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特開2024-179544評価装置、評価システム、評価方法、および、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179544
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】評価装置、評価システム、評価方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/02 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098473
(22)【出願日】2023-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】深瀬 勇太郎
(72)【発明者】
【氏名】樽谷 葵
(72)【発明者】
【氏名】竹本 喜昭
(57)【要約】
【課題】凹凸の許容範囲の基準が一定の半径の範囲内に限定されている場合において効率的に凹凸を評価する。
【解決手段】データ取得部はサンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得し、検出部は、評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出し、前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得するデータ取得部と、
評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、
当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出部と、を備え、
前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である
評価システム。
【請求項2】
前記平面は水平面であり、前記法線方向座標は垂直方向の高さを示す
請求項1に記載の評価システム。
【請求項3】
前記評価領域における前記対象サンプル点の分布を示す対象領域データを出力する出力処理部を備える
請求項1に記載の評価システム。
【請求項4】
被観測体表面の空間分布を示す前記空間データを測定する測定装置と、
前記対象サンプル点を含む対象領域において、前記差分値の前記許容範囲からの超過量を減少させるように前記被観測体表面の形状を調整する作業装置の少なくとも一方を備える
請求項1に記載の評価システム。
【請求項5】
サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得するデータ取得部と、
評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、
当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出部と、を備え、
前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である
評価装置。
【請求項6】
コンピュータに
請求項5に記載の評価装置として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
評価装置が、
サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得し、
評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、
当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出する評価方法であって、
前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である
評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施形態は、評価装置、評価システム、評価方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
床面、建築物、構造物、物体などの表面に対し、しばしば平坦化が要求される。従来から表面の凹凸を計測する手法が提案されている。例えば、特許文献1に記載の形状計測方法は、構造物の周辺に表面が平面であるとともに表面の高さが既知である基準盤を設置し、基準盤を含めて構造物の表面の三次元形状データを複数の計測点について取得し、基準盤の表面に相当する三次元形状データから基準盤の表面を含む仮想的な平面を設定し、仮想的な平面を基準として、構造物の表面に相当する三次元形状データから構造物の表面の高さを計測する。
【0003】
また、特許文献2に記載のトラススクリードの管理方法は、ブレード部の高さを計測するための複数の基準点の高さを計測し、計測結果に基づいた複数の基準点の高さに関する情報が表示された表示画像を確認しながらトラススクリードに設けられた複数の調整ナットを調整してトラススクリードの撓み量を変化させブレード部の高さを調整する。
