架橋部位を導入して第2のタンパク質との架橋反応が起こるかを知ることにより、第2のタンパク質との相互作用に関与する第1のタンパク質側の接触面を調べるものであった。非特許文献3は、LAMP2A-FLAGのR278の位置に非天然アミノ酸であるパラ-ベンゾイル-L-フェニルアラニンを導入するとLAMP2A-MYCとの間に架橋が形成されることを開示している。しかしこの方法では、形成された架橋が第2のタンパク質のどの部分との架橋なのかが分からず、第2のタンパク質側の接触面がわからない点が課題だった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】N. Hino, Y. Okazaki, T. Kobayashi, A. Hayashi, K. Sakamoto, S. Yokoyama, Protein photo-cross-linking in mammalian cells by site-specific incorporation of a photoreactive amino acid, Nature methods 2 (2005) 201-206. 10.1038/nmeth739.
【非特許文献2】N. Hino, K. Sakamoto, S. Yokoyama, Site-specific incorporation of unnatural amino acids into proteins in mammalian cells, Methods in molecular biology (Clifton, N.J.) 794 (2012) 215-228. 10.1007/978-1-61779-331-8_13.
【非特許文献3】K. Terasawa, Y. Kato, Y. Ikami, K. Sakamoto, K. Ohtake, S. Kusano, Y. Tomabechi, M. Kukimoto-Niino, M. Shirouzu, J.L. Guan, T. Kobayashi, T. Iwata, T. Watabe, S. Yokoyama, M. Hara-Yokoyama, Direct homophilic interaction of LAMP2A with the two-domain architecture revealed by site-directed photo-crosslinks and steric hindrances in mammalian cells, Autophagy 17 (2021) 4286-4304. 10.1080/15548627.2021.1911017.
【非特許文献4】Nature Protocol 1: 2957-2962 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法を提供することを目的とする。より具体的には、本発明は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程を含む方法によれば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定しうることを見出した。
【0007】
より具体的な態様の本発明においては、例えば、本発明では、第1のタンパク質への架橋部位の導入と同時に、第2のタンパク質の側に主鎖がアルカリ分解されるようにヒドロキシ酸(切断部位)を部位特異的に導入する。そして、例えば、第2のタンパク質の例えばC末端に検出用のタグを付加しておき、架橋反応を行う。この場合において、架橋反応を行わせた後に架橋物をアルカリ分解した場合に、架橋物に第2のタンパク質のタグが残る場合には、切断部位は架橋部位よりもN末側にあったことなり、タグが残らなかった場合にはC末側にあったことになる。そこで、例えば、切断部位を複数検討することにより、架橋が入るタンパク質側の部位を絞り込むことができる。
【0008】
すなわち、本発明は、以下を提供するものである。
[態様1] 第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法であって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程を含む、方法。
[態様2] さらに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための態様1に記載の方法であって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程である、方法。
[態様3] タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程である、態様1又は2に記載の方法。
[態様4] タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程である、態様1~3のいずれか1項に記載の方法。
[態様5] タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、非天然アミノ酸である、態様1~4のいずれか1項に記載の方法。
[態様6] タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、光に反応して架橋反応を起こす物質である、態様1~5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7] タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、非天然アミノ酸であり、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程であり、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質と、架橋物質とを含む細胞内で、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を翻訳させる工程を含み、
第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、態様1~6のいずれか1項に記載の方法。
[態様8] さらに、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、架橋物質を細胞に導入する工程とを含む、態様7に記載の方法。
[態様9] 所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、態様8に記載の方法。
[態様10] 所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、態様8又は9に記載の方法。
[態様11] さらに、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程を含み、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、態様6~10のいずれか1項に記載の方法。
[態様12] 第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質における物質が、プラスミドである、態様11に記載の方法。
[態様13] さらに、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第1のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入して、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を取得する工程を含む、態様6~12のいずれか1項に記載の方法。
[態様14] 所定のコドンが、終止コドンである、態様7~13のいずれか1項に記載の方法。
[態様15] タンパク質を切断するための物質である切断物質が、非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸である、態様1~14のいずれか1項に記載の方法。
[態様16] タンパク質を切断するための物質である切断物質が、アルカリ条件下で主鎖の切断を引き起こす物質である、態様1~15のいずれか1項に記載の方法。
[態様17] タンパク質を切断するための物質である切断物質が、非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸であり、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程が、所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質と、切断物質とを含む細胞内で、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を翻訳させる工程を含み、
第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、態様1~16のいずれか1項に記載の方法。
[態様18] さらに、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、架橋物質を細胞に導入する工程とを含む、態様17に記載の方法。
[態様19] 所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、態様18に記載の方法。
[態様20] 所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質が、プラスミドである、態様18又は19に記載の方法。
[態様21] さらに、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程を含み、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、態様16~20のいずれか1項に記載の方法。
[態様22] 第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質における物質が、プラスミドである、態様21に記載の方法。
[態様23] さらに、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第2のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入して、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を取得する工程を含む、態様16~22のいずれか1項に記載の方法。
[態様24] 所定のコドンが、終止コドンである、態様17~23のいずれか1項に記載の方法。
