(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179538
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】塗装設備管理システム、塗料堆積重量予測方法
(51)【国際特許分類】
B05B 14/43 20180101AFI20241219BHJP
B05B 16/40 20180101ALI20241219BHJP
B05B 16/60 20180101ALI20241219BHJP
B01D 46/42 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B05B14/43
B05B16/40
B05B16/60
B01D46/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098461
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐基
【テーマコード(参考)】
4D058
4D073
【Fターム(参考)】
4D058JA33
4D058PA01
4D058PA04
4D058SA15
4D058UA30
4D073AA01
4D073BB03
4D073DC02
4D073DC19
4D073DC30
4D073DD05
4D073DD22
4D073DD25
(57)【要約】
【課題】フィルタの確認作業の工数を削減できるとともに、フィルタの交換時期を予測することができ、かつ設備コストの低減が可能な塗装設備管理システムを提供すること。
【解決手段】本発明の塗装設備管理システム10は複数のフィルタユニット20を備える。各フィルタユニット20は、フィルタ30,40の上流側と下流側との差圧を測定するフィルタ差圧センサを含む。また、塗装設備管理システム10は、重量センサ付き台車91、予測モデル作成手段及び塗料堆積重量予測手段を備える。重量センサ付き台車91は、フィルタ30の重量を測定する重量センサ51を持つ。予測モデル作成手段は、重量センサ51及びフィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて予測モデルを作成する。塗料堆積重量予測手段は、予測モデルを利用して、各フィルタユニット20におけるフィルタ30,40の塗料堆積重量を予測する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物を塗装ラインの長手方向に沿って搬送しながら塗装する塗装ブースと、前記塗装ブースから排出されるブースエア中の塗料ミストを除去するフィルタを収容し、前記塗装ラインの長手方向に沿って配置された複数のフィルタユニットと、を備え、複数の前記フィルタユニットは、前記フィルタの上流側と下流側との差圧を測定するフィルタ差圧センサを含む塗装設備管理システムであって、
前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタを載せて搬送するとともに、前記フィルタの重量を測定する重量センサを持つ重量センサ付き台車と、
複数の前記フィルタユニットごとに付与された識別子を読み込んで前記フィルタユニットを識別するとともに、前記フィルタユニットの識別情報とそのフィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを関連付けて記憶する管理装置と、
前記重量センサ付き台車の前記重量センサ及び複数の前記フィルタユニットの前記フィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて、前記フィルタの塗料堆積重量を予測する予測モデルを作成する予測モデル作成手段と、
その予測モデルを利用して、複数の前記フィルタユニットにおける前記フィルタの塗料堆積重量を予測する塗料堆積重量予測手段と、
を備えたことを特徴とする、塗装設備管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
前記識別子を読み込んで前記フィルタユニットの識別情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記識別情報と前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを関連付けるとともに、その関連付け情報を通信回線を介して外部に出力する出力手段と、
前記出力手段が出力した前記関連付け情報を受け取って記憶する管理コンピュータと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗装設備管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記識別子を読み込んで前記フィルタユニットの識別情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記識別情報と前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを、通信回線を介して外部に出力する出力手段と、
前記出力手段が出力した前記識別情報及び前記重量情報を受け取るとともに、前記識別情報及び前記重量情報を関連付けて記憶する管理コンピュータと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗装設備管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、
前記識別子を読み込んで前記フィルタユニットの識別情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段が取得した前記識別情報と前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを関連付けるとともに、その関連付け情報を通信回線を介して外部に出力する出力手段と、を含むモバイル端末と、
前記モバイル端末が出力した前記関連付け情報を受け取って記憶する管理コンピュータと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の塗装設備管理システム。
【請求項5】
前記識別子は、二次元コードであり、
前記情報取得手段は、前記二次元コードを撮像して得た画像から前記フィルタユニットの識別情報を取得する二次元コードリーダである
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の塗装設備管理システム。
【請求項6】
前記フィルタは、前記塗装ブースから排出される前記ブースエア中の塗料ミストを除去する一次フィルタと、前記一次フィルタから排出される前記ブースエア中の塗料ミストを除去する二次フィルタとからなり、
前記重量センサは、前記重量センサ付き台車に載せられた前記一次フィルタの重量を測定し、
前記フィルタ差圧センサは、前記一次フィルタの上流側と下流側との差圧を測定する一次フィルタ差圧センサと、前記二次フィルタの上流側と下流側との差を測定する二次フィルタ差圧センサとからなる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗装設備管理システム。
【請求項7】
