(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024179550
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】精神疾患判定装置、学習済みモデル、精神疾患判定補助方法、プログラム、及び、端末装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/377 20210101AFI20241219BHJP
A61B 5/374 20210101ALI20241219BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B5/377
A61B5/374
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098482
(22)【出願日】2023-06-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 掲載アドレス:https://kcon.expcp.jp/bpcnpnppp2022/、掲載年月日:令和4年10月31日 集会名:BPCNPNPPP4学会合同年会、掲示日:令和4年11月4日 集会名:BPCNPNPPP4学会合同年会、開催日(発表日):令和4年11月5日 掲載アドレス:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/50/5/50_261/_article/-char/ja/、掲載年月日:令和4年11月19日 集会名:日本臨床神経生理学会第52回学術大会、開催日(発表日):令和4年11月24日
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110135
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 裕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】野田 賀大
(72)【発明者】
【氏名】阪上 絢人
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127DD00
4C127GG01
4C127GG03
4C127GG11
4C127GG13
4C127GG16
(57)【要約】
【課題】精神疾患の有無を客観的な指標を用いて精度良く判定する。
【解決手段】特徴量抽出部103は、被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された被験者の脳波から、脳波の特徴を表す特徴量を抽出する。精神疾患判定部104は、磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波から、前記脳波の特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する精神疾患判定部と、を備える、
精神疾患判定装置。
【請求項2】
前記被験者の脳には連続して前記磁気刺激が与えられ、
前記特徴量の変化量は、2発目以降の磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記2発目以降の磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である、
請求項1に記載の精神疾患判定装置。
【請求項3】
前記脳波は、前記被験者の複数の測定箇所における脳波であり、
前記特徴量は、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの周波数パワーの値と、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波、θ波、又はδ波の位相とβ波又はγ波の振幅との複数の組み合わせのうち少なくとも1つの組合せにおける位相-振幅カップリングの値とのうち少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の精神疾患判定装置。
【請求項4】
前記脳波は、前記被験者の複数の測定箇所における脳波であり、
前記特徴量は、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの周波数パワーの値と、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波、θ波、又はδ波の位相とβ波又はγ波の振幅との複数の組み合わせのうち少なくとも1つの組合せにおける位相-振幅カップリングの値とを含む、
請求項1に記載の精神疾患判定装置。
【請求項5】
前記精神疾患は、大うつ病性障害、又は、治療抵抗性うつ病、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項6】
前記脳波は、前記被験者の前頭部に設置された複数の電極を介して測定された、前記被験者の前頭部の複数の測定箇所における脳波である、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項7】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量を入力して前記被験者が前記精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する学習済みモデルを用いて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項8】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項9】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項10】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項11】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項12】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項13】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項14】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定する、
請求項1から4の何れか1項に記載の精神疾患判定装置。
【請求項15】
被験者の脳への磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量を入力し、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する、
学習済みモデル。
【請求項16】
精神疾患の有無の判定を補助する精神疾患判定補助方法であって、
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波から、前記脳波の特徴を表す特徴量を抽出し、
前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する、
精神疾患判定補助方法。
【請求項17】
コンピュータを、
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波から、前記脳波の特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部、
前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する精神疾患判定部、として機能させる、
プログラム。
【請求項18】
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波を示す脳波データを取得する脳波取得部と、
前記脳波取得部が取得した前記脳波データをサーバに送信する送信部と、
前記サーバが、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて判定した、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を表示部に表示させる表示制御部と、を備える、
端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、精神疾患判定装置、学習済みモデル、精神疾患判定補助方法、プログラム、及び、端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、精神疾患の有無は、被験者への問診の結果、被験者に現れる臨床症状等に基づく指標を用いて判定されることが多い。しかしながら、このような指標は、客観性が高い指標とは言えず、精神疾患診断の判定精度を高めることが困難である。このため、客観性が高い指標を用いて、精神疾患の有無を判定する技術が研究されている。
【0003】
このような指標として、安静覚醒時又は経頭蓋磁気刺激後の脳波に基づく指標が知られている。例えば、特許文献1には、脳の複数の部位における経頭蓋磁気刺激後の脳波に基づいて、精神疾患の有無を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、単一電極における経頭蓋磁気刺激後の単一脳波成分のみに基づいて精神疾患の有無を判定する方法では、判定精度を高めることが困難である。また、同様に単一電極の安静覚醒時の特定の脳波成分のみに基づいて精神疾患の有無を判定する方法でも、判定精度を高めることが困難である。このため、精神疾患の有無を客観的な指標を用いて精度良く判定する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、精神疾患の有無を客観的な指標を用いて精度良く判定する精神疾患判定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る精神疾患判定装置は、
