IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特開2024-179536ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法
<>
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図1
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図2
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図3
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図4
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図5
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図6
  • 特開-ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179536
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20241219BHJP
   F16H 61/04 20060101ALI20241219BHJP
   F16H 59/50 20060101ALI20241219BHJP
   F16H 59/02 20060101ALI20241219BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241219BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H61/04
F16H59/50
F16H59/02
E02F9/20 Q
E02F9/20 K
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098459
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】亀倉 寛尚
【テーマコード(参考)】
2D003
3J552
5H125
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003AB01
2D003BA01
2D003BA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB03
2D003DB04
3J552MA01
3J552NA05
3J552NB05
3J552PA02
3J552PA51
3J552PA70
3J552QC08
3J552SB13
3J552TB01
3J552VA74W
3J552VB00W
3J552VD17W
5H125AA12
5H125BA00
5H125BE05
5H125EE49
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】本開示の目的は、ホイールローダにおいて、積荷搬送時に、変速ショックの発生を抑えることにある。
【解決手段】ホイールローダは、車体と、電動モータと、トランスミッションと、コントローラとを備える。車体は、走行体と作業機とを含む。電動モータは、車体に搭載される。トランスミッションは、車体に搭載される。トランスミッションは、変速比を複数の速度段で変更可能である。トランスミッションは、電動モータからの駆動力を走行体に伝達する。コントローラは、トランスミッションを制御する。コントローラは、車体によって実行される作業の種類に応じた複数の作業モードから、現在の作業モードを取得する。コントローラは、現在の作業モードが積荷搬送である場合には、トランスミッションの変速比を所定の速度段に保持し、所定の速度段から他の速度段への変更を禁止する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と作業機とを含む車体と、
前記車体に搭載される電動モータと、
前記車体に搭載され、変速比を複数の速度段で変更可能であり、前記電動モータからの駆動力を前記走行体に伝達するトランスミッションと、
前記トランスミッションを制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記車体によって実行される作業の種類に応じた複数の作業モードから、現在の作業モードを取得し、
前記現在の作業モードが積荷搬送である場合には、前記トランスミッションの変速比を所定の速度段に保持し、前記所定の速度段から他の速度段への変更を禁止する、
ホイールローダ。
【請求項2】
手動操作可能であり、前記複数の作業モードから前記現在の作業モードを選択するための入力装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記入力装置によって選択された作業モードを、前記現在の作業モードとして取得する、