【0004】
鉛直方向の高さの凹凸は、基準レベルまたは評価領域全体の平均レベルを基準として評価されることが通例である。例えば、スケートリンクに張られる氷の表面に対しては、局所的な凹凸に限らず、対象領域全体にわたる凹凸を抑制することも要求される。スケートリンクでは、周囲よりも陥没した部分に融解した水が溜まるので、安全性や滑走感が損なわれうるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-60317号公報
【特許文献2】特開2021-70920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、評価対象とする評価領域全体にわたる評価が常に必要とされるとは限らない。評価領域全体にわたり表面を平坦化する場合には、必要以上の多くの領域において切削もしくは被覆などの作業が要求される結果、多くの労力や時間を要する。また切削により生ずる廃材の処分に係る施設の確保、もしくは、被覆のために多くの資材の調達を要する。限られた面積の領域での凹凸を重視し、離れた位置との間で高低差が許容されることがある。例えば、バスケットコートでは、一定の大きさの領域における凹凸を許容範囲内に制限することが要求されるが、バスケットコート全体にわたる制限までは要求されない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る評価装置は、サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得するデータ取得部と、評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出部と、を備え、前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である。
【0008】
第2の態様に係る評価システムは、サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得するデータ取得部と、評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出部と、を備え、前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である。
【0009】
第3の態様に係る評価方法は、評価装置が、サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得し、評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から前記法線方向座標の最小値を与える最小点を探索し、当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から前記最小値の差分値が前記法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出し、前記探索半径は、前記許容範囲の基準を与える基準半径の2倍である。
【発明の効果】
【0010】
本願によれば、凹凸の許容範囲の基準が一定の半径の範囲内に限定されているとき効率的に凹凸を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る評価装置の機能構成例を示す概略ブロック図である。
図2】水平面上の評価領域における高さを示す空間データを例示する図である。
図3】評価サンプル点と最低点を通過する断面を例示する断面図である。
図4】差分値データの一例を示す図である。
図5】対象サンプル点の分布例を示す図である。
図6】評価サンプル点を中心とする探索半径2Rの円の領域と、基準半径Rの円の領域内の他のサンプル点を中心とする基準半径Rの円の領域との位置関係を例示する図である。
図7】本実施形態に係る評価システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
図8】評価領域全体の最低点に基づく対象領域の例を示す断面図である。
図9】比較例に基づく対象領域判定方法を説明するための説明図である。
図10】比較例に基づく対象領域の例を示す断面図である。
図11】本実施形態に係る対象領域判定方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態に係る評価装置10の概要について説明する。評価装置10は、複数のサンプル点のそれぞれについて高さを示す空間データを取得する。高さは、水平面に直交する高さ方向の座標を用いて表される。高さ方向は、鉛直方向の逆方向に相当する。空間データは、サンプル点ごとに高さを示すデータである。評価装置10は、凹凸の評価領域内に分布したサンプル点を評価サンプル点として特定する。評価装置10は、個々の評価サンプル点ごとに、当該評価サンプル点から半径2Rの範囲内に分布した他のサンプル点のうち、最も小さい高さ方向の座標を与えるサンプル点を最低点として探索する。評価装置10は、評価サンプル点の高さ方向の座標から最低点の高さ方向の座標を差し引いて差分値を算出する。評価装置10は、差分値が所定の高さの許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する。半径2Rは、高さの許容範囲の基準を与える半径Rの2倍に相当する。本願では、半径Rを「基準半径」と呼び、半径2Rを「探索半径」と呼ぶことがある。