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波から、前記脳波の特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する精神疾患判定部と、を備える。
【0008】
前記被験者の脳には連続して前記磁気刺激が与えられ、
前記特徴量の変化量は、2発目以降の磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記2発目以降の磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値であってもよい。
【0009】
前記脳波は、前記被験者の複数の測定箇所における脳波であり、
前記特徴量は、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの周波数パワーの値と、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波、θ波、又はδ波の位相とβ波又はγ波の振幅との複数の組み合わせのうち少なくとも1つの組合せにおける位相-振幅カップリングの値とのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0010】
前記脳波は、前記被験者の複数の測定箇所における脳波であり、
前記特徴量は、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの周波数パワーの値と、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波、θ波、又はδ波の位相とβ波又はγ波の振幅との複数の組み合わせのうち少なくとも1つの組合せにおける位相-振幅カップリングの値とを含んでいてもよい。
【0011】
前記精神疾患は、大うつ病性障害、又は、治療抵抗性うつ病であってもよい。
【0012】
前記脳波は、前記被験者の前頭部に設置された複数の電極を介して測定された、前記被験者の前頭部の複数の測定箇所における脳波であってもよい。
【0013】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量を入力して前記被験者が前記精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する学習済みモデルを用いて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0014】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0015】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0016】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0017】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0018】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0019】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0020】
前記精神疾患判定部は、前記特徴量の変化量と、安静覚醒時に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と、前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、前記被験者が前記精神疾患を有するか否かを判定してもよい。
【0021】
上記目的を達成するために、本開示の第2の観点に係る学習済みモデルは、
被験者の脳への磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量を入力し、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する。
【0022】
上記目的を達成するために、本開示の第3の観点に係る精神疾患判定補助方法は、
精神疾患の有無の判定を補助する精神疾患判定補助方法であって、
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波から、前記脳波の特徴を表す特徴量を抽出し、
前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する。
【0023】
上記目的を達成するために、本開示の第4の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波から、前記脳波の特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部、
前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する精神疾患判定部、として機能させる。
【0024】
上記目的を達成するために、本開示の第5の観点に係る端末装置は、
被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された前記被験者の脳波を示す脳波データを取得する脳波取得部と、
前記脳波取得部が取得した前記脳波データをサーバに送信する送信部と、
前記サーバが、前記磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と前記磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて判定した、前記被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、精神疾患の有無を客観的な指標を用いて精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施の形態1に係る精神疾患判定システムの構成図
【
図2】実施の形態1に係る精神疾患判定装置の構成図
【
図5】実施の形態1に係る精神疾患判定装置の機能構成図
【
図6】実施の形態に係る精神疾患判定装置が実行する精神疾患判定処理を示すフローチャート
【
図7】
図6に示す特徴量抽出処理を示すフローチャート
【
図9】実施の形態2に係る精神疾患判定システムの構成図
【
図10】実施の形態2に係る精神疾患判定装置の構成図
【
図12】実施の形態2に係る精神疾患判定装置及び端末装置の機能構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図中において、同一又は対応する部分には、同一の符号を付す。
【0028】
(実施の形態1)
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る精神疾患判定システム1000の構成について説明する。精神疾患判定システム1000は、被験者の脳波に基づいて、被験者が精神疾患を有するか否かを判定するシステムである。精神疾患としては、治療抵抗性うつ病、大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症、認知症、アルツハイマー病、不安障害、てんかん等がある。治療抵抗性うつ病は、薬が効きにくいうつ病であり、1種類以上の抗うつ剤を十分な量および十分な期間服用しても抗うつ効果が得られないうつ病である。大うつ病性障害は、いわゆる一般的なうつ病であり、抑うつ気分、意欲低下等の精神症状と、食欲不振、不眠、疲労等の身体症状が2週間以上継続する精神障害である。
【0029】
双極性障害は、躁状態とうつ状態とを繰り返す脳の病気である。認知症は、様々な原因で、記憶能力をはじめとした認知機能が低下し、日常生活、社会生活等に支障をきたす疾患である。不安障害は、日常生活に支障が出るほど強い不安、恐怖等を感じる病気である。てんかんは、脳が一時的に過剰に興奮することによって、脳波にてんかん発作が出現し、意識を失ったりけいれんが生じたりする疾患である。精神疾患判定システム1000は、精神疾患判定装置100と、磁気刺激装置200と、脳波計300とを備える。
【0030】
精神疾患判定装置100は、被験者の脳波に基づいて、被験者が精神疾患を有するか否かを判定する装置である。脳の何らかの障害によってもたらされる精神疾患を有する人と有しない人とでは、安静覚醒時の脳波である安静覚醒時脳波、磁気刺激の直前の脳波である刺激前脳波、磁気刺激の直後の脳波である刺激後脳波、磁気刺激の前後における脳波変化の現れ方、中間表現型等に差違があると考えられる。本実施の形態では、精神疾患判定装置100は、刺激前脳波と刺激後脳波とに基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する。所定の精神疾患は、精神疾患のうち予め定められた少なくとも1つの精神疾患を意味する。
【0031】
安静覚醒時とは、被験者が、一定時間以上の間、リラックスして、覚醒している時である。磁気刺激は、被験者の脳に与えられる磁気的な刺激である。本実施の形態では、被験者の脳に繰り返して磁気刺激が与えられ、2発目以降の磁気刺激が与えられる前後の脳波が用いられる。つまり、本実施の形態では、刺激前脳波は、2発目以降の磁気刺激が与えられる直前の被験者の脳波であり、刺激後脳波は、2発目以降の磁気刺激が与えられた直後の被験者の脳波である。なお、磁気刺激の強さ、磁気刺激の時間等については、通常のこの分野の知識を参考にして、適宜設定することができる。
