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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179534
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両用ドア開度規定機構
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/22 20060101AFI20241219BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20241219BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
E05C17/22 A
B60J5/04 K
B29C45/14
B29C33/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098457
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】波多野 大督
(72)【発明者】
【氏名】藤田 倫暢
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AD03
4F202AD15
4F202AG03
4F202AG14
4F202AH18
4F202AM36
4F202AR07
4F202AR12
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CK12
4F206AD03
4F206AD15
4F206AG03
4F206AG14
4F206AH18
4F206AM36
4F206AR12
4F206AR13
4F206JB12
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】車両用ドア開度規定機構のレバーの先端部の耐久性を向上させる。
【解決手段】車両用ドア開度規定機構100は、先端部5の当接部5aをケース10に当接させ、先端部5の樹脂部30の表面には成形によるゲート痕跡41とウエルドライン痕跡42が形成され、ゲート痕跡41は先端部5の先端側端面5bに形成され、当該樹脂部30は、ゲート痕跡41と当接部5aとの間で、プレート先端部2cの一方の面側に形成される第1成形部31とプレート先端部2cの他方の面側に形成される第2成形部32とを有し、第1成形部31の表面形状の構造が第2成形部32の表面形状の構造と異なることで、ウエルドライン痕跡42の位置は当接部5aの位置と異なる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に形成されるドア開口部にヒンジを介して取り付けられるドア側壁を有するドアの前記ドア側壁の裏面に固定されるケースと、
前記ドア開口部における前記ドア側壁に相対する部分に取り付けられるブラケットと、
金属製のプレートと該プレートを樹脂で覆った樹脂部とからなるインサート成形品であるレバーであって、前記ブラケットに回動可能に取り付けられる基端部と、該基端部と連続し前記ドア側壁及び前記ケースを貫通するように延びる中間部と、該中間部と連続して延び前記ドアの内部に位置するとともに、前記レバーの長手方向に対して直交する断面である横断面において前記中間部の断面積より大きな断面積を有し前記ドアの開度を規定する先端部と、に区分される、レバーと、
を含み、前記先端部のレバー長手方向基端側の端面を当接部として前記ケースに当接させることにより前記ドアの開度を規定する、車両用ドア開度規定機構であって、
前記プレートは、前記基端部の内部に位置するプレート基端部と、前記中間部の内部に位置するプレート中間部と、T字状に形成され前記先端部の内部に位置するプレート先端部と、に区分され、
前記先端部における前記樹脂部の表面にはインサート成形によるゲート痕跡およびウエルドライン痕跡が形成され、前記ゲート痕跡は前記先端部のレバー長手方向先端側の端面に形成されており、
前記先端部における前記樹脂部は、前記ゲート痕跡と前記当接部との間で、前記プレート先端部のプレート厚み方向における前記プレート先端部の一方の面側に形成される第1成形部と前記プレート先端部の前記プレート厚み方向における前記プレート先端部の他方の面側に形成される第2成形部とを有し、
前記第1成形部の表面形状の構造が前記第2成形部の表面形状の構造と異なることで、前記ウエルドライン痕跡の位置は前記当接部の位置と異なることを特徴とする車両用ドア開度規定機構。
【請求項2】
前記第1成形部および前記第2成形部のそれぞれは複数の凹部を有し、
前記第1成形部の前記複数の凹部同士の間隔が前記第2成形部の前記複数の凹部同士の間隔と異なることで、前記第1成形部の表面形状の構造が前記第2成形部の表面形状の構造と異なることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項3】
前記レバーの長手方向に対して直交する方向において、前記第1成形部における前記複数の凹部同士の間隔が前記第2成形部における前記複数の凹部同士の間隔と異なっていることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項4】
前記第1成形部の前記レバーの長手方向に対して直交する方向における前記複数の凹部同士の間隔は、前記ゲート痕跡側では、前記第2成形部の前記レバーの長手方向に対して直交する方向における前記複数の凹部同士の間隔と同じであり、前記ゲート痕跡側から前記当接部側に向かうに従って、前記第2成形部の当該間隔の方が前記第1成形部の当該間隔よりも大きくなっていること特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開度規定機構。
【請求項5】
前記第1成形部における前記複数の凹部それぞれの長手方向は、前記レバーの長手方向に対して直交する方向であり、前記第2成形部における前記複数の凹部それぞれの長手方向は、前記レバーの長手方向であることを特徴とする請求項2に記載の車両用ドア開度規定機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア開度規定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、ドアの開度(全開位置)を規定するためのドア開度規定機構が設けられる場合がある。ドア開度規定機構の一例として、特許文献1に開示された自動車用ドアチェッカが知られている。