請求項1に記載のホイールローダ。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記車体によって実行されている現在の作業を判定し、
前記現在の作業に応じた作業モードを、前記現在の作業モードとして決定する、
請求項1に記載のホイールローダ。
【請求項4】
走行体と、作業機と、電動モータと、トランスミッションとを含み、前記トランスミッションは、変速比を複数の速度段で変更可能であり、前記電動モータからの駆動力を前記走行体に伝達するホイールローダを制御するための方法であって、
前記ホイールローダによって実行される作業の種類に応じた複数の作業モードから、現在の作業モードを取得することと、
前記現在の作業モードが積荷搬送である場合には、前記トランスミッションの変速比を所定の速度段に保持し、前記所定の速度段以外の他の速度段への変更を禁止すること、
を備える方法。
【請求項5】
手動操作可能であり、前記複数の作業モードから前記現在の作業モードを選択するための入力装置からの信号を受信することと、
前記入力装置によって選択された作業モードを、前記現在の作業モードとして取得すること、
を備える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ホイールローダによって実行されている現在の作業を判定することと、
前記現在の作業に応じた作業モードを、前記現在の作業モードとして決定すること、
を備える請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホイールローダ及びホイールローダを制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダには、変速比を複数の速度段で変更可能なトランスミッションを備えるものがある。例えば、特許文献1のホイールローダは、トランスミッションの最高速度段を設定するためのシフト操作部材を備えている。例えば、オペレータがシフト操作部材を第4速に操作すると、トランスミッションの最高速度段が第4速に設定される。トランスミッションは、車速、或いはエンジン回転速度に応じて、変速比を、第1速の速度段から第4速の速度段までの間で変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-14108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールローダは、掘削、或いは積荷搬送などの様々な作業を行う。例えば、積荷搬送では、ホイールローダは、作業の対象物を作業機によってすくい上げ、作業機に作業の対象物を抱えた状態で走行する。ホイールローダは、トラックなどの運搬車両まで走行して対象物を積み込む。ホイールローダは、上記の動作を繰り返すことで、対象物を所定の場所から運搬車両に搬送して積み込む。
【0005】
上記のように、積荷搬送では、ホイールローダは、停止と走行とを頻繁に繰り返す。そのため、上述のように、トランスミッションが、車速、或いはエンジン回転速度に応じて、変速比を変更する場合には、積荷搬送時に変速比が頻繁に変更されることになる。変速比が変更される際には変速ショックが発生する。そのため、積荷搬送時に変速比が頻繁に変更されることで、変速ショックが頻繁に発生すると、積荷が作業機からこぼれることが懸念される。
【0006】
本開示の目的は、ホイールローダにおいて、積荷搬送時に、変速ショックの発生を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るホイールローダは、車体と、電動モータと、トランスミッションと、コントローラとを備える。車体は、走行体と作業機とを含む。電動モータは、車体に搭載される。トランスミッションは、車体に搭載される。トランスミッションは、変速比を複数の速度段で変更可能である。トランスミッションは、電動モータからの駆動力を走行体に伝達する。コントローラは、トランスミッションを制御する。コントローラは、車体によって実行される作業の種類に応じた複数の作業モードから、現在の作業モードを取得する。コントローラは、現在の作業モードが積荷搬送である場合には、トランスミッションの変速比を所定の速度段に保持し、所定の速度段から他の速度段への変更を禁止する。
【0008】
本開示の他の態様に係る方法は、ホイールローダを制御するための方法である。ホイールローダは、走行体と、作業機と、電動モータと、トランスミッションとを含む。トランスミッションは、変速比を複数の速度段で変更可能であり、電動モータからの駆動力を走行体に伝達する。本態様に係る方法は、ホイールローダによって実行される作業の種類に応じた複数の作業モードから、現在の作業モードを取得することと、現在の作業モードが積荷搬送である場合には、トランスミッションの変速比を所定の速度段に保持し、所定の速度段以外の他の速度段への変更を禁止すること、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、現在の作業モードが積荷搬送である場合には、トランスミッションの変速比が、所定の速度段に保持され、所定の速度段から他の速度段への変更が禁止される。そのため、トランスミッションによる変速ショックの発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るホイールローダの側面図である。
