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特開2024-179525エレベーターの呼び登録システム、エレベーターシステム、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179525
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】エレベーターの呼び登録システム、エレベーターシステム、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B66B1/14 L
B66B1/14 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098440
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 真大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 学
(72)【発明者】
【氏名】飯村 知倫
(72)【発明者】
【氏名】石野 直希
(72)【発明者】
【氏名】江下 もも
【テーマコード(参考)】
3F502
【Fターム(参考)】
3F502HB20
3F502JA08
3F502KA08
3F502MA03
3F502MA07
(57)【要約】
【課題】乗車意思のない利用者が携帯する携帯端末からの無駄な呼び登録の発生を低減することができるエレベーターの呼び登録システム、エレベーターシステム、及び、プログラムを提供する。
【解決手段】無線信号を受信する信号受信部と、信号受信部で無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号の信号強度の差分を算出することで、無線信号の信号強度の変化量を算出する信号処理部と、を備える。また、信号処理部で算出された信号強度の変化量に基づいて、呼び登録信号を出力する呼び登録送信部を備える。呼び登録送信部は、信号処理部で算出された信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった後、所定の期間経過した場合に呼び登録送信部が呼び登録信号を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部で前記無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号との信号強度の差分を算出することで、前記無線信号の信号強度の変化量を算出する信号処理部と、
前記信号処理部で算出された前記信号強度の変化量に基づいて、呼び登録信号を出力する呼び登録送信部と、を備え、
前記呼び登録送信部は、前記信号処理部で算出された信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった場合に、前記呼び登録信号を出力する
エレベーターの呼び登録システム。
【請求項2】
前記呼び登録送信部は、前記信号処理部で算出された信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった後、所定の期間経過した場合に、前記呼び登録信号を出力する
請求項1に記載のエレベーターの呼び登録システム。
【請求項3】
前記変化量は、前記信号強度が閾値以上になった場合に算出される
請求項2に記載のエレベーターの呼び登録システム。
【請求項4】
前記閾値は、エレベーターの乗り場において利用者が待機する待機エリアと、非待機エリアとの境界地点で観測される無線信号の信号強度に設定されている
請求項3に記載のエレベーターの呼び登録システム。
【請求項5】
前記呼び登録送信部は、前記信号処理部で算出された信号強度の変化量が、負の値になった場合には、呼び登録信号を送信しない
請求項4に記載のエレベーターの呼び登録システム。
【請求項6】
エレベーターの乗り場に設置され、無線信号を発信する無線信号装置と、
前記無線信号を受信する信号受信部と、
前記信号受信部で前記無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号の信号強度との差分を算出することで、前記無線信号の信号強度の変化量を算出する信号処理部と、
前記信号処理部で算出された前記信号強度の変化量に基づいて、呼び登録信号を生成して出力する呼び登録送信部と、
前記呼び登録送信部から出力された呼び登録信号に基づいて、エレベーターの運転を制御するエレベーター制御部と、を備え、
前記呼び登録送信部は、前記信号処理部で算出された信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった場合に、前記呼び登録信号を出力する