被塗物を塗装ラインの長手方向に沿って搬送しながら塗装する塗装ブースと、前記塗装ブースから排出されるブースエア中の塗料ミストを除去するフィルタを収容し、前記塗装ラインの長手方向に沿って配置された複数のフィルタユニットと、を備え、複数の前記フィルタユニットは、前記フィルタの上流側と下流側との差圧を測定するフィルタ差圧センサを含む塗装設備管理システムにより、前記フィルタの塗料堆積重量を予測する方法であって、
前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタを載せて搬送する重量センサ付き台車の重量センサ、及び、前記フィルタユニット内において前記フィルタの上流側と下流側との差圧を測定する前記フィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて、前記フィルタの塗料堆積重量を予測する予測モデルを作成する予測モデル作成ステップと、
その予測モデルを利用して、複数の前記フィルタユニットにおける前記フィルタの塗料堆積重量を予測する塗料堆積重量予測ステップと
を含むことを特徴とする、塗料堆積重量予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物を塗装する塗装ブースと、ブースエア中の塗料ミストを除去するフィルタユニットとを備える塗装設備管理システム、塗装設備管理システムにより、フィルタの塗料堆積重量を予測する塗料堆積重量予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装ブース内において車体等の被塗物に対して塗装を行い、塗装ブースから排出されるブースエア中の塗料ミストを除去する塗装設備管理システムが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
図8に示されるように、塗装設備管理システム141は、塗装ブース142とフィルタユニット143とを備えている。塗装ブース142は、被塗物を長手方向(
図8では、紙面と直交する方向)に延びる塗装ラインに沿って搬送しながら塗装する。フィルタユニット143は、段ボールフィルタ144及び二次フィルタ145を収容しており、塗装ブース142から排出されるブースエアA1中の塗料ミストを除去するようになっている。なお、フィルタユニット143は、塗装ラインの長手方向に沿って複数配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2021/033760号公報
【特許文献2】特開2005-13890号公報
【特許文献3】特開2021-133271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の塗装設備管理システム141では、段ボールフィルタ144の詰り具合の目視確認や、差圧計146を用いた段ボールフィルタ144の上流側と下流側との差圧の測定や、重量計を用いた段ボールフィルタ144の重量の測定を定期的に行っている。これにより、段ボールフィルタ144が交換時期であるか否かを把握することができる。
【0005】
しかしながら、段ボールフィルタ144は、複数のフィルタユニット143にそれぞれ収容されているため、複数の段ボールフィルタ144について、交換時期であるか否かを把握する必要がある。この場合、個々の段ボールフィルタ144に対して、目視確認、差圧及び重量の測定での定期的な確認が必要となるため、確認作業に非常に手間がかかるという問題がある。しかも、上記の手法では、交換時期がいつになるかを予測できないという問題もある。さらに、従来の塗装設備管理システム141では、重量センサ147を多数あるフィルタユニット143の全てに設置することも考えられるが、この場合には、設備コストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、フィルタの確認作業の工数を削減できるとともに、フィルタの交換時期を予測することができ、かつ設備コストの低減が可能な塗装設備管理システムを提供することにある。また、第2の目的は、フィルタの確認作業の工数を削減できるとともに、フィルタの交換時期を予測することができる塗料堆積重量予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、被塗物を塗装ラインの長手方向に沿って搬送しながら塗装する塗装ブースと、前記塗装ブースから排出されるブースエア中の塗料ミストを除去するフィルタを収容し、前記塗装ラインの長手方向に沿って配置された複数のフィルタユニットと、を備え、複数の前記フィルタユニットは、前記フィルタの上流側と下流側との差圧を測定するフィルタ差圧センサを含む塗装設備管理システムであって、前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタを載せて搬送するとともに、前記フィルタの重量を測定する重量センサを持つ重量センサ付き台車と、複数の前記フィルタユニットごとに付与された識別子を読み込んで前記フィルタユニットを識別するとともに、前記フィルタユニットの識別情報とそのフィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを関連付けて記憶する管理装置と、前記重量センサ付き台車の前記重量センサ及び複数の前記フィルタユニットの前記フィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて、前記フィルタの塗料堆積重量を予測する予測モデルを作成する予測モデル作成手段と、その予測モデルを利用して、複数の前記フィルタユニットにおける前記フィルタの塗料堆積重量を予測する塗料堆積重量予測手段と、を備えたことを特徴とする、塗装設備管理システムをその要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によると、予測モデル作成手段が、重量センサ付き台車の重量センサ及びフィルタユニットのフィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて予測モデルを作成し、塗料堆積重量予測手段が、作成した予測モデルを利用してフィルタの塗料堆積重量を予測する。これにより、作業者は、フィルタの塗料堆積状況を確認するのに際して、フィルタ差圧センサを用いたフィルタの上流側と下流側との差圧の測定や、重量計を用いたフィルタの重量の測定などを定期的に行わなくても済む。よって、フィルタの確認作業の工数を削減することができる。
【0009】
また、塗料堆積重量予測手段がフィルタの塗料堆積重量を予測することにより、フィルタの交換時期や使用可能時間の事前予測が可能になる。このため、塗装設備管理システムの稼働中に突発的なフィルタ交換を行わなくても済む。しかも、交換の準備が必要なフィルタの数が分かるため、フィルタの無駄な在庫を持たなくても済む。また、重量センサが、全てのフィルタユニットに設置されるのではなく、重量センサ付き台車に設置される。その結果、塗装設備管理システムに設置される重量センサの数が低減されるため、塗装設備管理システムの設備コストを低減させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記管理装置は、前記識別子を読み込んで前記フィルタユニットの識別情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段が取得した前記識別情報と前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを関連付けるとともに、その関連付け情報を通信回線を介して外部に出力する出力手段と、前記出力手段が出力した前記関連付け情報を受け取って記憶する管理コンピュータと、を備えることをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、情報取得手段が識別子を読み込むと、フィルタユニットの識別情報が取得され、出力手段によって、取得した識別情報とフィルタユニットから取り出したフィルタの重量情報とが関連付けられ、その関連付け情報が外部に出力される。