(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179546
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】二酸化炭素の放出方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/50 20170101AFI20241219BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241219BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241219BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20241219BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C01B32/50
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
B01D53/96
B01D53/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098477
(22)【出願日】2023-06-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050/二酸化炭素のリサイクル・資源化のための新しい触媒プロセス開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】山添 誠司
(72)【発明者】
【氏名】吉川 聡一
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002BA02
4D002CA06
4D002DA31
4D002EA08
4D002GA01
4D002GB01
4D002GB20
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB01
4D020DA03
4D020DB01
4D020DB20
4G146JA02
4G146JB04
4G146JC01
4G146JC02
4G146JC06
4G146JC28
(57)【要約】
【課題】アミン化合物と二酸化炭素との反応物であるカルバミン酸誘導体を用いる二酸化炭素の放出方法であって、カルバミン酸誘導体含有液として、アミン化合物と二酸化炭素との反応物を含有する反応液を用いない、新規の二酸化炭素の放出方法の提供。
【解決手段】イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)からなる群より選択される1種又は2種以上と、二酸化炭素と、の反応物を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される1種の溶媒中又は2種以上の混合溶媒中で分散させることで、分散液を調製する工程と、前記分散液を加熱処理するか、又は前記分散液を加熱せずに前記分散液中に不活性ガスを供給することにより、前記反応物から前記二酸化炭素を放出させる工程と、を有する、二酸化炭素の放出方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の放出方法であって、
前記二酸化炭素の放出方法は、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)からなる群より選択される1種又は2種以上と、二酸化炭素と、の反応物を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される1種の溶媒中又は2種以上の混合溶媒中で分散させることで、分散液を調製する工程と、前記分散液を加熱処理するか、又は前記分散液を加熱せずに前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給することにより、前記反応物から前記二酸化炭素を放出させる工程と、を有する、二酸化炭素の放出方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素を放出させる工程において、前記分散液中に窒素ガスを供給しながら、前記分散液を加熱処理する、請求項1に記載の二酸化炭素の放出方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素を放出させる工程において、前記分散液に超音波振動を加えながら、若しくは前記分散液を撹拌しながら、前記分散液を加熱処理するか、又は、前記分散液を加熱処理してから、前記分散液に超音波振動を加えるか、若しくは前記分散液を撹拌する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の放出方法。
【請求項4】
前記二酸化炭素を放出させる工程において、前記不活性ガス又は空気を供給せずに、前記分散液を加熱処理する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の放出方法。
【請求項5】
前記分散液を加熱処理するときの加熱温度が60℃以下である、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の放出方法。
【請求項6】
前記不活性ガス又は空気を、20~110mL/minの流量で、前記分散液中に供給する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の放出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の放出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素ガスは、温室効果ガスであり、大気中での濃度が上昇することによって、地球温暖化の原因となる。地球上ではこれまでに、文明の進歩によって化石燃料の大量消費が続き、二酸化炭素の排出量が増大し続けてきた。これに対して、植物は光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。しかし、世界的規模で森林伐採が進み、植物が大量に失われてきており、二酸化炭素の消費量が減少し続けてきている。その結果、大気中の二酸化炭素の濃度が上昇してきており、温暖化が原因と考えられる様々な弊害が、世界的規模で認められる。このような背景から、大気中の二酸化炭素を吸収して固定化する技術が、種々検討されている。
【0003】
例えば、アミノ基を有する特定範囲のアミン化合物を溶媒中に溶解させ、得られたアミン化合物溶液に、二酸化炭素ガスを吸収させ、前記アミン化合物を、そのアミノ基において二酸化炭素と反応させて、アミノ基(-NH2)がカルボキシアミノ基(-NH-C(=O)-OH)となったカルバミン酸誘導体を生成させることで、二酸化炭素を吸収して固定化する技術が開示されている(特許文献1参照)。前記アミン化合物溶液中でカルバミン酸誘導体が生成した、カルバミン酸誘導体含有液は、カルバミン酸誘導体が析出している分散液と、カルバミン酸誘導体が析出していない溶液と、のいずれにもなり得るのであり、いずれとなるかは、カルバミン酸誘導体と溶媒の組み合わせに依存する。
【0004】
前記特許文献1には、さらに、前記カルバミン酸誘導体含有液を加熱処理することで、前記カルバミン酸誘導体から二酸化炭素ガスを放出させ、前記アミン化合物を再生できること、再生させた前記アミン化合物を再度アミン化合物溶液として、二酸化炭素ガスを吸収させ、放出させることができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されている二酸化炭素の放出方法は、カルバミン酸誘導体含有液をそのまま加熱処理することで、二酸化炭素の吸収と放出を連続して行うことができるため、工程が簡略化できる点で有利である。しかし、この二酸化炭素の放出方法では、加熱処理の対象が、カルバミン酸誘導体含有液、すなわち、アミン化合物と二酸化炭素との反応物を含有する反応液であり、二酸化炭素の放出剤として、その組成が限定されており、二酸化炭素をより効率的に放出させるための検討が不十分であった。二酸化炭素の放出剤の構成がこのように限定されていなければ、例えば、二酸化炭素の放出は、加熱処理温度の低温化等によるさらなる効率化の可能性がある。そこで、新規の二酸化炭素の放出方法の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、アミン化合物と二酸化炭素との反応物であるカルバミン酸誘導体を用いる二酸化炭素の放出方法であって、カルバミン酸誘導体含有液として、アミン化合物と二酸化炭素との反応物を含有する反応液を用いない、新規の二酸化炭素の放出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を採用する。
[1] 二酸化炭素の放出方法であって、前記二酸化炭素の放出方法は、イソホロンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)からなる群より選択される1種又は2種以上と、二酸化炭素と、の反応物を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される1種の溶媒中又は2種以上の混合溶媒中で分散させることで、分散液を調製する工程と、前記分散液を加熱処理するか、又は前記分散液を加熱せずに前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給することにより、前記反応物から前記二酸化炭素を放出させる工程と、を有する、二酸化炭素の放出方法。
[2] 前記二酸化炭素を放出させる工程において、前記分散液中に窒素ガスを供給しながら、前記分散液を加熱処理する、[1]に記載の二酸化炭素の放出方法。
[3] 前記二酸化炭素を放出させる工程において、前記分散液に超音波振動を加えながら、若しくは前記分散液を撹拌しながら、前記分散液を加熱処理するか、又は、前記分散液を加熱処理してから、前記分散液に超音波振動を加えるか、若しくは前記分散液を撹拌する、[1]又は[2]に記載の二酸化炭素の放出方法。
[4] 前記二酸化炭素を放出させる工程において、前記不活性ガス又は空気を供給せずに、前記分散液を加熱処理する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の二酸化炭素の放出方法。
【0009】
[5] 前記分散液を加熱処理するときの加熱温度が60℃以下である、請求項[1]~[4]のいずれか一項に記載の二酸化炭素の放出方法。