エレベーターシステム。
【請求項7】
エレベーターの呼び登録を実行するプログラムにおいて、
無線信号を受信するステップと、
前記無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号の信号強度との差分を算出することで、前記信号強度の変化量を算出するステップと、
算出された前記信号強度の変化量に基づいて、前記変化量が、正の値からゼロ近傍になった場合に、呼び登録信号を出力するステップと、をコンピューターに実行させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの呼び登録システム、エレベーターシステム、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターの利用者がスマートフォンやスマートデバイス等の携帯端末を用いてエレベーターの乗り場呼びとかご呼びを登録することが知られている。これにより、利用者は、各階の乗り場や、エレベーターの乗りかごに設けられた物理ボタンを触ることなく、乗り場呼びとかご呼びとを登録することができる。
【0003】
特許文献1では、ビルに設置された無線機から受信した無線信号に基づいて、携帯端末から呼び登録を行うことができるエレベーターシステムが開示されている。特許文献1では、携帯端末のビーコン受信部で受信する無線信号の受信電波強度に基づいて、携帯端末の現在位置がエレベーター乗場の呼び登録エリア内に移動したことを検知すると、携帯端末側から、無線機側に、呼び信号を送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-104955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の発明では、エレベーターへの乗車意思がない利用者がエレベーター乗り場付近を通りかかった場合にも、その利用者が携帯する携帯端末からエレベーター呼びを送信してしまう恐れがある。エレベーターへの乗車意思が無い利用者の携帯端末からの呼び登録信号の誤送信を防ぐことが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、乗車意思のない利用者が携帯する携帯端末からの無駄な呼び登録の発生を低減することができるエレベーターの呼び登録システム、エレベーターシステム、及び、プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のエレベーターの呼び登録システムは、無線信号を受信する信号受信部と、信号受信部で無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号の信号強度の差分を算出することで、無線信号の信号強度の変化量を算出する信号処理部とを備える。また、信号処理部で算出された信号強度の変化量に基づいて、呼び登録信号を出力する呼び登録送信部を備える。そして、呼び登録送信部は、信号処理部で算出された信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった場合に、呼び登録送信部が呼び登録信号を出力する。
【0008】
また、本発明のエレベーターシステムは、エレベーターの乗り場に設置され、無線信号を発信する無線信号装置を備える。また、無線信号を受信する信号受信部と、信号受信部で無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号の信号強度の差分を算出することで、無線信号の信号強度の変化量を算出する信号処理部とを備える。また、信号処理部で算出された信号強度の変化量に基づいて、呼び登録信号を出力する呼び登録送信部を備える。そして、呼び登録送信部は、信号処理部で算出された信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった場合に、呼び登録送信部が呼び登録信号を出力する。
【0009】
また、本発明のプログラムは、無線信号を受信するステップと、無線信号を受信している期間において、所定時間経過毎に、現在の無線信号の信号強度と、現在よりも前のタイミングで受信した無線信号の信号強度の差分を算出することで、記信号強度の変化量を算出するステップとを有する。また、算出された信号強度の変化量に基づいて、変化量が、正の値からゼロ近傍になった場合に、呼び登録信号を出力するステップと、をコンピューターに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗車意思のない利用者が携帯する携帯端末から発生する無駄な呼び登録を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムを適用したビルのエレベーター乗り場の一例を示した図である。