[態様25] 第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせて、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、及び
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
[態様26] 第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせ、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離する工程、
単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、及び
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
[態様27] 第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせて、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程、及び
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
[態様28] 第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であって、
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程、
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程、
架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせ、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程、
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離する工程、
単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程、
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程、及び
架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程
を含む、方法。
[態様29] 架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせること、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することからなる群から選ばれる少なくとも1つのことが、細胞内で行われる、態様25~28のいずれか1項に記載の方法。
[態様30] 架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、又は架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させることと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせることと、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することとが、細胞内で行われる、態様29に記載の方法。
[態様31] 第2のタンパク質が、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在しうることが確認されたものである、態様1~30のいずれか1項に記載の方法。
[態様32] 第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットであって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するための物質、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質を含む、キット。
[態様33] 態様32に記載のキットであって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するための物質が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質であり、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び架橋物質からなる群から選ばれる、キット。
[態様34] 態様32又は33に記載のキットであって、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質、又は当該翻訳させるための物質を取得するための物質を含み、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、キット。
[態様35] 態様32~34のいずれか1項に記載のキットであって、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び切断物質からなる群から選ばれる、キット。
[態様36] 態様32~35のいずれか1項に記載のキットであって、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質が、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質、又は当該翻訳させるための物質を取得するための物質を含み、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、キット。
[態様37] 所定のコドンが、終止コドンである、態様33~36のいずれか1項に記載のキット。
[態様38] 第1のタンパク質と相互作用する物質を製造する方法であって、態様25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質を製造する方法。
[態様39] 第1のタンパク質と相互作用する物質を製造するための物質を製造する方法であって、態様25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質を製造するための物質を製造する方法。
[態様40] 第1のタンパク質を分解するための物質を製造する方法であって、態様25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を製造することを含む、方法。
[態様41] 第1のタンパク質を分解するための物質を製造するための物質を製造する方法であって、態様25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を製造するための物質を製造することを含む、方法。
[態様42] 第1のタンパク質を分解する方法であって、態様25~30のいずれか1項に記載の方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を、第1のタンパク質と接触させる工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法によれば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定することに寄与することができる。
本発明の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法によれば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定することに寄与することができる。
本発明の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法によれば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定することができる。
本発明の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法によれば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定することができる。
より具体的な態様の本発明の方法によれば、第1のタンパク質と第2のタンパク質の細胞内における複合体形成の接触面を特定することができる。
より具体的な態様の本発明の方法によれば、生体膜に組み込まれた状態を単離しなくても第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定することができるから、より具体的な態様の本発明の方法は、結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡とは一線を画する。
より具体的な態様の本発明の方法によれば、第1のタンパク質と第2のタンパク質を細胞内において発現させて架橋するので、第1のタンパク質と第2のタンパク質との結合に関与する因子である第3のタンパク質が同定されていなくても、第1のタンパク質と第2のタンパク質が相互作用する部位を同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、LAMP2A-FLAG内の架橋部位によりLAMP2A-MYCをLAMP2A-FLAGに架橋した後、LAMP2A-MYC内の切断部位を切断して得られた切断物を、切断前と対比して、検出する写真である。
【
図2】
図2は、すでに架橋部位(pBpa)の導入用に作成したmouse LAMP2Aのamber mutantを用いて、AlocLysOHが導入されるかどうかを調べた結果を示す。
【
図3】
図3は、AlocLysOHを導入するとアルカリ処理をしなくても切断が起こる部位を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
相互作用する部分を特定するための方法:
本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法は、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程を含む。