[6] 前記不活性ガス又は空気を、20~110mL/minの流量で、前記分散液中に供給する、[1]~[3]及び[5]のいずれか一項に記載の二酸化炭素の放出方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アミン化合物と二酸化炭素との反応物であるカルバミン酸誘導体を用いる二酸化炭素の放出方法であって、カルバミン酸誘導体含有液として、アミン化合物と二酸化炭素との反応物を含有する反応液を用いない、新規の二酸化炭素の放出方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】製造例1で得られたカルバミン酸誘導体の
13C-NMRでの分析結果を示すスペクトルデータである。
【
図2】実施例1~3及び参考例1~5の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図3】実施例1で再生したイソホロンジアミンの
13C-NMRでの分析結果を示すスペクトルデータである。
【
図4】実施例4~8の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例9~14の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図6】実施例15~17の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図7】実施例19~21の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図8】実施例22~26の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図9】実施例27及び29の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図10】製造例2で得られたカルバミン酸誘導体のFT-IRでの分析結果を示すスペクトルデータであり、(a)は4000nm以下の波長域でのスペクトルデータであり、(b)は1500~1700nmの波長域での拡大したスペクトルデータである。
【
図11】実施例33~34の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【
図12】製造例3で得られたカルバミン酸誘導体のFT-IRでの分析結果を示すスペクトルデータであり、(a)は4000nm以下の波長域でのスペクトルデータであり、(b)は1500~1700nmの波長域での拡大したスペクトルデータである。
【
図13】実施例35~36の、二酸化炭素の放出時における、排出ガス中の二酸化炭素の濃度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
◇二酸化炭素の放出方法
本発明の一実施形態に係る二酸化炭素の放出方法は、イソホロンジアミン(別名:3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-アミン、本明細書においては「IPDA」と称することがある)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(本明細書においては「MBCHA」と称することがある)及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(本明細書においては「MBMCHA」と称することがある)からなる群より選択される1種又は2種以上が含まれる化合物と、二酸化炭素と、の反応物(本明細書においては「カルバミン酸誘導体」と称することがある)を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群より選択される1種の溶媒中又は2種以上の混合溶媒中で分散させることで、分散液を調製する工程(本明細書においては「分散液調製工程」と称することがある)と、前記分散液を加熱処理するか、又は前記分散液を加熱せずに前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給することにより、前記反応物から前記二酸化炭素を放出させる工程(本明細書においては「二酸化炭素放出工程」と称することがある)と、を有する。
【0013】
本実施形態の二酸化炭素の放出方法は、分子中にアミノ基を有するアミン化合物として特定範囲のものを用いて得られた、特定範囲の、常温下で固体のカルバミン酸誘導体を用い、前記カルバミン酸誘導体を分散させるための溶媒(分散媒)として特定範囲のものを用いる点で、従来の二酸化炭素の放出方法と相違する。
本実施形態の二酸化炭素の放出方法によれば、二酸化炭素の放出剤であるカルバミン酸誘導体含有液として、アミン化合物と二酸化炭素との反応物を含有する反応液を用いずに、前記分散液調製工程によって得られた前記分散液を用いることで、従来とは異なる条件で二酸化炭素を放出可能であり、従来よりも効率的に二酸化炭素を放出させることも可能である。例えば、カルバミン酸誘導体が溶媒中で分散されている分散液を加熱処理するときに、加熱処理の温度を従来よりも低くするか、又は加熱処理を行わなくても、十分に二酸化炭素を放出させることが可能な場合がある。
【0014】
本実施形態の二酸化炭素の放出方法は、前記分散液の加熱処理の有無によって、二つの方法に分類できる。
すなわち、本発明の第1実施形態の二酸化炭素の放出方法は、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(MBMCHA)からなる群より選択される1種又は2種以上と、二酸化炭素と、の反応物(カルバミン酸誘導体)を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される1種の溶媒中又は2種以上の混合溶媒中で分散させることで、分散液を調製する工程(分散液調製工程)と、前記分散液を加熱処理することにより、前記反応物から前記二酸化炭素を放出させる工程(二酸化炭素放出工程)と、を有する。
本発明の第2実施形態の二酸化炭素の放出方法は、イソホロンジアミン(IPDA)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(MBMCHA)からなる群より選択される1種又は2種以上と、二酸化炭素と、の反応物(カルバミン酸誘導体)を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される1種の溶媒中又は2種以上の混合溶媒中で分散させることで、分散液を調製する工程(分散液調製工程)と、前記分散液を加熱せずに前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給することにより、前記反応物から前記二酸化炭素を放出させる工程(二酸化炭素放出工程)と、を有する。
【0015】
以下、まず、第1実施形態の二酸化炭素の放出方法について説明する。
【0016】
◎第1実施形態
<<分散液調製工程>>
<カルバミン酸誘導体>
第1実施形態の前記分散液調製工程で用いる前記カルバミン酸誘導体としては、イソホロンジアミン(IPDA)と二酸化炭素との反応物、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)と二酸化炭素との反応物、及び4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(MBMCHA)と二酸化炭素との反応物が挙げられる。以下に、IPDA、MBCHA及びMBMCHAの構造式を示す。
【0017】
【0018】
前記カルバミン酸誘導体のうち、IPDAと二酸化炭素との反応物としては、IPDA中のシクロへキシル基に直接結合しているアミノ基(-NH2)のみがカルボキシアミノ基(-NH-COOH)となった化合物;IPDA中のシクロへキシル基にメチレン基(-CH2-)を介して結合しているアミノ基のみがカルボキシアミノ基となった化合物;IPDA中のシクロへキシル基に直接結合しているアミノ基と、シクロへキシル基にメチレン基を介して結合しているアミノ基と、の両方がカルボキシアミノ基となった化合物が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、IPDAと二酸化炭素との反応物は、下記式(1)で表される、IPDA中のシクロへキシル基に直接結合しているアミノ基のみがカルボキシアミノ基となった化合物であることが好ましい。このような前記反応物は、より容易に調製でき、二酸化炭素をより容易に放出させることができる。
【0020】
【0021】
前記カルバミン酸誘導体のうち、MBCHAと二酸化炭素との反応物としては、MBCHA中のシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基のうち、1個のみがカルボキシアミノ基となった化合物;MBCHA中のシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基がともにカルボキシアミノ基となった化合物が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、MBCHAと二酸化炭素との反応物は、下記式(2)で表される、MBCHA中のシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基のうち、1個のみがカルボキシアミノ基となった化合物であることが好ましい。このような前記反応物は、より容易に調製でき、二酸化炭素をより容易に放出させることができる。
【0023】
【0024】
前記カルバミン酸誘導体のうち、MBMCHAと二酸化炭素との反応物としては、MBMCHA中のシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基のうち、1個のみがカルボキシアミノ基となった化合物;MBMCHA中のシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基がともにカルボキシアミノ基となった化合物が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、MBMCHAと二酸化炭素との反応物は、下記式(3)で表される、MBMCHA中のシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基のうち、1個のみがカルボキシアミノ基となった化合物であることが好ましい。このような前記反応物は、より容易に調製でき、二酸化炭素をより容易に放出させることができる。
【0026】
【0027】
第1実施形態の分散液調製工程で用いるカルバミン酸誘導体(前記分散液中のカルバミン酸誘導体)においては、式「-NHCOOH」で表される基が、式「-NHCOO-」で表される基、及び式「-NH2
+COO-」で表される基のいずれかとなっていてもよい。
【0028】