図2】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステム100の制御系の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態の携帯端末5で呼び登録時に実施される処理手順を説明したフローチャートである。
図4図4Aは、携帯端末5を所持する利用者7が、エレベーター1の正面から待機エリア24に近づいて待機エリア24内に立ち止まる移動パターンを示した図である。図4Bは、図4Aの利用者7の携帯端末5で受信する信号強度を示した図である。図4Cは、図4Aに示す利用者7の携帯端末5で算出される信号強度の変化量を示した図である。
図5図5Aは、携帯端末5を所持する利用者7が、エレベーター1の横側から待機エリア24に近づいて待機エリア24内で立ち止まる移動パターンを示した図である。図5Bは、図5Aの利用者7の携帯端末5で受信する信号強度を示した図である。図5Cは、図5Aに示す利用者7の携帯端末5で算出される信号強度の変化量を示した図である。
図6図6Aは、携帯端末5を所持する利用者7が、待機エリア24を通過して立ち止まらずにエレベーター1から離れる方向に移動する移動パターンを示した図である。図6Bは、図6Aの利用者7の携帯端末5で受信する信号強度を示した図である。図6Cは、図6Aに示す利用者7の携帯端末5で算出される信号強度の変化量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るエレベーターの呼び登録システム、エレベーターシステム、及び、プログラムの一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0013】
1.エレベーターシステム
図1は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)に係るエレベーターシステムを適用したビルのエレベーター乗り場の一例を示した図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、エレベーター1の乗り場の待機エリアに移動してきた利用者7が所持する携帯端末5から、エレベーター1の呼び登録が自動的に実施される。
【0015】
エレベーター1は、図示されないが、建屋の昇降路内に設けられた乗りかごと、一端が乗りかごに取付けられた主ロープと、この主ロープの他端が取付けられ、昇降路内に吊り下げられた釣合い錘とを有している。また、エレベーター1は、主ロープが巻き掛けられた巻上機を有している。巻上機は、例えば、昇降路の上部に設けられた機械室に回転可能に設置されている。巻上機は、図示を省略するエレベーター制御部によって制御駆動される。その結果、乗りかごは、釣合い錘に対して相対的に昇降する。
【0016】
また、エレベーター1は、各階床の乗り場に設けられたドア装置2と、乗り場のドア装置2近傍に設けられた乗場呼び登録ボタン3と、無線信号装置10とを備える。乗場呼び登録ボタン3は、利用者7の操作により、かごの呼び登録を行う。利用者7が携帯する携帯端末5から自動的に呼び登録が為されない場合には、利用者7は、乗場呼び登録ボタン3により呼び登録を行うことができる。
【0017】
無線信号装置10は、所定の周波数の無線信号を発信する装置(ビーコン)であり、例えば、乗り場ドア近傍に設置される。無線信号装置10としては、携帯端末5で受信可能な周波数の無線信号を送信できる装置であればよく、種々の態様を取ることができる。
【0018】
携帯端末5は、利用者7が所持する端末であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置で構成されている。その他、携帯端末5は、スマートフォン等と接続可能なスマートデバイスで構成されていてもよい。
【0019】
本実施形態では、利用者7が所持する携帯端末5によって、エレベーター1の乗り場に設けられた無線信号装置10が発信する無線信号を受信し、その無線信号に基づいて、携帯端末5からエレベーター1の呼び登録が自動的に行われる点に特徴を有する。本実施形態では、携帯端末5において、予め利用者7が登録した乗場階情報、及び、行先階情報に基づいて呼び登録信号が生成され、エレベーター監視システム6(図2を参照)を介して対象のエレベーター1に送信される。携帯端末5からの呼び登録は、携帯端末5に予めインストールされた呼び登録のためのアプリケーションプログラムによって実現される。携帯端末5からの呼び登録を行うためのプログラムについては、後で詳述する。