【0012】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質としては、例えば、タンパク質から、例えば、20Å以下、より具体的には、10Å以下、さらに具体的には、5Å以下に位置する別のタンパク質に架橋する物質が挙げられる。タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質は、例えば、光反応性の側鎖をもつ非天然アミノ酸などの非天然アミノ酸である。非天然アミノ酸とは、天然の生物で遺伝的にコードされているアミノ酸以外のアミノ酸を意味する。したがって、非天然アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸を包含しうる。なお、遺伝的にコードされているアミノ酸とは、生物が普遍的に利用する20種類の標準型アミノ酸に、セレノメチオニン(Selenomethionine)、ピロリジン(Pyrrolysine)を加えた22種類のアミノ酸のことである。本明細書の別の箇所における「非天然アミノ酸」も、同じ意味とする。また、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質は、例えば、光に反応して架橋反応を起こす物質である。光に反応して架橋反応を起こす物質としては、例えば365 nmの波長の光に反応して架橋反応を起こす物質が挙げられる。非天然アミノ酸であり、光に反応して架橋反応を起こす物質である、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質としては、例えば、パラ-ベンゾイル-L-フェニルアラニンのほか、N-イプシロン-オルト-アジドベンゾイル-L-リジン、N-イプシロン-メタ-アジドベンゾイル-L-リジン、及び下記の1に記載した分子などが挙げられる。パラ-ベンゾイル-L-フェニルアラニンは、タンパク質から3Å~5Åに位置する別のタンパク質に架橋する。
【表1】
【0013】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質は、好ましくは、第1のタンパク質に導入しても第1のタンパク質の主要な機能を妨げない物質である。第1のタンパク質の主要な機能としては、例えば、第2のタンパク質に対する第1のタンパク質の相互作用が挙げられる。タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質の分子量は、例えば、200~500である。
【0014】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入する第1のタンパク質の部位は、所定の部位でなくてもよい。すなわち、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入する第1のタンパク質の部位は、例えば、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入する前から特定されていることを必須とするものではない。また、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入する第1のタンパク質の部位は、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する全ての工程において特定されていなくてもよい。タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入することは、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質をランダムに導入することであってもよい。
【0015】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程は、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程であってもよい。この場合、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法は、さらに第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法である。
【0016】
第1のタンパク質における第1の所定の部位において、所定の部位は、例えば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法の前後を含め、そのいずれかの時点において特定されている部位である。第1のタンパク質における第1の所定の部位において、所定の部位は、例えば、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入される前において特定されている部位である。第1のタンパク質における第1の所定の部位において、第1の所定の部位は、第2の所定の部位と区別するための表記であるが、第1の所定の部位が第2の所定の部位に対して時間、位置、その他において先行していることを必須とするものではなく、第2の所定の部位と一致することを妨げるものではない。また、第1のタンパク質における第1の所定の部位は、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入する個数が1個に限られることを含意するものではない。
【0017】
第1のタンパク質における第1の所定の部位は、例えば、第2のタンパク質の変異体に対する第1のタンパク質の変異体の相互作用を妨げないものの、第2のタンパク質の変異体に対して第1のタンパク質の変異体を架橋する観点から、第2のタンパク質と相互作用することが予想された第1のタンパク質における部位から、5アミノ酸~10アミノ酸だけ離れた部位である。
【0018】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質が、非天然アミノ酸である場合において、さらに、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程が、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程である場合には、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程は、例えば、所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質と、架橋物質とを含む細胞内で、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を翻訳させる工程を含んでもよく、ここで、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。
【0019】
所定のコドンを認識する物質における物質としては、例えば、tRNAなどが挙げられる。所定のコドンを認識する物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。
【0020】
所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質としては、例えば、アミノアシルtRNA合成酵素などが挙げられる。所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。
【0021】
所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質と、架橋物質とを含む細胞は、例えば、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、架橋物質を細胞に導入する工程とを含む方法により取得することができる。所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質は、例えば、プラスミドなどの核酸である。所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質は、例えば、プラスミドなどの核酸である。所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。なお、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質は、異なる分子であることを必須とするものではなく、これらは同一の分子内にあってもよい。
【0022】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を翻訳させる、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、例えば、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第1のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入することにより、取得することができる。第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第1のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入することは、例えば、部位特異的に遺伝子を変異するための方法により行うことができる。
【0023】
所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質と、架橋物質とを含む細胞内で、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を翻訳させる工程のためには、例えば、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程を行ってもよく、ここで、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質における物質は、例えば、プラスミドである。第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質は、例えば、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体のほか、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を転写するためのプロモーターなどを含む。第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程は、例えば、核酸を細胞に導入するための方法により行うことができる。
【0024】
所定のコドンは、例えば、第1の所定の部位を除く第1のタンパク質における部位のいずれもが対応していないコドンである。所定のコドンは、例えば、終止コドンであり、好ましくは、第1のタンパク質における翻訳を終結する位置のコドンが対応していない終止コドンである。
【0025】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程は、例えば、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程であってもよい。