【0032】
精神疾患判定装置100は、磁気刺激装置200を制御して、被験者の脳に磁気刺激を与える。また、精神疾患判定装置100は、脳波計300から、被験者の脳波を示す脳波データを取得する。精神疾患判定装置100は、磁気刺激装置200及び脳波計300と通信可能である。
図2に示すように、精神疾患判定装置100は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作受付部14と、第1通信部15とを備える。
【0033】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、RTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、精神疾患判定装置100の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部11において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、精神疾患判定装置100を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。
【0034】
記憶部12は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる補助記憶装置としての役割を担う。記憶部12は、制御部11が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部11が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0035】
表示部13は、制御部11による制御に従って、各種の画像を表示する。例えば、表示部13は、ユーザから各種の操作を受け付けるための画面を表示する。表示部13は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部14は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部11に供給する。操作受付部14は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0036】
第1通信部15は、制御部11による制御に従って、各種の装置と通信する。本実施の形態では、第1通信部15は、制御部11による制御に従って、磁気刺激装置200及び脳波計300と通信する。第1通信部15は、周知の有線通信規格又は周知の無線通信規格に則って、各種の装置と通信する。周知の有線通信規格としては、USB(Universal Serial Bus、登録商標)、Thunderbolt(登録商標)等がある。周知の無線通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等がある。第1通信部15は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0037】
磁気刺激装置200は、TMS(Transcranial Magnetic Stimulation)、つまり、経頭蓋磁気刺激を、被験者に与える装置である。磁気刺激装置200は、例えば、精神疾患判定装置100による制御に従って動作する。従って、磁気刺激装置200は、精神疾患判定装置100と通信するための通信インターフェース(図示せず)を備える。磁気刺激装置200は、ケーブル220を介してコイル210に接続される。磁気刺激装置200は、コイル210に流す電流を急激に変化させて、コイル210の周囲の磁場を急激に変化させる。磁気刺激装置200は、この磁場の急激な変化により脳内に電流を誘起させて、脳内のニューロンを興奮させる。
【0038】
コイル210は、コイル210に流れる電流の急激な変化に応じて、コイル210の周囲の磁場を急激に変化させる。この磁場は、頭皮、頭蓋骨等に妨げられることなく通過し、この磁場の変化を打ち消す電流を脳内で誘起する。脳内に生じた誘起電流は、皮質表面への電気刺激と同様に付近の神経細胞を活性化させる。コイル210の形状は、例えば、8の字型の平面形状である。コイル210は、コイル210の平面と頭蓋骨に対する接線方向とが直交するように、被験者の頭部に取り付けられる。コイル210は、例えば、被験者の前頭前野(例えば、左背外側前頭前野)に対応する部分に取り付けられる。
【0039】
脳波計300は、被験者のEEG(Electroencephalogram)、つまり、被験者の脳波を測定する装置である。脳波計300は、例えば、精神疾患判定装置100による制御に従って動作する。従って、脳波計300は、精神疾患判定装置100と通信するための通信インターフェース(図示せず)を備える。脳波計300は、ケーブル320を介して脳波測定キャップ310に接続される。
【0040】
脳波測定キャップ310は、被験者の脳波を測定するために、被験者の頭部に装着されるキャップである。脳波測定キャップ310は、被験者の脳波を検出するための複数の電極311を備える。複数の電極311は、それぞれ、脳波測定キャップ310における、被験者の頭部の複数の測定箇所に対応する位置に設けられる。本実施の形態では、脳波測定キャップ310の全体に亘って複数の電極311が配置され、被験者の頭部の全体あるいは一部に亘って脳波が測定される。
【0041】
各電極311は、ケーブル320内にまとめられた電線312により脳波計300と接続される。脳波計300は、各電極311の電位を測定することにより、各測定箇所における脳波を測定する。なお、
図1では、一部の電極311についてのみ、符号と電線312とを図示している。脳波の測定箇所と測定電極数は任意である。本実施の形態では、脳波の測定箇所は、頭部全体に亘り、測定電極数は計62箇所である。本実施の形態では、電極311、測定箇所等を指定するときに、適宜、チャネルという文言を使用する。
【0042】
図3を参照して、脳波計300が測定する脳波について説明する。脳波は、人の脳が発生する電気的信号である。脳波は、例えば、頭皮上に配置された電極311の電位を検出することにより測定することができる。本実施の形態では、適宜、脳波を示す時系列の電圧信号を脳波又は脳波信号といい、脳波を示す時系列の電圧信号を示すデータを脳波データという。
【0043】
図3に示すように、脳波は、電圧の時間変化を示す信号として表現される。
図3には、被験者の脳に磁気刺激が与えられたタイミングを0msecとして、被験者の脳に磁気刺激が与えられた前後の脳波を示している。脳波の振幅は、数μVから数十μV程度の大きさである。なお、本実施の形態では、脳波計300は、例えば、3kHzのサンプリング周波数で脳波の電圧を測定し、脳波データは、例えば、3kHzのサンプリング周波数で測定された時系列の電圧を示すデータである。
【0044】
図3には、磁気刺激の直前の脳波である刺激前脳波と、磁気刺激の直後の脳波である刺激後脳波とが示されている。本実施の形態では、刺激前脳波は、磁気刺激の1550msec前からこの磁気刺激の50msec前までの脳波である。また、刺激後脳波は、磁気刺激の50msec後からこの磁気刺激の550msec後までの脳波である。なお、磁気刺激の50msec前からこの磁気刺激の50msec後までは、測定される脳波に大きなノイズが重畳される可能性が高い。そこで、本実施の形態では、磁気刺激の50msec前からこの磁気刺激の50msec後までの脳波を、刺激前脳波と刺激後脳波とに原則含めない。なお、
図3には、安静覚醒時の脳波である安静覚醒時脳波は示されていない。安静覚醒時脳波は、例えば、安静覚醒時に測定された数秒間分の脳波である。
【0045】
本実施の形態では、
図4に示すように、t1からtnにかけて、磁気刺激が繰り返して実行される。具体的には、t1に1発目の磁気刺激が実行され、t1からT1が経過したt2に2発目の磁気刺激が実行され、t2からT1が経過したt3に3発目の磁気刺激が実行される。以後、T1の周期で磁気刺激が繰り返して実行され、tnに、n回発の磁気刺激が実行される。T1は、例えば、数秒である。
【0046】
ここで、本実施の形態では、刺激前脳波は、磁気刺激が繰り返される場合における磁気刺激の直前の脳波であり、刺激後脳波は、磁気刺激が繰り返される場合における磁気刺激の直後の脳波である。つまり、本実施の形態では、刺激前脳波は、2発目以降の磁気刺激の直前の脳波であり、刺激後脳波は、2発目以降の磁気刺激の直後の脳波である。従って、本実施の形態では、刺激前脳波は、安静覚醒時脳波とは明確に区別される。
【0047】
刺激前脳波は2発目の磁気刺激の直前の脳波であり、刺激後脳波は2発目の磁気刺激の直後の脳波であってもよい。この場合、刺激前脳波はt21からt22までの脳波であり、刺激後脳波はt23からt24までの脳波である。t21は、例えば、t2よりも1550msec前の時刻であり、t22は、例えば、t2よりも50msec前の時刻である。t23は、例えば、t2よりも50msec後の時刻であり、t24は、例えば、t2よりも550msec後の時刻である。
【0048】
又は、刺激前脳波は3発目の磁気刺激の直前の脳波であり、刺激後脳波は3発目の磁気刺激の直後の脳波であってもよい。この場合、刺激前脳波はt31からt32までの脳波であり、刺激後脳波はt33からt34までの脳波である。t31は、例えば、t3よりも1550msec前の時刻であり、t32は、例えば、t3よりも50msec前の時刻である。t33は、例えば、t3よりも50msec後の時刻であり、t34は、例えば、t3よりも550msec後の時刻である。なお、t21からt22までの時間であり、例えば、t31からt32までの時間であるT2は1500msecであり、t23からt24までの時間であり、例えば、t33からt34までの時間であるT3は500msecである。