【0020】
2.エレベーターシステムの制御系の構成
図2は、本実施形態のエレベーターシステム100の制御系の構成を示すブロック図である。なお、図2に示すエレベーターシステム100は、本発明のエレベーターの呼び登録システムを含むものであり、呼び登録システムは、図2に示すエレベーターシステム100の一部で構成されるものであってもよく、また、全て含むものであってもよい。
【0021】
図2に示すように、本実施形態のエレベーターシステム100は、エレベーター1と、携帯端末5と、エレベーター監視システム6とで構成される。エレベーター監視システム6は、エレベーター1及び携帯端末5と、それぞれ、例えば、インターネット回線、電話回線及びその他の通信回線で構成される一般通信回線22を介して接続されている。
【0022】
[エレベーター]
エレベーター1は、通信部8と、エレベーター制御部9と、無線信号装置10と、呼び登録記憶部11と、駆動装置12とを備える。通信部8は、一般通信回線22に接続されている。本実施形態では、通信部8は、一般通信回線を介してエレベーター監視システム6との間で情報の送受信を行う。
【0023】
エレベーター制御部9は、エレベーター1を構成する各部に対する制御指令を生成する。無線信号装置10は、かごに搭乗する利用者7が所持する携帯端末5によって受信可能な無線電波を発信する装置である。無線信号装置10から発信される無線信号の形式としては、例えばBLE(Blue tooth Low Energy)形式(Bluetoothは登録商標)が挙げられる。
【0024】
無線信号装置10は、図1に示したように、エレベーター1の各階床の乗り場のドア装置2(乗り場ドア)近傍に設けられている。無線信号装置10の設置位置は、これに限られるものではなく、乗り場の所定の範囲に、所定の強度の無線信号を発信可能な位置であれば種々の変更が可能である。ここで、所定の範囲とは、例えば、エレベーター1の利用者7が待機する待機エリア24(図4A参照)の範囲に設定される。
【0025】
無線信号装置10から発信される無線信号は、エレベーター1の運転中は常時発信されているものであってもよいし、人感センサ(図示を省略する)等によって、乗り場に利用者7を検知した際に、発信されるように構成されていてもよい。
【0026】
呼び登録記憶部11は、図1の乗場呼び登録ボタン3で入力された呼び登録信号、又は、エレベーター監視システム6側から送信されてきた呼び登録信号に基づいて、呼び登録を記憶する。ここで、エレベーター監視システム6から送信されてくる呼び登録信号は、エレベーター1の乗り場に待機している利用者7が所持した携帯端末5から送信された呼び登録に基づく信号である。携帯端末5から実施される呼び登録方法については後で詳述する。
【0027】
駆動装置12は、エレベーター1の各部を駆動する装置であり、例えば、エレベーター1を構成する巻上機(図示を省略する)を駆動する巻上機駆動部や、ドア装置2の開閉動作を制御する開閉駆動部(図示を省略する)を含む。駆動装置12は、図示を省略するエレベーター制御部の制御の下、呼び登録記憶部11に記憶された呼び登録に基づいて、巻上機を駆動制御し、乗りかごの昇降動作を制御する。
【0028】
[携帯端末]
携帯端末5は、エレベーター1の利用者7が所持する端末であり、通信部14と、信号受信部13、信号処理部16と、呼び登録記憶部17と、及び、呼び登録送信部15とを備える。通信部14は、一般通信回線22に接続されており、本実施形態では、一般通信回線22を介してエレベーター監視システム6との間で情報の送受信を行う。
【0029】
信号受信部13は、通信アンテナで構成されており、本実施形態では、エレベーター1の無線信号装置10から発信される無線電波を受信する。信号処理部16は、信号受信部13で受信した無線信号の強度を算出し、算出された信号強度に基づいて、信号強度の変化量を算出する。そして、信号処理部16は、算出された信号強度の変化量に基づいて、呼び登録信号を生成するか否かを判定する。信号処理部16における呼び登録信号を生成するか否かの判定方法については後で詳述する。
【0030】
呼び登録記憶部17は、利用者7が設定したエレベーター1の乗り場階情報、行先階情報、利用するエレベーター情報に基づく呼び登録を記憶する。呼び登録送信部15は、信号処理部16の判定結果に基づいて、呼び登録記憶部17に記憶された呼び登録信号を読み出し、通信部14を介して、エレベーター監視システム6側に、呼び登録信号を送信する。本実施形態では、信号処理部16、呼び登録記憶部17、信号受信部13、呼び登録送信部15の各処理機能部は、予めインストールされた呼び登録のアプリケーションプログラムによって実行されるものである。呼び登録のアプリケーションプログラムによって実行される処理については後で詳述する。