第1実施形態の分散液調製工程で用いるカルバミン酸誘導体は、1個のシクロへキシル基に直接結合しているアミノ基を1個のみ有するアミン化合物に由来する、という点で共通点を有する。
【0029】
第1実施形態の分散液調製工程で用いるカルバミン酸誘導体(前記分散液中のカルバミン酸誘導体)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0030】
前記カルバミン酸誘導体は、例えば、対応するアミン化合物と二酸化炭素を反応させることで製造できる。
より具体的には、アミン化合物そのものに二酸化炭素ガスを供給するか、又はこの反応に適した溶媒、例えば、前記アミン化合物を溶解可能な溶媒を選択し、調製したアミン化合物の溶液中に、二酸化炭素ガスを供給することで、前記カルバミン酸誘導体を生成させることができる。二酸化炭素ガスは、単独で供給してもよいし、他のガスとの混合ガスとして供給してもよく、供給する二酸化炭素ガスの濃度は、例えば、0.00001~100体積%であってもよい。生成したカルバミン酸誘導体は、反応液中で析出している場合には、ろ過によって取り出せばよく、反応液中で溶解している場合には、結晶化させてから同様にろ過によって取り出せばよい。例えば、溶媒を用いずに、カルバミン酸誘導体が100%の生成率で生成した場合には、生成物自体をそのまま次の工程で用いてもよい。
アミン化合物と二酸化炭素との反応後は、得られた反応液に対して、必要に応じて公知の手法によって後処理を行ってもよい。
取り出したカルバミン酸誘導体は、必要に応じて、公知の手法で精製してもよい。
カルバミン酸誘導体は、例えば、国際公開第2022/085789号に記載の方法で、製造できる。
【0031】
カルバミン酸誘導体の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)、元素分析法等の公知の手法によって、確認できる。
【0032】
<溶媒>
第1実施形態の分散液調製工程においては、前記カルバミン酸誘導体を、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される1種の溶媒中で分散させるか、又はメタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される2種以上の混合溶媒中で分散させる。
分散液調製工程で用いる前記溶媒(分散媒)が2種以上である場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0033】
<分散液>
第1実施形態で調製する前記分散液において、前記カルバミン酸誘導体の濃度は、0.01~5mol/Lであることが好ましく、例えば、0.01~2mol/L、0.01~0.8mol/L、及び0.01~0.3mol/Lのいずれであってもよいし、0.08~5mol/L、0.3~5mol/L、及び0.8~5mol/Lのいずれであってもよいし、0.08~2mol/Lであってもよい。前記濃度が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の放出量がより多くなる。前記濃度が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる。
【0034】
第1実施形態の分散液調製工程においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記カルバミン酸誘導体以外に、さらに、前記溶媒に該当しない他の成分を、分散又は溶解させてもよいし、分散又は溶解させなくてもよい。すなわち、前記分散液調製工程で調製した前記分散液は、前記カルバミン酸誘導体と、前記溶媒と、これら(前記カルバミン酸誘導体及び前記溶媒)以外の他の成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
【0035】
前記他の成分は、目的に応じ任意に選択でき、特に限定されない。
前記他の成分の一例としては、前記溶媒(メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミド)以外の他の溶媒が挙げられる。
【0036】
第1実施形態の分散液調製工程で分散又は溶解させる(換言すると、第1実施形態の分散液調製工程で調製した前記分散液が含有している、以下同様)前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0037】
第1実施形態での前記分散液において、前記溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記他の成分の含有量の割合([分散液の他の成分の含有量(質量部)]/[分散液の前記溶媒以外の成分の総含有量(質量部)]×100)は、前記他の成分の種類に応じて、適宜調節できるが、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「溶媒」との記載は、メタノール、エタノール及びN,N-ジメチルホルムアミドを意味し、前記他の溶媒を意味しない。前記他の溶媒は、「溶媒以外の成分」に該当する。前記割合が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の放出量がより多くなる。
一方、前記割合は、0質量%以上である。
【0038】
換言すると、第1実施形態での前記分散液において、前記溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記カルバミン酸誘導体の含有量の割合([分散液のカルバミン酸誘導体の含有量(質量部)]/[分散液の前記溶媒以外の成分の総含有量(質量部)]×100)は、前記他の成分の種類に応じて、適宜調節できるが、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の放出量がより多くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
【0039】
第1実施形態での前記分散液において、前記カルバミン酸誘導体又は前記他の成分の含有量の割合を、上述の数値範囲内に調節するためには、上述の数値範囲内となるように、前記分散液調製工程において、前記カルバミン酸誘導体又は前記他の成分の配合量を調節すればよい。
例えば、第1実施形態の分散液調製工程において、前記カルバミン酸誘導体を前記溶媒中で分散させるときに、溶媒以外の成分の総配合量に対する、前記カルバミン酸誘導体の配合量の割合([分散液調製工程における、カルバミン酸誘導体の配合量(質量部)]/[分散液調製工程における、溶媒以外の成分の総配合量(質量部)]×100)は、前記他の成分の種類に応じて、適宜調節できるが、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、97質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0040】
<<二酸化炭素放出工程>>
<加熱処理条件>
[加熱温度]
第1実施形態の前記分散液調製工程の後の、前記二酸化炭素放出工程において、前記分散液を加熱処理するときの加熱温度は、前記カルバミン酸誘導体の沸点未満であることが好ましく、前記溶媒の沸点未満であることが好ましい。前記加熱処理時の温度がこのような範囲であることで、カルバミン酸誘導体又は溶媒の散逸を抑制できる。
【0041】
第1実施形態の前記二酸化炭素放出工程において、前記分散液を加熱処理するときの加熱温度は、上述の条件(前記カルバミン酸誘導体の沸点未満、前記溶媒の沸点未満)を満たした上で、30℃以上であることが好ましく、例えば、35℃以上、及び45℃以上のいずれかであってもよい。前記加熱温度が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の放出量がより多くなり、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる。
【0042】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液を加熱処理するときの加熱温度は、上述の条件(前記カルバミン酸誘導体の沸点未満、前記溶媒の沸点未満)を満たした上で、100℃以下、80℃以下、及び70℃のいずれかであってもよいが、60℃以下であることが好ましく、例えば、55℃以下、及び45℃以下のいずれかであってもよい。前記加熱温度が前記上限値以下であることで、二酸化炭素の放出時における副反応物の生成量がより少なくなる。
【0043】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液を加熱処理するときの加熱温度は、上述のいずれかの下限値と、上述のいずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される数値範囲内に、適宜調節できる。例えば、前記加熱温度は、30~100℃、30~80℃、及び30~70℃のいずれかであってもよいが、30~60℃であることが好ましく、30~55℃、及び30~45℃のいずれかであってもよいし、35~60℃、及び45~60℃のいずれかであってもよいし、35~55℃であってもよい。ただし、これらは前記加熱温度の一例である。
【0044】
[不活性ガス、空気]
第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給しながら、前記分散液を加熱処理することが好ましい。このようにすることで、二酸化炭素の放出量がより多くなり、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる。
前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給するときには、例えば、前記分散液中に不活性ガス又は空気を流入させて、バブリングすることが好ましい。
【0045】
前記不活性ガスとしては、例えば、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらの中でも、窒素ガスは、安価であるため特に好適である。すなわち、第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、前記分散液中に窒素ガスを供給しながら、前記分散液を加熱処理することが好ましい。
【0046】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給する場合には、不活性ガス又は空気の流量は、前記分散液中の前記カルバミン酸誘導体の量1molあたり、20~110L/minであることが好ましく、例えば、20~80L/min、及び20~60L/minのいずれかであってもよいし、40~110L/min、及び65~110L/minのいずれかであってもよいし、40~80L/minであってもよい。不活性ガス又は空気の流量が前記下限値以上であることで、二酸化炭素の放出量がより多くなり、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる。不活性ガス又は空気の流量が前記上限値以下であることで、溶媒の気化及び前記カルバミン酸誘導体の気化がより抑制される。