【0003】
特許文献1に開示された自動車用ドアチェッカは、自動車の車体にヒンジを介して連結されるドア側壁の裏面に固定されるケースと、車体に固定されるブラケットと、金属製の芯板及びこの芯板を覆う樹脂製の外皮から構成されるチェックレバー(レバー)とを有している。このレバーはドア側壁及びケースを貫通しており、この状態で、レバーの基端部がブラケットに回動可能に連結されるとともに、レバーの先端部がドアの内部に位置している。そして、レバーの先端部は、レバーにおけるケース内を貫通する部分(中間部)よりも大きく形成されている。レバーの先端部の内端(レバー長手方向基端側の端面)がクッション部材を介してケースに当接することにより、レバーの先端部がドアの全開位置(つまり、ドアの開度)を規定する全開ストッパとして機能している。そして、このレバーの先端部(全開ストッパ)は、芯板の先端部と、芯板の先端部に形成されたピン孔に嵌合されたアンカピンと、芯板の先端部及びアンカピンの全体を包むように外皮と一体に成形される樹脂製の膨大部とで構成されている。膨大部はレバー長手方向に対し交差する方向に突出する突出部を備え、ドア全開の際の開放力を突出部で受けている。
【0004】
特許文献2にはレバーの製造方法が開示されており、特許文献2に開示されたレバーの製造方法は、成形金型のゲートの位置をレバーの基端部側として、鉄製のインサート(芯板)を装着してから溶融樹脂を注入するインサート成形を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-190431号公報
【特許文献2】特開平02-253912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたレバーの先端部のように突出部を備えたドア開度規定機構においては、ドア全開時にケースと突出部が接触しケースから突出部に押圧力が付与される。この押圧力が付与されて応力が集中する部位(応力集中部)と、インサート成形によって生じるウエルドライン(インサート成形の際に注入された樹脂同士が合流する部分)とが一致してると、ウエルドラインに起因して割れやひびを抑制が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、応力集中部とインサート成形によって生じるウエルドラインと、を離れた位置に設けることで、ウエルドラインに起因した強度低下を抑制できる車両用ドア開度規定機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、車両の車体に形成されるドア開口部にヒンジを介して取り付けられるドア側壁を有するドアのドア側壁の裏面に固定されるケースと、ドア開口部におけるドア側壁に相対する部分に取り付けられるブラケットと、金属製のプレートと該プレートを樹脂で覆った樹脂部とからなるインサート成形品であるレバーであって、ブラケットに回動可能に取り付けられる基端部と、該基端部と連続しドア側壁及びケースを貫通するように延びる中間部と、該中間部と連続して延びドアの内部に位置するとともに、レバーの長手方向に対して直交する断面である横断面において中間部の断面積より大きな断面積を有しドアの開度を規定する先端部と、に区分される、レバーと、を含み、先端部のレバー長手方向基端側の端面を当接部としてケースに当接させることによりドアの開度を規定する、車両用ドア開度規定機構であって、プレートは、基端部の内部に位置するプレート基端部と、中間部の内部に位置するプレート中間部と、T字状に形成され先端部の内部に位置するプレート先端部と、に区分され、先端部における樹脂部の表面にはインサート成形によるゲート痕跡およびウエルドライン痕跡が形成され、ゲート痕跡は先端部のレバー長手方向先端側の端面に形成されており、先端部における樹脂部は、ゲート痕跡と当接部との間で、プレート先端部のプレート厚み方向におけるプレート先端部の一方の面側に形成される第1成形部とプレート先端部のプレート厚み方向におけるプレート先端部の他方の面側に形成される第2成形部とを有し、第1成形部の表面形状の構造が第2成形部の表面形状の構造と異なることで、ウエルドライン痕跡の位置は当接部の位置と異なる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レバーの先端部の膨大部内部におけるボイドの発生を抑制し、レバーの先端部の耐久性の向上を図ることができる構造を有した車両用ドア開度規定機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構を含む車両の部分斜視図である。
図2】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構の側面図である。
図4】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構の上面図である。
図5】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構のレバーの先端側の拡大図であり、(a)は、平面図であり、(b)は側面図である。
図6】第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構のレバーの先端側の拡大図であり、(a)は、一方の側面から視た側面図であり、(b)は他方の側面から視た側面図である。
図7】第2実施形態に係るレバーの構造を概略的に示したの図であり、((a)は、一方の側面から視た側面図であり、(b)は他方の側面から視た側面図である。
