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特開2024-179533車両用ドア開度規定機構及びそのレバーを製造するレバー製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179533
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両用ドア開度規定機構及びそのレバーを製造するレバー製造方法
(51)【国際特許分類】
   E05D 11/06 20060101AFI20241219BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241219BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E05D11/06
B29C45/14
B60J5/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098456
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】波多野 大督
(72)【発明者】
【氏名】藤田 倫暢
【テーマコード(参考)】
2E032
4F206
【Fターム(参考)】
2E032BA06
2E032DC02
4F206AD03
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】車両用ドア開度規定機構のレバーの先端部の耐久性を向上させる。
【解決手段】車両用ドア開度規定機構100は、ドア開口部B1にヒンジHを介して取り付けられるドア側壁D1を有するドアDのドア側壁D1の裏面に固定されるケース10と、ドア開口部B1におけるドア側壁D1に相対する部分に取り付けられるブラケット60と、金属製のプレート2と該プレート2を被覆する被覆層30とからなるインサート成形品であるレバー1を含み、被覆層30は中間部4より先端部5の方が肉厚になる部分を有し、先端部5における被覆層30は、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31と先端側内部層31を被覆する先端側外部層32とを有し、先端側外部層32は樹脂からなり、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に形成されるドア開口部にヒンジを介して取り付けられるドア側壁を有するドアの前記ドア側壁の裏面に固定されるケースと、
前記ドア開口部における前記ドア側壁に相対する部分に取り付けられるブラケットと、
金属製のプレートと該プレートを被覆する被覆層とからなるインサート成形品であるレバーであって、前記ブラケットに回動可能に取り付けられる基端部と、該基端部と連続し前記ドア側壁及び前記ケースを貫通するように延びる中間部と、該中間部と連続して延び前記ドアの内部に位置するとともに、前記レバーの長手方向に対して直交する断面である横断面において前記中間部の断面積より大きな断面積を有し前記ドアの開度を規定する先端部と、に区分される、レバーと、
を含み、前記先端部のレバー長手方向基端側の端面を前記ケースに当接させることにより前記ドアの開度を規定する、車両用ドア開度規定機構であって、
前記プレートは、前記基端部の内部に位置するプレート基端部と、前記中間部の内部に位置するプレート中間部と、前記先端部の内部に位置するプレート先端部と、に区分され、
前記被覆層は前記中間部より前記先端部の方が肉厚になる部分を有し、
前記先端部における前記被覆層は、前記プレート先端部を被覆する先端側内部層と該先端側内部層を被覆する先端側外部層とを有して、前記先端側外部層は樹脂からなり、
前記先端側内部層と前記先端側外部層との間には境界が形成されていることを特徴とする車両用ドア開度規定機構。
【請求項2】
前記先端側内部層は樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項3】
前記先端側内部層の樹脂密度は前記先端側外部層の樹脂密度と異なることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項4】
前記先端側内部層の樹脂密度は前記先端側外部層の樹脂密度より大きいことを特徴とする請求項3に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項5】
前記先端側内部層の樹脂は繊維強化樹脂であって、該繊維強化樹脂の繊維の配向は前記レバーの長手方向に対して交差する方向に沿っていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項6】
前記基端部における前記被覆層は、前記プレート基端部を被覆する基端側内部層と該基端側内部層を被覆する基端側外部層とを有して、前記基端側内部層および前記基端側外部層は樹脂からなり、
前記基端側内部層と前記基端側外部層との間には境界が形成され、
前記基端側内部層の樹脂密度は前記基端側外部層の樹脂密度より大きいことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項7】
前記レバーの側面視において、前記先端側内部層の外形は前記先端側外層部の外形と相似することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項8】
車両の車体に形成されるドア開口部にヒンジを介して取り付けられるドア側壁を有するドアの前記ドア側壁の裏面に固定されるケースと、
前記ドア開口部における前記ドア側壁に相対する部分に取り付けられるブラケットと、
金属製のプレートと該プレートを被覆する被覆層とからなるインサート成形品であるレバーであって、前記ブラケットに回動可能に取り付けられる基端部と、該基端部と連続し前記ドア側壁及び前記ケースを貫通するように延びる中間部と、該中間部と連続して延び前記ドアの内部に位置するとともに、前記レバーの長手方向に対して直交する断面である横断面において前記中間部の断面積より大きな断面積を有し前記ドアの開度を規定する先端部と、に区分される、レバーと、
を含み、前記先端部のレバー長手方向基端側の端面を前記ケースに当接させることにより前記ドアの開度を規定する、車両用ドア開度規定機構の前記レバーを製造するレバー製造方法であって、
前記プレートは、前記基端部の内部に位置するプレート基端部と、前記中間部の内部に位置するプレート中間部と、前記先端部の内部に位置するプレート先端部と、に区分され、
前記被覆層は前記中間部より前記先端部の方が肉厚になる部分を有し、
前記先端部における前記被覆層は、前記プレート先端部を被覆する先端側内部層と該先端側内部層を被覆する先端側外部層とを有して、前記先端側外部層は樹脂からなり、
前記先端側内部層と前記先端側外部層との間には境界が形成されており、
前記レバー製造方法は、
前記プレート先端部を前記先端側内部層で被覆する第1工程と、
前記先端側内部層と金型との間に樹脂を射出することによって前記先端側外部層を成形する第2工程と、を含むことを特徴とするレバー製造方法。
【請求項9】
前記第1工程は、前記プレート先端部と金型との間に樹脂を射出することによって前記先端側内部層を成形する工程であり、