【0047】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、不活性ガス又は空気を20~110mL/minの流量で、前記分散液中に供給しながら、前記分散液を加熱処理することが好ましく、窒素ガスを20~110mL/minの流量で、前記分散液中に供給しながら、前記分散液を加熱処理してもよい。このようにすることで、二酸化炭素の放出量がより多くなり、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる効果と、溶媒の気化及び前記カルバミン酸誘導体の気化がより抑制される効果が、顕著となる。
【0048】
[超音波振動]
第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、前記分散液に超音波振動を加えながら、前記分散液を加熱処理するか、又は、前記分散液を加熱処理してから、前記分散液に超音波振動を加えることが好ましい。このようにすることで、上述のように、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給しながら、前記分散液を加熱処理した場合と同様の効果が得られる。すなわち、二酸化炭素の放出量がより多くなり、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる。
【0049】
前記分散液を加熱処理してから、前記分散液に超音波振動を加える場合には、前記分散液の加熱処理によって、前記分散液の温度が常温よりも高い状態にあるときに、前記分散液に超音波振動を加えることが好ましい。より具体的には、前記分散液の加熱処理の終了後、直ちに、前記分散液に超音波振動を加えることが好ましく、前記分散液の加熱処理の終了後、5分以内に、前記分散液に超音波振動を加えることがより好ましい。このようにすることで、加熱処理の効果を損なうことなく、超音波振動を加えたことにより得られる効果が、より高くなる。
【0050】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液に超音波振動を加えるときの振動数は、28~45kHzであることが好ましい。このようにすることで、超音波振動を加えたことにより得られる効果が、より高くなる。
【0051】
[撹拌]
第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、前記分散液を撹拌しながら加熱処理するか、又は、前記分散液を加熱処理してから撹拌することも好ましい。このようにすることで、上述のように、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給しながら、前記分散液を加熱処理した場合と同様の効果が得られる。すなわち、二酸化炭素の放出量がより多くなり、二酸化炭素の放出の終了までに要する時間がより短くなる。
【0052】
前記分散液を加熱処理してから撹拌する場合には、前記分散液の加熱処理によって、前記分散液の温度が常温よりも高い状態にあるときに、前記分散液を撹拌することが好ましい。より具体的には、前記分散液の加熱処理の終了後、直ちに、前記分散液を撹拌することが好ましく、前記分散液の加熱処理の終了後、5分以内に、前記分散液を撹拌することがより好ましい。このようにすることで、加熱処理の効果を損なうことなく、分散液を撹拌したことにより得られる効果が、より高くなる。
【0053】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液の撹拌は、例えば、撹拌翼又は撹拌子を用いる公知の方法で、行うことができる。撹拌翼又は撹拌子を用いる場合、その回転数は、例えば、前記分散液の使用量に応じて適宜調節でき、特に限定されない。例えば、前記分散液の使用量が1L以下等の少量である場合には、撹拌翼又は撹拌子の回転数は、50~1000rpmであることが好ましい。このようにすることで、撹拌したことにより得られる効果が、より高くなる。
【0054】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液の撹拌は、例えば、装置を用いずに、分散液を手で振り混ぜることで、行ってもよい。
【0055】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程の時間は、特に限定されず、例えば、他の条件に応じて、二酸化炭素の放出量が最大となるように、適宜調節できる。前記二酸化炭素放出工程の時間は、例えば、1~180分、及び1~120分のいずれかであってもよい。
【0056】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液に超音波振動を加える操作、又は前記分散液の撹拌は、前記分散液中への不活性ガス又は空気の供給と並行して行ってもよいし、不活性ガス又は空気の供給を行わずに行ってもよい。前記分散液中への不活性ガス又は空気の供給を行わなくても、前記分散液に超音波振動を加えるか、又は前記分散液を撹拌することによって、カルバミン酸誘導体からの前記二酸化炭素の放出を、十分に促進できる。
すなわち、第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、前記分散液に超音波振動を加えながら、若しくは前記分散液を撹拌しながら、前記分散液を加熱処理するか、又は、前記分散液を加熱処理してから、前記分散液に超音波振動を加えるか、若しくは前記分散液を撹拌することが好ましく、その場合には、前記分散液に超音波振動を加える操作、又は前記分散液の撹拌は、前記分散液中への不活性ガス又は空気の供給と並行して行ってもよいし、不活性ガス又は空気の供給を行わずに行ってもよい。
【0057】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程においては、カルバミン酸誘導体中のカルボキシアミノ基がアミノ基に変化し、二酸化炭素が放出される。そして、カルバミン酸誘導体中にカルボキシアミノ基が残存しなくなることでアミン化合物が再生する。より具体的には、IPDAと二酸化炭素との反応物からはIPDAが再生し、MBCHAと二酸化炭素との反応物からはMBCHAが再生し、MBMCHAと二酸化炭素との反応物からはMBMCHAが再生する。
カルバミン酸誘導体中の少なくとも1個のカルボキシアミノ基がアミノ基に変化した化合物が、前記溶媒に溶解可能である場合には、前記分散液が溶液に変化することで、視覚的に二酸化炭素の放出を確認できる。IPDA、MBCHA及びMBMCHAは、通常、前記溶媒に溶解可能であるため、カルバミン酸誘導体からIPDA、MBCHA又はMBMCHAが再生した場合には、前記分散液は溶液に変化する。
【0058】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素が放出されたことは、例えば、二酸化炭素を放出後の前記分散液(例えば、前記分散液が変化した前記溶液)中の成分を、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)、元素分析法等の公知の手法によって分析することにより、確認できる。
【0059】
第1実施形態の二酸化炭素放出工程において再生された、IPDA、MBCHA及びMBMCHAは、二酸化炭素との反応によって、前記カルバミン酸誘導体の製造が可能である。このとき、先に説明した前記カルバミン酸誘導体の製造方法を適用できる。
【0060】
<<他の工程>>
第1実施形態の二酸化炭素の放出方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、分散液調製工程と、二酸化炭素放出工程と、のいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類及び数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0061】
ただし、第1実施形態の二酸化炭素の放出方法は、分散液調製工程と、二酸化炭素放出工程と、の間に、前記他の工程を有しないことが好ましい。第1実施形態の二酸化炭素の放出方法は、分散液調製工程と、二酸化炭素放出工程と、をこれらの間に前記他の工程を行ことなく、連続して行うことで、より効率的に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させることができる。
【0062】
次に、第2実施形態の二酸化炭素の放出方法について説明する。
【0063】
◎第2実施形態
第2実施形態の二酸化炭素の放出方法は、二酸化炭素放出工程において、前記分散液を加熱処理するのに代えて、前記分散液を加熱せずに前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給することにより、前記カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させる点を除けば、第1実施形態の二酸化炭素の放出方法と同じである。
【0064】
<<分散液調製工程>>
第2実施形態の前記分散液調製工程は、第1実施形態の前記分散液調製工程と同じであるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0065】
<<二酸化炭素放出工程>>
[不活性ガス、空気]
第2実施形態の前記分散液調製工程の後の、前記二酸化炭素放出工程において、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給する方法は、第1実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給する方法と同じである。
第2実施形態の二酸化炭素放出工程は、前記分散液を加熱処理しない点を除けば、前記分散液中に不活性ガス又は空気を供給する場合の、第1実施形態の二酸化炭素放出工程と同じであってよい。
【0066】
例えば、第2実施形態の二酸化炭素放出工程において、前記分散液中に供給する不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等が挙げられ、窒素ガスが特に好適である。すなわち、第2実施形態の二酸化炭素放出工程においては、前記分散液中に窒素ガスを供給しながら、前記分散液を加熱処理することが好ましい。
【0067】