図8】第3実施形態に係るレバーの構造を概略的に示したの図であり、(a)は、一方の側面から視た側面図であり、(b)は他方の側面から視た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用ドア開度規定機構及びレバー製造方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用ドア開度規定機構100を含む車両の部分斜視図である。図2から図4は車両用ドア開度規定機構100の全体図であり、図2は斜視図、図3は側面図(左側面図)、図4は上面図である。なお、図1はドア全開状態を示し、図2から図4はドア全閉状態を示し、図2から図4では、後述の車体B及びドアDが取り外されている。また、図において、矢印F方向は車両前後方向における前方を示す。矢印R及び矢印Lは、乗員が車両前方を見たときの右側及び左側を示す。矢印Uは車両上方を示す。
【0013】
図1に示されるように、車両用ドア開度規定機構100は、車両の車体BとドアDとの間を連結するとともにドアDの開度(つまり、ドア全開位置)を規定する機構であり、レバー1と、ケース10と、ブラケット60と、を含む。
【0014】
車両用ドア開度規定機構100が適用されるドアDは、車両の車体Bに形成されるドア開口部B1を開閉するヒンジ回動式のドアである。本実施形態では、ドア開口部B1は車体側部に形成されており、ドアDはサイドドアであるものとする。図1では、車室内の乗員が車両前後方向の前方に向かって視たときの右側のサイドドア(ドアD)に、車両用ドア開度規定機構100が適用されている状態が一例として示されている。
【0015】
ドアDは、車体Bのドア開口部B1にヒンジHを介して取り付けられるドア側壁D1を有する。本実施形態では、ドア側壁D1は、ドア閉状態において、ドアDの車両前後方向の前部に位置する前壁であり、車両上下方向に延在している。したがって、ドア開口部B1におけるドア側壁D1に相対する部分B11は、ドア閉状態において、ドア開口部B1のうちの車両前後方向の前縁部分である。そして、本実施形態では、車両用ドア開度規定機構100は、ドアDの前壁(ドア側壁D1)とドア開口部B1のうちの車両前後方向の前縁部分(ドア閉時にドア側壁D1と相対する部分B11)との間を連結するように設けられている。
【0016】
本実施形態では、互いに車両上下方向に離隔する二つのヒンジHがドアDのドア側壁D1に取り付けられており、車両用ドア開度規定機構100は、車両上下方向について、二つのヒンジHの間に位置している。各ヒンジHは、上下方向に延びるドア回動軸部H1を有している。
【0017】
レバー1は、ドアDの開度を規定する主要部品であり、金属製のプレート2及びプレート2を樹脂で覆った樹脂部30からなるインサート成形品である。プレート2は、所定のプレート厚みtを有した金属製の板材を用いて形成されている。樹脂部30の材料としては、例えば、所定の繊維強化樹脂が用いられる。但し、繊維を含有しない樹脂が用いられてもよい。
【0018】
レバー1は、全体として一方向に長い所定長を有する部品として形成されている。レバー1のレバー長手方向車体側の端部(換言すると、レバー長手方向基端側の端部、さらに言うと、基端部)がブラケット60を介して車体Bに取り付けられ、レバー1のレバー長手方向ドア側の端部(換言すると、レバー長手方向先端側の端部、さらに言うと、先端部)がドアDの内部に位置している。
【0019】
図1から図4を参照すると、レバー1は、ブラケット60に回動可能に取り付けられる基端部3と、基端部3と連続しドア側壁D1及びケース10を貫通するように延びる中間部4と、中間部4と連続して延びドアDの内部に位置するとともに、レバー1の長手方向に対して直交する断面(以下、横断面という。)においては、中間部4の断面積より大きな断面積を有しドアDの開度を規定する先端部5と、に区分される。レバー1の詳しい構造については、後に詳述する。
【0020】
ケース10は、ドア側壁D1の裏面に固定される部材である。ケース10は、全体として概ね中空直方体形の箱状に形成されている。特に限定されるものではないが、ケース10は、一端が開口された箱形のケース本体11と、ケース本体11の開口を塞ぐようにケース本体11に取り付けられたケースカバー12とからなる。ケース本体11の底部及びケースカバー12は概ね車両上下方向に長い矩形状に形成されている。ケース10は、ケース本体11の底部の長辺が車両上下方向に延びた姿勢で、ドア側壁D1の裏面に固定されている。具体的には、ケース本体11の底部には、互いに車両上下方向に離隔した二つのスタッドボルト13、13が設けられており、各スタッドボルト13がドアDのドア側壁D1を裏面側から貫通した状態で、ナット14がスタッドボルト13に螺合されることで、ケース10がドア側壁D1の裏面に固定される。図1を参照すると、ドア側壁D1における二つのスタッドボルト13、13の間の部分には、側壁貫通孔D1aが開口されており、レバー1の中間部4は側壁貫通孔D1aに挿通される。側壁貫通孔D1aは、矩形状に形成されており、レバー1の中間部4の断面積よりも大きな開口面積を有する。
【0021】
図2から図4を参照すると、ケース10のケース本体11の底部(図2及び図3参照)には、底部貫通孔11aが開口され、ケースカバー12(図4参照)には、カバー貫通孔12aが開口されている。底部貫通孔11a及びカバー貫通孔12aは側壁貫通孔D1aと形状及び大きさを合わせて形成されており、レバー1の中間部4は側壁貫通孔D1a、底部貫通孔11a及びカバー貫通孔12aを通じてケース10を貫通するようになっている。
【0022】
ケース10の内部には、一対のシュー15a、15bが設けられている。一方のシュー15aは図示されていない付勢部材(例えば、バネ)によって上方からレバー1の中間部4に付勢され、他方のシュー15bは図示されていない付勢部材(例えば、バネ)によって下方からレバー1の中間部4に付勢されている。ドアDが開閉されると、ケース10はレバー1の中間部4に沿って移動する。このとき、上記付勢部材によって付勢された一対のシュー15a、15bは、レバー1の中間部4を上下から挟持した状態で、中間部4に沿って摺動し得る。
【0023】
ブラケット60は、車体Bのドア開口部B1におけるドア側壁D1に相対する部分B11に取り付けられる部材である。本実施形態では、ブラケット60は、ドア開口部B1のうちの車両前後方向の前縁部分(B11)に取り付けられている。
【0024】
ブラケット60は、ブラケット本体61と、レバー回動軸部62とからなる。ブラケット本体61には、ボルト挿通孔61aと軸嵌合孔61b(図3参照)が形成されている。ボルト挿通孔61aには、ブラケット60をドア開口部B1に固定するためのブラケット固定ボルト63が挿通される。レバー回動軸部62は、ヒンジHのドア回動軸部H1の延伸方向(ここでは車両上下方向)と平行に延びており、ブラケット本体61の軸嵌合孔61bに嵌合することでブラケット本体61に取り付けられる。