【0013】
次に、本実施形態に係る評価装置10の機能構成例について説明する。図1は、本実施形態に係る評価装置10の機能構成例を示す概略ブロック図である。評価装置10は、演算処理部110と、記憶部120と、表示部132と、操作部134と、入出力部136とを備える。
【0014】
演算処理部110は、評価装置10の機能を発揮させるための処理、ならびに、それらの処理を制御する。演算処理部110は、データ取得部112と、検出部114と、出力処理部116とを備える。演算処理部110は、汎用のプロセッサを備え、当該プロセッサに対し、所定のプログラムに記述された指令で示される処理を実行してコンピュータシステムとして実現されうる。演算処理部110は、専用の演算回路を含んで構成されてもよい。演算処理部110の各部の機能構成例については、後述する。なお、本願では、各種のプログラムに記述された指令で示される処理を実行することを、単に「プログラムの実行」、または、「プログラムを実行する」などと呼ぶことがある。
【0015】
記憶部120は、各種のデータを記憶する。記憶されるデータには、演算処理部110の処理に用いられるパラメータならびにデータ、処理により得られるデータなどが含まれうる。記憶部120は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。
表示部132は、演算処理部110から入力される表示データに従って各種の情報を表示する。表示部132は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、などのいずれを備えてもよい。
【0016】
操作部134は、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作に応じて操作信号を生成する。操作部134は、生成した操作信号を演算処理部110に出力する。操作部134は、例えば、マウス、タッチセンサ、ジョイスティック、などの汎用の部材を有してもよいし、ボタン、つまみ、などの専用の部材を有してもよい。
入出力部136は、評価装置10とは別個の機器と無線または有線で各種のデータを入出力可能に接続する。入出力部136は、通信ネットワークを経由して別個の機器と接続してもよい。入出力部136は、例えば、所定の入出力規格に準拠した入出力インタフェースと所定の通信方式に準拠した通信インタフェースの一方または両方を備える。
【0017】
次に、演算処理部110の機能構成例について説明する。
データ取得部112は、主に空間データの取得に係る処理を行う。データ取得部112は、例えば、入出力部136を経由して他の機器から空間データを取得する。他の機器は、測定装置20(後述)であってもよいし、測定装置20とは別個の機器であってもよい。データ取得部112は、記憶部120に予め記憶された空間データを読み取ってもよい。データ取得部112は、操作部134から入力される操作信号に従って空間データの取得元となる機器または記憶領域を特定する。データ取得部112は、操作により空間データの取得元の指示を案内するための設定画面を表示部132に表示させてもよい。データ取得部112は、取得した空間データを検出部114に出力する。
【0018】
空間データは、ある平面上の異なる座標と対応付けられる複数のサンプル点のそれぞれに対し、その平面の直交方向の座標値を示すデータであれば、いかなるデータ構成を有していてもよい。空間データは、例えば、二次元空間をなす水平面であるX-Y平面上に分布したサンプル点ごとにX-Y平面に直交する高さを示す高さデータである。空間データが画像データと同様のデータ形式を有する場合には、個々の画素がサンプル点として適用されうる。空間データは、三次元空間における被観測体の表面上に分布したサンプル点ごとの座標を示す点群データであってもよい。以下の説明では、空間データが高さデータである場合を主とする。
【0019】
検出部114は、空間データに係るサンプル点のうち、高さの評価対象とする評価領域内に分布した複数のサンプル点を評価サンプル点として特定する。検出部114は、各1個の評価サンプル点ごとに、当該評価サンプル点から探索半径2Rの範囲内に分布した他のサンプル点のそれぞれに対する高さ方向の座標を特定する。検出部114は、サンプル点ごとに特定した座標のうち最も小さい高さ方向の座標を与えるサンプル点を最低点として探索する。
【0020】
図2は、水平面上の評価領域における高さを示す空間データを例示する図である。サンプル点は、ほぼ正方形の領域内に水平方向(幅)および垂直方向(奥行)方向のそれぞれに対して一定間隔で異なる位置に配列されている。サンプル点ごとの高さは、濃淡で表されている。明るい部分ほど高いこと、即ち、高さ方向の座標値が大きいことを示す。暗い部分ほど低いこと、即ち、高さ方向の座標値が小さいことを示す。図2に例示される高さは、最小値が-10、最大値が10となるように正規化されている。