例えば、第2実施形態の二酸化炭素放出工程においては、不活性ガス又は空気を20~110mL/minの流量で、前記分散液中に供給することが好ましく、窒素ガスを20~110mL/minの流量で、前記分散液中に供給してもよい。
【0068】
<<他の工程>>
第2実施形態の二酸化炭素の放出方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、分散液調製工程と、二酸化炭素放出工程と、のいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類及び数と、前記他の工程を行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
第2実施形態の前記他の工程は、第1実施形態の前記他の工程と同じであってよく、第1実施形態の前記他の工程の場合と同様に行うことができる。
【0069】
ただし、第2実施形態の二酸化炭素の放出方法は、第1実施形態の二酸化炭素の放出方法の場合と同様の理由で、同様に、分散液調製工程と、二酸化炭素放出工程と、の間に、前記他の工程を有しないことが好ましい。
【実施例0070】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0071】
<<カルバミン酸誘導体(イソホロンジアミンと二酸化炭素との反応物)の製造>>
[製造例1]
イソホロンジアミン(東京化成社工業社製、100mmol)と水(100mL)を混合することにより、イソホロンジアミンの濃度が1Mである、イソホロンジアミン水溶液を調製した。
【0072】
試験管中に、上記で得られたイソホロンジアミン水溶液の全量を入れ、試験管の開口部に三方コックを装着した。前記三方コックのガスの流入口から、金属製の細管を試験管の内部に通し、前記細管の、試験管の内部側の端部を、前記水溶液中に配置した。以上により、三方コックのガスの流入口から、前記細管を通して、試験管の内部の前記水溶液中に、試験管の外部からガスを直接流入させるとともに、試験管の内部の気相部分のガスを、三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出できるように、装置を組み立てた。
【0073】
次いで、室温下で前記装置を用いて、二酸化炭素ガスを、20mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記水溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。
二酸化炭素の流入開始から時間が経過するとともに、前記水溶液中に白色固形物が生じた。ろ過によりこの白色固形物を取り出し、水により洗浄し、60~90℃で乾燥させることにより、カルバミン酸誘導体を得た。
【0074】
得られた白色固形物が、カルバミン酸誘導体(イソホロンジアミンと二酸化炭素との反応物)であることは、重水(D
2O)中での
13C-NMRでの分析結果(NMRスペクトル)により確認した。その時の結果を
図1に示す。
この分析結果から、このカルバミン酸誘導体は、イソホロンジアミンのシクロへキシル基に直接結合しているアミノ基がカルボキシアミノ基となったものであることを確認した。
【0075】
<<二酸化炭素の放出>>
[実施例1]
製造例1で得られたカルバミン酸誘導体(イソホロンジアミンと二酸化炭素との反応物)(0.214g、1mmol)と、メタノール(15mL)と、を常温下で混合し、十分に撹拌することで、二酸化炭素の放出剤として、前記カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0076】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、試験管、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。試験管としては、その直径が30mmであるものを用いた。
上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液の全量を、前記装置中の前記試験管の内部に入れた。
次いで、窒素ガスを50mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記メタノール分散液中に流入させてバブリングしながら、前記メタノール分散液を60℃で加熱処理し、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた(二酸化炭素放出工程)。そして、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。結果を
図2に示す。
【0077】
加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していき、90分が経過する前の段階で、不溶成分は消失した。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D
2O)中で
13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。その時の結果を
図3に示す。
【0078】
【0079】
加熱処理の開始から90分後までの二酸化炭素の放出量は、0.98mmolであった。
加熱処理の開始から前記二酸化炭素の濃度が最大となるまでの間における、二酸化炭素の最大放出速度(本明細書においては、単に「二酸化炭素の最大放出速度」と称することがある)は、101.2μmol/minであった。
これらの結果を、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、ともに、表1に示す。
【0080】
なお、
図2以降のグラフ中の「CO
2 concentration」(二酸化炭素の濃度)に付された単位「%」と、表1以降の表中の「最大濃度」に付された単位「%」は、いずれも「体積%」を意味する。
表1中の「溶媒」の欄中の数値(mL/mmol)は、カルバミン酸誘導体の使用量(mmol)に対する、溶媒の使用量(mL)の割合を意味する。
【0081】
[実施例2~3、参考例1~5]
メタノール(15mL)に代えて、表1に示す溶媒(15mL)を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、前記カルバミン酸誘導体の分散液を得た(分散液調製工程)。
実施例2においては、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、前記カルバミン酸誘導体のエタノール分散液を得た。実施例3においては、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、前記カルバミン酸誘導体のDMF分散液を得た。
【0082】
そして、上記で得られた前記カルバミン酸誘導体の分散液を用いた点以外は、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素を放出させた(二酸化炭素放出工程)。その結果を
図2及び表1に示す。
【0083】
【0084】
図2及び表1に示す結果から明らかなように、実施例1~3においては、二酸化炭素の放出量(mmol)が、カルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例1~3においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が4.23%以上(4.23~4.54%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、92.4μmol/min以上(92.4~101.2μmol/min)であって、放出可能な二酸化炭素のほぼ全量を、短時間で放出できたことを確認できた。
【0085】
実施例1~3においては、加熱処理の開始から時間の経過とともに、分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していき、90分が経過する前の段階で、不溶成分は消失した。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0086】
これに対して、参考例1~5においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、の両方が、実施例1~3よりも明らかに劣っていた。参考例1~5の中でも、参考例1は、比較的、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が高く、二酸化炭素の最大放出速度が速かったが、それでも実施例1~3と比較すると、明らかに劣っていた。参考例4~5は、特に、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が低く、二酸化炭素の最大放出速度が遅かった。
このように、実施例1~3は、二酸化炭素の放出能が際立って高かった。
【0087】
[実施例4~8]
実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0088】
カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を、60℃で加熱処理するのに代えて、加熱しなかった、すなわち室温(r.t.)下で、窒素ガスを前記メタノール分散液中に流入させてバブリングした点以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例4)。窒素ガスの流入時において、前記メタノール分散液の温度は、概ね23℃であった。このときの結果を、実施例1の結果とともに、
図4に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表2に示す。
【0089】
別途、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて、30℃(実施例5)、40℃(実施例6)、50℃(実施例7)、又は70℃(実施例8)とした点以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。結果を
図4に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表2に示す。
【0090】
【0091】