【0031】
[エレベーター監視システム]
エレベーター監視システム6は、エレベーター1が設置されたビルとは異なる建物に設置されたエレベーター監視センターに備えられている。エレベーター監視システム6は、通信部18と、呼び登録生成部20と、記憶部21とを備える。
【0032】
通信部18は、一般通信回線22に接続されている。本実施形態では、通信部18は、一般通信回線22を介して、エレベーター1、及び、携帯端末5との間で情報の送受信を行う。記憶部21は、管理対象となるビルにおいて、どのビルにどのエレベーター1が設置されているかを記憶している。具体的には、記憶部21には、建物を識別する建物IDと、建物毎に設置されたエレベーター1を識別するエレベーターID(以下、エレベーター情報)が記憶されている。
【0033】
呼び登録生成部20は、携帯端末5から送信されてきた呼び登録信号と記憶部21に記憶されたエレベーター情報とに基づいて、エレベーター情報に対応付けた呼び登録を生成する。本実施形態では、呼び登録生成部20で生成された呼び登録は、その呼び登録に対応付けられたエレベーター情報に基づいて、対象となるエレベーター1に送信される。
【0034】
なお、上述したエレベーター1、携帯端末5、及び、エレベーター監視システム6では、図示を省略する制御部によって各処理機能が実行される。制御部は、それぞれ、例えば、バスに接続されたCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性ストレージを備える。
【0035】
CPUは、各部に構成された各処理機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROMから読み出してRAMに展開して実行する。なお、各制御部は、CPUの代わりに、MPU(Micro-Processing Unit)等の処理装置を備えてもよい。RAMには、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0036】
不揮発性ストレージとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。この不揮発性ストレージには、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、各制御部を機能させるためのプログラム等が記録される。なお、プログラムは、ROMに格納されてもよい。
【0037】
プログラムは、コンピューターが読取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。つまり、ROM又は不揮発性ストレージは、コンピューターによって実行されるプログラムを格納した、コンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0038】
以上のような構成により、各制御部は、エレベーター監視システム6、携帯端末5、及び、エレベーター1のそれぞれにおいて設定されたプログラムを実行すると共に、各部を制御する。本実施形態では、携帯端末5にインストールされた呼び登録のアプリケーションプログラムによって、携帯端末5からの呼び登録が実行される点に特徴を有する。
【0039】
3.呼び登録プログラム、及び、呼び登録方法
次に、本実施形態のエレベーターシステム100で実施される呼び登録プログラム、及び、呼び登録方法について説明する。図3は、本実施形態の携帯端末5で呼び登録時に実施される処理手順を説明したフローチャートである。ここでは、図4図5を用いて、携帯端末5を所持する利用者7の行動パターンを例示しながら、図3のフローチャートの説明を行う。
【0040】
図4Aは、携帯端末5を所持する利用者7が、エレベーター1の正面から待機エリア24に近づいて待機エリア24内に立ち止まる移動パターンを示した図である。図4Bは、図4Aの利用者7の携帯端末5で受信する信号強度を示した図である。図4Cは、図4Aに示す利用者7の携帯端末5で算出される信号強度の変化量を示した図である。
【0041】
図5Aは、携帯端末5を所持する利用者7が、エレベーター1の横側から待機エリア24に近づいて待機エリア24内で立ち止まる移動パターンを示した図である。図5Bは、図5Aの利用者7の携帯端末5で受信する信号強度を示した図である。図5Cは、図5Aに示す利用者7の携帯端末5で算出される信号強度の変化量を示した図である。
【0042】