図2の右上方のP[i]は、処理対象とする評価サンプル点を示す。検出部114は、評価サンプル点P[i]を中心とする探索半径2Rの円内の領域に含まれる各サンプル点のうち、高さ方向の座標値が最も小さいサンプル点Pminを最低点として特定することができる。
【0021】
次に、検出部114は、評価サンプル点P[i]の高さ方向の座標から最低点Pminの高さ方向の座標を差し引き、差分値を算出する。
図3は、図2の評価サンプル点P[i]と最低点Pminを通過する断面を例示する断面図である。図3の中央部に評価サンプル点P[i]が示され、より左方に最低点Pminが示されている。図3において、h[i]は評価サンプル点P[i]の高さを示し、hminは最低点Pminでの高さを示す。検出部114は、評価サンプル点P[i]の高さh[i]から最低点Pminでの高さhminを差し引き、差分値Δh[i]を算出することができる。差分値Δh[i]は、最低点Pminの高さhminを基準とした、評価サンプル点P[i]の相対的な高さに相当する。
【0022】
検出部114は、個々の評価サンプル点P[i]ごとに探索半径2Rの円内の1個の最低点Pminを探索し、探索したPminに基づいて高さの差分値Δh[i]を算出する処理を繰り返す。その後、出力処理部116は、検出部114から、評価領域における差分値Δh[i]の分布を示す差分値データを取得することができる。
【0023】
図4は、差分値データの一例を示す図である。図4は、図2に示される空間データから生成された差分値データを例示する。評価サンプル点ごとの差分値は、濃淡で表されている。明るい部分ほど大きく、暗い部分ほど小さいことを示す。区間データに示される高さが高いサンプル点における差分値ほど大きくなる傾向がある。但し、評価サンプル点ごとの差分値は、最小値が0となる非負の実数となる。図4に例示される差分値は、最大値が10となるように正規化されている。
【0024】
検出部114は、差分値が所定の高さの許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する。検出部114は、例えば、許容範囲の幅に相当する閾値を上回る差分値に対応する評価サンプル点を対象サンプル点として検出する。検出部114は、評価サンプル点P[i]ごとに差分値Δh[i]を示す差分値データと評価領域において対象サンプル点を示す対象領域データの一方または両方を出力処理部116に出力してもよい。対象領域データは、評価領域における対象サンプル点の分布を示す。対象サンプル点の分布は、許容範囲を超える対象領域に相当する。
【0025】
図5は、対象サンプル点の分布例を示す図である。図5は、図4に示される差分値データに基づいて検出された対象サンプル点の分布を例示する。図5において、網掛けの部分が、対象サンプル点が分布する領域を示す。図5の例では、差分値が7よりも大きくなる評価サンプル点が対象サンプル点として定められている。
【0026】
評価領域における各サンプル点を中心とする基準半径Rの範囲内で高さの範囲が所定の許容範囲以内とする制約条件のもとで、対象サンプル点は、高さが許容範囲を超えることで制約条件を満たさないサンプル点に相当する。この制約条件は、評価サンプル点P[i]ごとに、その評価サンプル点P[i]を中心とする基準半径Rの円内で高さが許容範囲内に収まることを示す。本実施形態では、評価サンプル点P[i]を中心とする探索半径2Rの円内での最低点Pminの高さに基づいて、その評価サンプル点P[i]の高さを評価することを特徴とする。
【0027】
探索半径2Rの円の領域は、図6に例示されるように評価サンプル点P[i]を中心とする基準半径Rの円内の他のサンプル点をそれぞれ中心とする基準半径Rの円の領域をいずれも含む。評価サンプル点P[i]の高さと他のサンプル点を中心とする基準半径Rの円の領域における最低点Pminの高さとの差分値が許容範囲を超えるか否かにより、評価サンプル点P[i]が、そのサンプル点を中心とする円に基づくサンプル点別対象領域に属するか否かが定まる。
【0028】
他方、評価領域全体に対する対象領域は、サンプル点別対象領域を全て含む領域となる。そのため、評価サンプル点P[i]が、少なくとも1つのサンプル別対象領域に属すか否かにより、評価領域全体に対する対象領域に属すか否かが定まる。従って、検出部114は、個々の評価サンプル点P[i]を中心とする探索半径2Rの円の領域内の最低点を基準とする高さの差分値をもって、当該評価サンプル点P[i]が許容範囲の幅に収まるか否かを判定することができる。
【0029】
なお、評価領域は、予め検出部114に設定されてもよいし、操作部134から入力される操作信号に従って特定されてもよい。検出部114は、表示部132に評価領域の設定画面を表示させ、操作入力に基づく評価領域の設定を案内してもよい。設定画面は、平面上の高さの分布とその時点で設定される評価領域が図示されてもよい。但し、評価領域は、空間データを構成するサンプル点が配置される配置領域の周縁部を含まない。評価領域から、個々の評価サンプル点を中心とする探索半径2Rの円の領域をいずれも含め、はみ出さないように設定するためである。