図4及び表2に示す結果から明らかなように、実施例4~8においては、二酸化炭素の放出量(mmol)が多く、特に実施例5~8においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例4~8においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が2.26%以上(2.26~5.69%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、32.0μmol/min以上(32.0~129.3μmol/min)であった。なかでも、実施例4、6及び8においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が3.10%以上(3.10~5.69%)であり、実施例5~8においては、二酸化炭素の最大放出速度が、50.5μmol/min以上(50.5~129.3μmol/min)であった。
【0092】
実施例4~8のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。特に、実施例4及び8においては、加熱処理の開始から90分が経過する前の段階で、不溶成分は消失した。実施例4~8のいずれにおいても、90分が経過した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、実施例1の場合と同様に、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0093】
[実施例9~11]
メタノールの使用量を、15mLに代えて、1mL(実施例9)、2mL(実施例10)、又は5mL(実施例11)とした点以外は、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0094】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、試験管、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。ただし、試験管としては、その直径が30mmであるものに代えて、15mmであるものを用いた。
以降、この装置を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点と、前記メタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて40℃とした点、以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例9~11)。結果を
図5に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表3に示す。
【0095】
[実施例12~14]
メタノールの使用量を、15mLに代えて、5mL(実施例12)、10mL(実施例113)、又は20mL(実施例14)とした点以外は、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0096】
上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点と、前記メタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて40℃とした点、以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例12~15)。このときの結果を、実施例6の結果とともに、
図5に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表3に示す。
【0097】
【0098】
図5及び表3に示す結果から明らかなように、実施例9~14においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例9~14においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が2.81%以上(2.81~5.86%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、62.6μmol/min以上(62.6~130.9μmol/min)であった。なかでも、実施例10~14においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が3.02%以上(3.02~5.86%)であった。
【0099】
実施例11~12の比較から、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液の量が同等である場合には、直径が小さい試験管を用いた方が、二酸化炭素の最大放出速度が顕著に増大することを確認できた。これは、前記分散液中に窒素ガスを流入させてバブリングしたときに、窒素ガスの流路の幅が狭くなることで、窒素ガスと接触する前記メタノール分散液の量が増大し、窒素ガスが効率よく利用されたからであると推測された。
【0100】
実施例9~14のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0101】
[実施例15~17]
メタノールの使用量を、15mLに代えて2mLとした点以外は、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0102】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、試験管、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。ただし、試験管としては、その直径が30mmであるものに代えて、15mmであるものを用いた。
以降、この装置を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液に流入させる窒素ガスの流量を、50mL/minに代えて、25mL/min(実施例15)、75mL/min(実施例16)、又は100mL/min(実施例17)とした点と、前記メタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて40℃とした点、以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例15~17)。このときの結果を、実施例10の結果とともに、
図6に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表4に示す。
【0103】
【0104】
図6及び表4に示す結果から明らかなように、実施例15~17においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例15~17においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が3.66%以上(3.66~5.78%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、64.5μmol/min以上(64.5~163.4μmol/min)であった。なかでも、実施例16~17においては、二酸化炭素の最大放出速度が、129.7μmol/min以上(129.7~163.4μmol/min)であった。
【0105】
実施例15~17のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0106】
実施例15~17と実施例10の上記結果から、窒素ガスの流量の増大に伴って、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が低下し、二酸化炭素の最大放出速度が増大する傾向があることを確認できた。
【0107】
[実施例18]
メタノールの使用量を、15mLに代えて5mLとした点以外は、実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0108】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、試験管、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。ただし、試験管としては、その直径が30mmであるものに代えて、15mmであるものを用いた。
以降、この装置を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点と、前記メタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて40℃とした点と、前記カルバミン酸誘導体のメタノール分散液に流入させる窒素ガスの流量を、50mL/minに代えて、100mL/minとした点、以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度とを、実施例11の場合と合わせて表5に示す。
【0109】
【0110】
表5に示す結果から明らかなように、実施例18においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
【0111】
実施例18においても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0112】
実施例18と実施例11の上記結果から、窒素ガスの流量の増大に伴って、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が低下し、二酸化炭素の最大放出速度が増大する傾向があることを確認できた。
【0113】
[実施例19~21]
実施例3の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のDMF分散液を得た(分散液調製工程)。
【0114】
カルバミン酸誘導体のDMF分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて、40℃(実施例19)、80℃(実施例20)又は100℃(実施例21)とした点以外は、実施例3の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。このときの結果を、実施例3の結果とともに、
図7に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表6に示す。
【0115】
【0116】
図7及び表6に示す結果から明らかなように、実施例19~21においては、二酸化炭素の放出量(mmol)が多く、特に実施例20~21においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例19~21においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が1.21%以上(1.21~6.18%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、27.0μmol/min以上(27.0~138.0μmol/min)であった。なかでも、実施例20~21においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が5.79%以上(5.79~6.18%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、129.3μmol/min以上(129.3~138.0μmol/min)であった。