【0026】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程において、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入することと、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入することの前後は問わず、これらは同時であってもよい。
【0027】
タンパク質を検出するための物質である検出物質における物質としては、例えば、タンパク質などが挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質としては、例えば、結合する物質が特定されている物質が挙げられる。結合する物質における物質としては、例えば、抗体が挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質としては、好ましくは、第1のタンパク質に導入しても第1のタンパク質の主要な機能を妨げない物質である。第1のタンパク質の主要な機能としては、例えば、第2のタンパク質に対する第1のタンパク質の相互作用が挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質の分子量は、例えば、200~500である。
【0028】
タンパク質を検出するための物質である検出物質を導入する第1のタンパク質の部位は、所定の部位でなくてもよい。すなわち、タンパク質を検出するための物質である検出物質を導入する第1のタンパク質の部位は、例えば、タンパク質を検出するための物質である検出物質を導入する前から特定されていることを必須とするものではない。また、タンパク質を検出するための物質である検出物質を導入する第1のタンパク質の部位は、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する全ての工程において特定されていなくてもよい。タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入することは、タンパク質を検出するための物質である検出物質をランダムに導入することであってもよい。
【0029】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程は、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程であってもよい。
【0030】
第1のタンパク質における第2の所定の部位において、所定の部位は、例えば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法の前後を含め、そのいずれかの時点において特定されている部位である。第1のタンパク質における第2の所定の部位において、所定の部位は、例えば、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入される前において特定されている部位である。第1のタンパク質における第2の所定の部位において、第2の所定の部位は、第1の所定の部位と区別するための表記であるが、第1の所定の部位が第2の所定の部位に対して時間、位置、その他において先行していることを必須とするものではなく、第1の所定の部位と一致することを妨げるものではない。また、第1のタンパク質における第2の所定の部位は、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入する個数が1個に限られることを含意するものではない。
【0031】
第1のタンパク質における第2の所定の部位は、例えば、第2のタンパク質の変異体に対する第1のタンパク質の変異体の相互作用を妨げない観点から、第1のタンパク質のN末端若しくはC末端又はこれらから5アミノ酸~10アミノ酸だけ離れた部位である。第1のタンパク質における第2の所定の部位は、第1のタンパク質の変異体の翻訳が全長にわたって行われたことを簡易に確認することができる観点から、好ましくは、第1のタンパク質のC末端である。
【0032】
本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法は、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程を含む。
【0033】
タンパク質を切断するための物質である切断物質は、例えば、非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸などである。また、タンパク質を切断するための物質である切断物質は、例えば、pHの変化により分解される物質である。pHの変化により分解される物質は、例えば、アルカリ条件下で主鎖の切断を引き起こす物質である。アルカリ条件下としては、例えば、pH 8~pH 13の条件下が挙げられる。非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸であり、アルカリ条件下で主鎖の切断を引き起こす物質である、タンパク質を切断するための物質である切断物質としては、例えば、イプシロン-N-アロック-アルファ-ヒドロキシ-L-リジン及び下記の表2に記載した分子(J.Mol.Biol. (2009) 385:1352-60.;Molecules. (2018) 23(10):2460.参照)などが挙げられる。さらに表1で示した非天然アミノ酸のアミノ基が水酸基であるヒドロキシ酸も切断物質になりうる。イプシロン-N-アロック-アルファ-ヒドロキシ-L-リジンは、pH 8~pH 13の条件下で分解される。タンパク質を切断するための物質である切断物質が、イプシロン-N-アロック-アルファ-ヒドロキシ-L-リジンである場合において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入する第2のタンパク質における第1の所定の部位のN末端側の直前のアミノ酸がアスパラギンである場合には、アルカリ条件下とせずとも、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の翻訳の後に、タンパク質を切断するための物質である切断物質が自発的に切断して、後述する、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得することに寄与することができる。この切断には、脱アミド化の過程が関与することが考えられる。
【表2】
【0034】
タンパク質を切断するための物質である切断物質は、好ましくは、第2のタンパク質に導入しても第2のタンパク質の主要な機能を妨げない物質である。第2のタンパク質の主要な機能としては、例えば、第1のタンパク質に対する第2のタンパク質の相互作用が挙げられる。タンパク質を切断するための物質である切断物質の分子量は、例えば、200~500である。
【0035】
第2のタンパク質における第1の所定の部位において、所定の部位は、例えば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法の前後を含め、そのいずれかの時点において特定されている部位である。第2のタンパク質における第1の所定の部位において、所定の部位は、例えば、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質に導入される前において特定されている部位である。第2のタンパク質における第1の所定の部位において、第1の所定の部位は、第2の所定の部位と区別するための表記であるが、第1の所定の部位が第2の所定の部位に対して時間、位置、その他において先行していることを必須とするものではなく、第2の所定の部位と一致することを妨げるものではない。また、第2のタンパク質における第1の所定の部位は、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質に導入する個数が1個に限られることを含意するものではない。
【0036】
第2のタンパク質における第1の所定の部位は、例えば、第1のタンパク質の変異体に対する第2のタンパク質の変異体の相互作用を妨げない観点から、第1のタンパク質と相互作用することが予想された第2のタンパク質における部位から、少なくとも1アミノ酸以上、より好ましくは、3アミノ酸以上離れた部位である。また、第2のタンパク質における第1の所定の部位は、例えば、第1のタンパク質と相互作用することが予想された第2のタンパク質における部位や、後述する第2のタンパク質における第2の所定の部位や、後述する、取得される、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物の予想される分子量や、取得される、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物の分子量の予想される切断前後の変化などに基づき、決定することができる。
【0037】
タンパク質を切断するための物質である切断物質が、非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸である場合において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程は、所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質と、切断物質とを含む細胞内で、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を翻訳させる工程を含んでもよく、ここで、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。
【0038】
所定のコドンを認識する物質における物質としては、例えば、tRNAなどが挙げられる。所定のコドンを認識する物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。
【0039】
所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質としては、例えば、アミノアシルtRNA合成酵素などが挙げられる。所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。
【0040】
所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質と、切断物質とを含む細胞は、例えば、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入する工程と、切断物質を細胞に導入する工程とを含む方法により取得することができる。所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質は、例えば、プラスミドなどの核酸である。所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質は、例えば、プラスミドなどの核酸である。所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質における物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。なお、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質は、異なる分子であることを必須とするものではなく、これらは同一の分子内にあってもよい。