【0049】
また、刺激前脳波は2発目以降の複数回の磁気刺激の直前の脳波を平均化した脳波であり、刺激後脳波は2発目以降の複数回の磁気刺激の直後の脳波を平均化した脳波であってもよい。なお、脳波を平均化することは、磁気刺激のタイミングが重なるように各脳波の時間軸を合わせた上で、磁気刺激のタイミングまでの経過時間又は磁気刺激のタイミングからの経過時間毎に電圧の平均値を求めることである。
【0050】
次に、
図5を参照して、精神疾患判定装置100の機能について説明する。精神疾患判定装置100は、機能的には、刺激制御部101と、脳波取得部102と、特徴量抽出部103と、精神疾患判定部104と、表示制御部105とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部12に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0051】
刺激制御部101は、被験者の脳に対する磁気刺激を制御する。例えば、刺激制御部101は、予め定められた時間間隔で、被験者の脳に磁気刺激を与えるように磁気刺激装置200を制御する。なお、刺激制御部101と脳波取得部102とは、適宜、同期を取ることが好適である。例えば、刺激制御部101は、被験者の脳に磁気刺激を与えるタイミングを脳波取得部102に通知してもよい。
【0052】
脳波取得部102は、被験者の脳波を取得する。例えば、脳波取得部102は、被験者の脳波を測定するように脳波計300を制御して、測定された脳波を示す脳波データを脳波計300から取得する。例えば、脳波取得部102は、被験者の頭部における全ての測定箇所について、刺激前脳波と刺激後脳波とを取得する。なお、脳波取得部102は、脳波計300から取得した脳波データが示す脳波から、刺激前脳波と刺激後脳波とを抽出してもよい。又は、脳波取得部102は、刺激前脳波を示す脳波データと刺激後脳波を示す脳波データとを脳波計300から取得してもよい。
【0053】
特徴量抽出部103は、被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された被験者の脳波から、脳波の特徴を表す特徴量を抽出する。つまり、特徴量抽出部103は、脳波取得部102が取得した脳波データが示す脳波から、被験者の脳波の特徴を表す特徴量を抽出する。特徴量として、どのようなものを採用するのかは、適宜、調整することができる。例えば、特徴量として、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの周波数パワーの値が採用されてもよい。
【0054】
α波は、安静、閉眼、覚醒した状態で多く観察される脳波のパターンであり、脳波のうち8Hzから13Hzの成分である。β波は、通常の覚醒時の意識と関連付けられた脳波のパターンであり、脳波のうち14Hzから30Hzまでの成分である。γ波は、知覚や意識等に関連付けられた脳波のパターンであり、神経細胞集団が同期活動をすることによって生成される。γ波は、脳波のうち30Hz以上の成分である。θ波は、リラックスしているときに見られ、認知機能等に関連付けられた脳波のパターンであり、脳波のうち4Hzから7Hzの成分である。δ波は、徐波睡眠と関連付けられる脳波のパターンであり、脳波のうち0.5Hzから3Hzの成分である。周波数パワーは、対応する周波数帯域のパワーである。
【0055】
周波数パワーは、例えば、時系列の電気的信号である脳波を、FFT(Fast Fourier Transform)分析することにより取得されるパワースペクトルから求めることができる。例えば、α波の周波数パワーは、パワースペクトルが示すパワーのうち、8Hzから13Hzの周波数帯域におけるパワーである。なお、周波数パワーの値及び周波数パワーの値の変化量は、精神疾患を有する人と精神疾患を有しない人とで差違があるが考えられる。そこで、周波数パワーの値が特徴量として採用される。
【0056】
また、特徴量として、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つの位相同期性の値が採用されてもよい。位相同期性は、2つの領域の脳波が同期している程度を示す。つまり、位相同期性は、2つの測定箇所で測定された脳波の対応する周波数成分の山と谷とが重なる程度を示す。位相同期性の値は、測定箇所のペア毎、α波、β波、γ波、θ波及びδ波の周波数帯域毎に求められる。例えば、測定箇所が62箇所である場合、62C2×5=9455通りの位相同期性の値が算出される。
【0057】
位相同期性の値は、例えば、wPLI(weighted Phase Lag Index)を用いて、以下に示す式(1)により算出可能である。wPLIは、2つの時系列の実数値信号であるx(t)とy(t)との間の位相角の差が、複素平面の虚軸の正又は負の部分に向かってどの程度分布しているかを示す。S
xyは、x(t)及びy(t)の複素クロススペクトル密度である。imagは、複素数の虚数部を返す関数である。sgnは、実数の符号に応じて、-1、0、1の何れかを返す符号関数である。なお、対象の周波数範囲の周波数ビン全体の平均値を算出することにより、各周波数帯域(α波、β波、γ波、θ波及びδ波の周波数帯域)における単一のwPLIのカップリング値が算出可能である。
【数1】
【0058】
なお、位相同期性の値及び位相同期性の値の変化量は、精神疾患を有する人と精神疾患を有しない人とで差違があるが考えられる。例えば、精神疾患を有する人は、機能結合が低下しているため、位相同期性の値が低下していると考えられる。そこで、位相同期性の値が特徴量として採用される。
【0059】
また、特徴量として、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値が採用されてもよい。特定の測定箇所は、例えば、コイル210により磁気刺激された部位に対応する測定箇所であり、例えば、前頭前野(例えば、左背外側前頭前野)に対応する測定箇所である。低周波成分の位相と高周波成分の振幅とがカップリングすることは、低周波成分の位相が高周波成分の振幅に影響を与えることを意味し、高周波成分の振幅が表す包絡線の位相が低周波成分の位相と一致することを意味する。ここでは、α波が低周波成分であり、γ波が高周波成分である。以下、特徴量抽出部103が、α波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値を算出する方法について説明する。
【0060】
まず、特徴量抽出部103は、α波の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いて、脳波データが示す脳波信号からα波の信号を抽出する。また、特徴量抽出部103は、γ波の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いて、脳波信号からγ波の信号を抽出する。特徴量抽出部103は、γ波の信号から包絡線信号を生成する。包絡線信号は、γ波の各時刻における振幅の大きさ示す信号であり、γ波の各時刻における上下の包絡線間の距離を示す信号である。特徴量抽出部103は、α波の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いて、包絡線信号からα波の周波数帯域の信号であるα波帯域信号を抽出する。α波帯域信号は、α波の周波数帯域でのγ波の振幅の変化を示す信号である。
【0061】
特徴量抽出部103は、α波の信号にヒルベルト変換を適用して、α波の信号の位相を取得する。また、特徴量抽出部103は、α波帯域信号にヒルベルト変換を適用して、α波帯域信号の位相を取得する。特徴量抽出部103は、時刻nにおけるα波の信号の位相をφ
ω(n)、時刻nにおけるα波帯域信号の位相をφ
γω(n)として、以下の式(2)により一致率であるSIを算出する。一致率は、α波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値に対応する。SIは、0以上1以下の値である。SIが大きい程、γ波の振幅がα波の位相と連動することを意味する。
【数2】
【0062】
また、特徴量として、特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値が採用されてもよい。この場合、θ波が低周波成分であり、γ波が高周波成分である。また、特徴量として、特定の測定箇所における脳波のδ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値が採用されてもよい。この場合、δ波が低周波成分であり、γ波が高周波成分である。
【0063】
また、特徴量として、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値が採用されてもよい。この場合、α波が低周波成分であり、β波が高周波成分である。また、特徴量として、特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値が採用されてもよい。この場合、θ波が低周波成分であり、β波が高周波成分である。また、特徴量として、特定の測定箇所における脳波のδ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値が採用されてもよい。この場合、δ波が低周波成分であり、β波が高周波成分である。
【0064】