【0117】
実施例19~21のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、DMF分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。特に、実施例20~21においては、加熱処理の開始から90分が経過する前の段階で、不溶成分は消失した。実施例19~21のいずれにおいても、90分が経過した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、実施例3の場合と同様に、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0118】
実施例19~21と実施例3の上記結果から、前記DMF分散液の加熱処理の温度の上昇に伴って、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が増大し、二酸化炭素の最大放出速度が増大する傾向があることを確認できた。
【0119】
[実施例22~24]
DMFの使用量を、15mLに代えて、5mL(実施例22)、10mL(実施例23)、又は20mL(実施例24)とした点以外は、実施例3の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のDMF分散液を得た(分散液調製工程)。
【0120】
上記で得られたカルバミン酸誘導体のDMF分散液を用いた点以外は、実施例3の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例22~24)。このときの結果を、実施例3の結果とともに、
図8に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表7に示す。
【0121】
[実施例25~26]
DMFの使用量を、15mLに代えて、30mL(実施例25)、又は50mL(実施例26)とした点以外は、実施例3の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のDMF分散液を得た(分散液調製工程)。
【0122】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、容器、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。ただし、容器としては、直径が30mmの試験管に代えて、容量が100mLのナス形フラスコを用いた。
以降、この装置を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のDMF分散液を用いた点、以外は、実施例3の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例25~26)。結果を
図8に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表7に示す。
【0123】
【0124】
図8及び表7に示す結果から明らかなように、実施例22~26においては、二酸化炭素の放出量(mmol)が多く、特に実施例23~26においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例22~26においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が2.62%以上(2.62~4.24%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、58.5μmol/min以上(58.5~94.5μmol/min)であった。なかでも、実施例24~26においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が3.40%以上(3.40~4.24%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、70.0μmol/min以上(70.0~94.5μmol/min)であった。
【0125】
実施例22~26のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していき、90分が経過する前の段階で、不溶成分は消失した。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0126】
[実施例27~29]
実施例3の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のDMF分散液を得た(分散液調製工程)。
【0127】
上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液に流入させる窒素ガスの流量を、50mL/minに代えて、25mL/min(実施例27)、75mL/min(実施例28)、又は100mL/min(実施例29)とした点以外は、実施例3の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した(実施例27~29)。このときの実施例27及び29の結果を、実施例3の結果とともに、
図9に示す。そして、実施例27~29における、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表8に示す。
【0128】
【0129】
図9及び表8に示す結果から明らかなように、実施例27~29においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例27~29においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が2.88%以上(2.88~4.87%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、40.4μmol/min以上(40.4~131.3μmol/min)であった。なかでも、実施例27~28においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が3.72%以上(3.72~4.87%)であり、実施例28~29においては、二酸化炭素の最大放出速度が、128.5μmol/min以上(128.5~131.3μmol/min)であった。
【0130】
実施例27~29のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。特に、実施例29においては、加熱処理の開始から90分が経過する前の段階で、不溶成分は消失した。実施例27~29のいずれにおいても、90分が経過した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、実施例3の場合と同様に、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0131】
実施例27~29と実施例3の上記結果から、窒素ガスの流量の増大に伴って、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が低下し、二酸化炭素の最大放出速度が増大する傾向があることを確認できた。
【0132】
[実施例30]
実施例1の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0133】
直径が30mmの試験管の内部に、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液の全量を入れた。
次いで、この試験管を、70℃の熱水中に10秒間漬けた後、熱水中から取り出し、直ちに(3秒以内に)前記メタノール分散液を手で振り混ぜることで撹拌した(二酸化炭素放出工程)。
その結果、前記メタノール分散液中で発泡が生じた。この発泡は、前記カルバミン酸誘導体からの二酸化炭素の放出に伴うものであり、前記メタノール分散液は、発泡後、不溶成分が消失して透明な溶液となっていた。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0134】
[実施例31]
製造例1で得られたカルバミン酸誘導体(イソホロンジアミンと二酸化炭素との反応物)(1.07g、5mmol)と、メタノール(25mL)と、を常温下で混合し、十分に撹拌することで、二酸化炭素の放出剤として、前記カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0135】
直径が30mmの試験管の内部に、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液の全量を入れた。そして、試験管の開口部に、風船を装着した。
次いで、この試験管を、90℃の熱水中に10分間漬けた後、熱水中から取り出し、室温になるまで放冷した(二酸化炭素放出工程)。
その結果、前記メタノール分散液中で発泡が生じた。この発泡は、前記カルバミン酸誘導体からの二酸化炭素の放出に伴うものであり、前記メタノール分散液は、発泡後、不溶成分が消失して透明な溶液となっていた。同時に、試験管の開口部に装着した風船は、膨らんでおり、約24mLのガスを捕集していた。このガスは、放出された二酸化炭素であった。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0136】
なお、比較実験として、上記のカルバミン酸誘導体のメタノール分散液に代えて、メタノール(25mL)のみを用いて同様の実験を行ったところ、試験管の開口部に装着した風船は、萎んだままで膨らんでいなかった。すなわち、この比較実験では、メタノールがほとんど気化しなかった。
【0137】
[実施例32]
メタノール分散液の加熱温度を、90℃に代えて75℃とした点以外は、実施例31の場合と同様に、二酸化炭素を放出させた(分散液調製工程、二酸化炭素放出工程)。
その結果、実施例31の場合と同様に、前記カルバミン酸誘導体から二酸化炭素が放出され、前記メタノール分散液中で発泡が生じ、前記メタノール分散液は、発泡後、不溶成分が消失して透明な溶液となっていた。同時に、試験管の開口部に装着した風船は、膨らんでおり、約5.5mLのガスを捕集していた。このガスは、放出された二酸化炭素であった。この不溶成分が消失した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、イソホロンジアミンが再生していることを確認できた。