前記第1工程の後、前記第2工程を行う2段階射出成形であることを特徴とする請求項8に記載のレバー製造方法。
【請求項10】
前記先端側内部層には前記プレート先端部を嵌め込むための挿入孔が形成されており、
前記第1工程は、前記プレート先端部を前記先端側内部層の前記挿入孔に嵌め込む工程であり、
前記第1工程の後、前記第2工程を行うことを特徴とする請求項8に記載のレバー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開度規定機構及びレバー製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、ドアの開度(全開位置)を規定するためのドア開度規定機構が設けられる場合がある。ドア開度規定機構の一例として、特許文献1に開示された自動車用ドアチェッカが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された自動車用ドアチェッカは、自動車の車体にヒンジを介して連結されるドア側壁の裏面に固定されるケースと、車体に固定されるブラケットと、金属製の芯板及びこの芯板を覆う樹脂製の外皮から構成されるチェックレバー(レバー)とを有している。このチェックレバーはドア側壁及びケースを貫通しており、この状態で、チェックレバーの基端部がブラケットに回動可能に連結されるとともに、チェックレバーの先端部がドアの内部に位置している。そして、チェックレバーの先端部は、チェックレバーにおけるケース内を貫通する部分(中間部)よりも大きく形成されている。チェックレバーの先端部の内端(レバー長手方向基端側の端面)がクッション部材を介してケースに当接することにより、チェックレバーの先端部がドアの全開位置(つまり、ドアの開度)を規定する全開ストッパとして機能している。そして、このチェックレバーの先端部(全開ストッパ)は、芯板の先端部と、芯板の先端部に形成されたピン孔に嵌合されたアンカピンと、芯板の先端部及びアンカピンの全体を包むように外皮と一体に成形される樹脂製の膨大部とで構成されており、ドア全開の際の開放力を膨大部で受けている。
【0004】
特許文献2にはレバーの製造方法が開示されており、特許文献2に開示されたレバーの製造方法は、成形金型のゲートの位置をレバーの基端部側として、鉄製のインサート(芯板)を装着してから溶融樹脂を注入するインサート成形を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-190431号公報
【特許文献2】特開平02-253912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、インサート成形によってレバーを製造する場合、特許文献1に開示されたチェックレバーの先端部の膨大部では、注入された溶融樹脂は膨大部表面(金型と接触している面)ほど早く冷え、膨大部内部は表面より遅れて冷えて固まることにより膨大部内部の樹脂密度が変化するため、膨大部内部でボイドが発生するおそれがあった。ドア全開時に膨大部がケースと当接することにより、ケースから膨大部に押圧力が付与される際、膨大部内部で発生したボイドを起点として樹脂の割れやひびが生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、レバーの先端部の膨大部内部におけるボイドの発生を抑制し、レバーの先端部の耐久性の向上を図ることができる構造を有した車両用ドア開度規定機構及びそのレバーを製造するレバー製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両の車体に形成されるドア開口部にヒンジを介して取り付けられるドア側壁を有するドアのドア側壁の裏面に固定されるケースと、ドア開口部におけるドア側壁に相対する部分に取り付けられるブラケットと、金属製のプレートと該プレートを被覆する被覆層とからなるインサート成形品であるレバーであって、ブラケットに回動可能に取り付けられる基端部と、該基端部と連続しドア側壁及びケースを貫通するように延びる中間部と、該中間部と連続して延びドアの内部に位置するとともに、レバーの長手方向に対して直交する断面である横断面において中間部の断面積より大きな断面積を有しドアの開度を規定する先端部と、に区分される、レバーと、を含み、先端部のレバー長手方向基端側の端面をケースに当接させることによりドアの開度を規定する、車両用ドア開度規定機構であって、プレートは、基端部の内部に位置するプレート基端部と、中間部の内部に位置するプレート中間部と、先端部の内部に位置するプレート先端部と、に区分され、被覆層は中間部より先端部の方が肉厚になる部分を有し、先端部における被覆層は、プレート先端部を被覆する先端側内部層と該先端側内部層を被覆する先端側外部層とを有して、先端側外部層は樹脂からなり、先端側内部層と先端側外部層との間には境界が形成されている。本発明の他の態様は、本発明の一態様である車両用ドア開度規定機構のレバーを製造するレバー製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レバーの先端部の膨大部内部におけるボイドの発生を抑制し、レバーの先端部の耐久性の向上を図ることができる構造を有した車両用ドア開度規定機構及びレバー製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構を含む車両の部分斜視図である。
図2】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構の側面図である。
図4】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構の上面図である。
図5】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構のレバーの斜視図である。
図6】第1実施形態に係るレバーの被覆層の構造を概略的に示した図である。
図7】第2実施形態に係るレバーの被覆層の構造を概略的に示した図である。
図8】第3実施形態に係るレバーの被覆層の構造を概略的に示した図である。
図9】第3実施形態のレバーの被覆層の製造方法を概略的に示した図である。
図10】第1実施形態のレバーの被覆層の他の製造方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用ドア開度規定機構及びレバー製造方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構100を含む車両の部分斜視図である。図2から図4は車両用ドア開度規定機構100の全体図であり、図2は斜視図、図3は側面図(左側面図)、図4は上面図である。なお、図1はドア全開状態を示し、図2から図4はドア全閉状態を示し、図2から図4では、後述の車体B及びドアDが取り外されている。また、図において、矢印F方向は車両前後方向における前方を示す。矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示す。矢印Uは車両上方を示す。
【0013】
図1に示されるように、車両用ドア開度規定機構100は、車両の車体BとドアDとの間を連結するとともにドアDの開度(つまり、ドア全開位置)を規定する機構であり、レバー1と、ケース10と、ブラケット60と、を含む。
【0014】