【0041】
切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を翻訳させる、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、例えば、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第2のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入することにより、取得することができる。第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する、第2のタンパク質をコードする遺伝子における部位に所定のコドンを導入することは、例えば、部位特異的に遺伝子を変異するための方法により行うことができる。
【0042】
所定のコドンを認識する物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質と、切断物質とを含む細胞内で、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を翻訳させる工程のためには、例えば、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程を行ってもよく、ここで、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質における物質は、例えば、プラスミドである。第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質は、例えば、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体のほか、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を転写するためのプロモーターなどを含む。第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入する工程は、例えば、核酸を細胞に導入するための方法により行うことができる。
【0043】
所定のコドンは、例えば、第1の所定の部位を除く第2のタンパク質における部位のいずれもが対応していないコドンである。所定のコドンは、例えば、終止コドンであり、好ましくは、第2のタンパク質における翻訳を終結する位置のコドンが対応していない終止コドンである。
【0044】
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程は、例えば、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程であってもよい。
【0045】
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するとともに、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入することと、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入することの前後は問わず、これらは同時であってもよい。
【0046】
タンパク質を検出するための物質である検出物質における物質としては、例えば、タンパク質などが挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質における物質は、天然の物質に限らず、天然の物質を人工的に加工して得られた物質のほか、天然の物質に基づかずに人工的に得られた物質が挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質としては、例えば、結合する物質が特定されている物質が挙げられる。結合する物質における物質としては、例えば、抗体が挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質としては、好ましくは、第2のタンパク質に導入しても第2のタンパク質の主要な機能を妨げない物質である。第2のタンパク質の主要な機能としては、例えば、第1のタンパク質に対する第2のタンパク質の相互作用が挙げられる。タンパク質を検出するための物質である検出物質の分子量は、例えば、1000~4000である。
【0047】
第2のタンパク質における第2の所定の部位において、所定の部位は、例えば、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法の前後を含め、そのいずれかの時点において特定されている部位である。第2のタンパク質における第2の所定の部位において、所定の部位は、例えば、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質に導入される前において特定されている部位である。第2のタンパク質における第2の所定の部位において、第2の所定の部位は、第1の所定の部位と区別するための表記であるが、第1の所定の部位が第2の所定の部位に対して時間、位置、その他において先行していることを必須とするものではなく、第1の所定の部位と一致することを妨げるものではない。また、第2のタンパク質における第2の所定の部位は、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質に導入する個数が1個に限られることを含意するものではない。
【0048】
第2のタンパク質における第2の所定の部位は、例えば、第1のタンパク質の変異体に対する第2のタンパク質の変異体の相互作用を妨げない観点から、第2のタンパク質のN末端若しくはC末端又はこれらから1アミノ酸~3アミノ酸だけ離れた部位である。第2のタンパク質における第2の所定の部位は、第2のタンパク質の変異体の翻訳が全長にわたって行われたことを簡易に確認することができる観点から、好ましくは、第2のタンパク質のC末端である。
【0049】
本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法において、第2のタンパク質は、例えば、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在しうることが確認されたものである。ここで、近傍に存在することは、例えば、5nm~15nmの場所に存在することであり、例えば、10nm程度の場所に存在することである。第2のタンパク質が、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在しうることを確認するためには、例えば、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在した分子を一括してビオチンなどにより修飾し、修飾された分子を特定することができる(eLife(2020) 9:e54983)。
【0050】
相互作用する部分を特定する方法:
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程を含み、この工程は、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法における同工程と同様である。タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程は、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体を取得する工程であってもよい。
【0051】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程を含み、この工程は、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法における同工程と同様である。タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入して、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程は、タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入し、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第2のタンパク質における第2の所定の部位に導入して、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を取得する工程であってもよい。
【0052】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせて、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断して、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を取得する工程を含む。
【0053】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させるためには、例えば、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を同一の細胞内において発現させることができる。架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を同一の細胞内において発現させためには、例えば、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入するとともに、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入することができ、ここで、前記の架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を導入する細胞と、前記の切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を導入する細胞は、同一である。なお、ここで、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されていてもよく、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されていてもよい。また、ここで、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入することと、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質を細胞に導入することの前後は問わず、これらは同時であってもよい。また、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させるためには、例えば、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を含む溶液を、切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を含む溶液と、混合することもできる。