【0030】
図1に戻り、出力処理部116は、主に各種のデータの出力に関する処理を行う。出力処理部116は、例えば、検出部114から入力される対象領域データに示される対象サンプル点の分布を図示する表示データを生成し、生成した表示データを表示部132に出力する。表示部132には、評価領域において対象サンプル点が分布する対象領域を表す画像が表示される。
出力処理部116は、検出部114から入力される差分値データに示されるサンプル点ごとの差分値を表す表示データを生成し、生成した表示データを表示部132に出力してもよい。表示部132には、評価領域における差分値の分布を表す画像が表示される。
【0031】
出力処理部116は、例えば、対象領域データを作業装置30(後述)に出力する。
作業装置30は、出力処理部116から入力される対象領域データに基づいて差分値が高さの許容範囲を超える対象領域を特定することができる。作業装置30は、特定した対象領域に対して、差分値の許容範囲からの超過量が減少するように対象領域における高さを調整するための動作を実行することができる。
【0032】
出力処理部116は、差分値データを作業装置30に出力してもよい。
作業装置30は、出力処理部116から入力される差分値データに示される評価サンプル点ごとの差分値が自装置に予め設定した高さの許容範囲の幅を超えるか否かを判定する。作業装置30は、差分値が許容範囲の幅を超える評価サンプル点を対象サンプル点として含む対象領域を特定することができる。また、作業装置30は、対象サンプル点ごとの差分値の許容範囲からの超過量の分布を特定することができる。この場合、作業装置30は、差分値から対象サンプル点を定める点で、検出部114の一部の処理を分担しているとみなすことができる。また、作業装置30は、対象サンプルごとに差分値から許容範囲の幅の差分を超過量として算出してもよいし、対象サンプルごとの超過量の分布を特定してもよい。
作業装置30は、特定した対象領域と超過量に基づいて、その対象領域に対して、超過量が減少するように対象領域における高さを調整するための動作を実行することができる。
【0033】
本実施形態は、評価装置10と、測定装置20と作業装置30の一方または両方を備える評価システムS1として実現されてもよい。図7は、本実施形態に係る評価システムS1の機能構成例を示す概略ブロック図である。図7の例では、評価システムS1は、評価装置10と、測定装置20と、作業装置30と、をいずれも含んで構成される。測定装置20と作業装置30は、それぞれ評価装置10と無線または有線で各種のデータを送受信可能に接続されている。
【0034】
測定装置20は、被観測体表面の空間分布を測定し、測定した空間分布を示すサンプル点ごとの座標を示す空間データを生成する。測定装置20は、生成した空間データを評価装置10に出力する。被観測体は、観測対象とする物体、構造物、地面、床などのいずれであってもよい。測定装置20は、光検出測距装置(LIDAR:Light Detection and Ranging)、ステレオカメラ、など表面の形状もしくは表面の奥行を測定可能な機器であればよい。
【0035】
作業装置30には、評価装置10から対象領域データと差分値データの一方または両方が入力される。作業装置30は、対象領域データと差分値データの一方または両方に基づいて、評価領域において対象サンプルが分布する領域を対象領域として特定する。作業装置30は、対象領域において、差分値の許容範囲からの超過量が減少するように被観測体表面の形状を調整する。作業装置30は、例えば、スクリード(均し機)、切削装置、舗装装置、などが該当する。
【0036】
図7は、評価システムS1において、評価装置10、測定装置20および作業装置30が、それぞれ別個の機器である場合を例示するが、これには限られない。評価装置10は、測定装置20と一体化し、単一の評価装置10として構成されてもよい。また、評価装置10は、作業装置30と一体化し単一の評価装置10として構成されてもよい。
【0037】
なお、評価領域全体にわたり高さが所定の許容範囲Hを超える領域を対象領域として一律に定める場合、その対象領域は、本実施形態により定まる対象領域よりも大きくなりがちである。図8は、評価領域の断面を例示する断面図である。図8の例では、Pminは、評価領域全体において表面の高さが最低となる最低点を示す。切削範囲は、最低点Pminにおける高さを基準とする相対的な高さ、最低点Pminにおける高さとの高さの差分値が許容範囲Hを超える対象領域に相当する。切削範囲において、切削により高さの差分値が許容範囲H以内とするように高さが調整される。図8の例では、切削範囲は概ね右半分の領域に相当する。
【0038】