車両用ドア開度規定機構100が適用されるドアDは、車両の車体Bに形成されるドア開口部B1を開閉するヒンジ回動式のドアである。本実施形態では、ドア開口部B1は車体側部に形成されており、ドアDはサイドドアであるものとする。図1では、車室内の乗員が車両前後方向の前方に向かって視たときの右側のサイドドア(ドアD)に、車両用ドア開度規定機構100が適用されている状態が一例として示されている。
【0015】
ドアDは、車体Bのドア開口部B1にヒンジHを介して取り付けられるドア側壁D1を有する。本実施形態では、ドア側壁D1は、ドア閉状態において、ドアDの車両前後方向の前部に位置する前壁であり、車両上下方向に延在している。したがって、ドア開口部B1におけるドア側壁D1に相対する部分B11は、ドア閉状態において、ドア開口部B1のうちの車両前後方向の前縁部分である。そして、本実施形態では、車両用ドア開度規定機構100は、ドアDの前壁(ドア側壁D1)とドア開口部B1のうちの車両前後方向の前縁部分(ドア閉時にドア側壁D1と相対する部分B11)との間を連結するように設けられている。
【0016】
本実施形態では、互いに車両上下方向に離隔する二つのヒンジHがドアDのドア側壁D1に取り付けられており、車両用ドア開度規定機構100は、車両上下方向について、二つのヒンジHの間に位置している。各ヒンジHは、上下方向に延びるドア回動軸部H1を有している。
【0017】
レバー1は、ドアDの開度を規定する主要部品であり、金属製のプレート2及びプレート2を被覆する被覆層30からなるインサート成形品である。プレート2は、所定のプレート厚みtを有した金属製の板材を用いて形成されている。被覆層30は樹脂からなる樹脂層を含んでおり、樹脂層の材料としては、例えば、所定の繊維強化樹脂が用いられる。但し、繊維を含有しない樹脂層が用いられてもよい。
【0018】
レバー1は、全体として一方向に長い所定長を有する部品として形成されている。レバー1のレバー長手方向車体側の端部(換言すると、レバー長手方向基端側の端部、さらに言うと、基端部)がブラケット60を介して車体Bに取り付けられ、レバー1のレバー長手方向ドア側の端部(換言すると、レバー長手方向先端側の端部、さらに言うと、先端部)がドアDの内部に位置している。
【0019】
図1から図4を参照すると、レバー1は、ブラケット60に回動可能に取り付けられる基端部3と、基端部3と連続しドア側壁D1及びケース10を貫通するように延びる中間部4と、中間部4と連続して延びドアDの内部に位置するとともに、レバー1の長手方向に対して直交する断面(以下、横断面という。)においては、中間部4の断面積より大きな断面積を有しドアDの開度を規定する先端部5と、に区分される。レバー1の詳しい構造については、後に詳述する。
【0020】
ケース10は、ドア側壁D1の裏面に固定される部材である。ケース10は、全体として概ね中空直方体形の箱状に形成されている。特に限定されるものではないが、ケース10は、一端が開口された箱形のケース本体11と、ケース本体11の開口を塞ぐようにケース本体11に取り付けられたケースカバー12とからなる。ケース本体11の底部及びケースカバー12は概ね車両上下方向に長い矩形状に形成されている。ケース10は、ケース本体11の底部の長辺が車両上下方向に延びた姿勢で、ドア側壁D1の裏面に固定されている。具体的には、ケース本体11の底部には、互いに車両上下方向に離隔した二つのスタッドボルト13、13が設けられており、各スタッドボルト13がドアDのドア側壁D1を裏面側から貫通した状態で、ナット14がスタッドボルト13に螺合されることで、ケース10がドア側壁D1の裏面に固定される。図1を参照すると、ドア側壁D1における二つのスタッドボルト13、13の間の部分には、側壁貫通孔D1aが開口されており、レバー1の中間部4は側壁貫通孔D1aに挿通される。側壁貫通孔D1aは、矩形状に形成されており、レバー1の中間部4の断面積よりも大きな開口面積を有する。
【0021】
図2から図4を参照すると、ケース10のケース本体11の底部(図2及び図3参照)には、底部貫通孔11aが開口され、ケースカバー12(図4参照)には、カバー貫通孔12aが開口されている。底部貫通孔11a及びカバー貫通孔12aは側壁貫通孔D1aと形状及び大きさを合わせて形成されており、レバー1の中間部4は側壁貫通孔D1a、底部貫通孔11a及びカバー貫通孔12aを通じてケース10を貫通するようになっている。
【0022】
ケース10の内部には、一対のシュー15a、15bが設けられている。一方のシュー15aは図示されていない付勢部材(例えば、バネ)によって上方からレバー1の中間部4に付勢され、他方のシュー15bは図示されていない付勢部材(例えば、バネ)によって下方からレバー1の中間部4に付勢されている。ドアDが開閉されると、ケース10はレバー1の中間部4に沿って移動する。このとき、上記付勢部材によって付勢された一対のシュー15a、15bは、レバー1の中間部4を上下から挟持した状態で、中間部4に沿って摺動し得る。
【0023】
ブラケット60は、車体Bのドア開口部B1におけるドア側壁D1に相対する部分B11に取り付けられる部材である。本実施形態では、ブラケット60は、ドア開口部B1のうちの車両前後方向の前縁部分(B11)に取り付けられている。
【0024】
ブラケット60は、ブラケット本体61と、レバー回動軸部62とからなる。ブラケット本体61には、ボルト挿通孔61aと軸嵌合孔61b(図3参照)が形成されている。ボルト挿通孔61aには、ブラケット60をドア開口部B1に固定するためのブラケット固定ボルト63が挿通される。レバー回動軸部62は、ヒンジHのドア回動軸部H1の延伸方向(ここでは車両上下方向)と平行に延びており、ブラケット本体61の軸嵌合孔61bに嵌合することでブラケット本体61に取り付けられる。
【0025】
車両用ドア開度規定機構100は、レバー1の先端部5のレバー長手方向基端側(つまり、レバー長手方向について基端部3側)の端面5aをケース10に当接させることによりドアDの開度を規定するように構成されている。換言すると、レバー1(中間部4)に沿うケース10の移動のドア開方向についての移動端は、先端部5により規定される。そして、ドア全開の際の開放力(ドア開方向のドアDの慣性力)は先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aで受け止められており、ドア全開の際に、衝撃力(押圧力)が先端部5の端面5aに作用し得る。
【0026】
具体的には、本実施形態では、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aが、ケース10のケースカバー12(ケース10におけるドア側壁D1とは反対側の端面)に形成されたカバー貫通孔12aの周囲の部分に、直接的に当接することにより、ドアDの開度(全開位置)が規定されている。
【0027】
次に、レバー1の詳しい構造について、図2から図8を参照して説明する。
【0028】
図5はレバー1の斜視図である。図6は、本発明の特徴であるレバー1の被覆層30の構造を概略的に示した第1実施形態の図である。図7は、同じく本発明の特徴であるレバー1の被覆層30の構造を概略的に示した第2実施形態の図である。図8は、同じく本発明の特徴であるレバー1の被覆層30の構造を概略的に示した第3実施形態の図である。図9は、第3実施形態のレバー1の被覆層30の製造方法を概略的に示した図である。図10は、第1実施形態のレバー1の被覆層30の他の製造方法を概略的に示した図である。図6から図10は、いずれもレバー1を左右方向である側面から視た図である。