【0025】
車両用ドア開度規定機構100は、レバー1の先端部5のレバー長手方向基端側(つまり、レバー長手方向について基端部3側)の端面5aをケース10に当接させることによりドアDの開度を規定するように構成されている。換言すると、レバー1(中間部4)に沿うケース10の移動のドア開方向についての移動端は、先端部5により規定される。そして、ドア全開の際の開放力(ドア開方向のドアDの慣性力)は先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aで受け止められており、ドア全開の際に、衝撃力(押圧力)が先端部5の端面5aに作用し得る。
【0026】
具体的には、本実施形態では、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aが、ケース10のケースカバー12(ケース10におけるドア側壁D1とは反対側の端面)に形成されたカバー貫通孔12aの周囲の部分に、直接的に当接することにより、ドアDの開度(全開位置)が規定されている。
【0027】
次に、レバー1の詳しい構造について、図2から図8を参照して説明する。
【0028】
図5は、第1実施形態に係るレバー1の先端側の拡大図であり、(a)は、平面図であり、(b)は側面図である。図6は、第1実施形態に係るレバー1の先端側の拡大図であり、(a)は一方の側面から視た側面図であり、(b)は他方の側面から視た側面図である。図7は、第2実施形態に係るレバー1の概略図であり、(a)は一方の側面から視た側面図であり、(b)は他方の側面から視た側面図である。図8は、第3実施形態に係るレバー1の概略図であり、(a)は一方の側面から視た側面図であり、(b)は他方の側面から視た側面図である。図5から図8において、平面図とはレバー1を上下方向(プレート2の厚み方向)の上方から視た図である。側面図とはレバー1を左右方向(プレート2の幅方向)から視た図である。
【0029】
図2から図4を参照すると、レバー1は、レバー長手方向について、前述のように、基端部3、中間部4、及び先端部5に区分される。基端部3はレバー1におけるレバー長手方向車体側(ブラケット60側)の端部を構成する部分であり、先端部5はレバー1のレバー長手方向ドア側の端部(換言すると、先端部)を構成する部分であり、中間部4は基端部3と先端部5との間を接続する部分である。
【0030】
基端部3には、嵌合孔3aが形成されており、ブラケット60のレバー回動軸部62は嵌合孔3aに嵌合する。基端部3の内部には、プレート2の端部が位置しており、レバー回動軸部62はプレート2の端部を貫通している。そして、基端部3は、レバー回動軸部62を介してブラケット60に回動可能に取り付けられている。
【0031】
中間部4は、横断面において、矩形断面を有して基端部3から先端部5まで延在している。中間部4の横断面における最大断面積は、側壁貫通孔D1a、底部貫通孔11a及びカバー貫通孔12aの開口面積よりも小さく設定されている。これにより、中間部4は、ドア側壁D1及びケース10を貫通できるようになっている。
【0032】
本実施形態では、中間部4の上面及び下面のそれぞれには、複数の凹部(ここでは、第1凹部4a、第2凹部4b、及び第3凹部4c)が形成されている。各凹部(4a、4b、4c)は、ドアDを全閉位置と全開位置との間の所定の開度位置で保持するための抵抗力を、各シュー(15a、15b)を介してドアDに付与する要素である。第1凹部4a、第2凹部4b及び第3凹部4cは、レバー長手方向に互いに離隔している。中間部4における基端部3側の部分は、基端部3の断面積と同程度の断面積を有しており、中間部4の残りの部分よりも上下に薄く形成されている。そして、各凹部(4a、4b、4c)を有している中間部4における大半の部分が、中間部4の基端部3の近傍部分よりも上下に幅広に形成されている。つまり、本実施形態では、中間部4の大半の部分は、車両上下方向を長辺とする矩形断面を有している。
【0033】
ドアDが全閉位置からドア開方向に回動されると、上側のシュー15aは中間部4の上面に沿って摺動し、下側のシュー15bは中間部4の下面に沿って摺動する。そして、各シュー15a、15bの先端部が第1凹部4aに入り込むと、ドアDのそれ以上の開方向への回動が停止され、ドアDが全閉位置と全開位置との間の概ね中央である第1開度位置(中央開度位置)で保持される。この第1開度位置で、ドアDに第1凹部4aによる保持力を超える開放力が加えられると、各シュー15a、15bの先端部は、第1凹部4aの斜面を乗り越え、第2凹部4bに向かって中間部4の表面に沿って摺動する。その後、各シュー15a、15bの先端部が第2凹部4bに入り込むと、ドアDが第1開度位置と全開位置との間に位置する第2開度位置で保持される。この第2開度位置で、ドアDに第2凹部4bによる保持力を超える開放力が加えられると、各シュー15a、15bの先端部は、第2凹部4bの斜面を乗り越え、第3凹部4cに向かって中間部4の表面に沿って摺動する。その後、各シュー15a、15bの先端部が第3凹部4cに入り込むと、ドアDが第2開度位置と全開位置との間で全開位置近傍に位置する第3開度位置で保持される。この第3開度位置で、ドアDに第3凹部4cによる保持力を超える開放力が加えられると、各シュー15a、15bの先端部は、第3凹部4cの斜面を乗り越え、先端部5に向かって中間部4の表面に沿って摺動する。
【0034】
先端部5は、レバー1のレバー長手方向先端側の端部(先端部)を構成している。先端部5は、前述のように、ドアDの内部に位置し、横断面において、レバー1の中間部4の断面積より大きな断面積を有し、ドアDの開度を規定する部分である。先端部5は、ドアDの最大開度を規定するストッパとして機能する。
【0035】