次に、比較例として基準半径Rの円の領域内で高さの差分値が許容範囲H以内に収まれることを制約条件として課す場合を仮定する。この場合、より離れた位置同士では高低差が許容範囲Hを超えることが許容される。図9に例示される基準半径Rの円の領域に注目すると、その領域における最低点Pminの高さとの高さの差分値が許容範囲Hを超える対象領域が切削範囲として定まる。各評価サンプル点P[i]に対して、その評価サンプル点を中心とする基準半径Rの円の領域において最低点Pminを定め、評価サンプル点P[i]における高さh[i]と最低点Pminにおける高さhminとの差分値Δh[i]に基づいて評価サンプル点別対象領域を定める処理を繰り返し、評価サンプル点別対象領域を全て含む領域を最終的な対象領域を定めることも考えられる。図10の例では、図8に例示される表面に対し、個々の評価サンプル点を中心とする基準半径Rの円の領域R~R等のそれぞれに対して定まる評価サンプル点別対象領域を網羅する対象領域が切削範囲として定まる。この切削範囲は、図10の中央部に限られ、図8に例示される切削範囲よりも小さくなる。
【0039】
このように、比較例に係る評価サンプル点ごとの処理は、その評価サンプル点を中心とする基準半径Rの円内で最低点Pminを探索する処理と、評価サンプル点と最低点Pminとの高低差が許容範囲Hを超える領域を評価サンプル点別対象領域として定める処理を含む。そのため、演算量が多くなる。これに対し、本実施形態では、評価サンプル点ごとの処理は、評価サンプル点を中心とする探索半径2Rの円内の最低点Pminを探索し、評価サンプル点と最低点Pminとの高低差を定めるまでの過程を含み、評価サンプル点と最低点Pminとの高低差Δh[i]が許容範囲Hを超える領域を対象領域として定める処理までは含まない。そのため、本実施形態によれば、比較例よりも演算量の増加を抑制することができる。
【0040】
例えば、評価領域における評価サンプル点数が10000点、基準半径Rの円内の評価サンプル点数が100点、探索半径2Rの円内の評価サンプル点数が400点である場合を仮定して、演算量を比較する。
比較例は、評価サンプル点ごとに、その評価サンプル点を中心とする基準半径Rの円内の他の評価サンプル点から最低点Pmaxを探索し、円内の各評価サンプル点と最低点Pmaxとの高さの差分値の演算を伴う。即ち、評価サンプル点ごとの演算処理は、100×99/2回となる。従って、比較例では、評価領域全体として100×99/2×10000(=49500000)回の演算処理を要する。
【0041】
本実施形態では、評価サンプル点ごとに、その評価サンプル点を中心とする探索半径2Rの円内の他の評価サンプル点から最低点Pminを探索し、その評価サンプル点と最低点Pminとの高さの差分値の演算を行う。即ち、評価サンプル点ごとの演算処理は、399回となる。従って、本実施形態では、評価領域全体として399×10000(=3990000)回の演算処理を要する。このように、本実施形態によれば、評価サンプル点ごとに探索された最低点Pminとの高低差を評価対象とすることで、比較例よりも演算量を低減することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る対象領域判定処理の例について説明する。図11は、本実施形態に係る対象領域判定処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS102)データ取得部112は、被観察体の表面の空間分布を示す空間データを測定装置20から取得する。
(ステップS104)検出部114は、操作部134からの操作信号に基づいて評価対象とする評価領域を設定する。
【0043】
(ステップS106)検出部114は、評価領域に配置された未処理の評価サンプル点のいずれか1個を評価対象として選択する。
(ステップS108)検出部114は、選択した評価サンプル点から探索半径2Rの範囲において高さが最低となる最低点Pminを探索する。
(ステップS110)検出部114は、評価サンプル点P[i]における高さh[i]から最低点Pminにおける高さhminを差し引いて得られる差分値Δh[i](=h[i]-hmin)を算出する。
(ステップS112)検出部114は、評価領域において未処理の評価サンプルの有無を判定する。未処理の評価サンプルがあると判定されるとき(ステップS112 YES)、ステップS106の処理に戻る。未処理の評価サンプルがないと判定されるとき(ステップS112 NO)、ステップS114の処理に進む。
【0044】
(ステップS114)検出部114は、差分値Δh[i]が所定の許容範囲の幅Hを超える評価サンプル点P[i]を占める領域を検出領域として特定する。
(ステップS116)検出部114は、特定した検出領域を示す検出領域データを作業装置30に出力する。作業装置30は、検出部114から入力される検出領域に対して検出領域の高さの超過量Δh[i]が減少するように作業を実行する。その後、図11の処理を終了する。
【0045】
上記の説明では、被観察体の表面上のサンプル点に対する測定対象として、平面に対する法線方向座標が鉛直方向(高さ方向とは逆方向)の座標である場合を主としたが、これには限られない。平面は水平面に交差する方向に平行であってもよい。水平面に交差する方向には、例えば、水平面に対して垂直な方向、水平面とその法線方向のいずれにも交差する傾斜方向が該当する。