そして、関連付け情報は、管理コンピュータによって受け取られて記憶される。これにより、関連付け情報を確認すれば、フィルタの塗料堆積状況をフィルタユニットごとに確認することができるため、フィルタの交換時期や使用可能時間の事前予測をより正確に行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記管理装置は、前記識別子を読み込んで前記フィルタユニットの識別情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段が取得した前記識別情報と前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを、通信回線を介して外部に出力する出力手段と、前記出力手段が出力した前記識別情報及び前記重量情報を受け取るとともに、前記識別情報及び前記重量情報を関連付けて記憶する管理コンピュータと、を備えることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、情報取得手段が識別子を読み込むと、フィルタユニットの識別情報が取得され、出力手段によって、取得した識別情報とフィルタユニットから取り出したフィルタの重量情報とが外部に出力される。そして、識別情報及び重量情報は、管理コンピュータによって関連付けられて記憶される。これにより、関連付け情報を確認すれば、フィルタの塗料堆積状況をフィルタユニットごとに確認することができるため、フィルタの交換時期や使用可能時間の事前予測をより正確に行うことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記管理装置は、前記識別子を読み込んで前記フィルタユニットの識別情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段が取得した前記識別情報と前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタの重量情報とを関連付けるとともに、その関連付け情報を通信回線を介して外部に出力する出力手段と、を含むモバイル端末と、前記モバイル端末が出力した前記関連付け情報を受け取って記憶する管理コンピュータと、を備えることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明では、モバイル端末の情報取得手段が識別子を読み込むと、フィルタユニットの識別情報が取得され、モバイル端末の出力手段によって、取得した識別情報とフィルタユニットから取り出したフィルタの重量情報とが関連付けられ、その関連付け情報が外部に出力される。そして、関連付け情報は、管理コンピュータによって受け取られて記憶される。これにより、関連付け情報を確認すれば、フィルタの塗料堆積状況をフィルタユニットごとに確認することができるため、フィルタの交換時期や使用可能時間の事前予測をより正確に行うことができる。
【0016】
なお、モバイル端末としては、カメラ機能を有する端末、例えば、タブレット型端末、スマートフォン、従来型の携帯電話などを挙げることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項において、前記識別子は、二次元コードであり、前記情報取得手段は、前記二次元コードを撮像して得た画像から前記フィルタユニットの識別情報を取得する二次元コードリーダであることをその要旨とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によると、識別子が二次元コードであるため、識別子が一次元コードである場合よりも多くの情報を、フィルタユニットの識別情報に含めることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記フィルタは、前記塗装ブースから排出される前記ブースエア中の塗料ミストを除去する一次フィルタと、前記一次フィルタから排出される前記ブースエア中の塗料ミストを除去する二次フィルタとからなり、前記重量センサは、前記重量センサ付き台車に載せられた前記一次フィルタの重量を測定し、前記フィルタ差圧センサは、前記一次フィルタの上流側と下流側との差圧を測定する一次フィルタ差圧センサと、前記二次フィルタの上流側と下流側との差を測定する二次フィルタ差圧センサとからなることをその要旨とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によると、塗料堆積重量予測手段が、予測モデルを利用して一次フィルタ及び二次フィルタの塗料堆積重量を予測する。これにより、一次フィルタ及び二次フィルタの塗料堆積状況の確認を行うために、一次フィルタ差圧センサを用いた一次フィルタの差圧の測定や、二次フィルタ差圧センサを用いた二次フィルタの差圧の測定や、重量計を用いた一次フィルタの重量の測定などを定期的に行わなくても済む。よって、一次フィルタ及び二次フィルタの確認作業の工数を削減することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、被塗物を塗装ラインの長手方向に沿って搬送しながら塗装する塗装ブースと、前記塗装ブースから排出されるブースエア中の塗料ミストを除去するフィルタを収容し、前記塗装ラインの長手方向に沿って配置された複数のフィルタユニットと、を備え、複数の前記フィルタユニットは、前記フィルタの上流側と下流側との差圧を測定するフィルタ差圧センサを含む塗装設備管理システムにより、前記フィルタの塗料堆積重量を予測する方法であって、前記フィルタユニットから取り出した前記フィルタを載せて搬送する重量センサ付き台車の重量センサ、及び、前記フィルタユニット内において前記フィルタの上流側と下流側との差圧を測定する前記フィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて、前記フィルタの塗料堆積重量を予測する予測モデルを作成する予測モデル作成ステップと、その予測モデルを利用して、複数の前記フィルタユニットにおける前記フィルタの塗料堆積重量を予測する塗料堆積重量予測ステップとを含むことを特徴とする、塗料堆積重量予測方法をその要旨とする。
【0022】
請求項7に記載の発明によると、予測モデル作成ステップにおいて、重量センサ付き台車の重量センサ及びフィルタユニットのフィルタ差圧センサにより取得したデータに基づいて予測モデルを作成し、塗料堆積重量予測ステップにおいて、作成した予測モデルを利用してフィルタの塗料堆積重量を予測する。これにより、作業者は、フィルタの塗料堆積状況を確認するのに際して、フィルタ差圧センサを用いたフィルタの上流側と下流側との差圧の測定や、重量計を用いたフィルタの重量の測定などを定期的に行わなくても済む。よって、フィルタの確認作業の工数を削減することができる。
【0023】