本実施形態では、先端部5は、中間部4のドアD側端部に連続する拡大部51と、拡大部51に連続するストッパ先端部52とからなる。拡大部51は、先端部5のレバー長手方向基端側の部分を構成する。拡大部51はケース10に当接する端面5aを有している。ストッパ先端部52は、先端部5のレバー長手方向先端側の部分を構成する。特に限定されないが、拡大部51は、例えば、四角柱状に形成されている。ストッパ先端部52は、例えば、先細りの四角錐台状に形成されている。従って、側面視(レバー1の左右方向から視ること、または、金属プレート2の幅方向から視ることを言う。)において、先端部5はレバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。
【0036】
本実施形態では、先端部5のレバー長手方向基端側の部分は、プレート厚み方向(換言すると、プレート2の上面又は下面の法線方向)について中間部4よりも幅広に形成されている。つまり、先端部5の拡大部51は、中間部4よりも幅広に形成され、プレート厚み方向について中間部4の表面よりも外側に突出した部分を有している。
【0037】
本実施形態では、プレート厚み方向は、車両上下方向に一致している。つまり、本実施形態では、先端部5はケース10に当接する先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aを有し、且つ、先端部5のレバー長手方向基端側の部分である、拡大部51は、プレート厚み方向(車両上下方向)について中間部4よりも幅広に形成されている。そして、ここでは、拡大部51は、プレート厚み方向について、中間部4の上面に対して上方に突出した部分と中間部4の下面に対して下方に突出した部分とを有している。
【0038】
図2から図4を参照すると、本実施形態では、拡大部51(先端部5のレバー長手方向基端側の部分)は、プレート厚み方向と直交するプレート幅方向についても、中間部4よりも僅かに幅広に形成されている。そして、拡大部51は、プレート幅方向について、中間部4の一方の側面(ドア閉状態で、右側面又は左側面)に対して外側に僅かに突出した部分と、中間部4の他方の側面(ドア閉状態で、左側面又は右側面)に対して外側に僅かに突出した部分とを有している。拡大部51のプレート幅方向についての中間部4に対する突出量は、拡大部51のプレート厚み方向についての中間部4に対する突出量よりも顕著に小さく、拡大部51は中間部4に対してプレート厚み方向に顕著に幅広な外形を有している。
【0039】
換言すると、本実施形態では、ケース10に当接する先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aは、中間部4におけるプレート幅方向の側面4d(ドア閉状態で、左側面、右側面)からプレート幅方向の外側に突出したプレート幅方向突出面部5a1を有している。さらに、本実施形態では、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aは、中間部4におけるプレート厚み方向の側面4e(ドア閉状態で、上面、下面)からプレート厚み方向の外側に突出したプレート厚み方向突出面部5a2を有している。プレート幅方向突出面部5a1は、レバー1の先端部5側において、中間部4の側面4dと協働して、プレート幅方向についてのレバー段差部(レバー肩部)を構成している。同様に、プレート厚み方向突出面部5a2は、レバー1の先端部5側において、中間部4の側面4eと協働して、プレート厚み方向についてのレバー段差部(レバー肩部)を構成している。
【0040】
具体的には、ケース10に当接する先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aは、拡大部51のレバー長手方向について中間部4側(基端部3側)の端面であり、車両上下方向に延びる矩形環状の平面として形成されている。そして、ドア全開の際の開放力(ドア開方向のドアDの慣性力)は、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5a(プレート幅方向突出面部5a1及びプレート厚み方向突出面部5a2)で受け止められ、これらの部分に大きな衝撃力が作用する。
【0041】
次に、レバー1のプレート2について詳述する。
【0042】
プレート2の全体は樹脂製の樹脂部30の内部に埋設されている。そして、プレート2は、前述のように、所定のプレート厚みtを有した金属製の板材を用いて形成されている。そして、プレート2の全体が、樹脂部30により被覆されている。
【0043】
プレート2は、車体B側からドアD側に向かって、プレート基端部2aとプレート中間部2bとプレート先端部2cとに区分される。プレート先端部2cはT字状であり、プレート中間部2bのプレート先端部2c側は板材の板面が90度に捩じられている。従って、平面視では、プレート2は、捩じられた部分よりプレート基端2a側では板材の板面が現れ、捩じられた部分よりプレート先端2c側では板材の板厚が現れるように形成され、側面視では、捩じられた部分よりプレート基端2a側では板厚が現れ、捩じられた部分よりプレート先端2c側ではT字状が現れるように形成されている。T字状のプレート先端部2cの上下方向の寸法は、ケース10に形成されたカバー貫通孔12aの上下方向の寸法よりも大きくなるように形成されている。
【0044】
プレート基端部2aは、プレート2におけるレバー1の基端部3の内部に位置する部分である。プレート基端部2aには、ブラケット60のレバー回動軸部62が挿通される。
【0045】
プレート中間部2bは、プレート2におけるレバー1の中間部4の内部に位置する部分である。プレート中間部2bは、プレート基端部2aとプレート先端部2cとを連結する。プレート中間部2bは、レバー1の中間部4の内部において中間部4の長手方向の全体に延在しており、所定のプレート幅を有した概ね帯状に形成され、プレート先端部2c側で90度に捩じられ、且つ、概ね一方向に直線的に延びている。従って、プレート中間部2bのプレート平面は、90度に捩じられた部分よりプレート基端2a側では上下方向(プレート基端2a側におけるプレート2の厚み方向)を向き、90度に捩じられた個所よりプレート先端2c側では左右方向(プレート基端2a側におけるプレート2の幅方向)を向いている。
【0046】