【0029】
図2から図5を参照すると、レバー1は、レバー長手方向について、前述のように、基端部3、中間部4、及び先端部5に区分される。基端部3はレバー1におけるレバー長手方向車体側(ブラケット60側)の端部を構成する部分であり、先端部5はレバー1のレバー長手方向ドア側の端部(換言すると、先端部)を構成する部分であり、中間部4は基端部3と先端部5との間を接続する部分である。
【0030】
基端部3には、嵌合孔3aが形成されており、ブラケット60のレバー回動軸部62は嵌合孔3aに嵌合する。基端部3の内部には、プレート2の端部が位置しており、レバー回動軸部62はプレート2の端部を貫通している。そして、基端部3は、レバー回動軸部62を介してブラケット60に回動可能に取り付けられている。
【0031】
中間部4は、横断面において、矩形断面を有して基端部3から先端部5まで延在している。中間部4の横断面における最大断面積は、側壁貫通孔D1a、底部貫通孔11a及びカバー貫通孔12aの開口面積よりも小さく設定されている。これにより、中間部4は、ドア側壁D1及びケース10を貫通できるようになっている。
【0032】
本実施形態では、中間部4の上面及び下面のそれぞれには、複数の凹部(ここでは、第1凹部4a、第2凹部4b、及び第3凹部4c)が形成されている。各凹部(4a、4b、4c)は、ドアDを全閉位置と全開位置との間の所定の開度位置で保持するための抵抗力を、各シュー(15a、15b)を介してドアDに付与する要素である。第1凹部4a、第2凹部4b及び第3凹部4cは、レバー長手方向に互いに離隔している。中間部4における基端部3側の部分は、基端部3の断面積と同程度の断面積を有しており、中間部4の残りの部分よりも上下に薄く形成されている。そして、各凹部(4a、4b、4c)を有している中間部4における大半の部分が、中間部4の基端部3の近傍部分よりも上下に幅広に形成されている。つまり、本実施形態では、中間部4の大半の部分は、車両上下方向を長辺とする矩形断面を有している。
【0033】
ドアDが全閉位置からドア開方向に回動されると、上側のシュー15aは中間部4の上面に沿って摺動し、下側のシュー15bは中間部4の下面に沿って摺動する。そして、各シュー15a、15bの先端部が第1凹部4aに入り込むと、ドアDのそれ以上の開方向への回動が停止され、ドアDが全閉位置と全開位置との間の概ね中央である第1開度位置(中央開度位置)で保持される。この第1開度位置で、ドアDに第1凹部4aによる保持力を超える開放力が加えられると、各シュー15a、15bの先端部は、第1凹部4aの斜面を乗り越え、第2凹部4bに向かって中間部4の表面に沿って摺動する。その後、各シュー15a、15bの先端部が第2凹部4bに入り込むと、ドアDが第1開度位置と全開位置との間に位置する第2開度位置で保持される。この第2開度位置で、ドアDに第2凹部4bによる保持力を超える開放力が加えられると、各シュー15a、15bの先端部は、第2凹部4bの斜面を乗り越え、第3凹部4cに向かって中間部4の表面に沿って摺動する。その後、各シュー15a、15bの先端部が第3凹部4cに入り込むと、ドアDが第2開度位置と全開位置との間で全開位置近傍に位置する第3開度位置で保持される。この第3開度位置で、ドアDに第3凹部4cによる保持力を超える開放力が加えられると、各シュー15a、15bの先端部は、第3凹部4cの斜面を乗り越え、先端部5に向かって中間部4の表面に沿って摺動する。
【0034】
先端部5は、レバー1のレバー長手方向先端側の端部(先端部)を構成している。先端部5は、前述のように、ドアDの内部に位置し、横断面において、レバー1の中間部4の断面積より大きな断面積を有し、ドアDの開度を規定する部分である。先端部5は、ドアDの最大開度を規定するストッパとして機能する。
【0035】
本実施形態では、先端部5は、中間部4のドアD側端部に連続する拡大部51と、拡大部51に連続するストッパ先端部52とからなる。拡大部51は、先端部5のレバー長手方向基端側の部分を構成する。拡大部51はケース10に当接する端面5aを有している。ストッパ先端部52は、先端部5のレバー長手方向先端側の部分を構成する。特に限定されないが、拡大部51は、例えば、四角柱状に形成されている。ストッパ先端部52は、例えば、先細りの四角錐台状に形成されている。従って、側面視において、先端部5はレバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。
【0036】
本実施形態では、先端部5のレバー長手方向基端側の部分は、プレート厚み方向(換言すると、プレート2の上面又は下面の法線方向)について中間部4よりも幅広に形成されている。つまり、先端部5の拡大部51は、中間部4よりも幅広に形成され、プレート厚み方向について中間部4の表面よりも外側に突出した部分を有している。
【0037】
本実施形態では、プレート厚み方向は、車両上下方向に一致している。つまり、本実施形態では、先端部5はケース10に当接する先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aを有し、且つ、先端部5のレバー長手方向基端側の部分である、拡大部51は、プレート厚み方向(車両上下方向)について中間部4よりも幅広に形成されている。そして、ここでは、拡大部51は、プレート厚み方向について、中間部4の上面に対して上方に突出した部分と中間部4の下面に対して下方に突出した部分とを有している。
【0038】
図2から図5を参照すると、本実施形態では、拡大部51(先端部5のレバー長手方向基端側の部分)は、プレート厚み方向と直交するプレート幅方向についても、中間部4よりも僅かに幅広に形成されている。そして、拡大部51は、プレート幅方向について、中間部4の一方の側面(ドア閉状態で、右側面又は左側面)に対して外側に僅かに突出した部分と、中間部4の他方の側面(ドア閉状態で、左側面又は右側面)に対して外側に僅かに突出した部分とを有している。拡大部51のプレート幅方向についての中間部4に対する突出量は、拡大部51のプレート厚み方向についての中間部4に対する突出量よりも顕著に小さく、拡大部51は中間部4に対してプレート厚み方向に顕著に幅広な外形を有している。
【0039】
換言すると、本実施形態では、ケース10に当接する先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aは、中間部4におけるプレート幅方向の側面4d(ドア閉状態で、左側面、右側面)からプレート幅方向の外側に突出したプレート幅方向突出面部5a1を有している。さらに、本実施形態では、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aは、中間部4におけるプレート厚み方向の側面4e(ドア閉状態で、上面、下面)からプレート厚み方向の外側に突出したプレート厚み方向突出面部5a2を有している。プレート幅方向突出面部5a1は、レバー1の先端部5側において、中間部4の側面4dと協働して、プレート幅方向についてのレバー段差部(レバー肩部)を構成している。同様に、プレート厚み方向突出面部5a2は、レバー1の先端部5側において、中間部4の側面4eと協働して、プレート厚み方向についてのレバー段差部(レバー肩部)を構成している。