図6Aは、携帯端末5を所持する利用者7が、待機エリア24を通過して立ち止まらずにエレベーター1から離れる方向に移動するパターンを示した図である。図6Bは、図6Aの利用者7の携帯端末5で受信する信号強度を示した図である。図6Cは、図6Aに示す利用者7の携帯端末5で算出される信号強度の変化量を示した図である。
【0043】
図4B図5B図6Bにおいて、横軸は、無線信号を受信してからの経過時間であり、縦軸は信号受信部で受信された無線信号の強度(信号強度)である。また、図4C図5C図6Cにおいて、横軸は、無線信号を受信してからの経過時間であり、縦軸は信号強度の変化量である。なお、本実施形態では、携帯端末5には、図3の動作を実行するため、予め、呼び登録用のアプリケーションソフト23がインストールされ、さらに、利用者7の乗り場階情報及び行先階情報が設定されているものとする。
【0044】
携帯端末5にインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトは、例えば、携帯端末5の信号受信部13が、エレベーター1の乗り場に設置された無線信号装置10から発信されている所定の無線信号を受信したときに自動的に起動される。なお、携帯端末5にインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトは、利用者自身が利用時に起動する仕様であってもよい。
【0045】
図3に示すフローチャートは、呼び登録用のアプリケーションプログラムの起動した後、信号受信部13において受信した無線信号の信号強度が所定の閾値Rt(図4B図5B図6B参照)以上となった場合にスタートする。ここで、閾値Rtは、例えば、図4A図5A、及び、図6Aに示す、エレベーターの待機エリア24と非待機エリア25との境界付近で受信する信号強度に設定されるものである。すなわち、受信した信号強度が閾値Rtである場合、利用者7が待機エリア24内に移動してきたことを検知することができる。
【0046】
受信した無線信号の信号強度が所定の閾値Rt以上となった場合、まず、信号処理部16は、図示を省略する制御部の制御のもと、信号強度の変化量ΔRの算出を開始する(ステップS1)。ここでは、信号受信部13で受信した信号強度が所定の閾値Rt以上である場合に信号強度の変化量を算出する。すなわち、利用者7が、待機エリア24内に移動してきてからの信号強度の変化量が算出される。
【0047】
ここで、図4図6に示す利用者7の移動パターンを参照しながら、信号強度及び信号強度の変化量ΔRについて説明する。信号強度は、携帯端末5の信号受信部13で受信される無線信号の強度である。したがって、携帯端末5を所持する利用者7が、無線信号装置10に近づくにつれて大きくなり、無線信号装置10から離れるにつれて小さくなる。
【0048】
信号強度の変化量ΔRは、信号受信部13で無線信号を受信している期間において、所定の経過時間における信号強度の変化量を算出した値であり、信号処理部16で算出される。例えば、信号強度の変化量ΔRは、現在の信号強度と、その前のタイミングで検出された信号強度との差分であり、信号受信部13で無線信号を受信したタイミング毎に算出される。すなわち、信号強度の変化量ΔRは、図4B図5B、及び、図6Bに示された信号強度の傾きの値で表される。信号受信部13で受信した信号強度は、記憶部(図示を省略する)に記憶され、信号処理部16は、記憶部に記憶された信号強度を読み出して、所定のタイミング毎に差分を算出する。
【0049】
図4C図5C、及び、図6Cに示すように、携帯端末5を所持した利用者7が、待機エリア24に近づく場合、信号強度の変化量ΔRは正の値になり、離れる場合、信号強度の変化量ΔRは負の値になる。また、携帯端末5を所持した利用者7が待機エリア24内で停止した場合には、変化量ΔRはゼロ近傍の値になる。なお、本実施形態では、信号強度の変化量ΔRの算出は、信号強度が所定の閾値Rt以上となったタイミングから開始される。
【0050】
例えば、図4A図5A、及び、図6Aにおいて、利用者7が待機エリア24に近づく方向に移動している間は、図4B図5B、及び、図6Bに示すように、信号強度が時間経過と共に大きくなる。そして、図4A図5B、及び、図6Cに示すように、信号強度の変化量ΔRが正の値になる。また、図4A及び図5Aに示すように、待機エリア24内の所定の位置で利用者が立ち止まった場合には、図4B及び図5Bに示すように、信号強度は一定の値となり、図4C及び図5Cに示すように、信号強度の変化量ΔRは、0近傍の値となる。
【0051】
一方、図6Aに示すように、利用者7が待機エリア24内に移動してきた後、再度、待機エリア24からはなられる方向に移動していく場合、図6Bに示すように、一度大きくなった信号強度が再度、小さくなっていく。これにより、図6Cに示すように、信号強度の変化量ΔRは、一度正の値になった後、負の値に変化する。