図2】ホイールローダに搭載されている駆動システムの構成を示すブロック図である。
図3】トランスミッションの複数の速度段のそれぞれにおける牽引力-車速特性を示す図である。
図4】ホイールローダの制御システムの構成を示すブロック図である。
図5】トランスミッションの変速制御の処理を示すフローチャートである。
図6】Vシェイプ積込でのホイールローダの動作を示す上面図である。
図7】変形例に係るトランスミッションの変速制御の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、本開示の実施形態に係るホイールローダ1の側面図である。図1に示すように、ホイールローダ1は、車体2を備えている。車体2は、前車体3と、後車体4と、作業機5と、走行体6とを含む。
【0012】
後車体4は、前車体3に対して左右に旋回可能に接続されている。後車体4には、運転室7が配置されている。前車体3と後車体4とには、ステアリングシリンダ15が連結されている。ステアリングシリンダ15は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ15が伸縮することで、前車体3が、後車体4に対して。左右に旋回する。
【0013】
作業機5は、掘削等の作業に用いられる。作業機5は、前車体3に取り付けられている。作業機5は、ブーム11と、バケット12と、ブームシリンダ13と、バケットシリンダ14とを含む。ブームシリンダ13とバケットシリンダ14とは、油圧シリンダである。ブームシリンダ13が伸縮することによって、ブーム11が動作する。バケットシリンダ14が伸縮することによって、バケット12が動作する。
【0014】
走行体6は、ホイールローダ1を走行させる。図2は、ホイールローダ1に搭載されている駆動システム8の構成を示すブロック図である。図1及び図2に示すように、走行体6は、前輪16A,16Bと後輪17A,17Bとを含む。前輪16A,16Bは、前車体3に回転可能に支持されている。後輪17A,17Bは、後車体4に回転可能に支持されている。
【0015】
図2に示すように、駆動システム8は、バッテリ21と、電力制御回路22と、作業機用モータ23と、走行用モータ24とを含む。作業機用モータ23と走行用モータ24とは、電動モータである。バッテリ21は、作業機用モータ23と走行用モータ24とに電力を供給する。電力制御回路22は、作業機用モータ23と走行用モータ24とに供給される電力を制御する。電力制御回路22は、例えばインバータを含む。作業機用モータ23は、作業機5を駆動するための駆動力を発生させる。走行用モータ24は、走行体6を駆動するための駆動力を発生させる。
【0016】
駆動システム8は、作業機ポンプ25と制御弁26とを含む。作業機ポンプ25は、可変容量型の油圧ポンプである。作業機ポンプ25は、作業機用モータ23に接続されている。作業機ポンプ25は、作業機用モータ23によって駆動されることで、上述した油圧シリンダ13-15に作動油を供給する。制御弁26は、油圧回路を介して作業機ポンプ25と油圧シリンダ13-15とに接続されている。制御弁26は、複数の弁を含む。制御弁26は、作業機ポンプ25から油圧シリンダ13-15に供給される作動油の流量を制御する。
【0017】
駆動システム8は、トランスミッション27と、フロントアクスル28と、リアアクスル29とを含む。前輪16A,16Bは、フロントアクスル28を介して、トランスミッション27に接続されている。後輪17A,17Bは。リアアクスル29を介して、トランスミッション27に接続されている。トランスミッション27は、走行用モータ24に接続されている。トランスミッション27は、走行用モータ24からの駆動力を変速して走行体6に伝達する。
【0018】
トランスミッション27は、複数の変速ギア33-35を含む。トランスミッション27は、走行用モータ24からの駆動力を走行体6に伝達する。
【0019】
複数の変速ギア33-35は、それぞれ異なるギア比を有する。トランスミッション27は、第1速~第3速までの変速ギア33-35を有する。従って、トランスミッション27は、変速比を第1速度段と、第2速度段と、第3速度段とに変更可能である。図3は、複数の速度段のそれぞれにおける牽引力-車速特性を示す図である。牽引力-車速特性は、各車速におけるホイールローダ1の最大牽引力を示す。
【0020】