特徴量抽出部103は、α波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値を算出する場合と同様の方法で、θ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値、δ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値、α波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値、θ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値、及び、δ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値を算出する。なお、上述した6種類のカップリングについては、カップリングの値及びカップリングの値の変化量は、精神疾患を有する人と精神疾患を有しない人とで差違があるが考えられる。そこで、上述した6種類のカップリングの値が特徴量として採用される。
【0065】
本実施の形態では、特徴量抽出部103は、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波の周波数パワーの値と、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波の位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のδ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のδ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値とを、特徴量として抽出する。特徴量抽出部103は、特徴量抽出部の一例である。
【0066】
精神疾患判定部104は、特徴量の変化量に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する。特徴量の変化量は、磁気刺激の直前に測定された脳波である刺激前脳波から抽出された特徴量と磁気刺激の直後に測定された脳波である刺激後脳波から抽出された特徴量との差分値である。被験者が所定の精神疾患を有する場合と有しない場合とでは、特徴量の変化量に差違があると考えられる。そこで、精神疾患判定部104は、特徴量の変化量に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する。
【0067】
また、被験者が所定の精神疾患を有する場合と有しない場合とでは、刺激前脳波から抽出される特徴量にも差違があると考えられる。また、被験者が所定の精神疾患を有する場合と有しない場合とでは、刺激後脳波から抽出される特徴量にも差違があると考えられる。そこで、本実施の形態では、精神疾患判定部104は、特徴量の変化量に加え、更に、刺激前脳波から抽出される特徴量と、刺激後脳波から抽出される特徴量とに基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する。
【0068】
精神疾患判定部104が、特徴量の変化量、特徴量等に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する方法は、適宜、調整することができる。例えば、精神疾患判定部104は、学習済みモデル121を用いて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定してもよい。学習済みモデル121は、特徴量の変化量と、刺激前脳波から抽出される特徴量と、刺激後脳波から抽出される特徴量とを入力して、被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力するモデルである。
【0069】
学習済みモデル121は、例えば、LDA(Linear Discriminant Analysis)、ロジスティック回帰、SVM(Support Vector Machine)等を用いて学習したモデルである。LDAは、クラス内分散が最小化され、クラス間分散が最大化されるように、データ群を分類する線形判別分類法である。ロジスティック回帰は、多変量解析の手法の1つであり、教師あり学習に用いられる手法の1つである。SVMは、教師あり学習を用いるパターン認識モデルの1つである。SVMは、二つのクラスのデータ群を分割するような境界線、超平面等を決定することで、分類、回帰等を実行するアルゴリズムである。また、学習済みモデル121は、上述のもの以外に、例えば、k近傍法アルゴリズム(KNN)、ナイーブベイズ(NB)、デシジョンツリー(DT)、ランダムフォレスト(RF)、エクストラツリー(ET)、lightGBM(LG)等を用いて学習したモデルであってもよい。
【0070】
学習済みモデル121は、例えば、教師あり学習により生成される。この場合、学習済みモデル121は、脳波から抽出された特徴量と特徴量から算出された特徴量の変化量とを例題として含み、脳波の取得元の人が所定の精神疾患を有するか否かを示す情報を回答として含む多数の教師データに基づいて生成される。機械学習に用いられる多数の教師データには、所定の精神疾患を有する人の脳波に基づく多数の教師データと精神疾患を有しない人の脳波に基づく多数の教師データとが含まれる。本実施の形態では、教師データは、特徴量の変化量と、刺激前脳波から抽出される特徴量と、刺激後脳波から抽出される特徴量と、脳波の取得元の人が精神疾患を有するか否かを示す情報とを含む。生成された学習済みモデル121は、記憶部12に記憶される。
【0071】
精神疾患判定部104は、特徴量の変化量と、刺激前脳波から抽出される特徴量と、刺激後脳波から抽出される特徴量とを、学習済みモデル121に入力し、学習済みモデル121が出力した判定結果を取得する。この判定結果は、例えば、被験者が所定の精神疾患を有する確率を示す判定結果である。
【0072】
精神疾患判定部104は、学習済みモデル121が出力した判定結果に基づいて、被験者が精神疾患を有するか否かを判定する。例えば、精神疾患判定部104は、学習済みモデル121が出力した判定結果が示す確率が50%以上である場合、被験者が所定の精神疾患を有すると判定する。一方、精神疾患判定部104は、この確率が50%未満である場合、被験者が所定の精神疾患を有しないと判定する。又は、精神疾患判定部104は、学習済みモデル121が出力した判定結果が示す確率自体を判定結果として採用してもよい。精神疾患判定部104は、精神疾患判定部の一例である。
【0073】
表示制御部105は、被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を表示部13に表示させる。例えば、表示制御部105は、判定結果を提示するための提示画面を表示部13に表示させる。提示画面において、被験者が所定の精神疾患を有するか否かがYES/NOのカテゴリー分類で提示されてもよいし、被験者が所定の精神疾患を有する確率で提示されてもよい。
【0074】
次に、
図6を参照して、精神疾患判定装置100が実行する精神疾患判定処理について説明する。本開示における精神疾患判定支援方法は、精神疾患判定装置100が精神疾患判定処理を実行することにより実現される。
【0075】
まず、精神疾患判定装置100が備える制御部11は、磁気刺激直前の脳波データを取得する(ステップS101)。制御部11は、ステップS101の処理を完了すると、磁気刺激直後の脳波データを取得する(ステップS102)。
【0076】
例えば、制御部11は、脳波計300を動作させた後、磁気刺激装置200を動作させて、磁気刺激装置200に周期的な磁気刺激を実行させる。制御部11は、第1通信部15を介して、脳波計300から全チャネル分の磁気刺激の前後の脳波データを取得する。制御部11は、磁気刺激装置200が磁気刺激を実行したタイミングに基づいて、取得した脳波データから磁気刺激直前の脳波データと磁気刺激直後の脳波データとを抽出する。
【0077】
制御部11は、ステップS102の処理を完了すると、脳波データに対する前処理を実行する(ステップS103)。脳波計300が取得した脳波データには、磁気刺激装置200による磁気刺激に起因するノイズ、交流電源に起因するノイズ等が含まれている可能性がある。そこで、制御部11は、例えば、前処理において、脳波データからこれらのノイズを除去する。
【0078】
制御部11は、ステップS103の処理を完了すると、特徴量抽出処理を実行する(ステップS104)。特徴量抽出処理については、
図7を参照して、詳細に説明する。
【0079】
まず、制御部11は、チャネルを選択する(ステップS201)。例えば、制御部11は、62チャネルから1つのチャネルを選択する。制御部11は、ステップS201の処理を完了すると、脳波データを選択する(ステップS202)。例えば、制御部11は、選択したチャネルについて、磁気刺激前の脳波データと磁気刺激後の脳波データとの中から1つの脳波データを選択する。
【0080】
制御部11は、ステップS202の処理を完了すると、選択した脳波データについて、周波数帯域毎に周波数パワーの値を算出する(ステップS203)。例えば、制御部11は、選択した脳波データが示す時系列の電圧信号をFFT分析してパワースペクトルを求める。制御部11は、このパワースペクトルからα波、β波、γ波、θ波及びδ波のそれぞれについて、周波数パワーの値を算出する。
【0081】
制御部11は、ステップS203の処理を完了すると、チャネル間における各周波数帯域の位相同期性の値を算出する(ステップS204)。例えば、制御部11は、選択したチャネルを含む総てのチャネルのペアに対して、α波、β波、γ波、θ波及びδ波のそれぞれについて、位相同期性の値を算出する。例えば、制御部11は、61×5=305個の値を算出する。なお、他のチャネルに対する処理において既に算出された値については、改めて算出しなくてもよい。
【0082】