【0052】
このように、利用者7の移動パターンによって、携帯端末5で検出される信号強度及び信号強度の変化量ΔRが異なってくる。したがって、以下のフローでは、信号強度の変化量ΔRに基づいて、利用者7の移動パターンを推定する。
【0053】
まず、信号処理部16は、信号強度の変化量ΔRが正の値からゼロ近傍、又は負の値に変化したか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において、「NO」と判定された場合、すなわち、信号強度の変化量ΔRが未だ正の値である場合には、ステップS2の判定を繰り返す。この場合、利用者7は、無線信号装置10に近づく方向(すなわち、エレベーター1に近づく方向)に移動している最中であると判断できる。
【0054】
一方、ステップS2において、「YES」と判定された場合、すなわち、信号強度の変化量ΔRが正の値からゼロ近傍又は負の値に変化したと判定された場合には、ステップS3に進む。例えば、図4C図5C及び、図6Cのそれぞれにおいて、信号強度の変化量ΔRが正の値からゼロ近傍又は負の値に変化したときに、ステップS2において「YES」と判定される。
【0055】
次に、ステップS3では、信号処理部16は、信号強度の変化量ΔRが、正の値からゼロ近傍に変化したか否かを判定する。ステップS3において、「NO」と判定された場合、すなわち、信号強度の変化量ΔRが、ゼロ近傍ではなく負の値に変化した場合、図6Aに示すように、利用者7は、無線信号装置10から離れる方向に移動していると判断できる。したがって、この場合、利用者7は、エレベーター1に乗車する意思が無い可能性が高いため、ここにおいて、図3の処理を終了する。すなわち、利用者7が所持する携帯端末5からの呼び登録は行われない。
【0056】
一方、ステップS3において、「YES」と判定された場合、すなわち、信号強度の変化量ΔRがゼロ近傍に変化したと判定した場合には、ステップS4に進む。信号強度の変化量ΔRがゼロ近傍になる場合は、図4Aおよび図5Aに示すように、利用者7が移動を停止したときである。すなわち、利用者7が待機エリア24内で立ち止まった場合、ステップS3において、「YES」と判定される。
【0057】
なお、ステップS3において、信号強度の変化量ΔRの判断基準を、「ゼロ」ではなく、「ゼロ近傍」とする理由は、電波の揺らぎを考慮するためである。無線信号装置10から発信される無線信号(電波)には揺らぎがあるため、携帯端末5を所持した利用者7が立ち止まった場合(移動を停止した場合)にも、信号強度の変化量ΔRがゼロちょうどにはならない場合がある。したがって、本実施形態では、「ゼロ近傍」の値として、利用者7が移動を停止したと判断可能な程度の信号強度の変化量Δsを定め、ステップS3では、変化量が、Δs以内であるか否かで判定を行う。
【0058】
次に、信号強度の変化量がゼロ近傍に変化した後、変化量がゼロ近傍の状態で一定時間(Δt)経過したか否かを判定する(ステップS4)。ここで、一定時間Δtとは、例えば2秒程度に設定される。したがって、携帯端末5を所持した利用者7が、待機エリア24内で一定時間(例えば2秒程度)立ち止まった場合には、「YES」と判定される。
【0059】
一方、利用者7が待機エリア24内において一定時間立ち止まらなかった場合、例えば、再度移動を始めた場合には、信号強度の変化量は変わるため、ステップS4において「NO」と判定される。この場合には、利用者7は、エレベーター1に乗車する意思が無い可能性が高いため、ここにおいて、図3の処理を終了する。すなわち、この場合には、利用者7の携帯端末5からの呼び登録は行われない。
【0060】
ステップS4において「YES」と判定された場合、すなわち、信号強度の変化量ΔRがゼロ近傍になってから、一定時間経過したと判定された場合、呼び登録送信部15は、呼び登録信号を送信する。ここでは、まず、呼び登録送信部15は、呼び登録記憶部17に記憶された呼び登録に関する情報を読み出し、その後、通信部14を介して呼び登録情報をエレベーター監視システム6側に送信する。ここで送信される呼び登録情報は、予め利用者7によって設定された乗り場階の情報及び行先階の情報の他、乗車する予定のエレベーターの情報が含まれている。
【0061】
なお、ステップS4における一定時間Δtは、適宜設定可能な任意の値であり、管理者等によって設定可能な値である。例えば、利用者の待機時間を短くしたいという要望が有る場合には、Δtの値を小さく設定することができる。したがって、一定時間Δtは、利用者の待ち時間が少なく、かつ、呼び登録送信の正確性を維持できる時間に設定されるのが好ましい。