また、塗料堆積重量予測ステップにおいて、フィルタの塗料堆積重量を予測することにより、フィルタの交換時期や使用可能時間の事前予測が可能になる。このため、塗装設備管理システムの稼働中に突発的なフィルタ交換を行わなくても済む。しかも、交換の準備が必要なフィルタの数が分かるため、フィルタの無駄な在庫を持たなくても済む。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、請求項1~6に記載の発明によると、フィルタの確認作業の工数を削減できるとともに、フィルタの交換時期を予測することができ、かつ設備コストの低減が可能な塗装設備管理システムを提供することができる。また、請求項7に記載の発明によると、フィルタの確認作業の工数を削減できるとともに、フィルタの交換時期を予測することができる塗料堆積重量予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態における塗装設備管理システムを示す概略断面図。
【
図3】段ボールフィルタ収容部の底面を示す概略平面図。
【
図4】フィルタユニット及びタブレット型端末を示す正面図。
【
図5】重量センサ付き台車の底面を示す概略平面図。
【
図8】従来技術における塗装設備管理システムを示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
図1に示されるように、本実施形態の塗装設備管理システム10は、塗装ブース11及びフィルタユニット20を備えている。塗装ブース11は、一対の側壁12及び床部13を有している。塗装ブース11の内部空間は、床部13上方に設けられる塗装室S1と、床部13下方に設けられる排気ダクトS2とに区画されている。また、排気ダクトS2の下方にはブース下側空間S3が区画され、ブース下側空間S3にはフィルタユニット20が設置されている。なお、床部13は、スノコ状の部材(グレーチング)で形成されている。
【0028】
そして、塗装室S1内には、長手方向(
図1では、紙面と直交する方向)に延びる塗装ライン14と、塗装ライン14の両側に配置された複数の塗装ロボット15とが収容されている。なお、塗装ブース11では、塗装室S1内の被塗物W1(本実施形態では自動車ボディ)に対して、塗装ロボット15の塗装ガンから霧化した塗料(塗料ミスト)を吹き付けることにより、被塗物W1が塗装ライン14の長手方向に沿って搬送しながら塗装される。
【0029】
図1,
図2に示されるように、フィルタユニット20は、塗装ライン14の長手方向に沿って複数配置されている。
図1に示されるように、各フィルタユニット20は、1つの段ボールフィルタ30(一次フィルタ)と5枚の二次フィルタ40とを収容可能になっている。段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40は、塗装ブース11から排出されるブースエアA2中の塗料ミストを除去するようになっている。具体的に言うと、フィルタユニット20は、段ボールフィルタ収容部21と、同段ボールフィルタ21の側方(
図1では右方)に隣接して配置される二次フィルタ収容部22とを有している。段ボールフィルタ収容部21には、段ボールフィルタ30が出入自在に収容可能となっており、二次フィルタ収容部22には、各二次フィルタ40が出入自在に収容可能となっている。よって、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40は、フィルタユニット20内において左右に隣接して配置されている。
【0030】
なお、段ボールフィルタ30は、塗装ブース11から排出されるブースエアA2中の塗料ミストを除去するためのフィルタである。段ボールフィルタ30は、可燃性材料(具体的には、段ボール紙)を主体として形成されている。また、段ボールフィルタ30は、上面31、下面32、及び、4つの側面33を有する直方体状(箱状)をなしている。さらに、段ボールフィルタ30は、上面31にて開口する入口(図示略)と、下流側(
図1では右側)の側面33にて開口する出口(図示略)とを有している。なお、本実施形態の段ボールフィルタ30では、塗料ミストを含むブースエアA2が入口から内部に流れ込んで、出口から排出されるようになっている。そして、出口から排出されたブースエアA2は、二次フィルタ収容部22内に導かれる。
【0031】
また、段ボールフィルタ30は、例えばエリミネータ(図示略)や整流板(図示略)等を備えている。エリミネータは、例えば、段ボールフィルタ30内における入口付近に収容されている。エリミネータは、複数の板状のエリミネータエレメントを並設してなり、ブースエアA2から塗料ミストを分離する機能を有している。各エリミネータエレメントは、平面視でジグザグ状をなしている。よって、隣接するエリミネータエレメント間には、蛇行した通路が形成される。また、整流板は、例えば、段ボールフィルタ30内における出口付近に収容されている。整流板は、複数の整流板エレメントを並設してなる。各整流板エレメントは、水平方向に延びており、上流側端がエリミネータエレメントの下流側端に接続されている。
【0032】
図1に示されるように、各二次フィルタ40は、段ボールフィルタ30から排出されるブースエアA2中の塗料ミストを除去するためのフィルタである。二次フィルタ40は、例えば、アレスターパッド(図示略)及び枠体(図示略)を備えている。アレスターパッドは、可燃性材料(具体的には、防災加工された紙)を主体として矩形板状に形成されている。アレスターパッドは、段ボールフィルタ30から排出されたブースエアA2を通過させることにより、ブースエアA2中に含まれる塗料ミストを除去するためのものである。また、枠体は、矩形枠状をなしており、アレスターパッドの外周部を保持する。
【0033】
図1,
図3に示されるように、段ボールフィルタ収容部21の底部には、一対のローラコンベアユニット23が設置されている。各ローラコンベアユニット23は、段ボールフィルタ30の出入方向(
図1では左右方向)に沿って延びている。各ローラコンベアユニット23は、同ローラコンベアユニット23の一端部(
図3では下端部)に設けられたヒンジ(図示略)を介して回動可能に連結されている。また、各ローラコンベアユニット23には、複数のローラ24が所定間隔を隔てて回転可能に配設されている。各ローラ24の回転軸は、段ボールフィルタ30の出入方向に直交している。また、各ローラ24の回転軸方向の寸法は、段ボールフィルタ30の奥行方向の寸法よりも小さくなるように設定されている。各ローラ24は、いずれも同一の高さに配置されており、段ボールフィルタ30の出入方向に沿って一直線上に配置されている。これにより、各ローラ24は、外周面が段ボールフィルタ30の下面32側に接触して、段ボールフィルタ30を下方から支持する。そして、各ローラ24は、段ボールフィルタ30の搬送時に転動して、段ボールフィルタ30のスムーズな移動を促すようになっている。
【0034】
図1に示されるように、各フィルタユニット20は、段ボールフィルタ差圧センサ61(一次フィルタ差圧センサ)と二次フィルタ差圧センサ62とを含んでいる。段ボールフィルタ差圧センサ61は、段ボールフィルタ30の上流側に配置される第1測定点63と、段ボールフィルタ30の下流側に配置される第2測定点64とからなり、段ボールフィルタ30の上流側と下流側との差圧を測定するセンサである。なお、本実施形態の第1測定点63は、段ボールフィルタ30の上流側である排気ダクトS2内に配置された測定点であるが、塗装ブース11外に配置された大気開放の測定点63aであってもよい。二次フィルタ差圧センサ62は、各二次フィルタ40の上流側に配置される第2測定点64と、各二次フィルタ40の下流側に配置される第3測定点65とからなり、二次フィルタ40の上流側と下流側との差圧を測定するセンサである。つまり、第2測定点65は、段ボールフィルタ差圧センサ61及び二次フィルタ差圧センサ62の両方に共通して用いられる測定点である。