【0054】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせるためには、例えば、当該架橋物質の特性に応じた処理をすることができ、当該架橋物質が光に反応して架橋反応を起こす物質である場合には、当該架橋物質に対して光を照射することができる。照射する光の波長は、例えば、365 nmであり、光の強度は、例えば、15~30Wであり、光を照射する時間は、例えば、10~20分である。
【0055】
タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断するためには、例えば、当該切断物質の特性に応じた処理をすることができ、当該切断物質がアルカリ条件下で主鎖の切断を引き起こす物質である場合には、当該切断物質をアルカリ条件下とすることができる。アルカリ条件下としては、例えば、pH 8~pH 13の条件下が挙げられる。アルカリ条件下とするためには、例えば、NaOHなどを当該切断物質に投与することができる。
【0056】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせて、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することにおいて、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせることと、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することの前後は問わず、これらは同時であってもよい。しかしながら、取得する架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物における、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物の相互作用を、第1のタンパク質と第2のタンパク質の相互作用と、より近似したものとする観点から、好ましくは、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせることは、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することに先行する。
【0057】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせること、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することからなる群から選ばれる少なくとも1つのことは、例えば、細胞内で行われる。
【0058】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させること、又は架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させることと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせることと、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断することとは、例えば、細胞内で行われる。
【0059】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程を含む。
【0060】
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程は、例えば、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離する工程、及び単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定する工程である。
【0061】
取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離することは、例えば、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質が、結合する物質が特定されている物質である場合には、当該結合する物質を用いて、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を単離することにより、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物を単離することである。当該結合する物質を用いて、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を単離するためには、例えば、免疫沈降などを行うことができる。
【0062】
単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことを特定することは、例えば、単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、当該検出物質が検出された場合には、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれることを特定することであり、単離された架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物につき、切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体に含まれる検出物質の検出を試みて、当該検出物質が検出されない場合には、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれないことを特定することである。
【0063】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程を含む。
【0064】
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程は、取得した架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程であってもよい。
【0065】
取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定することは、例えば、以下のことをすることである。すなわち、取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれる場合において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位が第2のタンパク質における第2の所定の部位よりN末端側にある場合には、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分は、第1の所定の部位よりC末端側であると特定する。取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれる場合において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位が第2のタンパク質における第2の所定の部位よりC末端側にある場合には、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分は、第1の所定の部位よりN末端側であると特定する。取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれない場合において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位が第2のタンパク質における第2の所定の部位よりN末端側にある場合には、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分は、第1の所定の部位よりN末端側であると特定する。取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれない場合において、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位が第2のタンパク質における第2の所定の部位よりC末端側にある場合には、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分は、第1の所定の部位よりC末端側であると特定する。
【0066】
第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定することは、第1の所定の部位及び第2の所定の部位の部位を変更しつつ、取得した架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物に、第2のタンパク質における第2の所定の部位に相当する部位が含まれること又は含まれないことと、タンパク質を切断するための物質である切断物質を導入した第2のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定することを、複数回行うことであってもよい。ここで、複数回は、例えば、2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上、20回以上である。また、複数回は、例えば、2回以下、3回以下、4回以下、5回以下、6回以下、7回以下、8回以下、9回以下、10回以下、20回以下である。
【0067】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法であってもよい。
【0068】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法が、第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するとともに、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法である場合には、本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法は、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程を含む。