制御部11は、ステップS204の処理を完了すると、選択したチャネルが特定のチャネルであるか否かを判別する(ステップS205)。特定のチャネルは、コイル210により磁気刺激された部位に対応するチャネルであり、前頭前野(例えば、左背外側前頭前野)に対応するチャネルである。
【0083】
制御部11は、選択したチャネルが特定のチャネルであると判別すると(ステップS205:YES)、α波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値を算出する(ステップS206)。例えば、制御部11は、上述した式(1)を用いてSIの値を算出し、算出したSIの値をカップリングの値とする。制御部11は、ステップS206の処理を完了すると、θ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値を算出する(ステップS207)。例えば、制御部11は、ステップS206と同様の方法により、θ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値を算出する。
【0084】
制御部11は、選択したチャネルが特定のチャネルでないと判別した場合(ステップS205:NO)、又は、ステップS207の処理を完了した場合、未選択の脳波データがあるか否かを判別する(ステップS208)。制御部11は、未選択の脳波データがあると判別すると(ステップS208:YES)、ステップS202に処理を戻す。制御部11は、未選択の脳波データがないと判別すると(ステップS208:NO)、未選択のチャネルがあるか否かを判別する(ステップS209)。制御部11は、未選択のチャネルがあると判別すると(ステップS209:YES)、ステップS201に処理を戻す。制御部11は、未選択のチャネルがないと判別すると(ステップS209:NO)、特徴量抽出処理を完了する。
【0085】
制御部11は、ステップS104の特徴量抽出処理を完了すると、特徴量の変化量を算出する(ステップS105)。例えば、制御部11は、チャネル毎、及び、特徴量毎に、磁気刺激前の脳波データから抽出された特徴量と磁気刺激後の脳波データから抽出された特徴量との差分値を算出し、算出した差分値を特徴量の変化量とする。
【0086】
制御部11は、ステップS105の特徴量抽出処理を完了すると、特徴量と特徴量の変化量とを学習済みモデルに入力する(ステップS106)。つまり、制御部11は、抽出した全ての特徴量と算出した全ての特徴量の変化量とを学習済みモデルに入力する。制御部11は、ステップS106の処理を完了すると、学習済みモデルの出力を取得する(ステップS107)。
【0087】
制御部11は、ステップS107の処理を完了すると、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する(ステップS108)。例えば、制御部11は、学習済みモデルが出力した判定結果に基づいて、被験者が大うつ病性障害を有するか否かを判定する。制御部11は、ステップS108の処理を完了すると、判定結果を表示する(ステップS109)。例えば、制御部11は、判定結果を提示するための提示画面を表示部13に表示させる。制御部11は、ステップS109の処理を完了すると、精神疾患判定処理を完了する。
【0088】
次に、本実施の形態に係る学習済みモデルの性能の評価結果について説明する。
図8に、実際に生成されたモデル1及びモデル2の性能を、ROC(Receiver Operating Characteristic)-AUC(Area Under Curve)値を用いて評価した結果を示す。モデル1は、本実施の形態に係る学習済みモデルであり、モデル2は、比較例に係る学習済みモデルである。なお、ROC-AUC値は、モデルの性能評価に用いられる値であり、この値が1に近づくほど、性能の高いモデルであることを意味する。
【0089】
本評価では、特徴量として、(1)α波、β波、γ波、θ波及びδ波の周波数パワーの値(全チャネル分)と、(2)α波、β波、γ波、θ波及びδ波の位相同期性の値(全チャネル分)と、(3)α波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値(特定チャネルのみ)と、(4)θ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値(特定チャネルのみ)とが採用された。また、本評価では、チャネル数として、62チャネル(脳全体分のチャネル)と17チャネル(前頭葉分のチャネル)とが採用された。また、本評価では、機械学習モデルの学習方法として、LDAと、ロジスティック回帰と、SVMとが採用された。
【0090】
ここで、モデル1は、データセットとして、刺激前脳波の特徴量と、刺激後脳波の特徴量と、刺激前脳波の特徴量と刺激後脳波の特徴量との差分値である特徴量の変化量とが採用された学習済みモデルである。なお、この特徴量は、1回目から80回目の磁気刺激の前後における脳波の平均波形から抽出される。モデル2は、データセットとして、安静覚醒時脳波の特徴量が採用された学習済みモデルである。
【0091】
本評価では、精神科専門医により治療抵抗性うつ病と診断された60人のうつ病患者と、精神疾患を有していない60人の健常者とのそれぞれを被験者として、モデル1及びモデル2の性能が評価された。評価結果であるROC-AUC値は、
図8に示す通りである。
【0092】
つまり、モデル1では、62チャネルの場合、LDA:0.931、ロジスティック回帰:0.933、SVM:0.921であり、17チャネルの場合、LDA:0.886、ロジスティック回帰:0.881、SVM:0.881である。一方、モデル2では、62チャネルの場合、LDA:0.881、ロジスティック回帰:0.878、SVM:0.889であり、17チャネルの場合、LDA:0.847、ロジスティック回帰:0.854、SVM:0.826である。
【0093】
評価結果を考察すると、特徴量の変化量を用いるモデル1の方が、安静覚醒時の特徴量のみを用いるモデル2に比べて、より良好なROC-AUC値が記録されたことから、モデル1は、モデル2よりもうつ病の判定により適していると考えられる。また、チャネル数が62チャネルの場合とチャネル数が17チャネルの場合とで、ROC-AUC値に大きな差違は見られない。このため、前頭部分の17チャネルの脳波からでも、精度の良いうつ病の判定が可能であると考えられる。また、機械学習モデルの学習方法によらず、安定したROC-AUC値が得られることから、モデルの汎用性が期待できる。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態では、磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定される。ここで、所定の精神疾患を有する人と精神疾患を有しない人とでは、特徴量の変化量に差違があると考えられる。従って、本実施の形態によれば、所定の精神疾患の有無を精度良く判定することができる。
【0095】
また、本実施の形態では、特徴量の変化量は、2発目以降の磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と2発目以降の磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である。2発目以降の磁気刺激の前後に測定される脳波は、1発目の磁気刺激の前後に測定される脳波よりも安定していると考えられる。従って、本実施の形態によれば、所定の精神疾患(例えば、大うつ病性障害)の有無を更に精度良く判定することが期待できる。
【0096】
また、本実施の形態では、各測定箇所及び各周波数帯域における周波数パワーの値と、各測定箇所間における各周波数帯域の位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、前特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、前特定の測定箇所における脳波のδ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値と、前特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値と、前特定の測定箇所における脳波のδ波の位相とβ波の振幅とのカップリングの値とが、特徴量として採用される。これらの特徴量の変化量は、大うつ病性障害を有する人と有しない人とで差違があると考えられる。従って、本実施の形態によれば、大うつ病性障害の有無を更に精度良く判定することが期待できる。
【0097】
また、本実施の形態では、精神疾患として、大うつ病性障害、又は、治療抵抗性うつ病を想定している。これらの精神疾患を有する人と有しない人とでは、特徴量の変化量に差違があると考えられる。従って、本実施の形態によれば、所定の精神疾患の有無を精度良く判定することができる。
【0098】
また、本実施の形態では、特徴量の変化量を入力して被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する学習済みモデルを用いて、被験者が精神疾患を有するか否かが判定される。膨大な教師データにより機械学習がなされれば、学習済みモデルの判定精度が高いと考えられる。従って、本実施の形態によれば、所定の精神疾患の有無を更に精度良く判定することができる。
【0099】
また、本実施の形態では、特徴量の変化量と、磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と、磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量とに基づいて、被験者が精神疾患を有するか否かが判定される。特徴量の変化量だけでなく、これらの特徴量自体も、所定の精神疾患を有する人と有しない人とで差違があると考えられる。従って、本実施の形態によれば、所定の精神疾患の有無を更に精度良く判定することが期待できる。