【0035】
図4に示されるように、フィルタユニット20の一側面(
図1では左側面)には、一対の回動扉71が設けられている。両回動扉71は、複数のヒンジ72を介して回動可能に連結され、段ボールフィルタ収容部21の開口部の左半分と右半分とをそれぞれ塞ぐようになっている。なお、一方(
図4では右側)の回動扉71の前面には、係止部73が設けられている。また、係止部73を備えない側(
図4では左側)の回動扉71の前面には、ロックレバー74が設けられている。ロックレバー74は、回動扉71に対して回動可能に支持されている。そして、ロックバー74を回動操作した際に、ロックバー74の一部が係止部73に係止することにより、両回動扉71が閉状態にロックされる。
【0036】
また、一方(
図4では右側)の回動扉71の前面右上部には、1枚の識別子75が貼付されている。識別子75は、フィルタユニット20ごとにそれぞれ設けられている。また、識別子75は、フィルタユニット20ごとに異なる識別可能な幾何学的特徴を有するとともに、回動扉71の前面に貼付されるシールである。なお、本実施形態の識別子75は、矩形状の基体の表面に、明度が異なる2種類の色(白及び黒)からなる幾何学模様が表示された二次元コード(本実施形態では、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標))である。
【0037】
そして、
図1に示されるように、ブース下側空間S3の終端には、フィルタユニット20から排出されたブースエアA2を排出する排気室S4が接続されている。また、塗装設備管理システム10は、給気ファン81及び排気ファン82を備えている。給気ファン81は、各フィルタユニット20にブースエアA2を供給するためのものである。詳述すると、給気ファン81を駆動することにより、ブースエアA2は、塗装ブース11からフィルタユニット20内に流れ込み、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40を順番に通過する。また、排気ファン82は、各フィルタユニット20からブースエアA2を排出するためのものである。詳述すると、排気ファン82を駆動することにより、フィルタユニット20の二次フィルタ40を通過したブースエアA2は、排気室S4内に流れ込んだ後、外部に排出される。
【0038】
また、塗装設備管理システム10は、給気ファン周波数測定センサ83及び排気ファン周波数測定センサ84をさらに含んでいる。給気ファン周波数測定センサ83は、給気ファン81の運転周波数(具体的には、給気ファン81を駆動するモータの回転数)のデータを運転情報として測定する。排気ファン周波数測定センサ84は、排気ファン82の運転周波数(具体的には、排気ファン82を駆動するモータの回転数)のデータを運転情報として測定する。
【0039】
図2,
図5に示されるように、塗装設備管理システム10は、重量センサ51を持つ重量センサ付き台車91を備えている。重量センサ付き台車91は、塗装ライン14の幅方向(
図2では下方向)にオフセットした位置に配置され、塗装ライン14の長手方向(
図2では左右方向)に移動可能となっている。なお、重量センサ付き台車91は、フィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30を1個だけ載せて搬送するようになっている。重量センサ付き台車91の底部には、一対のローラコンベアユニット92からなるユニット群93が設置されている。各ローラコンベアユニット92は、段ボールフィルタ30の出入方向(
図2,
図3では上下方向)に沿って延びている。各ローラコンベアユニット92は、同ローラコンベアユニット92の一端部(
図5では上端部)に設けられたヒンジ(図示略)を介して回動可能に連結されている。また、各ローラコンベアユニット92には、複数のローラ94が所定間隔を隔てて回転可能に配設されている。各ローラ94の回転軸は、段ボールフィルタ30の出入方向に直交している。また、各ローラ94の回転軸方向の寸法は、段ボールフィルタ30の幅よりも小さくなるように設定されている。各ローラ94は、いずれも同一の高さに配置されており、段ボールフィルタ30の出入方向に沿って一直線上に配置されている。これにより、各ローラ94は、外周面が段ボールフィルタ30の下面32側に接触して、段ボールフィルタ30を下方から支持する。そして、各ローラ94は、段ボールフィルタ30の搬送時に転動して、段ボールフィルタ30のスムーズな移動を促すようになっている。
【0040】
なお、重量センサ51は、感圧式のセンサであり、重量センサ付き台車91に載せられた段ボールフィルタ30の重量を測定するようになっている。重量センサ51は、ユニット群93に設けられている。そして、重量センサ51は、それぞれのローラコンベアユニット92においてヒンジが設けられている側とは反対側の端部に配置されている(
図5参照)。また、重量センサ51は、重量センサ付き台車91の上面95と、重量センサ付き台車91に載せられた段ボールフィルタ30の下面32との隙間に配置されている。
【0041】
次に、塗装設備管理システム10の電気的構成について説明する。
【0042】
図1,
図4に示されるように、塗装設備管理システム10は管理装置100を備えている。管理装置100は、管理コンピュータ101及びタブレット型端末111(モバイル端末)を備えている。管理コンピュータ101は、CPU102、ROM103、RAM104、入出力回路等により構成されている。CPU102は、重量センサ51、段ボールフィルタ差圧センサ61、二次フィルタ差圧センサ62、給気ファン81、排気ファン82、給気ファン周波数測定センサ83及び排気ファン周波数測定センサ84に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。なお、重量センサ51は、移動する重量センサ付き台車91に設けられているため、無線通信によりCPU102やタブレット型端末111に接続されていてもよい。また、CPU102には、モニタ121が電気的に接続されている。なお、
図6に示されるように、モニタ121の表示画面122には、段ボールフィルタ30の塗料堆積重量と二次フィルタ40の塗料堆積重量との合計値(付着重量)がフィルタユニット20ごとに表示される。
【0043】
タブレット型端末111は、二次元コードリーダ(図示略)と出力手段(図示略)とを含んでいる。二次元コードリーダは、フィルタユニット20ごとに付与された識別子75を読み込んでフィルタユニット20の識別情報を取得する情報取得手段である。なお、識別情報には、どの工程(ベース工程、上塗工程、クリア工程)に用いられるフィルタユニット20であるかを示す情報や、フィルタユニット20の番号(
図6に示す「UNIT 01」~「UNIT 05」)の情報などが含まれている。これにより、フィルタユニット20を識別することができる。具体的に言うと、本実施形態の二次元コードリーダは、タブレット型端末111に設けられたカメラであり、作業者がタブレット型端末111を把持して所定のフィルタユニット20の回動扉71を撮像することにより、識別子75を含む画像を取得する。次に、二次元コードリーダは、識別子75を撮像して得た画像からフィルタユニット20の識別情報を取得する。そして、タブレット型端末111の出力手段は、取得した識別情報に基づいて、情報要求信号を通信回線(図示略)を介して管理コンピュータ101に出力する。