また、空間データに係るサンプル点は、平面上において、必ずしも等間隔に分布していなくてもよい。個々のサンプル点が評価領域全体に分散していれば、隣接するサンプル点との間隔がランダムであってもよい。
【0046】
本実施形態は、基準半径Rは典型的なサンプル点間隔よりも大きい実数であれば任意に設定されてもよい。許容範囲Hは、0よりも有意に大きく測定装置20により測定可能な精度よりも大きい実数であれば任意に設定されてもよい。基準半径Rと許容範囲Hなどのパラメータは、被観測体、被観測体に対する作業、その他の応用事例(アプリケーション)により異なりうる。
【0047】
データ取得部112は、取得した空間データに示される被観測体の画像に対して、公知の画像認識処理を施して被観測体の種類を判定してもよい。データ取得部112は、パラメータ設定データを参照し、判定した被観測体の種類に対応する基準半径Rと許容範囲Hの一方または両方の検出パラメータを特定し、特定した検出パラメータを検出部114に設定してもよい。データ取得部112には、パラメータ設定データを、被観測体の種類ごとに基準半径Rと許容範囲Hの一方または両方を示す情報を含めて設定しておく。これにより、個々の被観測体に適した検出パラメータを用いて対象サンプル点を含む対象領域を検出することができる。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態に係る評価システムS1は、サンプル点ごとに平面の法線方向の座標である法線方向座標を示す空間データを取得するデータ取得部112と、評価領域内に分布したサンプル点である評価サンプル点ごとに当該評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から法線方向座標(例えば、高さ方向の座標)の最小値を与える最小点(例えば、最低点)を探索し、当該評価サンプル点に対応する法線方向座標から最小値の差分値が法線方向座標の許容範囲を超える評価サンプル点を対象サンプル点として検出する検出部114と、を備える。探索半径は、許容範囲の基準を与える基準半径の2倍とする。
【0049】
また、評価システムS1において、上記の平面は水平面であり、法線方向座標は垂直方向の高さを示すものであってもよい。
評価システムS1は、評価領域における対象サンプル点の分布を示す対象領域データを出力する出力処理部116を備えてもよい。
評価システムS1は、被観測体表面の空間分布を示す空間データを測定する測定装置20と、対象サンプル点を含む対象領域において、差分値の許容範囲からの超過量を減少させるように記被観測体表面の形状を調整する作業装置30の少なくとも一方を備えてもよい。
本実施形態は、コンピュータに少なくともデータ取得部112と検出部114を備える評価装置10として機能させるためのプログラムとして実現されてもよい。
【0050】
この構成によれば、評価対象として注目する評価サンプル点から探索半径の範囲内に分布した他のサンプル点から法線方向座標の最小値を与える最小点が探索され、評価サンプル点と探索された最小点との法線方向座標の差分値が算出され、算出された差分値が許容範囲を超えるか否かにより対象サンプル点とするか否かが定まる。注目する評価サンプル点を中心とする探索半径の範囲内の領域は、注目する評価サンプル点を中心とする基準半径の範囲内に分布した他のサンプル点を中心とする基準半径の範囲内の領域を全て含む。注目する評価サンプル点が少なくとも1個の他のサンプル点に基づいて定まる対象領域に含まれているか否かにより、評価領域全体として定まる対象領域に含まれているか否かが定まる。注目する評価サンプル点ごとに、探索半径の範囲内の全てのサンプル点について許容範囲を超えるか否かを判定せずに、その注目する評価サンプル点と探索された最小点との法線方向座標の差分値に基づいて対象サンプル点とするか否かが定まる。よって、評価領域全体における対象サンプル点の判定における演算量を格段に低減することができる。
【0051】
以上、本実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述の各構成に限られるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の各構成は、任意に組み合わせることができ、その一部が省略されてもよい。
2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」がある。本実施形態に係る評価装置、評価システム、および、評価方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば、「11.住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献しうる。
【符号の説明】
【0052】
S1…評価システム、10…評価装置、20…測定装置、30…作業装置、110…演算処理部、112…データ取得部、114…検出部、116…出力処理部、120…記憶部、132…表示部、134…操作部、136…入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11