図3においてL1は、第1速度段における牽引力-車速特性を示す。L2は、第2速度段における牽引力-車速特性を示す。図3においてL3は、第3速度段における牽引力-車速特性を示す。図3に示すように、最大牽引力については、第1速度段が最も大きく、第3速度段は最も小さい。第2速度段の最大牽引力は、第1速度段と第2速度段との間の値である。最高車速については、第3速度段が最も大きく、第1速度段は最も小さい。第2速度段の最大牽引力は、第1速度段と第2速度段との間の値である。
【0021】
図4は、ホイールローダ1の制御システム9の構成を示すブロック図である。図4に示すように、制御システム9は、モータ速度センサ41と車速センサ42とを含む。モータ速度センサ41は、走行用モータ24の出力回転速度を検出する。車速センサ42は、ホイールローダ1の車速を検出する。
【0022】
制御システム9は、ポンプ圧センサ43とブーム圧センサ44とバケット圧センサ50とを含む。ポンプ圧センサ43は、作業機ポンプ25の吐出圧を検出する。ブーム圧センサ44は、ブームシリンダ13のボトム圧を検出する。バケット圧センサ50は、バケットシリンダ14のボトム圧を検出する。
【0023】
制御システム9は、ブーム角センサ45とバケット角センサ46とを含む。ブーム角センサ45は、ブーム角を検出する。ブーム角は、前車体3に対するブーム11の角度である。バケット角センサ46は、バケット角を検出する。バケット角は、ブーム11に対するバケット12の角度である。
【0024】
制御システム9は、コントローラ47を含む。コントローラ47は、ホイールローダ1を制御する。コントローラ47は、プロセッサ48と記憶装置49とを含む。プロセッサ48は、例えばCPU(central processing unit)である。プロセッサ48は、プログラムに従って、ホイールローダ1の制御ための処理を実行する。記憶装置49は、ROMなどの不揮発性メモリと、RAMなどの揮発性メモリとを含む。記憶装置49は、ハードディスク、或いはSSD(Solid State Drive)などのストレージを含んでもよい。記憶装置49は、ホイールローダ1を制御するためのプログラム及びデータを記憶している。
【0025】
コントローラ47は、モータ速度センサ41から、走行用モータ24の出力回転速度を示す信号を受信する。コントローラ47は、車速センサ42から、車速を示す信号を受信する。コントローラ47は、ポンプ圧センサ43から、作業機ポンプ25の吐出圧を示す信号を受信する。コントローラ47は、ブーム圧センサ44から、ブームシリンダ13のボトム圧を示す信号を受信する。コントローラ47は、バケット圧センサ50から、バケットシリンダ14のボトム圧を示す信号を受信する。コントローラ47は、ブーム角センサ45から、ブーム角を示す信号を受信する。コントローラ47は、バケット角センサ46から、バケット角を示す信号を受信する。
【0026】
制御システム9は、アクセル操作装置51と、FR操作装置52と、ステアリング操作装置53と、作業機操作装置54と、シフト操作装置55と、入力装置56とを含む。アクセル操作装置51と、FR操作装置52と、ステアリング操作装置53と、作業機操作装置54と、入力装置56と、入力装置56とは、それぞれホイールローダ1のオペレータによって手動操作可能である。
【0027】
アクセル操作装置51は、ホイールローダ1の車速を制御するために操作される。アクセル操作装置51は、例えばアクセルペダルを含む。ただし、アクセル操作装置51は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材を含んでもよい。
【0028】
FR操作装置52は、ホイールローダ1の前進と後進とを切り替えるために操作される。FR操作装置52は、前進位置と中立位置と後進位置とを含むFNR位置に操作可能である。FR走行装置は、例えばFRレバーを含む。ただし、FR操作装置52は、スイッチなどの他の部材を含んでもよい。
【0029】
ステアリング操作装置53は、ホールローダを操舵するために操作される。ステアリング操作装置53は、例えばステアリングホイールを含む。ただし、ステアリング操作装置53は、レバー、或いはスイッチなどの他の部材を含んでもよい。
【0030】
作業機操作装置54は、作業機5を制御するために操作される。作業機操作装置54は、例えばレバーである。ただし、作業機操作装置54は、スイッチ、或いはペダルなどの他の部材であってもよい。
【0031】
シフト操作装置55は、トランスミッション27の変速比を切り替えるために操作される。シフト操作装置55は、例えばスイッチである。ただし、シフト操作装置55は、レバーなどの他の部材であってもよい。
【0032】
入力装置56は、ホイールローダ1の制御モードを設定するためにオペレータによって操作可能である。入力装置56は、例えばスイッチを含む。ただし、入力装置56は、タッチスクリーンなどの他の部材を含んでもよい。
【0033】
コントローラ47は、アクセル操作装置51から、アクセル操作量を示す信号を受信する。アクセル操作量は、アクセル操作装置51の操作量である。コントローラ47は、アクセル操作量に応じて、走行用モータ24の出力回転速度を変更するように、電力制御回路22を制御する。