【0040】
具体的には、ケース10に当接する先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aは、拡大部51のレバー長手方向について中間部4側(基端部3側)の端面であり、車両上下方向に延びる矩形環状の平面として形成されている。そして、ドア全開の際の開放力(ドア開方向のドアDの慣性力)は、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5a(プレート幅方向突出面部5a1及びプレート厚み方向突出面部5a2)で受け止められ、これらの部分に大きな衝撃力が作用する。
【0041】
次に、レバー1のプレート2について詳述する。
【0042】
図5を参照すると、プレート2の全体は被覆層30の内部に埋設されている。そして、プレート2は、前述のように、所定のプレート厚みtを有した金属製の板材を用いて形成されている。そして、プレート2の全体が、被覆層30により被覆されている。
【0043】
プレート2は、車体B側からドアD側に向かって、プレート基端部2aとプレート中間部2bとプレート先端部2cとに区分される。プレート2は、プレート幅方向(左右方向)から視た場合(側面視の場合)、I字状となっており、概ね一方向に直線的に延びたフラットバー状に形成されている。
【0044】
プレート基端部2aは、プレート2におけるレバー1の基端部3の内部に位置する部分である。プレート基端部2aには、ブラケット60のレバー回動軸部62が挿通される。
【0045】
プレート中間部2bは、プレート2におけるレバー1の中間部4の内部に位置する部分である。プレート中間部2bは、プレート基端部2aとプレート先端部2cとを連結する。プレート中間部2bは、レバー1の中間部4の内部において中間部4の長手方向の全体に延在しており、所定のプレート幅を有した概ね帯状に形成され、且つ、概ね一方向に直線的に延びている。
【0046】
プレート先端部2cは、プレート2におけるレバー1の先端部5の内部に位置する部分である。本実施形態では、プレート先端部2cのプレート幅は、プレート中間部2bの前記所定のプレート幅よりも広く設定されている。換言すると、プレート先端部2cは、プレート幅方向についてプレート中間部2bよりも幅広に形成されている。
【0047】
次に、図6(a)、(b)を参照して、第1実施形態に係るレバー1における先端部5の被覆層30の構造について説明する。図6(a)は、第1実施形態におけるレバー1の被覆層30の構造を概略的に示した図であって、レバー1をプレート幅方向である側面から視た(側面視)図である。
【0048】
前述したように、レバー1は、金属製のプレート2とプレート2を被覆する被覆層30とからなるインサート成形品のあるレバーである。先端部5は、横断面において中間部4の断面積より大きな断面積を有し、レバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。先端部5の内部に位置するプレート先端部2cの形状はI字状となっている。従って、被覆層30は中間部4より先端部5の方が肉厚になる部分を有する。基端部3は、図3に示すように、横断面において中間部4の断面積より大きな断面積を有し、中間部4より幅広に形成されている。ただし、図6(a)に示すように、基端部3は図6(a)に示すように中間部4と同一幅であっても構わない。基端部3の内部に位置するプレート基端部2aの形状はI字状となっている。
【0049】
先端部5における被覆層30は、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31と、先端側内部層31を被覆する先端側外部層32とを有している。先端側内部層31および先端側外部層32は樹脂からなる樹脂層である。また、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。側面視において、図6(a)に示すように、先端側外部層32の形状は先端部5の形状であることから、レバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。図6(a)において、上側の破線で示される部分が先端側内部層31である。先端側内部層31の形状は先端側外部層32の形状と相似する形状を有しており、先端側内部層31はレバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。先端側内部層31の形状を先端側外部層32の形状と相似する形状とすることにより、先端側外部層32の肉厚を略均一にすることができる。本実施形態では、先端側外部層32の肉厚を略均一にするため、先端側内部層31の形状は先端側外部層32の形状と相似するレバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状としたが、先端側外部層32の形状が他の形状であれば、先端側内部層31の形状は、先端側外部層32の形状と相似する形状であればよい。先端側外部層32の肉厚を略均一にすることができるからである。
【0050】
尚、本実施形態では、上述したように、先端部5における被覆層30は、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31と、先端側内部層31を被覆する先端側外部層32とを有し、先端側内部層31および先端側外部層32は樹脂からなる樹脂層であり、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。先端側内部層31と先端側外部層32との間に形成される境界33は、先端部5を横断面で切断することで確認することができる。
【0051】
基端部3における被覆層30は、プレート基端部2aを被覆する基端側内部層34と、基端側内部層34を被覆する基端側外部層35とを有している。基端側内部層34および基端側外部層35は樹脂からなる樹脂層である。図6(a)において、下側の破線で示される部分が基端側内部層34である。側面視において、基端側外部層35の形状は基端部3の形状であることからレバー長手方向基端側が中間部4と同一幅に形成されている。基端側内部層34の形状は基端側外部層35の形状と相似する形状を有しており、基端側内部層33はレバー長手方向中間側から基端側に向けて同一幅となる略矩形状に形成されている。基端側内部層34の形状を基端側外部層35の形状と相似する形状とすることにより、基端側外部層35の肉厚を略均一にすることができる。
【0052】
図6(b)は、図6(a)のレバー1の被覆層30の構造において、先端側外部層32を除いた状態を示した図である。図6(b)に示すように、先端側内部層31は、プレート2の先端側端面を含むプレート先端部2cを被覆する内部層本体部31aと、内部層本体部31aの基端側端面から基端側に突出する内部層ボス部31bと、を有する。内部層本体部31aはレバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。内部層本体部31aの形状が先端側外部層32の形状と相似する部分であり、内部層本体部31aの形状を先端側外部層32の形状と相似させることにより、先端側外部層32の肉厚を略均一にすることができる。尚、先端側内部層31は内部層ボス部31bを有しているが、内部層ボス部31bは無くても構わない。