【0100】
(実施の形態2)
実施の形態1では、精神疾患判定装置100が、磁気刺激装置200及び脳波計300の制御、判定結果の表示等の処理を実行する例について説明した。本実施の形態では、他の装置が、これらの処理を実行する例について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成及び機能については、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0101】
図9に示すように、本実施の形態に係る精神疾患判定システム1100は、精神疾患判定装置110と、磁気刺激装置200と、脳波計300と、端末装置400とを備える。精神疾患判定装置110と端末装置400とは、通信ネットワーク700を介して相互に接続される。通信ネットワーク700は、例えば、インターネットである。
【0102】
精神疾患判定装置110は、被験者の脳波に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する装置である。但し、精神疾患判定装置110は、精神疾患判定装置100とは異なり、磁気刺激装置200及び脳波計300を制御せず、判定結果を表示しない。その代わりに、精神疾患判定装置110は、通信ネットワーク700を介して端末装置400から脳波データを取得し、通信ネットワーク700を介して端末装置400に判定結果を送信する。
【0103】
精神疾患判定装置110は、例えば、精神疾患判定サービスを提供するクラウドサーバである。クラウドサーバは、クラウドコンピューティングにおけるリソースを提供するサーバである。精神疾患判定装置110は、サーバの一例である。
図10に示すように、精神疾患判定装置110は、制御部11と、記憶部12と、第2通信部16とを備える。
【0104】
第2通信部16は、制御部11による制御に従って、通信ネットワーク700に接続された各種の装置と通信する。本実施の形態では、第2通信部16は、制御部11による制御に従って、端末装置400と通信する。第2通信部16は、通信ネットワーク700に接続するための通信インターフェースを備える。
【0105】
磁気刺激装置200は、被験者に経頭蓋磁気刺激を与える装置である。本実施の形態では、磁気刺激装置200は、端末装置400により制御される。脳波計300は、被験者の脳波を測定する装置である。本実施の形態では、脳波計300は、端末装置400により制御される。また、本実施の形態では、脳波計300は、ケーブル320を介して脳波測定キャップ310Aに接続される。
【0106】
脳波測定キャップ310Aは、被験者の脳波を測定するために、被験者の頭部に装着されるキャップである。脳波測定キャップ310Aは、配置される電極311の個数と、電極311が配置される箇所とが、脳波測定キャップ310と異なる。つまり、脳波測定キャップ310Aにおける前頭部(例えば、前頭葉)に対応する部分に複数の電極311が配置され、被験者の前頭部(例えば、前頭葉)に対応した脳波が測定される。本実施の形態では、電極311、測定箇所、及び、チャネルの個数は17個である。
【0107】
端末装置400は、精神疾患判定処理と関連する各種の処理を実行する装置である。例えば、端末装置400は、磁気刺激装置200を制御して、被験者の脳に磁気刺激を与える。また、端末装置400は、脳波計300から、被験者の脳波を示す脳波データを取得する。また、端末装置400は、脳波計300から取得した脳波データを、通信ネットワーク700を介して、精神疾患判定装置110に送信する。また、端末装置400は、通信ネットワーク700を介して精神疾患判定装置110から取得した判定結果を提示する。
【0108】
端末装置400は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。端末装置400は、端末装置の一例である。
図11に示すように、端末装置400は、制御部41と、記憶部42と、表示部43と、操作受付部44と、第1通信部45と、第2通信部46とを備える。
【0109】
制御部41は、CPU、ROM、RAM、RTC等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP等とも呼び、端末装置400の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部41において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、端末装置400を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。
【0110】
記憶部42は、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる補助記憶装置としての役割を担う。記憶部42は、制御部41が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部42は、制御部41が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0111】
表示部43は、制御部41による制御に従って、各種の画像を表示する。例えば、表示部43は、ユーザから各種の操作を受け付けるための画面を表示する。表示部43は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部44は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部41に供給する。操作受付部44は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0112】
第1通信部45は、制御部41による制御に従って、各種の装置と通信する。本実施の形態では、第1通信部45は、制御部41による制御に従って、磁気刺激装置200及び脳波計300と通信する。第1通信部45は、周知の有線通信規格又は周知の無線通信規格に則って、各種の装置と通信する。第1通信部45は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0113】
第2通信部46は、制御部41による制御に従って、通信ネットワーク700に接続された各種の装置と通信する。本実施の形態では、第2通信部46は、制御部41による制御に従って、精神疾患判定装置110と通信する。第2通信部46は、通信ネットワーク700に接続するための通信インターフェースを備える。
【0114】
次に、
図12を参照して、精神疾患判定装置110及び端末装置400の機能について説明する。精神疾患判定装置110は、機能的には、脳波取得部102と、特徴量抽出部103と、精神疾患判定部104と、結果送信部106とを備える。端末装置400は、機能的には、刺激制御部401と、脳波取得部402と、脳波送信部403と、表示制御部404とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM、記憶部12又は記憶部42に格納される。そして、CPUが、ROM、記憶部12又は記憶部42に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0115】
刺激制御部401は、被験者の脳に対する磁気刺激を制御する。例えば、刺激制御部401は、予め定められた時間間隔で、被験者の脳に磁気刺激を与えるように磁気刺激装置200を制御する。刺激制御部401の動作は、基本的に、刺激制御部101の動作と同様である。
【0116】
脳波取得部402は、被験者の脳波を取得する。例えば、脳波取得部402は、被験者の脳波を測定するように脳波計300を制御して、脳波計300から測定された脳波を示す脳波データを取得する。脳波取得部402の動作は、基本的に、脳波取得部102の動作と同様である。脳波取得部402は、脳波取得部の一例である。
【0117】
脳波送信部403は、通信ネットワーク700を介して、脳波取得部402が取得した脳波データを精神疾患判定装置110に送信する。脳波送信部403は、脳波送信部の一例である。脳波取得部102は、被験者の脳波を取得する。例えば、脳波取得部102は、通信ネットワーク700を介して、端末装置400から被験者の脳波を示す脳波データを取得する。
【0118】
特徴量抽出部103は、被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された被験者の脳波から、脳波の特徴を表す特徴量を抽出する。つまり、特徴量抽出部103は、脳波取得部102が取得した脳波データが示す脳波から、被験者の脳波の特徴を表す特徴量を抽出する。
【0119】
精神疾患判定部104は、特徴量の変化量に基づいて、被験者が精神疾患を有するか否かを判定する。例えば、精神疾患判定部104は、学習済みモデル121を用いて、被験者が精神疾患を有するか否かを判定する。結果送信部106は、通信ネットワーク700を介して、精神疾患判定部104による判定結果を端末装置400に送信する。結果送信部106は、送信部の一例である。
【0120】
表示制御部105は、被験者が精神疾患を有するか否かの判定結果を表示部13に表示させる。例えば、表示制御部105は、通信ネットワーク700を介して精神疾患判定装置110から判定結果を取得し、この判定結果を提示するための提示画面を表示部43に表示させる。表示制御部105は、表示制御部の一例である。表示部43は、表示部の一例である。
【0121】