【0034】
コントローラ47は、FR操作装置52からFNR位置を示す信号を受信する。コントローラ47は、FR操作装置52のFNR位置に応じて、走行体6の駆動方向を前進方向と後進方向とに切り替えるように、走行用モータ24の回転方向を制御する。コントローラ47は、ステアリング操作装置53から、ステアリング操作装置53の操作位置を示す信号を受信する。コントローラ47は、ステアリング操作装置53の操作位置に応じてホイールローダ1が操舵されるように、ステアリングシリンダ15を制御する。
【0035】
コントローラ47は、作業機操作装置54から、作業機操作装置54の操作位置を示す信号を受信する。コントローラ47は、作業機操作装置54の操作位置に応じて作業機5が動作するように、ブームシリンダ13とバケットシリンダ14とを制御する。
【0036】
コントローラ47は、シフト操作装置55から、選択されたトランスミッション27の速度段を示す信号を受信する。コントローラ47は、第1速度段から、選択された速度段までの間で、車速と走行用モータ24の出力回転速度とに応じてトランスミッション27の変速比を切り替える。
【0037】
コントローラ47は、入力装置56から、ホイールローダ1の制御モードの設定を示す信号を受信する。コントローラ47は、入力装置56によって設定された制御モードに応じて、ホイールローダ1を制御する。詳細には、オペレータは、入力装置56によって、ホイールローダ1によって実行される複数の作業モードから現在の作業モードを選択可能である。コントローラ47は、入力装置56によって現在の作業モードが選択されている場合には、現在の作業モードに応じて、トランスミッション27の変速を制御する。以下、現在の作業モードに応じた、トランスミッション27の変速制御について説明する。
【0038】
図5は、トランスミッション27の変速制御の処理を示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS101で、コントローラ47は、現在の作業モードを取得する。コントローラ47は、入力装置56によって複数の作業モードから選択された現在の作業モードを取得する。
【0039】
複数の作業モードは、重掘削と、Vシェイプ積込と、積込搬送と、低負荷走行とを含む。重掘削は、ホイールローダ1が作業機5によって、土砂などの作業の対象物を掘削する作業である。Vシェイプ積込は、所定の場所に配置された対象物を、ダンプトラックなどの運搬車両に積み込む作業である。図6は、Vシェイプ積込でのホイールローダ1の動作を示す上面図である。
【0040】
図6に示すように、ホイールローダ1は、所定の場所に配置された対象物の山100に向かって前進する(矢印A1)。ホイールローダ1は、バケット12に対象物を抱え、後進して対象物の山100から離れる(矢印A2)。ホイールローダ1は、向きを変えながら運搬車両200に向かって前進する(矢印A3)。ホイールローダ1は、運搬車両200に対象物を積み込む。ホイールローダ1は、後進して運搬車両200から離れる(矢印A4)。そして、ホイールローダ1は、向きを変えながら、再び対象物の山100に向かって前進する(矢印A1)。以上の動作を繰り返すことで、ホイールローダ1は、対象物を運搬車両200に積み込む。
【0041】
積込搬送は、Vシェイプ積込と同様に、バケット12に対象物を抱えて走行し、対象物を運搬車両200に積み込む作業である。ただし、積込搬送では、Vシェイプ積込よりもホイールローダ1が走行する距離が長い。低負荷走行は、ホイールローダ1が低負荷の状態で走行する作業である。例えば、低負荷走行は、バケット12に対象物が抱えられていない空荷状態で、ホイールローダ1が長い距離を走行することである。
【0042】
ステップS102で、コントローラ47は、現在の作業モードが積荷搬送であるかを判定する。現在の作業モードが積荷搬送である場合には、ステップS103で、コントローラ47は、変速比を第2速度段に保持するように、トランスミッション27を制御する。また、コントローラ47は、第2速度段から他の速度段への切り替えを禁止する。従って、現在の作業モードが積荷搬送である間は、トランスミッション27の変速比は、第2速度段に固定される。
【0043】
以上説明した本実施形態に係るホイールローダ1では、現在の作業モードが積荷搬送である場合には、トランスミッション27の変速比が、第2速度段に保持され、第2速度段から他の速度段への変更が禁止される。そのため、トランスミッション27による変速ショックの発生が抑えられることで、積荷搬送時に、積荷が作業機5からこぼれることが抑えられる。また、変速比が、第2速度段に保持されることで、積荷搬送に適した最大牽引力と最高速度とが確保される。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0045】