【0053】
図6(b)に示すように、基端側内部層34は、プレート2の基端側端面を含むプレート基端部2aを被覆し、形状はプレート基端部2aおよびレバー1の基端部3と相似する形状である。従って、基端側外層部35の肉厚は略同一となる。
【0054】
第1実施形態において、先端部5の被覆層30は先端側内部層31と先端側外部層32とを有し二重層で形成され、基端部3の被覆層30は基端側内部層34と基端側外部層35とを有し二重層で形成されているが、中間部4の被覆層30は内部層を有さず二重層ではなく単独層で形成されている。
【0055】
第1実施形態では、先端側内部層31を構成する樹脂材料は耐衝撃性の高い材料で形成され、先端側外部層32を構成する樹脂材料は摺動性の高い材料で形成されている。ドア全開の際に、レバー1の先端部5の端面5aがケース10と当接することにより先端部5の端面5aに押圧力が作用するが、先端側内部層31を構成する樹脂材料を耐衝撃性の高い材料で形成することで、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。また、レバー1の先端部5の端面5aがケース10と当接するが、先端側外部層32を構成する樹脂材料を摺動性の高い材料で形成することで、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0056】
第1実施形態では、レバー5の先端部5における被覆層30は、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31の樹脂密度は、先端側内部層31を被覆する先端側外部層32の樹脂密度より大きい。また、レバー5の基端部3における被覆層30は、プレート基端部2aを被覆する基端側内部層34の樹脂密度は、基端側内部層34を被覆する基端側外部層35の樹脂密度より大きい。ただし、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31の樹脂密度は、先端側内部層31を被覆する先端側外部層32の樹脂密度より大きくても構わない。あるいは、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31の樹脂密度と、先端側内部層31を被覆する先端側外部層32の樹脂密度とが同じであっても構わない。また、プレート基端部2aを被覆する基端側内部層34の樹脂密度は、基端側内部層34を被覆する基端側外部層35の樹脂密度より大きくても構わない。あるいは、プレート基端部2aを被覆する基端側内部層34の樹脂密度は、基端側内部層34を被覆する基端側外部層35の樹脂密度と同じであっても構わない。
【0057】
次に、第1実施形態のレバー1の製造方法について説明する。第1実施形態のレバー1の製造方法は、先端部5の先端側内部層31は第1工程によって形成され、先端部5の先端側外部層32は第1工程とは異なる第2工程によって形成される。従って、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。すなわち、先端部5における被覆層30は、先端側内部層31と先端側外部層32との異なる層によって二重層に形成されているため、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。また、基端部3の基端側内部層34は第1工程によって形成され、基端部3の基端側外部層35も第1工程とは異なる第2工程によって形成される。従って、基端側内部層34と基端側外部層35との間には境界33が形成されている。すなわち、基端部3における被覆層30は、基端側内部層34と基端側外部層35との異なる層によって二重層に形成されているため、基端側内部層34と基端側外部層35との間には境界33が形成されている。具体的には、先端側内部層31および基端側内部層34は、プレート2と一体に射出成形されるインサート成形である第1工程によって形成される。先端側外部層32および基端側外部層35は、第1工程とは異なる射出成形である第2工程によって形成される。従って、被覆層30は、先端部5においては先端側内部層31と先端側外部層32との間に境界33が形成され、基端部3においては基端側内部層34と基端側外部層35との間に境界33が形成されている。
【0058】
被覆層30は中間部4より先端部5の方が肉厚になる部分を有するが、第1工程で、レバー5の先端部5における被覆層30の肉厚となる部分の内部側である先端側内部層31を成形することで、先端側内部層31で成形収縮によって密度が低下し、真空ボイドが発生する状況を防ぐことができる。また、図6(a)のレバー1の先端と基端に示した矢印の様に、第1工程の成形でプレート2の先端と基端を被覆することで、第2工程の成形の際の熱によって第1工程で成形した先端側内部層31および基端側内部層34の樹脂が軟化し、第2工程で成形される先端側外部層32の樹脂の成形収縮を軟化した先端側内部層31および基端側内部層34によって吸収することができる。そのため、先端側外部層32の樹脂の成形収縮がプレート2に阻害されず残留応力を下げることが可能となる。
【0059】
次に、図7(a)、(b)を参照して本発明の特徴であるレバー1の被覆層30構造の第2実施形態について説明する。図7(a)は、第2実施形態におけるレバー1の被覆層30構造を概略的に示した図であって、レバー1をプレート幅方向である側面から視た(側面視)図である。
【0060】
第2実施形態と第1実施形態との相違は、第1実施形態では、中間部4の被覆層30は内部層を有さず単独層で形成されていたが、第2実施形態においては、基端部3および先端部5と同じように、中間部4の被覆層30も二重層で形成されている点である。尚、第2実施形態の第1実施形態と共通する構成については同一の符号を示し、また、第2実施形態の第1実施形態と共通する構成についての説明は省略する。
【0061】
第2実施形態において、先端部5の被覆層30は先端側内部層31と先端側外部層32とを有し二重層で形成され、基端部3の被覆層30は基端側内部層34と基端側外部層35とを有し二重層で形成されている。また、中間部4の被覆層30は中間側内部層36と中間側外部層37とを有し二重層で形成されている。先端側内部層31、中間側内部層36、基端側内部層34は一体に形成されている。図7(a)において示す破線が、プレート2と、先端側内部層31、中間側内部層36、基端側内部層34を示す。尚、以降において、先端側内部層31、中間側内部層36、基端側内部層34を、単に内部層31、36、34と呼び、先端側外部層32、中間側外部層37、基端側外部層35を、単に外部層32、37、35と呼ぶ場合がある。図7(b)は、図7(a)のレバー1の被覆層30の構造において、外部層32、37、35を除いた状態を示した図である。図7(b)に示すように、先端側内部層31、中間側内部層36、基端側内部層34は一体に形成されているため、各内部層同士の間には境界がない。
【0062】