プレート先端部2cは、プレート2におけるレバー1の先端部5の内部に位置する部分である。本実施形態では、プレート先端部2cはT字状に形成され、T字状部分のプレート幅は、90度に捩じられた部分よりプレート先端2c側におけるプレート中間部2bの所定のプレート幅よりも広く設定されている。具体的には、プレート先端部2cは、90度に捩じられた部分よりプレート先端2c側において上下方向にプレート中間部2bから突出してプレート中間部2bおよび中間部4より幅広に形成されている。プレート先端部2cのT字状部分が、先端部5のプレート厚み方向について中間部4の表面よりも外側に突出した部分に対応している。
【0047】
次に、図5(a)、(b)を参照して、第1実施形態に係るレバー1における先端部5の樹脂部30の構造について説明する。図5(a)は、図4における先端部5側を拡大した平面図である。図5(b)は、図5(a)における先端部5の側面図である。
【0048】
先述したように、レバー1は、金属製のプレート2とプレート2を樹脂で被覆する樹脂部30とからなるインサート成形品のあるレバーである。先端部5は、図3図5(b)に示すように、横断面において中間部4の断面積より大きな断面積を有し、レバー長手方向先端側が先細りの略四角錐台状に形成されている。先端部5の内部に位置するプレート先端部2cの形状はT字状となっている。尚、基端部3は、図3に示すように、横断面において中間部4の断面積よりわずかに大きな断面積を有し、中間部4より幅広に形成されている。
【0049】
レバー1はインサート成形によって形成され、インサート成形を行う金型における先端部5の先端側の端面である先端側端面5bに対応する位置には溶融樹脂を注入するゲート40が配置されている。図5(a)、(b)において、三角形で示すマークが金型におけるゲート40の位置を示す。ゲート40の位置は、先端部5の左右方向の中心となる先端側端面5bの左右方向の中心であり、先端部5の上下方向の中心となる先端側端面5bの上下方向の中心である。従って、先端側端面5bの左右方向の中心で、先端側端面5bの上下方向の中心に、ゲート40の痕跡であるゲート痕跡41が形成されている。図5(a)において示す矢印は、インサート成形の際の溶融樹脂の流れを示す。ゲート40から成形金型の内部に注入された溶融樹脂は、インサートされるT字状のプレート先端部2cによって、図5(a)の矢印で示すように、二つに分かれる。二つに分かれた溶融樹脂の一方は、プレート先端部2cのプレート2の厚み方向(以下、プレート厚み方向という。)におけるプレート先端部2cの一方の面側、図5(a)における上側(レバー1の左右方向の右側)を流れる。二つに分かれた溶融樹脂の他方は、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの他方の面側、図5(a)における下側(レバー1の左右方向の左側)を流れる。二つに分かれた溶融樹脂は、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの一方の面側(図5(a)における上側)で合流する。二つに分かれた溶融樹脂が合流する位置はウエルドライン痕跡42として先端部5の一方の面側に形成される。図5(a)、(b)において波線で示される部分が二つに分かれた溶融樹脂が合流する位置となるウエルドライン痕跡42であり、ウエルドライン痕跡42は先端部5の一方の面側に表れる。本実施形態において、ゲート40の位置は、先端側端面5bの上下方向および左右方向の中心であるが、ウエルドライン痕跡42の位置は端面5aの左右方向の中心(図5(a)における上下方向の中心)ではない。ウエルドライン痕跡42の位置は端面5aの左右方向の中心ではない点が、本発明の特徴である。この理由については後述する。
【0050】
ドア全開の際に、先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aを当接部としてケース10に当接させることによりドアの開度を規定する。従って、ドア全開の際の開放力は先端部5のレバー長手方向基端側の端面5aで受け止められ、ドア全開の際のケース10からの押圧力が先端部5の端面5aに作用する。図5(a)に示す白抜き矢印は、端面5aに作用する押圧力を示している。ドア全開の際に端面5aに押圧力が作用するため、端面5aは応力が集中する応力集中部となる。本実施形態では、応力集中部となる端面5aとウエルドライン痕跡42は異なる位置に配置されている。
【0051】
先端部5における樹脂部30は、ゲート痕跡41と当接部である端面5aとの間に形成される第1成形部31および第2成形部32を有する。図5(a)において、ゲート痕跡41と端面5aとの間であって、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの一方の面側(レバー1の左右方向の右側)に形成されている部分が第1成形部31であり、ゲート痕跡41と端面5aとの間であって、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの他方の面側(レバー1の左右方向の左側)に形成されている部分が第2成形部32である。図5(b)において、見えている側が、先端部5における樹脂部30の第1成形部31である。
【0052】
第1成形部31は、インサート成形の際に金型の内部において、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの一方の面側を通過してゲートからウエルドラインまで溶融樹脂が流れる通路となる第1樹脂通路に対応する。また、第2成形部32は、インサート成形の際に金型の内部において、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの他方の面側を通過してゲートからウエルドラインまで溶融樹脂が流れる通路となる第2樹脂通路に対応する。すなわち、第1成形部31は第1樹脂通路を流れる溶融樹脂によって形成され、第2成形部32は第2樹脂通路を流れる溶融樹脂によって形成される。図5(a)における上側(レバー1の左右方向の右側)に示す矢印が第1樹脂通路を流れる溶融樹脂を示し、図5(a)における下側(レバー1の左右方向の左側)に示す矢印が第2樹脂通路を流れる溶融樹脂を示す。
【0053】