【0138】
なお、比較実験として、上記のカルバミン酸誘導体のメタノール分散液に代えて、メタノール(25mL)のみを用いて同様の実験を行ったところ、試験管の開口部に装着した風船は、萎んだままで膨らんでいなかった。すなわち、この比較実験では、メタノールがほとんど気化しなかった。
【0139】
<<カルバミン酸誘導体(4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)と二酸化炭素との反応物)の製造>>
[製造例2]
4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCHA、東京化成社工業社製、1mmol)と水(2mL)を混合することにより、MBCHAの濃度が1Mである、MBCHA水溶液を調製した。
【0140】
製造例1で用いたものと同じ装置を用意し、この装置内の試験管中に、上記で得られたMBCHA水溶液の全量を入れた。
次いで、二酸化炭素と窒素を含み、二酸化炭素の濃度が体積基準で約400ppmである混合ガスを、室温下で、20mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記水溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。
二酸化炭素の流入開始から時間が経過するとともに、前記水溶液中に白色固形物が生じた。ろ過によりこの白色固形物を取り出し、水により洗浄し、60~90℃で乾燥させることにより、カルバミン酸誘導体を得た。
【0141】
得られた白色固形物(carbamic acid derivative)について、FT-IRを用いて分析した。その時の結果を、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(MBCHA)の分析結果とともに、
図10に示す。
図10(a)は4000nm以下の波長域でのスペクトルデータであり、
図10(b)は1500~1700nmの波長域での拡大したスペクトルデータである。
【0142】
この分析結果から、このカルバミン酸誘導体は、MBCHAのシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基のうち、1個がカルボキシアミノ基となったものであることを確認した。
【0143】
<<二酸化炭素の放出>>
[実施例33]
製造例2で得られたカルバミン酸誘導体(4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)と二酸化炭素との反応物)(1mmol)と、メタノール(2mL)と、を常温下で混合し、十分に撹拌することで、二酸化炭素の放出剤として、前記カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0144】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、試験管、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。ただし、試験管としては、その直径が30mmであるものに代えて、15mmであるものを用いた。
以降、この装置を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点と、前記メタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて40℃とした点、以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。結果を
図11に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表9に示す。
【0145】
[実施例34]
メタノールの使用量を、2mLに代えて5mLとした点以外は、実施例33の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0146】
上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点以外は、実施例33の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。このときの結果を、実施例33の結果とともに、
図11に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表9に示す。
【0147】
【0148】
【0149】
図11及び表9に示す結果から明らかなように、実施例33~34においては、メタノールの使用量の増大に伴って、二酸化炭素の放出量(mmol)が増大したことを確認できた。
実施例33~34においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が1.36%以上(1.36~2.64%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、30.0μmol/min以上(30.0~59.0μmol/min)であった。
【0150】
実施例33~34のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。実施例33~34のいずれにおいても、90分が経過した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)が再生していることを確認できた。
【0151】
<<カルバミン酸誘導体(4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)と二酸化炭素との反応物)の製造>>
[製造例3]
4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(MBMCHA、東京化成社工業社製、1mmol)と水(2mL)を混合することにより、MBMCHAの濃度が1Mである、MBMCHA水溶液を調製した。
【0152】
製造例1で用いたものと同じ装置を用意し、この装置内の試験管中に、上記で得られたMBMCHA水溶液の全量を入れた。
次いで、二酸化炭素と窒素を含み、二酸化炭素の濃度が体積基準で約400ppmである混合ガスを、室温下で、20mL/minの流量で、試験管の外部から、試験管の内部の前記水溶液中に流入させてバブリングするとともに、試験管の内部のガスを三方コックのガスの排出口から、試験管の外部に排出させた。
二酸化炭素の流入開始から時間が経過するとともに、前記水溶液中に白色固形物が生じた。ろ過によりこの白色固形物を取り出し、水により洗浄し、60~90℃で乾燥させることにより、カルバミン酸誘導体を得た。
【0153】
得られた白色固形物(carbamic acid derivative)について、FT-IRを用いて分析した。その時の結果を、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)(MBMCHA)の分析結果とともに、
図12に示す。
図12(a)は4000nm以下の波長域でのスペクトルデータであり、
図12(b)は1500~1700nmの波長域での拡大したスペクトルデータである。
【0154】
この分析結果から、このカルバミン酸誘導体は、MBMCHAのシクロへキシル基に直接結合している2個のアミノ基のうち、1個がカルボキシアミノ基となったものであることを確認した。
【0155】
<<二酸化炭素の放出>>
[実施例35]
製造例3で得られたカルバミン酸誘導体(4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン))と二酸化炭素との反応物)(1mmol)と、メタノール(2mL)と、を常温下で混合し、十分に撹拌することで、二酸化炭素の放出剤として、前記カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0156】
製造例1でのカルバミン酸誘導体の製造時に用いたものと同様の、試験管、三方コック及び金属製の細管を備えた装置を用意した。ただし、試験管としては、その直径が30mmであるものに代えて、15mmであるものを用いた。
以降、この装置を用いた点と、上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点と、前記メタノール分散液の加熱処理の温度を、60℃に代えて40℃とした点、以外は、実施例1の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。結果を
図13に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表10に示す。
【0157】
[実施例36]
メタノールの使用量を、2mLに代えて5mLとした点以外は、実施例35の場合と同様に、二酸化炭素の放出剤として、カルバミン酸誘導体のメタノール分散液を得た(分散液調製工程)。
【0158】
上記で得られたカルバミン酸誘導体のメタノール分散液を用いた点以外は、実施例35の場合と同様に、カルバミン酸誘導体から二酸化炭素を放出させ(二酸化炭素放出工程)、排出ガス中の二酸化炭素の濃度を測定した。このときの結果を、実施例35の結果とともに、
図13に示す。そして、二酸化炭素の放出条件と、二酸化炭素の放出量と、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度と、二酸化炭素の最大放出速度と、を表10に示す。
【0159】
【0160】
【0161】
図13及び表10に示す結果から明らかなように、実施例35~36においては、メタノールの使用量の増大に伴って、二酸化炭素の放出量(mmol)が増大したことを確認できた。特に、実施例36においては、二酸化炭素の放出量(mmol)がカルバミン酸誘導体の使用量(mmol)とほぼ同等であり、カルバミン酸誘導体のほぼ全量が二酸化炭素を放出したことを確認できた。
実施例35~36においては、排出ガス中の二酸化炭素の最大濃度が4.40%以上(4.40~4.65%)であり、二酸化炭素の最大放出速度が、98.2μmol/min以上(98.2~103.7μmol/min)であった。
【0162】
実施例35~36のいずれにおいても、加熱処理の開始から時間の経過とともに、メタノール分散液中の不溶成分(前記カルバミン酸誘導体)の量が減少していった。実施例35~36のいずれにおいても、90分が経過した後の溶液を、重水(D2O)中で13C-NMRにより分析した結果、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)が再生していることを確認できた。