第2実施形態において、内部層および外部層は樹脂からなる樹脂層である。内部層を構成する樹脂材料は耐衝撃性の高い材料で形成され、外部層を構成する樹脂材料は摺動性の高い材料で形成されている。ドア全開の際に、レバー1の先端部5の端面5aがケース10と当接することにより先端部5の端面5aに押圧力が作用するが、内部層を構成する樹脂材料を耐衝撃性の高い材料で形成することで、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。また、レバー1の先端部5の端面5aがケース10と当接するが、外部層を構成する樹脂材料を摺動性の高い材料で形成することで、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0063】
次に、第2実施形態のレバー1の製造方法について説明する。第2実施形態のレバー1の製造方法は、先端側内部層31、中間側内部層36、基端側内部層34は一体で、プレート2と一体に射出成形されるインサート成形である第1工程によって形成される。先端側外部層32、中間側外部層37、基端側外部層35は一体で、第1工程とは異なる射出成形である第2工程によって形成される。従って、被覆層30は、先端部5においては先端側内部層31と先端側外部層32との間に境界33が形成され、中間部4においては中間側内部層36と中間側外部層37との間に境界33が形成され、基端部3においては基端側内部層34と基端側外部層35との間に境界33が形成されている。
【0064】
次に、図8(a)、(b)を参照して本発明の特徴であるレバー1の被覆層30構造の第3実施形態について説明する。図8(a)は、第3実施形態におけるレバー1の被覆層30構造を概略的に示した図であって、レバー1をプレート幅方向である側面から視た(側面視)図である。
【0065】
第3実施形態と第1実施形態との相違は、第1実施形態における先端側内部層31の材料と第3実施形態における先端側内部層31の材料とが異なる点であり、他の構成については同じである。尚、第3実施形態の第1実施形態と共通する構成については同一の符号を示し、また、第3実施形態の第1実施形態と共通する構成についての説明は省略する。
【0066】
第3実施形態において、先端部5の被覆層30は先端側内部層31と先端側外部層32とを有し二重層で形成され、基端部3の被覆層30は基端側内部層34と基端側外部層35とを有し二重層で形成されている。図8(a)において示す破線が、プレート2と、先端側内部層31、基端側内部層34を示す。図8(b)は、図8(a)のレバー1の被覆層30の構造において、先端側外部層32、基端側外部層35、および、中間部4の被覆層30を除いた状態を示した図である。
【0067】
先端側内部層31の樹脂は繊維38を含む繊維強化樹脂であって、先端側内部層31における繊維38の配向はレバー1の長手方向に対して交差する方向に沿っている。図8(b)において、先端側内部層31内に表された短い横線が繊維38であり、当該横線御向きはレバー1の長手方向に対して交差する方向である。
【0068】
図8(a)において示す白抜き矢印は、ドア全開の際に、レバー1の先端部5の端面5aがケース10と当接することにより先端部5の端面5aに作用する押圧力の向きを示す。押圧力はレバー1の長手方向と同じ向きに作用する。先端側内部層31の樹脂は繊維を含む繊維強化樹脂であって、先端側内部層31における繊維の配向はレバー1の長手方向に対して交差する方向に沿っている。そのため、ドア全開時に、ケース10と先端部5の被覆層30とが接触し、ケース10から先端部5に押圧力が付与される際、先端側内層部31がレバー1の長手方向と直交する方向に引っ張られることでの先端側内層部31の割れやひびの発生を抑制できる。
【0069】
第3実施形態において、基端側内部層34の樹脂は繊維38を含む繊維強化樹脂であって、基端側内部層34における繊維38の配向はレバー1の長手方向と同じ方向に沿っている。図8(b)において、基端側内部層34内に表された短い横線が繊維38であり、当該横線御向きはレバー1の長手方向と同じ方向である。尚、基端側内部層34の樹脂は、必ずしも、繊維38を含む繊維強化樹脂でなくても構わない。
【0070】
次に、図9を参照して、第3実施形態の先端側内部層31および基端側内部層34の製造方法について説明する。図9は、図8(a)のレバー1の被覆層30の構造において、先端側外部層32、基端側外部層35、および、中間部4の被覆層30を除いた状態を示した図であり、プレート幅方向である側面から視た(側面視)図である。
【0071】
第3実施形態において、先端側内部層31および基端側内部層34は射出成形によって製造される。先端側内部層31を射出成形する場合のゲート40の位置は、レバー1の長手方向と直交する方向で、かつ、プレート2の厚み方向であるプレート厚み方向から樹脂が射出するように配置する。ゲート40をこのように配置することで、先端側内部層32における繊維38の配向はレバー1の長手方向に対して交差する方向に沿って配置することができる。
【0072】
基端側内部層34を射出成形する場合のゲート40の位置は、レバー1の長手方向で、プレート2の基端側から樹脂が射出するように配置する。ゲート40をこのように配置することで、基端側内部層34における繊維38の配向はレバー1の長手方向に沿って配置することができるので、基端側内部層34をレバー1の長手方向に対して補強できる。尚、基端側内部層34を射出成形する場合のゲート40の位置は、必ずしも、レバー1の長手方向でなくても構わない。
【0073】
次に、図10を参照して、先述した第1実施形態のレバー1の製造方法とは異なる他の製造方法について説明する。本実施形態では、下記の製造法でレバー1を製造する。
(1)準備工程:先端側内部層31および基端側内部層34を個別に製作する。先端側内部層31には、プレート2のプレート先端部2cを嵌め込むための挿入孔41が形成され、また、基端側内部層34にも、プレート2のプレート基端部2aを嵌め込むための挿入孔41が形成されている。
(2)第1工程:プレート2のプレート先端部2cを先端側内部層31の挿入孔41に嵌め込む。また、プレート2のプレート基端部2aを基端側内部層34の挿入孔41に嵌め込む。
(3)第2工程:第1工程の後、先端側内部層31および基端側内部層34がはめ込まれたプレート2と金型との間に樹脂を射出することによって、先端側外部層32および基端側外層部35を成形してレバー1を製造する。
【0074】
レバー1は、先端側内部層31および基端側内部層34は準備工程で製作され、第1工程によって、先端側内部層31および基端側内部層34がプレート2に嵌め込まれた後、先端側外部層32および基端側外武装32は第1工程とは異なる第2工程によって形成される。従って、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。すなわち、先端部5における被覆層30は、先端側内部層31と先端側外部層32との異なる層によって二重層に形成されているため、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。また、基端部3の基端側内部層34は第1工程によって形成され、基端部3の基端側外部層35も第1工程とは異なる第2工程によって形成される。従って、基端側内部層34と基端側外部層35との間には境界33が形成されている。すなわち、基端部3における被覆層30は、基端側内部層34と基端側外部層35との異なる層によって二重層に形成されているため、基端側内部層34と基端側外部層35との間には境界33が形成されている。
【0075】