本実施形態では、インサート成形を行う金型の内部の第1樹脂通路における溶融樹脂が流れる流動抵抗と第2樹脂通路における溶融樹脂が流れる流動抵抗は異なっている。具体的には、第2樹脂通路における溶融樹脂が流れる流動抵抗は、第1樹脂通路における溶融樹脂が流れる流動抵抗よりも小さい。従って、インサート成形の際にゲート40から注入された溶融樹脂は、第1樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が小さい第2樹脂通路側を速く流れ、第2樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が大きい第1樹脂通路側を遅く流れる。その結果、ウエルドライン痕跡42の位置は端面5aのレバー1における左右方向の中心(図5(a)における上下方向の中心)ではなく、ウエルドライン痕跡42は先端部5の一方の面側(図5(a)における上下方向の上側である第1成形部の表面)に表れる。そのため、応力集中部となる端面5aとウエルドライン痕跡42は異なる位置に配置されるので、ウエルドラインに起因した強度低下を抑制できる。
【0054】
次に、図6(a)、(b)を用いて、第1成形部31および第2成形部32の具体的な構造について説明する。図6(a)は、先端部5を一方の側面から視た側面図であり、先端部5における樹脂部30の第1成形部31の構造を示す。図6(b)は、先端部5を他方の側面から視た側面図であり、先端部5における樹脂部30の第2成形部32の構造を示す。第1成形部31および第2成形部32のそれぞれは、ゲート痕跡41から端面5aとの間に形成された、いわゆる肉盗み部として複数の凹部33を有する。レバー1の長手方向に対して直交する方向において、第1成形部31に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔は、第2成形部32に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔よりも狭くなっている。ここで、第1成形部31に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔とは、第1成形部31に形成されたすべての凹部33の凹部33と凹部33とによって形成される間隔の合計を表す。同様に、第2成形部32に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔とは、第2成形部32に形成されたすべての凹部33の凹部33と凹部33とによって形成される間隔の合計を表す。第1成形部31に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33の間隔は、インサート成形の際に金型の内部において、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの一方の面側を通過してゲートからウエルドラインまで溶融樹脂が流れる第1樹脂通路に対応する。また、第2成形部32に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33の間隔は、インサート成形の際に金型の内部において、プレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの他方の面側を通過してゲートからウエルドラインまで溶融樹脂が流れる第2樹脂通路に対応する。第1成形部31に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔は、第2成形部32に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔よりも狭くなっているため、第1樹脂通路の流動抵抗は第2樹脂通路の流動抵抗よりも大きい。
【0055】
その結果、インサート成形の際にゲート40から注入された溶融樹脂は、第1樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が小さい第2樹脂通路側を速く流れ、第2樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が大きい第1樹脂通路側を遅く流れる。そのため、ウエルドライン痕跡42の位置は、端面5aのレバー1における左右方向の中心(図5(a)における上下方向の中心)ではなく、先端部5における樹脂部30の第1成形部31の側に表れる。これにより、応力集中部となる端面5aとウエルドライン痕跡42は異なる位置に配置されるので、ウエルドラインに起因した強度低下を抑制できる。また、第1成形部31および第2成形部32のそれぞれに形成された複数の凹部33の構造の違いによって、第1樹脂通路の流動抵抗は第2樹脂通路の流動抵抗と異なっているが、第1成形部31および第2成形部32のそれぞれに複数の凹部33を形成することで、レバー1の軽量化を図れる。また、インサート成形の際に、先端部5の樹脂部30内部側は外部側に比べて冷却しにくいため、先端部5の樹脂部30内部ではボイドが発生しやすいが、第1成形部31および第2成形部32のそれぞれに複数の凹部33を形成することで、先端部5の樹脂部30内部において、ボイドが発生することを抑止できる。
【0056】
次に、図7(a)、(b)を用いて、第2実施形態に係る第1成形部31および第2成形部32の具体的な構造について説明する。図7(a)は、レバー1を一方の側面から視た側面図であり、レバー1の先端部5における樹脂部30の第1成形部31の構造を概略的に示す。図7(b)は、レバー1の先端部5における樹脂部30の第2成形部32の構造を概略的に示す。第1成形部31および第2成形部32のそれぞれは、ゲート痕跡41から端面5aとの間に形成された、いわゆる肉盗み部として複数の凹部33を有する。レバー1の長手方向に対して直交する方向において、第1成形部31に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔と、第2成形部32に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔とは、ゲート痕跡41側では同じであり、ゲート痕跡41側から端面5a側に向かうにしたがって、第2成形部32の当該間隔の方が第1成形部31の当該間隔よりも大きくなっている。具体的には、第1成形部31に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔と、第2成形部32に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔とは、ゲート痕跡41側では同じであり、第1成形部31に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔は、先端部5のレバー長手方向先端側の端面である先端側端面5bに形成されたゲート痕跡41側と端面5a側との間で等間隔に形成されている。一方、第2成形部32に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔は、先端部5のレバー長手方向先端側の先端側端面5bに形成されたゲート痕跡41側から端面5a側に向かうにしたがって末広がり状に形成されている。第2成形部32に形成された複数の凹部33における凹部33と凹部33との間隔が、ゲート痕跡41側から端面5a側に向かうにしたがって末広がり状に形成されることで、第2樹脂通路の流動抵抗は第1樹脂通路の流動抵抗よりも小さくなる。