【0044】
また、管理コンピュータ101のCPU102は、受信した情報要求信号に含まれるフィルタユニット20の識別情報に基づいて、段ボールフィルタ30の重量情報をRAM104から読み出す。なお、重量情報とは、重量センサ51によって測定された段ボールフィルタ30の重量の情報である。そして、CPU102は、読み出した重量情報を通信回線を介してタブレット型端末111に出力する。その結果、タブレット型端末111の表示画面112に、段ボールフィルタ30の重量情報が表示される。なお、表示画面112には、段ボールフィルタ30の塗料堆積重量と二次フィルタ40の塗料堆積重量との合計値(付着重量)がフィルタユニット20ごとに表示されてもよい(即ち、
図6と同様の画面が表示されてもよい)。
【0045】
また、タブレット型端末111の出力手段は、二次元コードリーダが取得したフィルタユニット20の識別情報と、そのフィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30の重量情報とを関連付けることにより、関連付け情報を生成する。さらに、出力手段は、生成した関連付け情報を通信回線を介して外部に出力する。そして、管理コンピュータ101は、タブレット型端末111が出力した関連付け情報を受け取ってRAM104(データベース)に記憶する。
【0046】
次に、ブースエアA2中に含まれる塗料ミストの除去方法を説明する。
【0047】
まず、塗装ロボット15の塗装ガンから塗料を噴霧して被塗物W1の塗装を行うと、オーバースプレーされた塗料ミストが、塗装室S1のブースエアA2とともに、塗装ブース11の床部13を通過して、排気ダクトS2側及びブース下側空間S3側に案内される。
【0048】
その後、塗料ミストを含むブースエアA2は、ブース下側空間S3内に設置されたフィルタユニット20の段ボールフィルタ収容部21内に導かれ、段ボールフィルタ30内に取り込まれる。そして、ブースエアA2は、段ボールフィルタ30内のエリミネータに導かれ、隣接するエリミネータエレメント間に流れ込む。なお、隣接するエリミネータエレメント間は蛇行した通路となっているため、ブースエアA2は、蛇行した通路内をエリミネータエレメントの表面に衝突しながら流れる。このとき、ブースエアA2中に含まれる塗料ミストの殆どは、エリミネータエレメントの表面に付着することにより除去されるため、段ボールフィルタ30に塗料が堆積する。
【0049】
次に、エリミネータを通過したブースエアA2は、エリミネータの下流側にある整流板に導かれ、隣接する整流板エレメント間に流れ込む。このとき、ブースエアA2は、整流板エレメントの表面に接触することにより、整流板エレメントの表面に沿うように誘導される。また、ブースエアA2中に含まれる塗料ミストの一部は、整流板エレメントの表面に付着することにより除去されるため、段ボールフィルタ30により多くの塗料が堆積する。
【0050】
その後、ブースエアA2は、出口から段ボールフィルタ30外に排出され、二次フィルタ収容部22内に導かれる。さらに、ブースエアA2は、二次フィルタ40のアレスターパッドを通過する。このとき、ブースエアA2中に含まれる塗料ミストは、主としてアレスターパッドに付着することにより除去される。なお、この時点で、ブースエアA2中に含まれる塗料ミストがほぼ完全に除去され、各二次フィルタ40に塗料が堆積する。
【0051】
そして、塗料ミストが除去されたブースエアA2は、二次フィルタ収容部22内からフィルタユニット20の外部に排出される。さらに、ブースエアA2は、排気室S4を通過した後、塗装設備管理システム10の外部に排出される。
【0052】
次に、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量の予測方法を説明する。
【0053】
まず、管理コンピュータ101のCPU102は、フィルタユニット20の段ボールフィルタ差圧センサ61に駆動信号を出力し、フィルタユニット20内の段ボールフィルタ30の上流側と下流側との差圧を測定する。また、CPU102は、フィルタユニット20の二次フィルタ差圧センサ62にも駆動信号を出力し、二次フィルタ40の上流側と下流側との差圧を測定する。さらに、CPU102は、給気ファン周波数測定センサ83に駆動信号を出力して給気ファン81の運転周波数を測定するとともに、排気ファン周波数測定センサ84に駆動信号を出力して排気ファン82の運転周波数を測定する。
【0054】
次に、作業者は、複数(本実施形態では5つ)のフィルタユニット20のうちの1つから段ボールフィルタ30を取り出す。本実施形態において、作業者は、塗装ライン14の中央部に位置するフィルタユニット20から、段ボールフィルタ30を取り出す。そして、作業者は、取り出した段ボールフィルタ30を重量センサ付き台車91に載せる。このとき、CPU102は、重量センサ付き台車91の重量センサ51に駆動信号を出力し、重量センサ付き台車91に載せられた段ボールフィルタ30の重量を測定する。この重量の測定を一定期間繰り返すことにより、重量のデータが蓄積される。
【0055】
重量のデータがある程度蓄積されると、CPU102は予測モデル作成ステップを行う。予測モデル作成ステップにおいて、CPU102は、重量センサ51により取得したデータ、フィルタ差圧センサ61,62により取得したデータ、及び、ファン周波数測定センサ83,84により取得したデータに基づいて、予測モデル131(
図7参照)を作成する。即ち、CPU102は、『予測モデル作成手段』としての機能を有している。そして、CPU102は、作成した予測モデル131をRAM104に記憶する。
【0056】
なお、予測モデル131は、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量の予測に用いられる。詳述すると、予測モデル131は、入力情報X1~X5を蓄積し、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積情報を出力するように、管理コンピュータ101を機能させるためのものである。なお、入力情報X1は、段ボールフィルタ30の重量である。入力情報X2は、フィルタユニット20における段ボールフィルタ30の差圧であり、入力情報X3は、フィルタユニット20における二次フィルタ40の差圧である。入力情報X4は、給気ファン81の運転周波数のデータ(運転情報)であり、入力情報X5は、排気ファン82の運転周波数のデータ(運転情報)である。
【0057】
続く塗料堆積重量予測ステップにおいて、まず、CPU102は、RAM104に記憶されている予測モデル131を利用して、複数のフィルタユニット20における段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量を予測する。具体的に言うと、CPU102は、予測モデル131を利用して、フィルタユニット20における段ボールフィルタ30の差圧と、段ボールフィルタ30の塗料堆積重量との関係値を算出する。また、CPU102は、予測モデル131を利用して、フィルタユニット20における二次フィルタ40の差圧と、二次フィルタ40の塗料堆積重量との関係値を算出する。即ち、CPU102は、『塗料堆積重量予測手段』としての機能を有している。
【0058】