ホイールローダ1の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、作業機ポンプ25と走行体6とは、共通のモータによって駆動されてもよい。トランスミッション27の速度段の数は、3つに限らず、3つより少なくてもよく、或いは3つより多くてもよい。ホイールローダ1は、遠隔から操作可能であってもよい。その場合、上述した操作装置51-55及び入力装置56は、ホイールローダ1の外部に配置されてもよい。
【0046】
上述したコントローラ47による処理は、複数のコントローラに分散して実行されてもよい。トランスミッション27の変速制御は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、コントローラ47は、現在の作業モードが積荷搬送である場合に、トランスミッション27の変速比を、第2速以外の速度段に保持してもよい。
【0047】
現在の作業モードを取得する方法は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、図7は、変形例に係るトランスミッション27の変速制御の処理を示すフローチャートである。図7に示すように、ステップS201で、コントローラ47は、走行状態データを取得する。走行状態データは、ホイールローダ1の走行状態を示す。走行状態データは、例えば、走行用モータ24の出力回転速度と車速とを含む。
【0048】
ステップS202で、コントローラ47は、作業機5の負荷データを取得する。作業機5の負荷データは、作業機5にかかる負荷を示す。作業機5の負荷データは、例えば、作業機ポンプ25の吐出圧と、ブームシリンダ13のボトム圧と、バケットシリンダ14のボトム圧とを含む。
【0049】
ステップS203で、コントローラ47は、作業機5の姿勢データを取得する。作業機5の姿勢データは、作業機5の姿勢を示す。作業機5の姿勢データは、例えば、ブーム角とバケット角とを含む。
【0050】
ステップS204で、コントローラ47は、操作状態データを取得する。操作状態データは、上述した操作装置51-55への操作を示す。操作状態データは、例えば、アクセル操作量と、FNR位置と、ステアリング操作装置53の操作位置と、作業機操作装置54の操作位置と、選択された速度段とを含む。
【0051】
ステップS205では、コントローラ47は、ホイールローダ1が実行している現在の作業を判定する。コントローラ47は、上述した走行状態データと、作業機5の負荷データと、作業機5の姿勢データと、操作状態データとに基づいて、現在の作業を判定する。コントローラ47は、重掘削と、Vシェイプ積込と、積込搬送と、低負荷走行とを含む複数の作業から、ホイールローダ1が実行している現在の作業を判定する。
【0052】
例えば、コントローラ47は、ブームシリンダ13のボトム圧に基づいて、バケット12が空荷状態であるかを判定する。コントローラ47は、バケット12が空荷状態から、ブームシリンダ13のボトム圧が所定圧力以上、且つ、ブーム角が水平以上、且つ、所定角度以下となった場合に、積込搬送に移行したと判定する。また、コントローラ47は、作業機械1が掘削状態から、進行方向が後進に変更された場合に、積込搬送に移行したと判定する。例えば、コントローラ47は、進行方向が前進であり、ブーム角が水平以下であり、且つ、バケットシリンダ14のボトム圧が所定圧力以上である場合に、作業機械1が掘削状態であると判定する。
【0053】
ステップS206では、コントローラ47は、現在の作業モードを決定する。コントローラ47は、ステップS205で判定した現在の作業に応じた作業モードを、現在の作業モードとして決定する。
【0054】
ステップS207では、上述したステップS102と同様に、コントローラ47は、現在の作業モードが積荷搬送であるかを判定する。現在の作業モードが積荷搬送である場合には、上述したステップS103と同様に、ステップS208で、コントローラ47は、変速比を第2速度段に保持するように、トランスミッション27を制御する。また、コントローラ47は、第2速度段から他の速度段への切り替えを禁止する。
【0055】
以上説明した変形例に係るトランスミッション27の変速制御においても、上述した実施形態と同様に、現在の作業モードが積荷搬送である場合には、トランスミッション27の変速比が、第2速度段に保持され、第2速度段から他の速度段への変更が禁止される。そのため、トランスミッション27による変速ショックの発生が抑えられることで、積荷搬送時に、積荷が作業機5からこぼれることが抑えられる。また、変速比が、第2速度段に保持されることで、積荷搬送に適した最大牽引力と最高速度とが確保される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示によれば、ホイールローダにおいて、積荷搬送時に、変速ショックの発生が抑えられる。
【符号の説明】
【0057】
2:車体
5:作業機
6:走行体
24:走行用モータ
27:トランスミッション
47:コントローラ
56:入力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7