【0069】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程は、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質及び検出物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定する工程であってもよい。
【0070】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことと、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を導入した第1のタンパク質における第1の所定の部位とに基づき、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分を特定することは、例えば、第1のタンパク質における第2のタンパク質と相互作用する部分が第1のタンパク質における第1の所定の部位の近辺であると特定することである。
【0071】
架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体と架橋した切断物質を含む第2のタンパク質の変異体の切断物が取得されたことは、例えば、架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体が、タンパク質を検出するための物質である検出物質を第1のタンパク質に導入して取得された、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体である場合において、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を相互作用させた後に、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質に架橋反応を生じさせ、タンパク質を切断するための物質である切断物質によりタンパク質の主鎖を切断した後に、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体に含まれる検出物質を検出して、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体と一体となった物質の分子量を特定して、その分子量が、架橋物質及び検出物質を含む第1のタンパク質の変異体の分子量より大きいことを特定することをもって、特定することができる。
【0072】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法において、第2のタンパク質は、例えば、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在しうることが確認されたものである。ここで、近傍に存在することは、例えば、5nm~15nmの場所に存在することであり、例えば、10nm程度の場所に存在することである。第2のタンパク質が、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在しうることを確認するためには、例えば、細胞内において第1のタンパク質の近傍に存在した分子を一括してビオチンなどにより修飾し、修飾された分子を特定することができる(eLife(2020) 9:e54983)。
【0073】
相互作用する部分を特定するためのキット:
本発明の態様32の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットは、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質に導入するための物質、及びタンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質を含む。
【0074】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質を第1のタンパク質に導入するための物質は、例えば、タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質である。タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質は、例えば、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び架橋物質からなる群から選ばれる。所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び架橋物質は、それぞれ、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法におけるこれらと同様である。
【0075】
タンパク質を別のタンパク質に架橋するための物質である架橋物質を第1のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質は、例えば、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質、又は当該翻訳させるための物質を取得するための物質を含んでもよく、ここで、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第1のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質は、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法におけるこれと同様である。当該翻訳させるための物質を取得するための物質は、例えば、第1のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、第1のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を取得するための物質であり、例えば、部位特異的に遺伝子を変異するための物質である。
【0076】
所定のコドンは、例えば、第1の所定の部位を除く第1のタンパク質における部位のいずれもが対応していないコドンである。所定のコドンは、例えば、終止コドンであり、好ましくは、第1のタンパク質における翻訳を終結する位置のコドンが対応していない終止コドンである。
【0077】
本発明の態様32の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットが、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び架橋物質を含む場合、当該キットに含まれる、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び架橋物質から選ばれる全部又は一部は、同一の溶液内において組成物を構成していてもよい。その場合、当該溶液に含まれる、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質と、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質の含有量比は、例えば、モル比で1:5~1:10であり、当該溶液に含まれる、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質と、架橋物質の含有量比は、例えば、モル比で1:5~1:10であり、当該溶液に含まれる、所定のコドンを認識する物質に架橋物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質と、架橋物質の含有量比は、例えば、モル比で1:5~1:10である。本発明の態様32の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットは、例えば、架橋物質を含み、架橋物質が非天然アミノ酸である場合、架橋物質は、同一の溶液内において天然アミノ酸とともに組成物を構成していてもよい。その場合、当該溶液内における架橋物質と天然アミノ酸の含有量比は、例えば、1:5~1:20である。
【0078】
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質は、例えば、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び切断物質からなる群から選ばれる。所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び切断物質は、それぞれ、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法におけるこれらと同様である。
【0079】
タンパク質を切断するための物質である切断物質を第2のタンパク質における第1の所定の部位に導入するための物質は、例えば、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき切断物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質、又は当該翻訳させるための物質を製造するための物質を含んでもよく、ここで、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体は、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている。第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体に基づき架橋物質を含む第2のタンパク質の変異体を細胞内で翻訳させるための物質は、本発明の態様1の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するための方法におけるこれと同様である。当該翻訳させるための物質を取得するための物質は、例えば、第2のタンパク質における第1の所定の部位に対応する部位に所定のコドンが導入されている、第2のタンパク質をコードする遺伝子の変異体を取得するための物質であり、例えば、部位特異的に遺伝子を変異するための物質である。
【0080】
所定のコドンは、例えば、第1の所定の部位を除く第2のタンパク質における部位のいずれもが対応していないコドンである。所定のコドンは、例えば、終止コドンであり、好ましくは、第2のタンパク質における翻訳を終結する位置のコドンが対応していない終止コドンである。
【0081】