【0057】
その結果、インサート成形の際にゲート40から注入された溶融樹脂は、第1樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が小さい第2樹脂通路側を速く流れ、第2樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が大きい第1樹脂通路側を遅く流れる。そのため、ウエルドライン痕跡42の位置は、端面5aのレバー1における左右方向の中心(図5(a)における上下方向の中心)ではなく、先端部5における樹脂部30の第1成形部31の側に表れる。これにより、応力集中部となる端面5aとウエルドライン痕跡42は異なる位置に配置されるので、ウエルドラインに起因した強度低下を抑制できる。
【0058】
次に、図8(a)、(b)を用いて、第3実施形態に係る第1成形部31および第2成形部32の具体的な構造について説明する。図8(a)は、レバー1を一方の側面から視た側面図であり、レバー1の先端部5における樹脂部30の第1成形部31の構造を概略的に示す。図8(b)は、レバー1の先端部5における樹脂部30の第2成形部32の構造を概略的に示す。第1成形部31および第2成形部32のそれぞれは、ゲート痕跡41からウエルドライン痕跡42との間に形成された、いわゆる肉盗み部として複数の凹部33を有する。第1成形部31における複数の凹部33それぞれの長手方向は、レバー1の長手方向に対して直交する方向であり、第2成形部32に形成された複数の凹部33それぞれの長手方向はレバー1の長手方向である。この構成により、第2樹脂通路の流動抵抗は第1樹脂通路の流動抵抗よりも小さくなる。
【0059】
その結果、インサート成形の際にゲート40から注入された溶融樹脂は、第1樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が小さい第2樹脂通路側を速く流れ、第2樹脂通路の流動抵抗よりも流動抵抗が大きい第1樹脂通路側を遅く流れる。そのため、ウエルドライン痕跡42の位置は、端面5aのレバー1における左右方向の中心(図5(a)における上下方向の中心)ではなく、先端部5における樹脂部30の第1成形部31の側に表れる。これにより、応力集中部となる端面5aとウエルドライン痕跡42は異なる位置に配置されるので、ウエルドラインに起因した強度低下を抑制できる。
【0060】
(他の好適な態様)
本実施形態で示した車両用ドア開度規定機構は、さらに以下のような好適な態様を含む。
【0061】
上記した実施形態では、ゲート40の位置は、先端部5の左右方向の中心となる先端側端面5bの左右方向の中心であったが、これに限定されない。ゲート40の位置は先端側端面5bであれば、先端側端面5bの左右方向の中心でなくても構わない。
【0062】
上記した実施形態では、第1成形部31に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔が、第2成形部32に形成された複数の凹部33の凹部33と凹部33との間隔よりも狭くすることで、第1樹脂通路の流動抵抗が第2樹脂通路の流動抵抗よりも大きくなるようにしていたが、これに限定されない。第1成形部31の表面形状の構造が第2成形部32の表面形状の構造と異なることで、第1樹脂通路の流動抵抗が第2樹脂通路の流動抵抗と異なるようにして、ウエルドライン痕跡42の位置が当接部となる端面5aの位置と異なるようにすればよい。例えば、第1成形部31に形成された複数の凹部33の表面粗さを第2成形部32に形成された複数の凹部33の表面粗さよりも粗くして、第1樹脂通路の流動抵抗が第2樹脂通路の流動抵抗よりも大きくなるようにしても構わない。
【0063】
あるいは、第1成形部31に形成された複数の凹部33の深さを第2成形部32に形成された複数の凹部33の深さより深くする、すなわち、第1成形部31におけるプレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの一方の面から凹部33の底面までの厚さを、第2成形部32におけるプレート先端部2cのプレート厚み方向におけるプレート先端部2cの他方の面から凹部33の底面までの厚さより薄くして、第1樹脂通路の流動抵抗が第2樹脂通路の流動抵抗よりも大きくなるようにしても構わない。
【0064】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…レバー、
2…プレート、
2a…プレート基端部、
2b…プレート中間部、
2c…プレート先端部、
2d…周縁部、
2d1…周縁部のうちのプレート先端部における所定の部分、
2d2…周縁部のうちのプレート先端部におけるレバー長手方向基端側に位置する部分、
3…基端部、
4…中間部、
5…先端部、
5a…端面、
5b…先端側端面、
5a1…プレート幅方向突出面部、
10…ケース、
30…樹脂部、
31…第1成形部、
32…第2成形部、
33…凹部、
40…ゲート、
41…ゲート痕跡、
42…ウエルドライン痕跡、
60…ブラケット、
100…車両用ドア開度規定機構、
B…車体、
B1…ドア開口部、
B11…前縁部分(ドア開口部におけるドア側壁に相対する部分)、
D1…ドア側壁、
D…ドア、
H…ヒンジ、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8