上記したレバー1を含む車両用ドア開度規定機構は、以下に列挙されるような主な特徴と効果を有する。
【0076】
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構は、金属製のプレート2とプレート2を被覆する被覆層30とからなるインサート成形品であるレバー1を含む。被覆層30は中間部4より先端部5の方が肉厚になる部分を有し、先端部5における被覆層30は、プレート先端部2cを被覆する先端側内部層31と先端側内部層31を被覆する先端側外部層32とを有している。先端側外部層32はからなり、先端側内部層31と先端側外部層32との間には境界33が形成されている。
【0077】
従来技術では、被覆層は中間部より先端部の方が肉厚になる部分を有し、上記した実施形態の様に先端部の被覆層は二層ではなく一層で構成されていた。そのため、インサート成形の際に、先端部における被覆層の内部は外側に比べて冷えにくいことから、被覆層の内部ではボイドが発生しやすく、内部で発生したボイドを起点として樹脂の割れやひびが生じるおそれがあった。しかし、本実施形態で示した上記の構成により、先端部5における被覆層は二層(先端側内部層31と先端側外部層32)で構成され、樹脂からなる先端側外部層32の内部におけるボイドの発生を抑制することができるため、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0078】
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構では、先端側内部層31は樹脂からなり、先端側内部層31の樹脂密度は先端側外部層32の樹脂密度より大きい。
【0079】
本実施形態で示した上記の構成により、先端部5における被覆層は二層(先端側内部層31と先端側外部層32)で構成され、先端側内部層31の樹脂密度が先端側外部層32の樹脂密度より大きいことから、先端側内部層31の内部でボイドの発生を抑制することができるため、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0080】
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構は、先端側内部層31の樹脂は繊維強化樹脂であって、該繊維強化樹脂の繊維の配向はレバーの長手方向に対して交差する方向に沿っている。
【0081】
本実施形態で示した上記の構成により、ドア全開時に、ケース10と先端部5の被覆層30とが接触し、ケース10から先端部5に押圧力が付与される際、先端側内層部31がレバー1の長手方向と直交する方向に引っ張られることでの先端側内層部31の割れやひびの発生を抑制できる。
【0082】
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構では、基端部3における被覆層は、プレート基端部2aを被覆する基端側内部層34と基端側内部層34を被覆する基端側外部層35とを有している。基端側内部層34および基端側外部層35は樹脂からなり、基端側内部層34と基端側外部層35との間には境界が形成されている。基端側内部層34の樹脂密度は基端側外部層35の樹脂密度より大きい。
【0083】
本実施形態で示した上記の構成により、基端側内部層34の樹脂において樹脂密度が大きくなり、ボイドの発生を抑制することができるため、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0084】
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構では、レバーの側面視において、先端側内部層31の外形は先端側外層部32の外形と相似する。
【0085】
本実施形態で示した上記の構成により、先端側外層部32の肉厚を略一定とすることができるため、インサート成形の際に、先端側外層部32が均一に冷却されるので、先端側外層部32の内部におけるボイドの発生を抑制することができるため、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0086】
本実施形態で示したレバー1の製造方法は、プレート先端部2cを先端側内部層31で被覆する第1工程と、先端側内部層31と金型との間に樹脂を射出することによって先端側外部層32を成形する第2工程と、を含む。
【0087】
本実施形態で示した上記の製造方法により、被覆層30は、二層(先端側内部層31と先端側外部層32)で構成されるので、樹脂からなる先端側外部層32の内部におけるボイドの発生を抑制することができるため、レバー1の先端部5の耐久性の向上を図ることができる。
【0088】
本実施形態で示したレバー1の製造方法は、第1工程は、プレート先端部2cと金型との間に樹脂を射出することによって先端側内部層31を成形する工程であり、第1工程の後、先端側内部層31と金型との間に樹脂を射出することによって先端側外部層32を成形する第2工程を行う2段階射出成形である。
【0089】
本実施形態で示した上記の製造方法により、効率よく、先端側内部層31と先端側外部層32とに区分できる。
【0090】
本実施形態で示したレバー1の製造方法は、第1工程は、プレート先端部2cを先端側内部層31に形成された挿入孔41に嵌め込む工程であり、第1工程の後、先端側内部層31と金型との間に樹脂を射出することによって先端側外部層32を成形する。
【0091】
本実施形態で示した上記の製造方法により、インサート成形の場合には、樹脂とその内部に埋設されたプレートとの熱膨張率の差に起因して、残留応力が生じ易く、さらに、この残留応力に起因して、耐久性が低下するおそれがあるが、プレート先端部2cを先端側内部層31に形成された挿入孔41に嵌め込むことで、熱膨張率の差に起因した残留応力が生じることを回避できる。
【0092】
(他の好適な態様)
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構は、さらに以下のような好適な態様を含む。
【0093】
上記した実施形態では、先端側内部層31は樹脂であったが、これに限定されず、例えば、アルミなどの金属であっても構わない。
【0094】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…レバー、
2…プレート、
2a…プレート基端部、
2b…プレート中間部、
2c…プレート先端部、
2d…周縁部、
2d1…周縁部のうちのプレート先端部における所定の部分、
2d2…周縁部のうちのプレート先端部におけるレバー長手方向基端側に位置する部分、
3…基端部、
4…中間部、
5…先端部、
5a…端面、
5a1…プレート幅方向突出面部、
10…ケース、
30…被覆層、
31…先端側内部層、
31a…内部層本体部、
31b…内部層ボス部、
32…先端側外部層、
33…境界、
34…基端側内部層、
35…基端側外部層、
36…中間側内部層、
37…中間側外部層、
38…繊維、
40…ゲート、
41…挿入孔、
60…ブラケット、
100…車両用ドア開度規定機構、
B…車体、
B1…ドア開口部、
B11…前縁部分(ドア開口部におけるドア側壁に相対する部分)、
D1…ドア側壁、
D…ドア、
H…ヒンジ、
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