本発明の態様32の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットが、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び切断物質を含む場合、当該キットに含まれる所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質、及び切断物質から選ばれる全部又は一部は、同一の溶液内において組成物を構成していてもよい。その場合、当該溶液に含まれる、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質と、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質の含有量比は、例えば、モル比で1:5~1:10であり、当該溶液に含まれる、所定のコドンを認識する物質を細胞に発現させるための物質と、切断物質の含有量比は、例えば、モル比で1:5~1:10であり、当該溶液に含まれる、所定のコドンを認識する物質に切断物質を付加させる物質を細胞に発現させるための物質と、切断物質の含有量比は、例えば、モル比で1:5~1:10である。本発明の態様32の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定するためのキットは、例えば、切断物質を含み、切断物質が非天然アミノ酸の側鎖をもつヒドロキシ酸である場合、切断物質は、同一の溶液内において天然アミノ酸とともに組成物を構成していてもよい。その場合、当該溶液内における切断物質と天然アミノ酸の含有量比は、例えば、1:5~1:20である。
【0082】
その他:
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質を製造することを含むことにより、第1のタンパク質と相互作用する物質を製造することができる。
【0083】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質を製造するための物質を製造することを含むことにより、第1のタンパク質と相互作用する物質を製造するための物質を製造することができる。第1のタンパク質と相互作用する物質を製造するための物質は、例えば、第1のタンパク質と相互作用する物質を細胞に発現させるための物質であり、第1のタンパク質と相互作用する物質を細胞に発現させるための物質における物質は、例えば、プラスミドなどの核酸である。
【0084】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を製造することを含むことにより、第1のタンパク質を分解するための物質を製造することができる。当該第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質に結合させる、タンパク質を分解するための物質は、例えば、タンパク質を分解する物質のほか、タンパク質を分解することに寄与する物質や、タンパク質を分解することに寄与する物質と結合する物質などである。タンパク質を分解する物質は、例えば、プロテアソームであり、タンパク質を分解することに寄与する物質は、例えば、E3リガーゼであり、タンパク質を分解することに寄与する物質と結合する物質は、例えば、E3リガーゼ結合部位である。
【0085】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を製造するための物質を製造することを含むことにより、第1のタンパク質を分解するための物質を製造するための物質を製造することができる。第1のタンパク質を分解するための物質を製造するための物質は、例えば、第1のタンパク質を分解するための物質を細胞に発現させるための物質であり、第1のタンパク質を分解するための物質を細胞に発現させるための物質における物質は、例えば、プラスミドなどの核酸である。
【0086】
本発明の態様25の第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を特定する方法を用いて特定された第2のタンパク質における第1のタンパク質と相互作用する部分を含む物質にタンパク質を分解するための物質を結合した物質を、第1のタンパク質と接触させる工程を含むことにより、第1のタンパク質を分解することができる。当該物質を第1のタンパク質と接触させることのためには、例えば、第1のタンパク質を発現する細胞と同一の細胞内において、当該物質を製造することができる。細胞内において当該物質を製造するためには、例えば、当該物質を細胞に発現させるための物質を細胞に導入することができる。第1のタンパク質を分解することは、ヒトを治療することを含まないことであってもよい。
【実施例0087】
実施例1:
細胞:
HEK293c18細胞(ATCC, CRL-10852)は10%ウシ胎児血清、4 mM L-グルタミン、ペニシリン(50 U/ml)、ストレプトマイシン(50 μg/ml)を含むD-MEM/Ham’s F12 (Wako, 048-29785)を用いて5% CO2下で培養した。
【0088】
非天然アミノ酸:
pBpa (H00146; MW 269.3)(パラ-ベンゾイル-L-フェニルアラニン)は渡辺化学(広島県広島市)から、AlocLysOH (SCHEM02353; MW 231.2)(イプシロン-N-アロック-アルファ-ヒドロキシ-L-リジン)は新成化学(大阪府茨木市)から購入した。
【0089】
プラスミド:
マウスLamp2a cDNAを含むpCMV6プラスミドはORIGENEより購入した(MG222878)。マウスLAMP2a cDNA部分をpCEpuroベクターに移し、C末端にトリプルFLAGタグ、又はトリプルMYCタグを付加した。終止コドンはTAA(オーカー)に変換した。LAMP2A-3xFLAGのR278をコードするAGGをアンバーコドンTAGに変異させた。LAMP2A-3xMYCのK252、I290をコードするそれぞれAAG、ATCをオパールコドンTGAに変異させた。
アンバーコドンにpBpaを導入するために、pcpBpaRS ver.1を用いた(pBpaに特異的なアミノアシルtRNAシンターゼとアンバーサプレッサーtRNAの細菌ペア)(前記非特許文献1)。オパールコドンへのAlocLysOHの導入にはpcPylRSY384/Y306AとpOriPpU6tRNAPylを用いた(前記非特許文献2)。pOriPpU6tRNAPylに含まれる6個のtRNAPylのアンチコドンはアンバーに対応するものであるため、オパールに対応させるためにアンチコドン部分をCUAからUCAに変換した(pOriP U6 3xtRNAPyl)。
【0090】
部位特異的光架橋および部位特異的切断:
10 cm ディッシュに培養したHEK293c18細胞 (1.2 x 107 細胞)に対して、アンバー変異をもつLAMP2A-3xFLAG遺伝子 (3 μg)、オパール変異をもつLAMP2A-3xMYC遺伝子 (3 μg)、pcpBpaRS (0.6 μg)、pcPylRSY384/Y306A (2.7 μg)、pOriP U6 3xtRNAPyl (3.3 μg)を用いてトランスフェクションをおこなった。
トランスフェクションしてから4時間後に、pBpa及びAlocLysOHを、それぞれ終濃度0.45 mM、7.6 mMになるように添加した(pBpa (1.3 mg)を40 μlの1N HClに溶解し、培地1 mlに添加後、37.5 μlの1N NaOHを加えた。AlocLysOH (19 mg)は160 μlの水に溶解し、培地0.9 mlに添加した。それぞれ0.22 μmのフィルターで濾過滅菌をおこないHEK293c18細胞の培地に加えた。)。さらに40時間後に細胞をPBSで2回洗い、10 cm ディッシュ1枚あたり5 mlのPBSを加えた。ディッシュのフタを外して氷水に浮かべ、15分間の紫外線照射をおこなった。光源はディッシュの培地の表面から3 cmの位置になるように設定した。紫外線照射後にPBSを除き、1% Triton X-100により細胞を可溶化した。なお、1% Triton X-100 (Sigma-Aldrich、T9284)は、バッファーA中である。バッファーAは、20 mM Tris-HCl、pH 7.5、150 mM NaCl、10 mM ヨードアセトアミド、2.5 mM NaF、2.5 mM ピロリン酸ナトリウム、10 mM エチレンジアミン四酢酸、10 mM β-グリセロリン酸、1 mM オルトバナジン酸ナトリウム、1 mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(Sigma-Aldrich、P7626)、5 μg/ml ロイペプチン(PEPTIDE INSTITUTE、4041)、10 μg/ml ペプスタチン A(PEPTIDE INSTITUTE、4397)、及び10 μg/ml アプロチニン(Roche、10 236 624 001)からなる。
アルカリ処理をおこなう場合には、可溶化物0.7 mlに対して0.1 mlの1N NaOHを加え5分間反応させ、1N HCl 90 μlを加えて中和した。アルカリ処理をおこなわない場合には、可溶化物0.7 mlに対して0.5 Nの塩化ナトリウムを190 μl加えた。その後、抗FLAG抗体による免疫沈降を行い(M2-アガロースを35 μlずつ添加)、免疫沈降物の電気泳動を行い(5-12%グラジエントゲル)、PVDFに転写後、抗MYC抗体によるイムノブロットを行った。
【0091】
実験結果:
LAMP2A-FLAGのR278の位置にpBpaを導入するとLAMP2A-MYCとの間に架橋が形成される(前記非特許文献3)。架橋がかかったLAMP2A-MYC側の領域を調べるために、LAMP2A-MYCのK252又はI290にAlocLysOHを導入したものとの架橋反応を行った(
図1)。LAMP2A-MYCのK252にAlocLysOHを導入した場合には、泳動前にアルカリ処理を行うと分子量が小さくなった架橋物が検出された。しかしAlocLysOHをI290の位置に導入した場合には架橋物は検出されなかった。そこで架橋部位はK252よりはC末側、かつI290よりもN末側であると考えられた。
【0092】
実施例2:
すでに架橋部位(pBpa)の導入用に作成したmouse LAMP2Aのamber mutantを用いて、AlocLysOHが導入されるかどうかを調べた。結果を
図2に示す。
図2に示すとおり、L143、D118の位置にAlocLysOHを導入したものは発現しなかった。L157にAlocLysOHを入れたものはアルカリ処理をしなくてもその位置で切断が起こった。E137にAlocLysOHを導入したものはアルカリ処理しても切れなかった。
図3に示すように、AlocLysOHを導入するとアルカリ処理をしなくても切断が起こる部位は、いずれもN末側がN (Asn, アスパラギン)だった。C末端のFLAG-tagで認識されているので、最後まで翻訳されてから自発的に切断が起こった可能性がある。