本実施の形態では、精神疾患判定装置110の代わりに端末装置400が、磁気刺激装置200及び脳波計300を制御する処理、判定結果を表示する処理等を実行する。そして、精神疾患判定サービスを提供するサーバとして機能する精神疾患判定装置110が、被験者の脳に磁気刺激が与えられたときに測定された被験者の脳波から、脳波の特徴を表す特徴量を抽出する特徴量抽出部103と、磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量に基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かを判定する精神疾患判定部104と、を備える。従って、本実施の形態によれば、精神疾患判定装置110の処理負荷を低減しつつ、所定の精神疾患の有無を精度良く判定することができる。
【0122】
また、本実施の形態で測定される脳波は、被験者の前頭部に設置された複数の電極311を介して測定された、被験者の前頭部の複数の測定箇所における脳波である。ここで、前頭部から発生する脳波は、脳の他の部位から発生する脳波に比べて、精神疾患を有する人と有しない人とで差違が確認しやすいと考えられる。このため、特徴量の変化量の算出に用いる脳波を、前頭部から発生する脳波に限定しても、判定精度が低下しにくいと考えられる。一方、特徴量の変化量の算出に用いる脳波を、前頭部から発生する脳波に限定すると、抽出すべき特徴量、算出すべき特徴量の変化量等が抑制され、精神疾患判定処理を実行するための処理負荷が低減される。従って、本実施の形態によれば、精神疾患判定装置110の処理負荷を低減しつつ、精神疾患の有無を精度良く判定することができる。
【0123】
(変形例)
以上、本開示の実施の形態を説明したが、種々の形態による変形及び応用が可能である。
【0124】
上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上述した実施の形態は、適宜、自由に組み合わせることができる。また、上述した実施の形態で説明した構成要素の個数は、適宜、調整することができる。また、採用可能な素材、サイズ、電気的特性などが、上記実施の形態において示したものに限定されないことは勿論である。
【0125】
実施の形態1では、特徴量が、各測定箇所における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波の周波数パワーの値と、各測定箇所間における脳波のα波、β波、γ波、θ波及びδ波の位相同期性の値と、特定の測定箇所における脳波のα波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値と、特定の測定箇所における脳波のθ波の位相とγ波の振幅とのカップリングの値とを含む例について説明した。特徴量は、上記周波数パワーの値と、上記位相同期性の値と、上記2種類のカップリングの値とのうち、少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0126】
また、特徴量として、α波、β波、γ波、θ波及びδ波の全てについて、上記周波数パワーの値と上記位相同期性の値とを求めなくてもよい。例えば、特徴量として、α波、β波、γ波、θ波及びδ波のうち少なくとも1つについて、上記周波数パワーの値と上記位相同期性の値とを求めてもよい。なお、採用される特徴量の種類が多いほど、精度の向上が期待できる。
【0127】
また、実施の形態1では、特徴量の変化量と、刺激前脳波から抽出された特徴量と、刺激後脳波から抽出された特徴量とに基づいて、被験者が所定の精神疾患を有するか否かが判定される例について説明した。安静覚醒時脳波から抽出された特徴量が更に判定に用いられてもよく、また、刺激前脳波から抽出された特徴量又は刺激後脳波から抽出された特徴量が判定に用いられなくてもよい。
【0128】
例えば、特徴量の変化量のみが判定に用いられてもよい。又は、特徴量の変化量と安静覚醒時脳波から抽出された特徴量とが判定に用いられてもよい。又は、特徴量の変化量と刺激前脳波から抽出された特徴量とが判定に用いられてもよい。又は、特徴量の変化量と刺激後脳波から抽出された特徴量とが判定に用いられてもよい。
【0129】
又は、特徴量の変化量と安静覚醒時脳波から抽出された特徴量と刺激前脳波から抽出された特徴量とが判定に用いられてもよい。又は、特徴量の変化量と安静覚醒時脳波から抽出された特徴量と刺激後脳波から抽出された特徴量とが判定に用いられてもよい。又は、特徴量の変化量と安静覚醒時脳波から抽出された特徴量と刺激前脳波から抽出された特徴量と刺激後脳波から抽出された特徴量とが判定に用いられてもよい。なお、学習済みモデルを用いる場合、判定に用いる特徴量の変化量に加え、判定に用いる特徴量を入力して、被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する学習済みモデルが採用される。
【0130】
実施の形態1では、被験者の脳に繰り返して磁気刺激が与えられ、2発目以降の磁気刺激が与えられる前後の脳波が所定の精神疾患の判定に用いられる例について説明した。所定の精神疾患の有無の判定に用いられる脳波は、この例に限定されない。例えば、被験者の脳に繰り返して磁気刺激が与えられ、1発目の磁気刺激が与えられる前後の脳波が精神疾患の判定に用いられてもよい。また、被験者の脳に単発の磁気刺激が与えられ、この磁気刺激が与えられる前後の脳波が所定の精神疾患の有無の判定に用いられてもよい。
【0131】
実施の形態1では、刺激前脳波は、磁気刺激の1550msec前からこの磁気刺激の50msec前までの脳波であり、刺激後脳波は、磁気刺激の50msec後からこの磁気刺激の550msec後までの脳波である例について説明した。刺激前脳波、刺激後脳波等は、この例に限定されない。例えば、刺激前脳波は、磁気刺激の2000msec前からこの磁気刺激時までの脳波であってもよく、刺激後脳波は、磁気刺激の15msec後からこの磁気刺激の2000msec後までの脳波であってもよい。
【0132】
実施の形態1では、精神疾患判定装置100と磁気刺激装置200と脳波計300とが個別の装置である例について説明した。これらの装置が統合された装置が採用されてもよい。例えば、精神疾患判定装置100に磁気刺激装置200の機能を持たせてもよいし、精神疾患判定装置100に脳波計300の機能を持たせてもよいし、精神疾患判定装置100に磁気刺激装置200の機能と脳波計300の機能とを持たせてもよい。
【0133】
上記実施の形態では、制御部11,41において、CPUがROM又は記憶部12,42に記憶されたプログラムを実行することによって、
図5,11に示した各部として機能した。しかしながら、本開示において、制御部11,41は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部11,41が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部11,41は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0134】
本開示に係る精神疾患判定装置100,110、端末装置400の動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本開示に係る精神疾患判定装置100,110、端末装置400として機能させることも可能である。また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0135】
このように、本開示に係る技術は、種々の形態において保護される。保護形態としては、精神疾患判定装置、学習済みモデル、精神疾患判定補助方法、プログラム、端末装置の他、サーバ、記録媒体、プログラム製品、分類器、ニューラルネットワーク等が考えられる。なお、記録媒体は、例えば、コンピュータを特徴量抽出部103及び精神疾患判定部104として機能させるプログラムを格納した記録媒体である。上記記録媒体は、上記プログラムを格納した非一時的な記録媒体であってもよい。また、プログラム製品は、上記プログラムに関する製品である。プログラム製品は、記録媒体を伴わない製品を含む。上記プログラム及び上記プログラム製品は、記録媒体により提供される形態でもよいし、外部のコンピュータから配信される形態でもよい。
【0136】
上記分類器は、学習済みモデル121に対応する分類器である。つまり、上記分類器は、被験者の脳への磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量を入力し、被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力する分類器である。
【0137】
上記ニューラルネットワークは、学習済みモデル121に対応するニューラルネットワークである。つまり、上記ニューラルネットワークは、被験者の脳への磁気刺激の直前に測定された脳波から抽出された特徴量と磁気刺激の直後に測定された脳波から抽出された特徴量との差分値である特徴量の変化量を入力し、被験者が所定の精神疾患を有するか否かの判定結果を出力するニューラルネットワークである。
【0138】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0139】
11,41 制御部、12,42 記憶部、13,43 表示部、14,44 操作受付部、15,45 第1通信部、16,46 第2通信部、100,110 精神疾患判定装置、101,401 刺激制御部、102,402 脳波取得部、103 特徴量抽出部、104 精神疾患判定部、105,404 表示制御部、106 結果送信部、121 学習済みモデル、200 磁気刺激装置、210 コイル、220,320 ケーブル、300 脳波計、310,310A 脳波測定キャップ、311 電極、312 電線、400 端末装置、403 脳波送信部、700 通信ネットワーク、1000,1100 精神疾患判定システム