次に、CPU102は、予測モデル131を利用して、段ボールフィルタ30の重量を測定していないフィルタユニット20においても、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量を予測する。具体的に言うと、CPU102は、予測モデル131を利用して、フィルタユニット20における段ボールフィルタ30の差圧と、段ボールフィルタ30の塗料堆積重量との関係値を算出する。また、CPU102は、予測モデル131を利用して、フィルタユニット20における二次フィルタ40の差圧と、二次フィルタ40の塗料堆積重量との関係値を算出する。
【0059】
さらに、CPU102は、個々のフィルタユニット20において段ボールフィルタ30の塗料堆積重量が予測される度に、予測モデル131を利用して、段ボールフィルタ30の交換時期を予測する。そして、CPU102は、予測された段ボールフィルタ30の交換時期を、モニタ121に表示させる制御を行う(
図6参照)。なお、段ボールフィルタ30の交換時期の予測は、フィルタユニット20ごと(
図6では、「UNIT 01」~「UNIT 05」ごと)に個別に表示される。同様に、CPU102は、個々のフィルタユニット20において二次フィルタ40の塗料堆積重量が予測される度に、予測モデル131を利用して、二次フィルタ40の交換時期を予測する。そして、CPU102は、予測された二次フィルタ40の交換時期を、モニタ121に表示させる制御を行う(
図6参照)。なお、二次フィルタ40の交換時期の予測は、フィルタユニット20ごとに個別に表示される。また、CPU102は、予測された段ボールフィルタ30の塗料堆積重量と予測された二次フィルタ40の塗料堆積重量との合計値(付着重量)を、モニタ121に表示させる制御を行う(
図6参照)。さらに、CPU102は、段ボールフィルタ30の差圧(1st)、二次フィルタ40の差圧(2st)及びフィルタユニット20の使用時間を、フィルタユニット20ごとに個別に表示させる制御を行う。
【0060】
また、CPU102は、塗装ブース11での塗料使用量のデータや、被塗物W1の生産台数のデータを収集する。このため、CPU102は、予測モデル131を利用しなくても、収集した各データを勘案することにより、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量を予測することができる。
【0061】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
【0062】
(1)本実施形態の塗装設備管理システム10では、CPU102が、重量センサ付き台車91の重量センサ51及びフィルタユニット20のフィルタ差圧センサ61,62等により取得したデータに基づいて予測モデル131を作成する。そして、CPU102は、作成した予測モデル131を利用して段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量を予測する。これにより、作業者は、フィルタ30,40の塗料堆積状況を確認するために、フィルタ差圧センサ61,62を用いたフィルタ30,40の上流側と下流側との差圧の測定や、重量計(図示略)を用いた段ボールフィルタ30の重量の測定などを定期的に行わなくても済む。よって、フィルタ30,40の確認作業の工数を削減することができる。
【0063】
また、CPU102がフィルタ30,40の塗料堆積重量を予測することにより、フィルタ30,40の交換時期や使用可能時間の事前予測が可能になる。このため、塗装設備管理システム10の稼働中に突発的なフィルタ交換を行わなくても済む。しかも、交換の準備が必要なフィルタ30,40の数が分かるため、フィルタ30,40の無駄な在庫を持たなくても済む。また、本実施形態では、重量センサ51が、全てのフィルタユニット20に設置されるのではなく、1つの重量センサ付き台車91のみに設置される。その結果、塗装設備管理システム10に設置される重量センサ51の数が低減される。しかも、本実施形態においては、比較的安価なフィルタ差圧センサ61,62によって測定された差圧を用いて、フィルタ30,40の塗料堆積重量を予測している。このため、塗装設備管理システム10の設備コストを低減させることができる。
【0064】
(2)本実施形態では、タブレット型端末111の二次元コードリーダが識別子75を読み込むと、フィルタユニット20の識別情報(例えば、「UNIT 01」等の情報)が取得される。さらに、タブレット型端末111の出力手段によって、取得した識別情報とフィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30の重量情報とが関連付けられ、その関連付け情報が外部に出力される。そして、関連付け情報は、管理コンピュータ101によって受け取られて記憶される。これにより、関連付け情報を確認すれば、フィルタ30,40の塗料堆積状況をフィルタユニット20ごとに確認することができるため、フィルタ30,40の交換時期や使用可能時間の事前予測をより正確に行うことができる。また、作業者がタブレット型端末111を把持して識別子75を撮像する作業を行えば、その後の処理は全て自動的に行われるため、フィルタ30,40の確認作業の工数をよりいっそう削減できる。
【0065】
(3)本実施形態では、複数のフィルタユニット20のうちの1つから段ボールフィルタ30を取り出し、取り出した段ボールフィルタ30を重量センサ付き台車91に載せる。そして、CPU102は、重量センサ51によって段ボールフィルタ30の重量を測定し、重量センサ51により取得した重量のデータに基づいて予測モデル131を作成している。つまり、本実施形態では、どのフィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30を用いたとしても、段ボールフィルタ30の重量のデータに基づいて予測モデル131を作成することができる。
【0066】
(4)本実施形態では、フィルタユニット20に設けられた回動扉71の前面に、識別子75が貼付されている。回動扉71の前面は、塗料ミストを含むブースエアA2が流れる経路の外側に位置するため、回動扉71に貼付された識別子75への塗料の付着が防止される。その結果、識別子75が汚れにくくなるため、タブレット型端末111の二次元コードリーダ(カメラ)を用いれば、識別子75(QRコード)を確実に撮像することができる。また、識別子75はフィルタユニット20の外側に露出している。このため、作業者は、タブレット型端末111を用いて識別子75を撮像する際に、回動扉71を開けたりしなくても済む。
【0067】
(5)例えば、給気ファン81や排気ファン82の運転周波数が変動した場合、ファン81,82の回転数が変動してブースエアA2の流速が変動することで、塗装ブース11内やフィルタユニット20内の圧力が変化する。その結果、フィルタ差圧センサ61,62によって測定される差圧が変化するため、差圧等に基づいて予測される段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量が、変化する可能性がある。そこで、本実施形態では、CPU102が、塗料堆積重量を変化させるデータである運転周波数を入力情報X4,X5として取り込んで、予測モデル131を作成している。その結果、CPU102は、作成した予測モデル131を利用することにより、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量を正確に予測することができる。
【0068】