【0062】
これにより、携帯端末5におけるエレベーター1の呼び登録処理は終了する。エレベーター監視システム6側では、携帯端末5から送信されてきた呼び登録情報に基づいて、呼び登録信号が生成される。エレベーター監視システム6では、例えば、呼び登録生成部20は、送信されてきた呼び登録情報に基づいて、記憶部21から対象となるエレベーター情報を読み出すと共に、対象となるエレベーター1に送信する呼び登録を生成する。そして、エレベーター監視システム6では、呼び登録生成部20で生成された呼び登録が、通信部18を介して対象となるエレベーター1に送信される。
【0063】
また、対象となるエレベーター1では、エレベーター制御部9は、エレベーター監視システム6側から送信されてきた呼び登録信号に基づく呼び登録を呼び登録記憶部11に記憶させると共に、その呼び登録に基づいて、エレベーター1の駆動装置12を駆動制御する。これにより、携帯端末5からの呼び登録に基づいてエレベーター1の運転が制御される。
【0064】
本実施形態では、利用者7が所持する携帯端末5から自動的に呼び登録が送信されるエレベーター1の呼び登録システムにおいて、利用者7が待機エリア24内に立ち入り、かつ、立ち止まったことをトリガーとして、呼び登録信号が携帯端末5から送信される。これにより、利用者7の乗車意思をより反映した呼び登録を行うことができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、携帯端末5で受信した信号強度の変化量に基づいて、利用者7の行動パターンを推定することができる。したがって、単に、待機エリア24を通りすぎる利用者7の携帯端末5から、呼び登録が送信されてしまうのを防ぐことができる。
【0066】
ところで、無線信号装置10から発信される無線信号を携帯端末5で受信することで携帯端末5から呼び登録を送信する従来の方法では、電波の揺らぎにより信号強度にバラつきがあるため、毎回同じ地点で携帯端末5からの呼び登録を送信することが難しい。このため、エレベーターを利用する意思が無い利用者の携帯端末からも、呼び登録が送信されてしまう恐れがある。
【0067】
これに対し、本実施形態では、信号強度が閾値以上である場合における信号強度の変化量を算出することにより、電波の揺らぎの影響を抑え、利用者7の移動を比較的正確に把握することができる。これにより、待機エリア24内に移動してきて、そこで待機する利用者7の携帯端末5からの呼び登録をより正確に行うことができる。このように、本実施形態では、携帯端末5からの呼び登録において、利用者7に乗車意思をより反映させることができる。
【0068】
また、利用者7によっては、待機エリア24内に立ち止まった状態で、エレベーター1には乗らない場合もある。この場合には、利用者7の携帯端末5において、信号強度の変化量が、正の値からゼロ近傍になった後、一定時間経過後に1度呼び登録が送信されるが、その後は、呼び登録信号が送信されることがない。これにより、利用意思が無い利用者7の携帯端末5から、呼び登録信号が送信され続けることも回避することができる。
【0069】
本実施形態では、携帯端末5からの呼び登録信号を、一度、エレベーター監視システム6側に送信してから、エレベーター監視システム6側から対象となるエレベーター1に呼び登録信号を送信する例としたが、これに限られるものではない。携帯端末5から、直接エレベーター1を制御する制御装置に呼び登録信号が送信される構成であってもよい。この場合には、携帯端末5側から出力される登録信号は、例えば、エレベーター1の無線信号装置10を介して、呼び登録記憶部17に送信される。その他、ビル内の同じフロアに複数のエレベーター1が設置される場合には、複数のエレベーター1を管理する群管理制御部に、携帯端末5からの呼び登録信号が送信される構成とすることができる。このように、携帯端末5から出力される呼び登録信号の処理方法は種々の選択が可能である。
【0070】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…エレベーター、2…ドア装置、3…乗場呼び登録ボタン、5…携帯端末、6…エレベーター監視システム、7…利用者、8…通信部、10…無線信号装置、11…呼び登録記憶部、12…駆動装置、13…信号受信部、14…通信部、15…呼び登録送信部、16…信号処理部、17…呼び登録記憶部、18…通信部、20…呼び登録生成部、21…記憶部、22…一般通信回線、23…アプリケーションソフト、24…待機エリア、25…非待機エリア、100…エレベーターシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6