(6)本実施形態では、CPU102が、塗装ブース11での塗料使用量及び被塗物W1の生産台数を勘案して、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量を予測している。よって、塗装ブース11での塗料使用量(即ち、塗装ガンからの塗料の噴霧量)から、段ボールフィルタ30の塗料堆積重量と二次フィルタ40の塗料堆積重量とを差し引けば、実際の被塗物W1への塗料の付着量を予測することもできる。
【0069】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0070】
・上記実施形態では、複数のフィルタユニット20のうちの1つから取り出した段ボールフィルタ30の重量に基づいて、予測モデル131を作成していた。しかし、各フィルタユニット20のうちの2つ以上から取り出した段ボールフィルタ30の重量に基づいて、予測モデル131を作成してもよい。
【0071】
・上記実施形態では、塗装ライン14の中央部に位置するフィルタユニット20から段ボールフィルタ30を取り出し、取り出した段ボールフィルタ30を重量センサ付き台車91に載せて、段ボールフィルタ30の重量を測定し、予測モデル131を作成していた。しかし、塗装ライン14の上流側(
図2では右側)に位置するフィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30の重量に基づいて、予測モデル131を作成してもよいし、塗装ライン14の下流側(
図2では左側)に位置するフィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30の重量に基づいて、予測モデル131を作成してもよい。なお、塗装ライン14の下流端、塗装ライン14の上流端、及び、塗装ライン14の中央部の3箇所に位置するフィルタユニット20から段ボールフィルタ30を取り出す場合、重量センサ51が測定した各段ボールフィルタ30の重量の平均値に基づいて、予測モデル131を作成してもよい。このようにすれば、予測モデル131を利用することにより、段ボールフィルタ30及び二次フィルタ40の塗料堆積重量をより正確に予測することができる。
【0072】
・上記実施形態において、重量センサ付き台車91に設けられている重量センサ51を、特定のフィルタユニット20にも設けてもよい。このようにすれば、重量センサ付き台車91に設けられた重量センサ51により取得したデータと、フィルタユニット20に設けられた重量センサ51により取得したデータとの両方に基づいて、予測モデル131が作成される。この場合、予測モデル131を利用すれば、フィルタ30,40の塗料堆積重量をより早く、正確に予測することができる。
【0073】
・上記実施形態の重量センサ付き台車91は、段ボールフィルタ30を1個だけ載せて搬送するようになっていたが、段ボールフィルタ30を2個以上載せて搬送するようになっていてもよい。この場合、一対のローラコンベアユニット92からなるユニット群93は、段ボールフィルタ30の搭載箇所にそれぞれ設けられることが好ましい。また、重量センサ51は、2つ以上あるユニット群93のうち1つのユニット群93に設けられることが好ましい。
【0074】
・上記実施形態の識別子75は、フィルタユニット20の回動扉71に貼付されていた。しかし、識別子75は、フィルタユニット20において回動扉71とは異なる箇所に貼付されていてもよいし、フィルタユニット20内の段ボールフィルタ30に貼付されていてもよい。
【0075】
・上記実施形態の識別子75は、QRコード(株式会社デンソーウェーブの登録商標)であったが、ArUcoマーカーやAprilTag等の他の二次元コードを識別子として用いてもよいし、バーコード等の一次元コードを識別子として用いてもよい。また、RFタグを識別子として用いてもよい。この場合、情報取得手段は、RFタグとの無線通信により情報を読み出すRFIDリーダ装置であることが好ましい。
【0076】
・上記実施形態では、タブレット型端末111の出力手段が、フィルタユニット20の識別情報とそのフィルタユニット20から取り出した段ボールフィルタ30の重量情報とを関連付けて、その関連付け情報を外部に出力し、管理コンピュータ101が、関連付け情報を受け取って記憶していた。しかし、出力手段は、フィルタユニット20の識別情報と段ボールフィルタ30の重量情報とを外部に出力し、管理コンピュータ101は、識別情報及び重量情報を受け取るとともに、識別情報及び重量情報を関連付けて記憶するものであってもよい。
【0077】
・上記実施形態において、予測モデル131に入力情報として蓄積される給気ファン81及び排気ファン82の運転情報は、給気ファン81の運転周波数(入力情報X4)及び排気ファン82の運転周波数(入力情報X5)であった。しかし、ファン81,82の運転情報は、ファン81,82を駆動する電流の電流値、給気ファン81によってフィルタユニット20に供給されるブースエアA2の温度または湿度、排気ファン82によってフィルタユニット20から排出されるブースエアA2の温度または湿度などであってもよい。
【0078】
・上記実施形態のフィルタユニット20は、段ボールフィルタ30(一次フィルタ)及び二次フィルタ40を収容可能となっていた。しかし、フィルタユニット20は、さらに三次以上のフィルタを収容可能であってもよい。
【0079】
・上記実施形態では、塗装ブース11において塗装される被塗物W1として自動車ボディを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、インストルメントパネル、コンソールボックス、アームレストなどの自動車用内装部品を被塗物としてもよいし、バンパーや空力付加物(スポイラー等)などの自動車用外装部品を被塗物としてもよい。また、被塗物W1は、必ずしも自動車用部品でなくてもよい。
【0080】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0081】
(1)請求項1乃至6のいずれか1項において、前記重量センサ付き台車は、複数の前記フィルタユニットのうち一部のフィルタユニットから取り出した前記フィルタを載せて搬送するとともに、前記重量センサは、前記重量センサ付き台車に載せた前記フィルタの重量を測定することを特徴とする塗装設備管理システム。
【0082】
(2)請求項6において、前記一次フィルタ差圧センサは、前記一次フィルタの上流側または前記塗装ブース外に配置される第1測定点と、前記一次フィルタの下流側に配置される第2測定点とからなり、前記二次フィルタ差圧センサは、前記二次フィルタの上流側に配置される前記第2測定点と、前記二次フィルタの下流側に配置される第3測定点とからなり、前記第2測定点は、前記一次フィルタ差圧センサ及び前記二次フィルタ差圧センサの両方に共通して用いられることを特徴とする塗装設備管理システム。
【符号の説明】
【0083】
10…塗装設備管理システム
11…塗装ブース
14…塗装ライン
20…フィルタユニット
30…フィルタ及び一次フィルタとしての段ボールフィルタ
40…フィルタとしての二次フィルタ
51…重量センサ
61…フィルタ差圧センサ及び一次フィルタ差圧センサとしての段ボールフィルタ差圧センサ
62…フィルタ差圧センサとしての二次フィルタ差圧センサ
75…識別子
91…重量センサ付き台車
100…管理装置
101…管理コンピュータ
102…予測モデル作成手段及び塗料堆積重量予測手段としてのCPU
111…モバイル端末としてのタブレット型端末
131…予測モデル
A2…ブースエア
W1…被塗物